(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】表示体及び表示体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 19/14 20060101AFI20221220BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20221220BHJP
G02B 5/28 20060101ALI20221220BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G09F19/14
B42D25/324
G02B5/28
G02B5/08 A
(21)【出願番号】P 2019561080
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2018046401
(87)【国際公開番号】W WO2019124322
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2017241723
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017251632
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉原 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 華子
(72)【発明者】
【氏名】田代 智子
(72)【発明者】
【氏名】屋鋪 一尋
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-233733(JP,A)
【文献】国際公開第2017/138536(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00 - 25/485
G02B 5/00 - 5/32
27/00 - 27/64
G09F 19/00 - 19/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の下面位置若しくはマイクロ凹凸構造層の下面位置を基準面とし、その基準面上に、上記基準面に沿って複数のマイクロ構造体が配置されたマイクロ凹凸構造層を有し、
上記各マイクロ構造体は、側面視で上記基準面に対し傾斜した第1の面と、上記基準面に対する傾斜角が第1の面よりも大きな第2の面と有し且つ光を透過する材料からなる断面三角形形状のプリズム構造体からなり、
上記複数のマイクロ構造体の全部若しくは一部のマイクロ構造体における第2の面に、機能層を設け
、
上記第1の面に、可視光の波長を光学的に変化させる光学変化層が設けられ、上記光学変化層は、誘電体多層と金属反射層の積層体から構成され、
上記機能層は、可視光の波長を光学的に変化させる光学変化層であり、その光学変化層は、誘電体多層と金属反射層の積層体から構成され、
上記第2の面に積層された上記光学変化層に対し、上記第1の面に積層された上記光学変化層が厚く、上記第2の面に備えた上記金属反射層は、可視光領域において反射率の総和に比べて透過率の総和が高く、上記第1の面に備えた上記金属反射層は、上記反射率の総和に比べて上記透過率の総和が低いことを特徴とする表示体。
【請求項2】
基材層の下面位置若しくはマイクロ凹凸構造層の下面位置を基準面とし、その基準面上に、上記基準面に沿って複数のマイクロ構造体が配置されたマイクロ凹凸構造層を有し、
上記各マイクロ構造体は、側面視で上記基準面に対し傾斜した第1の面と、上記基準面に対する傾斜角が第1の面よりも大きな第2の面と有し且つ光を透過する材料からなる断面三角形形状のプリズム構造体からなり、
上記複数のマイクロ構造体の全部若しくは一部のマイクロ構造体における第2の面に、機能層を設け
、
上記機能層を設ける上記マイクロ構造体は、内部に複数の磁性粒子を含有し、上記第2の面側に集積した複数の磁性粒子で、上記機能層を構成することを特徴とする表示体。
【請求項3】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、上記複数の領域において、少なくとも一部の領域で上記第2の面に積層された上記光学変化層の層厚と上記第1の面に積層された上記光学変化層の層厚の差が、他の領域と異なっていることを特徴とする請求項
1に記載した表示体。
【請求項4】
上記機能層を設ける上記マイクロ構造体は、気体、液体又は固体からなることを特徴とする請求項
2に記載した表示体。
【請求項5】
上記マイクロ凹凸構造層は、可視光が入射した際に、少なくとも特定の波長に対して吸収よりも透過の比率が高いことを特徴とする請求項1~請求項
4のいずれかに記載した表示体。
【請求項6】
上記マイクロ凹凸構造層は、上記基準面に直交した方向から、可視光を照射する場合と、上記直交した方向とは異なる特定の方向から可視光を照射する場合とで、反射率が異なることを特徴とする請求項1~請求項
5のいずれかに記載した表示体。
【請求項7】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、且つ上記複数のマイクロ構造が周期的な構造で構成され、少なくとも一部の領域同士の周期性が、互いに異なっていることを特徴とする請求項1~請求項
6のいずれかに記載した表示体。
【請求項8】
上記複数のマイクロ構造の上記周期が、1μm以上300μm以下の範囲であることを特徴とする請求項
7に記載した表示体。
【請求項9】
上記マイクロ凹凸構造層の上記基準面側の少なくとも一部に視覚効果追加層が設けられ、
上記視覚効果追加層は、印刷層、反射層、上記マイクロ凹凸構造層とは屈折率が異なる層のいずれか又はその組み合わせからなることを特徴とする請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載した表示体。
【請求項10】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、領域毎に設ける上記視覚効果追加層が異なることを特徴とする請求項
9に記載した表示体。
【請求項11】
上記第1の面に、可視光の波長を光学的に変化させる光学変化層が設けられ、
上記視覚効果追加層は、上記第1の面の傾斜角あるいは上記光学変化層の反射光の波長域、または、透過光の波長域を吸収する吸収層であることを特徴とする請求項
9又は請求項1
0に記載した表示体。
【請求項12】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、領域毎に、マイクロ構造体の第1の面の傾斜角及びマイクロ構造体の向きのうちの一方又は両方が異なることを特徴とする請求項1~請求項1
1のいずれか1項に記載した表示体。
【請求項13】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、領域毎に、上記マイクロ構造体に設ける上記機能層が異なることを特徴とする請求項1~請求項1
2のいずれか1項に記載した表示体。
【請求項14】
上記機能層の全部若しくは一部の機能層の上に、隠蔽層が設けられていることを特徴とする請求項1~請求項1
3のいずれか1項に記載した表示体。
【請求項15】
上記マイクロ構造体を配置する領域を複数有し、領域毎に、上記マイクロ構造体に設ける上記隠蔽層が異なることを特徴とする請求項1
4に記載した表示体。
【請求項16】
上記マイクロ凹凸構造層の上記基準面とは反対の面側に、上記マイクロ凹凸構造層の凹凸を被覆し且つ光を透過する材料からなる保護層を有することを特徴とする請求項1~請求項1
5いずれか1項に記載した表示体。
【請求項17】
請求項
2に記載した表示体の製造方法であって、
外部から付加する磁力によって、上記マイクロ構造体内の磁性粒子を上記第2の面側に集積させる工程を有することを特徴とする表示体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここの中で論ずる実施形態は、観察条件により異なる画像が出現するオバートフィーチャーを有する表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学効果を発現させる技術の例としては、いわゆるOVDが利用されている。ここで、OVDは、“ Optical(ly)VariableDevice”の略である。OVDは、例えば、立体画像や特殊な装飾画像とかを光の干渉を用いて表示したり、特殊な色の変化などを表現し得るホログラムや回折格子を利用したりしたデバイスである。また、OVDは、光学特性の異なる薄膜を光学的に多層に重ねることによって見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜等々の技術を利用した技術に関するものである。
なお、色の変化については、OVDの材料や構造に起因して色を呈して色が変化する現象があり、光の波長によって光自体の性質が異なることに由来している。本明細書中では、このような色の変化を呈する色を構造色と称している。構造色の発現に関わる光学現象としては、多層膜干渉、薄膜干渉、屈折、分散、光散乱、Mie散乱、回折、回折格子などがある。
【0003】
このOVDは、高度な製造技術を要すること、独特な視覚効果を有し一瞥で真偽が判定できることから、有効な偽造防止手段としてクレジットカード、有価証券、証明書類等の一部にあるいは全面に形成され使用されている。このOVDを利用した表示体は、最近では、有価証券以外にもスポーツ用品やコンピュータ部品をはじめとする電気製品ソフトウェア等に貼り付けられる、そして、その表示体は、その製品の真正さを証明する認証シールや、それら商品のパッケージに貼りつけられる封印シールとしても広く使われるようになってきた。
OVDは、回折格子を用いて立体的な表現や、画像のチェンジングを表現することで偽造防止効果を出してきた。しかし、OVDは、回折格子による表現では虹色の干渉光が生じるため、色が特定できずに真贋判定が困難なことに加え、色の表現が限定的であった。
【0004】
ここで、偽造防止用の技術としては、例えば特許文献1~4に記載の技術がある。
特許文献1には、RGB分解画像を組み合わせることにより、カラー表現が可能な光学素子が記載されている。しかし、この光学素子は、回折格子によるカラーの表現では干渉光が生じてしまうため、特定の色の表現は困難である。
一方、特許文献2に記載の技術は、レンチキュラーレンズと印刷の組み合わせにより特定のカラー表現が可能である。また、特許文献3に記載の技術は、マイクロ構造と光学素子の透明性を利用することで、印刷との組み合わせにより虹色表現以外の方法でカラーの表現を実現している。
しかし、特許文献2及び3に記載の光学素子は、印刷層を設けるために、透過による下地の視認性とカラー表現の効果を両立していない。
【0005】
また、特許文献4に記載の技術は、マイクロ構造に直接反射層を持つ光学素子であり、透過性を有するため下地の視認が可能である。しかし、特許文献4に記載の技術は、反射層とマイクロ構造の組み合わせであるためカラー表現が限定されたものであった。
また、1つの表示体で2以上の画像を視認できる表示体は、オバートフィーチャーを備えた偽造防止媒体として利用されている。
このようなバートフィーチャーを備えた表示体は、表示体に出現する画像の視認性が要求される。
よって、上記表示体に関して、観察者に対して美観に富んだ表示体の提供が求められており、照明からの入射光により様々な視覚効果を有する光学的な技術が求められている。
【0006】
例えば、特許文献2に記載した表示体は、上述のように、レンチキュラーレンズを用いて特定の角度で異なる情報を達成する方式が挙げられている。また、特許文献5に記載した表示体は、プリズム構造の一方向の斜面と他方向の斜面のそれぞれに、異なるメタリック画像をインクジェットで印刷することで特定の角度で異なる情報を達成する方式が挙げられている。
その他にも、特許文献6に記載した表示体は、プリズム構造の一方向の斜面に光反射層を積層し、特定の角度で反射性を有する方式が挙げられている。
【0007】
しかしながら、特許文献2のレンチキュラーレンズは表示画像の上に設ける必要がある。そして、特許文献2の表示体は、表示画像とレンチキュラーレンズの貼り合わせの位置がずれると、画像がボケたり重なりあったりするため、高精度に位置合わせして貼り合わせる制御装置等が必要となり、視認性の高い製造品を得ることが困難である。
また、特許文献5のインクジェットを利用したメタリック画像の印刷は、プリズム面に合わせて印刷するにはどうしても解像度が落ちてしまい、プリズム構造自体が観察されてしまうおそれがある。このため、特許文献5の表示体の視認性が落ちてしまう。
また、特許文献6の反射特性を有した表示体は、照射した入射光を特定の角度で反射することは可能であるが、着色させることが困難であり、単調な画像しか形成することができない。
特許文献2,5,6の表示体は異なる角度で2つの画像を視認することは共通である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-221054号公報
【文献】特許第3006667号号公報
【文献】国際公開第2016/075928号
【文献】国際公開第2013/180231号
【文献】特願2015-108939号公報
【文献】特願2004-54154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
カード、パスポート、紙幣では視認性が高い表示体が望まれる。視認性の高い表示体は、目視での検証性が高い。目視での検証は、オフライン、すなわちネットワークに接続していない状況での、偽造品の検知に適する。
本実施形態は、上記のような点に着目してなされたのもので、複数の観察条件でそれぞれ異なる画像が出現し、検証性に優れ、結果として、偽造防止耐性を高めた表示体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
