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特許7196843ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/012 20060101AFI20221220BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/045 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/055 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/145 20060101ALI20221220BHJP
   H01G 9/15 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01G9/012
H01G9/00 290H
H01G9/028 E
H01G9/045
H01G9/048 A
H01G9/055 103
H01G9/145
H01G9/15 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019528858
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017083574
(87)【国際公開番号】W WO2018122044
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2019-07-03
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-27
(31)【優先権主張番号】102016125733.8
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】ウィル, ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ドバイ, ラスズロ
(72)【発明者】
【氏名】ケレペシ, ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】トース, チャバ
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】山田 正文
【審判官】須原 宏光
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-138977(JP,A)
【文献】特開2015-165550(JP,A)
【文献】実開昭52-7050(JP,U)
【文献】特開2007-273912(JP,A)
【文献】特開平10-22177(JP,A)
【文献】特開2001-189242(JP,A)
【文献】特開2008-147541(JP,A)
【文献】特開2001-155966(JP,A)
【文献】特開平6-89833(JP,A)
【文献】特開2005-217008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G9/012
H01G9/45
H01G9/048
H01G9/145
H01G9/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mmを超える直径を有する巻回要素(2)を含むハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)であり、陽極箔(3)と電気的に接触する少なくとも2つのタブ(7)、及び陰極箔(4)と電気的に接触する少なくとも2つのタブ(8)を備えるハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)を製造する方法であって、
前記陽極箔(3)、セパレータ(5)、及び前記陰極箔(4)を軸線の周りに巻いて前記巻回要素(2)を形成するステップと、
前記巻回要素(2)を高分子分散液に浸たすステップであって、前記高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
前記浸たされた巻回要素(2)に、2秒から最大20秒のパルス持続時間を有する過圧のパルスを印加するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記過圧のパルス中に、2~150バールの範囲にある過圧がかけられ、続いて大気圧又は1バール未満の圧力のいずれかがかけられる、
請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ及び本コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサは、導電性高分子粒子の液体電解質及び固体電解質を有する電解コンデンサである。高分子は、陽極箔と、陰極箔と、セパレータと、陽極箔及び陰極箔に電気的に接続するタブと、を覆う。電解コンデンサは、陽極がアルミニウムで作られ、その上に陽極酸化によって絶縁性酸化物層が形成されている分極コンデンサである。酸化物層は、電解コンデンサの誘電体として作用する。非固体電解質又は固体高分子は、酸化物層の表面を覆い、原則としてコンデンサの第2の電極として働く。
【0003】
ハイブリッド高分子コンデンサは、例えば、米国特許第6,307,735B1号及び米国特許第7,497,879B2号に記載されている。高分子層の導電率が高いため、ハイブリッド高分子コンデンサの等価直列抵抗(ESR)は、低く、そのリップル電流定格を従来のアルミニウム電解コンデンサと比較して高くすることができる。
【0004】
これまでのところ、10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有するハイブリッド高分子コンデンサは、入手不可能である。より大きなハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの構築を妨げる主な理由について以下に論じる。
【0005】
10×12mm(直径×高さ)よりも大きなサイズの従来のアルミニウム電解コンデンサの巻回要素の標準設計に高分子材料を適用すると、同じ総静電容量を有するいくつかの小さな巻回要素の並列接続と比較して、ESR及びリプル電流能力に関して性能が低下する。箔が大きすぎると、電流は、箔に沿って長い距離にわたって移動しなければならず、以て、金属抵抗の増加をもたらす。従来の巻回体設計の金属抵抗は、高すぎて、ハイブリッド高分子電解質系の高い導電率を十分に活用することができない。金属抵抗は、ESRの制限部分になる。
【0006】
さらに、巻回要素に高分子分散液を含浸するための現況技術のプロセスは、例えば米国特許第7,497,879B2に記載されている。これらのプロセスは、巻回体の高さに関して技術的な限界を有する。高分子分散液は、紙の濡れ効果と毛細管効果とによって巻回要素に吸い取られる。しかしながら、12mmを超える高さを有する巻回要素については、含浸プロセスを数回繰り返したとしても、この技術でそれらの巻回要素を完全に含浸することは、ほとんど不可能である。
