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特許7196874品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221220BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20221220BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020046357
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021149272
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】大橋 政康
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 善貴
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-105847(JP,A)
【文献】特開2018-151575(JP,A)
【文献】特開2002-236511(JP,A)
【文献】特開2006-65598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程及び第2生産工程と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品を生産する第3生産工程とを有する工業プロセスで生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化システムであって、
前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する収集部と、
前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する選択部と、
前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる調整部と、
を備え、
類似度に応じて分類された前記評価指標の区分を示す第1情報と、前記選択部で選択されるべき生産工程を示す第2情報と、前記調整部で行われるべき調整方法を示す第3情報とが対応づけられた補助情報を有し、
前記選択部は、前記補助情報において前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第2情報に基づいて生産工程を選択し、
前記調整部は、前記補助情報において前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第3情報に基づいて前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる、
品質安定化システム。
【請求項2】
前記第1生産工程及び前記第2生産工程はそれぞれ、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を含んでおり、
前記収集部は、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行された生産工程における前記評価指標を収集し、
前記選択部は、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行されていない少なくとも1つを選択する、請求項1記載の品質安定化システム。
【請求項3】
前記第2生産工程は、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を複数含んでおり、
前記収集部は、前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群をなす複数の生産工程における前記評価指標を収集し、
前記選択部は、前記収集部で収集された前記第1生産工程の前記評価指標が所定の条件を満たした場合に、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の中から前記第2生産工程を選択し、
前記調整部は、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記選択部で選択された前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群の何れか1つを選択させることにより、前記選択部で選択された前記第2生産工程で生産される製品の品質を調整させる、
請求項1記載の品質安定化システム。
【請求項4】
互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程及び第2生産工程と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品を生産する第3生産工程とを有する工業プロセスで生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化方法であって、
収集部が、前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する第1ステップと、
選択部が、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する第2ステップと、
調整部が、前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる第3ステップと、
を有し、
前記選択部は、類似度に応じて分類された前記評価指標の区分を示す第1情報と、前記選択部で選択されるべき生産工程を示す第2情報と、前記調整部で行われるべき調整方法を示す第3情報とが対応づけられた補助情報において、前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第2情報に基づいて生産工程を選択し、
前記調整部は、前記補助情報において前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第3情報に基づいて前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる、
品質安定化方法。
【請求項5】
前記第1生産工程及び前記第2生産工程はそれぞれ、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を含んでおり、