課題を解決する本開示の一態様の表示体は、設定した基準面上に、基準面に沿って複数のマイクロ構造体が配置されたマイクロ凹凸構造層を有し、上記各マイクロ構造体は、側面視で上記基準面に対し傾斜した第1の面と、上記基準面に対する傾斜角が第1の面よりも大きな第2の面と有し且つ光を透過する材料からなる断面三角形形状のプリズム構造体からなり、上記複数のマイクロ構造体の全部若しくは一部のマイクロ構造体における第2の面に機能層を設けたことを要旨とする。
上記の機能層は、着色層や光学変化層でできる。光学変化層は、誘電体多層やコレステリック液晶層等である。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態は、照明光を反射、透過し、画像をパッシブに出現させる表示体に関する。そして、本実施形態は、カード、パスポート、紙幣などに設けられたオバートフィーチャーを有する表示体として適用可能である。更に、本実施形態は、特定の角度で傾斜された複数の微細な反射板を有する表示体や、印刷層の上に該表示体を添付した物品として適用できる。
本開示の態様は、簡易な構成にもかかわらず、特定の色つき画像を、特定の観察角度で出現させることができる。この結果、本発明の態様は、観察方法を変えると、それぞれ異なる画像が観察できる。本開示の様態では、観察方法によりによって切り替わる画像を、正規品と対比し、真正かどうかが分かる。そのため、検証性が高い。言い換えれば、偽造品の検知性が高い。また、観察方法によりによって切り替わる画像は、新規の視覚効果として、本開示の表示体を印象的なものとする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る表示体を説明する平面図である。
【
図2】表示体を説明するための
図1におけるA-A′で切断した断面図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係るマイクロ構造体を説明する側面図である。
【
図4】マイクロ構造体の配置例を説明する模式的平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る光路を説明する断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図7】第2実施形態に係る表示体を説明する断面図である。
【
図8】第2実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図9】第2実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図11】マイクロ構造体における光路の模式図である。
【
図12】第2実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図13】第3実施形態に係る表示体を説明する断面図である。
【
図14】第3実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図15】第3実施形態に係る観察方向と視覚効果の関係を説明する図である。
【
図16】第4実施形態に係る表示体を説明する断面図である。
【
図18】磁性粒子を第2の面に寄せる工程を説明する図である。
【
図19】変形例に係る表示体を説明する断面図である。
【
図20】変形例に係る観察方向と出現する画像の関係を説明する図である。
【
図21】変形例に係る表示体を説明する断面図である。
【
図22】変形例に係る観察方向と出現する画像の関係を説明する図である。
【
図23】第5実施形態に係る表示体の平面構造例を説明する平面図である。
【
図24】第5実施形態の構造を説明する断面図である。
【
図25】第5実施形態の表示体を異なる観察方向から観察した際に出現する画像を説明した図である。(a)は、光源側から観察し、表示体を正面方向から観察する条件で出現する画像を説明した図、(b)は、光源側から観察し、表示体を正面と異なる方向から観察する条件で出現する画像を説明した図、(c)は、光源と反対方向から観察し、表示体を正面方向から観察する条件で出現する画像を説明した用図である。
【
図26】第5実施形態に係るメカニズムを説明する模式図である。(a)は、
図25(a)のメカニズムを説明する図、(b)は、
図25(b)のメカニズムを説明する図、(c)は、
図25(c)のメカニズムを説明する図である。
【
図27】薄膜による光干渉原理を説明する図である。
【
図28】本表示体の一実施形態における表示体の平面構造を説明する平面図である。
【
図29】本表示体の一実施形態を、異なる観察方向から観察した際の見え方を説明する図である。(a)は、光源側から観察し、表示体を正面方向から観察した際の表示像を説明する図、(b)は、光源側から観察し、表示体を正面と異なる方向から観察した際の表示像を説明する作用図、(c)は、光源と反対方向から観察し、表示体を正面方向から観察した際の表示像を説明する図である。
【
図30】第1実施形態~第4実施形態の変形例の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨を説明するものであり、以下の実施形態の解釈を限定すべきものではない。本発明の代表的なものであることを理解されたい。以下に説明する代表的な実施形態は、本発明の一例に過ぎず、当業者であれば、その設計を適宜変更することが可能である。
【0014】
また、図面は説明的なものであり、それらに示される寸法は、例えば、各層の厚さや、その比率等、実際と異なることがあり、図面中の寸法比は、それらに示される比に限定されるものと解釈すべきではない。また、便宜上の理由がない限り、各実施形態における同様な構成については同一の符号を付して説明し、重複する説明は省略する。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。 図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。 本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の代表的なものであることを理解されたい。以下に説明する代表的な実施形態は、本発明の一例に過ぎず、当業者であれば、その設計を適宜変更することが可能である。 なお、便宜上の理由がない限り、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
なお、図面において、同様の部分には同一の符号を付し、本開示の実施形態は、背景からの独自の単一の発明を源とする一群の実施形態である。また、本開示の各側面は、単一の発明を源とした一群の実施形態の側面である。本開示の各構成は、本開示の各側面を有する。本開示の各フィーチャーは組合せ可能であり、各構成をなす。従って、本開示の各フィーチャー、本開示の各構成、本開示の各側面、本開示の各実施形態は、組合せることが可能であり、その組合せは相乗的機能を有し、相乗的な効果を発揮しうる。
ここで、以下の第1~第4実施形態は、第2の面に設ける機能層が着色層の場合の実施形態である。また、第5実施形態は、第2の面に設ける機能層が光学変化層の場合の実施形態である。これら第1~5の実施形態は本開示の実施形態である。
【0016】
「第1実施形態」
まず、第1実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の表示体1は、平面視で、複数の表示領域を有する。本実施形態では、連続する2つの表示領域2、3を示しているが、3つ以上の表示領域を有していても良いし、各表示領域が離れていても良い。以下、表示領域2、3を単に領域2、3とも呼ぶ。
また
図2に示すように、本実施形態の表示体1は、基材層5と、基材層5の上に形成されたマイクロ凹凸構造層4と、マイクロ凹凸構造層4の凹凸を覆うように形成された保護層6とを備える。
ここで、本実施形態では、基材層5の下面位置若しくはマイクロ凹凸構造層4の下面位置を基準面Hとした。すなわち、マイクロ凹凸構造層4の基準面Hとは反対の面側に、マイクロ凹凸構造層4の凹凸を被覆し且つ光を透過する材料からなる保護層6が配置されていることになる。
【0017】
また、第1の面や第2の面に積層した層がある場合、保護層6は、その積層した層の上に形成される。
また、基準面Hが曲面であっても良い。
本実施形態では、基材層5は、マイクロ凹凸構造層4と一体に形成される層とできる。基材層5は、省略してもよい。また、基材層5、マイクロ凹凸構造層4(着色層7を除く)及び保護層6はそれぞれ、光を透過する樹脂材料から構成されている。また、マイクロ凹凸構造層4と保護層6の光の屈折率は異なっていても良く、同じでもよい。ここで、保護層6は、後述のマイクロ凹凸構造層4と同じ材料から構成としてもよい。なお、保護層6は、省略しても良い。
本実施形態では、領域2、3にマイクロ凹凸構造層4を設ける共に、領域2に対応する部分にのみ、後述の着色層7を設ける場合を説明する。
【0018】
<マイクロ凹凸構造層4>
マイクロ凹凸構造層4は、
図2に示すように、基準面H上に、基準面Hに沿って複数のマイクロ構造体4Aが配置されることで構成された構造体である。
各マイクロ構造体4Aは、
図3に示すように、側面視で基準面Hに対し上方に傾斜した第1の面4Aaと、基準面Hに対する傾斜角αが第1の面4Aaの傾斜角βよりも大きな第2の面4Abと有する断面三角形形状のプリズム構造体からなる。マイクロ構造体4Aは、その断面三角形形状の底辺に当たる底面4Ac位置が基準面Hと平行となるように設定される。なお第1の面4Aaや第2の面4Abの面は、平坦な面でも良いし、プロフィールが曲面状の曲率を持った面でもあってもよい。
【0019】
複数のマイクロ構造の底面4Acの位置は、同一の基準面H上に配置されている。隣り合うマイクロ構造の底面4Acの高さ位置が、相対的に多少(例えば2μm以下の範囲で)上下にオフセットして構成されていても良い。
また、複数のマイクロ構造体4Aは、基準面Hに沿って連続して配置されていても良いし、隣り合うマイクロ構造体4Aの間に隙間を持って配置されていても良い。
図2では、鋸刃状凹凸等に連続して形成されている場合を示している。隣り合うマイクロ構造体4Aの間に隙間を設ける場合には、その隙間を介して隣り合うマイクロ構造体4Aの底面4Acにおける横方向長さ(図に2おける底面4Acの左右方向の寸法)以下にすることができる。これにより、光学的機能の有効性を高められる。
【0020】
基準面Hに対する第1の面4Aaの傾斜角βは、1度以上90度未満の範囲で設定できるが、更には30度以上60度以下である。本実施形態では傾斜角βを45度として、マイクロ構造体4Aの底面4Acの横方向長さと高さとが同じ寸法となっている。
基準面Hに対する第2の面4Abの傾斜角αは、第1の面4Aaの傾斜角βよりも大きく設定されている。第2の面4Abの傾斜角αは、80度以上100度以下の範囲とできる。本実施形態では、第2の面4Abを基準面Hに対し鉛直方向に配置して垂直面とし、第2の面4Abの傾斜角αを90度に設定した場合を説明する。
【0021】
マイクロ構造体4Aのサイズは、マイクロメートルサイズとできる。すなわち、マイクロ構造体4Aのサイズは、高さ及び横方向の長さが共に50μm以下の寸法とできる。更には、高さが2μm以上10μm以下、また、底面4Acの横方向(並び方向)の長さが2μm以上30μm以下の範囲の大きさとしてもよい。底面4Acの横方向の寸法は、
図3のように、側面視からみた寸法である。マイクロ構造体4Aは、それぞれ平面矩形のブロック状の構造体であっても良いし、紙面上下方向に延びた形状であっても良い。
なお、マイクロ構造体4Aのサイズは、マイクロメートルサイズとすることで、マイクロ構造体4Aの寸法は、複数のマイクロ構造体4Aによる凹凸構造によって、回折による虹色の干渉光が発生しにくい寸法となるように設定できる。
【0022】
ここで、各マイクロ構造体4Aは、模式的平面図である
図4(a)のように、マイクロ構造体4Aの並び方向(紙面左右方向)と交差する方向(
図4(a)では直交方向)に延在したシリンドリック形状となっている。各マイクロ構造体4Aは、模式的平面図である
図4(b)のように、底面4Acがブロック形状であってもよい。ブロック形状は正方形等とできる。またこのとき、模式的平面図である
図4(c)のように、複数のマイクロ構造体4Aのブロックを、予め設定したパターンで各ブロックの向きを違えるように設けても良い。
【0023】
(マイクロ凹凸構造層4の材料)
マイクロ凹凸構造層4、すなわちマイクロ構造体4Aは、光透過性材料とできる。
マイクロ凹凸構造層4に適用する材料は、熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、熱硬化樹脂を単独又はこれらを複合した材料とできる。また、上記以外のものであっても、上記凹凸を形成可能で且つ光を透過可能な材料を適用してもよい。熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂とできる。ウレタン樹脂は、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂とできる。熱硬化樹脂は、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂とできる。
【0024】
マイクロ凹凸構造層4へのレリーフ構造付与(マイクロ構造体4Aの形成)には、レーザ描画法、ナノインプリント法、エンボス法等の微細構造形成プロセスによって凹凸形状を形成すればよい。
マイクロ構造体4Aを構成する凹凸を、エンボス法で紫外線硬化性樹脂に形成する場合を説明する。
この場合、マイクロ凹凸構造層4の材料は、紫外線硬化性樹脂を適用できる。紫外線硬化性樹脂は、エチレン性不飽和結合、又はエチレン性不飽和基を持つモノマー、オリゴマー、ポリマー等の紫外線硬化性樹脂とできる。モノマーは、1、6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等とできる。オリゴマーは、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートとできる。ポリマーは、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂とできる。
【0025】
