(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
H04N 5/74 20060101AFI20221220BHJP
G03B 21/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04N5/74 A
H04N5/74 C
G03B21/00 D
(21)【出願番号】P 2019504512
(86)(22)【出願日】2018-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2018007691
(87)【国際公開番号】W WO2018163945
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2017045917
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】中村 知晴
(72)【発明者】
【氏名】尾山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】田中 章
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308745(JP,A)
【文献】特開2004-012477(JP,A)
【文献】特開2003-344962(JP,A)
【文献】特開平09-168141(JP,A)
【文献】特開2004-004607(JP,A)
【文献】特開2007-218945(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0304824(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0147003(US,A1)
【文献】米国特許第07967451(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/74
H04N 9/31
G03B 21/00
G09G 3/00-5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸に沿って前記所定の軸上から放射状に画像光を出射する出射部と、
前記所定の軸の周囲の少なくとも一部に配置された透明なホログラムスクリーンであり、前記画像光が入射する入射面を有し、前記入射面の全面において一定の角度で入射する前記画像光を選択的に回折する照射対象物と、
前記所定の軸を基準として前記出射部に対向して配置され、前記出射部により放射状に出射された前記画像光の前記照射対象物に対する入射角度が前記画像光を構成する全ての色光に対する前記照射対象物による回折効率が所定のしきい値以上となる角度範囲に収まるように、前記入射面の全面において前記入射角度を略一定にする光学部と
を具備する画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置であって、
前記所定のしきい値は、最大回折効率の50%である
画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置であって、
前記出射部は、前記色光を出射するレーザ光源を含む
画像表示装置。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記光学部は、前記出射部により出射された前記画像光を、前記照射対象物に反射する反射面を有する
画像表示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸を含む面における断面形状が前記出射部から見て凹状となる放物線の形状を含み、前記放物線の軸と前記所定の軸とが互いに異なるように構成される
画像表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが平行である
画像表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが前記放物線の頂点で所定の角度で交わる
画像表示装置。
【請求項8】
請求項5に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸を基準として前記放物線を回転した回転面を含む
画像表示装置。
【請求項9】
請求項8に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凸状である
画像表示装置。
【請求項10】
請求項8に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凹状である
画像表示装置。
【請求項11】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記光学部は、前記出射部により出射された画像光を屈折させて前記照射対象物に出射する1以上の屈折面を有する
画像表示装置。
【請求項12】
請求項11に記載の画像表示装置であって、さらに
前記光学部と前記出射部との間に配置され、前記出射部から出射された画像光を拡大して前記光学部に出射する拡大部を具備する
画像表示装置。
【請求項13】
請求項11に記載の画像表示装置であって、さらに
前記光学部を挟んで前記出射部とは反対側に配置され、前記光学部から出射される画像光の光路を変更するプリズム部を具備する
画像表示装置。
【請求項14】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記所定の軸の周囲の全周にわたって配置される
画像表示装置。
【請求項15】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記所定の軸を略中心軸とする円筒形状で構成される
画像表示装置。
【請求項16】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記入射面の全面において前記一定の角度で入射する前記画像光を所定の出射方向に出射する
画像表示装置。
【請求項17】
請求項1
6に記載の画像表示装置であって、
前記所定の出射方向は、前記所定の軸と直交する直交面の面内方向に対して非平行な方向に設定される
画像表示装置。
【請求項18】
請求項1
7に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記出射方向を中心として前記画像光を拡散して出射可能であり、
前記直交面に対する前記所定の出射方向の交差角度は、前記出射方向を基準とする前記画像光の拡散角に設定される
画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、スクリーン等に画像を表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な形状のスクリーン等に画像を投射する技術が開発されている。例えば円筒形のスクリーンの側面に画像を投射することで、360度の全方位に渡って表示された全周画像を楽しむことが可能となる。
【0003】
特許文献1には、回転体形状を備える全周スクリーンに映像を表示するための全周映像描画装置が記載されている。特許文献1の全周映像描画装置では、全周スクリーンの天井部分に、凸面が下向きとなるように回転体反射ミラーが設置される。映像投射部により全周スクリーンの下方から投射された投射光は、回転体反射ミラーにより全周スクリーンの全周に渡って反射される。これにより立体的に映像を表示することが可能となる。(特許文献1の明細書段落[0025][0033][0040]
図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような全周スクリーン等に画像を表示する技術は、広告やアミューズメントといった広範な分野で応用が期待されており、高品質な画像表示を実現することが可能な技術が求められている。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能な画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術の一形態に係る画像表示装置は、出射部と、照射対象物と、光学部とを具備する。
前記出射部は、所定の軸に沿って画像光を出射する。
前記照射対象物は、前記所定の軸の周囲の少なくとも一部に配置される。
前記光学部は、前記所定の軸を基準として前記出射部に対向して配置され、前記出射部により出射された前記画像光の前記照射対象物に対する入射角度を制御する。
【0008】
この画像表示装置では、出射部から所定の軸に沿って出射された画像光が、出射部に対向して配置された光学部に入射する。光学部により、出射部から出射された画像光の照射対象物に対する入射角度が制御される。入射角度が制御された画像光は、所定の軸の周囲の少なくとも一部に配置された照射対象物に照射される。これにより、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0009】
前記光学部は、前記画像光の前記照射対象物に対する前記入射角度を略一定にしてもよい。
これにより照射対象物には、略一定の入射角度で画像光が照射される。この結果、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0010】
前記光学部は、前記出射部により出射された前記画像光を、前記照射対象物に反射する反射面を有してもよい。
これにより、反射面を介して画像光を容易に照射対象物に照射することが可能となる。
【0011】
前記反射面は、前記所定の軸を含む面における断面形状が前記出射部から見て凹状となる放物線の形状を含み、前記放物線の軸と前記所定の軸とが互いに異なるように構成されてもよい。
これにより、例えば放物線の形状で反射された画像光が略平行光となり、照射対象物に対する入射角度を略一定にすることが可能となる。この結果、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0012】
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが平行であってもよい。
これにより、例えば放物線の頂点の位置をシフトすることで、照射対称物に照射される画像光の位置や入射角度が変更可能となり、所望の画像表示を実現することが可能となる。
【0013】
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが前記放物線の頂点で所定の角度で交わってもよい。
これにより、例えば所定の角度を調節することで、照射対称物に照射される画像光の位置や入射角度が変更可能となり、所望の画像表示を実現することが可能となる。
【0014】
前記反射面は、前記所定の軸を基準として前記放物線を回転した回転面を含んでもよい。
これにより、例えば所定の軸を基準とした回転対称な全周スクリーン等に対して全方位に画像を表示することが可能となる。
【0015】
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凸状であってもよい。
これにより、反射面の頂点は中央となり、反射面の周縁部を薄くすることが可能となる。この結果、例えば全周スクリーン等の端まで画像を表示することが可能となる。
【0016】
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凹状であってもよい。
これにより、反射面には頂点等の突起がなくなる。この結果、例えば反射面の形状が目立たなくなり、自然な画像表示を実現することが可能となる。
【0017】
前記光学部は、前記出射部により出射された画像光を屈折させて前記照射対象物に出射する1以上の屈折面を有してもよい。
これにより、1以上の屈折面を介して画像光を屈折することで、画像光を容易に照射対象物に照射することが可能となる。
【0018】
前記画像表示装置は、さらに、前記光学部と前記出射部との間に配置され、前記出射部から出射された画像光を拡大して前記光学部に出射する拡大部を具備してもよい。
これにより、例えば光学部に入射する画像光を拡大することで、出射部から光学部までの距離を縮小可能となり、装置を小型化することが可能となる。
【0019】
前記画像表示装置は、さらに、前記光学部を挟んで前記出射部とは反対側に配置され、前記光学部から出射される画像光の光路を変更するプリズム部を具備してもよい。
これにより、照射対称物に入射される画像光の入射位置や入射角度等を変更可能となり、画像表示の位置やサイズ等を容易に変更することが可能となる。
【0020】
前記照射対象物は、前記所定の軸の周囲の全周にわたって配置されてもよい。
これにより、所定の軸の周りに全周スクリーンが構成され、全周画像等を楽しむことが可能となる。
【0021】
前記照射対象物は、前記所定の軸を略中心軸とする円筒形状で構成されてもよい。
これにより、円筒形の全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0022】
前記照射対象物は、ホログラムスクリーンであってもよい。
例えばホログラムスクリーンには、入射角度が調節された画像光が入射される。この結果、十分に高品質な画像表示が可能となる。
【0023】
前記照射対象物は、前記画像光を透過する透過型スクリーン及び前記画像光を反射する反射型スクリーンのどちらか一方であってもよい。
これにより、例えば背景が透けて見える全周スクリーン等を実現することが可能となり、シースルーな全周画像等を表示することが可能となる。
【0024】
前記照射対象物は、前記光学部により制御された前記入射角度で入射する前記画像光を所定の出射方向に出射してもよい。
これにより、例えば使用環境等に応じた出射方向に画像光を出射することが可能となり、高いユーザビリティを発揮することが可能となる。
【0025】
前記照射対象物は、前記画像光を出射する出射面を有してもよい。この場合、前記所定の出射方向は、前記出射面の法線方向と所定の交差角度で交差してもよい。
