(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】筋活動観測装置、筋活動観測システム、および、筋活動観測方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61B5/11 ZDM
(21)【出願番号】P 2020134324
(22)【出願日】2020-08-07
(62)【分割の表示】P 2020528189の分割
【原出願日】2019-11-08
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2018223761
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敦士
(72)【発明者】
【氏名】河原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼丸 泰
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0055836(US,A1)
【文献】国際公開第2018/092886(WO,A1)
【文献】特開2001-070288(JP,A)
【文献】特表平04-504519(JP,A)
【文献】特表2013-529539(JP,A)
【文献】特開昭62-079038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腱または筋の振動によって出力が変化する第1センサと、
前記腱または前記筋の伸縮によって出力が変化する第2センサと、
前記第1センサの出力信号と前記第2センサの出力信号とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態として
、等張性収縮が発生している状態、等尺性収縮が発生している状態のいずれの状態であるかを検出する検出部と、
を備える、筋活動観測装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記腱または前記筋の活動状態として、さらに、安静状態であるかを検出する、
請求項1に記載の筋活動観測装置。
【請求項3】
前記第1センサと前記第2センサは、1つのセンサによって形成されている、
請求項1または請求項2に記載の筋活動観測装置。
【請求項4】
前記1つのセンサは圧電センサである、
請求項3に記載の筋活動観測装置。
【請求項5】
前記圧電センサは、主面を有する矩形であり、且つ、シート状である、
請求項4に記載の筋活動観測装置。
【請求項6】
前記圧電センサは、
前記主面に平行に配置され、前記圧電センサを構成する圧電体よりも硬い補助板を備える、
請求項5に記載の筋活動観測装置。
【請求項7】
前記圧電センサは、
前記矩形の長さ方向が前記腱または前記筋の延びる方向に対して略直交するように、配置されている、
請求項5または請求項6に記載の筋活動観測装置。
【請求項8】
前記第1センサと前記第2センサとの組は、複数であり、
前記検出部は、
前記複数の組の前記第1センサの出力と前記第2センサの出力とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態を検出する、
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の筋活動観測装置。
【請求項9】
前記検出部は、
前記腱または前記筋の活動状態から、前記腱または前記筋が備えられた生体の部位の動作を検出する、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の筋活動観測装置。
【請求項10】
前記腱または前記筋が内蔵される生体の外形に合わせた形状である生体支持体を備え、
前記第1センサおよび前記第2センサは、前記生体支持体に装着されている、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の筋活動観測装置。
【請求項11】
前記生体支持体は、人体の足に装着されるものであり、足首を覆う第1部分を備え、
前記第1部分は、人体の足に装着されたとき筒状をなす、
請求項10に記載の筋活動観測装置。
【請求項12】
前記生体支持体は、さらに、足の甲から足の裏を覆う筒状であり、前記第1部分に繋がる第2部分を備える、
請求項11に記載の筋活動観測装置。
【請求項13】
前記第1センサの出力から振戦信号を抽出し、前記第2センサの出力から伸縮信号を抽出して、前記振戦信号と前記伸縮信号とを増幅して、前記検出部に出力する、信号処理部を備え、
前記検出部は、
前記振戦信号と前記伸縮信号とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態を検出する、
請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の筋活動観測装置。
【請求項14】
前記信号処理部は、
前記振戦信号と前記伸縮信号とを時分割で出力する、
請求項13に記載の筋活動観測装置。
【請求項15】
前記検出部での検出結果を外部へ通信する通信部を備える、
請求項1乃至請求項14のいずれかに記載の筋活動観測装置。
【請求項16】
腱または筋の活動に応じた振動によって出力が変化する第1センサ、前記腱または筋の活動に応じた伸縮によって出力が変化する第2センサ、前記腱または筋の活動に応じた振動および伸縮によって出力が変化する第3センサのうち、前記第1センサと前記第2センサの組、または、前記第3センサを有する複数のセンサと、
前記複数のセンサが装着され、前記腱または前記筋が内蔵される生体の外形に合わせた形状である生体支持体と、
前記複数のセンサからの振動信号と伸縮信号を用いて、アキレス腱と、前脛骨筋腱および長腓骨筋腱の少なくとも一方と、の活動状態を検出する検出部と、
を備え、
前記生体支持体は、人体の足に装着されるものであり、足首を覆う第1部分を備え、
前記第1部分は、人体の足に装着されたとき筒状をなす、
筋活動観測装置。
【請求項17】
前記複数のセンサは圧電センサであり、前記腱または前記筋の伸縮によって出力が変化するセンサの機能を兼ねる、
請求項16に記載の筋活動観測装置。
【請求項18】
前記圧電センサは、主面を有する矩形であり、且つ、シート状である、
請求項17に記載の筋活動観測装置。
【請求項19】
前記圧電センサは、
前記主面に平行に配置され、前記圧電センサを構成する圧電体よりも硬い補助板を備える、
請求項18に記載の筋活動観測装置。
【請求項20】
前記圧電センサは、
前記矩形の長さ方向が前記腱または前記筋の延びる方向に対して略直交するように、配置されている、
請求項18または請求項19に記載の筋活動観測装置。
【請求項21】
前記複数のセンサは、加速度センサおよびマイクの少なくとも一方を含む、
請求項16に記載の筋活動観測装置。
【請求項22】
請求項1乃至請求項21のいずれかに記載の筋活動観測装置と、
サーバと、
を備える、
筋活動観測システム。
【請求項23】
前記サーバは、前記筋活動観測装置で得られた腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態のうち少なくとも一方を、データベース化して記憶する、