前記第1ステップは、前記収集部が、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行された生産工程における前記評価指標を収集するステップであり、
前記第2ステップは、前記選択部が、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行されていない少なくとも1つを選択するステップである、請求項4記載の品質安定化方法。
【請求項6】
前記第2生産工程は、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を複数含んでおり、
前記第1ステップは、前記収集部が、前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群をなす複数の生産工程における前記評価指標を収集するステップであり、
前記第2ステップは、前記選択部が、前記収集部で収集された前記第1生産工程の前記評価指標が所定の条件を満たした場合に、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の中から前記第2生産工程を選択するステップであり、
前記第3ステップは、前記調整部が、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記選択部で選択された前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群の何れか1つを選択させることにより、前記選択部で選択された前記第2生産工程で生産される製品の品質を調整させるステップである、
請求項4記載の品質安定化方法。
【請求項7】
互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程及び第2生産工程と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品を生産する第3生産工程とを有する工業プロセスで生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化プログラムであって、
コンピュータに、
前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する第1ステップと、
収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する第2ステップと、
選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる第3ステップと、
を実行させ、
前記第2ステップは、類似度に応じて分類された前記評価指標の区分を示す第1情報と、前記第2ステップで選択されるべき生産工程を示す第2情報と、前記第3ステップで行われるべき調整方法を示す第3情報とが対応づけられた補助情報において、前記第1ステップで収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第2情報に基づいて生産工程を選択するステップであり、
前記第3ステップは、前記補助情報において前記第1ステップで収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第3情報に基づいて前記第2ステップで選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させるステップである、
品質安定化プログラム。
【請求項8】
前記第1生産工程及び前記第2生産工程はそれぞれ、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を含んでおり、
前記第1ステップは、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行された生産工程における前記評価指標を収集するステップであり、
前記第2ステップは、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行されていない少なくとも1つを選択するステップである、請求項7記載の品質安定化プログラム。
【請求項9】
前記第2生産工程は、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を複数含んでおり、
前記第1ステップは、前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群をなす複数の生産工程における前記評価指標を収集するステップであり、
前記第2ステップは、前記第1ステップで収集された前記第1生産工程の前記評価指標が所定の条件を満たした場合に、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の中から前記第2生産工程を選択するステップであり、
前記第3ステップは、前記第1ステップで収集された前記評価指標に応じて、前記第2ステップで選択された前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群の何れか1つを選択させることにより、前記第2ステップで選択された前記第2生産工程で生産される製品の品質を調整させるステップである、
請求項7記載の品質安定化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品の品質を安定化させる品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等の生産現場においては、プロセス制御システム等の生産管理システムが構築されており、高度な自動操業が実現されている。従来の生産管理システムでは、生産要素(ある製品の生産を行うための要素)に対する条件が、研究所で確立された科学技術や生産技術に基づいて設定されており、設定された条件を維持することで製品の品質を担保してきた。ここで、上記の生産要素のうち、原料(Material)、設備(Machine)、工程(Method)、人(Man)を「生産の4要素」という。「生産の4要素」は、4Mと呼ばれることもある。
【0003】