また、マイクロ構造体の材料に、光カチオン重合を適用した場合、エポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー、オキセタン骨格含有化合物、ビニルエーテル類を適用できる。また、上記の電離放射線硬化性樹脂は、紫外線等の光によって硬化させる場合、光重合開始剤を添加することができる。樹脂に応じて、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、その併用型(ハイブリッド型)を選定できる。
更には、エチレン性不飽和結合、又はエチレン性不飽和基をもつモノマー、オリゴマー、ポリマー等を混合することや、これらに予め反応基を設けておき、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で互いに架橋することや、これらに予め反応基を設けておき、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、有機チタネート架橋材、有機ジルコニウム架橋剤、有機アルミネート等で、その他の樹脂骨格と架橋することも可能である。このような方法は、エチレン性不飽和結合、又はエチレン性不飽和基をもつポリマーであって、常温下で固形で存在し、タックが少なく、成形性が良く原版汚れの少ないポリマーを得ることも可能である。
【0026】
光ラジカル重合開始剤は、ベンゾイン系化合物、アントラキノン系化合物、フェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、ミヒラーズケトンとできる。ベンゾイン系化合物、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルとできる。アントラキノン系化合物は、アントラキノン、メチルアントラキノンとできる。フェニルケトン系化合物は、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α-アミノアセトフェノン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オンとできる。
【0027】
光カチオン重合可能な化合物を使用する場合の光カチオン重合開始剤は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等を使用することができる。光カチオン重合開始剤は、光ラジカル重合と光カチオン重合を併用するハイブリッド型材料として、それぞれの重合開始剤を混合できる。光カチオン重合開始剤は、一種の開始剤で双方の重合を開始させる機能をもつ芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等としてもよい。
【0028】
放射線硬化樹脂と光重合開始剤の配合は、0.1質量%以上15質量%以下とできる。樹脂組成物には、更に、光重合開始剤と組み合わせて増感色素を併用してもよい。また、必要に応じて、染料、顔料、各種添加剤(重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物など)、架橋剤(例えば、エポキシ樹脂など)、などを含んでいてもよく、また、成形性向上のために非反応性の樹脂(前述の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂を含む)を添加しても良い。
また、適用する製造方法において成型可能な、ある程度の流動性を有すること、及び、成型後の塗膜が、所望する耐熱性や耐薬品性が得られることを考慮して材料を選択することができる。
【0029】
<保護層6>
保護層6は、マイクロ凹凸構造層4の凹凸を保護する層である。
保護層6は空気等の気体又は固体からなり、固体からなる場合、マイクロ凹凸構造層を構成するものと同様に、熱可塑性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂とできる。内部に気体を封止した中空体状の層で保護層6を形成することができる。すなわち、保護層6を気体から構成することができる。
保護層6の屈折率がn1、マイクロ凹凸構造層の屈折率がn2であるとき、屈折率差によって以下3つに場合分けすることが可能である。
【0030】
・n1<n2のとき(屈折率差が0.2以上である場合)
屈折率差によりマイクロ凹凸構造層4が反射層として作用するため、保護層6とマイクロ凹凸構造層4の界面にて反射が生じる。その場合、界面で反射する光によって着色層が観察される。
・n1=n2のとき(屈折率差が0.2以下である場合)
層間で屈折率差が生じない場合、入射角によらず光は透過する。そのため、マイクロ凹凸構造層の角度α及びβの値と視覚効果追加層の屈折率によって、観察される画像が決定する。
・n1>n2のとき(屈折率差が0.2以上である場合)
高屈層から低屈層に光が入射する場合、入射角が臨界角以上では界面にて全反射する。全反射した場合には、着色層の色が確認され、臨界角以下でマイクロ凹凸構造層を透過した場合には、視覚効果追加層の屈折率に応じて、着色層が観察される。
【0031】
保護層の屈折率は、マイクロ凹凸構造層の傾斜角、視覚効果追加層の屈折率を考慮して、目的とする効果により適宜選択することができる。保護層は無機材料、有機材料、有機無機複合材料としてもよい。これらは屈折率が調整可能である。また、屈折層は上述した熱可塑性樹脂や紫外線硬化型樹脂などの有機材料に、無機微粒子、有機微粒子、有機無機複合微粒子、中空粒子を添加して屈折率を調整するようにしても良い。この場合に微粒子表面に官能基を設けて分散性や膜強度を改善することが可能である。また、微粒子の分散性を改善するための分散剤や界面活性剤を添加することや、膜強度を改善するために架橋剤を添加しても良い。
【0032】
<基材層5>
基材層5の材料は、マイクロ凹凸構造層4と同じ材料としてもよい。また、基材層5は、マイクロ凹凸構造層4と一体でもよい。基材層5は、プラスチックフィルムとできる。プラスチックフィルムの材料は、は、熱可塑性ポリマーとできる。熱可塑性ポリマーは、PETやPPとできる。
【0033】
<着色層7>
本実施形態では、
図2及び
図3に示すように、着色層7が、領域2に配置されたマイクロ構造体4Aの第2の面4Abに設けられている。着色層7により、表示体が色を発するようにできる。
本実施形態の着色層7は、インキを印刷し形成できる。インキは、可視インキ、不可視インキとできる。可視インキは、顔料インキ、染料インキとできる。可視インキは光学可変インキとできる。光学可変インキは、磁性を帯びた磁性インキとできる。光学可変インキは、光干渉機能を有したパールインキとできる。不可視インキは、紫外線吸収インキ、赤外線吸収インキ、蛍光インキとできる。着色層7の印刷に適用できるインキはこれらに限らず、一般的に印刷可能なものインキとできる。印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、オフセットグラビア印刷、スクリーン印刷とできる。また、これ以外にも、一般的な印刷を適用ができる。また、着色層7は、樹脂を塗布により形成することもできる。塗布は、グラビアコート、マイクログラビアコート、ダイコートとできる。塗布する樹脂は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱可塑樹脂とできる。樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂とできる。印刷、コートのほかにも、キャスト法式や樹脂押し出し方式、ラミネート方式などにより着色層7を設けることが可能である。
【0034】
なお、着色層7は、第2の面4Abの全面、又は一部に設けることができる。着色層7を、第2の面4Abのうちの上側や、下側、中央側に設けることで、着色層7を2の面4Abの一部に設けることができる。上側や、下側、中央に設ける場合、全体の2/3を覆うようにすることができる。この場合であっても、着色層7は、第2の面4Abの面積の50%以上に設けることが好ましい。また同一の第2の面4Abに対し、2種類の着色層7を塗り分けてもよい。
ここで、着色層7は、例えば0.5μm以上1μmm以下の膜厚からなる薄膜からなる。このため、着色層7を膜厚方向から見た場合、着色層7は視認されない。なお、この着色層7の膜厚分だけ、隣り合うマイクロ構造体4Aの間に隙間を設けても良いし、設けなくても良い。また、着色層7の膜厚分だけ、着色層7を設けるマイクロ構造体4Aの横方向の寸法を短くしても良い。
【0035】
(着色層7の材料)
着色層7の材料は、インキ、金属、樹脂とできる。着色層7のインキは、可視インキ、不可視インキとできる。は、可視インキは顔料インキ、染料インキとできる。不可視インキは、紫外線吸収インキ、赤外線吸収インキ、蛍光インキとできる。領域2に設ける着色層7が赤外線吸収インキや紫外線吸収インキからなるとき、特定の角度から観察したときに、赤外光又は紫外光によって観察される画像を出現できる。このように可視光以外の領域に吸収波長を持つインキにより、検出機でのモチーフの検証や、特殊光源下での目視によるモチーフの検証ができる。また、可視顔料インキは光学可変インキとできる。光学可変インキは、可視光での干渉性を有するパールインキとできる。また、光学可変インキは磁性を帯びた磁性インキとできる。
【0036】
(着色層7の形成方法)
第2の面4Abに着色層7を設ける方法は、マイクロ凹凸構造層4の凹凸の表面に対し、着色層7を塗工又は堆積によって設けた後に、ドライエッチング又はウェットエッチングによって着色層7が不要な領域を取り除く方法とできる。
着色層7は、インキを印刷して形成できる。印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、スクリーン印刷とできる。着色層7は、樹脂をコートすることで形成できる。コ-トは、グラビアコート、ダイコートとできる。また、印刷、コートのほかにも、キャスト法式や樹脂押し出し方式、ラミネート方式などにより視覚効果追加層8を設けることが可能である。
【0037】
また、着色層7が反射層であるときには、着色層7は、金属層とできる。この場合、着色層7、すなわち金属層は、蒸着、スパッタで形成できる。金属層の金属は、単体の金属又はこれらの化合物とできる。金属層の金属は、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Ag、又はその合金とできる。また、反射層は金属層に限らず、反射性のインキを塗布したものとしても良い。
ドライエッチングは、反応性レーザービームエッチング、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンビームエッチングとできる。ウェットエッチングは化学処理により不要な部分を取り除くエッチング方法とできる。また、着色層7の樹脂として紫外線、電子線硬化性の樹脂を部分的に露光し、不要な領域を取り除き、必要な領域を残し、片方の斜面にのみ着色層7を設けることが可能である。
【0038】
(着色層7による効果)
各マイクロ構造体4Aは、第1の面4Aaでは光が透過し、第2の面4Abでは、着色層7を設けることで、反射、散乱、回折、干渉、吸収のうち少なくとも一つ、言い換えれば、それらのいずれか又はそれら複数の光学現象を生じる。なお、着色層7は、薄膜から構成される場合に限定されず、第2の面4Abを粗面にして、着色層7としても良い。この場合、着色層7は白っぽく視認される。
【0039】
また、第2の面4Abの傾斜角αを90度若しくはその近傍の傾斜角とすることで、
図5に示す光路10のように、表示体1を真上から見た場合には、光が透過し且つ着色層7は薄いため、表示体1は着色層7が無いのと同じように見え方となる。一方、
図5に示す光路11、12のように、第2の面4Abに対し左右に傾いた方向から観察した場合には、着色層7の光学機能に応じて表示体の見え方が変化する。すなわち、観察方向により着色層7の見え方が異なる。尚、本開示での観察方向とは、光源側と同じ側からの観察、光源と反対側からの観察のそれぞれを示すことができる。また、表示体の表側と裏側、それぞれの面の観察を示すことができる。また、表示体の法線ベクトルに対する方向、すなわち法線ベクトルに平行な方向からの観察、正面からの観察方向、法線ベクトルと非平行な方向からの観察、言い換えれば、斜めからの観察方向とすることができる。また、観察方向は、表示方向と言い換えることができる。また、「表示体を観察する」は、「表示体が表示する」と言い換えることもできる。なお、本実施形態では、着色層7が設けられる各斜面の向きが同方向を向いているが、
図4(c)のように、第2の面4Abの向きを変えることで、その第2の面4Abの向きの変化によっても見え方が異なるようできる。
【0040】
以下、着色層7の具体的な効果について説明する。
具体的には、
図6(a)に示すように、第2の面4Ab、つまり着色層7を直接臨む側(左側とも呼ぶ)から、斜めに表示体1を観察する条件では、
図6(b)に示すように、領域2において、第2の面4Abに設けた着色層7が可視である。そして、その領域2において、その着色層7が特定の配置で整列されている場合には、その着色層7の配置によるモチーフを表示体は表示する。観察者は表示されたモチーフを観察できる。つまり、モチーフは可視とできる。表示されたモチーフには情報が記録されてもよい。記録された情報は、認証情報、識別情報、個別情報とできる。情報は、テキスト、マーク、シンボル、シグナル、しるし(sign)とできる。シンボルは、国旗、盾、剣、槍、防具、花、葉、植物、鳥、熱帯魚、昆虫、動物(animal)とできる。表示面1Sと対向する平面視において、画像31が有する輪郭は、画像31を出現させるモチーフの輪郭とほぼ等しい。そのため、モチーフにより出現する画像から情報を読むことができる。
【0041】
また、
図6(c)に示すような、真上から表示体1を観察する条件では、第2の面4Abに設けた着色層7の着色面は見えず、光はマイクロ凹凸構造層を透過するため、
図6(d)に示すように、着色層7によるモチーフが観察されない。この条件では、表示体は、着色層7によるモチーフを表示しない。
更に、
図6(e)に示すように、第1の面4Aaを直接臨む側(右側)から、斜めに表示体1を観察する条件では、