【0007】
非常に信頼性の高いハイブリッド高分子アルミニウムコンデンサを設計する場合に考慮されなければならないさらなる態様は、急速充放電に対する堅牢性である。
【0008】
さらなる設計変更なしに一般に知られている巻回要素の直径を増加させることは、この場合、ESRが、小さな総静電容量を有する2つの小さなコンデンサの並列接続よりも高いため、意味をなさない。
【0009】
さらなるプロセス変更なしに一般に知られている巻回要素の高さを増加させることも、上で論じた現況技術の高分子含浸プロセスの技術的な限界のために意味をなさない。高分子含浸中に、液体は、巻回要素のあらゆる部分に到達し、覆い、浸透しなければならない。米国特許第7,497,879号に記載されるような標準的なプロセスが適用される場合、これは、12mmを超える巻回体の高さに対してはほとんど不可能であり、明らかに非効率である。ハイブリッド高分子コンデンサに使用される高分子分散液は、非常に粘性がある。12mmを超える長さを有する巻回体の含浸は、高分子分散液の高い粘度のために従来の浸漬処理では不可能である。この場合、巻回体内部の高分子分散液の均一性は、十分ではなく、分離の中央部分は、乾燥したままでさえある。その結果、陰極箔と陽極箔との間に不適切な電気的接続が生じる。
【0010】
高分子は、大部分が陽極箔の酸化物と陰極箔の薄い酸化物に接続されている。コンデンサの電圧変化中に、高分子電位は、陰極酸化物が非常に薄いため、主として陰極箔の電位に近い。一方、市場に出ているハイブリッド高分子コンデンサでは、ほんのわずかな高分子領域が陽極箔に接触しているだけである。この領域では、陽極箔の電位のみが支配的である。したがって、補償電流が生成される。電圧変化が速すぎる場合、発生した補償電流によって、高分子が破壊され、短絡が引き起こされる可能性がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、より大きな寸法を有するハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの構築を妨げる先行技術の問題を克服することを目的とする。この問題は、本請求項1によって解決される。
【0012】
本発明は、改善されたコンデンサを提供することを別の目的とする。この目的は、第2の独立請求項によって解決される。
【0013】
本発明は、そのようなコンデンサの構築を可能にする方法を提供することを別の目的とする。この目的は、さらなる独立請求項によって解決される。
【0014】
第1の態様によると、本発明は、10mmを超える直径を有する巻回要素を備えるハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサに関する。巻回要素は、12mmを超える高さを有するのが好ましい。
【0015】
さらに、コンデンサは、陽極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブ、及び陰極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブを備える。陽極箔及び陰極箔のそれぞれに接触するための少なくとも2つのタブの使用は、高分子によって提供することができる低抵抗を十分に活用するのを助けることができる。陽極箔及び陰極箔のそれぞれに接触するために2つ以上タブが使用されるため、電気的な接触抵抗を最小に保つことができる。
【0016】
上で論じたように、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサは、導電性高分子粒子の液体電解質及び固体電解質を有する電解コンデンサである。高分子は、陽極箔と、陰極箔と、セパレータと、陽極箔及び陰極箔に電気的に接続するタブと、を覆う。陽極箔、陰極箔、及びセパレータは、巻回要素を形成するために巻かれている。
【0017】
したがって、巻回要素は、陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて軸線の周りに巻かれた陽極箔及び陰極箔を含み、陽極箔、陰極箔、及びセパレータが導電性高分子で覆われており、コンデンサが液体電解質を含む。
【0018】
陽極箔は、酸化物層がアルミニウム箔の表面に配置されたアルミニウム箔を含むことができる。酸化物層は、表面の酸化によってアルミニウム箔の表面を粗面化した後に生成され得る。酸化物層は、誘電体コーティング膜として作用することができる。さらに、陰極箔も、その表面に酸化物層を含むアルミニウム箔とすることができる。陰極箔上の酸化物層も、表面を酸化させることによって粗面化した後に形成され得る。陰極箔は、陽極箔よりも薄い厚さを有することができる。陰極箔上の酸化物層は、陽極箔上の酸化物層よりも薄くてもよい。
【0019】
セパレータのそれぞれは、紙であってもよい。セパレータは、高分子で含浸されている。セパレータは、液体電解質でさらに含浸されてもよい。特に、巻回要素は、それぞれが高分子で含浸された2つのセパレータを含むことができる。
【0020】
巻回要素は、円筒形を有することができる。巻回要素の高さは、円筒形の高さに対応する。高さは、時々、巻回要素の長さと呼ばれることもある。巻回要素の直径は、円筒形の直径に対応することができる。
【0021】
10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有する巻回要素は、低ESR及び高リプル電流能力という利点を提供する。後で記載されるように、本発明者らは、大きな寸法を有するハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの構築を可能にする方法を見出した。
【0022】
陽極箔、陰極箔、及びセパレータは、導電性高分子で覆われてもよい。さらに、陽極箔及び陰極箔に電気的に接続するタブも、導電性高分子で覆われてもよい。導電性高分子のカバーは、巻回要素に高分子分散液を含浸することによって形成することができる。高分子分散液は、溶媒、及び導電性高分子粒子又は導電性高分子粉末のいずれかを含むことができる。高分子に加えて、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサは、液体電解質を含む。
【0023】
コンデンサは、アキシャルコンデンサであってもよい。アキシャルコンデンサであるハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサは、多数の利点をもたらす。例えば、アキシャルコンデンサに対してはマルチタブ接続が可能である。特に、マルチタブ接続は、非常に広範囲の直径のアキシャルコンデンサに対して可能である。マルチタブ接続とは、少なくとも2つのタブが陽極箔に電位を2箇所で印加することを可能にする陽極箔に接続され、少なくとも2つのタブが陰極箔に電位を2箇所で印加することを可能にする陰極箔に接続されていることを意味する。マルチタブ接続の使用は、電位が箔に1箇所のみで印加される単一タブ接続と比較して、電流が箔に沿って移動しなければならない長さを減少させることが可能になる。以て、陽極箔の抵抗及び陰極箔の抵抗を減少させることができる。
