(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】シールドフラットケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/08 20060101AFI20221220BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20221220BHJP
H01B 11/10 20060101ALI20221220BHJP
H01B 11/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01B7/08
H01B7/18 D
H01B11/10
H01B11/08
(21)【出願番号】P 2020516219
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2019015859
(87)【国際公開番号】W WO2019208247
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2018082576
(32)【優先日】2018-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 学
(72)【発明者】
【氏名】平川 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 真
(72)【発明者】
【氏名】松田 龍男
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表平3-501435(JP,A)
【文献】実開平2-59521(JP,U)
【文献】実開昭60-26130(JP,U)
【文献】特開平6-267339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/08
H01B 7/18
H01B 11/10
H01B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配列された1つまたは複数のグランド線と、
前記グランド線に平行に配列された
1対の信号線と、
前記グランド線および前記
1対の信号線を覆う絶縁層と、
前記絶縁層の外周側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記絶縁層は1つの前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底部とする複数の開口部を有し、
前記開口部において、前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、
前記1対の信号線ごとに、前記
1対の信号線が前記グランド線と前記シールド層に囲まれ
、
前記絶縁層と前記シールド層との間に、樹脂製中間層が介在され、
前記樹脂製中間層の両端は、前記1対の信号線と、前記シールド層または前記グランド線との間に設けられているシールドフラットケーブル。
【請求項2】
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線と前記
1対の信号線
の一方の信号線が並んで配列されており、前記
一方の信号線は
、前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底面とする前記開口部において電気的に接続された前記シールド層
と前記グランド線とにより囲まれている、請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項3】
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記
1対の信号線は、前記
1対の信号線を挟む2本の前記グランド線と前記
1対の信号線を挟む2本の前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底面とする前記開口部において電気的に接続された前記シールド層とにより囲まれている、請求項1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項4】
前記
1対の信号線が
、差動伝送用
の信号線
である、請求項1から3のいずれか1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項5】
前記開口部の幅が前記グランド線の配列方向の幅の2分の1以下である、請求項1から4のいずれか1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項6】
前記絶縁層のみで外周が覆われた電力線をさらに有する、請求項1から
5のいずれか1に記載のシールドフラットケーブル。
【請求項7】
前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記電力線は前記グランド線と並んで設けられ、前記シールド層の端は、前記グランド線の端と第1の電力線の端との間に設けられる、請求項6に記載のシールドフラットケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シールドフラットケーブルに関する。