図6(f)に示すように、領域2において、第2の面4Abに設けた着色層7が可視となる。ただし、
図5のように、マイクロ構造体4Aを介して着色層7の裏面側が見えることから、第2の面4Ab、つまり着色層7を直接臨む側から、斜めに表示体1を観察した条件とは異なって見える。斜面に設けられた着色層7がマイクロ凹凸構造層越しに部分的に可視となり、
図6(f)に示すように、縞状のモチーフを見ることができる。
【0042】
(着色層7が反射層であるとき)
次に、着色層7が金属膜などによって反射層となっている場合の効果について説明する。
第2の面4Ab、つまり着色層7を直接臨む側からの斜め方向からの光路は、
図5に示すように、着色層7で反射して下方に抜けるため、着色層7は観察されず、表示体1の下方に置かれた物が見える。真上から観察した場合には、着色層7は観察されず、表示体1の真下に置かれた物が見える。第1の面4Aaを直接臨む側から、斜めに表示体1を観察した場合にも、着色層7の裏面で反射して下方に抜けるため、着色層7は観察されず、表示体1の下方に置かれた物が見える。
このように、着色層7が反射層である場合には、着色層7で反射若しくは、着色層7での反射することが無く直接、表示体1の下方が見える状態となる。ただし、後述のように、マイクロ凹凸構造層4の下層に印刷層その他の視覚効果追加層8を配置した場合には、観察する角度によって視覚効果追加層8の見え方が異なる状態となる。
【0043】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態は、
図7に示すように、第1実施形態とは、マイクロ凹凸構造層4の下層に視覚効果追加層8を設けた点が異なる。このため、視覚効果追加層8以外は、第1実施形態と同様な構成であるため、視覚効果追加層8を主として説明する。なお、第2実施形態の図では、基材層5を省略した構成を示しているが、基材層5を有していても良い。
【0044】
<視覚効果追加層8>
視覚効果追加層8は、マイクロ凹凸構造層4の基準面H側に設けられる。視覚効果追加層8は、印刷層、反射層、マイクロ凹凸構造層4とは屈折率の異なる層のいずれか又はその組み合わせから構成される。すなわち、視覚効果追加層8は、印刷層、反射層、屈折率の異なる層からなるか、これらの組み合わせによって2層以上の多層として構成される。多層の視覚効果追加層8は、屈折率の異なる層と印刷層との組み合わせ、屈折率の異なる層と反射層との組み合わせ、屈折率の異なる層から構成できる。2層の視覚効果追加層8も、同様である。
【0045】
(視覚効果追加層8が印刷層の場合)
視覚効果追加層8は印刷層とできる。印刷層は、インキを印刷し形成できる。インキは、可視インキ、不可視インキとできる。可視インキは、顔料インキ、染料インキとできる。可視インキは光学可変インキとできる、顔料インキは、磁性を帯びた磁性インキとできる。光学可変インキは、光干渉機能を有したパールインキとできる。不可視インキは、紫外線吸収インキ、赤外線吸収インキ、蛍光インキとできる。視覚効果追加層8の印刷に適用できるインキはこれらに限らず、一般的に印刷可能なものインキとできる。印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、オフセットグラビア印刷、スクリーン印刷とできる。また、これ以外にも、一般的な印刷を適用ができる。また、視覚効果追加層8は、樹脂を塗布により形成することもできる。塗布は、グラビアコート、マイクログラビアコート、ダイコートとできる。塗布する樹脂は、熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱可塑樹脂とできる。樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ウレタンアクリル樹脂とできる。印刷、コートのほかにも、キャスト法式や樹脂押し出し方式、ラミネート方式などにより視覚効果追加層8を設けることが可能である。
【0046】
(視覚効果追加層8が反射層の場合)
視覚効果追加層8は反射層とできる。反射層は可視光を反射する。特に、反射層は、可視光を鏡面反射する。反射層は金属層とできる。反射層は、堆積で形成できる。堆積は、物理堆積、化学堆積あるいは、その双方とできる。物理堆積は、蒸着、スパッタとできる。金属層の材料は、金属材料の単体又はこれらの合金とできる。金属は、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Agとできる。また、反射層は、金属層に限らず、反射性のインキを塗布又は印刷した層とできる。
【0047】
(視覚効果追加層8が屈折率の異なる層の場合)
マイクロ凹凸構造層4とは屈折率の異なる層(以下、単に屈折層とも呼ぶ)は、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8との界面で全反射する層とすることができる。屈折層は、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8との界面で全反射する層ため、マイクロ凹凸構造層4よりも屈折率の低い材料を用いることができる。全反射する層は、反射を高めることができるため、表示体の光学効果を高める。屈折層の材料は、無機材料、有機材料、有機無機複合材料であっても良い。また屈折層を有機材料から構成し、有機材料に、無機微粒子、有機微粒子、有機無機複合微粒子、中空粒子を添加して屈折率を調整するようにしても良い。この場合に微粒子表面に官能基を設けて分散性や膜強度を改善することが可能である。また、微粒子の分散性を改善するための分散剤や界面活性剤を添加することや、膜強度を改善するために架橋剤を添加しても良い。屈折層を設ける方法としては、先に述べた印刷層を屈折層の下層に設ける。
【0048】
逆に、マイクロ凹凸構造層4として、視覚効果追加層8に対し相対的に高屈折の材料を使用することも可能である。マイクロ凹凸構造層4の屈折率を調節する場合、用いる材料としては、無機材料、有機材料、有機無機複合材料であっても良い。またマイクロ凹凸構造層4を有機材料で構成しても良い。このとき、有機材料に、無機微粒子、有機微粒子、有機無機複合微粒子、中空粒子を添加して屈折率を調整するようにしても良い。この場合に微粒子表面に官能基を設けて分散性や膜強度を改善することが可能である。また、微粒子の分散性を改善するための分散剤や界面活性剤を添加することや、層の強度を改善するために架橋剤を添加しても良い。
【0049】
(視覚効果追加層8による効果)
次に、視覚効果追加層8が設けられている場合の効果について以下説明する。
図8(a)に示すように、第2の面4Ab、つまり着色層7を直接臨む側から、斜めに表示体1を観察した場合には、
図8(b)に示すように、領域2において、第2の面4Abに設けた着色層7が確認され、領域3では、マイクロ凹凸構造層4を透過して視覚効果追加層8が見える。なお、領域2において、その着色層7が特定の配置で整列されている場合には、表示体は、その着色層7の配置に応じたモチーフが形成できる。表示体は、モチーフの画像を出現できる。つまり、観察者はモチーフの表示を観察できる。言い換えれば、モチーフは可視とできる。モチーフには情報が記録されてもよい。記録された情報は、認証情報、識別情報、個別情報とできる。情報は、テキスト、マーク、シンボル、シグナル、しるし(sign)とできる。シンボルは、国旗、盾、剣、槍、防具、花、葉、植物、鳥、熱帯魚、昆虫、動物(animal)とできる。表示面1Sと対向する平面視において、画像31が有する輪郭は、画像31を出現させるモチーフの輪郭とほぼ等しい。そのため、モチーフにより出現する画像から情報を読むことができる。
【0050】
また、
図8(c)に示すように、表示体1を真上から観察した場合には、第2の面4Abに設けた着色層7の着色面は見えず、光はマイクロ凹凸構造層を透過するため、
図8(d)に示すように、領域2、3の両方の領域において、着色層7の下層の視覚効果追加層8が可視となる。
また、
図8(e)に示すように、第1の面4Aaを直接臨む側から、斜めに表示体1を観察する条件では、
図8(f)に示すように、領域2において、第2の面4Abに設けた着色層7が可視となる。ただし、マイクロ構造体4Aを介して着色層7の裏面側が見えることから、第2の面4Ab、つまり着色層7を直接臨む側から、斜めに表示体1を観察した場合とは異なるように見える。言い換えれば、領域2において、斜面に設けられた着色層7がマイクロ凹凸構造層越しに部分的に可視となると共に下層の視覚効果追加層8も部分的に可視とできる。
【0051】
(視覚効果追加層8が反射層である場合)
ただし、視覚効果追加層8が反射層からなる場合には、
図9に示すように、(a)、(c)、(e)のどの方向から観察しても、
図9(b)、(d)、(f)のように、領域2では着色層7が視認される。
すなわち、着色層7を設けた第2の面4Ab側から斜めに表示体1を観察する条件では、入射した光が領域3では視覚効果追加層8で反射する。この条件で、領域2で着色層7が可視とできる。
【0052】
また、真上から表示体1を観察する条件では、領域2では反射層に写った着色層7が観察され、領域3では反射層が観察される。ここで、領域2では、上方から入射した光が第1の面4Aaで第2の面4Ab側に屈折してマイクロ凹凸構造層内に入射する光路となることで、反射層で反射する着色層7が見える(
図5参照)。
第1の面4Aa側から斜めに観察した条件では、領域2では、マイクロ凹凸構造層を介して直接に見える着色層7と視覚効果追加層8に反射して写った着色層7の像とによって、着色層7だけが観察され、領域3では反射層が観察できる。
このように、視覚効果追加層8が反射層であるときは、どの観察方向からでも、領域2では着色層7の色が可視とできる。
【0053】
(視覚効果追加層8が屈折層から構成され、かつ、マイクロ凹凸構造層4の屈折率が、視覚効果追加層8<マイクロ凹凸構造層4の場合)
視覚効果追加層8の屈折率がマイクロ凹凸構造層4よりも低い場合、マイクロ凹凸構造層4から視覚効果追加層8への入射角が臨界角以上のとき、その界面で全反射が起きる。
全反射について、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10は臨界角を説明する断面図である。
媒質iと媒質tは平らな界面を有しており、媒質iの屈折率は n
i 、媒質tの屈折率は n
t である。臨界角θはスネルの法則と屈折率の定義から、(1)式で求められる。
sinθ = n
t /n
i ・・・(1)
【0054】
図10中の θは臨界角であり、この角度で入射する入射光1aは、屈折角θ’=90°の方向(媒質iと媒質tの界面方向)に屈折光1bとなる。臨界角θよりも大きい角度で入射した光である入射光2aは全反射して反射光2bとなる。
なお、図示しないが、臨界角θよりも小さい角度で入射した光はスネルの法則に従った屈折角で屈折して二つの媒質界面を透過する。
図11にてマイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8(低屈折層)との界面にて全反射するメカニズムについて説明する。先にも述べた通り、屈折率が高い材料から低い材料に光が入射するとき、入射角が臨界角以上では界面で全反射する。臨界角は材料の屈折率差に依存し、(1)式によって導かれる。マイクロ凹凸構造層4内を通って、視覚効果追加層8との界面で全反射するためには入射角4a及び6aが臨界角以上である必要がある。
【0055】
マイクロ凹凸構造層4の底面4Acと成す角が90度の斜面に着色層7が設けられるとき、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8が隣接する面への入射角6aは(2)式で求ることができる。
(入射角6a)=β-(屈折角5b) ・・・(2)
入射角6aが臨界角になるとき、スネルの法則と屈折率の定義より(3)式が成立する。
sin(α-5b)=n3/n2 ・・・(3)
また、マイクロ凹凸構造層の外部から内部に入射する光についてもスネルの法則より(4)式が成立する。
n1・sin5a=n2・sin5b ・・・(4)
【0056】
(3)式および(4)式からマイクロ凹凸構造層4への入射角5aが定義されるときに、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8との界面にて全反射が起きる臨界角はマイクロ凹凸構造層4の斜面のなす角αによって変動する。
そして、
図12(a)に示すように、着色層7を設けた第2の面4Ab側から斜めに表示体1を観察した条件では、領域3では視覚効果追加層8は光を透過し、領域2では着色層7が見ることができるため、
図12(b)に示すように、表示体に、モチーフの画像が出現し、表示体はモチーフを表示する。
図12(c)に示すように、真上から表示体1を観察する条件では、領域2及び3ではマイクロ凹凸構造層4を透過し視覚効果追加層8が見えることができるため、
図12(d)に示すように、表示体のモチーフの画像は消失する。
【0057】
図12(e)(g)に示すように、第1の面4Aa側から斜めに観察する条件では、前述した通りマイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の屈折率に依存して臨界角が存在する場合、全反射が起きる。
図12(e)に示す観察条件で、光の入射角が臨界角以下のため全反射が起きない場合、マイクロ構造の斜面から入射した光が透過し、領域3では視覚効果追加層8が観察される。領域2では第2の面4Abに設けられた着色層7が部分的に見られ、
図12(f)のように、モチーフの画像が観察される。すなわちモチーフの画像が出現する。言い換えれば、表示体は、モチーフを表示する。一方、
図12(g)に示すような全反射する観察条件では、領域2では着色層7が視覚効果追加層8との界面で反射し、領域3では全反射するため、
図12(h)のように、表示体に、モチーフの画像が出現し、表示体は、モチーフを表示する。
【0058】
視覚効果追加層8に屈折率が異なる層が設けられることで、表示体を着色層7が設けられていない側から観察したときに、その角度に依存して着色層7が観察されるか、透過するかが決定される。そのため、表示体は観察角度によって異なる画像を出現させることができる。