以下の特許文献1には、製品性能のばらつきを生じさせる阻害要因を特定し、製品性能及び製造性能を安定化させる技術が開示されている。具体的に、以下の特許文献1に開示された技術では、製造プロセスのロットをプロセスデータに基づいて生成された主成分得点から複数のグループに区分し、プロダクトデータに基づいて複数のグループの優劣を判定し、グループの優劣に寄与する阻害要因を特定して、製品性能及び製造性能を安定化するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-177794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の生産工程が直列的に順次実行されることによって最終的な製品が生産される場合には、各生産工程で品質のばらつきを抑えながら生産を進めることで、最終的な製品の品質を安定化させることができる。しかしながら、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品(中間製品)を合わせて最終的な製品を生産するような場合には、例え、中間製品の品質が安定していたとしても、最終的な製品の品質を十分に安定化させることができないことがあるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品を合わせて生産される製品の品質を安定化させることができる品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様による品質安定化システムは、互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程(P1)及び第2生産工程(P2)と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品(PR)を生産する第3生産工程(P3)とを有する工業プロセス(IP)で生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化システム(1、2)であって、前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する収集部(31)と、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する選択部(32)と、前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる調整部(33)と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様による品質安定化システムは、前記選択部が、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程のうちの実行されてない少なくとも1つを選択する。
【0009】
また、本発明の一態様による品質安定化システムは、前記第1生産工程及び前記第2生産工程はそれぞれ、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群(P11,P12、P21,P22)を含んでおり、前記収集部が、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程における前記評価指標を収集し、前記選択部が、前記第1生産工程及び前記第2生産工程に含まれる前記生産工程群をなす複数の生産工程のうちの実行されていない少なくとも1つを選択する。
【0010】
また、本発明の一態様による品質安定化システムは、類似度に応じて分類された前記評価指標の区分を示す第1情報(A1)と、前記選択部で選択されるべき生産工程を示す第2情報(A2)と、前記調整部で行われるべき調整方法を示す第3情報(A3)とが対応づけられた補助情報(AI)を有し、前記選択部が、前記補助情報において前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第2情報に基づいて生産工程を選択し、前記調整部が、前記補助情報において前記収集部で収集された前記評価指標の区分を示す前記第1情報に対応付けられている前記第3情報に基づいて前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる。
【0011】
或いは、本発明の一態様による品質安定化システムは、前記第2生産工程が、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群(P21-1,P22-1、P21-2,P22-2、P21-3,P22-3)を複数含んでおり、前記収集部が、前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群をなす複数の生産工程における前記評価指標を収集し、前記選択部が、前記収集部で収集された前記第1生産工程の前記評価指標に応じて、前記第2生産工程を選択し、前記調整部が、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記選択部で選択された前記第2生産工程に含まれる複数の前記生産工程群の何れか1つを選択させることにより、前記選択部で選択された前記第2生産工程で生産される製品の品質を調整させる。
【0012】
本発明の一態様による品質安定化方法は、互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程(P1)及び第2生産工程(P2)と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品(PR)を生産する第3生産工程(P3)とを有する工業プロセス(IP)で生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化方法であって、収集部(31)が、前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する第1ステップ(S11)と、選択部(32)が、前記収集部で収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する第2ステップ(S12)と、調整部(33)が、前記選択部で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる第3ステップ(S13)と、を有する。
【0013】