本出願は、2018年4月23日に日本において出願された日本出願第2018-082576号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載されたすべての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブル(FFC)は、CDやDVDプレーヤ等のAV機器、コピー機やプリンタ等のOA機器、その他電子・情報機器の内部配線等の多くの分野で、省スペース化と簡便な接続を目的として用いられている。また、機器の使用周波数が高くなるとノイズの影響が大きくなることから、シールドされたシールドフラットケーブルが用いられる。
【0003】
シールドフラットケーブルのシールドは、例えば、FFCの外側にシールド層を設けることにより行われる。このシールド層は、例えば、特許文献1に開示されているように、グランド線の片面に設けた開口部を通して、グランド線と電気的に接続され、グランド線を通して基板側のグランド電位に維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された1つまたは複数のグランド線と、前記グランド線に平行に配列された1対の信号線と、前記グランド線および前記1対の信号線を覆う絶縁層と、前記絶縁層の外周側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記絶縁層は1つの前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底部とする複数の開口部を有し、前記開口部において、前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、前記1対の信号線ごとに、前記1対の信号線が前記グランド線と前記シールド層に囲まれ、前記絶縁層と前記シールド層との間に、樹脂製中間層が介在され、前記樹脂製中間層の両端は、前記1対の信号線と、前記シールド層または前記グランド線との間に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図2A】本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための長手方向に垂直な断面図である。
【
図2B】本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための長手方向に垂直な断面図である。
【
図3】本開示の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図4】本開示の第3の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図5】本開示の第4の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図6】本開示の第5の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図7】本開示の第6の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【
図8】本開示と電気的に等価な参考例に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
シールド層で囲まれた各導体は、ケーブル外部からのノイズの影響が受けにくく、また、ケーブル外部に対してノイズを発生するなどの悪影響を及ぼさないために、高速信号伝送が可能である。しかし、シールド層で囲まれた各導体間にはクロストークが発生したり、また、電力線をともに併設した場合には、電力線に伝わるノイズの影響を受けることになる。
【0008】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、所定の信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくいシールドフラットケーブルを提供することをその目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、所定の信号線をグランド線とシールド層で取り囲むことができるため、所定の信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくいシールドフラットケーブルを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の一態様に係るシールドフラットケーブルは、平行に配列された1つまたは複数のグランド線と、前記グランド線に平行に配列された1対の信号線と、前記グランド線および前記1対の信号線を覆う絶縁層と、前記絶縁層の外周側に設けたシールド層を有するシールドフラットケーブルであって、前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記絶縁層は1つの前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底部とする複数の開口部を有し、前記開口部において、前記グランド線が前記シールド層と電気的に接続されており、前記1対の信号線ごとに、前記1対の信号線が前記グランド線と前記シールド層に囲まれ、前記絶縁層と前記シールド層との間に、樹脂製中間層が介在され、前記樹脂製中間層の両端は、前記1対の信号線と、前記シールド層または前記グランド線との間に設けられている。