これにより、例えば画像を見ることができる方向等を高精度に制御することが可能となる。この結果、全周スクリーン等に高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0026】
前記照射対象物は、前記画像光を拡散して出射可能であってもよい。この場合、前記所定の交差角度は、前記照射対象物による前記画像光の拡散角に基づいて設定されてもよい。
これにより、例えば拡散させる画像光の光路等を精度よく制御することが可能となる。この結果、全周スクリーン等に高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本技術によれば、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本技術の第1の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
【
図2】透過型ホログラムの構成例を示す模式図である。
【
図3】
図2に示す透過型ホログラムの回折効率を示すグラフである。
【
図4】反射ミラーの具体的な構成例を示す模式図である。
【
図5】
図4に示す反射ミラーの設計パラメータを示す表である。
【
図6】
図5に示す設計パラメータでの画像光の光路を示す模式図である。
【
図7】反射ミラーの他の構成例を示す模式図である。
【
図8】
図7に示す反射ミラーの設計パラメータを示す表である。
【
図9】
図8に示す設計パラメータでの画像光の光路を示す模式図である。
【
図10】画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図11】画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図12】画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図13】画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図14】画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
【
図15】第2の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
【
図16】屈折面の構成例を説明するための模式図である。
【
図17】屈折部の具体的な構成例を説明するための模式図である。
【
図18】光源から屈折部までの画像光の光路の他の例を説明するための模式図である。
【
図19】屈折部から出射される画像光の光路の他の例を説明するための模式図である。
【
図20】プリズムを用いた画像シフトの他の例を示す模式図である。
【
図21】画像表示装置の他の構成例を示す模式図である。
【
図22】他の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
【
図23】他の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
【
図24】透過型ホログラムの特性を説明するための模式図である。
【
図25】画像表示装置の形態の一例を示す模式図である。
【
図26】比較例としてあげる画像表示装置の構成例を示す模式図である。
【
図27】ホログラムスクリーンの回折特性の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本技術に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0030】
<第1の実施形態>
[画像表示装置の構成]
図1は、本技術の第1の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
図1Aは、画像表示装置100の外観を示す斜視図である。
図1Bは、画像表示装置100の構成を模式的に示す断面図である。
【0031】
本実施形態では、画像表示装置100が配置される面(XZ平面)の方向を水平方向、それに垂直な方向(Y方向)を上下方向として説明を行う。もちろん画像表示装置100が配置される向きにかかわらず、本技術は適用可能である。
【0032】
画像表示装置100は、台座10と、出射部20と、スクリーン30と、反射ミラー40とを有する。
【0033】
台座10は、円筒形状であり画像表示装置100の下方の部分に設けられる。台座10は、図示しない任意の保持機構により、出射部20、スクリーン30、及び反射ミラー40を保持する。また台座10には、図示しないバッテリー等の電源供給源やスピーカ、その他画像表示装置100の動作に必要な素子等が適宜設けられる。台座10の形状等は限定されず、例えば直方体等の任意の形状が用いられてよい。
【0034】
出射部20は、円筒形状の台座10の略中心の位置に、上方に向けて設置される。出射部20は、上下方向(Y方向)に延在する光軸1に沿って、画像を構成する画像光21を出射する。本実施形態では、光軸1は、所定の軸に相当する。
【0035】
図1Bには、光軸1を含む任意の面方向で切断した画像表示装置100の断面が図示されている。出射部20は、光軸1に沿って画像光21を放射状に出射する。従って
図1Bに示すように、光軸1を含む任意の面においては、出射部20からは所定の画角で画像光21が出射される。
図1Bでは、出射角度が小さく光軸1に近い内側の光路22aと、出射角度が大きく光軸1から離れた外側の光路22bとが模式的に図示されている。ここで出射角度とは、例えば光軸1と画像光21の各画素に対応する光の光路とがなす角度である。
【0036】
出射部20としては、例えばRGBの各色に対応したレーザ光をスキャンして各画素を表示するレーザ走査方式のカラープロジェクタ等が用いられる。出射部20の具体的な構成は限定されず、例えば小型のモバイルプロジェクタ(ピコプロジェクタ)や単色のレーザ光を用いたプロジェクタ等が、画像表示装置100のサイズや用途等に応じて適宜用いられてよい。この他、画像光を投射可能な任意のプロジェクタが用いられてよい。
【0037】
例えば出射部20として、レーザダイオード(LD:Laser Diode)、LED(Light Emitting Diode)等を用いた発光素子と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、DMD(Digital Mirror Device)、反射型液晶、透過型液晶等を用いた光変調素子を有する投射装置(プロジェクタ)が適宜用いられてよい。すなわち、LD+MEMS、LD+DMD、LD+反射型液晶、LD+透過型液晶、LED+MEMS、LED+DMD、LED+反射型液晶、LED+透過型液晶といった構成を有する投射装置等が用いられてよい。もちろん、他の構成を有する投射装置が用いられる場合にも、本技術は適用可能である。
【0038】
スクリーン30は、円筒形状であり光軸1の周囲の全周にわたって配置される。本実施形態では、スクリーン30(円筒形状)の中心軸と出射部20の光軸1とが略一致するようにスクリーン30が設けられる。
図1Aに示す例では、台座10と同様の直径を有するスクリーン30が示されている。これに限定されず、スクリーン30の直径や高さ等は適宜設定されてよい。本実施形態では、スクリーン30は、照射対象物に相当する。
【0039】
スクリーン30は、光軸1の周囲の全周にわたって配置される透過型ホログラムである。透過型ホログラムは、例えば拡散板による拡散光の干渉縞が記録されており、入射した画像光21を拡散する拡散機能を有する。これに限定されず、例えば拡散機能を持たない透過型ホログラムの外側(光軸1とは反対側)に画像光を拡散する光拡散層等が積層されてもよい。本実施形態において、スクリーン30は、ホログラムスクリーンとして機能する。
【0040】
透過型ホログラムの内側から入射した画像光21は、透過型ホログラムにより様々な方向に拡散(散乱)されて外側に向けて出射される。
図1Bに示す例では、透過型ホログラム(スクリーン30)に入射した画像光21が拡散(散乱)されて外側に向けて出射される様子が模式的に表現されている。
【0041】
スクリーン30の具体的な構成は限定されず、例えば微粒子等の散乱体やマイクロレンズ等を使って光を拡散するスクリーン等が適宜用いられてよい。この他、画像光21を拡散可能な任意のフィルムや膜等が透過型のスクリーンとして用いられてよい。
【0042】
図2は、透過型ホログラム31の構成例を示す模式図である。
図3は、
図2に示す透過型ホログラム31の回折効率を示すグラフである。
図2では、透過型ホログラム31に入射する再生照明光2と、透過型ホログラム31から出射する再生光3とが模式的に図示されている。なお
図2では、再生照明光2が透過型ホログラム31に対して垂直に入射する場合の入射角度(θ=0度)を基準として、左上方から入射される再生照明光2の入射角度を+θ、左下方から入射される再生照明光2の入射角度を-θとする。
【0043】
透過型ホログラム31は、再生照明光2が入射される第1の面32と、再生光3が出射される第2の面33とを有する。第1の面32は
図1Bにおけるスクリーン30の内側の面に相当し、第2の面33はスクリーン30の外側の面に相当する。透過型ホログラム31は、例えば所定の波長で感光する感光材料等で構成される。透過型ホログラム31の材質等は限定されず、例えば任意の感光材料等が用いられてよい。この他、透過型ホログラム31として機能する任意のホログラフィック光学素子(HOE:Holographic Optical Element)が適宜用いられてよい。
【0044】
例えばホログラムとして、フォトポリマー(感光材料等)やUV硬化樹脂等の材料を用いることが可能である。これらの材料に干渉縞を適宜記憶することで、所望とする光学的な機能を持ったホログラムを構成することが可能である。また干渉縞を記憶する方式としては、例えば材料内部の屈折率変化で干渉縞を作る体積型ホログラムや、材料表面の凹凸形状で干渉縞を作るレリーフ型ホログラム等が用いられる。例えば、上記した感光材料を露光して干渉縞を記録する方法は、体積型の透過型ホログラム31を構成する方法の一例である。
【0045】
また
図1に示すスクリーン30(ホログラムスクリーン)は、例えばホログラムフィルムを用いて構成される。ホログラムフィルムとは、薄いフィルム状の材料であり、例えばフォトポリマーが塗布されたベースフィルムにより構成される。ホログラムフィルムへの干渉縞の露光は、例えばガラス等の平坦度の高い基板に貼り付けて実行される。干渉縞が記録されたホログラムフィルムを基板から剥がし、透明な円筒型の基材(透明円筒基材)に貼合することで、円筒型のスクリーン30が構成される。なお
図1及び
図2では、透明円筒基材の図示が省略されている。
【0046】
ホログラムフィルム(透過型ホログラム31)は、例えば円筒基材の内側または外側に貼合される。すなわち、再生照明光2が入射する側にホログラムフィルムが配置され、再生光3が出射する側に透明円筒基材が配置される。あるいは、再生照明光2が入射する側に透明円筒基材が配置され再生光3が出射する側にホログラムフィルムが配置される。これにより、透過型ホログラム31を用いた円筒型のスクリーン30を容易に構成することが可能である。
【0047】
また例えば、透明円筒基材に対してフォトポリマー等が直接塗布されてもよい。この場合、透明円筒基材の内側または外側には、フォトポリマーによるホログラム層が形成される。すなわち、再生照明光2が入射する側にホログラム層が形成され、再生光3が出射する側に透明円筒基材が配置される。あるいは、再生照明光2が入射する側に透明円筒基材が配置され再生光3が出射する側にホログラム層が形成される。このような構成が採用されてもよい。
【0048】
例えばフォトポリマーを透明円筒基材に塗布した状態で、フォトポリマーに干渉縞を露光することが可能である。これにより、ベースフィルムが不要となり部品点数を抑制可能である。また貼合プロセスが不要となるため、製造工程を簡略化することが可能となり、スクリーン30の製造コスト等を抑制することが可能となる。この他、ホログラムの種類やスクリーン30を構成する方法等は限定されない。以下では、体積型の透過型ホログラム31を例に説明を行う。もちろん、他のタイプのホログラム等が用いられる場合にも、本技術は適用可能である。
【0049】
図2に示す透過型ホログラム31は、露光波長が約530nmの物体光及び参照光により露光される。物体光は入射角度θが約0度の方向から第1の面32に入射され、参照光は入射角度θが約40度の方向から第1の面32に入射される。これにより、感光材料には物体光及び参照光による干渉縞が記録され、透過型のホログラムが生成される。
【0050】
図3には、再生照明光の入射角度と回折効率との関係が示されている。グラフの横軸は再生照明光の入射角度θである。またグラフの縦軸は、各入射角度θでの回折効率(%)である。回折効率は、例えば再生光3の光強度と再生照明光2の光強度との比(再生光強度/再生照明光強度)に基づいて算出される。なお
図3に示すグラフでは、青色光2B(波長455nm)、緑色光2G(波長530nm)、及び赤色光2R(波長630nm)の各色光を再生照明光2とした場合の各回折効率が、実線、点線、及び一点鎖線でそれぞれ示されている。
【0051】
例えば、透過型ホログラム31の露光に用いられた波長と同様の波長を有する緑色光2Gを再生照明光2とした場合、入射角度40度で回折効率が最大となる。すなわち透過型ホログラム31では、第1の面32に入射角度40度で緑色光2G(再生照明光2)が入射された場合、第2の面33から垂直に出射される緑色光2G(再生光3)の強度(輝度)が最大となる。
【0052】
また露光に用いられた入射角度に近い角度では、赤色光2Rが入射された場合の回折効率のピーク(θ=約45度)、及び青色光2Bが入射された場合の回折効率のピーク(θ=約37度)が生じる。従って例えば、入射角度θが40度付近となるように、再生照明光2を入射することで、各色光の輝度を増大することが可能となる。
【0053】
このように、透過型ホログラム31を露光する際の参照光の入射角度θに応じて、再生照明光2(画像光)を一定の入射角度θで入射することで、透過型ホログラム31を使って明るい画像等を表示することが可能となる。なお透過型ホログラム31を露光する際の参照光及び物体光の入射角度等は上記した例に限定されず、画像表示装置100の用途や透過型ホログラムの特性等に応じて適宜設定されてよい。
