(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】CO2回収装置を搭載した車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20221220BHJP
B01D 53/92 20060101ALI20221220BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20221220BHJP
F01N 9/00 20060101ALI20221220BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20221220BHJP
【FI】
F01N3/08 A
B01D53/92 240
B01D53/92 ZAB
F01N3/18 B
F01N9/00 A
C01B32/50
(21)【出願番号】P 2019236670
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大月 寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇弘
(72)【発明者】
【氏名】後藤 春美
(72)【発明者】
【氏名】是永 真吾
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/186075(US,A1)
【文献】国際公開第2016/076041(WO,A1)
【文献】特表2014-509360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/92
F01N 3/18
F01N 9/00
C01B 32/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体中の二酸化炭素を捕捉あるいは吸着して回収した前記二酸化炭素を貯留し、その貯留した前記二酸化炭素が外部に設けられた回収器で回収されるように構成されたCO
2回収装置を搭載した車両の制御装置において、
前記CO
2回収装置を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
大気中の前記二酸化炭素が吸収もしくは回収される地点もしくは環境を判定し、
前記地点もしくは前記環境を前記車両が走行している場合に、
前記CO
2回収装置に貯留してある前記二酸化炭素を前記車両の外部に放出することを許可するように構成されている
ことを特徴とするCO
2回収装置を搭載した車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関から排出されるCO2あるいは大気中のCO2を回収する装置を搭載した車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CO2回収装置を搭載した車両が特許文献1に記載されている。そのCO2回収装置はエンジンから排出される排ガス(排気)をCO2捕捉剤に供給し、そのCO2捕捉剤によって排ガス中の二酸化炭素を捕捉あるいは吸着することにより、排ガス中の二酸化炭素を減少させ、つまり回収するように構成されている。CO2捕捉剤に接触した後の残余の排ガスは大気中に放出される。また、上記のCO2回収装置では、エンジンからの排気熱によって捕捉剤を加熱することにより捕捉剤から二酸化炭素を脱離させ、その脱離させた二酸化炭素を車両内の貯蔵タンクに貯留するように構成されている。その貯留タンクに貯留された二酸化炭素は所定の回収スタンドで回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した貯留タンクの容量は設計上あるいは構造上、決まっているので、貯留タンクが満杯あるいは所定量以上、二酸化炭素を貯留していると、それ以上、二酸化炭素の回収を行うことができなくなってしまう。そのため、回収スタンドで貯留タンクに貯留された二酸化炭素を回収するまでは、エンジンの運転に伴って二酸化炭素が生じているとしても、その二酸化炭素を車両の外部に放出せざるを得ない。その結果、大気中に二酸化炭素を放出した分、二酸化炭素濃度が増大してしまう可能性がある。一方、車両の外部に二酸化炭素を放出しないとすれば、エンジンを停止せざるを得なくなってしまう。
【0005】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであって、走行を継続した状態でCO?回収装置で二酸化炭素を貯留可能な空き容量を増大でき、しかも、大気中の二酸化炭素濃度を増大することのないCO2回収装置を搭載した車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、気体中の二酸化炭素を捕捉あるいは吸着して回収した前記二酸化炭素を貯留し、その貯留した前記二酸化炭素が外部に設けられた回収器で回収されるように構成されたCO2回収装置を搭載した車両の制御装置において、前記CO2回収装置を制御するコントローラを備え、前記コントローラは、大気中の前記二酸化炭素が吸収もしくは回収される地点もしくは環境を判定し、前記地点もしくは前記環境を前記車両が走行している場合に、前記CO2回収装置に貯留してある前記二酸化炭素を前記車両の外部に放出することを許可するように構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、コントローラは大気中の二酸化炭素が吸収もしくは回収される地点もしくは環境を判定し、そのような地点もしくは環境を走行しているときには、CO?