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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】微細水放出装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 17/04 20060101AFI20221220BHJP
   F24F 6/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B05B17/04
F24F6/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020546676
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007674
(87)【国際公開番号】W WO2020054100
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】P 2018172166
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100174713
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧川 彰人
(72)【発明者】
【氏名】井上 慎介
(72)【発明者】
【氏名】平野 明良
(72)【発明者】
【氏名】山黒 顕
(72)【発明者】
【氏名】足立 謡子
(72)【発明者】
【氏名】安田 まちよ
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018195(JP,A)
【文献】特開2017-060939(JP,A)
【文献】特開2018-054258(JP,A)
【文献】特開平11-169724(JP,A)
【文献】特開2004-256649(JP,A)
【文献】特開2005-097337(JP,A)
【文献】登録実用新案第3151061(JP,U)
【文献】特開2017-051901(JP,A)
【文献】特開2016-176658(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150770(WO,A1)
【文献】特開2006-071171(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073673(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
17/04
F24F 6/12
A45D 44/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一空間と第二空間とを連通する流路を有するケースと、
前記流路に配置されていて、前記第一空間の空気を前記流路に導入し、前記流路に導入された前記空気を前記第二空間に放出する送風部と、
前記流路に配置されていて、基材部と、核を形成するコア部、及び、水素結合可能な極性官能基を有する高分子材料から形成されて前記コア部を被覆するシェル部からなるコアシェル構造を有する複数の粒子と、前記基材部の外表面に複数の前記粒子が膜状に積層されて成り、複数の前記粒子の前記シェル部と前記シェル部との間に形成されて前記空気から水分を吸着し、且つ、吸着した前記水分を前記空気に放出し得るナノメートルサイズの流路径のチャンネルを有する膜部と、を含み、前記基材部及び前記粒子のうちの少なくとも一方が導電性を有し、前記水分を吸着する吸着状態と、吸着している前記水分を前記空気に放出する放出状態と、の間で前記膜部の前記粒子の状態を遷移させて微細水を発生する微細水発生部と、
前記微細水発生部の前記基材部と電気的に接続され、前記基材部の通電を行う通電部と、
前記送風部及び前記通電部を制御する制御部と、を備えた微細水放出装置であって、
前記制御部は、
前記送風部によって前記第一空間の前記空気を前記流路に導入し、且つ、前記通電部によって前記微細水発生部の前記基材部を通電状態にして前記基材部が発熱している状態で前記膜部の温度を上昇させ、前記微細水発生部の前記粒子に吸着している前記水分を前記チャンネルの開口を介して無帯電且つ粒径が50ナノメートル以下の前記微細水として前記流路に導入された前記空気に対して放出させることにより、前記流路に導入された前記空気とともに前記微細水を前記送風部によって前記第二空間に放出する放出モードを実行する放出制御部と、
前記送風部によって前記第一空間又は前記第二空間の前記空気を前記流路に導入し、且つ、前記通電部によって前記基材部を非通電状態にして前記基材部が発熱していない状態で前記膜部の温度を前記通電状態に比べて低下させ、前記流路に導入された前記水分を前記開口から前記チャンネルを介して前記粒子に吸着させる放出準備モードを実行する放出準備制御部と、を備えるように構成された、微細水放出装置。
【請求項2】
前記放出制御部及び前記放出準備制御部は、
前記放出モードと前記放出準備モードとからなるサイクルを複数回実行する、請求項1に記載の微細水放出装置。
【請求項3】
前記放出モードにおいて前記通電状態の前記基材部は、
前記非通電状態に比べて20℃~50℃の範囲で温度上昇する、請求項1又は請求項2に記載の微細水放出装置。
【請求項4】
前記放出モードにおいて前記第二空間に放出された前記微細水は、
前記第二空間に存在する人体に供給される、請求項1乃至請求項3のうちの何れか一項に記載の微細水放出装置。
【請求項5】
前記基材部は、ステンレス系金属から形成されており、
前記粒子は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)の前記コア部と、ポリ(スチレンスルホン酸)の前記シェル部と、から構成されるPEDOT/PSSである、請求項1乃至請求項4のうちの何れか一項に記載の微細水放出装置。
【請求項6】
前記PEDOT/PSSは、
前記PEDOTのモノマーであるエチレンジオキシチオフェン(EDOT)と前記PSSとの重量比が1:4~1:6の間となるように設定される、請求項5に記載の微細水放出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細水放出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、下記特許文献1に開示された静電霧化装置が知られている。この従来の静電霧化装置は、毛細管現象によって水を搬送する水搬送部と、吸熱面上で空気を冷却して生成した結露水を水搬送部に供給する熱交換部と、水搬送部が搬送する水に対して電圧を印加する印加電極と、水搬送部に対向して位置する対向電極と、印加電極と対向電極との間に高電圧を印加する高電圧印加部とを備えている。そして、従来の静電霧化装置は、高電圧印加部により印加される高電圧によって、水搬送部の先端部に保持される水を対向電極に向けて霧化させて、ナノサイズで強い電荷を有するナノイオンミストを発生させるようになっている。
【0003】
又、従来から、例えば、下記特許文献2に開示されたマイナスイオン及びナノミスト発生装置も知られている。この従来のナノミスト発生装置は、送付機により外気が通過する処理室と、処理室の下部に設けられた貯水部と、貯水部に下部を水没させ上方に向かって径が拡大するすり鉢状の回転体と、回転体の外周に位置し、回転体とともに回転して回転による遠心力で飛散される水及び空気が通過可能な円筒状の多孔体とを備えている。又、この従来のナノミスト発生装置は、対向体の外周に間隔を置いて回転体の上方から流入する外気を多孔体の外周に案内する空気案内筒が設けられるとともに空気案内筒と多孔体との間に一対の大流通路及び小流通路が形成されるようになっている。これにより、空気流に圧力差が生じて乱流を生じさせ、大量のマイナスイオンとナノミストとを発生するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4016934号公報
【文献】特許第5032389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のナノミスト発生装置は、大きな水粒子を砕くことによりナノサイズのミストを発生させるため、水粒子の粒径が大きくなり、水粒子の粒径分布が広がり易い。又、上記従来の静電霧化装置によって発生されるナノイオンミストは強い電荷を有し、又、上記従来のナノミスト発生装置によって発生されるナノミストはマイナスに帯電しているため、水粒子が、例えば、人体に対して吸引や反発を起こす場合がある。これらにより、発生された水粒子が人体の角層表面の内部にまで進入しない(浸透できない)可能性がある。
【0006】