【0054】
一方で入射角度θが負の値である場合、青色光2B、緑色光2G、及び赤色光2Rでの回折効率は共に低い値となる。すなわち入射角度θが負の値となるような再生照明光2(
図2において左下方から入射する再生照明光2)に対しては、波長に係りなく透過型ホログラム31は透明となる。
【0055】
透過型ホログラム31では、干渉縞は入射角度依存性のあるミラーと考えることが可能である。すなわち干渉縞により回折されない光に対して、その入射の向きに関係なく干渉縞は透明となる。従って、
図2において左下方から入射する再生照明光2とは逆向きに、右上方から第2の面33に入射される外光に対しても、透過型ホログラム31は透明になる。
【0056】
例えば、右上方に蛍光灯等の室内照明が配置された場合、
図2に示すように透過型ホログラム31の第2の面33には、照明の光4が入射されることが考えられる。例えば再生照明光2の入射角度θにおける-80度~-20度程度の範囲で、照明の光4が右上方から斜めに入射した場合、照明の光4に含まれるRGBの各色光は干渉縞による回折の影響をほとんど受けない。従って透過型ホログラム31は照明の光4に対して略透明となる。
【0057】
反射ミラー40は、出射部20により出射された画像光21を反射する反射面41を有する。反射ミラー40は、反射面41が出射部20に向くように、光軸1を基準として出射部20に対向して配置される。
【0058】
本実施形態では反射面41は、光軸1を基準とした回転対称な形状を有する。具体的には、反射面41は、放物線の一部を切り出した曲線を光軸1を基準として回転した回転面5を含む。回転面5は、放物線の凹状である側(放物線の焦点側)が光を反射する側(反射面41)となるように、また放物線の軸と光軸1とが異なるように構成される。
【0059】
図1Bに示すように、本実施形態では、反射面41は光軸1上に頂点を有する形状である。すなわち反射面41は、回転面5と光軸1とが交わる点が出射部20から見て凸状となっている。また反射ミラー40の断面形状において、光軸1を挟んで左側及び右側の曲線は、出射部20から見て凹状となる放物線の形状となっている。
【0060】
反射ミラー40の具体的な構成等は限定されない。例えば、反射ミラー40を構成する材料として、アクリル等の樹脂、ガラス、金属等の任意の材料が用いられてよい。例えばこれらの材料に対して、表面粗さRa<0.1μm程度となるような鏡面加工を材料表面に施すことにより反射ミラー40が構成される。この他、例えば加工精度や生産性等に応じて任意の材料が反射ミラー40に用いられてよい。
【0061】
また例えば反射ミラー40の反射面41には、アルミや銀等の薄膜を用いた高反射率コーティング等が施されてもよい。これにより反射面41に入射した画像光21を高い効率で反射することが可能となる。また反射面41の表面には、SiO2膜や重合膜等の薄膜を用いた反射面41を保護する保護コーティング等が適宜施されてよい。この他、高反射コーティング及び保護コーティング等の材質等は限定されない。
【0062】
出射部20から上方に向けて放射状に出射された画像光21は、反射ミラー40の反射面41により、スクリーン30の全周に向けて放射状に反射される。上記したように反射面41は、放物線形状の回転面5を有する。従って
図1Bに示すように、当該回転面5により反射された画像光21は、スクリーン30に対する入射角度θが略一定となる。
【0063】
ここで入射角度θとは、スクリーン30上の画像光21の入射ポイントにおける法線方向(
図1B中の矢印6)に対する、画像光21の入射方向(例えば光路22a及び22bの各々の方向)の角度である。光軸1を含む断面上では、光軸1を挟んで左側及び右側の反射面41にて反射された画像光21は、略平行な光としてスクリーン30に向けて出射される。
【0064】
本実施形態において反射ミラー40は、出射部20により出射された画像光21のスクリーン30に対する入射角度を制御する光学部として機能する。具体的には、反射ミラー40により、画像光21のスクリーン30に対する入射角度が略一定に制御される。
【0065】
なお本開示において、略一定の入射角度θには、画像表示を適正に実行することが可能となる角度範囲(許容角度範囲)内の入射角度θが含まれる。この許容角度範囲は、例えばホログラムスクリーン(スクリーン30)の回折特性に応じて設定さる。
【0066】
図27は、ホログラムスクリーンの回折特性の一例を示すグラフである。
図27には、RGBの各色光についての回折効率を示す模式的なグラフがそれぞれ図示されている。このホログラムスクリーンでは、各色光の回折効率のピーク位置は互いにずれており、波長の短い順、すなわち青色光2B(実線)、緑色光2G(点線)、赤色光2R(一点鎖線)の順にピークをとる角度が大きくなる。なお各色光のグラフが重なっている範囲では、RGBの3色の色光がそれぞれの回折効率で回折されることになる。
【0067】
許容角度範囲7は、例えばRGB全ての色光に対して、ホログラムスクリーンでの回折効率が所定の値以上となる角度範囲に設定される。例えば
図27には、回折効率が50%を越える許容角度範囲7(θ
1≦θ≦θ
2)が矢印を用いて図示されている。ここでθ
1及びθ
2は、各色光のグラフが重なっている範囲において、赤色光2R及び青色光2Bの回折効率が50%となる角度である。
図27に示すように、θ
1≦θ≦θ
2の範囲では、RGB全ての色光の回折効率が、50%以上となる。
【0068】
また許容角度範囲7は、θ
2-θ
1=2dとすると、θ
1及びθ
2の中間値θ
0を用いてθ
0±dと表すことが可能である。例えば
図4に示す回折特性を持ったホログラムスクリーン(透過型ホログラム31)では、RGB全ての色光の回折効率が50%以上となる許容角度範囲7は、47°±4°となる。従ってこの許容角度範囲7でホログラムスクリーンに入射した画像光21は、50%以上が回折されることになり、適正な画像表示を行うことが可能となる。この場合、略一定の入射角度θは、入射角度θ=47°±4°を含み、略平行な光は、入射角度θ=47°±4°で入射する光を含む。
【0069】
なおホログラムスクリーンの回折特性は、画像表示装置100の用途等に応じて適宜設計可能である。例えば、RGBの各色光の回折効率のピーク位置や、各色光の回折効率の角度分布の幅等の各種のパラメータが調整されたホログラムを設計することが可能である。このような設計に合わせて、所望の表示性能等が発揮されるように、許容角度範囲7が適宜設定されてよい。
【0070】
許容角度範囲7を設定する方法等は限定されない。上記では50%の回折効率を基準としたが、例えば40%や30%等の回折効率を基準として許容角度範囲7が設定されてもよい。また例えば中間値θ
0を基準として、中間値θ
0の±5%の角度範囲や、±10%の角度範囲といった許容角度範囲7が適宜設定されてよい。また中間値θ
0に代えて、
図3等を参照して説明したホログラム露光時の参照光の入射角度θ等を基準として、許容角度範囲7が設定されてもよい。
【0071】
このように、反射ミラー40は、スクリーン30の回折特性に応じた許容角度範囲7に収まるように、画像光21の入射角度θを制御する。すなわち、スクリーン30に入射する画像光21は、例えば50%の出力(回折効率)が確保できる範囲に収まるように入射角度θが制御されることになる。また別の観点では、スクリーン30の回折特性に合わせて、入射角度θの制御精度(略平行な光の平行レベル等)が決定されるとも言える。
【0072】
図4は、反射ミラー40の具体的な構成例を示す模式図である。
図4には、光軸1を含む任意の面方向で切断した反射ミラー40(反射面41)及びスクリーン30の断面形状が模式的に図示されている。また
図4では、反射面41の断面形状に含まれる曲線42を構成する放物線43が、点線で模式的に図示されている。例えば放物線43の向き、位置、及び形状(例えば放物線の開き具合や焦点距離等)等に基づいて、反射面41の形状等を適宜設定することが可能である。
【0073】
放物線43の向きは、例えば放物線の軸44(放物線の対称軸)の向きで表すことが可能である。
図4に示す反射ミラー40では、光軸1と放物線の軸44とが平行となるように反射面41が構成される。従って反射面41の断面を構成する放物線43は、Y軸方向に平行な対称軸を有し上に凸な形状となり、放物線43の向き(頂点45の向き)は上向きとなる。
【0074】
放物線43の位置は、例えば放物線の頂点45の位置で表すことが可能である。
図4では、放物線の頂点45が、円筒形状のスクリーン30の上端が含まれる面(以下基準面34と記載する)上の、光軸1の位置からシフトした位置に配置されている。すなわち、放物線43の頂点45は、スクリーン30の断面形状における左右の上端を結ぶ線上に配置される。これに限定されず、放物線の頂点45の位置は適宜設定することが可能である。
【0075】
放物線43の形状は、焦点距離f等に基づいて定められる。一般に焦点距離fが大きいと放物線43の開きは大きくなり、焦点距離fが小さいと放物線43の開きは小さくなる。
図4では、画像光21の光源23(出射部20)からスクリーン30の上端(基準面34)までの距離と、放物線43の焦点距離fとが等しくなるように設定される。これに限定されず、放物線43の形状(焦点距離f)等は適宜設定されてよい。
【0076】
なお、光源23の位置は、例えば出射部20により出射される画像光21が点光源から出射されていると仮定した場合の、点光源の位置に対応する。従って例えば、出射部20から放射状に出射される光線(画像光21)は、光源23を起点に出射される光線と見做すことが可能である。例えば出射部20の構成等に合わせて、光源23の配置や放物線43の形状等を適宜設定することが可能である。
【0077】
例えば放物線43と光軸1とが交わる点P1及び放物線43とスクリーン30とが交わる点P2の間の曲線42を、光軸1を基準に回転させることで反射面41が構成される。なお反射面41の直径等は限定されない。例えば反射面41の直径が、円筒スクリーンの半径rよりも小さくなるように、放物線43の曲線42の長さ等が適宜設定されてもよい。
【0078】
図4に示すように、光源23から内側の光路22aに沿って出射された画像光21aは、反射面41により反射され入射角度θ1でスクリーン30に入射する。また外側の光路22bに沿って出射された画像光21bは、反射面41により反射され入射角度θ2でスクリーン30に入射する。上記したように、内側及び外側の光路22a及び22bに沿って出射された画像光21a及び21bの各々の入射角度は略一定(θ1≒θ2)となる。すなわち光軸1を含む断面上では、画像光21a及び21bは互いに略平行となる。
【0079】
同様に内側及び外側の光路22a及び22bの間の他の光路を通る画像光21も、反射ミラー40により反射され略一定の入射角度でスクリーン30に入射する。スクリーン30及び反射ミラー40は光軸1に対して回転対称な形状を有する。このため、例えば光軸1を含む他の断面に沿って出射された画像光21も
図4に示す画像光と同様の略一定の入射角度でスクリーン30に入射する。この結果、スクリーン30に入射される画像光の入射角度は、スクリーン30の上下の位置や方位によらず略一定となる。
【0080】
略一定の入射角度でスクリーン30に入射された画像光21は、透過型ホログラムを透過し、スクリーン30の外側に拡散して出射される。これによりスクリーン30の外側に、全周画像等の画像を表示することが可能である。
【0081】
図4では、スクリーン30の断面における画像の表示範囲35が太線で示されている。例えば、内側及び外側の光路22a及び22bを通る画像光21a及び21bとその間の他の光路を通る画像光21とにより、画像が表示されるとする。この場合、
図4に示すように内側の光路22aを通る画像光21aは画像の下端を表示し、外側の光路22bを通る画像光21bは画像の上端を表示することになる。すなわち画像光21a及び21bの入射ポイントの間隔が、画像サイズ(画像の上下方向の幅)となる。
【0082】
画像サイズは、例えば内側及び外側の光路22a及び22bの間の角度と画像光21の入射角度とにより定められる。また画像の表示位置は、例えばスクリーン30の半径rにより定められる。
図4では、画像サイズ及び画像の中心位置が矢印を用いて模式的に示されている。
【0083】
図5は、
図4に示す反射ミラー40の設計パラメータを示す表である。
図6は、
図5に示す設計パラメータでの画像光の光路を示す模式図である。
図5では、反射ミラーの設計パラメータA1~A3が示されている。
図6A~
図6Cは、設計パラメータA1~A3での画像光の光路及び反射面41(放物線43)を示す模式図である。
図6A~
図6Cでは、説明を簡単にするため、スクリーン30の右半分での画像光の光路が図示されている。
【0084】
設計パラメータA1、A2、及びA3では、画像光の入射角度が約70度、約60度、及び約50度となるように、放物線43の頂点45の位置がそれぞれ設定される。なお設計パラメータA1~A3では、スクリーン30の半径r及び高さhは50mm及び150mmに設定され、放物線43の焦点距離fは170mmに設定されている。なお光源23の位置や画像光の出射角度(画角)は一定である。
【0085】
図5では、光軸1と基準面34とが交わる位置(原点O)を基準とした場合の放物線43の頂点45の位置が記載されている。これは頂点45が原点Oにある状態からの左右方向(X方向)及び上下方向(Y方向)への頂点のシフト量と見做すことができる。
【0086】
設計パラメータA1では、放物線43の頂点OのX方向のシフト量ΔXは60mmであり、Y方向のシフト量ΔYは0.15mmである。このように構成された放物線43を用いることで、画像光の入射角度は約70度に設定される。
図6Aに示すように、入射角度を約70度とすることで、スクリーン30の下端近くまで画像を表示することが可能となる。設計パラメータA1での画像の高さ(上下方向のサイズ)及び表示位置は、130.7mm及び-74.3mmである。
【0087】
設計パラメータA2では、頂点45のX方向のシフト量ΔXは90mmであり、Y方向のシフト量ΔYは2.35mmである。