本発明の一態様による品質安定化プログラムは、互いに独立して第1製品及び第2製品をそれぞれ生産する第1生産工程(P1)及び第2生産工程(P2)と、前記第1製品と前記第2製品とを用いて第3製品(PR)を生産する第3生産工程(P3)とを有する工業プロセス(IP)で生産される前記第3製品の品質を安定化させる品質安定化プログラムであって、コンピュータに、前記第1生産工程で生産される前記第1製品及び前記第2生産工程で生産される前記第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する第1ステップ(S11)と、収集された前記評価指標に応じて、前記第1生産工程、前記第2生産工程、又は前記第3生産工程の少なくとも1つを選択する第2ステップ(S12)と、選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる第3ステップ(S13)と、を実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品を合わせて生産される製品の品質を安定化させることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態による品質安定化システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態における工業プロセスが有する生産工程の一例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態において調整指示部の指示により行われる調整を概念的に示す図である。
図4】本発明の第1実施形態による品質安定化方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態による品質安定化システムの要部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2実施形態で用いられる補助情報を説明するための図である。
図7】本発明の第3実施形態における工業プロセスが有する生産工程の一例を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による品質安定化システムの実装例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラムについて詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0017】
〔概要〕
本発明の実施形態は、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品を合わせて生産される製品の品質を安定化させるようにするものである。ここで、現在の生産業を取り巻く環境としては、グローバル競争の激化、エネルギー及び原料コストの乱高下、労働人口の減少及び高齢化、並びに系列に依らないサプライチェーンの多様化等が挙げられる。このような環境の下で、生産現場では、以下の状況が生じている。
【0018】
・原料の品質が必ずしも一定ではなくなってきている(Material)
・設備の経年劣化が進んできている(Machine)
・これまで顕在化しなかった工程上のトラブルに直面し始めている(Method)
・人員面ではベテラン層の減少とともに運転ノウハウも喪失してきている(Man)
【0019】
つまり、生産現場では、品質のばらつきがある原料及び経年劣化が進んだ生産設備を用いて、ノウハウや経験が乏しい人員で製品を生産しなければならない状況に陥っている。しかも、従来よりも高い品質の製品が要求されていることから、これまで以上の高い品質で差別化された製品を提供していかなければならない。このため、現状は、生産現場に多大な労力を強いらざるを得ない状況といえる。
【0020】
このような状況において、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群によって製品を生産する場合には、生産工程群に含まれる先の生産工程で生産された製品が生産工程群に含まれる後の生産工程の原材料として用いられることになる。このため、生産工程群に含まれる各生産工程で品質のばらつきを抑えながら生産を進めることで、最終的な製品の品質を安定化させることができる。
【0021】
しかしながら、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品(中間製品)を合わせて最終的な製品を生産するような場合には、最終的な製品の品質を十分に安定化させることができないことがあるという問題がある。例えば、互いに独立した第1生産工程及び第2生産工程によって第1製品及び第2製品をそれぞれ生産し、第1製品と第2製品とを用いて第3製品を生産する場合に、第3製品の品質を十分に安定化させることができないことがある。
【0022】
これは、上記の第1生産工程及び第2生産工程がそれぞれ、直列的に順次実行される複数の生産工程からなる生産工程群を含む場合でも同様である。この場合において、第1生産工程に含まれる生産工程群では、品質のばらつきを抑えながら生産を進めることができるため、第1製品の品質を安定化させることができる。また、第2生産工程に含まれる生産工程群でも、品質のばらつきを抑えながら生産を進めることができるため、第2製品の品質を安定化させることができる。しかしながら、第1製品及び第2製品の品質が安定していたとしても、第1製品と第2製品とを用いて生産される第3製品の品質を十分に安定化させることができないことがある。
【0023】
本発明の実施形態では、まず、第1生産工程で生産される第1製品及び第2生産工程で生産される第2製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集する。次に、収集された評価指標に応じて、第1生産工程、第2生産工程、又は第1製品と第2製品とを用いて第3製品を生産する第3生産工程の少なくとも1つを選択し、選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させるようにしている。これにより、互いに独立した生産工程を経て生産された複数の製品(第1製品、第2製品)を合わせて生産される製品(第3製品)の品質を安定化させることができる。
【0024】
〔第1実施形態〕
〈品質安定化システム〉
図1は、本発明の第1実施形態による品質安定化システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の品質安定化システム1は、生産管理システム10、人材管理システム20、及び監視システム30を備えており、工業プロセスIPによって生産(製造)される製品PRの品質を安定化させるシステムである。