【0011】
この構成により、所定の信号線をグランド線とシールド層で取り囲むことができるため、所定の信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0012】
(2)前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記グランド線と前記信号線との配列の1方の端に1つまたは複数の前記信号線が配列されており、前記端の信号線は、前記端の信号線に最も近い前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底面とする前記開口部において電気的に接続された前記シールド層と前記端の信号線に最も近い前記グランド線とにより囲まれていてもよい。
この構成により、シールドフラットケーブルの配列方向の端部に配列された信号線を、グランド線とシールド層で取り囲むことができるため、端部の信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0013】
(3)前記グランド線の長手方向に垂直な断面において、前記信号線は、前記信号線を挟む2本の前記グランド線と前記信号線を挟む2本の前記グランド線の上面と下面をそれぞれ底面とする前記開口部において電気的に接続された前記シールド層とにより囲まれていてもよい。
この構成により、シールドフラットケーブルの端部あるいは中央部に配列した信号線を、この信号線の配列方向の両側に設けたグランド線とシールド層によって取り囲むことができるため、端部あるいは中央部に配列した信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0014】
(4)前記信号線が、信号伝送用の1本の前記信号線あるいは隣接して並列された差動伝送用の1対の前記信号線からなることが望ましい。
この構成により、各1本の信号線あるいは差動伝送用の1対の信号線ごとに、これらの信号線をグランド線とシールド層で取り囲むことができるため、これらの信号線を確実にシールドでき、外部ノイズやクロストークの影響を受けにくくできる。
【0015】
(5)前記絶縁層と前記シールド層との間に、インピーダンス調整用の樹脂製中間層が介在されていてもよい。
この構成により、シールドフラットケーブルの特性インピーダンスが所定の値に設定しやすくなる。
【0016】
(6)前記開口部の幅が前記グランド線の配列方向の幅の2分の1以下であることが望ましい。
この構成により、厳しい使用環境においても、グランド線の箇所で絶縁層と剥がれることがなく、グランド線の接着強度を確保できる。
【0017】
(7)前記絶縁層のみで外周が覆われた電力線をさらに有していてもよい。
この構成により、信号線による信号伝送と電力伝送を1つのシールドフラットケーブルで行うことができるとともに、電力線に伝わるノイズが信号線に影響しにくくなる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、図面を参照しながら、本開示のシールドフラットケーブルに係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内および均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図であり、
図2Aおよび
図2Bは、本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための長手方向に垂直な断面図である。
【0020】
本実施形態に係るシールドフラットケーブル1は、互いに平行に配列された、1対の信号線S1,S2、グランド線G1、電力線P1,P2を含む複数の導体と、これらの導体を覆う第1の絶縁層11および第2の絶縁層12と、第1の絶縁層11,第2の絶縁層12の一部の外周面をそれぞれ被覆する第1のシールド層21、第2のシールド層22とを備えている。信号線S1,S2は、シールドフラットケーブル1の導体の配列方向の一方の端部に位置している。
【0021】
グランド線G1の両面には、第1、第2の絶縁層11,12に設けた開口部13,14によって露出面が形成されている。この開口部13,14は、グランド線G1の上面と下面をそれぞれ底面とし、グランド線G1の長手方向全長にわたって設けられており、開口部13の箇所で、グランド線G1と第1のシールド層21とが、開口部14の箇所で、グランド線G1と第2のシールド層22とが電気的に接続されている。また、第1、第2のシールド層21,22は、シールドフラットケーブル1の幅方向側面からはみ出た端部Aで電気的に接続されている。これにより、1対の信号線S1,S2は、第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22、および、端部Aによって、取り囲まれている。なお、シールドフラットケーブル1は、長手方向の両端部に端子部を有しているが、この両端部の端子部を除いて、シールドフラットケーブル1の全体を覆う保護樹脂層(図示省略)を設けておいてもよい。
【0022】