【0024】
さらに、アキシャルコンデンサは、対称な構造を提供する。
【0025】
陽極箔及び陰極箔は、巻回要素内で、陽極箔のあらゆる部分が陰極箔によって覆われるように配置され、寸法決めされ得る。したがって、巻回要素は、陽極箔とのみ隣り合い、陰極箔とは隣り合わない高分子領域を含まないことがある。巻回要素は、高分子領域の電位が陽極箔の電位によって支配される高分子領域を含まなくてもよい。したがって、補償電流の発生を防ぐことができる。コンデンサは、陰極箔が高分子の電位を常に支配するように、高分子領域がすべて陰極箔と隣り合うように巻くことができる。したがって、高分子領域はすべて、同じ電位、すなわち陰極箔の電位を有する。したがって、補償電流は、高分子領域で生じない可能性がある。そのような補償電流の防止は、信頼性及びコンデンサの寿命を伸ばすのに役立つ可能性がある。補償電流は、高分子を破壊し、短絡を引き起こすことがある。したがって、この問題は、補償電流を防止することによって回避され得る。
【0026】
陽極箔及び陰極箔は、巻回要素内で、陽極箔が両側の陰極箔間に完全に包み込まれるように配置され、寸法決めされてもよい。
【0027】
陰極箔は、陽極箔よりも巻回要素の高さ方向により大きな広がりを有することができる。
【0028】
陰極箔の巻き数は、陽極箔の巻き数よりも少なくとも1つだけ大きくてもよい。
【0029】
巻回要素は、らせん構造を有することができる。特に、巻回要素は、その対称軸線に沿って巻回要素を貫いて延在する孔内にもらせん構造を有することができる。孔の表面は、陰極箔によって覆われてもよい。孔の表面は、陽極箔がなくてもよい。
【0030】
陰極箔は、酸化物層が陰極箔上に均一の厚さを有する酸化物層で覆われたアルミニウム箔を含むことができる。陰極箔上の酸化物層の厚さの非対称を回避することによって、コンデンサの充放電中の補償電流も回避することができる。酸化物層の厚さは、酸化物層の最小厚さが10nmよりも薄くない場合、均一であると考えることができる。
【0031】
巻回要素は、缶底部を有する缶の内側に配置することができる。缶は、導電性材料を含むことができる。陰極箔は、陽極箔よりも缶底部に向かって軸線方向により大きな広がりを有することができ、陰極箔は、缶底部と電気的に接触している。
【0032】
この設計は、拡張陰極箔とも呼ばれる。拡張陰極箔は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサにとって特に有利である。固体高分子を含まない電解コンデンサでは、拡張陰極箔は、コンデンサの寿命にわたって拡張陰極箔上で起こる酸化のために問題を生じる。しかしながら、ハイブリッド高分子コンデンサでは、陰極箔は、酸化を防止することができる高分子によって覆われている。したがって、拡張陰極箔の酸化が防止されるため、性能の低下は、生じない。
【0033】
缶底部は、缶底部に対する巻回要素の移動を機械的に妨げる構造体を含むことができる。構造体は、例えば、リブを含むことができる。構造体及び拡張陰極箔は、箔及び構造体が互いに合体するように配置及び成形され得て、以て、缶底部に対する陰極箔の相対移動を防止する。
【0034】
陰極箔も、缶底部に溶接することができる。
【0035】
缶は、巻回要素を固定する波形状部を含むことができる。波形状部は、缶の内部に突き出る部分であってもよい。
【0036】
缶は、カバーを含むことができる。陽極箔は、陰極箔よりもカバーに向かって軸線方向により大きな広がりを有することができ、陽極箔は、カバーと電気的に接続されている。カバーも、缶底部に関して上で論じた構造体と同様の構造体を有してもよい。陽極箔及びカバー上の構造体は、互いに合体するように配置及び構成されてもよい。陽極箔と缶の相対移動は、陽極箔とカバーを合体することよって防止することができる。カバーの構造体は、例えば、リブを含むことができる。陽極箔は、カバーに溶接されてもよい。
【0037】
コンデンサは、陽極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブ、及び陰極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブを備えることができる。この設計は、マルチタブ接続としても知られている。マルチタブ接続は、アキシャルコンデンサにとって特に簡単である。マルチタブ接続は、電位を各箔に複数箇所で印加することができるため、抵抗率の減少という利点を提供することができる。以て、箔の金属抵抗を減少させることができる。
【0038】
巻回要素は、22mm未満の直径を有することができる。巻回要素は、12mm~17mmの範囲にある直径を有するのが好ましい。巻回要素は、40mm未満の高さを有することができる。巻回要素は、15mm~30mmの範囲にある高さを有するのが好ましい。
【0039】
直径に対する巻回要素の高さの比は、2よりも大きくてもよい。この比は、特に好ましくは巻回要素の電気的特性をもたらす。
【0040】
第2の態様によると、本発明は、第1の巻回要素及び第2の巻回要素を備えるハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサに関する。第1の巻回要素は、軸線の周りに巻かれた、導電性高分子によって覆われた陽極と、セパレータと、陰極箔と、を備える。導電性高分子に加えて、第1の巻回要素は、液体電解質を含む。第1の巻回要素は、12mmを超える高さを有する。第2の巻回要素は、軸線の周りに巻かれた、導電性高分子によって覆われた陽極箔と、セパレータと、陰極箔と、を備える。導電性高分子に加えて、第2の巻回要素は、液体電解質を含む。第2の巻回要素は、12mmを超える高さを有する。巻回要素は、共通の缶内に配置されている。各巻回要素は、その陽極箔に接続されたタブと、その陰極箔に接続されたタブと、を含む。巻回要素が互いに電気的に並列に接続されるように、陽極箔に接続されたタブが互いに接続され、陰極箔に接続されたタブが互いに接続されている。コンデンサは、各巻回要素が第1の巻回要素及び第2の巻回要素と同じ方法で設計され、巻回要素がすべて共通の缶内に配置される3つ以上の巻回要素をさらに備えることができる。第1の巻回要素及び第2の巻回要素のそれぞれは、ラジアル巻回要素であってもよい。或は、第1の巻回要素及び第2の巻回要素のそれぞれは、アキシャル巻回要素であってもよい。
【0041】
コンデンサは、共通の缶内に配置された、互いに並列に接続された3つ以上の巻回要素を備えることができる。
【0042】