図6Bに示すように、入射角度を約60度とすることで、例えば設計パラメータA1を用いた場合と比べ小さい画像を表示することが可能となる。設計パラメータA2での画像の高さ(上下方向のサイズ)及び表示位置は、89.3mm及び-48.4mmである。
【0088】
設計パラメータA2では、頂点45のX方向のシフト量ΔXは122mmであり、Y方向のシフト量ΔYは7.21mmである。
図6Cに示すように、入射角度を約50度とすることで、例えばスクリーン30の上側にだけ画像を表示するといったことが可能となる。設計パラメータA3での画像の高さ(上下方向のサイズ)及び表示位置は、68.8mm及び-37.6mmである。
【0089】
このように、光軸1に対して平行な対称軸を有する放物線43の頂点45をシフトすることで、入射角度の値を容易に制御することが可能となる。頂点45のシフト量等の各設計パラメータは限定されない。例えば所望の画像サイズや画像位置等に応じて頂点45のシフト量等が適宜設定されてよい。
【0090】
図7は、反射ミラー40の他の構成例を示す模式図である。
図7には、光軸1を含む任意の面方向で切断した反射ミラー50(反射面51)及びスクリーン30の断面形状が模式的に図示されている。また
図7では、反射面51の断面形状に含まれる曲線52を構成する放物線53が、点線で模式的に図示されている。
図7に示す反射ミラー50では、放物線53の軸54の向き及び放物線53の頂点55の位置が、
図4に示す反射ミラー40とは異なる。
【0091】
反射ミラー50の反射面51では、曲線52を構成する放物線53として、断面の法線方向を回転軸方向として回転された放物線53が用いられる。具体的には、頂点55が上を向いている放物線53が、放物線の軸54が光軸1と一致している状態から、頂点55を基準として回転角度Φだけ回転される。従って、光軸1と放物線53の軸54とが回転角度Φで交わることになる。本実施形態では、回転角度Φは、所定の角度に相当する。
【0092】
放物線53の頂点55の上下方向の位置(Y座標)はスクリーン30の基準面34に合わせて設定される。
図7に示す例では、頂点55を挟んで放物線53の右側の曲線52がスクリーン30の右側の上端36と交わるように、放物線53の頂点55の位置が設定される。なお頂点55は光軸1上に配置されるため、左右方向の位置(X座標)は変更されない。
【0093】
放物線53と頂点55及び放物線53とスクリーン30とが交わる点P3(スクリーン30の右側の上端36)の間の曲線52を、光軸1を基準に回転させることで反射面41(回転面)が構成される。曲線52の長さ等は限定されない。
【0094】
図7に示すように、光源23から内側及び外側の光路22a及び22bに沿って画像光21a及び21bが出射され、反射ミラー50の反射面51に入射する。反射面51に入射した各画像光は、断面内において互いに略平行となるようにスクリーン30に向けて反射される。従って画像光21a及び21bのスクリーン30に対する入射角度θ1及びθ2は略一定(θ1≒θ2)となる。同様に内側及び外側の光路22a及び22bの間の他の光路を通る画像光21も、反射ミラー50により反射され略一定の入射角度でスクリーン30に入射する。これによりスクリーン30の外側には全周画像等が表示される。
【0095】
このように、反射面51を構成する放物線53の軸が光軸1に対して回転(傾斜)している場合であっても、スクリーン30に対する画像光21の入射角度が略一定になるように画像光21を反射することが可能となる。
【0096】
図8は、
図7に示す反射ミラー50の設計パラメータを示す表である。
図9は、
図8に示す設計パラメータでの画像光の光路を示す模式図である。
図8では、反射ミラーの設計パラメータB1~B3が示されている。
図9A~
図9Cは、設計パラメータB1~B3での画像光の光路及び反射面51(放物線53)を示す模式図である。
【0097】
設計パラメータB1、B2、及びB3では、画像光の入射角度が約70度、約60度、及び約50度となるように、放物線53の回転角度Φ及び頂点55の光軸1上での位置(Y方向のシフト量ΔY)がそれぞれ設定される。なお
図8では、原点O(光軸1と基準面34とが交わる位置)を基準とした頂点55のY座標が記載されている。
【0098】
また設計パラメータB1~B3では、スクリーン30の半径r及び高さhは50mm及び150mmに設定され、放物線53の焦点距離fは170mmに設定されている。なお光源23の位置や画像光の出射角度(画角)は一定である。
【0099】
設計パラメータB1では、放物線53の回転角度Φは10度であり、頂点55のY方向のシフト量ΔYは-5.08mmである。このように構成された放物線53を用いることで、画像光の入射角度は約70度に設定される。設計パラメータB1での画像の高さ及び表示位置は、130.7mm及び-71.0mmである。
【0100】
設計パラメータB2では、放物線53の回転角度Φは15度であり、頂点55のY方向のシフト量ΔYは-9.59mmである。このように構成された放物線53を用いることで、画像光の入射角度は約60度に設定される。設計パラメータB2での画像の高さ及び表示位置は、88.3mm及び-47.9mmである。
【0101】
設計パラメータB3では、放物線53の回転角度Φは20度であり、頂点55のY方向のシフト量ΔYは-14.29mmである。このように構成された放物線53を用いることで、画像光の入射角度は約50度に設定される。設計パラメータB1での画像の高さ及び表示位置は、67.8mm及び-36.7mmである。
【0102】
このように、光軸1に対する放物線53の傾斜角度(回転角度Φ)を変更することで、画像光21の入射角度の値を容易に制御することが可能となる。なお、放物線53の回転角度ΦやY方向のシフト量ΔY等は限定されず、所望の画像サイズや画像位置等に応じて適宜設定されてよい。
【0103】
また放物線53の頂点55が光軸1上に設けられる場合に限定されず、頂点55が左右方向(X方向)にシフトされてもよい。すなわち、放物線53の軸54をシフトさせる軸シフトと、放物線53の軸54を回転させる軸回転とが併用されてもよい。この場合でも、スクリーン30に対する画像光21の入射角度を略一定に制御する反射面51を構成することが可能である。軸シフト及び軸回転を合わせて使用することで、例えば所望の機能を持つ反射ミラー50をスクリーン30の形状等に合わせて設計するといったことが可能となる。
【0104】
画像表示装置100の構成では、
図6及び
図9等に示すように入射角度を大きくすることで、画像光21はスクリーン30に対して広角に照射されることになる。この結果、画像光21の照射領域を広くすることが可能となる。この結果、例えばスクリーン30の上端から下端までの全域に画像を表示することが可能となり、全周スクリーンの特性を十分に発揮することが可能となる。
【0105】
図10は、画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
図10Aは、画像表示装置200の外観を示す斜視図である。
図10Bは、画像表示装置200の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置200は、台座210、出射部220、スクリーン230、及び反射ミラー240を有する。画像表示装置200では、反射ミラー240が装置の下方に配置される。
【0106】
台座210は、円筒形状であり画像表示装置200の下方に配置される。出射部220は、円筒形状の台座210の略中心の位置の上方に下向きに配置される。出射部220は、例えば画像表示装置200の上部(天面250)に接続される冶具(図示省略)等により台座210から離れた位置に保持される。スクリーン230は、円筒形状であり出射部220の光軸1を基準として台座210の上方に配置される。反射ミラー240は、反射面241が出射部220に向くように、光軸1を基準にして台座210に配置される。
【0107】
反射面241は、放物線の一部を切り出した曲線を光軸1を基準として回転した回転面を含む。例えば
図10Bでは、光軸1を挟んで右側の反射面241の断面形状を構成する曲線は、頂点が下向きの放物線の一部を切り出して構成される。切り出された放物線の一部(曲線)を光軸1を基準に回転した回転面が反射面241となる。
【0108】
図10Bに示すように画像表示装置200では、出射部220から反射ミラー240に向けて下方向に画像光21が出射される。出射された画像光21は反射面241により上方に向けて反射され、略一定の入射角度でスクリーン230に入射される。スクリーン230に入射した画像光21は外側に向けて透過散乱され、スクリーン230の外側には全周画像等が表示される。
【0109】
このように、上方に配置された出射部220から、下方に配置された反射ミラー240に向けて画像光21を出射する場合でも、画像光21の入射角度を制御して全周画像等を表示することが可能である。
【0110】
図11は、画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
図11Aは、画像表示装置300の外観を示す斜視図である。
図11Bは、画像表示装置300の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置300は、出射部320、スクリーン330、及び反射ミラー340を有する。出射部320及びスクリーン330は、
図1に示す出射部20及びスクリーン30と同様の構成を有する。
【0111】
反射ミラー340は、反射面341が出射部320に向くように、光軸1を基準として出射部320に対向して配置される。反射面341は、放物線343の一部を切り出した曲線342を光軸1を基準として回転した回転面を含む。
図11Bに示す例では、反射面341は、中心(光軸1との交点)がくぼんだ形状である。すなわち反射面341は、回転面と光軸1とが交わる点が出射部320から見て凹状となっている。
【0112】
図11Bに示す例では、反射面341の断面形状を構成する曲線342として、頂点345が上を向いている放物線343が用いられる。上向きの放物線343は、当該放物線343の軸344と光軸1とが一致した状態から、断面の法線方向を回転軸方向として頂点345を基準に回転される。このとき頂点345から見て下方向に移動した線分(放物線343)が、反射面341を構成する曲線342として用いられる。
図11Bでは、頂点345からスクリーン330までの線分(曲線342)を、光軸1を基準として回転することで、反射面341が構成される。
【0113】
断面内で回転された放物線343を用いる場合に限定されず、他の方法で反射面341を構成する曲線342を設定することも可能である。例えば光軸1に対して軸がシフトしている上向きの放物線343が用いられてもよい。この場合、放物線343と光軸1との交点を基準として下方に位置する線分が、反射面341を構成する曲線342として用いられる。また例えば断面内で回転された放物線343の頂点345をシフトすることで、反射面341を構成する曲線342が設定されてもよい。
【0114】
図11Bに示すように、例えば出射部320から光軸1を挟んで右上方に出射された画像光21は、右側の反射面341に入射する。右側の反射面341に入射した画像光21は、左下方に向けて反射され、略一定の入射角度で左側のスクリーン330に入射される。同様に、左側の反射面で反射された画像光21は略一定の入射角度で右側のスクリーン330に入射される。
【0115】
このように、凹型の反射ミラー340が使用される場合でも、放物線343を用いた反射面341を適宜構成することで、スクリーン330に入射する画像光21の入射角度を制御することが可能である。これにより、例えば透過型のスクリーンで反射ミラー340の頂点等の突起が見えてしまうといった事態が回避され、自然な画像表示を実現することが可能となる。
【0116】
図12は、画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
図12Aは、画像表示装置400の外観を示す斜視図である。
図12Bは、画像表示装置400の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置400は、台座410、出射部420、スクリーン430、及び反射ミラー440を有する。
【0117】
台座410は、円筒形状を、中心軸411が内部に位置するように中心軸411と平行な面(切断面450)に沿って切断した形状を有する。例えば中心軸411の上方から台座410を見ると、台座410は、中心(中心軸411の位置)から所定の方向(図中ではx方向)に沿ってシフトした位置にて、シフト方向に直交する直径の延在方向(図中ではz方向)で切断された形状となる。
図12では、円筒形状の切断面450がYZ平面と平行な面となる。
【0118】
出射部420は、台座410内に位置する中心軸411と光軸1とが略一致するように台座410に上向きに配置される。スクリーン430は、円弧状のスクリーンであり、光軸1(中心軸411)を中心として光軸1の周囲に配置され、台座410の上方に接続される。反射ミラー440は、反射面441が出射部420に向くように、光軸1を基準にして出射部420に対向して配置される。
【0119】
反射面441は、放物線の一部を切り出した曲線を光軸1を基準として回転した回転面を、光軸1を含むYZ平面と平行な面に沿って切断した形状を有する。反射面441は、回転面(反射面441)と光軸1とが交わる点が出射部420から見て凸状であり、光軸1上に頂点を有する形状である。例えば
図5及び
図8で説明した回転対称な反射面41及び51を、光軸1を含むYZ平面と平行な面で切断することで、反射面441を構成することが可能である。
【0120】
図12Bには、光軸1を含みYX平面に平行な面方向で切断した画像表示装置400の断面が図示されている。
図12Bに示すように、出射部420から右上方に出射された画像光21は反射面441に入射する。反射面441に入射した画像光21は、右下方に向けて反射され、略一定の入射角度でスクリーン430に入射される。スクリーン430に入射した画像光21は外側に向けて透過散乱され、スクリーン430の外側には画像が表示される。