信号線S1,S2は、例えば、銅箔、錫メッキ軟銅箔等の導電性金属からなり、例えば、厚さが10μm~100μmで、幅が0.2~0.8mm程度の平形導体である。また、信号線S1,S2のピッチは、0.5~1.0mmで配列される。信号線S1,S2の導体サイズやピッチは、伝送ロス、差動ペアの特性インピーダンスの要求値によって決定される。この信号線S1,S2の配列状態は、第1、第2の絶縁層11,12により挟まれて保持される。本実施形態では、信号線は差動伝送用として1対の信号線S1,S2を用いた場合を示しているが、差動伝送を行わない場合は1本の信号線であってもよい。
【0023】
グランド線G1は、シールドフラットケーブル1が機器を構成する基板に接続されると同時に、基板のグランド層に電気的に接続され、接地される導体である。グランド線G1は信号線S1,S2と同様の平形導体の構成とすることができるが、その幅が信号線S1,S2よりも広い、例えば1~5mm程度とすることが望ましい。
【0024】
電力線P1,P2は、シールドフラットケーブル1が接続される電子・電気機器や電子部品に対して電力の供給を行うための導体である。電力線P1,P2についても、信号線S1,S2と同様の平形導体の構成とすることができるが、流す電流の大きさによって、その断面積を信号線S1,S2やグランド線G1よりも広く構成される。なお、電力線P1,P2を必要としない場合は、設けなくてもよい。
【0025】
第1、第2の絶縁層11,12は、その内面(接合面)に接着層(図示省略)を有する樹脂フィルムを貼り合わせることによって構成される。第1、第2の絶縁層11,12自体は、柔軟性に優れた一般的な樹脂フィルムが使用され、例えば、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリイミド樹脂等の汎用性のある樹脂フィルムを用いることができる。この樹脂フィルムの厚さとしては、9μm~400μmのものが用いられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂等の樹脂材料が挙げられる。
【0026】
第1、第2の絶縁層11.12の接着層としては、樹脂材料からなるものが使用され、例えば、ポリエステル系樹脂やポリオレフィン系樹脂に難燃剤を添加した接着剤などが挙げられる。この接着層は、10μm~100μmの厚みで形成される。第1、第2の絶縁層11,12は、2枚の樹脂フィルムを、1対の信号線S1,S2、グランド線G1、電力線P1,P2を挟んで接着層を向き合わせ、加熱ローラで熱を加えながら接合することにより貼り合わされ一体化される。
【0027】
第1のシールド層21と第2のシールド層22は、それぞれの厚みが10~200μm程度で、金属層と導電性接着層(図示省略)の2層構造からなるフィルムを用いて形成される。第1、第2のシールド層21,22の金属層としては、例えば金属箔、あるいは、絶縁フィルム上に形成した金属蒸着膜等を用いることができる。第1、第2のシールド層21,22の金属材料としては、比較的安価で導電性に優れる銅またはアルミニウムが好適である。また、第1、第2のシールド層21,22の厚さは、薄くしすぎるとシールド層の電気抵抗が大きくなるため、シールド効果は低下する。反対に、第1、第2のシールド層21,22の厚さを厚くすると、シールド効果は得られるものの、グランド線G1との電気接続やシールドフラットケーブル1の可撓性が損なわれるおそれがある。
【0028】
第1、第2のシールド層21,22は、その導電性接着層を内側にして第1、第2の絶縁層11,12と開口部13,14でグランド線G1とに貼付される。また、第1、第2のシールド層21,22は、シールドフラットケーブルの端部で互いに導電性接着層で接着されるため、1対の信号線S1,S2は、第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22、および、端部Aによって取り囲まれてシールドされる。また、その電位は、シールドフラットケーブル1が機器を構成する基板に接続されると同時に、基板のグランド層に電気的に接続され、接地される。このように、本実施形態では、グランド線G1は、信号線S1,S2の配列方向の側方からのノイズを遮断するシールドとして機能しているため、ノイズ低減効果を向上することができる。
【0029】
次に、本実施形態のシールドフラットケーブルの製造方法の一例について説明する。
図2Aおよび
図2Bは、本開示の第1の実施形態に係るシールドフラットケーブルの製造過程の一例を説明するための図である。
図2Aに示すように、信号線S1,S2、グランド線G1、電力線P1,P2となる各平形導体を所定の間隔を保った状態で平行に並べ、その上下を、内側に接着層を設けた絶縁フィルムの間に挟み込み、加熱ローラで熱を加えながら接合することにより、各導体の両面が第1、第2の絶縁層11,12によって一体化された長尺のフラットケーブルを作製する。
【0030】
次に、
図2Bに示すように、グランド線G1の両面の第1、第2の絶縁層11,12を所定の幅W2だけ長手方向全長にわたって除去し、開口部13,14を形成する。除去の方法としては、レーザ加工による方法、溶剤によって溶解させる方法、あるいは、機械的に除去する方法などを用いることができる。ここで、開口部13,14の幅W2は、グランド線G1の幅W1の2分の1以下にしておくことが望ましい。これは、1対の信号線S1,S2、グランド線G1、電力線P1,P2は、2枚の樹脂フィルムを貼り合わせて得られる第1、第2の絶縁層11,12によって保持されているため、開口部13,14を設けた場合でも、グランド線G1と第1、第2の絶縁層11,12の接着強度を確保するためである。また、開口部13,14の幅W2は、グランド線G1と第1、第2のシールド層21,22との電気的接続を確保するために、グランド線G1の幅W1の3分の1以上としておくことが望ましい。開口部13,14の幅W2は、例えば、0.3mm~2.5mmである。開口部13,14の幅W2は、グランド線G1の長手方向に垂直な断面において、グランド線G1の上面または下面を開口部13,14底面としたときのその底面の幅である。なお、開口部13,14の幅は、同じ大きさでなくてもよい。