請求項22に記載の筋活動観測システム。
【請求項24】
センサモジュールは、腱または筋の振動を検出して振戦信号を生成し、
前記センサモジュールは、前記腱または前記筋の伸縮を検出して伸縮信号を生成し、
検出モジュールは、前記振戦信号と前記伸縮信号とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態として
、等張性収縮が発生している状態、等尺性収縮が発生している状態のいずれの状態であるかを検出する、
筋活動観測方法。
【請求項25】
前記検出モジュールは、前記振戦信号と前記伸縮信号とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態として、さらに、安静状態であるかを検出する、
請求項24に記載の筋活動観測方法。
【請求項26】
前記振戦信号と前記伸縮信号とは、1つのセンサで検出する、
請求項24または請求項25に記載の筋活動観測方法。
【請求項27】
前記1つのセンサは、圧電センサである、
請求項26に記載の筋活動観測方法。
【請求項28】
検出感度の高い方向が前記腱または前記筋の延びる方向に対して略直交するように、前記1つのセンサを配置する、
請求項26または請求項27に記載の筋活動観測方法。
【請求項29】
前記振戦信号と前記伸縮信号の検出箇所は、複数であり、
前記検出モジュールは、前記複数の検出箇所の前記振戦信号と前記伸縮信号とを用いて、前記腱または前記筋の活動状態を検出する、
請求項24乃至請求項27のいずれかに記載の筋活動観測方法。
【請求項30】
前記検出モジュールは、前記腱または前記筋の活動状態から、前記腱または前記筋が備えられた生体の部位の動作を検出する、
請求項24乃至請求項29のいずれかに記載の筋活動観測方法。
【請求項31】
前記センサモジュールは、前記振戦信号と前記伸縮信号とを増幅し、
前記検出モジュールは、増幅後の前記振戦信号と前記伸縮信号とを前記検出に用いる、
請求項24乃至請求項30のいずれかに記載の筋活動観測方法。
【請求項32】
前記センサモジュールは、前記振戦信号と前記伸縮信号とを時分割で出力する、
請求項24乃至請求項31のいずれかに記載の筋活動観測方法。
【請求項33】
前記検出モジュールは、前記振戦信号と前記伸縮信号とから得られた腱または筋の検出結果を外部へ通信する、
請求項24乃至請求項32のいずれかに記載の筋活動観測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉の活動を観測する筋活動観測の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の筋肉動検出装置は、センサとコントローラとを備える。センサの電気抵抗は、筋肉の動きに伴う収縮によって変化する。コントローラは、センサの電気抵抗によって、筋肉動に応じた電圧を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の筋肉動検出装置では、等張性収縮と等尺性収縮とを区別して計測できない。このため、筋肉の活動を正確に把握することは困難である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、等張性収縮と等尺性収縮とを区別して観測できる筋活動観測技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の筋活動観測装置は、第1センサ、第2センサ、および、検出部を備える。第1センサは、腱または筋の振動によって出力が変化する。第2センサは、腱または筋の伸縮によって出力が変化する。検出部は、第1センサの出力信号と第2センサの出力信号とを用いて、腱または筋の活動状態として、少なくとも等張性収縮が発生している状態、等尺性収縮が発生している状態のいずれの状態であるかを検出する。
【0007】
この構成では、第1センサによって、腱または筋の振戦による信号(振戦信号)が得られる。また、第2センサによって、腱または筋の伸び縮みによる信号(伸縮信号)が得られる。そして、これら振戦信号と伸縮信号とを得られることで、少なくとも等尺性収縮の状態と等張性収縮とのいずれの状態であるかを識別可能になる。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、等張性収縮と等尺性収縮とを区別して観測できる。これにより、腱または筋の活動や状態がより正確に把握可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2(A)は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図であり、
図2(B)は、筋活動観測装置の足への装着状態を示す平面図である。
【
図3】
図3(A)は、センサモジュールの概略構成を示す側面図であり、
図3(B)は、センサモジュールの概略構成を示す平面図である。
【
図4】
図4は、圧電センサの概略構成を示す側面断面図である。
【
図5】
図5は、圧電センサの出力電圧の一例を示す波形図である。
【
図6】
図6は、信号処理部の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、伸縮信号と振戦信号とを抽出する概念を説明するための波形図である。
【
図8】
図8は、振戦信号の波形の一例を示す波形図である。
【
図9】
図9は、伸縮信号の波形の一例を示す波形図である。
【
図10】
図10は、検出モジュールの構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、活動状態の解析テーブルの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図である。
【
図17】
図17は、第2の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図である。
【
図18】
図18(A)は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図であり、
図18(B)は、筋活動観測装置の足への装着状態を示す平面図である。
【
図19】
図19は、部位と動作と対象の腱・筋肉との関係の一例を示す表である。
【
図20】
図20(A)は、第3の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図であり、
図20(B)は、信号処理部の構成を示すブロック図である。
【
図21】
図21は、第4の実施形態に係る筋活動観測装置におけるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図22】
図22は、第5の実施形態に係る筋活動観測装置におけるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
【
図23】
図23は、筋活動観測システムの第1態様例を示すブロック図である。
【
図24】