又、上記従来の静電霧化装置では、空気中の水を凝縮するためのペルチェ素子及び放電のための高電圧電源が必要であり、装置の複雑化及び大型化が懸念される。又、上記従来のナノミスト発生装置では、水タンク、空気案内筒及び回転体等が必要であり、装置の大型化が懸念される。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本発明の目的は、粒径分布を揃えるとともに無帯電の微細水を放出することができる微細水放出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る微細水放出装置の発明は、第一空間と第二空間とを連通する流路を有するケースと、流路に配置されていて、第一空間の空気を流路に導入し、流路に導入された空気を第二空間に放出する送風部と、流路に配置されていて、基材部と、核を形成するコア部、及び、水素結合可能な極性官能基を有する高分子材料から形成されてコア部を被覆するシェル部からなるコアシェル構造を有する複数の粒子と、基材部の外表面に複数の粒子が膜状に積層されて成り、複数の粒子のシェル部とシェル部との間に形成されて空気から水分を吸着し、且つ、吸着した水分を空気に放出し得るナノメートルサイズの流路径のチャンネルを有する膜部と、を含み、基材部及び粒子のうちの少なくとも一方が導電性を有し、水分を吸着する吸着状態と、吸着している水分を空気に放出する放出状態と、の間で膜部の粒子の状態を遷移させて微細水を発生する微細水発生部と、微細水発生部の基材部と電気的に接続され、基材部の通電を行う通電部と、送風部及び通電部を制御する制御部と、を備えた微細水放出装置であって、制御部は、送風部によって第一空間の空気を流路に導入し、且つ、通電部によって微細水発生部の基材部を通電状態にして基材部が発熱している状態で膜部の温度を上昇させ、微細水発生部の粒子に吸着している水分をチャンネルの開口を介して無帯電且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水として流路に導入された空気に対して放出させることにより、流路に導入された空気とともに微細水を送風部によって第二空間に放出する放出モードを実行する放出制御部と、送風部によって第一空間又は第二空間の空気を流路に導入し、且つ、通電部によって基材部を非通電状態にして基材部が発熱していない状態で膜部の温度を通電状態に比べて低下させ、流路に導入された水分を開口からチャンネルを介して粒子に吸着させる放出準備モードを実行する放出準備制御部と、を備えるように構成される。
【0009】
これによれば、ハニカム状に形成された基材部の外表面に膜状に複数の粒子が積層されて微細水発生部を構成することができる。複数の粒子が積層された場合、各粒子の間、より詳しくは、各粒子のシェル部の間にはナノメートルサイズのチャンネルが形成される。このチャンネルには、極性官能基が多く分布するため、放出準備モードに伴う吸着状態において粒子によって吸着された水分は速やかに基材部に向けて移動することができる。逆に、吸着された水分は、放出モードに伴う放出状態においてチャンネルを速やかに移動して空気に放出される。この場合、チャンネルは積層された複数の粒子によって形成されるため、チャンネルに対応して水分を放出する開口を多数存在させることができる。これにより、微細水放出装置から放出される微細水の粒径分布を50ナノメートル以下に揃えることができる。
【0010】
又、微細水放出装置は、放出制御部が放出モードを実行することにより、通電部が基材部に通電する。これにより、粒子の温度が上昇し、微細水を放出することができる。従って、微細水放出装置は、微細水に電荷を印加することなく、第二空間に無電荷の微細水を大量に放出することができる。これらにより、微細水放出装置から放出される微細水は、無帯電且つ粒径が50ナノメートル以下と小さいため、例えば、人体の角質に対して進入(浸透)し易くなる。その結果、微細水は、角質の内部にまで浸透することができ、肌の保湿等に良好に寄与することができる。
【0011】
又、微細水放出装置においては、放出準備制御部が放出準備モードを実行することにより、微細水発生部(より詳しくは、粒子)に空気の水分を吸着させることができる。これにより、水分を吸着及び微細水を放出するために、例えば、水タンクや、高電圧電源、空気案内筒等を設ける必要がなく、微細水放出装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る微細水放出装置の構成を示す断面図である。
図2図1の微細水発生部を構成する微細水放出素子を示す部分断面図である。
図3図2の粒子の構成を示す断面図である。
図4図2の微細水放出素子から放出された水粒子の粒径の測定結果を示す図である。
図5図2の微細水放出素子から放出されて所定時間が経過した後の水粒子の粒径の測定結果を示す図である。
図6図2の微細水放出素子から水粒子が放出される室内空気の水粒子の粒径の測定結果を示す図である。
図7図2の微細水放出素子の動的粘弾性特性の湿度依存性を示すグラフである。
図8図2の微細水放出素子の動的粘弾性特性の温度依存性を示すグラフである。
図9図1の微細水発生部の構成を示す斜視図である。
図10図9の微細水発生部を構成する基材部及び膜部(粒子)の構成を説明する断面図である。
図11図1の制御装置のブロック図である。
図12図1の微細水放出装置によって微細水が放出された場合と、従来の装置によって水粒子が放出された場合と、における角質水分量の時間変化率の測定結果を示す図である。
図13】実施形態の第二変形例に係る微細水発生部の第一変更例を示す断面図である。
図14】実施形態の第二変形例に係る微細水発生部の第二変更例を示す断面図である。
図15】実施形態の第三変形例に係る微細水発生部の構成を示す斜視図である。
図16】実施形態の第四変形例に係る微細水発生部の構成を示す平面図である。
図17図16の微細水発生部の詳細な構成を示す断面図である。
図18】実施形態の第四変形例に係る微細水発生部の第一変更例を示す断面図である。
図19】実施形態の第四変形例に係る微細水発生部の第二変更例を示す断面図である。
図20】実施形態の第四変形例に係る微細水発生部の第三変更例を示す断面図である。
図21】実施形態の第六変形例に係る微細水放出装置の構成を示す断面図である。
図22】実施形態の第六変形例に係る微細水発生部の構成を示す平面図である。
図23】実施形態の第六変形例に係る微細水発生部の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による微細水放出装置の実施形態について説明する。微細水放出装置100は、例えば、美容機器(具体的には、保湿器やブースタ器、車両搭載可能な美容機器等)に適用可能である。微細水放出装置100は、図1に示すように、ナノサイズ水粒子放出素子10(後述する微細水発生部130)を備えている。ナノサイズ水粒子放出素子10は、空気に含まれる水分を吸着する吸着状態と、吸着している水分を空気に放出する放出状態と、の間で遷移可能とされている。ナノサイズ水粒子放出素子10は、図2に示すように、シート状に形成されている。ナノサイズ水粒子放出素子10は、基材部11と、基材部11の外表面に膜状に形成された導電性高分子膜部12(以下、単に「膜部12」と称呼する。)と、から構成される。
【0014】
基材部11は、導電性材料である、ステンレス系金属又は銅系金属の金属材料、炭素材料(カーボンペーパ、黒鉛等)、導電性セラミックス材料(例えば、ITO等)、及び、導電性樹脂材料(例えば、金属蒸着されたフィルム、ナノ銀コーティング、CNTコーティング等)のうちの、例えば、ステンレス系金属であるステンレス鋼からなる金属箔であり、導電性を有する。基材部11は、後述するように、通電されることによって発熱するようになっている。
【0015】
膜部12は、コアシェル構造を有する粒子13を溶媒に分散させ、粒子13を分散させた分散液を基材部11の外表面に塗布し(塗布工程)、その後、乾燥させる(乾燥工程)を経ることによって膜状に形成される。即ち、微細水放出素子10は、粒子13を分散させた分散液を導電性を有する基材部11に塗布する塗布工程と、塗布工程の後、基材部11に塗布した粒子13を乾燥させる乾燥工程と、を経る製造方法によって製造される。この製造方法を経ることにより、図2にて概念的に示すように、複数の粒子13は、ある程度の規則性を有して(最密構造的に)複数段(図2においては、四段)積層されて層状(膜状)に形成される。ここで、分散液の特性及び成分について、溶媒は水であり、固形分濃度は1~3(%)であり、粘度は10~200(mPa・s)であり、pHは1~3であり、添加剤として防カビ剤が添加される。又、乾燥工程における乾燥温度は100℃以下である。
【0016】
粒子13は、基材部11が非通電状態(即ち、発熱していない状態)において放出状態から吸着状態に遷移し、基材部11が通電状態(即ち、発熱している状態)において吸着状態から放出状態に遷移する。本実施形態における粒子13は、その粒径が5ナノメートル程度に設定されている。これにより、複数の粒子13は、基材部11の外表面に対してある程度の規則性を有して積層し、膜部12を形成する。尚、本明細書及び特許請求の範囲に記載する「粒径」は、無作為に複数選択した粒子、或いは、単位体積又は単位面積に存在する複数の粒子、等の粒径を平均した値を表すものとする。
【0017】
ここで、膜部12は、基材部11の外表面に複数の粒子13が積層された際の厚み(膜厚)が、1~30マイクロメートルとなるように形成される。本実施形態における粒子13は、導電性高分子から形成されており、具体的に、チオフェン系導電性高分子の一つであるPEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリ(スチレンスルホン酸))から形成される。従って、本実施形態における膜部12は、PEDOT/PSSから形成される粒子13を含んで形成されるため、チオフェン系の導電性高分子である。
【0018】