巻回要素は、12mmよりも大きい高さを有する巻回要素に対してでさえ均一な含浸を可能にする以下に記載された含浸法を用いて製造することができる。
【0043】
別の態様によると、本発明は、第1の態様によるコンデンサを製造する方法に関する。本方法は、
陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を軸線の周りに巻いて巻回要素を形成するステップと、
巻回要素を高分子分散液に浸たす(flooding)ステップであって、高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
前記浸たされた巻回要素に過圧のパルスを印加するステップと、
を含む。
【0044】
過圧のパルスの使用によって、高分子分散液を巻回要素全体にわたって均一に分布させることができる。以前は含浸によって到達することができなかった巻回要素の内部を本方法で含浸することが可能である。
【0045】
過圧パルス中に、2~150バールの範囲の過圧をかけ、続いて大気圧又は1バール未満の圧力をかけることができる。パルスは、好ましくは、複数回印加される。
【0046】
加えて、本方法は、液体電解質を含む缶内に巻回要素を配置するステップを含むことができる。
【0047】
別の態様によると、本発明は、コンデンサを製造する代替の方法に関する。本方法は、
陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を軸線の周りに巻いて巻回要素を形成するステップと、
巻回要素をチューブ内に配置するステップと、
チューブを通して、以て巻回要素を通して高分子分散液を強制的に流すステップであって、高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
を含む。
【0048】
高分子分散液が巻回要素を通って流れるときに、少なくとも1.5バールの過圧がかけられてもよい。また、この貫流法は、大きな寸法の巻回要素が均一に含浸されることを確実にする。過圧をかけることによって貫流法がさらに改善される。
【0049】
加えて、本方法は、液体電解質を含む缶内に巻回要素を配置するステップを含むことができる。
【0050】
以下の本文では、一連の有利な態様が記載される。各態様は、ある態様の特徴を他の態様において参照するのを容易にするために番号付けされている。各態様からの特徴は、それらが関連する特定の態様に関連して関連するだけでなく、それら自体に関連するものでもある。
【0051】
態様1
10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有する巻回要素を備える、
ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0052】
態様2
巻回要素が陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて軸線の周りに巻かれた陽極箔及び陰極箔を含み、
陽極箔、陰極箔、及びセパレータが導電性高分子で覆われており、コンデンサが液体電解質を含む、
態様1に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0053】
態様3
コンデンサがアキシャルコンデンサである、
態様1又は2に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0054】
態様4
陽極箔及び陰極箔が、巻回要素内で、陽極箔のあらゆる部分が陰極箔によって覆われるように配置され、寸法決めされている、
態様1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0055】
態様5
陰極箔が酸化物層で覆われたアルミニウム箔を含み、酸化物層が陰極箔上で均一の厚さを有する、
態様1~4のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0056】
態様6
巻回要素が缶底部を有する缶の内部に配置され、
陰極箔が陽極箔よりも缶底部に向かって軸線方向に大きな広がりを有し、陰極箔が缶底部と電気的に接触している、
態様1~5のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0057】
態様7
缶底部が缶底部に対する巻回要素(2)の動きを機械的に妨げる構造体を備える、
態様1~6のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0058】
態様8
陰極箔が缶底部に溶接されている、
態様6又は7に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0059】
態様9
缶が巻回要素を固定する波形状部を含む、
態様6~8のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0060】
態様10
缶がカバーを含み、
陽極箔が陰極箔よりもカバーに向かって軸線方向に大きな広がりを有し、陽極箔がカバーと電気的に接触している、
態様6~9のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0061】
態様11
陽極箔がカバーに溶接されている、
態様10に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0062】
態様12
コンデンサが陽極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブ、及び陰極箔と電気的に接触する少なくとも2つのタブを有する、
態様1~11のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0063】
態様13
巻回要素が22mm未満の直径を有する、
態様1~12のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0064】
態様14
巻回要素の直径に対する巻回要素の高さの比が2よりも大きい、
態様1~13のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0065】
態様15
軸線の周りに巻かれ、導電性高分子によって覆われた陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を含む第1の巻回要素であって、液体電解質を含む、第1の巻回要素と、軸線の周りに巻かれ、導電性高分子によって覆われた陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を含む第2の巻回要素であって、液体電解を含む、第2の巻回要素と、を備え、
第1の巻回要素及び第2の巻回要素のそれぞれが12mmを超える高さを有し、
巻回要素が共通の缶内に配置され、
各巻回要素がそれぞれの陽極箔に接続されたタブ、及びそれぞれの陰極箔に接続されたタブを備え、