図24は、筋活動観測システムの第2態様例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る筋活動観測装置について、図を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図である。
【0011】
(筋活動観測装置の機能ブロックの構成)
図1に示すように、筋活動観測装置10は、センサモジュール20、および、検出モジュール30を備える。センサモジュール20は、圧電センサ21、および、信号処理部22を備える。検出モジュール30は、検出部31、通信部32、および、電源33を備える。
【0012】
圧電センサ21は、生体の腱または筋の活動に応じて変位する。圧電体201は、この変位に応じた電荷(電位差)を発生する。信号処理部22は、圧電センサ21が検出した電荷を電圧信号に変換することで、振戦信号と伸縮信号とを生成する。信号処理部22は、振戦信号と伸縮信号とを、検出部31に出力する。
【0013】
検出部31は、振戦信号から振戦の状態を検出し、伸縮信号から伸縮の状態を検出する。また、検出部31は、振戦の状態および伸縮の状態から、生体の対象部位(例えば、足)の動作を解析する。
【0014】
なお、本願における振戦とは、律動的な筋活動を示す不随意運動である。すなわち、本願における振戦は、正常人にみられる細かく速い姿勢時振戦であり、生理的振戦とよばれ、例えば、8Hzから12Hzの周波数である。なお、パーキンソン病患者等の疾患者にみられるふるえは、病理的振戦であり、例えば、4Hzから7Hzであり、本願における振戦の対象とはしない。
【0015】
振戦を用いることによって、筋電に対して、次の各種の優位点がある。例えば、振戦の検出(計測)は、人の体等の被検知体の表面(皮膚等)に直接貼り付けなくても可能である。振戦の検出によって、筋伸縮を検出できる。振戦の検出によって、筋疲労に伴う変化を検出できる。
【0016】
通信部32は、振戦の状態、伸縮の状態、生体の対象部位の動作等の検出結果を、外部に通信する。通信方式は、無線であっても有線であってもよい。電源33は、検出部31、および、通信部32に電源供給する。なお、電源33は、センサモジュール20の信号処理部22にも電源供給できる。ただし、センサモジュール20は、電源33とは別に電源を備えていてもよい。
【0017】
(筋活動観測装置の装着の一態様)
筋活動観測装置10は、例えば、次に示すように、上述の生体の対象部位に装着される。
図2(A)は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図であり、
図2(B)は、筋活動観測装置の足への装着状態を示す平面図である。
【0018】
図2(A)、
図2(B)に示すように、筋活動観測装置10は、生体支持体40を備える。生体支持体40は、伸縮性を有する素材からなり、生体の動きに合わせて変形する。生体支持体40は、圧電センサ21の変位(より具体的には、圧電センサ21の圧電体201(
図4参照)の変位)を可能な限り阻害しない素材であることが好ましい。例えば、綿アクリル混、ポリエステル綿混、綿麻混、アクリル毛混、毛ナイロン混、獣毛混、絹、絹紡糸、絹紬糸(絹紡紬糸)等が使用可能である。
【0019】
生体支持体40は、第1部分41および第2部分42を備える。第1部分41および第2部分42は、筒状であり、側面視して略L字状に繋がっている。第1部分41と第2部分42と繋ぎ目には、筒状の中空を外部に連通する穴43が形成されている。
【0020】
図4(A)、
図4(B)に示すように、生体支持体40は、各腱や筋が内蔵された足の踵93の近傍に、生体(人体)の外形に合わせて装着される。この際、第1部分41は、足首91を覆う。第2部分42は、足の甲92と足の裏94とを覆う。そして、踵93は、穴43から外部に露出している。
【0021】
圧電センサ21は、第1部分41に装着されている。より具体的には、圧電センサ21は、第1部分41への接着材による接着、第1部分41への縫い付け、第1部分41に設けられたポケットへの収容等によって、第1部分41に装着されている。この際、圧電センサ21は、第1部分41の内側(中空側)に装着されていることが好ましい。
【0022】
また、圧電センサ21は、第1部分41におけるアキレス腱901に重なる位置に配置されている。特に、圧電センサ21は、下腿最小囲90に重なる位置に配置されることが好ましい。このような位置に配置されることによって、圧電センサ21は、アキレス腱901の振戦および伸縮による電荷の発生の感度を良くできる。
【0023】
さらに、圧電センサ21の長さ方向(L方向)は、アキレス腱901の延びる方向に対して略直交している。後述する
図3、
図4に示す構造の圧電センサ21では、長さ方向(L方向)に対する変位が、最も電荷を発生させ易い。これにより、圧電センサ21は、アキレス腱901の伸縮を高感度で検出できる。
【0024】
なお、ここでは、アキレス腱901の振戦および伸縮を検出する態様を示した。しかしながら、前脛骨筋腱902の振戦および伸縮を検出する場合には、圧電センサ21を前脛骨筋腱902に重ねればよい。また、長腓骨筋腱903の振戦および伸縮を検出する場合には、圧電センサ21を長腓骨筋腱903に重ねればよい。この際、圧電センサ21の長さ方向(L方向)は、腱の延びる方向にできる限り直交するとよい。
【0025】
また、生体支持体40が足の甲92および足の裏94と足首91とを支持し、途中で曲がっていることにより、生体支持体40と足との位置関係が変化し難い。したがって、圧電センサ21の位置は、変化し難く、圧電センサ21は、振戦および伸縮の検出対象の腱(ここではアキレス腱901)に対して、位置ズレし難い。これにより、圧電センサ21は、検出対象の腱の振戦および伸縮を、より確実に検出できる。
【0026】
検出モジュール30は、生体支持体40に装着されている。検出モジュール30は、生体支持体40のいずれの位置に装着されていてもよい。しかしながら、検出モジュール30の装着位置は、外部との通信環境が容易な位置であることが好ましく、例えば、第1部分41における外側で、筒状の延びる方向における第2部分42に繋がる側と反対側の端部付近であることが好ましい。なお、検出モジュール30と、センサモジュール20とは、所定のケーブルによって接続されている。
【0027】
(センサモジュール20の構造)
図3(A)は、センサモジュールの概略構成を示す側面図であり、
図3(B)は、センサモジュールの概略構成を示す平面図である。
【0028】
図3(A)、
図3(B)に示すように、センサモジュール20は、平膜状である。センサモジュール20は、平膜状の圧電センサ21、薄型の信号処理回路モジュール22M、平膜状の伝送ケーブル220C、および、接続端子220Mを備える。
【0029】
圧電センサ21は、長さLpと幅Wpとを有する略矩形のシート状である。長さLpは、幅Wpよりも大きい(Lp>Wp)。信号処理回路モジュール22Mは、信号処理部22を構成する電子部品と基材とによって形成されており、
図3(A)、
図3(B)においては具体的な電子部品の構造等は省略している。信号処理回路モジュール22Mは、圧電センサ21に並んで配置されており、フラットケーブル等によって圧電センサ21に接続されている。伝送ケーブル220Cにおける延びる方向の一方端は、信号処理回路モジュール22Mに接続されている。伝送ケーブル220Cにおける延びる方向の他方端には、導体からなる接続端子220Mが形成されている。