回収装置に貯留した二酸化炭素を車両の外部に放出することを許可するように構成されている。上記の大気中の二酸化炭素が吸収もしくは回収される地点もしくは環境とは、例えば、自車両の周囲の空気の循環や流動がある程度少なく、しかも、自車両の他に、CO?回収装置を搭載した他車両が走行している環境や、森林地帯や山間部などの地点を挙げることができる。すなわち、上記の地点もしくは環境とは、自車両に搭載されているCO?回収装置以外のCO?回収装置によって、あるいは、植物によって二酸化炭素を吸収可能な地点もしくは環境である。したがって、そのような地点もしくは環境を走行している場合には、自車両に搭載したCO?回収装置から二酸化炭素を外部に放出したとしても、他車両が搭載するCO?回収装置によって二酸化炭素を吸収もしくは回収でき、大気中の二酸化炭素濃度が増大しない。あるいは、植物によって二酸化炭素をある程度吸収できるので、大気中の二酸化炭素濃度を増大させる要因になりにくい。また、車両の走行を継続した状態で自車両のCO?回収装置で二酸化炭素を貯留可能な空き容量を増大できる。つまり、回収器のある地点で一旦停車してCO?回収装置に貯留してある二酸化炭素を回収器で回収することがないので、例えば、目的地に到着するまでの時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態における車両を模式的に示す図である。
【
図2】CO
2回収装置の構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【
図3】この発明の実施形態における制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】二酸化炭素の吸収力の高い箇所の一例を説明するための図である。
【
図6】二酸化炭素の吸収力の高い箇所の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、この発明の実施形態に係るCO
2回収装置1を搭載した車両Veの一例を模式的に示す図である。
図1に示す車両Veは、駆動力源としてガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関(以下、エンジンと記す。)2を備えている。そのエンジン2は、例えば、出力の調整、ならびに、始動および停止などの作動状態が電気的に制御されるように構成されている。ガソリンエンジンであれば、スロットルバルブの開度、燃料の供給量または噴射量、点火の実行および停止、ならびに、点火時期などが電気的に制御される。ディーゼルエンジンであれば、燃料の噴射量、燃料の噴射時期、あるいは、EGR[Exhaust Gas Recirculation]システムにおけるスロットルバルブの開度などが電気的に制御される。なお、この発明の実施形態における車両Veは、エンジン2に加えてモータを駆動力源として備えたいわゆるハイブリッド車であってもよい。
【0010】
CO2回収装置1はここに示す例では、上記のエンジン2の排気流路3に設けられており、エンジン2から排気流路3に排出された排ガス中の二酸化炭素を含む空気、および、車室内あるいは車室外の二酸化炭素を含む空気を図示しない捕捉剤に接触させることによって、捕捉剤に二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させて回収するように構成されている。また、CO2回収装置1は上記の空気から回収した二酸化炭素を貯留する貯留部4を有している。その貯留部4は上記の捕捉剤に二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させた状態で二酸化炭素を貯留するように構成されていてよい。あるいは、捕捉剤で捕捉あるいは吸着した二酸化炭素を当該捕捉剤から脱離させ、その脱離させた二酸化炭素を図示しないタンクに貯留するように構成されていてもよい。その貯留部4における捕捉剤の量やタンクの容量は設計上あるいは構造上、決まっているので、貯留部4で貯留可能な二酸化炭素の最大量は予め求めることができる。なお、ここで、上述した空気とは、前記排ガス、また、車両Veの車室内やその周辺にある気体、トンネルや屋内などにある気体など、身の回りにある気体や所定の空間内にある気体を意味している。
【0011】