巻回要素が互いに電気的に並列に接続されるように、陽極箔に接続されたタブが互いに接続され、陰極箔に接続されたタブが互いに接続されている、
ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0066】
態様16
第1の巻回要素及び第2の巻回要素のそれぞれがラジアル巻回要素であり、
又は
第1の巻回要素及び第2の巻回要素のそれぞれがアキシャル巻回要素である、
態様15に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ。
【0067】
態様17
態様1~14に記載のコンデンサを製造する方法であって、
陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を軸線の周りに巻いて巻回要素を形成するステップと、
巻回要素を高分子分散液に浸たすステップであって、高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
浸たされた巻回要素に過圧のパルスを印加するステップと、
を含む、方法。
【0068】
態様18
過圧のパルス中に、2~150バールの範囲にある過圧がかけられ、続いて大気圧又は1バール未満の圧力のいずれかがかけられる、
態様17に記載の方法。
【0069】
態様19
態様1~14に記載のコンデンサを製造する方法であって、
陽極箔、セパレータ、及び陰極箔を軸線の周りに巻いて巻回要素を形成するステップと、
巻回要素をチューブ内に配置するステップと、
チューブを通して、以て巻回要素を通して高分子分散液を強制的に流すステップであって、高分子分散液が導電性の固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
を含む、方法。
【0070】
態様20
高分子分散液が巻回要素を通って流れるときに、少なくとも1.5バールの過圧がかけられる、
態様19に記載の方法。
【0071】
以下、本発明が詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1】巻回要素の第1の実施形態である。
図2】様々な種類のコンデンサの斜視図である。
図3】3つの巻回要素を備えるコンデンサである。
図4】一般的な高分子電解コンデンサのX線画像である。
図5】リードタブのないハイブリッドアルミニウム高分子電解コンデンサの概略断面図である。
図6】従来の含浸方法を使用して、巻回要素に施されている高分子分散液の例である。
図7】新しい方法で含浸された巻回要素の詳細な写真である。
図8】コンデンサ素子である。
図9】コンデンサ素子である。
図10】コンデンサ素子である。
図11】コンデンサ素子である。
図12】コンデンサ素子である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ1の巻回要素2の第1の実施形態を示す。巻回要素2は、10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有する。
【0074】
巻回要素2は、共通軸線の周りに巻かれた陽極箔3と、陰極箔4と、セパレータ5と、を備える。セパレータ5は、陽極箔3と陰極箔4との間に配置されている。巻回要素2は、陽極箔3と陰極箔4との間にも配置された、図を簡略化するためには図1には示されていない別のセパレータをさらに備える。特に、陽極箔3、セパレータ5、陰極箔4、及び他のセパレータは、この順番で積み重ねられ、次いで、軸線の周りに巻かれている。
【0075】
巻回要素2は、高分子6で含浸されている。含浸は、陽極箔3、陰極箔4、及びセパレータ5を覆う高分子6を拡大図で示すことによって図1に示されている。陽極箔3、陰極箔4、及びセパレータ5を覆う高分子6は、導電性である。高分子に加えて、コンデンサ1は、液体電解質も含む。
【0076】
陽極箔3は、アルミニウム箔を含む。アルミニウム箔の表面は、エッチングプロセスによって粗面化されている。次いで、誘電体酸化皮膜が酸化処理によって表面に形成されている。したがって、陽極箔3は、その表面に酸化物層を有するアルミニウム箔を含む。陰極箔4も、アルミニウム箔の表面がエッチングプロセスによって粗面化され、次いで、誘電体酸化皮膜が酸化処理によって表面に形成されたアルミニウム箔を含む。したがって、陰極箔4も、その表面に酸化物層を有するアルミニウム箔を含む。
【0077】
陽極箔3及び陰極箔4は、巻かれると、10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有する巻回要素2となるように寸法決めされる。したがって、箔3、4は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサに一般的に使用される箔よりも大きくて幅が広い。
【0078】
セパレータ5のそれぞれは、高分子6で含浸された紙である。
【0079】
巻回要素2が巻かれる共通軸線は、軸線方向を規定する。
【0080】
巻回要素2は、巻回要素2と電気的に接触するために使用されるタブ7、8をさらに備える。巻回要素2は、両方とも陽極箔3に接続された2つのタブ7を備える。陽極箔3に接続されたタブ7は、正の軸線方向に延在している。さらに、巻回要素2は、陰極箔4に接続された2つのタブ8を備える。陰極箔4に接続されたタブ8は、負の軸線方向、すなわち、陽極箔3に接続されたタブ7と反対方向に延在している。
【0081】
陽極箔3に接続されたタブ7と、反対方向に延在する陰極箔4に接続されたタブ8と、を有するコンデンサ1は、アキシャルコンデンサとしても知られている。これとは対照的に、ラジアルコンデンサでは、陽極箔に接続されたタブ及び陰極箔に接続されたタブは、両方とも同じ軸線方向に延在し、すなわち、両方とも正の軸線方向に延在するか、又は両方とも負の軸線方向に延在している。
【0082】
陽極箔3及び陰極箔4のそれぞれを接続するために複数のタブ7、8を使用することによって、長く幅広い箔3、4を使用することが可能になる。複数のタブ7、8を使用することによって、電流を複数の位置で巻回要素2に供給することができるため、巻回要素2の金属抵抗が減少し、したがって、電流が巻回要素2の内部を移動しなければならない長さが減少する。複数のタブ7、8の使用は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサからは知られていない。
【0083】
図2は、様々な種類のコンデンサを斜視図で示す。特に、図2は、それぞれが正の軸線方向に延在する2つのタブ7、及び負の軸線方向に延在する2つのタブ8を有する2つのアキシャルコンデンサ9を示す。正の軸線方向に延在するタブ7は、陽極箔3に接続され、負の軸線方向に延在するタブ8は、陰極箔4に接続されている。左側に示されるアキシャルコンデンサについては、2つのタブ8は、遠近法のために見えない。
【0084】