【0030】
(圧電センサ21の構造および出力信号)
図4は、圧電センサの概略構成を示す側面断面図である。
図4に示すように、圧電センサ21は、圧電体201、検出用電極202、接着層203、および、補助板204を備える。
【0031】
圧電体201は、主面を有する矩形のフィルムである。例えば、圧電体201の長さLpは約40mm、幅Wpは約10mm、厚さは0.3mm未満である。なお、圧電体201の寸法はこれに限らず、観測対象に応じて適宜設定できる。圧電体201は、例えば、ポリ乳酸(PLLA)を主成分とする材料、あるいは、窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする材料から構成されている。
【0032】
検出用電極202は、接着層203を用いて、圧電体201の両主面にそれぞれ接着されている。検出用電極202は、例えば銅(Cu)等の導電率が高い材料であることが好ましい。接着層203は、可能な限り薄いことが好ましい。
【0033】
補助板204は、検出用電極202における圧電体201と反対側に配置されている。この際、補助板204の主面と圧電体201の主面とは平行である。
【0034】
このような構成では、例えば、圧電体201の主面に直交する方向における曲げの変位が発生すると、2つの検出用電極202にそれぞれ逆特性の電荷が発生する。この電荷量によって、2つの検出用電極202間には、
図5に示すような電圧が生じる。
図5は、圧電体201の曲げの変位と電圧との関係を示すグラフである。このように、圧電センサ21の電圧、すなわち、電荷量を検出することによって、圧電センサ21の曲げの変位を検出できる。そして、上述の
図2に示すように、圧電センサ21を配置することで、アキレス腱901の伸縮による圧電センサ21の装着面の変形によって、圧電センサ21には曲げの変位が生じる。したがって、圧電センサ21の電圧を検出することで、アキレス腱901の伸縮を検出できる。
【0035】
さらに、圧電センサ21の圧電体201は、微小な振動によっても電荷を発生する。圧電センサ21の電圧を検出することで、アキレス腱901の伸縮のみでなく、アキレス腱901の振戦も検出できる。これにより、腱や筋の伸縮の検出用のセンサと、腱や筋の振戦の検出用のセンサとを、個別に設けなくてもよい。この結果、腱や筋の伸縮と振戦とを検出可能なセンサを、簡素な構成によって実現できる。
【0036】
また、補助板204が次の特性を有するとよりよい。補助板204は、圧電体201よりも硬ければよい。ここで、硬いとは、曲がり難さを表す指標である。例えば、補助板204の曲げ弾性率は、圧電体201の曲げ弾性率よりも高い。また、他の指標としては、圧電体201が上述の材料である場合に、補助板204のヤング率は、4GPa程度であるとよい。この際、補助板204の曲げ弾性率やヤング率は、圧電体201のみで補助板204を用いない態様よりも、補助板204を用いる態様の方が、同じ振動の大きさに対する電荷の発生量が多くなるように、設定すればよい。
【0037】
これにより、圧電センサ21は、アキレス腱901の振戦を、より高感度に検出できる。
【0038】
(信号処理部22の構成および処理)
図6は、信号処理部の構成を示すブロック図である。
図6に示すように、信号処理部22は、振戦信号抽出回路221、伸縮信号抽出回路222、増幅回路223、増幅回路224、フィルタ回路225、および、フィルタ回路226を備える。
【0039】
振戦信号抽出回路221および伸縮信号抽出回路222は、それぞれ、チャージアンプ回路によって構成されている。この際、振戦信号抽出回路221のチャージアンプの時定数は、振戦信号の抽出用に設定されている。また、伸縮信号抽出回路222のチャージアンプの時定数は、伸縮信号の抽出用に設定されている。例えば、振戦信号抽出回路221のチャージアンプの時定数は、伸縮信号抽出回路222のチャージアンプの時定数よりも小さい。
【0040】
図7は、伸縮信号と振戦信号とを抽出する概念を説明するための波形図である。
図7では、横軸が時間で、縦軸が電圧であり、腱の伸縮が有った場合を示している。
図8は、振戦信号の波形の一例を示す波形図である。以下では必要に応じて
図5の圧電センサ21の出力波形の図も参照して説明する。
【0041】
腱の伸縮があると、
図5に示すように、電圧は大きく変動する。圧電センサ21単体では、
図5に示すように、電圧の変動は一時的である。ここで、伸縮信号抽出回路222の時定数を適宜設定することで、
図7に示すように、腱の伸縮による電圧の変動を、略方形波として出力できる。
【0042】
また、腱の振動に伴う電圧変動は、小さい。しかしながら、腱の振動に伴う電圧変動は、10Hz程度の周波数成分を有する。したがって、振戦信号抽出回路121の時定数を適宜設定することで、
図8に示すように、腱の振動による微小且つ周期性を有する電圧の変動を、出力できる。
【0043】
振戦信号抽出回路221による処理後の信号は、増幅回路223に入力される。伸縮信号抽出回路222による処理後の信号は、増幅回路224に入力される。
【0044】
増幅回路223は、振戦信号抽出回路221の出力信号を増幅して、フィルタ回路225に出力する。増幅回路224は、伸縮信号抽出回路222の出力信号を増幅して、フィルタ回路226に出力する。増幅回路223の増幅率と、増幅回路224の増幅率は、適宜設定されているが、増幅回路223の増幅率は、増幅回路224の増幅率よりも高いことが好ましい。これにより、検出モジュール30での振戦信号の検出感度は、向上する。
【0045】
フィルタ回路225は、10Hz付近の周波数成分を抽出し、ハムノイズ成分およびDC成分を減衰させる。これにより、フィルタ回路225から出力される信号は、
図8に示すような振戦に応じた振戦信号となる。
【0046】
そして、この振戦信号の振幅は、振戦の大きさに応じて変化する。具体的には、振戦が大きいほど、振戦信号の振幅は大きくなる。
【0047】
図8に示すように、振戦信号は、所定の周波数(例えば、約10Hz)の信号である。振戦信号の振幅は、生体の負荷状態に応じて変化する。具体的には、例えば、生体が安静状態である場合のように、発生する負荷が殆ど無ければ、
図8(左側の波形)に示すように、振戦信号の振幅は、極小さい。また、生体が姿勢維持状態にあり、発生する負荷が小さい場合(例えば、生体が静止状態で重力に逆らって姿勢を維持している場合)、
図8(中央の波形)に示すように、振戦信号の振幅は、所定のレベル(強度)になる。また、生体が姿勢維持状態にあり、発生する負荷が大きい場合(例えば、生体が活動しながら、逐次姿勢を維持する場合)、
図8(右側の波形)に示すように、振戦信号の振幅は、さらに大きくなる。
【0048】
フィルタ回路226は、10Hzよりも低周波数成分、より具体的には、略DC成分を抽出する。これにより、フィルタ回路226から出力される信号は、
図7における、大きく変位する成分(重畳成分を除いた成分)となり、伸縮に応じた伸縮信号となる。
【0049】
そして、この伸縮信号の振幅は、伸縮の大きさに応じて変化する。具体的には、伸縮が大きいほど、伸縮信号の振幅は大きくなる。