また、上記の排気流路3に、エンジン2から排気流路3に排出された熱を蓄熱する蓄熱器5が設けられている。一例として、その蓄熱器5に蓄えられた熱によって捕捉剤を加熱して当該捕捉剤で捕捉あるいは吸着した二酸化炭素を捕捉剤から脱離させるようになっている。つまり、車両Veの外部に設けられている二酸化炭素の回収スタンド6に貯留部4を接続している状態で、上記の蓄熱器5によって捕捉剤を加熱して捕捉剤から二酸化炭素を脱離させ、その脱離した二酸化炭素を回収スタンド6で回収する。または、上述したタンクを備えている場合には、上記のようにして脱離させた二酸化炭素を一旦タンクに貯留し、そのタンクを回収スタンド6に接続してタンク内に貯留してある二酸化炭素を回収スタンド6で回収する。なお、上記構成のCO2回収装置1は例えば車両Veのラゲッジスペース内に、あるいは、ラゲッジスペース近傍に格納される。
【0012】
ここで、この発明の実施形態に係るCO2回収装置1による二酸化炭素の捕捉方法や回収方法について説明する。CO2回収装置1による二酸化炭素の捕捉あるいは回収は例えば物理吸着法、物理吸収法、化学吸収法、深冷分離法などによって行うことができる。物理吸着法は例えば活性炭やゼオライトなどの固体吸着剤と排ガスとを接触させることによって固体吸着剤に排ガス中の二酸化炭素を吸着させ、固体吸着剤を加熱または減圧することによって固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させて回収する方法である。
【0013】
物理吸収法は二酸化炭素を溶解させることが可能なメタノールやエタノールなどの吸収液と排ガスとを接触させて高圧・低温下で物理的に排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、吸収液を加熱または減圧することによって吸収液から二酸化炭素を回収する方法である。
【0014】
化学吸収法は二酸化炭素を溶解させることが可能なアミンなどのアルカリ性の吸収液と排ガスとを接触させることで化学反応によって排ガス中の二酸化炭素を吸収液に吸収させ、加熱することによって吸収液から二酸化炭素を解離させて回収する方法である。
【0015】
深冷分離法は排ガスを圧縮および冷却して二酸化炭素を液化させ、その液化させた二酸化炭素を蒸留することによって二酸化炭素を回収する方法である。
【0016】
この発明の実施形態では、二酸化炭素の捕捉あるいは回収方法として物理吸着法を採用し、活性炭やゼオライトなどの捕捉剤に排ガス中あるいは車室内もしくは車室外の二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させて回収するように構成されている。また、捕捉剤による二酸化炭素の捕捉あるいは吸着は可逆的であって、一例として、貯留部4での捕捉剤の温度を当該捕捉剤から二酸化炭素を脱離させるときよりも低い温度とすることによって、捕捉剤に二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させて回収する。この捕捉剤に二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させる温度を以下の説明では、吸着温度と記す。そして、捕捉剤の温度を吸着温度よりも高い温度とすることによって、捕捉剤から二酸化炭素を脱離させる。また、この発明の実施形態では、捕捉剤に二酸化炭素を接触させるときの圧力をある程度高くすることによって捕捉剤に二酸化炭素を捕捉あるいは吸着させ、上記の圧力を低下させることによって捕捉剤から二酸化炭素を脱離させてもよい。
【0017】
図2は、この発明の実施形態におけるCO
2回収装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示す例では、エンジン2から排出された排ガスの流動方向で貯留部4の上流側に熱交換器7が設けられている。熱交換器7は二酸化炭素を含む気体つまりエンジン2の排ガスや空気などを、貯留部4での二酸化炭素の吸着温度以下に冷却するものであり、例えばラジエータ8で冷却した冷却水と排ガスや空気との間で熱交換するように構成されている。この熱交換器7と貯留部4との間に、排ガスなどを貯留部4に送るポンプ9と、貯留部4に導入される排ガスなどの流量を検出する流量センサ10とが設けられている。したがって、この流量センサ10によって検出した排ガスの流量に基づいて貯留部4で捕捉あるいは吸着して回収した二酸化素量を推定できる。また、貯留部4で二酸化炭素が捕捉あるいは吸着された残余の排ガスは排出口11を介して車両Veの外部に放出され、あるいは、排気流路3に戻されて他の排ガスと共に車両Veの外部に放出される。さらに、貯留部4の捕捉剤を加熱あるいは減圧することにより捕捉剤から脱離させた二酸化炭素は回収口12を介して回収スタンド6に排出される。または、上述したように、一旦、タンクに貯留され、当該タンクから回収スタンド6に排出される。なお、この回収スタンド6は、例えばガソリンスタンド、高速道路のサービスエリアやパーキングエリア、商業施設の駐車場などに設けられる。
【0018】
上記のCO2回収装置1を制御する電子制御装置(ECU)13が設けられている。このECU13はこの発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであり、マイクロコンピュータを主体にして構成され、入力されるデータや予め記憶しているデータなどを使用して演算を行う。そして、演算の結果を指令信号として出力することにより、貯留部4に対する排ガスの供給および停止、貯留部4での二酸化炭素の捕捉あるいは吸着による回収、および、二酸化炭素の脱離などを制御するように構成されている。また、回収スタンド6と貯留部4とが接続された場合に、回収スタンド6への二酸化炭素の排出を制御し、さらに、後述する放出地点を走行している場合に、車両Veの外部への二酸化炭素の放出を制御するように構成されている。