【0031】
次に、
図1に示すように、信号線S1,S2およびグランド線G1の配列箇所よりも幅の広い第1、第2のシールド層21,22を、信号線S1,S2およびグランド線G1を覆うように形成する。なお、電力線P1,P2の配列箇所には、第1、第2のシールド層21,22を設けていない。第1、第2のシールド層21,22は、例えば、金属層に導電性接着層を設けた2層構造の金属箔テープを、その導電性接着層を内側にして、
図2Bに示すフラットケーブルの両面から加熱ローラで熱を加えながら接合することによって形成できる。この加熱接合工程によって、第1、第2のシールド層21,22は、グランド線G1に電気的に接続されるとともに、フラットケーブルの幅方向側面からはみ出た端部Aで、直接電気的に接続される。
【0032】
以上の工程で得られたシールドフラットケーブル1には、必要に応じて、端子部を除いて全体を覆う保護樹脂層が設けられる。保護樹脂層は、シールドフラットケーブル1を挟む2枚の樹脂フィルムを加熱接合することによって、形成することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図3は、本開示の第2の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
第1の実施形態では、例えば金属層に導電性接着層を設けた2層構造の金属箔テープを表裏から2枚、フラットケーブルに貼り付けることによって第1、第2のシールド層21,22を形成しているが、本実施形態のシールドフラットケーブル2では、1つのシールド層23によって、信号線S1,S2およびグランド線G1を覆うようにしている。
【0034】
このため、本実施形態では、1枚の金属箔テープをその導電性接着層が内面になるようにC字状に折り曲げ、このC字状の金属箔テープの開口側から、フラットケーブルをその側面がC字状の金属箔テープの奥に達するまで挿入し、この状態で、導体の両面から加熱ローラで熱を加えながら、金属箔テープを第1、第2の絶縁層11,12とグランド線G1とに接合することによってシールド層23を形成している。
本実施形態は、第1の実施形態のように、第1、第2のシールド層21,22を、フラットケーブルの幅方向側面からはみ出た端部Aで、直接電気的に接続する必要がなく、シールドフラットケーブル2の両面に設けたシールド層を、確実に電気的接続することができる。その他の構成については、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
【0035】
(第3の実施形態)
図4は、本開示の第3の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
シールドフラットケーブル3は、その特性インピーダンスが所定の値(例えば90Ωや100Ω)となるように、例えば、信号線S1,S2の厚さや幅、間隔、第1、第2の絶縁層11,12の誘電率を調整することが行われる。本実施形態では、さらに、信号線S1,S2が位置する個所で、第1、第2の絶縁層11,12と第1、第2のシールド層21,22とのそれぞれの間に、インピーダンス調整用の樹脂製中間層31,32を介在させ、特性インピーダンスの調整を容易にしている。樹脂製中間層31,32を介在させる方法としては、樹脂製中間層31,32の一方の面に接着層を設けておき、この接着層を第1、第2の絶縁層11,12に向けた状態で、第1、第2の絶縁層11,12に貼り付ければよい。なお、本実施形態では、第1、第2のシールド層21,22は、樹脂製中間層31,32の表面を覆うように設けられる。
【0036】
(第4の実施形態)
図5は、本開示の第4の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
本実施形態のシールドフラットケーブル4では、1本のグランド線G0,差動伝送用の1対の信号線S1,S2、1本のグランド線G1、2本の電力線P1,P2を含む、互いに平行に配列された複数の導体を有している。シールドフラットケーブル4は、これらの複数の導体を覆う第1の絶縁層11および第2の絶縁層12と、第1、第2の絶縁層11,12の一部の外周面をそれぞれ被覆する第1のシールド層21、第2のシールド層22とを備える。さらに、第3の実施形態と同様に、信号線S1,S2が位置する個所で、第1、第2の絶縁層11,12と第1、第2のシールド層21,22とのそれぞれの間に、インピーダンス調整用の樹脂製中間層31,32を介在させ、特性インピーダンスの調整を容易にしている。
【0037】