【0050】
図9は、伸縮信号の波形の一例を示す波形図である。
図9に示すように、伸縮信号は、生体の動きに応じた信号であり、例えば、振戦信号よりも低周波数で略DC成分の信号である。伸縮信号の振幅は、生体の負荷状態に応じて変化する。具体的には、生体が安静状態であり、動いていなければ、
図9(左側の波形)に示すように、伸縮信号の振幅は、略基準電圧である。また、腱や筋が伸縮する小さな動きが生体に生じた場合(低負荷運動)、
図9(中央の波形)に示すように、伸縮信号の振幅は、所定のレベル(強度)になる。また、生体に腱や筋が伸縮する大きな動きが生体に生じた場合(高負荷運動)、
図9(右側の波形)に示すように、伸縮信号の振幅は、さらに大きくなる。
【0051】
このように、信号処理部22を用いることで、センサモジュール20は、圧電センサ21で発生する電圧から伸縮信号と振戦信号とを個別に取得し、出力できる。この際、センサモジュール20は、観測対象の腱や筋の負荷状態に応じた振幅の伸縮信号と振戦信号とを抽出して、出力できる。
【0052】
(検出モジュール30の構成および処理)
図10は、検出モジュールの構成を示すブロック図である。
図10に示すように、検出モジュール30は、振戦信号検出部311、伸縮信号検出部312、および、状態解析部313を備える。なお、検出モジュール30は、少なくとも振戦信号検出部311と伸縮信号検出部312とを備えていればよい。検出モジュール30は、MCU等によって実現可能である。
【0053】
振戦信号検出部311には、信号処理部22から、振戦信号が入力される。振戦信号検出部311は、振戦信号のレベル(振幅)を検出し、状態解析部313に出力する。伸縮信号検出部312には、信号処理部22から、伸縮信号が入力される。伸縮信号検出部312は、伸縮信号のレベル(振幅)を検出し、状態解析部313に出力する。
【0054】
状態解析部313は、振戦信号のレベルと伸縮信号のレベルとを用いて、観測対象の腱または筋の活動状態を解析する。
図11は、活動状態の解析テーブルの一例を示す図である。
【0055】
(等尺性収縮が発生し、等張性収縮が発生していない場合)
図11に示すように、等張性収縮が発生しておらず、等尺性収縮が発生している場合、振戦信号の振幅は大きくなり、伸縮信号の振幅は変化しない。したがって、状態解析部313は、振戦信号の規定の単位時間における平均振幅が閾値THa以上であり、伸縮信号の規定の単位時間における平均振幅の変化量が閾値THb未満(典型的には基準値から実質的に動かない状態等)であると、等尺性収縮が発生しており等張性収縮が発生していない状態であると判定する。なお、振戦信号の規定の単位時間における平均振幅が閾値THa以上の状態は、
図8における負荷がある状態(
図8中央の波形、
図8右側の波形に対応)である。また、伸縮信号の規定の単位時間における平均振幅の変化量が閾値THb未満であるか、または基準値から実施的に変化しない状態は、
図9における運動の無い状態(
図9左側の波形に対応)である。
【0056】
(等張性収縮が発生し、等尺性収縮が発生していない場合)
図11に示すように、等尺性収縮が発生しておらず、等張性収縮が発生している場合、振戦信号の振幅は大きくなり、伸縮信号の振幅は変化する。したがって、状態解析部313は、振戦信号の規定の単位時間における平均振幅が閾値THa以上であり、伸縮信号の規定の単位時間における平均振幅の変化量が閾値THb以上であると、等尺性収縮が発生しておらず、等張性収縮が発生している状態であると判定する。なお、伸縮信号の振幅に変化がある状態は、
図9における運動のある状態(
図9中央の波形および
図9の右側の波形に対応)である。
【0057】
(他動可動が発生している場合)
他動可動とは、観測対象の腱または筋を備える生体が、意識せずに、外部から力をかけられて動く状態を意味する。例えば、リハビリ時のセラピストや介護装具等により、足が外力によって動かされている状態等である。
【0058】
図11に示すように、他動可動が発生している場合、振戦信号の振幅は小さくなり、伸縮信号の振幅は変化する。したがって、状態解析部313は、振戦信号の振幅が閾値THa未満であり、伸縮信号の振幅の変化量が閾値THb以上であると、他動可動が発生している状態であると判定する。なお、振戦信号の振幅が閾値THa未満の状態は、
図8における負荷がない状態(
図8左側の波形に対応)である。
【0059】
(安静状態)
安静状態とは、運動を行っておらず、姿勢維持の負荷をかけず、他動可動もない状態を意味する。
【0060】
図11に示すように、安静状態の場合、振戦信号の振幅は小さくなり、伸縮信号の振幅は変化しない。したがって、状態解析部313は、振戦信号の振幅が閾値THa未満であり、伸縮信号の振幅が閾値THb未満であると、安静状態であると判定する。
【0061】
このように、センサモジュール20からの信号を用いることによって、検出モジュール30は、等尺性収縮のみが発生している状態、等張性収縮が発生している状態、他動可動が発生している状態、および、安静状態を、個別に検出できる。
【0062】
なお、上述の説明では、筋活動観測装置10の処理を、複数の機能部で実現する態様を示した。しかしながら、次に示すような筋活動観測方法をプログラム化して記憶部に記憶しておき、演算装置によって当該プログラムを読み出して実行する態様を用いてもよい。
【0063】
図12は、筋活動観測方法のフローを示す図である。
図13は、状態解析のフローを示す図である。なお、各処理の具体的な内容は、上述しており、説明は省略する。
【0064】
演算装置は、センサの出力信号を取得する(S11)。演算装置は、センサの出力信号から、振戦信号を抽出して増幅する(S12)。演算装置は、センサの出力信号から、伸縮信号を抽出して増幅する(S13)。なお、ステップS12の処理とステップS13の処理の順はこれに限らず、逆でもよく、同時並行処理であってもよい。
【0065】
演算装置は、振戦信号のレベルを検出する(S14)。演算装置は、伸縮信号の変化量を検出する(S15)。なお、ステップS14の処理とステップS15の処理の順はこれに限らず、逆でもよく、同時並行処理であってもよい。
【0066】
演算装置は、振戦信号のレベルと伸縮信号の変化量とを用いて、観測対象の腱または筋の状態を解析する(S13)。具体的には、演算装置は、振戦信号の平均レベルが閾値THa以上であり(S161:YES)、伸縮信号の平均変化量が閾値THb以上であれば(S162:YES)、等張性収縮が生じていると判定する(S163)。演算装置は、振戦信号の平均レベルが閾値THa以上であり(S161:YES)、伸縮信号の平均変化量が閾値THb未満であれば(S162:NO)、等尺性収縮が生じていると判定する(S164)。演算装置は、振戦信号の平均レベルが閾値THa未満であり(S161:NO)、伸縮信号の平均変化量が閾値THb以上であれば(S165:YES)、他動可動であると判定する(S166)。演算装置は、振戦信号の平均レベルが閾値THa未満であり(S161:NO)、伸縮信号の平均変化量が閾値THb未満であれば(S165:NO)、安静状態であると判定する(S167)。なお、上記の平均レベル、平均変化量の「平均」とは、規定の単位時間における平均のことである。