【0019】
また、貯留部4に貯留してある二酸化炭素の量の算出や検出について、主としてエンジン2の排ガス中の二酸化炭素を回収して貯留部4に貯留した場合を例として説明する。エンジン2の排ガスに含まれる二酸化炭素の濃度は、エンジン2が定常的に運転(燃焼)している状態ではほぼ一定の値もしくは一定の濃度範囲に入るようになっている。CO2回収装置1に供給される排ガスの量は流量センサ10によって検出できるので、その流量センサ10の検出値に基づいてCO2回収装置1に供給される二酸化炭素の量を求めることができる。なお、急加速時のようにスロットル開度や燃料噴射量が急激に増大した場合や渋滞走行のために低スロットル開度が継続するなどの場合には、排ガス中の二酸化炭素の濃度が定常運転時とは異なるが、そのようなエンジン2の運転状態に応じた補正を行うことにより、CO2回収装置1に供給される二酸化炭素の量を求めることができる。また、貯留部4で捕捉もしくは吸着できる二酸化炭素の割合は、排ガスの温度や流速などによって異なるものの、これは実験などによって予め求めることができる。すなわち、排ガスの温度や流速などに応じて貯留部4で捕捉もしくは吸着できる二酸化炭素の割合を予めマップ化しておき、そのマップと貯留部4に流入する排ガスの温度や流速などとに基づいて単位時間当たりの二酸化炭素の回収量(吸着量)を求めることができる。そして、こうして求めた二酸化炭素の回収量を積算することにより、貯留部4で貯留してある二酸化炭素の量すなわち二酸化炭素の回収量の全量を求めることができる。
【0020】
また、貯留部4に捕捉剤から脱離させた二酸化炭素を貯留するタンクが設けられている場合には、そのタンク内の圧力を検出することによってタンク内の二酸化炭素の量を求めることも可能である。さらに、排ガスは燃料の燃焼によって生じるのであるから、二酸化炭素の発生量と燃料の噴射量との間には相関関係がある。したがって、CO2回収装置1で回収した二酸化炭素の量を燃料の噴射量に基づいて求めることも可能である。
【0021】
そして、貯留部4で貯留可能な二酸化炭素の最大量は上述したように、設計上あるいは構造上、決まっているので、貯留部4での二酸化炭素の貯留量あるいは回収量が前記最大量あるいは所定値以上になっていると、エンジン2を運転して二酸化炭素を生じている状態であっても、貯留部4に二酸化炭素を貯留できない。そこで、この発明の実施形態に係る制御装置は、貯留部4に二酸化炭素を貯留できない状態を回避もしくは抑制するために、すなわち、CO?回収装置で二酸化炭素を貯留可能な空き容量を増大するために、以下に説明する制御を実行するように構成されている。
【0022】
図3はその制御の一例を説明するためのフローチャートであって、先ず、現時点での自車両Ve1の位置(以下、現在位置と記す。)が取得される(ステップS1)。これは、例えば、複数のGPS衛星からの電波を受信することにより、自車両Ve1の位置(緯度および経度)を測定し、その位置情報とナビゲーションシステムから取得される地図情報や道路情報とに基づいて行うことができる。あるいは、道路上や道路脇に設置されたセンサやサインポスト等で車両Veの位置を測定可能な場合は、そのようなセンサやサインポスト等との通信によって現在位置を得ることもできる。
【0023】
次いで、現在位置が貯留部4に貯留してある二酸化炭素の放出が可能な地点あるいは環境(以下、放出地点と記す。)であるいか否かが出力される(ステップS2)。具体的には、現在位置が放出地点である場合には、二酸化炭素の放出フラグが「1」すなわちオンに設定される。現在位置が放出地点でない場合には、二酸化炭素の放出フラグが「0」すなわちオフに設定される。
【0024】
上述した放出地点とは、自車両Ve1の外部に二酸化炭素を放出したとしても、その放出された二酸化炭素が自車両Ve1以外で吸収もしくは回収され、大気中の二酸化炭素濃度が増大することのない、あるいは、増大しにくい地点あるいは環境である。その放出地点としては、例えば、自車両Ve1の周囲における空気の循環あるいは流動がある程度少なく、しかも、自車両Ve1以外に、特に、自車両Ve1の進行方向で後方にCO
2回収装置1を搭載した他車両(以下、後続車両と記す。)Ve2が走行している地点あるいは環境を挙げることができる。また、上述した空気の循環あるいは流動がある程度少ない箇所としては、例えば、
