(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20221220BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221220BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20221220BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20221220BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20221220BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/367
G01R31/3828
G01R31/388
H01M10/42 P
(21)【出願番号】P 2020004422
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 啓太
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-195096(JP,A)
【文献】特開2020-3218(JP,A)
【文献】特開2009-216681(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0069661(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36-31/44
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池と、
前記電池の電流を検出する電流センサと、
前記電池の電圧を検出する電圧センサと、
判定装置と、を備え、
前記判定装置は、
前記電圧センサから、充電開始時における前記電池の電圧である電圧V
0を取得し、前記電圧V
0に基づいて、前記電池の充電状態(SOC)を算出する第1算出部と、
前記電圧センサから、充電完了時における前記電池の電圧である電圧V
1を取得する第1取得部と、
前記電流センサから、前記充電開始時から前記充電完了時までの充電時間における電流量を取得し、前記電流量および前記充電時間から、前記充電完了時における前記電池の予測電圧である電圧V
2を算出する第2算出部と、
前記SOC、前記電圧V
1および前記電圧V
2に基づいて、前記電圧V
1から前記電圧V
2まで降下するまでの電圧推移T
2を算出する第3算出部と、
前記電圧センサから、充電完了後における前記電圧V
1からの降下電圧の電圧推移T
1を取得する第2取得部と、
前記電圧推移T
1および前記電圧推移T
2に基づいて、前記電池が正規品か否かの判定を行う判定部と、
を有する、電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電池に関して、正規な製造者により製造された電池(以下、正規品と称する)と、正規品を模倣した電池および正規品を不正に改造した電池等(以下、非正規品と称する)とを判別する技術が知られている。例えば特許文献1には、電池の重量の差の絶対値が予め設定したしきい値より大の場合に、電池が正規でないと判定する制御部とを備える電池パックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1では、電池重量の差に基づいて非正規品の判別をおこなっているが、電池重量に差がない場合でも非正規品を判別できることが望ましい。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電池の重量に基づかず非正規品の判別が可能な電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本開示においては、電池と、上記電池の電流を検出する電流センサと、上記電池の電圧を検出する電圧センサと、判定装置と、を備え、上記判定装置は、上記電圧センサから、充電開始時における上記電池の電圧である電圧V0を取得し、上記電圧V0に基づいて、上記電池の充電状態(SOC)を算出する第1算出部と、上記電圧センサから、充電完了時における上記電池の電圧である電圧V1を取得する第1取得部と、上記電流センサから、上記充電開始時から上記充電完了時までの充電時間における電流量を取得し、上記電流量および上記充電時間から、上記充電完了時における上記電池の予測電圧である電圧V2を算出する第2算出部と、上記SOC、上記電圧V1および上記電圧V2に基づいて、上記電圧V1から上記電圧V2まで降下するまでの電圧推移T2を算出する第3算出部と、上記電圧センサから、充電完了後における上記電圧V1からの降下電圧の電圧推移T1を取得する第2取得部と、上記電圧推移T1および上記電圧推移T2に基づいて、上記電池が正規品か否かの判定を行う判定部と、を有する、電池システムを提供する。
【0006】
本開示によれば、電圧推移に基づいて正規品であるか否かの判定を行うことから、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示においては、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示における電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に例示する模式図である。
【
図2】本開示における判定基準を説明する説明図である。
【
図3】本開示における判定装置が行う判定を説明する説明図である。
【