【0067】
なお、上述の説明では、振戦の周波数を約10Hzとしている。しかしながら、例えば、振戦の周波数は、0.5Hzから100Hz、より好ましくは、3Hzから25Hzにするとよい。これは、不随意運動に伴う機械的運動には生理的振戦に加え、病理的振戦、筋音図、マイクロバイブレーション、心弾動図などがあるからである。これらの信号との区別を行うためにも、振戦の周波数を0.5Hzから100Hzとして計測するシステムとすることが望ましい。
【0068】
また、生理的振戦は、8Hzから12Hzが中心周波数となるが、部位に依存する周波数も存在する。例えば、上肢は3Hz、手の指は25Hzである。したがって、振戦の周波数を3Hzから25Hzとして計測するシステムとすることがより望ましい。
【0069】
また、上述の説明では、側面視して略L字状の生体支持体40を例に示したが、
図14に示すような形状であってもよい。
図14は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図である。
【0070】
図14に示すように、生体支持体40Aは、円筒形である。生体支持体40Aは、上述の生体支持体40における第1部分41に類似する形状である。生体支持体40Aは、足首91を覆うように配置される。
【0071】
また、
図14に示す構成では、センサモジュール20と検出モジュール30とは、円筒形からなる生体支持体40Aの円筒形の周方向に沿って並んで配置されている。そして、センサモジュール20と検出モジュール30とは、この周方向に延びる配線によって接続されている。
【0072】
このように、
図14に記載の構成にすることで、例えば、筋活動観測装置10の構成を簡素化でき、装着が容易になる。
【0073】
また、上述の説明では、センサモジュール20を足に装着しているが、次に示すように、体の他の部位に装着することも可能である。
図15(A)、
図15(B)は、腕(上腕)および大腿に装着した態様を示し、
図15(C)、
図15(D)は、前腕に装着した態様を示す図である。
図16(A)、
図16(B)は、胸、腹、背中、腰に装着した態様を示す図である。
【0074】
図15(A)、
図15(B)に示すように、上腕991に装着する場合、センサモジュール20における圧電センサ21の長さ方向を、上腕991の延びる方向に直交させるとよい。また、
図15(A)、
図15(B)に示すように、大腿992に装着する場合、センサモジュール20における圧電センサ21の長さ方向を、大腿992の延びる方向に直交させるとよい。また、
図15(C)、
図15(D)に示すように、前腕993に装着する場合、センサモジュール20における圧電センサ21の長さ方向を、前腕993の延びる方向に直交させるとよい。なお、
図15(A)、
図15(B)では、センサモジュール20および検出モジュール30の組は、装着対象に対して、2個装着されているが、1個であってもよい。
【0075】
また、
図16(A)、
図16(B)に示すように、胸994および背中996に装着する場合、センサモジュール20における圧電センサ21の長さ方向を、胸994および背中996の幅方向に平行にするとよい。また、
図16(A)、
図16(B)に示すように、腹995および腰997に装着する場合、センサモジュール20における圧電センサ21の長さ方向を、腹995および腰997の幅方向に平行にするとよい。
【0076】
また、
図15(A)、
図15(B)、
図15(C)、
図15(D)、
図16(A)、
図16(B)の装着態様に対して、例えば、体の前側と後ろ側のセンサモジュール20を1個の生体支持体40Aに配置し、これらに対して、同じく生体支持体40Aに配置された共通の1個の検出モジュール30を接続してもよい。
【0077】
なお、足を検出対象とすることによって、靴下自体で振戦信号等を検出したり、靴下やストッキングの上から振戦信号等を検出したりできる。また、筋負荷と足関節の動きを同時に検出できる。脚または足は、装着している感覚を忘れやすいように、人間の意識から遠い装着位置であり、腕、腰、胸部等と比較して、センサモジュール20の装着に対する違和感を少なくできる。下腿最小囲付近への装着であれば、靴の有無、靴下の有無にも影響されない。前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋と、日常生活動作、姿勢維持、歩行時に重要な筋肉を検出、観測できる。両脚に装着すれば、歩行、ジョギング、下肢トレーニング、下肢リハビリ等の分析、定量化に利用できる。
【0078】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る筋活動観測装置について、図を参照して説明する。
図17は、第2の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図である。
図18(A)は、筋活動観測装置の足への装着の状態を示す側面図であり、
図18(B)は、筋活動観測装置の足への装着状態を示す平面図である。
【0079】
図17に示すように、第2の実施形態に係る筋活動観測装置10Aは、第1の実施形態に筋活動観測装置10に対して、センサモジュール20A、センサモジュール20B、および、センサモジュール20Cを備える点、検出部31Aの処理において異なる。筋活動観測装置10Aの他の構成は、筋活動観測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0080】
センサモジュール20A、センサモジュール20B、および、センサモジュール20Cは、第1の実施形態に係るセンサモジュール20と同様の構成および処理を実行する。
図18(A)、
図18(B)に示すように、センサモジュール20Aの圧電センサ21Aは、アキレス腱901に重なるように、下腿最小囲90に装着されている。センサモジュール20Bの圧電センサ21Bは、前脛骨筋腱902に重なるように装着されている。センサモジュール20Cの圧電センサ21Cは、長腓骨筋腱903に重なるように装着されている。すなわち、筋活動観測装置10Aは、腱または筋の活動の検出箇所を複数としている。
【0081】
センサモジュール20A、センサモジュール20B、および、センサモジュール20Cは、それぞれで抽出した振戦信号および伸縮信号を、検出モジュール30Aの検出部31Aに出力する。
【0082】
検出部31Aは、上述の検出部31と同様に、等尺性収縮、等張性収縮、他動可動、または、安静状態を検出するとともに、足の動作状態を解析する。
図19は、部位と動作と対象の腱・筋肉との関係の一例を示す表である。
【0083】
検出部31Aは、センサモジュール20Aの振戦信号と伸縮信号とから、等張性収縮を検出すると、アキレス腱901の伸縮を検出する。検出部31Aは、センサモジュール20Bの振戦信号と伸縮信号とから、等張性収縮を検出すると、前脛骨筋腱902の伸縮を検出する。検出部31Aは、センサモジュール20Cの振戦信号と伸縮信号とから、等張性収縮を検出すると、長腓骨筋腱903の伸縮を検出する。
【0084】
検出部31Aは、アキレス腱901の伸縮、前脛骨筋腱902の伸縮、および、長腓骨筋腱903の伸縮を用いて、足(下腿)の動作状態を検出する。例えば、