ここで、視覚効果追加層8は、予め設定した波長域の可視光を吸収する吸収層でもよい。
【0059】
「第3実施形態」
次に、第3実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態は、
図13に示すように、第2実施形態とは、着色層7の上に隠蔽層9を設けた点が異なる。このため、隠蔽層以外は、第2実施形態と同様な構成であるため、隠蔽層9ついて主に説明する。なお、
図13では、基材層5を省略した構成を示しているが、基材層5を有していても良い。また、着色付与層を省略しても良い。
【0060】
<隠蔽層9>
隠蔽層9は、マイクロ構造体4Aに形成した着色層7の上に形成される。隠蔽層9は、一つの着色層7の全部を覆うように形成しても良いし、一部分だけを覆うように形成しても良い。着色層7の一部分だけを隠蔽層9が覆う場合、着色層7の半分以上、つまり、50%以上の面積を覆うことができる。これにより、隠蔽層9は、着色層を隠蔽できる。隠蔽は、部分的な隠蔽でも、隠蔽により視覚的な差異が生じればよい。視覚的な差異は、着色層7の退色とできる。退色は、着色層7の見た目上での彩度の低下とできる。
隠蔽層9は着色層7の色を隠すものである。隠蔽層9自身は、色が付いていても良い。
隠蔽層9は、インキなどの着色層7及び視覚効果追加層8と同様の材料が使用でき、着色層7と同様の方法にて設けることができる。隠蔽層9のインキとしては可視領域以外の光を吸収するものを用いても良く、これによって検出機を用いた画像の検証や、特殊光源下での目視による画像の検証が可能となる。成形方法としても先に述べたものと同様である。
【0061】
<隠蔽層9を設ける効果>
着色層7における、マイクロ凹凸構造層4側とは反対側の面に隠蔽層9を設ける効果について説明する。
隠蔽層9を設けることで、着色層7の表面側と裏面の光学効果を簡易に変えることが可能となる。
特に、視覚効果追加層8が上記のような反射層又は屈折層で構成する場合、つまり特定の角度によって着色層7が反射して見える構成の場合に、隠蔽層9を設けると効果的である。
【0062】
(視覚効果追加層8が反射層である場合)
まず、視覚効果追加層8が反射層である場合について説明する。
図14(a)に示すように、表示体1を第2の面4Ab側から観察した場合、領域2において、隠蔽層9が視認されるため、
図14(b)のように、モチーフを表示する。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
一方、
図14(c)(e)に示すように、真上から及び第1の面4Aa側から観察した場合には、領域2では視覚効果追加層8に反射した着色層7が、領域3では視覚効果追加層8が視認されるため、
図14(d)(f)に示すように、同じモチーフを表示する。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
【0063】
(視覚効果追加層8が屈折層である場合)
次に、視覚効果追加層8が屈折層である構成について説明する。
前述した通りマイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の屈折率に依存して臨界角が存在するため、全反射が起きる。
図15(a)に示すように、第2の面4Ab側から斜めに観察する条件では、領域3では視覚効果追加層8を透過し、領域2では着色層7が可視となるため、
図15(b)のように、モチーフを表示する。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
また
図15(c)に示すように、表示体1を真上から観察する条件では、領域2、3とも、マイクロ凹凸構造層4を透過し視覚効果追加層8が可視となるため、
図15(d)のように、視覚効果追加層8によるモチーフを表示できる。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
【0064】
一方、
図15(e)(g)に示すように、第1の面4Aa側から斜めに観察した場合には、前述した通りマイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の屈折率に依存して臨界角が存在する。このため、入射角が臨界角以上の条件で全反射が起きる。このため、
図15(e)に示す観察条件では光の入射角が臨界角以下のため全反射が起きない場合、マイクロ構造の斜面から入射した光がマイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の界面を透過する。そして、領域3では視覚効果追加層8が可視となり、領域2では垂直面に設けられた着色層7が部分的に見られる。この結果、
図15(f)のように、領域3の視覚効果追加層8によるモチーフを表示する。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
一方、
図15(g)に示すような全反射する観察条件では、領域2では視覚効果追加層8との界面で反射した着色層7が、領域3では全反射が視認されるため、
図15(h)のように、領域3の全反射によるモチーフを表示する。つまり、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
【0065】
以上のように、隠蔽層9により、領域2は、観察方向によって異なる色を表示できる。
更に、視覚効果追加層8として屈折層を設けることで同一方向から観察したときに異なる角度で見たときの透過と着色層7の色変化を付与することができるため、透過と2色の色変化を着色層7と隠蔽層9とで実現できる。
また、視覚効果追加層8が設けられていない場合でも隠蔽層9を設けることによって、マイクロ構造の着色層7及び隠蔽層9が設けられている側から観察する条件と、マイクロ凹凸構造層4の底面4Ac側から観察する条件とで、異なる色とできる。
【0066】
「第4実施形態」
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様であるが、マイクロ凹凸構造層4(マイクロ構造体4A)及び着色層7の構成が異なる。その他の構成は、適宜、第1~第3実施形態の構成を適用することができる。
上記第1実施形態は、マイクロ凹凸構造層4を構成する各マイクロ構造体4Aが、気体、液体又は固体のいずれ1つからなる構成である。マイクロ構造体4Aが熱可塑性樹脂の場合は、その融解温度(JIS k7121)若しくは軟化温度(JIS k 6863)が表示体1を使用する際の雰囲気温度範囲よりも高い樹脂を採用する。
更に、本実施形態では、マイクロ構造体4A内に複数の磁性粒子20が含有され、その磁性粒子20が第2の面4Ab側に寄せられて当該第2の面4Ab側に集積することで、着色層7を構成している。磁性インキは、複数の磁性粒子20を含んでいる。
【0067】
磁性粒子20は、磁力によって配向する特性を持ち、磁力線に沿って並ぶ粒子である。磁性粒子20は磁性金属から構成される。磁性粒子20としては、鱗片粒子や球状粒子等とできる。磁性粒子20の磁性金属は、ニッケルや酸化鉄等とできる。
磁性粒子20の表面に対してインキによる着色を行うようにしても良い。磁性粒子20の大きさは、マイクロ構造体4A内を移動可能な大きさとする。磁性粒子20は、最大径が0.1μm以上6μm以下とできる。最大径は、顕微鏡で計測できる。
第4実施形態のマイクロ凹凸構造層4(マイクロ構造体4A)の製造方法について説明する。
保護層6を構成する構造体に対して、ナノインプリント法、エンボス法等の構造形成プロセスによって、凹凸構造を形成する。凹凸構造は複数のマイクロ構造体4Aを有する。
【0068】
次に、マイクロ構造体4Aを形成する凹部内に、複数の磁性粒子20を含んだ気体(空気や不活性ガスなど)や、複数の磁性粒子20を含んだ液体(水など)、複数の磁性粒子20を含んだ上記固体のいずれかを充填した後に、基材層5により封止する。
マイクロ構造体に使用できる固体としては、有機材料、無機材料、又はそれらの混合体でも良い。有機材料は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などのマイクロ構造体4Aと同様の樹脂とできる。
複数の磁性粒子20を含んだ液体(水など)、複数の磁性粒子20を含んだ上記固体のいずれかを充填した状態では、
図17に示すように、マイクロ構造体4A内で複数の磁性粒子20が分散した状態となっている。
【0069】
次の工程として、マイクロ構造体4Aの主成分が気体又は液体の場合にはそのままで、マイクロ構造体4Aの主成分が熱可塑性樹脂の場合には、熱可塑性樹脂が融解温度(JIS K7121)又は軟化温度(JIS K 6863)に達して流動性を生じるまで加熱後に、
図18に示すように、表示体1を、磁石21上を横方向に相対移動させる。磁石は磁力線を生じており、この磁石上を相対移動させることで、磁性粒子20は、磁力線に沿って配向するだけでなく、第1の面4Aaに沿って移動して第2の面4Ab側に集積して着色層を構成する。
磁性粒子20が鱗片状の場合には、磁石の真下に位置したときには、磁力線に沿って立ち上がった状態となり、更に、右側に向かう磁力線によって右側に傾きながら、第1の面4Aaに沿って第2の面4Ab側に移動する。
【0070】
これによって、磁性粒子20によって着色層7が形成される。
ここで、磁性粒子20はマイクロオーダーの大きさであるため、磁性が作用しなければ、マイクロ構造体4Aの主成分が気体又は液体であっても、移動しない。
なお、
図16では、磁性粒子20と対向する位置にだけ視覚効果追加層8を設ける構成を示しているが、第2実施形態と同様に、第2の面4Abの全面に形成しても良い。
また基材層5の代わりに視覚効果追加層8を設けても良い。
更に、磁性粒子20で着色層7を設ける代わりに、第2の面4Abの内側面に、上述のような薄膜からなる着色層7を設けるようにしても良い。
【0071】
「第5実施形態」
本実施形態の基本構成は、上記各実施形態と同様であるが、第1の面に設ける機能層が光学変化層の構成である。
光学変化層以外の他の構成は、適宜、第1~第4実施形態の構成を適用することができる。
【0072】
〔表示体の構成と作用〕
本実施形態の表示体1は、
図23に示すように、特定の観察角度において、少なくとも1つの画像31を視認可能な表示面1Sを備えている。
表示体1において、表示面1Sは画像31が表示される面である。表示面1Sに表示されている画像31は1つの領域で構成されていても良く、また、複数の領域の集合によって構成されてあっても良い。表示面1Sは、平面であっても良いし、曲面であっても良い。
【0073】
図23では、表示面1Sと対向する平面視において、画像31はハート形状を有している。画像は、モチーフによる出現した画像とできる。なお、画像の形状は、テキスト、記号、マーク、シンボル、シグナル、しるし(sign)及び幾何学図形、又はその他のオブジェクトなどであれば良い。シンボルは、国旗、盾、剣、槍、防具、花、葉、植物、鳥、熱帯魚、昆虫、動物(animal)とできる。表示面1Sと対向する平面視において、画像31が有する輪郭は、画像31を出現させるモチーフの輪郭とほぼ等しい。そのため、モチーフにより出現する画像から情報を読むことができる。
画像31を形成する画像形成層は、上述のような、複数のマイクロ構造体4Aが配置されたマイクロ凹凸構造層4から構成されている。
マイクロ凹凸構造層4が一方向に連続して並列させた構成の場合、互いに隣り合うマイクロ構造体4A同士は、構造を区画する1つの辺を共有している。
【0074】
本実施形態では、
図24に示すように、第2の面4Abと第1の面4Aaに光学変化層30が形成されている。光学変化層30は、形成する面の一部だけに設けても良い。一部に設ける場合、対象とする面の面積の30%以上80%以下とできる。光学変化層30は、反射する光の波長域又は透過する光の波長域が変化する層である。この変化は、光学変化層に入射する光の方向と、光学変化層の法線ベクトルのなす角度に応じた変化でとできる。各光学変化層30は、誘電体多層30A1,30A2と、金属反射層30B1、30B2の多層から構成されている。
第2の面4Abに積層された第2の面光学変化層30SAと第1の面4Aaに積層した第1の面光学変化層30SBの関係は、層厚が30SA<30SBであることが好適である。
【0075】
ここで、上記説明は、光学変化層30は、誘電体多層30A1,30A2と、その上に形成された金属反射層30B1、30B2とから構成される。光学変化層30は、更に、金属反射層30B1、30B2の上に第2の誘電体多層が形成されていても良い。
また、光学変化層30を構成する金属反射層について、可視光領域の波長に対し、第2の面4Abに備えられた金属反射層30B2は、反射率の総和より透過率の総和が高く、第1の面4Aaに備えられた金属反射層30B1は、反射率の総和より透過率の総和が低くなるよう構成できる。これにより良好な視覚効果が実現できる。
【0076】
上記構成において、光学変化層30を、第2の面4Abと第1の面4Aaに接する側からそれぞれ誘電体多層層と金属反射層を形成した際に、
図25(a)から(c)で示すように、モチーフを表示することができる。すなわち、モチーフの画像が出現する。これにより、モチーフが観察される。
観察者15は表示体1の表示面1Sを観察することで、表示体に形成されたモチーフの画像31を観察ができる。言い換えれば、モチーフを表示することができる。すなわち、モチーフの画像が出現する。ただし、表示面1Sに直交する方向から可視光の波長を有した光源16から、表示体に可視光が照射されている条件では、
図25(a)のように、表示体1を正面から観察すると、画像31は観察できない。すなわち、モチーフの画像は消失する。
【0077】
また、
図25(b)のように、表示面1S側から可視光を照射し、表示体1を正面とは異なる方向から観察すると、画像31(ハート形状)を観察することができる。つまり、画像31が出現する。更に、
図25(c)のように、表示面1Sと反対の方向から可視光の波長を有した光源16で光が照射されている条件で、表示体1を正面から観察すると、