粒子13は、図3に示すように、コア部13aとシェル部13bとから構成される。粒子13のコア部13aは、粒子の核を形成するものであり、高分子材料又は無機材料のうち、例えば、高分子材料であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)即ちPEDOTから形成される。粒子13のシェル部13bは、水素結合可能な極性官能基13b1を有する高分子材料から形成されて、コア部13aを被覆するものである。
【0019】
具体的に、シェル部13bは、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムのうちのポリスチレンスルホン酸である、ポリ(スチレンスルホン酸)即ちPSSから形成される。ここで、シェル部13bを形成するPSSは、水素結合可能な極性官能基13b1である、スルホン酸基(-SOH)、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)、アミド基(-C=ONH-)、及び、ピロリドン基(NCOC)のうちの少なくとも一つであるスルホン酸基(-SOH)を有している。
【0020】
ここで、粒子13であるPEDOT/PSSは、PEDOTのモノマーであるエチレンジオキシチオフェン(EDOT)とPSSとの重量比が1:3~1:10の間、より好ましくは、1:4~1:6となるように設定される。
【0021】
微細水放出素子10は、基材部11が非通電状態である場合、時間が経過することに伴って膜部12即ち粒子13(シェル部13b)による水分の吸着量が増加して飽和吸湿率の状態で安定する。又、微細水放出素子10は、基材部11が通電されて、膜部12即ち粒子13の温度が上昇して放出温度以上となることにより、粒子13のシェル部13bの極性官能基13b1に結合している水分を無帯電(無電荷)の水粒子(後述する微細水)として放出する。ここで、基材部11に設けられる膜部12の膜厚が小さい程、基材部11に担持される導電性高分子である粒子13が相対的に少なくなるために水分の吸着量が相対的に小さくなる。一方、基材部11に設けられる膜部12の膜厚が大きい程、基材部11に担持される導電性高分子である粒子13が相対的に多くなるために水分の吸着量が相対的に多くなる。
【0022】
ところで、コアシェル構造の粒子13を含んで構成される微細水放出素子10においては、吸着状態における空気中の水分の吸着スピード、及び、放出状態における空気中への水分の放出スピードがシリカゲル等の一般的な吸湿材と比べて速くなる。又、コアシェル構造を有する粒子13を含んで構成される微細水放出素子10においては、放出状態において放出する水分の水粒子の粒径が2ナノメートルから50ナノメートルの非常に小さい粒径分布範囲に分布する。以下、これらのことを順に説明する。
【0023】
先ず、水分の吸着スピード及び放出スピードの速さから説明する。微細水放出素子10は、PEDOT/PSSから形成される粒子13が基材部11上に積層されている。この場合、粒子13は、図2に示すように、膜部12中において、整列された状態で積層される。又、粒子13のシェル部13bを構成するPSSは、水素結合可能な極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)を数多く持ち、図3に示すように、シェル部13bの周りに多くの極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)を有する。このため、空気に触れているスルホン酸基(-SOH)には、空気に含まれる水分が水素結合により、例えば、粒径が2ナノメートル以下の結合水として結合される。
【0024】
この場合、膜部12の表面における水分量が多く、且つ、膜部12の内部における水分量が少ない場合、粒子13のシェル部13bは、水分濃度差を駆動源として、吸着した水分を膜部12の表面から膜部12の内部に向けて移動させようとする。ところで、図2にて太い矢印により示すように、膜部12の内部においては、積層された複数の粒子13のシェル部13bとシェル部13bとの間にナノメートルサイズの流路径(例えば、2ナノメートル程度)のチャンネル13c(以下、このチャンネル13cを「ナノチャンネル13c」と称呼する。)が形成される。ナノチャンネル13cは、図2に示すように、膜部12の内部にて繋がっている。尚、ナノチャンネル13cの流路径は、無作為に複数選択したナノチャンネル13c、或いは、単位体積又は単位面積に存在する複数のナノチャンネル13c等の流路径を平均した値を表すものとする。
【0025】
このナノチャンネル13cには、極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)が多く分布しており、膜部12の表面に存在する水分子(水分)は、ナノチャンネル13cに存在するスルホン酸基(-SOH)間を伝って高速で膜部12の内部に移動する。これにより、膜部12の表面に存在する空気中の水分は、水分濃度差により膜部12の内部に高速で移動し、大量の水分を速い速度で空気から吸着して保持することができる。ここで、膜部12の内部に保持される水分は、結合水や束縛水であり、自由水は殆ど存在することができない。
【0026】
又、このように、水分濃度差を駆動源として水分が移動するため、膜部12の内部における水分量が多く、且つ、膜部12の表面における水分量が少ない場合、即ち、空気が乾燥している場合には、上述した吸着時とは逆に、ナノチャンネル13cに存在する極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)を伝うことにより、膜部12の内部から膜部12の表面に向けて、保持された(吸着された)水分が高速で移動する。これにより、膜部12の内部に保持された(吸着された)水分は水分濃度差により膜部12の表面に高速で移動し、膜部12(粒子13)は大量の水分を結合水のままの水粒子として速い速度で空気に放出することができる。又、外部の空気の湿度が高い場合でも、基材部11に通電することにより膜部12の温度が上昇し、膜部12(粒子13)は大量の水分を結合水のままの水粒子として速い速度で空気中に放出することができる。
【0027】
次に、放出状態において膜部12(粒子13)から放出される水分の水粒子径が小さいことを説明する。尚、以下において、水粒子径が小さい水分、具体的に、粒径が50ナノメートル以下の水分(水クラスタ)を特に「微細水」と称呼する。図4に示すように、PEDOT/PSSから形成される粒子13を含んで構成される微細水放出素子10から放出された直後の水粒子径分布は、測定範囲の下限である2ナノメートルで最大値を示し、10ナノメートル付近まで分布する。又、図5に示すように、水分を放出してから所定時間(例えば、40秒)が経過した後においては、水粒子(微細水)同士が凝集(クラスタ化)し、水粒子径分布が大粒径側(50ナノメートル以下)に移動する傾向を有する。尚、水粒子径分布のピーク値は、図4及び図5に示すように、10ナノメートル以下になる。ここで、この測定においては、図6に示すように、室内空気にはナノメートルサイズの水粒子はほぼ計測されていない。尚、水粒子径分布の測定に当たっては、水粒子(微細水)の電気移動度を利用して分級し、凝縮粒子カウンターにて単位体積(1cc)当たりの個数濃度を測ることでサブミクロン領域の粒子分布計測を行う走査式モビリティーパーティクルサイザー(SMPS)を用いて測定した。
【0028】
このように、微細水放出素子10が小さい水粒子径の水分を放出する、即ち、微細水を放出するのは、以下の理由によるものと考えられる。上述したように、本実施形態におけるコアシェル構造を有する粒子13は、PEDOT/PSSであり、コア部13aにPEDOT、シェル部13bにPSSが存在している。PSSは、極性官能基13b1として、親水基であるスルホン酸基(-SOH)を有しており、シェル部13bの外表面及び内部に多数分布している。
【0029】
従って、ナノチャンネル13cの内部には、上述したように、スルホン酸基(-SOH)に結合した結合水が多数存在する。ここで、結合水がシェル部13bの外表面のナノチャンネル13cに偏在し、結合水がシェル部13bの内部に入り込まない理由としては、コア部13aのPEDOTが疎水性のために結合水をシェル部13bの外表面に押し退けていると考えられる。
【0030】
そして、微細水発生時において、数ナノサイズ(具体的には、粒径が2ナノメートル)の結合水が放出される理由は、基材部11が通電されると、膜部12(粒子13)の温度が上昇し結合水(より詳しくは、水分子)に熱エネルギーが供給される。これにより、微細水放出素子10においては、結合水の運動性が増加する。その結果、ナノチャンネル13cに存在している結合水がナノチャンネル13cの流路径に対応して膜部12の表面に多数存在する開口である噴出口13c1(具体的に、孔径が2ナノメートル程度の孔)にて凝集(クラスタ化)し、無帯電(無電荷)且つ50ナノメートル以下の微細水として空気中に放出される。尚、結合水は、そのままの形を保って微細水として放出される。
【0031】
又、ナノサイズ水粒子放出素子10においては、PEDOT/PSSからコアシェル構造を有して形成される粒子13間のネットワークにより粘弾性に富み、高温高湿においても、安定して存在する。これにより、ナノサイズ水粒子放出素子10は、後述するような実使用環境に対応可能な性能を有している。