アキシャルコンデンサ9の巻回要素は、軸線の周りに巻かれている。陽極箔3に接続された2つのタブ7のそれぞれは、この軸線から半径方向に離れて配置されている。軸線に直角な平面内では、2つのタブ7は、軸線に対して点対称に配置されている。陰極箔4に接続された2つのタブ8のそれぞれは、軸線から半径方向に離れて配置されている。軸線に直角な平面内では、2つのタブ8は、軸線に対して点対称に配置されている。陽極箔3及び陰極箔4のそれぞれに接続された2つのタブ7、8を有するアキシャルコンデンサ9は、低ESR、したがって増大したリップル電流能力を有する。
【0085】
陽極箔及び陰極箔のそれぞれに接続された2つのタブを有するコンデンサの構築が、アキシャルコンデンサ9に対して可能であることを推測することができる。図2は、2つのスナップインコンデンサ10をさらに示す。陽極箔3及び陰極箔4のそれぞれに接続された2つのタブを有するスナップインコンデンサ10の構築を可能にするためには、22mmの最小直径が必要とされる。図2は、ラジアルコンデンサ11をさらに示す。陽極箔3及び陰極箔4のそれぞれに接続された2つのタブを有するラジアルコンデンサ11を構築することは、不可能である。
【0086】
図1に示すコンデンサ1は、図1には示されていない缶の内部に配置されている。缶は、管状の缶本体、缶底部、及びカバーを含む。缶底部及びカバーは、円盤形である。軸線方向において、管状の缶本体は、缶底部とカバーとの間にはさまれている。
【0087】
陰極箔4は、陽極箔3よりも缶底部に向かって軸線方向により大きな広がりを有する。セパレータ5は、陰極箔4よりも缶底部に向かって軸線方向に小さな広がりを有する。陽極箔3は、陰極箔4及びセパレータ5よりも缶底部に向かって軸線方向により短い広がりを有する。
【0088】
拡張陰極箔4は、缶底部に接している。したがって、電流は、近道を通って導電性ケースの底部を介して陰極箔4に流れることができる。図1に示す拡張陰極箔4は、ESRの減少をもたらす。
【0089】
この考えは、拡張陰極箔が缶底部と接するように、巻回要素が缶底部に機械的に押し付けられる電解コンデンサについて知られている。この手法は、信頼性が低く、限られた時間しか機能しない。動作中に、電気的接続を弱めて最終的に遮断する、陰極箔と缶底部との間の酸化物層が形成される。
【0090】
しかしながら、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ1では、陰極箔4は、高分子によって覆われている。高分子カバーは、陰極箔4の酸化を妨げる。したがって、酸化物層は、成長することができない。さらに、高分子は、電流が高分子を介して缶底部から陰極箔4に流れることができるように、導電性でもある。したがって、2つの金属の接続は、必要とされない。したがって、図1に示す設計は、結果としてより良好な熱接続及びESRの減少をもたらす。
【0091】
缶への電気的接続の長期安定性のために、缶に対する巻回要素2の機械的な動きは、防止されるべきである。したがって、陰極箔4は、例えば溶接によって缶底部に固定されることがある。溶接は、接触抵抗が低いという利点を有するが、追加処理工程、したがって追加費用という欠点を有する。
【0092】
或は又はさらに、缶底部は、構造体、例えばリブをさらに含むことができる。この構造体は、いかなる機械的な動きも回避するのにさらに役立つことができる。この構造体は、拡張陰極箔4を固定するように設計されてもよい。例えば、陰極箔4は、2つの隣り合うリブ間に締め付けられてもよい。陰極箔4及び缶底部の構造体は、それらが互いと合体するように設計することができ、以て機械的安定性を提供する。
【0093】
さらに、缶は、巻回要素2を機械的に固定もする波形状部を含んでもよい。波形状部は、缶の内部に突き出る部分であってもよい。波形状部は、巻回要素2を缶底部に対して安定に保つ。したがって、高分子を介した、又は金属接続を介した缶底部から陰極箔4までの電流通路は、安定に保たれる。
【0094】
さらに又は或は、陽極箔3は、反対方向に延在してもよい。したがって、延在させた陽極箔3は、缶のカバーと接することができる。延在させた陽極箔3は、カバーに溶接されてもよい。この解決策は、陽極側に多数のタブを使用するのと同等の低ESRを提供する。
【0095】
図3は、3つの巻回要素2を含むコンデンサ1の別の実施形態を示し、各巻回要素2が12mmを超える高さを有する。各巻回要素は、2つのタブ7、8によって接続されており、1つのタブ7が陽極箔3に接続され、1つのタブ8が陰極箔4に接続されている。陽極箔3に接続されたタブ7はすべて、互いに接続されている。さらに、陰極箔4に接続されたタブ8もすべて、互いに接続されている。したがって、巻回要素2は、互いに電気的に並列に接続されている。巻回要素2は、共通の缶内12に配置されている。タブ7、8はすべて、同じ側に引き出されている。したがって、巻回要素2のそれぞれは、ラジアル巻回要素として接続されている。陽極箔3に接続されたタブ7、8はすべて、互いに接続されている。さらに、陰極箔4に接続されたタブ7、8もすべて、互いに接続されている。
【0096】
代替の設計では、巻回要素2は、アキシャル巻回要素として形成されてもよく、陽極箔に接続されたタブ7が巻回要素2の一方の端部で引き出され、陰極箔に接続されたタブ8が巻回要素2の反対側の端部で引き出される。
【0097】
図4は、一般的な高分子電解コンデンサのX線画像である。図4を用いて、識別された故障メカニズムについて説明する。
【0098】
高分子は、大部分が陽極箔3の酸化物及び陰極箔4の酸化物と接続されている。コンデンサの電圧変化中、高分子電位は、陰極箔4上の酸化物が非常に薄いため、主として陰極箔電位の電位に近い。
【0099】
しかしながら、コンデンサは、陽極箔3にのみ接触している高分子領域も含む。これらの領域は、図4において2つの太い矢印Aによってマーキングされている。この領域では、陽極箔3の電位のみが支配的である。したがって、コンデンサが充電又は放電されるときに、補償電流が生成される。さらに、電圧充電が速すぎる場合、発生した補償電流によって、高分子が破壊され、短絡が引き起こされる可能性がある。次に論じるように、陽極箔3及び陰極箔4は、補償電流を回避することができるように寸法決めされ、巻かれる。
【0100】
図5は、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ1の概略断面図を示す。コンデンサ1は、陽極箔3と、陰極箔4と、第1のセパレータ5と、第2のセパレータ5と、を含む。さらに、コンデンサ1は、陽極箔3と、陰極箔4と、セパレータ5との間の間隙を充填する液体電解質13を含む。
【0101】
陽極箔3は、陰極箔4よりも短い。したがって、巻回要素2は、その巻き始め及びその巻き終わりに、陽極箔3を含まない。巻回要素2のあらゆる部分において、陰極箔4は、陽極箔3と常に平行である。巻回要素2は、陽極箔3が陰極箔4から離れている領域を含まない。巻回要素2は、陽極箔3に接触し、陰極箔4に接触しない高分子領域を含まない。陽極箔3及び陰極箔4は、巻回要素2内で、陽極箔3のあらゆる部分が陰極箔4によって覆われるように配置され、寸法決めされている。