【0025】
ここで、品質安定化システム1の詳細について説明する前に、品質安定化システム1の制御対象である工業プロセスIPについて説明する。工業プロセスIPは、原料MTから製品PRを生産するために必要な各種設備(例えば、配管、バルブ、ポンプ、反応器、及びタンク等)を備えており、生産管理システム10の制御によって原料MTから製品PRを生産する。
【0026】
図2は、本発明の第1実施形態における工業プロセスが有する生産工程の一例を示す図である。図2に例示する工業プロセスIPは、生産工程P1(第1生産工程)、生産工程P2(第2生産工程)、及び生産工程P3(第3生産工程)を有しており、原料MTとしての原料MT1,MT2から製品PR(第3製品)を生産するものである。尚、図2における紙面横方向は、時間位置を示している。
【0027】
生産工程P1は、直列的に順次実行される生産工程P11,P12(生産工程群)を有しており、原料MT1から中間製品(第1製品)を生産する工程である。生産工程P2は、直列的に順次実行される生産工程P21,P22(生産工程群)を有しており、原料MT2から中間製品(第2製品)を生産する工程である。尚、生産工程P1,P2では、互いに独立して中間製品がそれぞれ生産される。生産工程P3は、生産工程P1,P2で互いに独立して生産された中間製品を用いて製品PRを生産する工程である。
【0028】
尚、図2に示す通り、生産工程P2に含まれる生産工程P21は、生産工程P1に含まれる生産工程P11と生産工程P12との間に行われる。また、生産工程P2に含まれる生産工程P22は、生産工程P1に含まれる生産工程P12と生産工程P3との間に行われる。つまり、図2に例示する工業プロセスIPでは、生産工程P1に含まれる生産工程P11、生産工程P2に含まれる生産工程P21、生産工程P1に含まれる生産工程P12、生産工程P2に含まれる生産工程P22、及び生産工程P3の順で行われる。
【0029】
生産管理システム10は、工業プロセスIPによって生産される製品PRの生産要素を制御する。具体的に、生産管理システム10は、工業プロセスIPによって生産される製品PRの複数の生産要素に関するデータである操業データを収集し、製品PRの品質を評価するために用いられる評価指標を生成して監視システム30に出力する。尚、上記評価指標は、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とも呼ばれる。また、生産管理システム10は、監視システム30からの指示に基づいて、工業プロセスIPによって生産される製品PRの複数の生産要素を制御する。
【0030】
生産管理システム10は、原料管理システム11、工程管理システム12、及び設備管理システム13を備える。原料管理システム11は、「生産の4要素」のうちの“原料”を制御する。原料管理システム11による“原料”の制御は、任意の方法で行うことができる。例えば、原料管理システム11は、工業プロセスIPで用いられる原料MTの混合比(ブレンド比)を変える制御を行っても良い。原料管理システム11は、“原料”に関する評価指標(以下、「原料評価指標」という)を生成して監視システム30に出力する。
【0031】
工程管理システム12は、「生産の4要素」のうちの“工程”を制御する。工程管理システム12は、例えば分散制御システム(DCS:Distributed Control System)等のプロセス制御装置に設けられるコントローラを備える。工程管理システム12は、例えばプラントの現場に設置されたセンサ(フィールド機器)の測定結果に応じて、プラントの現場に設置されたアクチュエータ(フィールド機器)を制御することによって“工程”を制御する。工程管理システム12は、“工程”に関する評価指標(以下、「工程評価指標」という)を生成して監視システム30に出力する。
【0032】
設備管理システム13は、「生産の4要素」のうちの“設備”を制御する。設備管理システム13による“設備”の制御は、任意の方法で行うことができる。例えば、工業プロセスIPで用いられている設備に洗浄機能が設けられている場合には、設備管理システム13は、洗浄機能を動作させる制御を行うことによって、或いは、保守担当者に対し洗浄の実施要請を通知する等によって、設備能力を一定に維持する(設備の汚れによって生じた設備能力の低下を回復させる)ようにしても良い。また、設備管理システム13は、設備能力を一定に維持するために、設備の駆動系に対する注油間隔や、設備の経年状況によるパラメータ変更等の制御を行っても良い。設備管理システム13は、“設備”に関する評価指標(以下、「設備評価指標」という)を生成して監視システム30に出力する。
【0033】
人材管理システム20は、「生産の4要素」のうちの“人”を制御する。人材管理システム20による“人”の制御は、その“人”の有する経験やスキル、勤務形態等に応じて、任意の方法で行うことができる。例えば、人材管理システム20は、スキルの低い作業者については、スキルの高い作業者を補助として伴わせる等のスケジューリングを行って、作業者毎のスキルのばらつきが生じないようにしても良い。また、人材管理システム20は、作業者の操作タイミングや作業順番の変更等を制御しても良い。人材管理システム20は、“人”に関する評価指標(以下、「人評価指標」という)を生成し、生産管理システム10を介して監視システム30に出力する。
【0034】
監視システム30は、評価指標収集部31(収集部)、工程選択部32(選択部)、及び調整指示部(調整部)33を備えており、生産管理システム10から出力される各種評価指標を収集し、生産管理システム10に対する指示を行う。この監視システム30は、互いに独立して生産される複数の製品(例えば、図2中の生産工程P1,P2で生産される中間製品)を用いて生産される製品(例えば、図2中の生産工程P3で生産される製品PR)の品質を安定化させるためのものである。
【0035】
評価指標収集部31は、生産管理システム10から出力される各種評価指標(原料評価指標、工程評価指標、設備評価指標、人評価指標)を収集する。尚、原料MTから製品PRを生産する工業プロセスIPが、複数の生産工程を有するものである場合には、評価指標収集部31は、生産工程毎に上記の各種評価指標を収集する。例えば、評価指標収集部31は、図2示す生産工程P1に含まれる生産工程P11,P12、生産工程P2に含まれる生産工程P22,P22、及び生産工程P3毎に、上記の各種評価指標を収集する。