図19に示すように、検出部31Aは、アキレス腱901の伸縮(ヒラメ筋、腓腹筋等の伸縮)を検出すれば、足の屈曲(底屈)または内がえしがあると判定する。また、
図19に示すように、検出部31Aは、前脛骨筋腱902の伸縮(前脛骨筋の伸縮)を検出すれば、足の伸展(背屈)があると判定する。また、
図19に示すように、検出部31Aは、長腓骨筋腱903の伸縮を検出すれば、足の外がえしがあると判定する。このように、筋活動観測装置10Aは、足の各種の動作状態を判定できる。
【0085】
なお、足以外についても、上述の
図15(A)、
図15(B)、
図15(C)、
図15(D)、
図16(A)、
図16(B)に示すような装着態様を実現することで、
図19に示すように、他の部位についても、動作状態を検出する。
【0086】
例えば、大腿四頭筋の伸縮を検出すれば、膝(大腿)の屈曲を判定できる。ハムストリングスの伸縮を検出すれば、膝(大腿)の伸展を判定できる。手の掌屈筋群(深指屈筋/浅指屈筋/長母子屈筋等)の伸縮を検出すれば、手、指の屈曲(掌屈)を判定できる。手の背屈筋群(総指伸筋等)の伸縮を検出すれば、手、指の伸展(背屈)を判定できる。上腕二頭筋の伸縮を検出すれば、肘(上腕)の屈曲を判定できる。上腕三頭筋の伸縮を検出すれば、肘(上腕)の伸展を判定できる。腹直筋の伸縮を検出すれば、腹・腰の屈曲(脊柱の前屈)を判定できる。固有背筋群(脊柱起立筋等)の伸縮を検出すれば、腹・腰の伸展(脊柱の後屈)を判定できる。大胸筋の伸縮を検出すれば、胸の屈曲(収縮)を判定できる。広背筋の伸縮を検出すれば、胸の伸展を判定できる。
【0087】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る筋活動観測装置について、図を参照して説明する。
図20(A)は、第3の実施形態に係る筋活動観測装置の構成を示すブロック図である。
図20(B)は、信号処理部の構成を示すブロック図である。
【0088】
図20(A)に示すように、第3の実施形態に係る筋活動観測装置10Bは、第1の実施形態に係る筋活動観測装置10に対して、信号処理部22B、センサモジュール20Bを備える点で異なる。筋活動観測装置10Bの他の構成は、筋活動観測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0089】
信号処理部22Bは、信号処理部22に対して、送信制御部227をさらに備える。送信制御部227は、フィルタ回路225およびフィルタ回路226に接続している。送信制御部227は、振戦信号と伸縮信号とを時分割で、検出部31に送信する。
【0090】
このような構成とすることによって、センサモジュール20Bと検出モジュール30とを接続する通信ケーブルの構成を簡素化できる。
【0091】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る筋活動観測装置について、図を参照して説明する。
図21は、第4の実施形態に係る筋活動観測装置におけるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
【0092】
図21に示すように、センサモジュール20Cは、センサモジュール20に対して、圧電センサ21を備えず、振戦観測用センサ21trおよび伸縮観測用センサ21tmを備える点で異なる。センサモジュール20Cの他の構成は、センサモジュール20と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0093】
振戦観測用センサ21trは、上述の振戦信号を検出するセンサである。例えば、振戦観測用センサ21trは、加速度センサ、マイク等によって実現される。なお、振戦観測用センサ21trは、圧電センサ21によっても実現可能である。また、振戦観測用センサ21trは、10Hz程度の信号を検出できるものであれば、他のセンサであってもよい。
【0094】
振戦観測用センサ21trは、振戦に基づく電気的な変化を、信号処理部22Cの振戦信号抽出回路221に出力する。
【0095】
伸縮観測用センサ21tmは、上述の伸縮信号を検出するセンサである。例えば、伸縮観測用センサ21tmは、圧電センサ21によって実現される。なお、伸縮観測用センサ21tmは、観測対象の腱や筋の伸縮に応じて状態が変化し、この状態変化に応じた電気信号が得られるものであれば、他のセンサであってもよい。他のセンサとしては、例えば、感圧膜を用いた感圧センサ、ダイヤフラム変形による歪み変化、静電容量変化を検出する圧力センサ・荷重センサ等を用いてもよい。
【0096】
伸縮観測用センサ21tmは、腱または筋の伸縮に基づく電気的な変化を、信号処理部22Cの伸縮信号抽出回路222に出力する。
【0097】
このセンサモジュール20Cのように、振戦信号を検出するセンサと、伸縮信号を検出するセンサとを別にしてもよい。その場合、振戦信号を検出するセンサの補助板と、伸縮信号を検出するセンサの補助板とは、それぞれの信号の検出に適する材料、特性のものにするとよい。
【0098】
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係る筋活動観測装置について、図を参照して説明する。
図22は、第5の実施形態に係る筋活動観測装置におけるセンサモジュールの構成を示すブロック図である。
【0099】
図22に示すように、第5の実施形態に係る筋活動観測装置10Dは、第1の実施形態に係る筋活動観測装置10に対して、ノイズ観測センサ50を追加した点、検出部31Dの処理において異なる。筋活動観測装置10Dの他の構成は、筋活動観測装置10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0100】
ノイズ観測センサ50は、例えば、加速度センサであり、観測対象の生体の部位の動作を検出して、動作ノイズを生成する。ノイズ観測センサ50は、動作ノイズを検出部31Dに出力する。
【0101】
検出部31Dは、動作ノイズを用いて、振戦信号および伸縮信号に含まれるノイズを抑圧する。
【0102】
この構成によって、検出部31Dは、腱または筋の動作状態を、より高精度に解析できる。
【0103】
なお、各実施形態の構成において、振戦信号の検出を、筋活動観測装置の起動に用いることも可能である。例えば、筋活動観測装置は、スリープモードとして、振戦信号のレベルのみを観測する。そして、筋活動観測装置は、振戦信号のレベルが閾値THa以上になることを検出し、スリープモードから起動して、振戦信号および伸縮信号を観測する。これにより、筋活動観測装置は省電力化される。
【0104】
また、各実施形態では、圧電センサは、生体支持体40を用いて装着されている。しかしながら、圧電センサは、生体支持体40を用いずに、生体に直接装着されていてもよい。
【0105】
また、上述の説明では、圧電センサは、足首付近の特定の腱に重ねて配置されている。しかしながら、圧電センサの配置位置は、これに限らず、観測対象の腱または筋に重なっていればよく、さらには、腱または筋に重なっていなくても、腱または筋の動きの影響を受ける位置であればよい。