【0102】
したがって、コンデンサ1は、陽極箔3に印加される電位が隣り合う高分子領域の電位を支配する可能性がある高分子領域を含まないことを保証することができる。したがって、補償電流が生成される可能性はない。陰極箔4の配置は、高分子及び電解質13がほぼ同じ電位を有することを保証する。図4に関して論じた故障メカニズムを回避することができる。
【0103】
さらに、陰極箔4上の不均一な厚さの酸化物層も、コンデンサ1の充放電中に補償電流を生じさせる可能性がある。補償電流の生成を回避するために、陰極箔4上の酸化物層は、均一な厚さを有する。したがって、酸化物層の厚さは、その最小厚さがその最大厚さの95%よりも薄くない場合に均一であると考えられる。
【0104】
陰極箔4上の均一の酸化物厚さは、過渡的な電気負荷に対する堅牢性をさらに高める。これは、より薄く自然に変化する酸化物厚さを有する未形成の箔を適用する代わりに、例えば3V以上の電圧レベルに形成された陰極箔4を使用することによって達成することができる。
【0105】
以下では、巻回要素2に高分子分散液を含浸する方法が記載される。巻回要素2は、巻回要素2を含浸する工程の前に巻かれる。
【0106】
高分子分散液は、導電性固体高分子粒子又は高分子粉末を含む。さらに、高分子分散液は、溶媒、例えば水を含む。先行技術において、巻回要素2に高分子分散液を含浸する方法は、公知であり、高分子分散液が真空状態下で施される。前に論じたように、この方法は、巻回要素2の高さに関して技術的な限界を有する。図6は、従来の含浸方法を使用して、10mmを超える高さを有する巻回要素2に施されている高分子分散液の例を示す。図6は、高分子溶液がセパレータ、陽極箔、並びに陰極箔の上部及び底部にのみ浸透することを明確に示している。セパレータの中央部分は、高分子粒子が強力な真空を使用することによって浸透することができないため、高分子が全くない。
【0107】
これとは対照的に、本発明によると、巻回要素2は、過圧の圧力パルスを使用して、高分子分散液を含浸させることができる。巻回要素2は、密閉された圧力容器内に配置される。容器は、継ぎ手(joint)を通して高分子分散液によって満たされる。過圧空気が継ぎ手を通して容器にかけられる。過圧空気は、1気圧よりも大きな圧力を有することができる。過圧は、2~150バールの範囲にあってもよい。過圧は、数秒後に、例えば2秒~20秒の範囲の期間後に解放される。その後、容器内の圧力は、より低い圧力に低下する。より低い圧力は、大気圧又は1バール未満の圧力であってもよい。過圧をかけた後により低い圧力をかけるサイクルは、1つの圧力パルスと考えられる。このサイクルは、複数回繰り返される。巻回要素及び高分子分散液に圧力パルスを印加することによって、高分子分散液は、陽極箔3、セパレータ5、及び陰極箔4に均一に分布する。
【0108】
図7は、圧力パルスの助けを借りて含浸された陽極箔3、セパレータ5、及び陰極箔4の詳細な写真を示す。高分子粒子は、セパレータ5の中心部分に到達している。高分子粒子の巻回要素2内への浸透、及び高分子分布の均一性は、優れている。
【0109】
代替の方法では、巻回要素2は、チューブ内に配置され、このチューブが、チューブを通して、以て巻回要素2を通して流される高分子分散液で充填される。さらに、1.5バールよりも大きな過圧が高分子分散液にかけられてもよい。この方法も、陽極箔3、セパレータ5、陰極箔4、タブ7、8を高分子で均一に覆うことをもたらす。特に、高分子分散液は、巻回要素2の底部又は頂部に入り、軸線方向に巻回要素2を通って流れる。本方法は、高分子分散液が循環し、したがって巻回要素2を複数回通って流れるように設計することができ、そのたびごとに巻回要素2の含浸がさらに改善される。
【0110】
巻回要素2を含浸するための上述した方法は、10mmを超える直径及び12mmを超える高さを有する巻回要素2の均一な含浸を可能にする。
【0111】
上述したハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサは、以下の利点を有する。10mmを超える直径寸法でさえ、低ESR、したがって高いリップル電流能力を提供する。コンデンサが12mmを超える高さを有するため、低ESRを有する。さらに、10mmを超える直径及び12mmを超える高さは、高い静電容量をもたらす。低ESR及び大きな寸法は、高いリップル電流能力をさらにもたらす。高い電圧リップル負荷の場合さえ、高い品質を保証することができる。したがって、顧客は、より多数の小さなコンデンサを使用する代わりに、より少数の大きなコンデンサを使用することができる。ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサの寿命は、その大きな寸法のために長い。コンデンサは、液体電解質の大きな貯蔵部を有し、したがって、液体電解質は、ゴム及び缶材料を通って拡散によってよりゆっくりと逃げる。
【0112】
図8図12は、10mmを超える直径及び12mmを超える長さを有する巻回要素を含むコンデンサの様々な設計を示す。図8図12に示すコンデンサのそれぞれは、ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサである。図8は、アキシャルコンデンサを示す。このコンデンサは、はんだ付け又は溶接を行うために構成されている。図9は、はんだ付けスターコンデンサを示す。はんだ付けスターコンデンサは、低インダクタンスという利点を提供する。図10は、平らな水平はんだ付けスターコンデンサを示す。図11は、表面実装型コンデンサを示す。図12は、図9に示すコンデンサ又は図10に示すコンデンサのいずれかの圧入バージョンを示す。
【符号の説明】
【0113】
1 コンデンサ
2 巻回要素
3 陽極箔
4 陰極箔
5 セパレータ
6 高分子
7 タブ
8 タブ
9 アキシャルコンデンサ
10 スナップインコンデンサ
11 ラジアルコンデンサ
12 缶
13 液体電解質
[発明の項目]
[項目1]
10mmを超える直径を有する巻回要素(2)を含むハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)であって、
陽極箔(3)と電気的に接触する少なくとも2つのタブ(7)、及び陰極箔(4)と電気的に接触する少なくとも2つのタブ(8)を備える、
ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目2]
前記巻回要素(2)が12mmを超える高さを有する、
項目1に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目3]
前記巻回要素(2)が、前記陽極箔(3)と前記陰極箔(4)との間にセパレータ(5)を介在させて軸線の周りに巻かれた前記陽極箔(3)及び前記陰極箔(4)を備え、