図25(b)のように、表示体1を正面とは異なる方向から可視光を照射して観察された画像と異なる色を有した画像31を観察できる。つまり、表示面1S側と同じ側から可視光を照射し、表示体1を正面とは異なる方向から観察する条件と、表示面1Sと反対の方向から可視光の波長を有した光源16で光が照射されている条件で、表示体1を正面から観察する条件では、異なる色の画像が出現する。
ここで、表示体を観察する光源16は、可視光の波長の光は、平行光とできる。これにより、表示体を均質に観察することができる。
【0078】
上記メカニズムについて、
図26(a)~(c)を用いて、光路を用いた説明を行う。なお、
図25の機能と
図26のメカニズムはそれぞれ関連している。例えば、
図26(a)のメカニズムによって、
図25(a)の機能を有することとなる。また、模式図を簡略化させるため、
図26では、マイクロ凹凸構造層4で構成されたマイクロ構造体のみを示している。しかし、上述の説明の通り、第2の面4Abと第1の面4Aaにはそれぞれ光学変化層30が形成されている。
図26(a)で示すように、表示面1Sに対向する側の光源16から照射した表示面1Sに直交する光は、第1の面4Aaに入射する。このとき、光学変化層30の最表面は金属反射層となるため、鏡面反射が起こる。
【0079】
第1の面4Aaの傾斜角を45度にした構成では、鏡面反射によって、第2の面4Abの斜面に対して直行する方向に光を反射する。また、第2の面4Abに形成した金属反射層は、可視光の光源16に対して、反射率の総和より透過率の総和が高くなっている。このため、第1の面4Aaから反射してきた光の大半は第2の面4Abを透過する。更に、透過してきた光は再び第1の面4Aaの斜面に入射し、第1の面4Aaに設けた金属反射層によって鏡面反射が起こる。その結果として、表示面1Sと反対方向に光を透過する。よって、表示体1に入射してきた光を透過する機能を持ち、画像31が出現しない状態とできる。
【0080】
図26(b)で示すように、表示面1Sに対向する光源16から照射してきた光で表示面1Sに対して45度の角度から入射してきた光は、第1の面4Aaに入射する。これにより、光学変化層30の最表面に設けた金属反射層によって鏡面反射が起こる。
例えば、第1の面4Aaの傾斜角を45度とした構成では、鏡面反射によって、入射してきた光の方向に反射する。よって、観察者15が45度の角度で観察した場合、この反射を認識することが可能となる。このとき、画像31(ハート形状の)は無彩色で高輝度の画像(ハート形状)となる。
【0081】
図26(c)で示すように、表示面1Sと反対の方向から可視光の波長を有した光源16により表示面1Sと直交する方向から照射する。これにより、第1の面4Aaの傾斜角を45度に設定する場合、
図26(a)と向きが逆になる光路を辿る。ただし、
図26(a)の場合とは異なり、
図26(c)の場合には、形状を観察できる。
すなわち、第2の面4Abと第1の面4Aaに備えられた誘電体多層によって、多層干渉が生じ、特定の波長の反射率が高くなり、観察者15は特定の波長の光を観察できる。よって、観察者15が表示体1を正面で観察した際に、画像31は特定の波長に着色された形状として観察できる。特定の波長は、青として、400nm以上、490nm未満の範囲、更には、435nm以上、480nm以下の範囲とできる。特定の波長は、緑として、490nm以上、580nm以下の範囲、更には、500nm以上、560nm以下の範囲とできる。この回折した光は、画像を表示できる。特定の波長は、赤として、595nm以上、800nm以下、更には、610nm以上、750nm以下の範囲とできる。
【0082】
多層干渉については、層の屈折率と膜厚、及び入射角により、干渉によって強め合う波長を計算することができる。光学変化層30を構成する誘電体多層の各層厚と屈折率、ならびに金属反射層の膜厚と屈折率によって、多層の干渉が決定される。これにより、
図25(c)の観察条件で表示される色を設計することができる。
一般に、光の干渉現象は、
図27のように説明することができる。
すなわち、光波の波面の一部が、薄膜(媒質II)の上面で反射し、一部が層(媒質II)の中に屈折しながら入射して、下面で反射する。そして、上面で2つの光波が干渉しあって、観察者の目に届くとした時、2つの光波の経路差は、AED-BDとすることができる。
【0083】
このとき、媒質Iの屈折率をn1とし、層(媒質II)の屈折率をn2とすると、2つの光波の光路差は、n2×AED-n1×BDと現すことができ、更に、BDとACは光学的距離が同じであるため、n1×BDはn2×ACと等しいとすることができる。従って、(5)式が成立する。
n2×AED-n1×BD=n2×AED-n2×AC … (5)
また、n2×AED-n2×ACは、n2×CEDとすることができるため、(6)式とすることができる。
n2×AED-n2×AC=n2×CED … (6)
ここで、層(媒質II)の下面に対する点Dの対象点をD’とすると、EDとED’が等しいことから、(7)式が成立する。
CED=CD’ … (7)
【0084】
直角三角形CDD’から、CD’は、DD’cosθとすることができるため、層(媒質II)の厚さをdとすると、光路差すなわちn2×CEDは、(8)式で表すことができる。
n2×CED=n2×DD’cosθ=2n2dcosθ … (8)
層(媒質II)によって生じた光路差に応じて、点Dから射出される反射光は、層(媒質II)の上面における反射光と層(媒質II)内から射出される反射光との干渉が生じる。
このとき、n1<n2であれば、2つの光が強め合う波長は、(m+1/2)λとすることができるため、(9)式が成立する条件で、層(媒質II)を設計することで、設計された色を表示できる。
2n2dcosθ=(m+1/2)λ … (9)
(但し、m=0、1、2、3、…)
【0085】
表示体1に出現する画像は、ベクトルによって表現された、領域の集合によって画像を表現するベクター画像であっても良く、単位画像の集合によって画像を表現するラスター画像であっても良い。
画像31は複数の領域によって構成された画像であっても良い。
図28では、画像31は領域31Aと領域31Bで構成されている。その構成には、ハート形状を形成する。
マイクロ凹凸構造層4のそれぞれの領域には、複数のマイクロ構造体が備えられ、領域31Aと領域31Bの中に配置されるマイクロ構造体は、領域毎に個別に一様な配列が配置されてもよい。また、領域毎に第1の面4Aaの傾斜角はそれぞれの領域毎で異なっていてもよい。
【0086】
領域毎に配置される複数のマイクロ構造体は、構造の周期が1μm以上300μm以下の範囲であることが望ましい。
複数のマイクロ構造体が一定の周期で配列された場合、回折効果が生じてしまうが、1μm以上に設定することで、可視光の回折を低減できる。また、周期を300μm以下とすることにより、人の目の分解能より小さいくすることができ、表示体1を観察する際に観察者15によってマイクロ構造体が認識されない。つまり、マイクロ構造体が一体として観察される。この結果、表示体の視認性を高めることができる。またその美観を高めることができる。
【0087】
図29は、
図25と同様の方向で上記構成を観察した際に出現する画像を説明している。
図29(a)で示すように、領域毎に第1の面4Aaの傾斜角が異なっていても、
図25(a)で説明した効果は保持される。このため、領域31Aと領域31Bで異なる認識はなく、画像31を認識させない状態とすることができる。
領域によって、第1の面4Aaの傾斜角が異なる構成では、
図29(b)で示すように、観察者15がそれぞれの領域によって、異なる反射特性を観察できる。より詳しく説明すると、観察角度が限定されることで、第1の面4Aaの傾斜角に応じて領域毎の反射光量が異なり、観察者15には無彩色は変わりないが、濃淡情報として領域毎に識別することが可能となる。
【0088】
領域毎に濃淡を変化するように制御することによって、立体の奥行情報を濃淡に変換して表現することができる。これにより、画像31の外観を立体的にできる。
更に、
図29(c)で示すように、領域毎に第1の面4Aaの傾斜角を異ならせることにより、第1の面4Aaに備えられた誘電体多層に入射する角度が領域毎に変化する。このため、それぞれの領域において強め合う波長が変化し、領域毎に異なる波長の反射光を射出することが可能となる。
よって、観察者15が表示体1を観察した際に、画像31は領域毎に特定の波長の光が認識され、領域毎に色が異なる。これにより、表示体の美観を高められる。
他の構成として、領域毎に第2の面4Abと第1の面4Aaの配置方向が異なる構成としても良い。
【0089】
また、領域毎に異なる画像を形成してもよい。
図29(a)で説明した観察条件では、全ての領域が同じ役割を果たし、画像を認識できないが、
図28(b)で説明した観察条件では、一部の領域のみが効果を発現し、画像(例えば、「A」)を表示する。
図29(b)で説明した観察条件とは異なる別の角度で観察すると、異なる一部の領域のみが効果を発現し、画像(例えば、「B」)を表示する。このような観察角度で異なる効果を付与することも可能となる。これは、
図29(c)でも同じことがいえる。つまり、領域毎に傾斜角や斜面の向きを制御することで、表示体1に出現する画像31を増やすことができる。
【0090】
すなわち、領域毎に、傾斜角や斜面の向きを制御して、画像形成することにより、
図29(a)で説明した観察条件では、マイクロ構造体に起因する画像を観察することができず、
図29(b)で説明した観察条件では、観察する角度や方向によって、異なる画像の観察が可能である。また、
図29(c)で説明した観察条件では、傾斜方向の違いで表現され、
図29(b)の観察条件での画像は、一体的な外観で観察される。このため、
図29(b)の観察条件で観察された画像とは異なる画像や色相を表現することが可能となり、表示体の観察条件に応じた多様な画像を出現可能となる。
【0091】
領域毎の各構造の周期が一定の場合、構造の高さを制御することで領域毎に傾斜角を変化させることが可能である。しかし、傾斜角を変化させるための手法としては、構造の高さを領域毎に制御することなく、各領域の構造高さが一定であっても、領域毎の構造の周期を変化させることで、同様の効果を達成することができる。
領域毎の構造の高さを一定とし、構造の周期を変化させることにより加工を容易とできる。
また、本実施形態の応用として、マイクロ凹凸構造層4の下層、すなわち表示面(1S)側とは反対側に、全面又は一部に印刷層を設けてもよい。この場合、
図29(a)の観察条件で画像31を認識させないことに加えて、新たな画像として印刷層を表示することが可能となる。
【0092】
その他には、領域毎に光学変化層30の光学的性質が異なっていても良い。領域毎のマイクロ凹凸構造層4のマイクロ構造体が同一であっても、第1の面4Aaに備えられた光学変化層30が反射する光の波長域、又は、透過する光の波長域が異なるものとすることで、
図29(c)での観察条件にて、領域毎に異なる色を観察できる。より詳細には、領域毎のそれぞれの第1の面4Aaに備えられた光学変化層30が反射する光の波長域、又は、透過する光の波長域を異なるものとしてもよい。光学変化層30が反射する光の波長域、又は、透過する光の波長域は、誘電体多層の各層の厚みにより、変調できる。
【0093】
更に、マイクロ構造体を有するマイクロ凹凸構造層4の材料が、可視光が入射した際に少なくとも特定の波長に対する吸収よりも透過率の比率が高くすることにより、その波長での観察者15の視認性を高めることができる。そのため、画像の視認性を高めることが可能となる。特定の波長は、青として、400nm以上、490nm未満の範囲、更には、435nm以上、480nm以下の範囲とできる。特定の波長は、緑として、490nm以上、580nm以下の範囲、更には、500nm以上、560nm以下の範囲とできる。この回折した光は、画像を表示できる。特定の波長は、赤として、595nm以上、800nm以下、更には、610nm以上、750nm以下の範囲とできる。
【0094】
また、マイクロ凹凸構造層4のマイクロ構造体が設けられている面とは反対側の面の少なくとも一部に、第1の面4Aaの傾斜角や第1の面の光学変化層(30SB)が反射する光の波長域、又は透過する光の波長域を吸収する吸収層などが更に設けられてあっても良い。
このような吸収層を設けることにより、特定の波長域に対して、透過よりも吸収の比率が高まり、観察者15は、吸収された波長域の色の補色を観察できる。従って、第1の面光学変化層(30SB)の誘電体多層による干渉光と組み合わせることにより、誘電体多層の干渉により強め合う波長以外の波長域を吸収させた表示もできる。この結果、彩度が高められた画像31を表示することも可能となる。
【0095】
これまでに説明してきた構成は、表示体1の一形態であって、これまでに説明した各実施形態の構成を併せ持つ、若しくは、それぞれを複合した表示体1を提供することも可能である。その他として、表示体1に異なる領域が存在し、領域毎に、第1の面4Aaの傾斜角が異なり、一部の領域において、第1の面4Aaに備えられた第1の面光学変化層(30SB)の層厚が異なっており、かつその中でも更に一部の領域において、マイクロ凹凸構造層4の下層に印刷層が選択的に構成されていても良い。
更には、マイクロ凹凸構造層4の第2の面4Ab及び第1の面4Aaから構成された画像領域に隣接あるいは離間した領域には、平坦面、マット面、回折構造、あるいはマイクロ凹凸構造層4の表面からの距離が異なる複数の面(plane)からなるマイクロ構造体、光の半波長以上の格子が一方向に並んだ一次元格子や、光の波長以下で、2方向の交差する方向に配列された二次元格子などのマイクロ構造体を設けてもよい。
【0096】
マイクロ凹凸構造層4の表面からの距離が異なる複数の面は、マイクロ凹凸構造層4の平面と平行である面(plane)であり、マイクロ凹凸構造層4の平面を基準面とし、基準面と深さあるいは高さが異なり、かつ平行な複数の面である。この複数の面は、ある領域内で基準面に対する深さあるいは高さが同等である。この領域は、複数あってもよく、領域毎に深さあるいは高さが異なってもよい。
このような複数の面を構成することにより、深さあるいは高さに応じて、特定の色を表現することが可能となる。
また、上述の一次元格子の場合には、格子の並ぶ方向に応じて回折光を一方向に回折することができ、上述の二次元格子の場合には、光を吸収しやすくなる特性を有する。