図4】本開示における判定装置が実行する処理を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示における電池システムについて、詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示における電池システムが搭載された車両の全体構成を概略的に例示する模式図である。車両20は、電池システム10と、パワーコントロールユニット(PCU:Power Control Unit)11と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)12と、駆動輪13とを備える。電池システム10は、電池1と、監視ユニット2と、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)3とを備える。
【0011】
監視ユニット2は、後述する電流センサおよび電圧センサを少なくとも有する。また、ECU3は、車両20の各種電子制御を行うが、判定装置としても機能する。判定装置は、その機能を実現するための処理ブロックとして、第1算出部、第1取得部、第2算出部、第3算出部、第2取得部および判定部を有し、電圧推移T1を電圧推移T2と比較することで、正規品か否かの判定を行う。
【0012】
本開示によれば、電圧推移に基づいて正規品であるか否かの判定を行うことから、非正規品と正規品との重量が同じ場合であっても、非正規品を判別することができる。本開示における電池システムは、電池電圧が過電圧(電極における測定電位と理論電位との差)により緩和挙動をとること、つまり、充電後の電池電圧が推移することに着目してなされたものである。電池の過電圧は、DC(直流)充電およびAC(交流)充電の両方で生じうるが、急速充電であるDC充電でより顕著となる。そのため、本開示における電池に対する充電は、DC充電である方が非正規品をより高精度に判別できるため好ましい。過電圧には、例えば、活性化過電圧、濃度過電圧、および抵抗(IR損)過電圧がある。電池の条件によってこれら過電圧の値は変化する。活性化過電圧は、正極活物質および負極活物質におけるLiイオン等のキャリアイオンのインターカレーション反応に関する過電圧を意味し、電荷移動反応における抵抗をRとした際に、電池に流れる電流値IとのI×Rが活性化過電圧に相当する。活性化過電圧の値は、例えば電池材料、電極厚み等の条件によって変動する。濃度過電圧は、電解液中のLiイオン等のキャリアイオンの移動に関する過電圧を意味し、拡散における抵抗をRとした際に、電池に流れる電流値IとのI×Rが濃度過電圧に相当する。濃度過電圧の値は、例えば電解液の組成等の条件によって変動する。抵抗(IR損)過電圧は、例えば集電体やタブの抵抗による過電圧である。抵抗(IR損)過電圧の値は、例えば集電体の材質および厚み等の条件によって変動する。このように、本開示における電池システムは、電池条件により変動する過電圧よって生じる、電圧の推移に着目することで、電池の重量に基づかず非正規品の判別ができる。
【0013】
1.電池
本開示における電池システムは、電池を備える。電池は単電池であってもよく組電池であってもよい。例えば
図1において、電池1は、MG12を駆動するための電力を蓄え、PCU11を通じてMG12へ電力を供給する。また、電池1は、MG12の発電時にPCU11を通じて発電電力を受けて充電される。
【0014】
電池は液系電池であってもよく、全固体電池であってもよい。また、電池は一次電池であってもよく、二次電池であってもよいが、中でも二次電池であることが好ましい。また、電池はリチウムイオン電池であることが好ましい。
【0015】
2.電流センサおよび電圧センサ
本開示における電池システムは、電流センサおよび電圧センサを備える。例えば
図1において、監視ユニット2は、電池1の状態を監視し、その監視結果をECU3に出力する。監視ユニット2は、電流センサおよび電圧センサを少なくとも含み、必要に応じて、温度センサを含んでいてもよい。また、監視ユニット2は、非正規品の電池が検出された場合に、電池の充放電を停止する充放電制御部を含んでいてもよい。
【0016】
電流センサは、電池1の電流を検出し、その検出値をECU3へ出力する。電圧センサは、電池1の電圧を検出し、その検出値をECU3へ出力する。
【0017】
3.判定装置
(1)判定装置の構成
本開示における電池システムは、判定装置を備える。判定装置は、電圧推移T
1を電圧推移T
2と比較することで、正規品か否かの判定が可能なように構成されている。例えば
図1において、ECU3は、CPU(Central Processing Unit)と、メモリと、各種信号を入出力するための入出力ポートとを含む。メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、書き換え可能な不揮発性メモリを含む。メモリに記憶されているプログラムをCPUが実行することで、各種制御が実行される。ECUが行なう各種制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
【0018】
判定装置は、その機能を実現するための処理ブロックとして、第1算出部、第1取得部、第2算出部、第3算出部、第2取得部および判定部を有する。
【0019】
第1算出部は、上記電圧センサから、充電開始時における上記電池の電圧である電圧V0を取得し、上記電圧V0に基づいて、上記電池の充電状態(SOC)を算出するように設定されている。例えば、第1算出部は、上記電圧V0をOCV(開回路電圧)として取得し、メモリに記録されているSOC-OCV曲線からSOCを算出する。
【0020】
第1取得部は、上記電圧センサから、充電完了時における上記電池の電圧である電圧V1を取得するように設定されている。本開示における充電完了時とは、所定の電圧に到達した時を意味し、満充電時でなくてもよい。また、本開示における電圧V1は、上述した過電圧を含んだ電圧である。