【0121】
なお、光軸1を挟んで左上方に出射される画像光21は、例えば当該画像光21をさえぎるように構成された遮蔽部等を用いて、円弧状のスクリーン430等に反射しないように適宜調節される。なお画像光21をさえぎる場合に限定されず、例えば投影画像の画像信号を適宜制御して、必要な範囲の画像のみを投影することも可能である。例えば出射部420の画角の半分を使って画像を投影することで不要な画像光による反射等が抑制される。
【0122】
このように、円弧状のスクリーン430に対しても、画像光21の入射角度を制御して画像等を表示することが可能となる。これにより、例えば半円筒状のスクリーン等を壁際に設置するといったことが可能となり、コンパクトな表示スペースで立体的な画像表示等を実現することが可能となる。
【0123】
また円弧状のスクリーン430として、画像光21を反射する反射型スクリーンを用いることも可能である。この場合、画像はスクリーン430の内側(光軸1側)に表示される。例えば
図12Aにおいて、円弧状の曲面(スクリーン430)に対向する平面(切断面450)にガラスやアクリル等の透明部材を用いることで、ユーザは平面(切断面450)側から透明部材を介してスクリーン430の内側に表示された画像を楽しむことが可能となる。もちろんユーザとスクリーン430との間に透明部材等を設けない構成がとられてもよい。
【0124】
図13は、画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
図13Aは、画像表示装置500の外観を示す斜視図である。
図13Bは、画像表示装置500の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置500は、台座510、出射部520、スクリーン530、及び反射ミラー540を有する。
【0125】
台座510は、直方体の形状であり画像表示装置500の下方に配置される。台座510は、上下方向(Y方向)に平行な前面511と、前面と対向する後面512とを有する。
図13では、前面511(後面512)がYZ平面と平行となるようにXYZの各軸が設定されている。出射部520は、台座510の後面512側の略中央に上向きに配置される。スクリーン530は、YZ平面と平行な長方形であり、台座510の前面511の上方に配置される。反射ミラー540は、反射面541が出射部520に向くように、光軸1を基準にして出射部520に対向して配置される。
【0126】
反射面541は、出射部520から所定の角度範囲(画角)で出射された画像光21を、略平行光束にして、スクリーン530に向けて出射(反射)するように構成される。すなわち反射面541において画像光21が入射する入射ポイントからは、略同一な方向に沿って画像光21がスクリーン530に向けて反射される。
【0127】
図13Bに示すように、反射面541としては、光軸1を含みYX平面に平行な面(以下中心面501と記載する)における断面形状が、頂点が上を向いている放物線の一部を切り出した線分を含むように構成される。なお、放物線の軸は、光軸1とは異なるように設定される。
【0128】
中心面501に平行な他の面における反射面541の断面形状は、例えば中心面501における放物線を基準として、中心面501からの距離(奥行)等に応じて適宜設計される。例えば奥行きごと(z方向における位置ごと)に、
図13Bに示す光路22a及び22bと略等しい光路にて画像光21が反射されるように、断面形状が設計される。もちろんこれに限定されず、反射面541を構成可能な任意の方法が用いられてよい。
【0129】
例えば、画像光21を構成する各画素の出射方向を表す各ベクトルについて、各ベクトルの各々を所望の方向に反射する微小な反射面を算出するといった方法が用いられてもよい。この場合、例えばベクトルのZ成分(奥行成分)をゼロにし、X成分及びY成分の比率を略一定にする微小反射面をシミュレーションすることで全体の反射面541を構成することが可能である。
【0130】
図13Bに示すように、出射部520から右上方に出射された画像光21は反射面541に入射する。反射面541に入射した画像光21は、右下方に向けて反射され、略一定の入射角度でスクリーン530に入射される。スクリーン530に入射した画像光21は外側に向けて透過散乱され、スクリーン530の外側には画像が表示される。このように、平面形状のスクリーン530に対しても、反射ミラー540を適宜構成することで、画像光21の入射角度を制御して画像等を表示することが可能である。
【0131】
図14は、画像表示装置の他の構成例を示す概略図である。
図14Aは、画像表示装置600の外観を示す斜視図である。
図14Bは、画像表示装置600の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置600は、台座610、出射部620、スクリーン630、コリメート光学系650、及び反射ミラー640を有する。なお台座610、出射部620、及びスクリーン630は、
図13に示す台座510、出射部520、及びスクリーン530とそれぞれ同様の構成を有する。
【0132】
コリメート光学系650は、出射部620の光軸1を基準として、出射部620から出射される画像光21の光路上に配置される。コリメート光学系650は、出射部620により所定の角度範囲(画角)で出射された画像光21をコリメートし、略平行光として反射ミラー640に出射する。コリメート光学系650の具体的な構成等は限定されず、例えばコリメートレンズ等が適宜用いられる。
【0133】
反射ミラー640は、反射面641がコリメート光学系650に向くように、光軸1を基準にして画像表示装置600の上方に配置される。反射面641は、長方形の平面形状を有する。反射面641は、水平方向に平行な状態から、Z方向を軸として反射面641がスクリーン630に向くように所定の傾斜角度だけ傾けて配置される。
【0134】
図14Bに示すように、出射部620から右上方に出射された画像光21は、コリメート光学系650に入射される。コリメート光学系650に入射された画像光21は、略平行光として反射面641に向けて出射される。略平行光である画像光21は、平面状の反射面641により反射され、平行状態を維持したままスクリーン630に入射される。従って、スクリーン630には入射角度が略一定な画像光21が入射される。
【0135】
このようにコリメート光学系650と平面状の反射ミラー640を併用することで、画像光21のスクリーン630に対する入射角度を略一定に制御することが可能である。
図14に示す例では、コリメート光学系650と反射ミラー640とが共動することで、出射部により出射された画像光の照射対象物に対する入射角度を制御する光学部として機能する。
【0136】
以上、本実施形態に係る画像表示装置100~600では、出射部から光軸1に沿って出射された画像光21が、出射部に対向して配置された反射ミラーに入射する。反射ミラーにより、出射部から出射された画像光21のスクリーンに対する入射角度が制御される。入射角度が制御された画像光21は、所定の軸の周囲の少なくとも一部に配置されたスクリーンに照射される。これにより、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0137】
プロジェクタ等の光軸の周囲に配置されるスクリーン(例えば円筒形状の全周スクリーン)に対して画像光を入射する方法として、プロジェクタから出射された画像光を凸面状の回転体反射ミラーに反射させてスクリーンに入射する方法が考えられる。凸面状の反射面により反射された画像光は、反射面を基準に放射状に反射される。このため、スクリーンには入射角度の異なる画像光が入射することになる。
【0138】
例えばスクリーンとしてホログラムスクリーン等が用いられる場合、ホログラムスクリーンの入射角度選択性により、入射角度の異なる画像光では回折される画像光の強度等がばらつき、輝度や色にムラのある画像が表示される可能性がある。これらの画像ムラを、信号処理により補正する場合には、補正量が大きくなり画像全体の輝度が大きく低下する、あるいは補正できないといった問題が生じる可能性がある。
【0139】
また画像ムラを補正する方法として、ホログラムスクリーンを露光する際に、参照光の照射角度を位置ごとに変更して向きの異なる干渉縞(マルチスラント)を構成する手法が考えられる。このようなマルチスラントなホログラムスクリーンでは、プロジェクタ等とスクリーンとの角度のずれが画像の品質に大きくかかわるため、アライメントが難しくなる場合があり得る。また参照光の照射角度を変更するための大きな光学系や光パワー密度の高い光源等が必要となり製造コストが増大する可能性がある。
【0140】
本実施形態に係る画像表示装置100~500では、光軸1を含む面における断面形状が出射部から見て凹状となる放物線の形状を含むように反射ミラーの反射面が構成される。反射面の断面を構成する放物線の軸は、光軸1と異なるように設定される。これにより、光軸1の周囲に配置されたスクリーンに対して、スクリーン面内のどの位置においても画像光21の入射角度が略一定となるに画像光21を入射することが可能となる。また画像表示装置600のように、コリメータ光学系を用いることでも、同様の効果を発揮することが可能となる。
【0141】
画像光21の入射角度が略一定に制御されるため、例えばホログラムスクリーンの入射角度選択性による画像ムラ等を十分に抑制することが可能となる。この結果、例えばホログラムスクリーンを用いた全周スクリーン等に、高品質な全周画像を表示することが可能となる。また画像信号等を補正する必要がなくなるため、プロジェクタ等の本来の照射強度で画像を投射することが可能となる。これにより明るい画像を表示することが可能となる。
【0142】
またホログラムスクリーンを露光する際に、参照光の照射角度を一定にして干渉縞を構成することが可能である。このようなモノスラントなホログラムスクリーンでは、参照光の照射角度と同じ入射角度で画像光21を入射することで、高い回折効率を実現することが可能である(
図3参照)。例えば、反射面により制御される画像光21の入射角度に合わせて、参照光の照射角度が設定されたモノスラントな透過型ホログラムスクリーンを用いることで、非常に高輝度な透明ディスプレイ等を実現することが可能となる。
【0143】
モノスラントなホログラムスクリーンは、マルチスラントなホログラムスクリーンと比べ、製造工程を簡易化することが可能であり、生産コスト等を抑えることが可能である。またモノスラントを使用する場合、干渉縞は一定の方向を向いているため、画像光に対するスクリーンの位置合わせ等が容易である。従って、モノスラントなホログラムスクリーンを用いることで、メンテナンス等が容易な画像表示装置を安価に提供することが可能となる。またアライメントが容易であることから、製品の精度に対する組立バラツキ等の影響を十分に小さくすることが可能となる。これにより精度の高い製品を提供することが可能となる。
【0144】
図1及び
図11~
図14で説明したように、本実施形態では、上方に配置された反射ミラーにより下方に向けて反射された画像光21がスクリーンに入射する。従って画像光21の入射角度に合わせて透過型ホログラムスクリーン等を構成した場合、スクリーンの表示面に入射される外光等はスクリーンをそのまま透過することになる(
図2参照)。
【0145】
これにより、例えばスクリーンの表示面に照明等の明かりが映り込むといった現象を十分に抑制することが可能となる。この結果、外光等によるスクリーンに表示される画像への影響を低減することが可能となり、十分に高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0146】
<第2の実施形態>
本技術に係る第2の実施形態の情報処理装置について説明する。これ以降の説明では、上記の実施形態で説明した画像表示装置における構成及び作用と同様な部分については、その説明を省略又は簡略化する。
【0147】
図15は、第2の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
図15Aは、画像表示装置700の構成を模式的に示す断面図である。
図15Bは、画像表示装置700を上から見た場合の構成を模式的に示す平面図である。
【0148】
画像表示装置700は、台座710と、出射部720と、スクリーン730と、透明部材760と、屈折部770とを有する。台座710は、円筒形状であり画像表示装置700の下方の部分に設けられる。
【0149】
出射部720は、円筒形状の台座710の略中心の位置に上方に向けて設置される。
図15Aでは、出射部720の上方に設けられた出射口(光源723)から光軸1に沿って画像光721が出射される様子が模式的に図示されている。また
図15Bでは、光源723(光軸1)を中心に放射状に出射される画像光721が模式的に図示されている。以下では、説明を簡単にするため画像光721の出射位置を光源723を用いて表す場合がある。
【0150】
スクリーン730は、円筒形状であり、光軸1の周囲の全周にわたって配置される透過型ホログラムと、その外側(光軸1とは反対側)に積層された光拡散層とを有する。スクリーン730は光軸1を基準として台座710の上方に配置される。
【0151】
透明部材760は、円筒形状であり、スクリーン730の光拡散層と接するようにスクリーン730の外側に設けられる。透明部材760は、スクリーン730を保持する保持機構として機能する。透明部材760の具体的な構成は限定されず、例えば光を透過可能なアクリル等で構成される。
【0152】
屈折部770は、回転対称な形状を有し、中心軸(対称軸)が光軸1と一致するように、出射部720に対向して出射部720(光源723)から出射された画像光721の光路上に配置される。屈折部770は、出射部720により出射された画像光721を屈折させる1以上の屈折面771を有する。
【0153】
1以上の屈折面771は、出射部720により出射された画像光721のスクリーン730に対する入射角度が略一定となるように、入射する画像光721を屈折させる。屈折面771の数や形状等は限定されず、例えば単一の屈折面771により画像光721が屈折されてもよい。また各々が画像光721を屈折する2以上の屈折面771により画像光721が屈折されてもよい。本実施形態では、屈折部770は、光学部に相当する。