このような構造を第2の面4Ab及び第1の面4Aaからなる画像領域のほかにマイクロ凹凸構造層4に設けることにより、より高い美観を付与することが可能となる。
【0097】
〔表示体の製造方法〕
上述した表示体1を製造する方法は、マイクロ凹凸構造層4に設けられるマイクロ構造体を複製する工程と、マイクロ構造体の第2の面4Abと第1の面4Aaに光学変化層30を備える工程を含むものとできる。
上記マイクロ凹凸構造層4に設けられるマイクロ構造体を複製する工程は、原版からエンボスにより複製する方法とできる。原版は平板状の基板が有する一方の面に感光性材料を塗布した後、感光性材料をレーザービームや電子ビームをスキャンにより露光し、その後現像することで、マイクロ凹凸構造の形状が形成された原版を得る方法で製造できる。
【0098】
そして、電気めっき等によって、金属製のスタンパを原版から製造し、この金属製スタンパをスタンプして、画像形成層を構成するマイクロ構造体を複製する。
なお、金属製のスタンパを製造する方法は、この他に、旋盤技術を用いた金属基板の切削加工であっても良い。
上述のようにして得られたスタンパを用いてマイクロ構造体を複製する方法は、熱エンボス法、キャスト法、フォトポリマー法によって成形物を形成する方法とできる。その後、得られた成形物の表面に光学変化層30を蒸着方法などによって形成することによって、表示体1を得ることができる。
【0099】
フォトポリマー法は、プラスチックフィルム等の平坦な基材と、金属製のスタンパとの間に、放射線硬化性樹脂を流し込み、放射線の照射によって放射線硬化性樹脂を硬化させた後、硬化された樹脂膜を基材毎、金属製のスタンパから剥離する。フォトポリマー法は、熱可塑性樹脂を利用するプレス法やキャスト法に比べ、構造上の精度が高く、耐熱性や耐薬品性に優れている点において好ましい。
マイクロ凹凸構造層4に対して、プラスチックフィルムを基材とすることができる。プラスチックフィルムは、透明なプラスチックフィルムとできる。プラスチックフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース樹脂、塩化ビニルやポリビニルアルコールなどのビニル樹脂などの樹脂のプラスチックフィルムとできる。
【0100】
これらの基材には、易接着処理、帯電防止処理、などの各種処理が施されてあっても良く、また上記のような樹脂材料が単独で用いられてあっても良いし、複数の材料を組み合わせた積層体等として用いられてあっても何ら問題ない。
マイクロ凹凸構造層4の材料は、樹脂とできる。マイクロ凹凸構造層4の材料は更に、硬化剤、可塑剤、分散剤、各種レベリング材、紫外線吸収剤、抗酸化剤、粘性改質剤、潤滑剤、染料や顔料などの着色剤、及び、光安定化剤などの少なくとも1つ、すなわち、いずれか一つ、又は、複数を含んでも良い。
【0101】
上述した樹脂は、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリル-(ポリ)スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アセタール系樹脂、及び、セルロース系樹脂とできる。マイクロ構造体の形成材料には、これらの樹脂を単独で用いても良いし、2つ以上を混合しても良い。
【0102】
また、マイクロ凹凸構造層4にマイクロ構造体を設ける方法としてフォトポリマー法を用いる場合には、放射線硬化性樹脂が用いられるが、放射線硬化性樹脂は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
重合性化合物としては、光ラジカル重合が可能な化合物とできる。具体的に、重合性化合物は、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーとできる。あるいは光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエイスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又はウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、アクリルアクリレート等のようなポリマーとしてもよい。
【0103】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤として、光ラジカル重合開始剤を添加できる。
この光ラジカル重合開始剤は、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α-アミノアセトフェノン及び2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モリホリノプロパン-1-オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンとできる。
【0104】
重合性化合物ならびに重合開始剤は、必ずしも上述のような光ラジカル重合型に限定されるものではなく、カチオン重合型などとできる。
また、これらの重合性化合物には、増感剤などが添加されてあっても良いし、あるいは重合開始剤や増感剤などを含まず、放射線として電子線などを用いる方法とできる。
光学変化層30は、堆積により形成できる。堆積は、物理堆積、化学堆積とできる。物理堆積は真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、イオンクラスタービーム法とできる。化学堆積法は、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、及び光化学堆積とできる。
【0105】
これらの方法の中でも、真空蒸着は、他の方法よりも生産性が高く、良質な光学変化層30を形成できる。また、真空蒸着は、第2の面4Abと第1の面4Aaに備えられる光学変化層30の層厚を制御できる。蒸着の方式でも斜方蒸着方式を利用することで、第2の面4Abと第1の面4Aaに備えられる光学変化層30の層厚に差をつけることができる。
光学変化層30の形成材料は、金属反射層とできる。金属反射層は、金属及び合金のいずれかを用いることが出来る。金属は、アルミニウム、金、銀、プラチナ、ニッケル、錫、クロム、及びジルコニウムとできる。合金は、これらの金属の合金とできる。また、誘電体多層は、高屈折材料と低屈折材料を交互に堆積し形成することができる。誘電体多層の材料は、ニッケルなどの金属の他に、チタンやタンタル、及び珪素といった金属や半導体の酸化物や硫化亜鉛、フッ化マグネシウムとできる。
【0106】
ここで、表示体が、第2の面ならびに第1の面に入射した可視光の反射波長又は透過波長が変化する光学変化層が形成され、光学変化層は、誘電体多層と金属反射層の多層から構成され、第2の面に形成された光学変化層の層厚に対し、第1の面に形成された光学変化層が厚く、第2の面に備えた金属反射層は、可視光領域において反射率の総和に比べて透過率の総和が高く、第1の面に備えた上記金属反射層は、上記反射率の総和に比べて上記透過率の総和が低い構成では、表示体の識別性を高めることができる。
この構成によれば、表示体を正面から観察する条件、異なる角度から観察する条件、表示体を可視光線で裏面から照射した際に観察する条件、など少なくとも3つの観察条件で第2の面と第1の面での光学機能が変化し、異なる画像を観察することができる。言い換えれば、3つの観察条件での第2の面と第1の面での光学機能の変化により、表示体は異なる画像が出現する。これにより表示体を検証できる。
【0107】
また、画像形成層を形成する複数のマイクロ構造体4Aが、複数の領域に個別に設けられ、少なくとも一部領域において、第1の面の傾斜角や第2の面と第1の面の面方向が他の領域と異なっている構成では、領域毎に異なる視覚効果を有した画像を形成することが可能であり、また、観察できる方向の制御も可能となり、画像を形成する自由度が高まる。
そして、その複数の領域において、少なくとも一部の領域で第2の面に積層された光学変化層の層厚と上記第1の面に積層された上記光学変化層の層厚の差が、他の領域と異なっている構成では、領域毎に異なる色を認識することが可能であり、領域毎にカラフルな画像を形成できる。また、画像に様々な色を着色できる。
【0108】
また、画像形成層を形成するマイクロ凹凸構造層4が、可視光が入射した際に、特定の波長で吸収よりも透過の比率が高い構成では、表示体の裏面から可視光を照射して正面から観察する条件で、透過率が高まり、視認性の高い画像が観察されることができる。
また、複数のマイクロ構造体4Aが設けられている面とは反対側の面の少なくとも一部に、第1の面の傾斜角あるいは上記光学変化層の層厚に応じた反射光の波長域、又は透過光の波長域を吸収する吸収層を更に設けた構成では、表示体の裏面から可視光を照射して正面から観察する条件では、不要な波長の吸収により、出現する画像を高彩度とできる。
【0109】
また、表示面に直交した方向から、可視光を照射する条件と、直行した方向とは異なる特定の方向から可視光を照射する条件とで、反射率が異なる構成では、表示体を正面から観察する条件と異なる角度から観察する条件で異なる光学機能を付与することが可能であり、それぞれで異なる画像を出現させることができる。
また、複数のマイクロ構造体4Aが周期的な構造で構成され、一部又は全部の領域同士の周期性が、互いに異なっている構成では、表示体を正面から観察する条件、異なる角度から観察する条件には、表示体を可視光源で裏面から照射した際に観察する条件など少なくとも3つの観察方法で領域毎に異なる可視性(visibility)を付与することが可能である、そのため、3つの観察方法での画像の外観をそれぞれ違うものとできる。また、1つのモチーフに様々な外観の画像を付与できる。
【0110】
また、複数のマイクロ構造体の周期が、1μm以上300μm以下である構成は、可視光の回折光を低減でき、ノイズとなる回折光を観察者に認識させないことが可能であり、かつ、人の目の分解能よりも小さいため、表示体を観察した際に構造そのものが認識されることを防止することができる。
以上説明したように、本発明の表示体とすることにより、識別性の高い表示体を得ることができる。
また、上述のような表示体とすることにより、少なくとも3つの観察方法で、表示体のモチーフの画像は、それぞれ異なる外観を有する。異なる外観の画像は、観察者の検証に役立つ。そのため、検証性の高い表示体を得ることができる。
【0111】
「変形」
(1)上記の第1~第4実施形態では、領域2のマイクロ構造体4Aに着色層7を設けた場合を示したが、領域3のマイクロ構造体4Aに、領域2とは異なる着色層7を設けても良い。すなわち、領域毎に異なる着色層7を設けても良い。
第1実施形態の構成では、着色層7の設けられていない領域3はマイクロ構造体4Aのみが存在するため光が透過する。このため、第2実施形態のように、色を表現するためには視覚効果追加層8としての印刷層や反射層を設ける必要があった。
これに対し、異なる領域に異なる着色層7を設けることで、領域3を、視覚効果追加層8なしに同時に領域2とは異なる色とできる。
【0112】
(2)また、領域2のマイクロ構造体4Aの向きと、領域3のマイクロ構造体4Aの向きを異なる方向に配置しても良い。すなわち、領域毎にマイクロ構造体4Aの向きを変えて配置しても良い。
更に、領域毎に、マイクロ構造体4Aの第1の面4Aaの傾斜角βが異なるように構成しても良い。
領域毎に第1の面4Aaの向きや傾斜角が異なるマイクロ構造体と、上記のような着色層7を設けることで幅広い色の表現が可能となる。
図19のように、第1実施形態の構成に対し、領域2と領域3で、異なる着色層7を設けると共にマイクロ構造体の第1の面4Aaの向きを反対側にした場合について説明する。
【0113】
この場合、
図20(a)に示すように、表示体1の表示面側を一方(左側)から斜めに観察した場合、領域2では着色層7aが視認され、領域3では部分的に着色層7bが視認されるため、
図20(b)のような画像が出現する。
また、
図20(c)に示すように、表示体1の表示面側を真上から観察した場合には、領域2、3ともマイクロ凹凸構造層4を透過するため色は見られず、
図20(d)のような画像が出現する。
更に、
図20(e)のように、表示体1の表示面側を他方(右側)から斜めに観察した場合には、領域2では部分的に着色層7aが、領域3では着色層7bが視認されるため、
図20(f)のような画像が出現する。
【0114】
(3)また、異なる着色層7は、着色と反射層や吸収波長の異なるインキの組み合わせでも良い。
この場合、これらによって透過の効果や、特定角度での特殊波長による認識が可能となる。
【0115】
(4)更に、異なる着色層7が設けられたマイクロ凹凸構造層4の底面4Acに、異なる視覚効果追加層8を設けることができる。
視覚効果追加層8として印刷層を設けた場合、透過時に下地の絵柄を観察することが可能である。また、視覚効果追加層8として屈折率の異なる層を設けた場合、同じ観察方向でもマイクロ凹凸構造層の斜面をなす角度を換えることによって、全反射する臨界角が異なるため、表示体は色が出現する状態、消失する状態を有することができる。色が出現する状態、消失する状態は、切り替えることができる。この切り替えは、観察方向による切り替えとできる。
【0116】
(5)異なる着色層7が設けられるのは、必ずしも異なる斜面の向きのマイクロ構造体4Aでなくてもよく、同じ斜面の向きの領域内で異なる着色層7を設けても良い。
この場合には、モチーフは1種類となるが、角度による色の出現、消失ができる。
(6)視覚効果追加層8に屈折率の異なる層を設けた場合に、マイクロ凹凸構造層4の角度を段階的に変化させてもよい。
この場合、臨界角を調整し、連続して動いて見える画像を表示できる。
【0117】
(7)また、複数の領域で着色層7を同じにして、領域毎に採用する隠蔽層9を異なるようにしても良い。
このように隠蔽層9が異なるとき、特定の角度でのみ画像を出現させることできる。
上述の実施形態では、透過以外の手法によってモチーフが消えた状態とできなかったが、視覚効果追加層8が同じで、隠蔽層9が異なる構成では、全体の色を均一とし、画像を不可視状態とできる。