図4に示すように、トンネル内を挙げることができる。もしくは、高架道路の下に当該高架道路に沿って設けられている道路や地下駐車場、屋内駐車場など、自車両Ve1の周囲の少なくとも一部が壁や屋根あるいは道路などによって遮られたいわゆる半開放空間を挙げることができる。つまり、貯留部4から二酸化炭素を放出してもその二酸化炭素がその場に留まる可能性の高い地点である。現在位置が二酸化炭素がその場に留まる可能性の高い地点であるか否かの判定は、現在位置と地図情報や道路情報とに基づいて行うことができる。また、後続車両Ve2の有無は、例えば自車両Ve1の周囲の他車両と車車間通信を行って後続車両Ve2についての情報を取得することによって判断できる。放出フラグは貯留部4からの二酸化炭素の放出を判定する制御フラグであり、「1」すなわちオンに設定されることによって、貯留部4から二酸化炭素が放出され、「0」すなわちオフに設定されることによって、貯留部4から二酸化炭素の放出が中止される。なお、上述した放出地点が、この発明の実施形態における「大気中の二酸化炭素が吸収もしくは回収される地点あるいは環境」に相当している。
【0025】
ステップS2に続いてステップS3に進み、上記の放出フラグが「1」もしくは「0」であるかが判断される。放出フラグが「1」であると判断された場合には、ステップS4に進み、貯留部4から二酸化炭素を放出することが許可され、二酸化炭素の放出が開始される。また、現時点よりも1回前のルーチンで、放出フラグが「1」に設定されており、現時点で二酸化炭素が放出されている場合には、二酸化炭素の放出が継続される。具体的には、貯留部4の捕捉剤の温度が吸着温度以上に上昇されて捕捉剤から二酸化炭素が脱離され、その二酸化炭素が排出口11から放出される。または、貯留部4のタンクが排出口11に連通され、タンク内の二酸化炭素が排出口11から放出される。その後、このルーチンを一旦終了する。
【0026】
これに対して、放出フラグが「0」であると判断された場合には、ステップS5に進み、現時点で二酸化炭素の放出制御が実行中であるいか否か、つまり、上述したように、貯留部4から二酸化炭素が放出されているか否かが判断される。このステップS5での判断は、例えば、捕捉剤の温度やタンクの圧力などに基づいて行うことができる。すなわち、捕捉剤の温度が吸着温度以上であって、貯留部4と排出口11とが連通状態であれば、貯留部4から二酸化炭素が放出されていると判断することができる。あるいは、タンクと排出口11とが連通状態であって、そのタンクの圧力が徐々に低下していれば、貯留部4から二酸化炭素が放出されていると判断することができる。
【0027】
ステップS5で否定的に判断された場合には、特に制御を行うことなく、このルーチンを一旦終了する。これに対して、ステップS5で肯定的に判断された場合には、二酸化炭素の放出制御が中止される(ステップS6)。例えば、捕捉剤の温度が吸着温度に設定されて捕捉剤からの二酸化炭素の脱離が停止される。あるいは、タンクと排出口11との連通状態が遮断される。その後、このルーチンを一旦終了する。
【0028】
このように、この発明の実施形態では、放出地点を自車両Ve1が走行している場合には、貯留部4で貯留してある二酸化炭素を外部に放出し、その二酸化炭素は後続車両Ve2によって回収される。そのため、車両Ve1の走行を継続した状態で自車両Ve1のCO?回収装置で二酸化炭素を貯留可能な空き容量を増大できる。つまり、回収スタンド6に一旦停車し、その回収スタンド6でCO?回収装置に貯留してある二酸化炭素を回収する頻度を低減できる。これにより、目的地に到着するまでの時間を短縮できる。また、放出した二酸化炭素は後続車両Ve2によって吸収もしくは回収されるから、大気中の二酸化炭素濃度の増大させることがない。なお、上述した大気とは、地表を覆っている気体を意味している。
【0029】
この発明は上述した実施形態に限定されないのであって、上述した後続車両Ve2がある状況で貯留部4から二酸化炭素を放出することに替えて、二酸化炭素の吸収力の高い箇所を自車両Ve1が走行している、あるいは、そのような箇所に自車両Ve1が位置している場合に、貯留部4から二酸化炭素を放出するように構成されていてもよい。その二酸化炭素の吸収力の高い箇所とは、例えば、
図5に示すように、森林地帯や山間部など、植物による二酸化炭素の吸収量が多いとされている箇所や、
図6に示す屋内駐車場14や地下駐車場などであってかつ定置式のCO
2回収装置1fが設置されている箇所などを挙げることができる。例えば、
図5に示すように、森林地帯を自車両Ve1が走行している、あるいは、位置している場合に、貯留部4から二酸化炭素を放出すれば、自車両Ve1の周囲にCO
2回収装置1を搭載した他車両Ve2がないとしても、自車両Ve1から放出した二酸化炭素は周囲の植物によってある程度吸収される。また、
図6に示すような屋内駐車場14に自車両Ve1が位置している場合に、貯留部4から二酸化炭素を放出すれば、定置式のCO
2回収装置1fによって吸収もしくは回収できる。そのため、上述した実施形態と同様の作用・効果を得ることができる。なお、上述した植物による二酸化炭素の吸収量が多いとされている箇所、および、屋内駐車場14や地下駐車場などであってかつ定置式のCO
2回収装置1fが設置されている箇所も上述した放出地点と言うことができる。また、この発明の実施形態では、回収する二酸化炭素を含む気体(空気)は、エンジン2の排ガスに限らず、車両Veの車室内および車室外の空気を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 CO2回収装置
4 貯留部
6 回収スタンド(回収器)
13 電子制御装置(ECU)
Ve 車両。