【0036】
工程選択部32は、評価指標収集部31で収集された評価指標に応じて、製品PRの品質を安定化させるために、調整が必要となる生産工程を選択する。具体的に、工程選択部32は、原料MTから製品PRを生産する工業プロセスIPに含まれる複数の生産工程のうちの実行されていない(これから実行される)少なくとも1つの生産工程を選択する。これは、既に実行された生産工程は、調整することができないためである。
【0037】
例えば、工程選択部32は、図2に示す生産工程P21で生産された中間製品の評価指標に応じて、生産工程P21よりも後に行われる生産工程P12、生産工程P22、又は生産工程P3から少なくとも1つを選択する。工程選択部32は、例えば、図2に示す生産工程P21で生産された中間製品の評価指標が、予め規定された許容範囲に収まってはいるものの、予め規定された基準値からの偏差が大きいものを示すものである場合に、上記の選択を行う。尚、工程選択部32は、下流の生産工程における調整を容易にするために、できる限り上流の生産工程を選択するのが望ましい。
【0038】
尚、上記の例において、工程選択部32は、生産工程P21よりも後に行われる任意の生産工程(生産工程P12、生産工程P22、生産工程P3)を選択することが可能である。しかしながら、生産工程P3を調整しても、製品PRの品質を安定化させることが困難な場合には、生産工程P3を除いた残りの生産工程P12,P22から少なくとも1つを選択するようにしても良い。
【0039】
調整指示部33は、工程選択部32で選択された生産工程で生産される製品の品質を調整させる指示を、生産管理システム10に対して行う。このような指示を行うことで、調整指示部33は、工業プロセスIPで最終的に生産される製品PRの品質を安定化させるようにしている。具体的には、製品PRの評価指標が、予め規定された許容範囲に収まっており、且つ、予め規定された基準値からの偏差が小さくなるようにしている。尚、調整指示部33は、生産管理システム10に対して目標値のみを指示しても良く、具体的な4Mの内容変更を指示しても良い。
【0040】
図3は、本発明の第1実施形態において調整指示部の指示により行われる調整を概念的に示す図である。尚、図3に示すグラフでは、横軸に製品PRの品質をとり、縦軸に頻度をとってある。図3に示す通り、工業プロセスIPによって生産される製品PRは、図3中の曲線L0で示す通り、多少のばらつきは許容されるものの、品質の中央値が目標値となっているのが理想である。
【0041】
図2に示す生産工程P1で標準的な中間製品が生産されると仮定し、この標準的な中間製品と図2に示す生産工程P21を経て生産され得る中間製品とによって生産される製品PRの品質が、図3中の曲線L1で示されるもの(目標値からΔQだけ偏差が生じたもの)になる可能性があるとする。調整指示部33は、この偏差ΔQを打ち消すように、工程選択部32で選択された生産工程(例えば、生産工程P12)を調整させる指示を、生産管理システム10に対して行う。
【0042】
この指示が行われることで、上記の偏差ΔQが打ち消され、図3中の曲線L0で示される品質を有する製品PRが生産される。尚、図2に示す生産工程P2で標準的な中間製品が生産されると仮定した場合に、この標準的な中間製品と図2に示す生産工程P12(調整された生産工程)を経て生産され得る中間製品とによって生産される製品PRの品質は、例えば、図3中の曲線L2で示されるもの(目標値から反対側にΔQだけ偏差が生じたもの)になり得る。
【0043】
〈品質安定化方法〉
図4は、本発明の第1実施形態による品質安定化方法を示すフローチャートである。尚、図4に示すフローチャートは、例えば、図2に示す工業プロセスIPによる製品PRの生産が開始されることにより開始される。図4に示すフローチャートが開始されると、生産工程の評価指標を収集する処理が監視システム30の評価指標収集部31によって行われる(ステップS11:第1ステップ)。
【0044】
例えば、図2に示す工業プロセスIPでは、まず、原料MT1を用いて中間製品を生産する生産工程P11が行われる。このため、評価指標収集部31では、生産工程P11で生産された中間製品の評価指標を収集する処理が行われる。次に、図2に示す工業プロセスIPでは、原料MT2を用いて中間製品を生産する生産工程P21が行われる。このため、評価指標収集部31では、生産工程P21で生産された中間製品の評価指標を収集する処理が行われる。
【0045】
ここで、生産工程P21で生産された中間製品の評価指標が、予め規定された許容範囲に収まってはいるものの、予め規定された基準値からの偏差が大きいものを示すものであったとする。すると、製品PRの品質を安定化させるために、工業プロセスIPに含まれる複数の生産工程のうちの実行されていない(これから実行される)少なくとも1つの生産工程を選択する処理が、工程選択部32によって行われる(ステップS12:第2ステップ)。
【0046】
具体的には、図2に示す生産工程P21よりも後に行われる生産工程P12、生産工程P22、又は生産工程P3から少なくとも1つを選択する処理が工程選択部32によって行われる。尚、ここでは、理解を容易にするために、生産工程P12が選択されたとする。すると、調整指示部33によって、工程選択部32で選択された生産工程P12で生産される製品の品質を調整させる指示が、生産管理システム10に対して行われる(ステップS13:第3ステップ)。
【0047】
例えば、図3を用いて説明した通り、図2に示す生産工程P1で生産され得る標準的な中間製品と図2に示す生産工程P21を経て生産され得る中間製品とによって生産される製品PRの品質が、図3中の曲線L1で示されるもの(目標値からΔQだけ偏差が生じたもの)になる可能性があるとする。調整指示部33は、この偏差ΔQを打ち消すように、工程選択部32で選択された生産工程P12を調整させる指示を、生産管理システム10に対して行う。この指示が行われることで、上記の偏差ΔQが打ち消され、図3中の曲線L0で示される品質を有する製品PRが生産されるようになる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、まず、互いに独立した生産工程P1,P2で生産される中間製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集している。次に、収集した評価指標に応じて、生産工程P1,P2又は生産工程P3(生産工程P1,P2で生産された中間製品を用いて製品PRを生産する工程)の少なくとも1つを選択している。そして、選択した生産工程で生産される製品の品質を調整させるようにしている。これにより、互いに独立した生産工程P1,P2を経て生産された複数の中間製品を合わせて生産される製品PRの品質を安定化させることができる。