【0032】
具体的に、粒子13を含む膜部12の動的粘弾性特性において、湿度依存性については、図7に示すように、湿度の上昇に伴って上述したように吸着(吸湿)が進み、実線により示す伸びが増加するものの、破線により示す粘性及び一点鎖線により示す弾性は適切に維持される。又、粒子13を含む膜部12の動的粘弾性特性において、温度依存性については、図8に示すように、破線により示す粘性がコアシェル構造の粒子13に依存して温度T1,温度T2,温度T3にてピークが生じるものの適切に維持されるとともに、一点鎖線により示す弾性も適切に維持される。
【0033】
尚、温度T1は、粒子13を構成するスルホン酸基(-SOH)のβ緩和温度(例えば、-60℃)である。又、温度T2は、粒子13を構成するシェル部13b(PSS)のガラス転移温度(例えば、60℃)である。又、温度T3は、粒子13を構成するコア部13a(PEDOT)の融点(例えば、260℃)である。
【0034】
再び、図1に戻り、微細水放出装置100は、ケース110、送風部としての送風装置120、微細水発生部130、通電部140及び制御部としての制御装置150を備えている。
【0035】
ケース110は、内部に空気を流通させる流路Lを有するように、両端を開口するとともに前後方向に沿って延びる筒状に形成されている。流路Lは、ケース110の前方の空間である第一空間S1に向かって開口するとともに、ケース110の後方の空間である第二空間S2に向けて開口する。第一空間S1側の開口及び第二空間S2側の開口には、それぞれ、通気性を有するフィルタ111及びフィルタ112が装着されている。尚、第一空間S1及び第二空間S2は、例えば、同じ部屋内の空間であり、利用者は第二空間S2側にて微細水の供給を受ける。
【0036】
流路Lは、第一空間S1と第二空間S2とを連通する。流路Lの内部には、ケース110の第一空間S1側から第二空間S2側に向かって順に、送風装置120及び微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)が配設されている。
【0037】
送風部としての送風装置120は、第一方向に回転駆動することにより、流路Lに第一空間S1の空気を導入し、流路Lに導入された空気を第二空間S2に放出するものである。又、送風装置120は、第一方向と逆方向の第二方向に回転駆動することにより、流路Lに第二空間S2の空気を導入し、流路Lに導入された空気を第一空間S1に放出する。送風装置120は、例えば、軸流送風機である。送風装置120は、制御装置150と電気的に接続され、制御装置150から送信される制御指令値に従って駆動する。尚、送風装置120は、PWM制御されているため、制御指令値は、デューティ比にて算出される。
【0038】
微細水発生部130は、送風装置120によって流路Lに導入された空気に微細水を発生して放出するとともに、空気の水分を吸着するものである。微細水発生部130は、上述した微細水放出素子10を含んで構成されている。これにより、微細水発生部130においては、微細水放出素子10の基材部11が非通電である場合に、膜部12を構成するコアシェル構造の粒子13の状態を遷移させて、粒子13が流路Lに導入された空気の水分を吸着(吸着状態)する。又、微細水発生部130においては、微細水放出素子10の基材部11が通電状態である場合に、粒子13の状態を遷移させて、粒子13が吸着している水分を微細水として流路Lに導入された空気に放出する(放出状態)。
【0039】
微細水発生部130は、図9に示すように、導電性を有する円柱状のハニカム部材131を備えている。ハニカム部材131は、微細水放出素子10の基材部11を構成するものであり、導電性材料である、例えば、20クロム5アルミ系のフェライト系ステンレス鋼から形成されている。ハニカム部材131(即ち、基材部11)は、図10に示すように、波板と平板からなるハニカム状に形成される。尚、ハニカム部材131(基材部11)においては、波板及び平版は、絶縁加工されている。ハニカム状に形成された基材部11(即ち、ハニカム部材131)には、図10に示すように、外表面に対してコアシェル構造を有する粒子13が塗布されて膜部12が形成されている。
【0040】
又、微細水発生部130は、図1及び図9に示すように、ハニカム部材131(基材部11)の外周部分を包囲する環状の第一ケース部材132及び第二ケース部材133を備えている。第一ケース部材132は、例えば、ケース110の第一空間S1側に配置されており、ハニカム部材131(基材部11)の第一空間S1側に当接するように設けられたフランジによって補強されている。第二ケース部材133は、例えば、ケース110の第二空間S2側に配置されており、ハニカム部材131(基材部11)の第二空間S2側に当接するように設けられたフランジによって補強されている。
【0041】
更に、微細水発生部130においては、ハニカム部材131、即ち、ハニカム状に形成された基材部11に、図1及び図9に示すように、電極134が外方に向けて突出するように設けられている。より具体的に、電極134は、一端がハニカム部材131(基材部11)に電気的に接続され、他端が第一ケース部材132及び第二ケース部材133の開口から外部に向けて突出している。電極134の他端には、通電部140が電気的に接続されるようになっている。
【0042】
ハニカム部材131、第一ケース部材132、第二ケース部材133及び電極134から構成される微細水発生部130は、ケース110の流路Lに対して脱着可能に組み付けられるカートリッジとして形成されている。カートリッジとして脱着される微細水発生部130が流路Lに組み付けられた状態では、流路Lに導入された空気は、図7にて矢印により示すように、微細水発生部130を矢印の方向に沿って流通する。
【0043】
通電部140は、図1に示すように、微細水発生部130の電極134と電気的に接続され、微細水発生部130(より詳しくは、ハニカム部材131であって微細水放出素子10の基材部11)の通電を行うものである。通電部140は、図1に示すように、電線141、電源142及び開閉器143を備えている。
【0044】
電線141は、電源142と、送風装置120及び微細水発生部130の電極134とを電気的に接続する電線である。電源142は、例えば、商用電源であり、USB(Universal Serial Bus)給電方式を採用することが可能である。開閉器143は、電線141上に配設されており、例えば、非作動時に開路とするノーマルオープン型の開閉器である。
【0045】
開閉器143は、制御装置150から送信される制御指令値に従い、閉路とすることによって電源142と送風装置120及び微細水発生部130とを電気的に接続し、開路とすることによって電源142と送風装置120及び微細水発生部130との電気的な接続を遮断する。これにより、送風装置120は、第一方向又は第二方向に回転駆動する通電状態と回転駆動を停止する非通電状態とに切り替えられる。又、微細水発生部130は、ハニカム部材131(基材部11)が通電されて微細水を発生する通電状態とハニカム部材131(基材部11)が通電されておらず微細水を発生しない非通電状態とに切り替えられる。
【0046】
制御部としての制御装置150は、図11に示すように、放出制御部151及び放出準備制御部152を備えている。放出制御部151は、微細水放出装置100の運転モードである放出モードを実行して、第二空間S2への微細水の放出を制御するものである。放出準備制御部152は、微細水放出装置100の運転モードである放出準備モードを実行して、第二空間S2への微細水の放出準備を制御するものである。
【0047】
放出制御部151が実行する放出モードは、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)に微細水を発生させる運転モードである。加えて、放出制御部151が実行する放出モードは、第一空間S1から流路Lに導入されて微細水を含む空気を第二空間S2に放出する運転モードである。具体的に、放出制御部151は、放出モードの実行することにより、送風装置120を、第一方向に回転駆動させて、第一空間S1の空気を流路Lに導入して第二空間S2に放出する。
【0048】
そして、放出制御部151は、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)を通電状態にするように通電部140の開閉器143を閉路とする。これにより、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)のハニカム部材131(基材部11)は、通電状態となるため、ハニカム部材131(基材部11)に形成された膜部12(粒子13)の温度が上昇して微細水が発生し、流路Lに導入された空気とともに微細水が第二空間S2に放出される。
【0049】
ところで、通電状態においては、ハニカム部材131(基材部11)及び膜部12(粒子13)の温度は、非通電状態に比べて、20℃~50℃の範囲で上昇する。これにより、粒子13に吸着されている2ナノメートル程度の粒径を有する結合水がナノチャンネル13cを通過して凝縮(クラスタ化)し、50ナノメートル以下を粒径を有する微細水として流路L内に放出され(放出状態)、第一空間S1から流路Lに導入された空気が微細水を含んだ状態で第二空間S2から放出される。尚、放出モードにおいて、放出制御部151は、先ずハニカム部材131(基材部11)の通電のみを実施して膜部12(粒子13)の温度を上昇させた後、ハニカム部材131(基材部11)への通電を継続しながら送風装置120を第一方向に回転駆動させることも可能である。