本実施形態は、第3の実施形態において、1対の信号線S1,S2の配列方向のグランド線G1の反対側(端部A側)に、グランド線G0を配設し、このグランド線G0の両面を覆う第1、第2の絶縁層11,12の長手方向に開口部15,16を形成し、それぞれの開口部15,16で、第1、第2のシールド層21,22とグランド線G0を電気的に接続したものである。これによって、シールドフラットケーブル4の1対の信号線S1,S2は、グランド線G0,第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22によって取り囲まれてシールドされる。そして、1対の信号線S1,S2の配列方向の両側に、それぞれ対称的にグランド線G0,G1を配列しているため、良好な伝送特性を得ることができる。なお、本実施形態では、フラットケーブルの幅方向側面からはみ出た端部Aで第1、第2のシールド層21,22を直接接触させなくてもよい。
【0038】
(第5の実施形態)
図6は、本開示の第5の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
本実施形態のシールドフラットケーブル5では、差動伝送用の1対の信号線S1,S2,1本のグランド線G1、差動伝送用の1対の信号線S3,S4、1本のグランド線G2,2本の電力線P1,P2を含む、互いに平行に配列された複数の導体を有している。信号線をS,グランド線をGとした場合、本実施形態は、端部A側から、SSGSSGの配列で、信号線Sとグランド線Gが配列されている。シールドフラットケーブル5は、これらの複数の導体の両面に、それぞれ配設された第1の絶縁層11,第2の絶縁層12と、第1、第2の絶縁層11,12の一部の外周面をそれぞれ被覆する第1のシールド層21、第2のシールド層22とを備える。
【0039】
本実施形態では、信号線S1,S2とグランド線G1の配列は、第1の実施形態と同じであるが、グランド線G1と電力線P1との間に、信号線S3,S4とグランド線G2が配列されており、信号線S3,S4については、それらの配列方向の両側に、グランド線G1とグランド線G2とが配置される構成となっている。
【0040】
グランド線G1の両面には、第1、第2の絶縁層11,12に設けた開口部13,14によって露出面が形成されており、また、同様に、グランド線G2の両面には、第1、第2の絶縁層11,12に長手方向全長にわたって設けた開口部17,18によって露出面が形成されている。そして、開口部13,14の箇所で、グランド線G1と第1、第2のシールド層21、22とが電気的に接続されており、開口部17,18の箇所で、グランド線G2と第1、第2のシールド層21、22とが電気的に接続されている。
【0041】
これにより、シールドフラットケーブル5の端部に位置する1対の信号線S1,S2は、第1の実施形態と同様に、第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22、および、端部Aによって取り囲まれてシールドされる。また、中央に位置する1対の信号線S3,S4は、グランド線G1,第1のシールド層21、グランド線G2、第2のシールド層22によって取り囲まれてシールドされる。なお、電力線P1,P2の配列箇所には、第1、第2のシールド層21,22を設けていないため、電力線P1,P2自体はシールドされることはない。
【0042】
このように、本実施形態は、信号線の配列面の両側に配列された2本のグランド線G1,G2と、2本のグランド線G1,G2の両面に設けた開口部13、14、および、17、18でそれぞれグランド線G1,G2に電気的に接続された第1、第2のシールド層21,22が、信号線S3,S4の周囲を囲んでいる。このため、2本のグランド線G1,G2が信号線S3,S4の配列方向の側方からのノイズを遮断するシールドとして機能しているため、ノイズ低減効果を向上することができる。
【0043】
(第6の実施形態)
図7は、本開示の第6の実施形態に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
本実施形態のシールドフラットケーブル6は、1本のグランド線G0、1対の信号線S1,S2、1本のグランド線G1、差動伝送用の1対の信号線S3,S4、1本のグランド線G2,2本の電力線P1,P2を含む、互いに平行に配列された複数の導体を有している。本実施形態は、端部A側から、GSSGSSGの配列で、信号線Sとグランド線Gが配列されている。
【0044】
シールドフラットケーブル6は、これらの複数の導体の両面に、それぞれ配設された第1の絶縁層11,第2の絶縁層12と、第1、第2の絶縁層11,12の一部の外周面をそれぞれ被覆する第1のシールド層21、第2のシールド層22とを備える。さらに、第3、第4の実施形態と同様に、信号線S1,S2が位置する個所、および、信号線S3,S4が位置する個所で、第1、第2の絶縁層11,12と第1、第2のシールド層21,22とのそれぞれの間に、インピーダンス調整用の樹脂製中間層31,32を介在させ、特性インピーダンスの調整を容易にしている。
【0045】
本実施形態は、第5の実施形態において、インピーダンス調整用の樹脂製中間層31,32を介在させた他、1対の信号線S1,S2の配列方向のグランド線G1の反対側(端部A側)に、グランド線G0を配設し、このグランド線G0の両面を覆う第1、第2の絶縁層11,12の長手方向に開口部15,16を形成し、それぞれの開口部15,16で、第1、第2のシールド層21,22とグランド線G0を電気的に接続したものである。
【0046】