【0049】
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態による品質安定化システムの要部構成を示すブロック図である。図5に示す通り、本実施形態の品質安定化システム2は、図1に示す品質安定化システム1の監視システム30に、補助情報AIを記憶する記憶部34を追加した構成である。このような品質安定化システム2は、監視システム30の工程選択部32及び調整指示部33が、工業プロセスIPにおける過去の実績から得られた補助情報AIを用いて、生産工程の選択及び調整指示をそれぞれ行うようにしたものである。
【0050】
図6は、本発明の第2実施形態で用いられる補助情報を説明するための図である。尚、図6(a)は、補助情報AIの一例を示す図であり、図6(b)は、補助情報AIにおけるクラスタを説明する図であり、図6(c)は、クラスタにおける評価指標の傾向を説明する図である。図6(a)に示す通り、補助情報AIは、クラスタ情報A1(第1情報)、工程情報A2(第2情報)、及び調整情報A3(第3情報)が対応付けられた情報であり、例えば、テーブル形式で記憶部34に記憶される。
【0051】
クラスタ情報A1は、工業プロセスIPで過去に生産された中間製品の評価指標を、その類似度に応じて分類して得られた、評価指標の区分(クラスタ)を示す情報である。ここで、クラスタは、図6(b)に示す通り、複数の評価指標を軸とする空間において、各軸における評価指標の類似度が高い製品の集合として表現することができる。図6(b)に示す例では、3つのクラスタC1~C3を図示している。
【0052】
クラスタは、上述の通り、複数の評価指標の類似度が高い製品の集合として表現されることから、1つのクラスタに含まれる製品の評価指標は似た傾向を有する。例えば、図6(c)に示す通り、製品の評価指標として、「純度」、「透明度」、「絶縁性」、「強度」、「柔軟性」、及び「コスト」があるとする。図6(c)に示すクラスタC1は、「純度」及び「柔軟性」の値が、他の評価指標の値よりも大きくなる傾向がある。図6(c)に示すクラスタC2は、「透明度」の値が、他の評価指標の値よりも大きくなる傾向がある、図6(c)に示すクラスタC3は、「コスト」及び「強度」の値が、他の評価指標の値よりも大きくなる傾向がある。
【0053】
工程情報A2は、工程選択部32で選択されるべき生産工程を示す情報である。この工程情報A2は、工業プロセスIPにおける過去の実績から決定される。つまり、クラスタ情報A1で示されるクラスタに含まれる中間製品が過去に生産された場合に、実際に調整が行われた生産工程を示す情報が工程情報A2として用いられる。
【0054】
調整情報A3は、調整指示部33で行われるべき調整方法を示す情報である。この調整情報A3は、工程情報A2と同様に、工業プロセスIPにおける過去の実績から決定される。つまり、クラスタ情報A1で示されるクラスタに含まれる中間製品が過去に生産された場合に、実際に行われた調整方法を示す情報が調整情報A3として用いられる。
【0055】
工程選択部32は、評価指標収集部31で収集された評価指標が、何れのクラスタに属するかを判定する。そして、工程選択部32は、図6に示す補助情報AIから、判定したクラスタを示すクラスタ情報A1に対応付けられている工程情報A2に基づいて生産工程を選択する。調整指示部33は、工程選択部32の判定結果を用い、図6に示す補助情報AIから、判定されたクラスタを示すクラスタ情報A1に対応付けられている調整情報A3に基づいて、工程選択部32で選択された生産工程における調整方法を指示する。
【0056】
以上の通り、本実施形態では、第1実施形態と同様に、まず、互いに独立した生産工程P1,P2で生産される中間製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集している。次に、収集した評価指標が、何れのクラスタに属するかを判定する。続いて、補助情報AIにおいて、判定したクラスタを示すクラスタ情報A1に対応付けられている工程情報A2に基づいて生産工程を選択する。そして、補助情報AIにおいて、判定したクラスタを示すクラスタ情報A1に対応付けられている調整情報A3に基づいて、選択された生産工程における調整方法を指示する。
【0057】
これにより、互いに独立した生産工程P1,P2を経て生産された複数の中間製品を合わせて生産される製品PRの品質を安定化させることができる。また、本実施形態では、工程選択部32における生産工程の選択、及び調整指示部33における調整指示が、工業プロセスIPにおける過去の実績から得られた補助情報AIを用いて行われている。これにより、第1実施形態によりも安全に、製品PRの品質を安定化させることができる。
【0058】
〔第3実施形態〕
本実施形態の品質安定化システムは、第1実施形態の品質安定化システム1と概ね同様の構成である。つまり、本実施形態の品質安定化システムも、生産管理システム10、人材管理システム20、及び監視システム30を備えており、工業プロセスIPによって生産される製品PRの品質を安定化させるシステムである。但し、本実施形態の品質安定化システムの制御対象である工業プロセスIPが、第1実施形態のもの(図2参照)とは異なるため、第1実施形態とは異なる動作が行われる。
【0059】
図7は、本発明の第3実施形態における工業プロセスが有する生産工程の一例を示す図である。図7に示す工業プロセスIPと、図2に示す工業プロセスIPとが異なる点は、図7に示す工業プロセスIPでは、原料MT2から中間製品(第2製品)を生産する生産工程P2が、並列的に行われる複数の生産工程P2-1,P2-2,P2-3を有する点である。
【0060】
生産工程P2-1は、直列的に順次実行される生産工程P21-1,P22-1(生産工程群)を有している。生産工程P2-2は、直列的に順次実行される生産工程P21-2,P22-2(生産工程群)を有している。同様に、生産工程P2-3は、直列的に順次実行される生産工程P21-3,P22-3(生産工程群)を有している。これら生産工程P2-1,P2-2,P2-3では、原料MT2から同じ中間製品が生産されるが、4Mのばらつきによって、生産される中間製品の品質のばらつきが生ずる。