【0050】
ここで、送風装置120の回転駆動量や、微細水発生部130(微細水放出素子10)への通電量、ハニカム部材131(基材部11)に担持された膜部12の表面積等については、例えば、以下のように設定される。例えば、第一空間S1の空気の温度が25℃であり、且つ、第一空間S1の空気の相対湿度が40%であることを想定した場合において、第一空間S1から流路Lに導入された空気に微細水が含まれて第二空間S2から放出される空気の相対湿度が約90%となるように設定される。
【0051】
放出準備制御部152が実行する放出準備モードは、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)に微細水の発生を停止させる態様(運転モード)である。加えて、放出準備制御部152が実行する放出準備モードは、流路Lを介して第一空間S1から第二空間S2に向けて又は第二空間S2から第一空間S1に向けて空気を放出する態様(運転モード)である。
【0052】
具体的に、放出準備制御部152は、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)を非通電状態にするように通電部140の開閉器143を開路とする。これにより、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)のハニカム部材131(基材部11)は、非通電状態となるために発熱することがなく、その結果、ハニカム部材131(基材部11)に形成された膜部12(粒子13)の温度が低下する。
【0053】
又、放出準備制御部152は、送風装置120を第一方向に回転駆動させて第一空間S1の空気を第二空間S2に放出する。又は、放出準備制御部152は、送風装置120を第二方向に回転駆動させて第二空間S2の空気を第一空間S1に放出する。これにより、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)が非通電状態とされている場合には、流路Lの内部を導通する空気により、ハニカム部材131(基材部11)に形成された膜部12(粒子13)は冷却される。
【0054】
ところで、膜部12(粒子13)が冷却される状態においては、上述したように、ナノチャンネル13cに偏在している極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)によって流路Lに導入された空気の水分が吸着される(吸着状態)。この場合、非通電状態においては、極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)に結合された水分(結合水)に対して熱エネルギーが与えられず、その結果、水分(結合水)が微細水としてナノチャンネル13cから飛び出すことはなく、安定して水分が吸着される。
【0055】
本実施形態の微細水放出装置100は、利用者が制御装置150を起動させる即ち電源投入することに従って作動を開始する。具体的に、制御装置150が起動すると、先ず、第一ステップとして、放出準備制御部152は、放出準備モードを実行し、送風装置120を第二方向に回転駆動し、流路Lの内部にて空気を微細水発生部130から送風装置120に向けて導通させる。この場合、放出準備制御部152は、送風装置120を、動作時間としてt1(s)、風速としてf1(m/s)となるように作動させる。
【0056】
このように、第一ステップにおいて、放出準備制御部152が放出準備モードを実行することにより、第二空間S2から第一空間S1に向けて流路Lの内部を流れる空気に含まれる水分がハニカム部材131(基材部11)に担持された膜部12(粒子13)に吸着(吸湿)される。そして、放出準備制御部152は、送風装置120を動作時間t1(s)だけ風速f1(m/s)で作動させると、送風装置120を停止させる。
【0057】
続いて第二ステップとして、放出制御部151は、放出モードを実行する。本実施形態において、放出制御部151は、通電部140の開閉器143を閉路し、微細水発生部130のハニカム部材131(基材部11)に通電する。この場合、放出制御部151は、ハニカム部材131(基材部11)の温度を非通電状態に比べて20℃~50℃の範囲で温度上昇させるために、ハニカム部材131(基材部11)に通電時間としてt2(s)、電力としてP(w)となるように通電する。尚、動作時間t2(s)及び電力P(w)は、利用者が任意に設定することができる。
【0058】
又、第三ステップとして、放出制御部151は、ハニカム部材131(基材部11)に通電することと同時に、送風装置120を第一方向に回転駆動し、流路Lの内部にて空気を送風装置120から微細水発生部130に向けて導通させる。この場合、放出制御部151は、送風装置120を、動作時間としてt2(s)、風速としてf2(m/s)となるように作動させる。尚、風速f2(m/s)は、例えば、微細水の放出距離に応じて利用者が任意に設定することができる。
【0059】
このように、第二ステップ及び第三ステップにおいて、放出制御部151が放出モードを実行することにより、ハニカム部材131(基材部11)に担持された膜部12(粒子13)の温度が30℃程度上昇して微細水を放出し、放出された微細水は流路Lの内部を流れる空気とともに第二空間S2に放出される。そして、放出制御部151は、ハニカム部材131(基材部11)に通電時間t2(s)だけ電力P(w)を通電し、且つ、送風装置120を動作時間t2(s)だけ風速f2(m/s)で作動させると、ハニカム部材131(基材部11)への通電を遮断するとともに送風装置120を停止させる。
【0060】
次に、第四ステップとして、放出準備制御部152は、放出準備モードを実行し、送風装置120を第二方向に回転駆動し、流路Lの内部にて空気を微細水発生部130から送風装置120に向けて導通させる。この場合、放出準備制御部152は、送風装置120を、動作時間としてt3(s)、風速としてf3(m/s)となるように作動させる。ここで、第四ステップにおける風速f3(m/s)は、第一ステップにおける風速f1(m/s)よりも大きな値とされる。
【0061】
このように、第四ステップにおいて、放出準備制御部152が放出準備モードを実行することにより、第二ステップにて通電により温度上昇したハニカム部材131(基材部11)及び膜部12(粒子13)が冷却される。ここで、第四ステップにおける風速f3(m/s)は、第一ステップにおける風速f1(m/s)よりも大きい。このため、流路Lの内部にて空気は速く流れ、その結果、ハニカム部材131(基材部11)が速やかに冷却される。一方、第一ステップにおける風速f1(m/s)は、第四ステップにおける風速f3(m/s)よりも小さい。このため、流路Lの内部にて空気はゆっくり流れ、その結果、ハニカム部材131(基材部11)に担持された膜部12(粒子13)と空気との接触時間が相対的に長くなって空気に含まれる水分がより確実に吸着(吸湿)される。
【0062】
そして、微細水放出装置100は、上述した第一ステップ~第四ステップを一つのサイクルとし、このサイクルを、例えば、2~10サイクル程度繰り返す。尚、繰り返すサイクルの数については、利用者によって任意に設定される。
【0063】
ところで、上述した微細水放出装置100は、発生させた微細水を人体の角質に保持される水(天然保湿因子)と同様の結合水の状態且つ無帯電(無電荷)の状態で放出することができる。従って、微細水放出装置100から放出された微細水に利用者の肌を曝すことにより、利用者は長時間にわたり、肌の保湿効果が得られる。このことについて、微細水放出装置100によって微細水が放出された場合と、上記従来の装置によってナノミストが放出された場合と、における頬部の角質水分量の時間変化率の比較結果を示す図12に基づいて説明する。
【0064】
尚、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が放出する微細水について、放出される微細水のpHは6.8~7.0であり、肌に直接接触した場合でも紅斑等の発生や肌異常の申告はなく、安全である。又、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が微細水を放出する際に発生するガスは、環境基準以下の微量の硫黄酸化物を含むのみであり、環境に影響を及ぼさない。
【0065】
一般的に、人体の肌の角質の隙間は約50ナノメートルと言われている。上述したように、微細水放出装置100即ちナノサイズ水粒子放出素子10は、50ナノメートル以下の微細水を無帯電(無電荷)且つ結合水の状態で放出する。これにより、図12にて実線により示すように、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)から放出された微細水は、結合水の状態で角質内部(肌内部)に効率的に浸透し易く、その結果、角質水分量が時間の経過に伴って低下しにくい。従って、微細水は、長時間にわたり肌の保湿効果を与えることができ、例えば、乾燥小じわの改善、肌のキメの整え、たるみやハリの改善、過剰な皮脂分泌の抑制、アトピー肌(乾燥肌)の保湿等が期待できる。