視覚効果追加層8が反射層又は屈折率の異なる層の場合、着色層7のパターンが、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の界面に全反射して視認されるときと、隠蔽層9が視認されるときとで、異なる画像を表示できる。このようにして、隠蔽層9が異なることによる検証性の高い表示ができる。
【0118】
図21のように、領域2、3に同じ着色層7を設けることができる。また、領域2と領域3とで隠蔽層9を違うものとできる。
この場合、
図22(a)に示すように、表示体1を一方(左側)から斜めに観察する条件では、領域3では隠蔽層9bが、領域2では隠蔽層9aが可視であるため、
図22(b)に示すように、表示体に、領域3、領域2による画像が出現する。
図22(c)に示すように、表示体1を真上から観察する条件では、領域2及び3では光がマイクロ凹凸構造層4を透過し、視覚効果追加層8が可視であるため、
図22(d)に示すように、画像が観察される。つまり、表示体に、領域2及び3による画像が出現する。
【0119】
図22(e)(g)に示すように、表示体1を他方(右側)から斜めに観察する条件では、前述した通り、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の屈折率に依存して臨界角が存在するため、入射角が臨界角以上の条件で全反射が起きる。
図22(e)に示すような、光の入射角が臨界角以下のため全反射が起きない観察条件では、マイクロ構造の斜面から入射した光が透過し、領域2及び3では、着色層7が部分的に可視であるため、表示体に、
図22(f)に示すように、画像が出現する。一方、
図22(h)に示すような、全反射が起きる観察条件では、表示体に、領域2、3では着色層7が視覚効果追加層8との界面で光が反射するため、
図22(h)に示すように、画像が出現する。
【0120】
(8)また、着色層7と隠蔽層9が設けられるマイクロ凹凸構造層の斜面の向きは領域毎に異なっていても良く、着色層7が領域毎に異なっていても良い。また、着色層7が異なる領域はマイクロ凹凸構造層の斜面の向きが異なる領域とは違っていても良い。
(9)視覚効果追加層8が領域毎に異なるように構成しても良い。
この場合、視覚効果追加層8は領域毎に異なる外観を示すようなる。
部分的に色の付いた印刷が設けられており、別の部分は屈折率が異なる層や反射層が設けられていても良い。これによって部分的に全反射による特定の角度で着色層7の色を観察することができる。印刷は、特定の形状の領域を有することができる。また、印刷の領域の形状は、テキスト、シグナル、象徴、マークとしてもよい。印刷は、認証情報、識別情報、個別情報を印刷の領域の形状、印刷の階調として記録できる。
【0121】
(10)また、第1実施形態~第4実施形態の構成において、マイクロ凹凸構造層4を構成する複数のマイクロ構造体4Aの少なくとも一部に対し、
図30に示すように、第1の面4Aaの一部若しくは全面を覆うように、光学変化層30を積層して設けても良い。光学変化層30は、上述の通り、可視光の波長を光学的に変化させる層である。光学変化層30は、誘電体層30A、金属層30B又はその双方の多層から構成されている。
金属層30Bは、純金属及び合金と出来る。金属は、アルミニウム、金、銀、プラチナ、ニッケル、錫、クロム、及びジルコニウムとでき、合金は、これらの金属の合金とできる。また、誘電体層30Aは、高屈折材料、低屈折材料又はその組み合わせによって形成できる。誘電体層は、金属や金属酸化物、酸化ケイ素、硫化金属、フッ化金属、金属窒化物とできる。金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化チタン等とできる。金属硫化物は、硫化亜鉛等とできる。フッ化金属はフッ化マグネシウムなどとできる。誘電体層は、単層又は多層である。
第1の面4Aaに設ける金属反射層30B1は、可視光領域の波長に対して、反射率の総和より透過率の総和が高くできる。
【0122】
この場合、堆積を繰り返すことで光学変化層30を形成したのち、塗布などによって、着色層7を形成する。光学変化層30を、マイクロ凹凸構造層側から順に、第1の誘電体多層と金属反射層と第2の誘電体層で構成することができる。この場合、光学変化層30を、第1の誘電体多層として干渉層(材料の例:NiとSiOの多層)、金属反射層(材料の例:Al)、第2の誘電体層としてフッ化撥水層(材料の例:MgF)の構成とできる。堆積は、物理堆積、化学堆積とできる。物理堆積は、真空蒸着、スパッタとできる。フッ化撥水層は、第2の面4Abに着色層を印刷、コートで形成する際に、第1の面4Aaに印刷のインキやコートされた樹脂が付着することを防止できる。これにより、第1の面4Aaに選択的に着色層を形成できる。また、第1の誘電体多層は、マイクロ凹凸構造層側から表示体を観察する条件で表示されるモチーフを着色する。金属反射層は、光を反射する。光の反射は、表示体の視認を向上させる。
【0123】
干渉層は、異なる材料が多層として形成している。この材料には、金属、金属化合物、酸化ケイ素のいずれかを選択できる。金属は、ニッケル、アルミ、クロム、銀等とできる。金属化合物は、金属窒化物、金属酸化物、金属硫化物、金属フッ化物とできる。金属窒化物は、窒化アルミニウム、窒化チタン等とできる。金属酸化物は、酸化アルミニウム、酸化チタンとできる。金属硫化物は、硫化亜鉛とできる。金属フッ化物は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムとできる。干渉層は、可視光と干渉する。干渉層は、特定の波長域の光を反射する。金属反射層の材料は、金属とできる。金属は、アルミ、銀等とできる。フッ化撥水層の材料は、フッ化物とできる。フッ化物は金属フッ化物とできる。金属フッ化物は、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムとできる。
【0124】
この光学変化層30は、第1の誘電体多層と金属反射層と第2の誘電体層を、同一の堆積プロセスで形成できる。この堆積プロセスは真空蒸着で形成できる。 同じ種類(Type)の堆積プロセスとすることで、インライン、言い換えれば、一度のプロセスで光学変化層30を形成できる。この同一の堆積プロセスは、堆積の加工条件はそれぞれ異なってもよい。
より詳細には、光学変化層30は、マイクロ凹凸構造層の第1の面4Aaに、第1の誘電体多層を堆積し、次に、第1の誘電体多層を堆積したのと同じ種類の堆積で金属反射層を堆積し、次に、金属反射層を堆積したのと同じ種類の堆積で第2の誘電体層を堆積する方法で形成できる。
【0125】
以上の全実施形態及び変形で説明してきたように、本実施形態は、特定の色つき画像を特定角度で出現させる特殊な効果を有する。このため、偽造品の検出性が高い。その結果、偽造防止効果が高い。更には、表示体1越しに物品の固有情報を記載した印字層を確認した場合でも、固有情報を確認できる透明性を有しており、且つ、着色と、反射と透過の組み合わせにより、色の表現が豊富で視認性の良いマイクロ凹凸構造層による光学効果を得ることが可能である表示体1を提供することができる。
本実施形態では、マイクロ構造体の複製だけでは、光学効果の再現が不可能である、偽造防止効果の高い、かつ幅広い色表現ができる表示体1を提供することが可能となり、高い偽造防止効果を必要とするIDカードやパスポート、紙幣への利用が可能である。
また、上述のような表示体とすることにより、複数の観察方法で、それぞれ異なる視覚効果を有する、そのため、識別性の高い、表示体を得ることができる。
【0126】
[実験結果]
以下に、機能層として着色層を適用した実施形態に係る表示体の実験結果を説明する。
(実験結果1)
本発明に係る表示体1をフォトポリマー法にて製造するため、以下手順にて実施した。本実験結果では、マイクロ凹凸構造層4と視覚効果追加層8の屈折率差を出すため、マイクロ凹凸構造層4に高屈折材料を用い、視覚効果追加層8には低屈折材料を用いた。
はじめに、厚み23μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる支持体上に、視覚効果追加層8として高屈折率層を形成した。下記の視覚効果追加層インキ組成物を乾燥膜厚1μm以上2μm以下となるようにグラビア印刷法によって塗工し、窒素パージ環境下にて高圧水銀灯で300mJ/cm2の紫外線露光を行い乾燥させた。OP-38Zは硬化後屈折率1.38である。
【0127】
続いて、マイクロ凹凸構造層4を形成した。マイクロ構造体を形成する方法としては、ロールフォトポリマー法を利用した。
下記のマイクロ凹凸構造層インキ組成物を乾燥膜厚10μmとなるようにグラビア印刷法によって塗工した後に、塗工面に対して、鋸刃状凹凸構造を有する円筒状の原版を、プレス圧力を2Kgf/cm2、プレス温度を80℃、プレススピードを10m/minにて押し当てて成形加工を実施した。
成形と同時に、PETフィルム越しから、高圧水銀灯で300mJ/cm2の紫外線露光を行い、原版の凹凸形状がマイクロ凹凸構造層に形状転写されたと同時に硬化させた。成形後のマイクロ凹凸構造層における複数のマイクロ構造体となる「鋸刃状凹凸構造」は、深さ5μm、周期30μmであり、且つ垂直面と斜面から成る鋸刃状凹凸構造であった。
【0128】
続いて着色層7を形成した。まず、平滑平面部分で50nmの厚みとなるように、マイクロ凹凸構造層の全面にアルミを真空蒸着して反射層を設け、更に、着色層形成インキをバーコーターを用い0.5μm以上1μm以下にて塗工後、乾燥させ、マイクロ凹凸構造層4全面に着色した。着色した表示体1をアルカリにてエッチングし、アルミに積層したインキをアルミ毎除去して垂直面のみ着色面を残した。更に、下記の隠蔽層形成インキを蒸着、塗工、エッチングの工程を繰り返すことによって着色層7に隣接する隠蔽層9を形成することで表示体1を得た。
【0129】
「視覚効果追加層インキ組成物」
紫外線硬化型低屈樹脂(テ゛ィフェンサOP-3801 DIC製) 70.0質量部
MEK 30.0質量部
「マイクロ凹凸構造層インキ組成物」
紫外線硬化型高屈樹脂(ハイパーテックUR-108N 日産化学工業製)
「着色層形成インキ」
染料(VALIFAST YELLOW420 オリエント化学工業製) 3.4質量部
染料(VALIFAST ORANGE3209オリエント化学工業製) 1.6質量部
シランカップリング剤(DOWCORNINGZ6030 東レタ゛ウコーニンク゛製)
1.2質量部
ME 93.8質量部
「隠蔽層形成インキ」
染料(VALIFAST BLACK1807 オリエント化学工業製) 5.0質量部
シラン 1.2質量部
MEK 93.8質量部
【0130】
(実験結果2)
マイクロ構造の斜面側に着色層7が形成された表示体1の作成方法について説明する。視覚効果追加層8及びマイクロ凹凸構造層4の形成方法、使用インキについては実験結果1と同じである。着色層7の形成方法としては実験結果1に記載の方法と同様にバーコーターにて塗工し乾燥させた後、隠蔽層9のインキを塗工乾燥し、レーザーエッチングにより垂直面に着色層7と隠蔽層9が設けられた表示体1を得た。
本開示の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。更に、本開示の範囲は、請求項により画される発明の特徴(feature)に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴(feature)、その特徴(feature)のあらゆる組み合わせも含む。
【0131】
本開示で用いられる「部分」、「要素」、「画素」、「セル」、「セグメント」「単位」「表示体」、「物品」という用語は、物理的存在である。物理的存在は、物質的実施形態又は、物質に囲まれた空間的実施形態を指すことができる。物理的存在は、構造体とできる。構造体は、特定の機能を有するものとできる。特定の機能を有した構造体の組合せは、各構造体の各機能の組合せにより相乗的効果を発現できる。
本開示及び特に添付の特許請求の範囲内で使用される用語(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)は、一般的に、「オープンな」用語として意図される。例えば、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである。
また、用語、構成、フィーチャー、側面、実施形態を解釈する場合、図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ明確な事項は、テキストと同等に、補正の根拠とすべきである。
【0132】
更に、特定の数の導入されたクレーム記載が意図される場合、そのような意図はクレームに明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。しかしながら、そのような語句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」によるクレーム記載の導入が、そのようなクレームを含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」又は「少なくとも1つ」の冒頭の語句及び「a」又は「an」などの不定冠詞(例えば、「a」および/または「an」)は、少なくとも「少なくとも」を意味すると解釈されるべきである。「1つ」又は「1つ以上」)。クレーム記述を導入するために使用される明確な記事の使用についても同様である。
【0133】
また、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2017-241723号(2017年12月18日出願)及び日本国特許出願2017-251632号(2017年12月27日出願)の全内容は、参照により本開示に組み込まれる。
【符号の説明】
【0134】
1 表示体
1S 表示面
4 マイクロ凹凸構造層
4A マイクロ構造体
4Aa 第1の面
4Ab 第2の面
4Ac 底面
5 基材層
6 保護層
7、7a、7b 着色層
8 視覚効果追加層
9、9a、9b隠蔽層
20 磁性粒子
21 磁石
30 光学変化層
30A、30A1、30A2 誘電体多層
30B、30B1、30B2 金属反射層
H 基準面