前記陽極箔(3)、前記陰極箔(4)、及び前記セパレータ(5)が導電性高分子(6)で覆われており、前記コンデンサ(1)が液体電解質(13)を含む、
項目1又は2に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目4]
アキシャルコンデンサである、
項目1~3のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目5]
前記陽極箔(3)及び前記陰極箔(4)が、前記巻回要素(2)内で、前記陽極箔(3)が両側の前記陰極箔(4)間に完全に包み込まれるように配置され、寸法決めされている、
項目1~4のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目6]
前記陰極箔(4)が前記陽極箔(3)よりも前記巻回要素(2)の高さ方向に大きな広がりを有する、
項目1~5のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目7]
前記陰極箔(4)の巻き数が、前記陽極箔(3)の巻き数よりも少なくとも1つだけ大きい、
項目1~6のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目8]
前記陰極箔(4)が酸化物層で覆われたアルミニウム箔を含み、前記酸化物層が前記陰極箔(4)上で均一の厚さを有する、
項目1~7のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目9]
前記巻回要素(2)が缶底部を有する缶(12)内部に配置されており、
前記陰極箔(4)が前記陽極箔(3)よりも前記缶底部に向かって軸線方向に大きな広がりを有し、前記陰極箔(4)が前記缶底部と電気的に接触している、
項目1~8のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目10]
前記缶底部が前記缶底部に対する前記巻回要素(2)の動きを機械的に妨げる構造体を備える、
項目1~9のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目11]
前記陰極箔(4)が前記缶底部に溶接されている、
項目9又は10に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目12]
前記缶(12)が前記巻回要素(2)を固定する波形状部を含む、
項目9~11のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目13]
前記缶(12)がカバーを含み、
前記陽極箔(3)が前記陰極箔(4)よりも前記カバーに向かって前記軸線方向に大きな広がりを有し、前記陽極箔(3)が前記カバーと電気的に接触している、
項目9~12のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目14]
前記陽極箔(3)が前記カバーに溶接されている、
項目13に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目15]
前記巻回要素(2)が22mm未満の直径を有する、
項目1~14のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目16]
前記巻回要素(2)の前記直径に対する前記巻回要素(2)の前記高さの比が2よりも大きい、
項目1~15のいずれか一項に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目17]
軸線の周りに巻かれ、導電性高分子(6)によって覆われた、陽極箔(3)、セパレータ(5)、及び陰極箔(4)を含む第1の巻回要素(2)であり、液体電解質(13)を含む、第1の巻回要素(2)と、軸線の周りに巻かれ、導電性高分子(6)によって覆われた、陽極箔(3)、セパレータ(5)、及び陰極箔(4)を含む第2の巻回要素(2)であり、液体電解質(13)を含む、第2の巻回要素(2)と
を備えるハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)であって、
前記第1の巻回要素(2)及び前記第2の巻回要素(2)のそれぞれが12mmを超える高さを有し、
前記第1の巻回要素(2)及び前記第2の巻回要素(2)が共通の缶(12)内に配置されており、
各巻回要素(2)がそれぞれの前記陽極箔(3)に接続されたタブ、及びそれぞれの前記陰極箔(4)に接続されたタブを備え、
前記第1の巻回要素(2)及び前記第2の巻回要素(2)が互いに並列に電気的に接続されるように、前記陽極箔(3)に接続された前記タブ(7)同士が互いに接続され、前記陰極箔(4)に接続された前記タブ(8)同士が互いに接続されている、
ハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目18]
前記第1の巻回要素(2)及び前記第2の巻回要素(2)のそれぞれがラジアル巻回要素である、
又は
前記第1の巻回要素(2)及び前記第2の巻回要素(2)のそれぞれがアキシャル巻回要素である、
項目17に記載のハイブリッド高分子アルミニウム電解コンデンサ(1)。
[項目19]
コンデンサ(1)を製造する方法であって、
陽極箔(3)、セパレータ(5)、及び陰極箔(4)を軸線の周りに巻いて巻回要素(2)を形成するステップと、
前記巻回要素(2)を高分子分散液に浸たすステップであって、前記高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと、
前記浸たされた巻回要素(2)に過圧のパルスを印加するステップと
を含む、方法。
[項目20]
前記過圧のパルス中に、2~150バールの範囲にある過圧がかけられ、続いて大気圧又は1バール未満の圧力のいずれかがかけられる、
項目19に記載の方法。
[項目21]
前記コンデンサ(1)が項目1~16のいずれか一項に記載のコンデンサである、
項目19又は20に記載の方法。
[項目22]
コンデンサ(1)を製造する方法であって、
陽極箔(3)、セパレータ(5)、及び陰極箔(4)を軸線の周りに巻いて巻回要素(2)を形成するステップと、
前記巻回要素(2)をチューブ内に配置するステップと、
前記チューブを通して、以て前記巻回要素(2)を通して高分子分散液を強制的に流すステップであって、前記高分子分散液が導電性固体高分子粒子又は高分子粉末、及び溶媒を含有する、ステップと
を含む、方法。
[項目23]
前記高分子分散液が前記巻回要素(2)を通って流れるときに、少なくとも1.5バールの過圧がかけられる、
項目22に記載の方法。
[項目24]
前記コンデンサ(1)が項目1~16のいずれか一項に記載のコンデンサである、
項目22又は23に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12