【0066】
これに対して、上記従来の装置は、ナノサイズのナノミストを帯電且つ自由水の状態で放出する。これにより、図12にて一点鎖線により示すように、上記従来の装置から放出されたナノミストは、肌に到達した直後においては角質内部(肌内部)に浸透するものの、自由水の状態で浸透するために蒸発し易く、その結果、角質水分量が時間の経過に伴って低下する。従って、従来のナノミストは、長時間にわたり肌の保湿効果を与えることが困難である。
【0067】
尚、微細水は、上述したように、微細水がハニカム部材131(基材部11)に担持された膜部12(粒子13)の温度上昇に伴って放出される。一般に、角質は、32℃~39℃で経皮吸収率が高くなると言われている。従って、微細水が温かい温度で放出されることも、角質内部(肌内部)に浸透し易くしていると考えることができる。
【0068】
又、利用者によっては、頬等にビタミンC等の美容成分を角質内部(肌内部)浸透させるクリーム等(例えば、APM(アスコルピン酸リン酸マグネシウム)等)を塗布している場合がある。ところで、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が放出する微細水は、無帯電(無電荷)であり、放出後においても微細な粒子形状即ち50ナノメートル以下を安定して維持することができる。従って、例えば、角質内部(肌内部)に浸透していない微細水は、肌の表皮に向かって美容成分とともに浸透することができ、その結果、角質内部(肌内部)に美容成分を浸透させる美容成分浸透効果を高めることができ、例えば、肌の美白、肌のハリ向上等が期待できる。
【0069】
これに対して、上記従来の装置によって放出されるナノミストは帯電しており、放出後においては微細な粒子形状を維持することが困難である。従って、角質内部(肌内部)に浸透していないナノミストは、例えば、粒径が50ナノメートルよりも大きくなると、肌の表皮に向かって美容成分とともに浸透することができず、その結果、美容成分浸透効果を高めることができない。
【0070】
ここで、微細水放出装置100から第二空間S2に放出された微細水を利用者の皮膚に供給する場合、第二空間S2に連通する流路Lの放出側開口(即ち、ノズル)を、例えば、コアンダ効果を発揮する吹き出し形状とし、ケース110から放出された微細水を利用者の皮膚に直接的に供給する(触れさせる)ことが可能である。又、例えば、利用者の顔を覆ったフェイスマスクを介して、微細水を皮膚に供給して浸透させることが可能である。又、第二空間S2をテントやカプセル等で区画しておき、テントやカプセル等の内部にケース110から微細水を放出させ、テントやカプセル等に入った利用者の皮膚に微細水を供給して浸透させることが可能である。更には、利用者が被った帽子(キャップ)やヘルメットを介して、微細水を皮膚(頭皮)に供給して浸透させることが可能である。
【0071】
以上の説明からも理解できるように、上記実施形態に係る微細水放出装置100は、第一空間S1と第二空間S2とを連通する流路Lを有するケース110と、流路Lに配置されていて、第一空間S1の空気を流路Lに導入し、流路Lに導入された空気を第二空間S2に放出する送風部としての送風装置120と、流路Lに配置されていて、基材部としてのハニカム状に形成されたハニカム部材131(基材部11)と、核を形成するコア部13a、及び、水素結合可能な極性官能基を有する高分子材料から形成されてコア部13aを被覆するシェル部13bからなるコアシェル構造を有する複数の粒子13と、を含み、ハニカム部材131(基材部11)及び粒子13のうちの少なくとも一方が導電性を有し、ハニカム部材131(基材部11)の外表面に複数の粒子13が膜状の導電性高分子膜部12として積層されて、水分を吸着する吸着状態と、吸着している水分を空気に放出する放出状態と、の間で粒子13の状態を遷移させて微細水を発生する微細水発生部130と、微細水発生部130のハニカム部材131(基材部11)と電気的に接続され、ハニカム部材131(基材部11)の通電を行う通電部140と、送風装置120及び通電部140を制御する制御部としての制御装置150と、を備えた微細水放出装置であって、制御装置150は、送風装置120によって第一空間S1の空気を流路Lに導入し、且つ、通電部140によって微細水発生部130のハニカム部材131(基材部11)を通電状態にして、微細水発生部130の粒子13に吸着している水分を積層された複数の粒子13によって形成されたナノチャンネル13cの開口である噴出口13c1を介して無帯電且つ粒径が50ナノメートル以下の微細水として流路Lに導入された空気に対して放出させることにより、流路Lに導入された空気とともに微細水を送風装置120によって第二空間S2に放出する放出モードを実行する放出制御部151と、送風装置120によって第一空間S1又は第二空間S2の空気を流路Lに導入し、且つ、通電部140によってハニカム部材131(基材部11)を非通電状態にして、流路Lに導入された水分を噴出口13c1からナノチャンネル13cを介して粒子13に吸着させる放出準備モードを実行する放出準備制御部152と、を備えるように構成される。
【0072】
この場合、ハニカム部材131(基材部11)は、ステンレス系金属から形成されており、粒子13は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のコア部13aと、ポリ(スチレンスルホン酸)のシェル部13bと、から構成されるPEDOT/PSSであり、PEDOT/PSSは、PEDOTのモノマーであるエチレンジオキシチオフェン(EDOT)とPSSとの重量比が1:4~1:6の間となるように設定される。
【0073】
又、これらの場合、放出モードにおいて第二空間S2に放出された微細水は、第二空間S2に存在する人体に供給される。
【0074】
これらによれば、ハニカム状に形成されたハニカム部材131(基材部11)の外表面に複数の粒子13が膜部12として積層されて微細水発生部130を構成することができる。複数の粒子13が膜部12として積層された場合、各粒子13の間、より詳しくは、各粒子13のシェル部13bの間にはナノメートルサイズのナノチャンネル13cが形成される。このナノチャンネル13cには、極性官能基13b1が多く分布するため、吸着状態において粒子13によって吸着された水分は速やかにハニカム部材131(基材部11)に向けて移動することができる。逆に、吸着された水分は、放出状態においてナノチャンネル13cを速やかに移動して空気に放出される。この場合、ナノチャンネル13cは積層された複数の粒子13によって形成されるため、ナノチャンネル13cに対応して水分を放出する開口である2ナノメートル程度の噴出口13c1を多数存在させることができる。これにより、微細水放出装置100から放出される水粒子の粒径分布を50ナノメートル以下に揃えることができる。
【0075】
又、微細水放出装置100は、放出制御部151が放出モードを実行することにより、通電部140がハニカム部材131(基材部11)に通電する。これにより、粒子13の温度が上昇し、微細水を放出することができる。従って、微細水放出装置100は、微細水に電荷を印加することなく、第二空間S2に無電荷の微細水を大量に放出することができる。これらにより、微細水放出装置100から放出される微細水は、無帯電且つ粒径が50ナノメートル以下と小さいため、第二空間S2に存在する人体に微細水が供給された場合には、人体の角質に対して進入(浸透)し易くなる。その結果、微細水は、角質の内部にまで浸透することができ、肌の保湿等に良好に寄与することができる。
【0076】
又、微細水放出装置100においては、放出準備制御部152が放出準備モードを実行することにより、微細水発生部130(より詳しくは、粒子13)に空気の水分を吸着させることができる。これにより、水分を吸着及び微細水を放出するために、例えば、水タンクや、高電圧電源、空気案内筒等を設ける必要がなく、微細水放出装置100の小型化を図ることができる。
【0077】
この場合、放出制御部151及び放出準備制御部152は、放出モードと放出準備モードとからなるサイクルを複数回実行する。
【0078】
これによれば、例えば、放出準備制御部152が放出準備モードを実行することによってハニカム部材131(基材部11)の粒子13が吸着(吸湿)した水分を、放出制御部151が放出モードを実行して第二空間S2に微細水を放出することができる。即ち、放出モードと放出準備モードとからなるサイクルを実行することにより、空気から吸着(吸湿)した水分を微細水として放出することができるため、水タンクや、高電圧電源、空気案内筒等を設ける必要がなく、微細水放出装置100の小型化を図ることができる。
【0079】
又、放出モードと放出準備モードとからなるサイクルを複数回実行することができるため、例えば、微細水放出装置100の利用者はサイクルを任意の回数だけ実行させることができる。従って、利用者の利用形態に応じて微細水放出装置100を利用することができ、利用者の利便性を向上させることができる。
【0080】
又、これらの場合、放出モードにおいて通電状態のハニカム部材131(基材部11)は、非通電状態に比べて20℃~50℃の範囲で温度上昇する。
【0081】