【0106】
また、上述の説明では、圧電センサの圧電体の材料として、ポリ乳酸、窒化アルミニウムを用いる態様を示した。しかしながら、圧電体の材料は、無機圧電材料として、水晶、圧電セラミックスであるPZT及び(Pb,La)(Zr,Ti)OXぺロブスカイト化合物(PZLT)や、圧電単結晶であるニオブ酸ジルコン酸鉛‐チタン酸鉛固溶体(PZN‐PT)、マグネシウムニオブ酸鉛‐チタン酸鉛固溶体(PMN‐PT)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸カリウム(KNbO3)、酸化亜鉛(ZnO)等の薄膜を用いることが可能である。また、有機圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン系共重合体、ポリシアン化ビニリデン、シアン化ビニリデン系共重合体、ナイロン9やナイロン11等の奇数ナイロン、芳香族ナイロン、脂環族ナイロン、ポリヒドロキシブチレート等のポリヒドロキシカルボン酸、セルロース系誘導体及びポリウレア等が挙げられる。
【0107】
また、上述の説明では、生体支持体40は、筒状であったが、帯状であってもよく、靴下等の衣類であってもよい。
【0108】
また、上述の各実施形態に示した筋活動観測装置の構成は、適宜組合せが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果が得られる。
【0109】
また、上述の説明では、振戦と伸縮を用いて、観測対象の腱または筋の状態を解析している。しかしながら、振戦だけで解析を行うことも可能である。振戦だけを用いた場合、筋収縮(曲げ)の分析を必要としない定量化では、装置の構成を簡素化できる。腱のある位置だけでなく、筋腹等の設置場所の自由度が増す。上述のように、圧電フィルムに代えて、加速度センサまたはマイク(高感度マイク)等を用いることができる。
【0110】
(筋活動観測システムの構成例)
上述の各実施形態に示した筋活動観測装置は、例えば、
図23、
図24に示すような筋活動観測システムに採用できる。なお、以下では、第1の実施形態に係る筋活動観測装置10を用いる態様を示すが、他の実施形態の筋活動観測装置も用いることができる。
【0111】
図23は、筋活動観測システムの第1態様例を示すブロック図である。
図23に示すように、筋活動観測システム1は、筋活動観測装置10とサーバ60とを備える。
【0112】
サーバ60は、例えば、サーバ制御部61、通信部62、および、データベース610を備える。サーバ制御部61は、サーバ60の全体制御を行う。また、サーバ制御部61は、腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態等のデータベース610への登録、読み出し等を実行する。
【0113】
通信部62は、筋活動観測装置10の通信部32と、データ通信を行う。通信部62は、筋活動観測装置10からの腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態を受信して、サーバ制御部61に出力する。通信部62と通信部32との通信は、無線通信であっても、有線通信であってもよい。
【0114】
このような構成によって、筋活動観測装置10で得られた腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態等を、データベース化して記憶しておき、ユーザは、必要に応じてこれらを利用できる。
【0115】
図24は、筋活動観測システムの第2態様例を示すブロック図である。
図24に示すように、筋活動観測システム1Aは、筋活動観測装置10と情報端末70とを備える。
【0116】
情報端末70は、例えば、演算部71、通信部72、記憶部73、表示部74、および、操作部75を備える。
【0117】
演算部71は、情報端末70の全体制御を行う。通信部72は、筋活動観測装置10の通信部32と、データ通信を行う。通信部72と通信部32との通信は、無線通信であっても、有線通信であってもよい。通信部72は、筋活動観測装置10からの腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態を受信して、演算部71に出力する。記憶部73には、アプリケーションプログラム730が記憶されている。また、記憶部73には、通信部72を介して受信した腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態が記憶されている。表示部74は、液晶ディスプレイ等から構成される。操作部75は、タッチパネル等から構成される。
【0118】
演算部71は、操作部75からの操作入力等に応じて、アプリケーションプログラム730を記憶部73から読み出して実行する。アプリケーションプログラム730は、例えば、腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態等を可視化するプログラムである。
【0119】
演算部71は、アプリケーションプログラム730を実行する。この際、演算部71は、通信部72で受信した、または、記憶部73に記憶されている腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態を用いて、アプリケーションプログラム730を実行する。演算部71は、アプリケーションプログラム730の実行結果を、表示部74に表示させる。
【0120】
このような構成によって、筋活動観測装置10で腱または筋の活動の解析結果、足の動作状態等を観測しながら、ユーザは、この観測結果を、視覚的に容易に確認できる。
【0121】
上述の筋活動観測システムの各構成は、適宜組合せが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0122】
1、1A:筋活動観測システム
10、10A、10B、10D:筋活動観測装置
20、20A、20B、20C:センサモジュール
21、21A、21B、21C:圧電センサ
21tm:伸縮観測用センサ
21tr:振戦観測用センサ
22、22B、22C:信号処理部
22M:信号処理回路モジュール
30、30A:検出モジュール
31、31A、31D:検出部
32:通信部
33:電源
40、40A:生体支持体
41:第1部分
42:第2部分
43:穴
50:ノイズ観測センサ
60:サーバ
61:サーバ制御部
62:通信部
70:情報端末
71:演算部
72:通信部
73:記憶部
74:表示部
75:操作部
121:振戦信号抽出回路
201:圧電体
202:検出用電極
203:接着層
204:補助板
220C:伝送ケーブル
220M:接続端子
221:振戦信号抽出回路
222:伸縮信号抽出回路
223、224:増幅回路
225、226:フィルタ回路
227:送信制御部
311:振戦信号検出部
312:伸縮信号検出部
313:状態解析部
610:データベース
730:アプリケーションプログラム
90:下腿最小囲
91:足首
92:足の甲
93:踵
94:足の裏
901:アキレス腱
902:前脛骨筋腱
903:長腓骨筋腱
991:上腕
992:大腿
993:前腕
994:胸
995:腹
996:背中
997:腰