これによって、シールドフラットケーブル6の1対の信号線S1,S2は、グランド線G0,第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22によって取り囲まれてシールドされる。同様に、1対の信号線S3,S4は、グランド線G1,第1のシールド層21、グランド線G2、第2のシールド層22によって取り囲まれてシールドされる。このように、1対の信号線S1,S2、および、1対の信号線S3,S4の配列方向の両側に、それぞれ対称的にグランド線G0,G1、および、グランド線G1,G2を配列しているため、良好な伝送特性を得ることができる。なお、本実施形態では、フラットケーブルの幅方向側面からはみ出た端部Aで第1、第2のシールド層21,22を直接接触させなくてもよい。
【0047】
第5、第6の実施形態では、複数(2つ)の信号をそれぞれ差動伝送する場合の構成について説明したが、差動伝送を行わない場合は、2本の信号線の代わりにそれぞれ1本ずつの信号線を用いてもよい。そして、3つ以上の信号を伝送する場合は、伝送する信号の単位ごとの信号線(差動伝送の場合は2本)に対して、伝送する信号の単位ごとの信号線の並列方向の両側にそれぞれグランド線を配設し、このグランド線の箇所に設けた開口部を通してシールド層と電気的接続するようにすればよい。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示のシールドフラットケーブルにおける信号線の数やグランド線の数は、上記の実施形態の数に限られない。また、信号線Sとグランド線Gの配列は、SSGSSG・・・であってもよく、GSSGSSG・・・であってもよい。また、電力線の配設は任意に決めることができる。さらに、必要に応じて、電力線についても、信号線と同様にグランド線とシールド層によって取り囲みシールドしてもよい。
【0049】
(参考例)
図8は、本開示と電気的に等価な参考例に係るシールドフラットケーブルの概略を示す長手方向に垂直な断面図である。
本参考例のシールドフラットケーブル7は、1本のグランド線G0,差動伝送用の1対の信号線S1,S2、1本のグランド線G1、2本の電力線P1,P2を含む、互いに平行に配列された複数の導体を有している。本参考例では、信号線Sとグランド線Gの配列は、GSSGとなっており、1対の信号線S1,S2の配列方向の両側にグランド線G0とG1が配列されている。これらの配列については、
図5に示す第4の実施形態と同じである。
【0050】
シールドフラットケーブル7は、これらの複数の導体の両面に、それぞれ配設された第1の絶縁層11,第2の絶縁層12と、第1、第2の絶縁層11,12の一部の外周面をそれぞれ被覆する第1のシールド層21、第2のシールド層22とを備える。さらに、第3の実施形態と同様に、信号線S1,S2が位置する個所で、第1、第2の絶縁層11,12と第1、第2のシールド層21,22とのそれぞれの間に、インピーダンス調整用の樹脂製中間層31,32を介在させ、特性インピーダンスの調整を容易にしている。本参考例における各構成部材、すなわち、グランド線G0、G1、差動伝送用の1対の信号線S1,S2、2本の電力線P1,P2、第1、第2の絶縁層11、12、第1、第2のシールド層21,22、および、樹脂製中間層31,32の構成については、第1~第6の実施形態における各構成部材と同じであるので、その説明を省略する。
【0051】
本参考例では、グランド線G0の第1の絶縁層11側に、長手方向全長にわたって開口部15が設けられ、この開口部15によって形成された露出面でグランド線G0と第1のシールド層21とが電気的に接続されている。また、グランド線G1の第2の絶縁層12側には、長手方向全長にわたって開口部14が設けられ、この開口部14によって形成された露出面でグランド線G1と第2のシールド層22とが電気的に接続されている。さらに、第1、第2のシールド層21,22は、シールドフラットケーブル1の幅方向側面からはみ出た端部Aで電気的に接続されている。これによって、グランド線G0とグランド線G1とは、電気的に接続されている。
【0052】
第1のシールド層21は、信号線S1,S2を超えてグランド線G1の電力線P1の近くまで延びている。このため、信号線S1,S2はグランド線G0,第1のシールド層21、グランド線G1、第2のシールド層22によって、概ね取り囲まれた状態でシールドされる。グランド線G1は、信号線S1,S2の配列方向の側方からのノイズを遮断するシールドとして機能しており、この状態は、電気的には、
図5に示すシールドフラットケーブル4とほぼ等価となる。
【0053】
本参考例では、グランド線G0、G1に設ける開口部が実施形態1~6のように両面ではなく、片面のみで済むため、厳しい使用環境においても、グランド線の箇所で絶縁層と剥がれることがなく、グランド線G0、G1と第1、第2の絶縁層11,12との接着強度を確保できる。なお、本参考例において、フラットケーブルの幅方向側面からはみ出た端部Aで第1、第2のシールド層21,22を必ずしも直接接触させる必要はない。また、信号線Sとグランド線Gの配列は、GSSGSSG・・・であれば、その数は限定されない。さらに、電力線の配設は任意に決めることができる。
【符号の説明】
【0054】
1~4…シールドフラットケーブル、11…第1の絶縁層、12…第2の絶縁層、13~18…開口部、21…第2のシールド層、22…第2のシールド層、23…シールド層、G0、G1、G2…グランド線、P1、P2…電力線、S1~S4…信号線。