これによれば、放出モードにおいて微細水を第二空間S2に放出する際に必要となる熱エネルギーを低減することができる。一方で、放出準備モードにおいては、ハニカム部材131(基材部11)は非通電状態となる。従って、微細水放出装置100の作動において、必要なエネルギーが少なく、その結果、省エネルギーを達成することができる。
【0082】
尚、これらの場合においては、コア部13aは、高分子材料又は無機材料のうちのからポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)から形成される。シェル部13bは、極性官能基13b1として、スルホン酸基(-SOH)、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)、アミド基(-C=ONH-)、及び、ピロリドン基(NCOC)のうちの少なくとも一つであるスルホン酸基(-SOH)を有する。そして、この場合、シェル部13bは、高分子材料として、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムのうちの少なくとも一つであるポリスチレンスルホン酸(PSS)から形成される。又、ハニカム部材131(基材部11)は、ステンレス系金属又は銅系金属の金属材料、炭素材料、導電性セラミックス材料、及び、導電性樹脂材料のうちの少なくとも一つであるステンレス鋼である20クロム5アルミ系のフェライト系ステンレス鋼を用いて形成される。
【0083】
これらにより、コアシェル構造を有する粒子13は、PSSから形成されたシェル部13bが水素結合可能な極性官能基13b1であるスルホン酸基(-SOH)を多数有することができるので、吸着状態において空気に含まれる水分を速やかに且つ大量に吸着することができるとともに、放出状態において吸着した水分を速やかに空気に放出することができる。これにより、微細水放出装置100は、空気に微細水を放出することができる一方で、空気から水分を吸収(吸着)することができる。従って、微細水放出装置100は、空気に含まれる水分を活用し、微細水を放出することができる。
【0084】
(第一変形例)
上記実施形態においては、膜部12を形成する粒子13が導電性高分子材料であるPEDOT/PSSから形成されるコアシェル構造を有するようにした。即ち、上記実施形態においては、粒子13のコア部13aがPEDOTから形成され、粒子13のシェル部13bがPSSから形成されるようにした。
【0085】
これに代えて、粒子13のコア部13aを無機材料である酸化セリウム(CeO)で形成し、粒子13のシェル部13bを水素結合可能な極性官能基13b1を有する高分子材料であるポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウムのうちのポリビニルピロリドン即ちPVPから形成し、コアシェル構造を有する粒子13を構成することも可能である。この場合、シェル部13bを形成するPVPは、水素結合可能な極性官能基13b1である、スルホン酸基(-SOH)、カルボキシル基(-COOH)、水酸基(-OH)、アミノ基(-NH)、アミド基(-C=ONH-)、及び、ピロリドン基(NCOC)のうちのピロリドン基(NCOC)を有している。
【0086】
このように、コアシェル構造の粒子13をCeO/PVPから形成し、この粒子13を含む膜部12を基材部11上に層状に形成した場合においても、基材部11が非通電状態である場合、時間が経過することに伴って粒子13(シェル部13b)による水の吸着量が増加して飽和吸湿率の状態で安定する。又、微細水放出素子10は、基材部11が通電されて、粒子13の温度が上昇して放出温度以上となることにより、粒子13(シェル部13b)に吸着している水分が放出される。
【0087】
そして、この第一変形例の場合においても、粒子13のシェル部13bは、図2に示すように、膜部12中において、整列された状態で積層される。又、粒子13のシェル部13bを構成するPVPは、水素結合可能な極性官能基13b1であるピロリドン基(NCOC)を数多く持ち、図3に示すように、シェル部13bの周りに多くのピロリドン基(NCOC)を有する。このため、この第一変形例の膜部12においても、ナノチャンネル13cにピロリドン基(NCOC)が多く分布しており、被処理流体である空気に触れているピロリドン基(NCOC)には、空気に含まれる水分が水素結合により吸着される。
【0088】
これにより、この第一変形例における微細水放出素子10も、膜部12の表面にて吸着された水分が水分濃度差により膜部12の内部に高速で移動するので、大量の水分を速い速度で空気から吸着して保持することができる。又、このように、水分濃度差を駆動源として水分が移動するため、膜部12の内部における水分量が多く、且つ、膜部12の表面における水分量が少ない場合、即ち、空気が乾燥している場合には、上述した吸着時とは逆に、ナノチャンネル13cに存在するピロリドン基(NCOC)を伝って高速で、膜部12の内部から膜部12の表面に保持された(吸着された)水分が移動する。これにより、この第一変形例における微細水放出素子10も、膜部12の内部に保持された(吸着された)水分が水分濃度差により膜部12の表面に高速で移動するので、大量の水分を速い速度で空気に放出することができる。従って、この第一変形例においても、上記実施形態と同等の効果が得られる。
【0089】
(第二変形例)
上記実施形態においては、ハニカム部材131(基材部11)のハニカム形状が三角形状となるようにした。これに代えて、ハニカム部材131(基材部11)のハニカム形状については、図13に示すような波形状(第一変更例)、又は、図14に示すような六角形状(第二変更例)を採用することも可能である。このようなハニカム形状をハニカム部材131(基材部11)に採用した場合であっても、ハニカム部材131(基材部11)の表面にコアシェル構造を有する粒子13が塗布されて膜部12が形成される。
【0090】
これにより、この場合においても、微細水発生部130(微細水放出素子10)は、ハニカム部材131(基材部11)が非通電である場合に膜部12を構成するコアシェル構造の粒子13が流路Lに導入された空気の水分を吸着し(吸着状態)、ハニカム部材131(基材部11)が通電状態である場合に粒子13が吸着している水分を微細水として流路Lに導入された空気に放出する(放出状態)ことができる。従って、上記実施形態と同等の効果が得られる。
【0091】
(第三変形例)
上記実施形態においては、ハニカム部材131(基材部11)が円柱状とした。これに代えて、図15に示すように、ハニカム部材131(基材部11)を角柱状とすることも可能である。この場合においても、ハニカム部材131(基材部11)のハニカム形状については、図10図13に示す第一変更例及び図14に示す第二変更例の形状を採用することができる。
【0092】
このような角柱状のハニカム部材131(基材部11)を採用した場合であっても、ハニカム部材131(基材部11)の表面にコアシェル構造を有する粒子13が塗布されて膜部12が形成される。これにより、この場合においても、微細水発生部130(微細水放出素子10)は、ハニカム部材131(基材部11)が非通電である場合に膜部12を構成するコアシェル構造の粒子13が流路Lに導入された空気の水分を吸着し(吸着状態)、ハニカム部材131(基材部11)が通電状態である場合に粒子13が吸着している水分を微細水として流路Lに導入された空気に放出する(放出状態)ことができる。従って、上記実施形態と同等の効果が得られる。
【0093】
(第四変形例)
上記実施形態においては、微細水発生部130がハニカム部材131を備え、ハニカム部材131に微細水放出素子10の基材部11を一体に形成するようにした。これに代えて、図16に示す微細水発生部230を設けることも可能である。微細水発生部230は、一つの微細水放出素子10を用いて断面渦状に形成された基材部11を備えており、基材部11の外表面(渦巻き形状の内側に相当する面)にはコアシェル構造を有する粒子13が塗布されて膜部12が形成されている。
【0094】
そして、この場合、微細水発生部230は、膜部12の表面側に配置されたライナー部231及びコルゲート部232を有する。ライナー部231及びコルゲート部232は、断面渦状に設けられる。ライナー部231は、図17に示すように、金属箔のパンチングプレートから形成されている。コルゲート部232は、パルプ紙から形成されている。更に、この場合、微細水発生部230は、通電部140に接続される電極233を備えている。電極233は、微細水発生部230を構成する微細水放出素子10の基材部11の両端部にそれぞれ設けられる。
【0095】
このように構成された微細水発生部230においては、コルゲート部232とライナー部231との間に形成された隙間に空気が流通する。そして、微細水発生部230(微細水放出素子10)においては、基材部11が非通電である場合に膜部12を構成するコアシェル構造の粒子13が流路Lに導入された空気の水分を吸着し(吸着状態)、基材部11が通電状態である場合に粒子13が吸着している水分を流路Lに導入された空気に放出する(放出状態)。尚、基材部11とコルゲート部232とが接触するように形成されたとき、基材部11が通電された場合に生じる熱によってコルゲート部232が加熱される。そして、コルゲート部232が加熱されるとライナー部231も加熱され、その結果、微細水放出素子10の膜部12即ち粒子13が加熱されて速やかに放出状態に遷移する。従って、上記実施形態と同等の効果が得られる。