【0154】
図16は、屈折面771の構成例を説明するための模式図である。
図16Aは、光軸1を含む面における光軸1を挟んで右側の屈折面771の断面形状を示す模式図である。
図16Bは、斜め方向から見た屈折面771の模式図である。
図16では、単一の屈折面771について説明する。
【0155】
屈折面771は、例えば所定の屈折率を有する水晶やガラス等の光学材料の表面に形成される。一般に屈折面771に入射した光は、屈折面771に対する入射角度及び光学材料の屈折率等に応じた一定の出射角度で出射される。例えば、光源723から出射された画像光721の光路ごとに、屈折面771を適宜構成することで、屈折面771への画像光721の入射角度を制御することが可能である。従って画像光721の光路ごとに屈折面771からの出射角度、すなわち屈折後の光路の向きを制御することが可能となる。
【0156】
図16Aには、光軸1を含む面(切断面)に沿って光軸1を挟んで右上方に出射された画像光721の光路(内側及び外側の光路722a及び722b)が図示されている。例えば内側の光路722aを通る画像光721aは、屈折面771により屈折され、所定の方向に沿って出射される。また外側の光路722bを通る画像光721bは、屈折面771により屈折され、内側の光路722aを通る画像光721aが屈折された方向と略同様の方向に沿って出射される。従って、外側及び内側の光路722a及び722bを通る画像光721a及び721bは、屈折面771により屈折され略平行光として出射される。同様に外側及び内側の光路722a及び722bの間の他の光路を通る画像光721も、屈折面771から略平行光として出射される。
【0157】
このように、光軸1を挟んで右上方に出射された画像光721は、右側の屈折面771により屈折され、略平行光として図示しない右側のスクリーン730に入射される。従って、右側のスクリーン730に対する画像光721の入射角度は略一定となる。
【0158】
屈折面771は、
図16Aに示す断面形状(右側の屈折面771)を、光軸1を基準として回転した回転面705を含むように構成される。
図16Bには、光軸1を中心とした回転面705を含む屈折面771が模式的に図示されている。光源723から放射状に出射された画像光721は、
図16Bに示す屈折面771により屈折され、略一定の入射角度でスクリーン730に入射される。スクリーン730に入射された画像光721は、外側に向けて透過散乱され、スクリーン730の外側には全集画像等が表示される。
【0159】
なお、複数の屈折面771が設けられる場合には、画像光は複数の屈折面771を介して屈折され、スクリーン730に向けて出射される。この場合、屈折部770から出射される画像光721が略平行光となるように、すなわちスクリーン730への入射角度が略一定となるように、複数の屈折面771が適宜構成される。
【0160】
図17は、屈折部770の具体的な構成例を説明するための模式図である。
【0161】
図17Aでは、屈折部770として非球面状の屈折面771を有する非球面レンズ772が用いられる。非球面レンズ772は、画像光721が入射する第1の面773と、その反対側の第2の面774とを有する。
図17Aでは、第2の面774が非球面状の屈折面771となるように非球面レンズが772構成される。
【0162】
非球面状の屈折面771は、例えば当該屈折面771から出射される画像光721のスクリーン730に対する入射角度が略一定になるように、非球面係数や円錐定数等が調節されて構成される。
【0163】
図17Aに示すように、光源723から出射された画像光721は、第1の面773により屈折され、レンズ内部を通って第2の面774に入射される。第2の面774に入射した画像光721は、第2の面774(非球面上の屈折面771)により屈折され略平行光として出射される。
図17Aに示す非球面レンズ772(屈折部770)では、第1の面773及び第2の面774が1以上の屈折面771として機能する。
【0164】
このように、屈折部770として非球面状の屈折面771を有する非球面レンズ772を用いることで、スクリーン730に対する画像光721の入射角度を高精度に制御することが可能となる。なお、非球面状の屈折面771に代えて、球面状の屈折面771を有する球面レンズが屈折部770として用いられてもよい。これにより屈折部770の製造コスト等を抑えることが可能である。
【0165】
図17Bでは、屈折部770としてフレネル面775を有するフレネルレンズ776が用いられる。フレネル面775は、屈折面771として機能し、例えばフレネル面775から出射される画像光721のスクリーン730に対する入射角度が略一定になるように構成される。フレネルレンズ776を用いることで、例えば屈折部770の厚みを薄くすることが可能となる。これにより、装置サイズをコンパクトにすることが可能となる。
【0166】
図17Cでは、屈折部770として所定の屈折率分布を有する光学素子777が用いられる。光学素子777は、光軸1を中心軸とした円筒形状であり、画像光721が入射する第1の面778及び第1の面778とは反対側の第2の面779とを有する。光学素子777では、例えば光軸1に近い中心部分から光軸1から離れた周縁部分にかけて屈折率が段階的に高くなるように屈折率が調節される。従って光学素子777は、中心(光軸1)から外側にかけて屈折率が増加する同心円状の屈折率分布を有することになる。
【0167】
屈折率分布は、例えば第2の面779から出射される画像光721のスクリーン730に対する入射角度が略一定となるように構成される。
図17Cに示すように、光源723から出射された画像光721は、第1の面778及び第2の面779により屈折され、略平行光として光学素子777から出射される。従って
図17Cでは、第1の面778及び第2の面779が、1以上の屈折面771として機能する。
【0168】
光学素子777としては、例えば液晶材料を電気的に配向させて屈折率を制御する液晶レンズ等が用いられる。これにより、屈折部770の厚みを薄くすることが可能となる。光学素子777の具体的な構成は限定されず、例えば所望の屈折率分布を構成可能な任意の素子等が光学素子777として適宜用いられてよい。
【0169】
なお、屈折部770を構成するために用いられるレンズや素子等の数は限定されない。例えば
図17A~
図17Cで説明した非球面レンズ772、フレネルレンズ776、及び光学素子777等を適宜組み合わせることで、屈折部770が構成されてもよい。この他、任意の素子が屈折部770に用いられてよい。
【0170】
図18は、光源723から屈折部770までの画像光721の光路の他の例を説明するための模式図である。
図18の右側には、凹レンズ780が配置された場合の光軸1を含む面に沿った画像光721の光路が模式的に図示されている。また
図18の左側には、凹レンズ780を用いない場合の画像光721の光路が示されている。なお
図18では、屈折部770として非球面レンズが図示されている。これに限定されず、屈折部770は他の構成であってもよい。
【0171】
凹レンズ780は、光源723と屈折部770との間に、凹レンズ780の中心軸が光軸1と一致するように配置される。凹レンズ780は、光源723(出射部720)から出射された画像光721を拡大して屈折部770に出射する。凹レンズ780の具体的な構成は限定されず、例えば屈折部770の直径等に応じて画像光を拡大可能なように、凹レンズ780の拡大率等が適宜設定されてよい。本実施形態では、凹レンズ780は、拡大部に相当する。
【0172】
屈折部770は、屈折部770から出射される画像光721のスクリーン730に対する入射角度が略一定になるように構成される。屈折部770では、凹レンズ780が設置される位置(Y座標)や凹レンズ780の拡大率等に応じて、屈折面771等が適宜設定される。
【0173】
図18の右側に示すように、例えば光軸1に近い内側の光路722aに沿って光源723から出射された画像光721aは、凹レンズ780の中央付近に入射され、ほとんど屈折されずに凹レンズを透過する。また光軸1から離れた外側の光路722bに沿って出射された画像光721bは、凹レンズ780の外周付近に入射され、光軸1から離れる向きに屈折される。
【0174】
従って凹レンズ780から出射される画像光721a及び721bの各出射方向がなす角度781は、光源723から出射される際の画像光721a及び721bの各出射方向がなす角度724よりも大きくなる。すなわち、凹レンズ780での屈折により画像光721の画角が拡大すされる。拡大された画像光721は、屈折部770により屈折され略平行光としてスクリーン730に向けて出射される。
【0175】
このように、凹レンズ780を用いることで、例えば凹レンズ780を用いない場合(
図18の左側)に比べ、画像光721が照射される照射面積が所望の面積(例えば屈折面等の面積)に広がるまでに必要な投射距離を短くすることが可能となる。この結果、光源723と屈折部770との間の距離を短くすることが可能となり、装置サイズをコンパクトにすることが可能となる。
図18では、凹レンズ780を用いることで短縮された距離775が矢印を使って模式的に示されている。
【0176】
なお、光源723から出射された画像光721を拡大するための構成は、
図18で説明した例に限定されない。例えば、凹レンズに加えて凸レンズや他のレンズ等を組み合わせることで画像光721が拡大されてもよい。この他、画像光721を拡大可能な任意の光学系等が適宜用いられてよい。
【0177】
図19は、屈折部770から出射される画像光721の光路の他の例を説明するための模式図である。
図19では、屈折部770から出射される画像光721の光路を変更するプリズム部790が設けられる。
【0178】
図19Aでは、プリズム部790として互いに平行な屈折面を有するプリズム791(以下平行プリズム791と記載する)が用いられる。平行プリズム791は、円筒形状であり、画像光721が入射する第3の面792と、第3の面792と反対側の第4の面793とを有する。平行プリズム791は、円筒形状の中心軸が光軸1と一致するように、屈折部770を挟んで光源723(出射部720)とは反対側に配置される。
【0179】
図19Aに示すように、光軸1を含む面に沿って光源723から出射された画像光721は、屈折部770により屈折され、略平行光として出射される。略平行光である画像光721は、平行プリズム791に対して一定の角度で入射され、第3の面792で屈折される。第3の面792で屈折された画像光721は第3の面792と平行な第4の面793により再び屈折され、平行プリズム791に入射したときと同様の角度で出射される。
【0180】
従って、屈折部770から出射された略平行な画像光721の光路782は、平行プリズム791での屈折によりシフトされることになる。光路782のシフト量等は、例えば平行プリズム791の屈折率及び厚みや画像光721が平行プリズム791に入射する際の角度等に応じて定まる。なお
図19Aには、平行プリズム791が設けられない場合の画像光の光路が点線で図示されている。
【0181】
この結果、スクリーン730に入射される画像光721の入射ポイント、すなわち画像の表示領域の位置が変更される。
図19Aに示す例では、画像光721の光路782が内側(光軸1の位置する側)にシフトされ、画像の表示領域は上方向にシフトされる。なお、画像光721のスクリーン730に対する入射角度は変更されないため、画像のサイズ等は維持される。
【0182】
このように、互いに平行な屈折面771を有する平行プリズム791を用いることで、画像のサイズや画質等を変更することなく、画像の表示位置を容易にシフトさせることが可能である。なお平行プリズム791の断面において、互いに平行な屈折面(例えば第3及び第4の面792及び793)が、光軸1と所定の角度で交わるように、平行プリズム791が構成されてもよい。すなわち互いに平行な屈折面が光軸1に対して傾いている場合でも、本技術は適用可能である。
【0183】
図19Bでは、プリズム部790として凸状の屈折面を有するプリズム(以下凸型プリズム794と記載する)が用いられる。凸型プリズム794は、頂点が下向きに構成された円錐状の屈折面(第5の面795)と、頂点が上向きに構成された円錐状の屈折面(第6の面796)とを有する。第5及び第6の面795及び796は、互いに同様の直径の底面を有し、各々の底面で接続される。凸型プリズム794は、第5及び第6の面795及び796の各々の頂点が光軸1と交わるように、第5の面795を屈折部770に向けて配置される。
【0184】
図19Bに示すように、屈折部770から光軸1から離れる向き(図中では右上方)に出射された略平行な画像光721は、凸型プリズム794に入射される。略平行な画像光721は、凸型プリズム794の第5及び第6の面795及び796により屈折され、光軸1に近づく向き(図中では左上方)に向けて略平行光として出射される。
【0185】
このように、屈折部770から出射された画像光721の光路(出射方向)を、凸型プリズム794を用いて光軸1を挟んで反対側に向くように変更することが可能となる。従って画像光721は光軸1を挟んで反対側のスクリーン730に入射することになり、画像の表示領域を上方向に大幅にシフトすることが可能となる。
【0186】
図19Cでは、プリズム部790として、凹状の面を有するプリズム797(以下凹型プリズム797と記載する)が用いられる。凹型プリズム797は、屈折部770に向けて配置された第7の面798と、その反対側の第8の面799とを有する。第7の面798は、屈折部770から見て凹状となる円錐状の凹面であり、円錐の中心軸が光軸1と一致するように配置される。第8の面は、光軸1と垂直な平面である。
【0187】
図19Cに示す例では、第7の面798は、屈折部770から出射される略平行な画像光721が略垂直に入射するように構成される。従って第7の面798では画像光721の屈折はほとんど生じない。
【0188】