【0021】
第2算出部は、上記電流センサから、上記充電開始時から上記充電完了時までの充電時間における電流量を取得し、上記電流量および上記充電時間から、上記充電完了時における上記電池の予測電圧である電圧V2を算出するように設定されている。例えば、電圧V2は、上記電流量および上記充電時間から算出される充電完了時のSOCに基づいて、SOC-OCV曲線から算出することができる。また、本開示における電圧V2は、上述した過電圧が解消された電圧である。
【0022】
第3算出部は、上記SOC、上記電圧V1および上記電圧V2に基づいて、上記電圧V1から上記電圧V2まで降下するまでの電圧推移T2を算出するように設定されている。ここで、正規品の電圧推移(電圧推移T2)は、例えばメモリ(記憶部)にマップとして記憶されている。メモリには、正規品において種々の条件毎の電圧推移が記録されており、この電圧推移からは、正規品における条件毎のV1およびV2の値、ならびに、V1からV2に電圧が降下するのに要した時間等を読み取ることができる。なお、上記条件には、例えば充電開始時の電池温度が含まれていてもよい。第3算出部はSOC、電圧V1および電圧V2をメモリと照合することで、電圧推移T2を算出することができる。充電開始時におけるSOCの大小によっては、生じる過電圧の大きさや電圧降下に要する時間が変化する可能性がある。そのため、電圧推移T2の算出において、充電開始時におけるSOCを用いることで正確な電圧推移を算出することができる。
【0023】
第2取得部は、上記電圧センサから、充電完了後における上記電圧V1からの降下電圧の電圧推移T1を取得するように設定されている。
【0024】
判定部は、上記電圧推移T
1および上記電圧推移T
2に基づいて、上記電池が正規品か否かの判定を行うように設定されている。
図2に示すように、正規品か否かを判定する基準として、V
1からV
2に到達するまでに要した時間(基準1)およびV
1からV
2に到達するまでに要した時間における電圧降下量(基準2)を設定することができる。基準1または基準2において、電圧推移T
1と電圧推移T
2が等しい場合、判定部は電池を正規品と判定する。ここで、電圧センサの読み取り誤差およびセンサそのものの素子誤差を考慮して、例えば、電圧推移T
1と電圧推移T
2との差異が電池電圧範囲±2.5%の範囲に収まる場合、両者は等しいと判断することができる。なお、上記範囲は使用するセンサの種類等によって適宜設定することができる。
【0025】
非正規品か否かの具体的な判定は、
図3のように行うことができる。
図3(a)には、充電開始時の電池温度40℃および充電開始時のSOC30%の条件における、二つの電池(AおよびB)の電圧推移T
1が示してある。まず、上記基準1に基づいて判定を行う場合を説明する。
図3(b)に示すような時間マップから、充電開始時のSOC、V
1およびV
2の値に基づいて、電圧推移T
2におけるV
1からV
2に到達するまでに要する時間(tx)を算出する。そして、txと電圧推移T
1におけるV
1からV
2に到達するまでに要する時間とを比較する。
図3(a)に示すように、V
1からV
2に到達するまでに要した時間が、電池Aではtxであり電圧推移T
2と等しいが、電池Bではtyであり電圧推移T
2と異なっている。この場合、判定装置は基準1に基づいて、電池Aを正規品と判定し、電池Bを非正規品と判定する。また、上記基準2に基づいて判定を行う場合を説明する。
図3(c)に示すような電圧降下量マップから、V
1およびV
2の値に基づいて、電圧推移T
2における上記txを固定した場合の電圧降下量(ΔVx)を算出する。そして、ΔVxと電圧推移T
1における上記txを固定した場合の電圧降下量とを比較する。
図3(a)に示すように、時間txで降下した電圧の量が、電池AではΔVxであり電圧推移T
2と等しいが、電池BではΔVyであり電圧推移T
2と異なっている。この場合、判定装置は基準2に基づいて、電池Aを正規品と判定し、電池Bを非正規品と判定する。
【0026】
(2)判定装置の処理
図4は、本開示における判定装置の処理を例示するフローチャートである。
図4に示すように、ステップS1では、電圧センサから、充電開始時における電池の電圧である電圧V
0を取得し、電圧V
0に基づいて、電池の充電状態(SOC)を算出する。ステップS2では、電圧センサから、充電完了時における電池の電圧である電圧V
1を取得する。ステップS3では、充電開始時から充電完了時までの充電時間における電流量を取得し、電流量および充電時間から、充電完了時における電池の予測電圧である電圧V
2を算出する。
【0027】
ステップS4では、ステップS1で算出されたSOC、ステップS2で取得した電圧V1およびステップS3で算出された電圧V2に基づいて、電圧V1から電圧V2まで降下するまでの電圧推移T2を算出する。また、ステップS5では、電圧センサから、充電完了後における電圧V1からの降下電圧の電圧推移T1を取得する。そして、ステップS6で、ステップS4で算出した電圧推移T2およびステップS5で取得した電圧推移T1に基づいて、電池が正規品か否かの判定を行う。基準に基づいて、電圧推移T1と電圧推移T2とが等しい場合正規品と判定し、異なる場合非正規品と判定する。なお、図示しないが、非正規品が検出された場合、判定装置は、例えば充放電制御部に、電池の充放電を停止するよう指令を出すことができる。
【0028】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0029】
1 …電池
2 …監視ユニット
3 …ECU
10 …電池システム