【0061】
本実施形態において、監視システム30の評価指標収集部31は、図7に示す生産工程P1に含まれる生産工程P11,P12、生産工程P2-1~P2-3に含まれる生産工程P21-1~P21-3,P22-1~P22-3、及び生産工程P3毎に種評価指標を収集する。監視システム30の工程選択部32は、評価指標収集部31で収集された生産工程P1における評価指標(生産工程P1で生産された中間製品の評価指標)に応じて生産工程P2を選択する。
【0062】
調整指示部33は、評価指標収集部31で収集された評価指標に応じて、工程選択部32で選択された生産工程P2に含まれる複数の生産工程P2-1~P2-3の何れか1つを選択させる指示を行う。このような指示が行われると、複数の生産工程P2-1~P2-3で生産される中間製品の何れか1つが、生産工程P2で生産される中間製品として選択されることになる。このようにして、調整指示部33は、工程選択部32で選択された生産工程P2で生産される中間製品の品質を調整させている。
【0063】
以上の通り、本実施形態では、まず、互いに独立した生産工程P1,P2で生産される中間製品の品質を評価する評価指標をそれぞれ収集している。次に、生産工程P1で生産された中間製品の評価指標に応じて、生産工程P2を選択している。そして、選択された生産工程P2に含まれる複数の生産工程P2-1~P2-3の何れか1つを選択させる指示を行うようにしている。これにより、互いに独立した生産工程P1,P2を経て生産された複数の中間製品を合わせて生産される製品PRの品質を安定化させることができる。
【0064】
〈実装例〉
図8は、本発明の一実施形態による品質安定化システムの実装例を示すブロック図である。尚、図8においては、図1図5に示した構成に相当するブロックについては、同一の符号を付してある。図8に示す通り、品質安定化システム1,2をなす生産管理システム10及び人材管理システム20は、フィールド機器FDの上位に位置づけられる。
【0065】
フィールド機器FDは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントの現場に設置される機器である。尚、図8においては、理解を容易にするために、プラントに設置された複数のフィールド機器FDのうちの流体の流量を測定する1つのセンサ機器FD1及び流体の流量を制御(操作)する1つのバルブ機器FD2のみを図示している。
【0066】
尚、フィールド機器FDが設置されるプラントとしては、化学等の工業プラントの他、ガス田や油田等の井戸元やその周辺を管理制御するプラント、水力・火力・原子力等の発電を管理制御するプラント、太陽光や風力等の環境発電を管理制御するプラント、上下水やダム等を管理制御するプラント等がある。尚、上記のプラントは、あくまでも例示であり、上記のプラントに制限される訳ではない点に注意されたい。
【0067】
フィールド機器FDと、生産管理システム10に設けられる工程管理システム12とは、ネットワークN1を介して接続される。また、生産管理システム10に設けられる原料管理システム11、工程管理システム12、及び設備管理システム13と、人材管理システム20と、監視システム30とは、ネットワークN2を介して接続される。ネットワークN1は、例えばプラントの現場に敷設された有線のネットワークである。他方、ネットワークN2は、例えばプラントの現場と監視室との間を接続する有線のネットワークである。尚、これらネットワークN1及びネットワークN2は、無線のネットワークであっても良い。
【0068】
センサ機器FD1で得られたデータ(例えば、流体の流量の測定結果を示すデータ)は、ネットワークN1を介して工程管理システム12に出力される。工程管理システム12で生成されたデータ(例えば、流体の流量を制御するデータ)は、ネットワークN1を介してバルブ機器FD2に出力される。また、生産管理システム10に設けられる原料管理システム11、工程管理システム12、及び設備管理システム13と、人材管理システム20とで生成された評価指標は、ネットワークN2を介して監視システム30に出力される。
【0069】
監視システム30は、例えばパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータによって実現される。監視システム30の各ブロックの機能(評価指標収集部31、工程選択部32、及び調整指示部33等の機能)は、各々の機能を実現するプログラムがコンピュータで実行されることにより実現される。つまり、これらの機能は、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働することによって実現される。尚、監視システム30の各ブロックの機能を実現するプログラムは、えばCD-ROM又はDVD(登録商標)-ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されても良く、インターネット等の外部のネットワークを介して配布されても良い。
【0070】
以上、本発明の実施形態による品質安定化システム、品質安定化方法、品質安定化プログラムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、品質安定化システム1,2は、クラウドコンピューティングにより実現されても良い。ここで、クラウドコンピューティングは、例えば、以下のURL(Uniform Resource Locator)で特定される文書に記載されている定義(米国国立標準技術研究所によって推奨される定義)に合致するものであっても良い。
http://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/Legacy/SP/nistspecialpublication800-145.pdf
https://www.ipa.go.jp/files/000025366.pdf
【符号の説明】
【0071】
1,2 品質安定化システム
31 評価指標収集部
32 工程選択部
33 調整指示部
A1 クラスタ情報
A2 工程情報
A3 調整情報
AI 補助情報
IP 工業プロセス
P1~P3 生産工程
P11,P12 生産工程
P21,P22 生産工程
P21-1,P22-1 生産工程
P21-2,P22-2 生産工程
P21-3,P22-3 生産工程
PR 製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8