図19Cに示すように、屈折部770から出射された略平行な画像光721は、凹型プリズム797の第7の面798に略垂直に入射される。第7の面798に入射された画像光721は、ほとんど屈折されずに第8の面799に入射する。第8の面799に入射した画像光721は、当該第8の面799に入射したときよりも光軸1から離れるように外側に向けて屈折される。
【0189】
このように、凹型プリズム797を用いることで、屈折部770から出射された画像光721のスクリーン730に対する入射角度を変更することが可能である。
図19Cに示す例では、スクリーン730に対する入射角度が小さく(深く)なるように画像光721の光路が変更される。従って、画像光721はスクリーン730の低い位置に向けて出射されることになり、画像の表示領域を下方向にシフトすることが可能となる。
【0190】
また画像光721は略平行光の状態で、スクリーン730に対する入射角度が変更される。このため、スクリーン730での入射ポイントの間隔が小さくなり、表示される画像の上下方向(Y方向)のサイズを縮小し、明るい画像を表示することが可能となる。
【0191】
図19A~
図19Cで説明した例に限定されず、プリズム部790を構成するプリズムの形状等は適宜設定されてよい。例えば、所望の画像シフト等を実現するように、屈折部770から出射される画像光721の光路を変更可能なプリズムが適宜用いられてよい。
【0192】
図20は、プリズムを用いた画像シフトの他の例を示す模式図である。
図20では、プリズム部790を光軸1に沿って上下に移動するアクチュエータ783が模式的に図示されている。アクチュエータ783は、例えば図示しない保持機構等により台座710に保持される。アクチュエータ783の具体的な構成は限定されず、例えばステッピングモータ等を使ったリニアステージ等の任意の移動機構や、ギア機構等を使った任意の回転機構等が用いられてよい。
【0193】
アクチュエータ783を使ってプリズム部790の位置を上下にシフトすることで、画像光721の光路を上下にシフトさせることが可能である。従って、画像光721のスクリーン730に対する入射角度を略一定に保ったまま、画像光721のスクリーン730への入射ポイントをシフトすることが可能となる。これにより画像のサイズ等を変更することなく、画像の表示位置を上下に調節することが可能となる。
【0194】
図21は、画像表示装置の他の構成例を示す模式図である。画像表示装置800は、光源ユニット810と、スクリーンユニット820とを有する。光源ユニット810は、光源723(出射部720)と、屈折部770とを含んで構成され、画像光721を出射可能なように構成される。スクリーンユニット820は、全体として円筒形状を有し、プリズム部790とスクリーン730とを含んで構成される。
【0195】
画像表示装置800は、スクリーンユニット820を光源ユニット810の上部にはめ込んで使用される。例えばスクリーン730の上下方向の幅や、スクリーン730に用いられる透過型ホログラムの特性等が異なる複数のスクリーンユニット820が構成される。ユーザは、複数のスクリーンユニット820から所望のスクリーンユニット820を選択して光源ユニット810に装着することで、所望の位置、サイズ、及び画質で全周画像等を楽しむことが可能である。
【0196】
スクリーンユニット820を用いて、画像表示装置のスクリーン730部分をアタッチメント化することで、様々なバリエーションで全周画像等を表示させることが可能となる。また光源723と屈折部770とを1つのユニット内に保持することで、画像光721の光路に関するアライメントを簡略化することが可能となる。
【0197】
このように、本実施形態に係る画像表示装置700及び800では、出射部720(光源723)により出射された画像光721を屈折される1以上の屈折面771を有する屈折部770が用いられる。屈折部770を設けることで、画像光721のスクリーン730に対する入射角度を容易に制御することが可能となる。
【0198】
例えばスクリーン730に用いられる透過型ホログラムに対して、画像光721を一定の入射角度で入射することが可能である。この結果、画像の表示領域内での色ムラや輝度差が軽減され、全周スクリーン等に対して高品質な画像表示を実現することが可能となる。また透過型ホログラムの干渉縞の方向等に合わせて入射角度を設定することで、画像光721の回折効率が向上され、明るい画像を表示することが可能となる。これによりレーザ光源等に対する負荷が軽減され、低消費電力な画像表示装置を実現することが可能となる。
【0199】
画像表示装置700及び800では、装置下部に出射部720及び屈折部770等が設けられる。このため、円筒状のスクリーン730の透明感を損なうことなく全周画像等を表示することが可能である。また用いられる部材の点数が少ないため、装置をシンプルに構成することが可能である。これにより、例えば組み立て工程等が簡略化され製造コストを抑えることが可能となる。
【0200】
<その他の実施形態>
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0201】
図22は、他の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。
図22Aは、画像表示装置900の外観を示す斜視図である。
図22Bは、画像表示装置900の構成を模式的に示す断面図である。画像表示装置900は、台座910、出射部920、広角レンズ950、スクリーン930、及び反射ミラー940を有する。なお台座910、出射部920、及びスクリーン930は、例えば
図1に示す台座10、出射部20、及びスクリーン30とそれぞれ同様の構成を有する。
【0202】
広角レンズ950は、出射部920の上部に出射部920の光軸1を基準として、出射部920から出射される画像光21の光路上に配置される。広角レンズ950は、出射部920により所定の角度範囲(画角)で出射された画像光21の画角を拡大する。従って、広角レンズ950を用いることで、反射ミラー940に照射される画像光21の照射面積が拡大する。
【0203】
広角レンズ950としては、ワイドコンバータレンズ(ワイコン)等の画角を拡大するコンバージョンレンズ等が用いられる。これに限定されず、画像光21の画角を拡大することが可能な任意の光学レンズ等が広角レンズ950として用いられてよい。
【0204】
反射ミラー940は、反射面941が広角レンズ950(出射部920)に向くように、光軸1を基準として広角レンズ950に対向して配置される。反射面941は、広角レンズ950により拡大された画像光21がスクリーン930に対して略一定の入射角度θで入射するように、画像光21を反射する。
【0205】
反射面941は、例えば
図4及び7を参照して説明した方法により設計される。なお画像光21の出射の起点となる光源の位置は、広角レンズ950のパラメータ(拡大倍率、焦点距離、設置位置等)に応じた位置となる。反射面941は、これら広角レンズ950のパラメータに基づいて、入射角度θが略一定となるように適宜設計される。
【0206】
図22Bには、広角レンズ950により拡大された画角で出射される画像光21の内側の光路22a及び外側の光路22bが模式的に図示されている。例えば外側の光路22bは、広角レンズ950を通過しない場合の光路(図中の点線)と比べ、光軸1から離れる向きに曲げられた光路となり出射角度が大きくなる。従って、外側の光路22bを通過した画像光21は、広角レンズ950を通過しない場合よりも反射面941の周縁側(スクリーン930側)に入射することになる。
【0207】
反射面941の周縁側に入射した画像光21は、反射面941により反射されて入射角度θでスクリーン930に入射する。例えば入射角度θが同様である場合、反射面941の周縁側で反射された画像光21は、内側で反射された画像光21よりも、スクリーン930の上端に近い位置に入射する。従って、外側の光路22bを通過した画像光21は、広角レンズ950を通過しない場合と比べ、スクリーン930の上端側に入射する。これにより、スクリーン930に投影される画像の上下方向のサイズを拡大することが可能となる。
【0208】
また
図22Bに示すように、外側の光路22bよりも画角の狭い光路(例えば内側の光路22a)を通過した画像光21により、スクリーンの下側に画像が投影される。画像が投影される下端は、例えば広角レンズ950を通過しない場合と同様の位置に設定可能である。従って、広角レンズ950を用いることで、画像が表示されるスクリーン930上の表示領域を、スクリーン930の上端側に拡大することが可能となる。
【0209】
このように、広角レンズ950を用いて、反射ミラー940に照射される画像光21の照射面積(画角)を拡大することで、全周スクリーンの表示領域を拡大することが可能となる。これにより、例えばスクリーン930の上端から下端までを使って全周画像を表示するといったことが可能となり、迫力のある映像体験等を提供することが可能となる。
【0210】
第1の実施形態では、放物線の一部を切り出した曲線を含む断面形状を持った反射面(
図1、
図10~
図13等参照)が用いられた。反射ミラーの反射面の形状は、放物線を基準とする場合に限定されない。例えば、反射面は放物面とは異なる非球面(自由曲面等)として構成されてもよい。
【0211】
例えば、
図1等に示すように、スクリーンの上端に入射する画像光と、下端に入射する画像光とでは、反射面からスクリーンに到達するまでの距離が異なる。すなわち、スクリーンの上端及び下端では、反射面から見たフォーカス位置が違ってくるとも言える。例えば、この距離の違いに伴う画像光の広がり具合等を補正する自由曲面を設計することが可能である。自由曲面は、例えば光路シミュレーション等に基づいて設計される。このような自由曲面を用いることで、スクリーン全面に高精度に画像光を入射することが可能となり、十分に高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0212】
図2を参照して説明したホログラムスクリーン(透過型ホログラム31)では、入射角度θが約0度の方向から物体光(拡散板による拡散光)を入射して干渉縞が露光された。この結果、ホログラムスクリーンから出射される再生光3(画像光21)は、スクリーンの表示面の法線方向に平行な方向に強度ピークを持つ拡散光として出射された。ホログラムスクリーンから出射される再生光3等の出射方向は、法線方向に限定されない。
【0213】
図23は、他の実施形態に係る画像表示装置の構成例を示す概略図である。画像表示装置1000は、台座1010、出射部1020、スクリーン1030、及び反射ミラー1040を有する。なお台座1010、出射部1020、及び反射ミラー1040は、例えば
図1に示す台座10、出射部20、及び反射ミラー40とそれぞれ同様の構成を有する。
【0214】
スクリーン1030は、透過型ホログラムであり、ホログラムスクリーンとして機能する。またスクリーン1030は、反射ミラー1040により制御された入射角度θで入射する画像光21を所定の出射方向に出射する。ここで出射方向とは、例えば画像光21が主に出射される方向である。
【0215】
図23に示す例では、スクリーン1030は、画像光21を拡散して出射可能である。例えばスクリーン1030は、入射した画像光21を回折して拡散光24として出射(拡散透過)するように構成される。この場合、出射方向25は、拡散光24の強度が最大となる方向である。
図23では、光の進行方向を表す5つの矢印により拡散光24が模式的に図示されている。なお各矢印の長さは光の強度に対応している。これら5つの矢印の内、長さが最も長い中央の矢印により表される方向が出射方向25に対応する。
【0216】
スクリーン1030の出射方向25は、スクリーン1030に干渉縞を露光する際に物体光が入射する方向である(
図2参照)。すなわち、物体光が入射する方向を適宜設定することで、出射方向25を所望の方向に設定することが可能である。
【0217】
出射方向25は、スクリーン1030の外側の面1033の法線方向6と所定の交差角度αで交差するように設定される。
図23には、出射方向25と、スクリーン1030の外側の面1033の法線方向6とが点線で模式的に図示されている。以下では、スクリーン1030の外側の面1033を出射面1033と記載する。例えば出射方向25は、出射面1033の法線方向6とは異なる方向を向くように設定される。従って、出射方向25と法線方向6との間の交差角度αは、例えば|α|>0で表される有限の値となる。
【0218】
図23に示す例では、出射方向25は、法線方向6よりも上側に向くように設定される。以下では、法線方向6を基準として出射方向25がスクリーン1030の上側に向く交差角度を+αとし、下側に向く交差角度を-αとする。このように、出射方向25を+αとすることで、例えば画像表示装置1000(スクリーン1030)を斜め上方から視認するユーザ7に向けて画像光21を出射することが可能となる。なお
図23では、ユーザ7の眼が模式的に図示されている。
【0219】
図24は、透過型ホログラムの特性を説明するための模式図である。透過型ホログラム31は、画像光21が入射する第1の面32(画像光21の入射面)と、画像光21が出射する第2の面33(画像光21の出射面)とを有する。
【0220】
図24に示す例では、第1の面32に左上方から入射角度θで入射する画像光21が、透過型ホログラム31により回折される。回折された画像光21は、第2の面33から法線方向6と+αで交差する右上方に向かう出射方向25に出射される。なお
図24では、画像光21が実線の矢印を用いて模式的に図示されている。
【0221】
また透過型ホログラム31では、第2の面33から入射する外光8が、干渉縞により回折される場合がある。例えば
図24に示すように、第2の面33に右下方から入射角度-θで入射する外光8は、透過型ホログラム31による回折を受ける。回折を受けた外光8は、第1の面32から出射角度-αで出射される。なお
図24では、外光8が点線の矢印を用いて模式的に図示されている。
【0222】
このように、画像光21の光路と平行な方向に沿って、画像光21とは反対に第2の面33から入射した外光8は、透過型ホログラム31の回折を受けることになる。そして回折を受けた外光8は、画像光21の出射方向25と平行な方向に沿って、画像光21とは反対に第1の面32から出射される。例えばこのような現象が、画像表示装置1000で生じる場合が考えられる。
【0223】
図23の左側には、スクリーン1030の外側から入射する外光8が模式的に図示されている。
図23に示すように、スクリーン1030の左下方から入射角度-θで入射する外光8は、スクリーン1030による回折を受けて、外光成分9としてスクリーン1030の内側に向けて出射される。ここで外光成分9とは、スクリーン1030により回折されて拡散光となった外光8である。上記したように、画像表示装置1000では、画像光21の出射方向25が上方に向くように設定されている。従って、外光成分9は下方に向けて出射されることになる。
【0224】
また画像表示装置1000では、交差角度αが、スクリーン1030による画像光21の拡散角βに基づいて設定される。拡散角β(散乱角)とは、例えばある点で拡散された光のうち、ピーク強度の50%の強度の光が出射される方向を表す角度である。
【0225】
図23では、拡散光24を表す5つの矢印のうち、出射方向25に向かう中心の矢印と最も外側の矢印との間の角度を拡散角βとする。なお拡散角βを設定する方法等は限定されない。例えばピーク強度の40%や30%、あるいは60%や70%といった50%以外の値を基準として拡散角βが設定されてもよい。この他、拡散光24の広がりを表す任意の角度が拡散角βとして設定されてよい。
【0226】
例えば交差角度αは、α=βとなるように設定される。すなわち、拡散角βと同じだけ、出射方向25が上方に向くようにスクリーン1030が構成される。このように交差角度αを設定することで、外交成分9が拡散光となる場合であっても、そのほとんどが装置下方に向けて出射されることになる。この結果、後側のスクリーン1030から出射された外光成分9により、前側のスクリーン1030に表示される画像の視認性が低下することを十分に回避することが可能となる。
【0227】
図25は、画像表示装置1000の形態の一例を示す模式図である。
図25には、円筒形スクリーン1030a、ブロックスクリーン1030b、平板状スクリーン1030cが模式的に図示されている。例えば交差角度αの透過型ホログラム31を用いることで、ユーザ1が視認する視聴対象面(図中の斜線の領域)からは、斜め上方に向けて画像光21が出射される。
【0228】
また視聴対象面の反対の面では、設置面からの反射光等が入射した場合であっても、外光成分9は斜め下方に出射され、画像の視認性が保たれる。もちろん、ユーザ7が見る位置を変えた場合であっても、同様の効果が得られる。このように、
図23及び
図24を参照して説明した技術は、円筒形スクリーン1030a、ブロックスクリーン1030b、平板状スクリーン1030c等の、各種の形状のスクリーンに対して適用可能である。また反射ミラー1040を用いる場合に限定されず、例えば第2の実施形態で説明した屈折部を用いた構成に、交差角度αの透過型ホログラム31が適用されてもよい。
【0229】
このように、所定の出射方向25が設定されたスクリーン1030を用いることで、ユーザ7に対して、効率よく画像光21を届けることが可能である。この結果、ユーザ7に視認される画像の輝度等が向上し、明るい画像表示を実現することが可能である。
【0230】
図26は、比較例としてあげる画像表示装置1100の構成例を示す模式図である。画像表示装置1100は、スクリーン1130から出射される拡散光24の出射方向25と法線方向6とが平行に設定されている。例えば設置面からの反射光(外光8)等が入射角度-θでスクリーン1130に入射したとする。この場合、ユーザ7が視認しているスクリーン1130の奥のスクリーン1130(図中の左側のスクリーン1130)では、法線方向6に強度ピークを持つ外光成分9が出射される。これらの外光成分9は、例えば右側のスクリーン1130に映る画像に重畳される。この結果、画像表示装置1100では、適正な色や輝度を表示することが難しくなる場合があり得る。
【0231】
これに対し、
図23に示す画像表示装置1000では、ユーザ7が視認する側とは反対側のスクリーン1030で生じる外光8の拡散光(外光成分9)等を、ユーザ7に視認されない方向に逃がすことが可能である。この結果、ユーザ7に視認される画像に対して余分な光が重畳されることが回避され、画像表示のコントラストを向上することが可能となる。また画像光21に外光8が混ざらないため、例えばRGBの発色が鮮明な画像を表示することが可能となる。
【0232】
またユーザ7が視認することが想定される方向に向けて、出射方向25を設定することで、想定される方向に対して強度分布をもつ画像光21を出射することが可能となり、輝度が上昇する。このように、出射方向25を適宜設定することで、裏面スクリーンからの外光成分がユーザ7には届かなくなり視認性を低下させることなく画像表示を行うことが可能である。この結果、十分に高品質な画像表示を実現することが可能でとなる。
【0233】
なお、
図23では、ユーザ7が上方から画像表示装置1000を視認する場合について説明した。これに限定されず、例えばユーザ7が下方から画像表示装置1000を視認する場合には、出射方向25を下方に向けることで、外光成分9の影響等を抑制することが可能である。この他、想定される使用環境等に応じて、画像光21の出射方向が適宜設定されてよい。
【0234】
上記の実施形態では、HOEの一例として、参照光の照射角度を一定にして干渉縞が露光されたモノスラントなホログラムスクリーンについて説明した。これに限定されず、マルチスラントなホログラムスクリーンが用いられる場合にも、本技術は適用可能である。
【0235】
例えば、スクリーンに入射する画像光が、所定の入射角度分布をもつように、反射面(反射ミラー)を構成することが可能である。この場合、例えば画像光の入射角度分布に合わせて干渉縞(グレーティング)が形成されたマルチスラントスクリーンが用いられる。これにより、画像光の入射角度が分布を持つように制御された場合であっても、適正に画像表示を実現することが可能である。
【0236】
例えば、反射面からスクリーンに向けて画像光が広がる(発散する)ように反射面を構成することで、スクリーン上の表示領域を容易に拡大することが可能である。また例えば、反射面からスクリーンに向けて画像光が収束するように反射面を構成することで、スクリーン上の表示輝度を向上することが可能である。このように、反射面による入射角度の制御と、マルチスラントスクリーンとを適宜組み合わせることで、高品質な画像表示を実現することが可能となる。
【0237】
上記の実施形態では、透過型ホログラム等のHOEを用いてスクリーンが構成された。スクリーンの具体的な構成は限定されず、全周画像等を表示可能な任意のスクリーンが用いられてよい。
【0238】
例えばスクリーンの表面に微細なフレネルレンズのパターンを有するフレネルスクリーン等が用いられてもよい。この場合、例えば各フレネルレンズに対する画像光の入射角度を略一定にすることで、スクリーン(フレネルレンズ)から出射される画像光の方向を高い精度で揃えることが可能となる。この結果、輝度ムラ等が十分に抑制され、高品質な画像を表示することが可能となる。
【0239】
また例えば、スクリーンとして光拡散層を有する透明フィルム等が用いられてもよい。この場合でも、光拡散層に対する画像光の入射角度を略一定に制御することで、入射角度の違いに伴う輝度ムラ等が抑制され、均一な明るさの画像を表示することが可能となる。この他、スクリーンに用いられる部材の材質や構造等は限定されず、例えば画像表示装置の用途や使用環境等に応じてスクリーンが適宜構成されてよい。
【0240】
第1の実施形態に係る画像表示装置100~500では、出射部から出射された画像光21が、反射面に直接入射された。例えば、出射部と反射面との間に、画像光21を拡大/縮小するレンズや画像光の光路を変更するプリズム等の光学系が設けられてもよい。
【0241】
例えば、出射部と反射レンズとの間に凹レンズ等を配置し画像光を拡大することで、出射部と反射面との距離を縮めることが可能である。この場合、反射面は凹レンズの位置や拡大率等に応じて適宜構成される。これにより、上下方向の装置サイズを小さくすることが可能となる。
【0242】
この他、レンズやプリズム等を含む任意の光学系と、当該光学系の特性に応じて構成された反射面とが適宜用いられてよい。すなわち、画像光のスクリーンに対する入射角度を制御可能なように、光学系と反射面とを適宜組み合わせることが可能である。この場合、光学系及び反射面が共動することで、本技術に係る光学部の機能が実現される。
【0243】
以上説明した本技術に係る特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。すなわち各実施形態で説明した種々の特徴部分は、各実施形態の区別なく、任意に組み合わされてもよい。また上記で記載した種々の効果は、あくまで例示であって限定されるものではなく、また他の効果が発揮されてもよい。
【0244】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)所定の軸に沿って画像光を出射する出射部と、
前記所定の軸の周囲の少なくとも一部に配置される照射対象物と、
前記所定の軸を基準として前記出射部に対向して配置され、前記出射部により出射された前記画像光の前記照射対象物に対する入射角度を制御する光学部と
を具備する画像表示装置。
(2)(1)に記載の画像表示装置であって、
前記光学部は、前記画像光の前記照射対象物に対する前記入射角度を略一定にする
画像表示装置。
(3)(1)又は(2)に記載の画像表示装置であって、
前記光学部は、前記出射部により出射された前記画像光を、前記照射対象物に反射する反射面を有する
画像表示装置。
(4)(3)に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸を含む面における断面形状が前記出射部から見て凹状となる放物線の形状を含み、前記放物線の軸と前記所定の軸とが互いに異なるように構成される
画像表示装置。
(5)(4)に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが平行である
画像表示装置。
(6)(4)に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸と前記断面形状に含まれる前記放物線の軸とが前記放物線の頂点で所定の角度で交わる
画像表示装置。
(7)(4)から(6)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記所定の軸を基準として前記放物線を回転した回転面を含む
画像表示装置。
(8)(7)に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凸状である
画像表示装置。
(9)(7)又は(8)に記載の画像表示装置であって、
前記反射面は、前記回転面と前記所定の軸とが交わる点が前記出射部から見て凹状である
画像表示装置。
(10)(1)から(9)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記光学部は、前記出射部により出射された画像光を屈折させて前記照射対象物に出射する1以上の屈折面を有する
画像表示装置。
(11)(10)に記載の画像表示装置であって、さらに
前記光学部と前記出射部との間に配置され、前記出射部から出射された画像光を拡大して前記光学部に出射する拡大部を具備する
画像表示装置。
(12)(10)又は(11)に記載の画像表示装置であって、さらに
前記光学部を挟んで前記出射部とは反対側に配置され、前記光学部から出射される画像光の光路を変更するプリズム部を具備する
画像表示装置。
(13)(1)から(12)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記所定の軸の周囲の全周にわたって配置される
画像表示装置。
(14)(1)から(13)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記所定の軸を略中心軸とする円筒形状で構成される
画像表示装置。
(15)(1)から(14)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、ホログラムスクリーンである
画像表示装置。
(16)(1)から(15)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記画像光を透過する透過型スクリーン及び前記画像光を反射する反射型スクリーンのどちらか一方である
画像表示装置。
(17)(1)~(16)のうちいずれか1つに記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記光学部により制御された前記入射角度で入射する前記画像光を所定の出射方向に出射する
画像表示装置。
(18)(17)に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記画像光を出射する出射面を有し、
前記所定の出射方向は、前記出射面の法線方向と所定の交差角度で交差する
画像表示装置。
(19)(18)に記載の画像表示装置であって、
前記照射対象物は、前記画像光を拡散して出射可能であり、
前記所定の交差角度は、前記照射対象物による前記画像光の拡散角に基づいて設定される
画像表示装置。
【符号の説明】
【0245】
1…光軸
5、705…回転面
20、220、320、420、520、620、720、920、1020…出射部
21、721…画像光
30、230、330、430、530、630、730、930、1030…スクリーン
31…透過型ホログラム
40、50、240、340、440、540、640、940、1040…反射ミラー
41、51、241、341、441、541、641、941、1041…反射面
43、53、343…放物線
44、54、344…放物線の軸
770…屈折部
771…屈折面
790…プリズム部
100~800、900、1000…画像表示装置