【0096】
ここで、微細水発生部230を構成するライナー部231及びコルゲート部232については、種々の変更が可能である。例えば、図18に第一変更例を示すように、ライナー部231を省略するとともに、コルゲート部232に代えて金属製のメッシュ234から形成することも可能である。又、図19に第二変更例を示すように、ライナー部231を省略し、コルゲート部232を金属板から形成することも可能である。又、図20に第三変更例を示すように、ライナー部231を金属板から形成し、ライナー部231を基材部11とコルゲート部232との間に配置することも可能である。更に、パンチングメタルに代えて、ライナー部231を金属製のメッシュから形成することも可能である。このようにライナー部231及びコルゲート部232を変更した場合であっても、上記実施形態と同等の効果が得られる。
【0097】
(第五変形例)
上記実施形態及び上記各変形例においては、利用者が操作可能な制御装置150を直接的に操作して、微細水放出装置100を作動させるようにした。これに加えて、例えば、利用者が所持する図示省略の携帯端末(具体的に、例えば、スマートフォン等)を操作することにより、微細水放出装置100を作動させることも可能である。この場合、携帯端末には、制御装置150による制御内容即ち運転モードを選択指示するためのアプリケーションがインストールされる。又、この場合には、微細水放出装置100には、図1にて破線により示すように、携帯端末との通信を可能とし、且つ、制御装置150との通信を可能とする通信装置160が設けられる。
【0098】
携帯端末を用いて微細水放出装置100を作動させる場合、利用者は携帯端末において起動させたアプリケーションにおいて微細水放出装置100の運転モードを選択することにより、選択された運転モードが微細水放出装置100の通信装置160に送信される。微細水放出装置100においては、通信装置160を介して運転モードを受信すると、制御装置150が運転モードに応じて送風装置120及び通電部140の作動を制御する。これにより、利用者が携帯端末を用いて選択した運転モードにより、微細水放出装置100は作動することができる。
【0099】
ところで、携帯端末にインストールされるアプリケーションには、上述した放出モード及び放出準備モードを組み合わせた任意の運転モード(態様)を設定する機能を設けることができる。これにより、利用者は、例えば、微細水が放出される時間や送風装置120による風速等を任意に設定することができる。
【0100】
又、携帯端末に、例えば、肌の水分量等を計測する肌計測アプリケーション等がインストールされている場合には、肌計測アプリケーションによる計測結果、即ち、利用者の肌状態に応じて、微細水放出装置100が自動的に最適な運転モードを設定して作動することが可能である。この場合、肌計測アプリケーションによる計測結果が通信装置160を介して制御装置150に送信されることにより、制御装置150は、例えば、利用者の肌の水分量が少ない場合には、微細水を放出する時間(即ち、放出モードの時間)を長く設定したり、微細水を放出する回数(即ち、放出モードの回数)を多く設定したりする。これにより、利用者は、自身で時間や回数を設定する必要がなく、極めて簡便に且つ最適に微細水放出装置100を利用することができる。
【0101】
又、この場合、通信装置160は、微細水放出装置100の肌計測アプリケーションに応じた作動内容、具体的には、肌の水分量に応じた放出モードの時間や回数等のデータを、外部に設けられたサーバに秘匿性を確保して送信することができる。これにより、サーバに送信されて記憶された種々のデータをビッグデータとして解析することにより、解析結果を、例えば、肌計測アプリケーションのバージョンアップに利用したり、制御装置150による微細水放出装置100の制御内容の改善に利用したりすることができる。これにより、利用者は、自身の肌状態に応じてよりきめ細かに微細水放出装置100を作動させて利用することが可能となる。
【0102】
(第六変形例)
上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100が単一のハニカム部材131を有する微細水発生部130(微細水放出素子10)を備え、一つの単一のハニカム部材131が通電状態と非通電状態とに切り替えられるようにした。これに代えて、微細水放出装置100が複数のハニカム部材131を有する微細水発生部130(微細水放出素子10)を備え、それぞれのハニカム部材131が独立して通電状態と非通電状態とに切り替えられるように構成することも可能である。以下、この第六変形例を具体的に説明する。
【0103】
第六変形例においては、微細水発生装置100は、図21に示すように、例えば、二つのハニカム部材131を備えている。尚、以下の説明において、複数のハニカム部材131を区別する場合、ハニカム部材131に「A」、「B」、…の符号を付して区別する。例えば、二つのハニカム部材131を区別する場合、一方のハニカム部材131をハニカム部材131Aと称呼し、他方のハニカム部材131をハニカム部材131Bと称呼する。
【0104】
ハニカム部材131A及びハニカム部材131Bは、それぞれ、独立して通電状態と非通電状態とに切り替えられる。このため、図21に示すように、ハニカム部材131A及びハニカム部材131Bは、それぞれに電極134が電気的に接続される。そして、それぞれの電極134は、電線141を介して、各電極134に対応して設けられた、即ち、二つの開閉部143のそれぞれに接続される。ここで、通電部140においては、電極134の数、換言すれば、ハニカム部材131の数に一致する開閉器143が設けられる。尚、ハニカム部材131Aに電気的に接続された電極134に接続された電線141は、例えば、ケース110の壁部の内部に収容されるようになっている。
【0105】
制御装置150の放出制御部151は、放出モードにより、ハニカム部材131Aを通電状態にしてハニカム部材131Aから微細水を発生させる。一方、制御装置150の放出準備制御部152は、放出準備モードにより、ハニカム部材131Bを非通電状態にしてハニカム部材131Bに空気の水分を吸着させる。そして、所定の時間が経過すると、放出制御部151は、放出モードにより、ハニカム部材131Bを通電状態にしてハニカム部材Bから微細水を発生させる。一方、放出準備制御部152は、放出準備モードにより、ハニカム部材131Aを非通電状態にしてハニカム部材131Aに空気の水分を吸着させる。このように、放出制御部151及び放出準備制御部152が協働して、所定の時間が経過するごとに、ハニカム部材131A及びハニカム部材131Bの通電状態と非通電状態とを繰り返し切り替えることにより、微細水放出装置100は連続的に微細水を放出することができ、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0106】
ここで、ハニカム部材131の個数(分割数)については、上述したように、二つに限定されない。例えば、図22に示すように、周方向にて八つに分割してハニカム部材131A~ハニカム部材131Hを設けることも可能である。又、例えば、図23に示すように、ケース110よりも小径とされた四つのハニカム部材131A~ハニカム部材131Dを設けることも可能である。このように、二つ以上のハニカム部材131を設けた場合においては、通電状態のハニカム部材131と非通電状態のハニカム部材131との割合を自由に変更することが可能である。尚、分割されたハニカム部材131の形状については、ケース110の内部、より具体的に、第一ケース部材132及び第二ケース部材133に収容可能であれば、如何なる形状であっても良い。
【0107】
図22に示す場合には、放出制御部151及び放出準備制御部152は、所定の時間が経過するごとに協働して、例えば、ハニカム部材131A、ハニカム部材131C、ハニカム部材131E及びハニカム部材131Gの通電状態と非通電状態とを繰り返し切り替え、ハニカム部材131B、ハニカム部材131D、ハニカム部材131F及びハニカム部材131Hの非通電状態と通電状態とを繰り返し切り替えることができる。これにより、微細水放出装置100において、通電状態のハニカム部材131と非通電状態のハニカム部材131の割合を同等にし、連続的に微細水を放出することができる。
【0108】
同様に、図23に示す場合には、放出制御部151及び放出準備制御部152は、所定の時間が経過するごとに協働して、例えば、ハニカム部材131A及びハニカム部材131Cの通電状態と非通電状態とを繰り返し切り替え、ハニカム部材131B及びハニカム部材131Dの非通電状態と通電状態とを繰り返し切り替えることができる。これにより、微細水放出装置100において、通電状態のハニカム部材131と非通電状態のハニカム部材131の割合を同等にし、連続的に微細水を放出することができる。
【0109】
ところで、特に、図22及び図23に示すように、微細水放出装置100がハニカム部材131を三つ以上有する場合、通電状態のハニカム部材131と非通電状態のハニカム部材131との割合として、例えば、通電状態とされたハニカム部材131よりも非通電状態とされたハニカム部材131を増やすことが可能となる。この場合には、非通電状態のハニカム部材131が空気中の水分の吸着する時間が増え、その結果、水分の吸着量を増やすことができる。従って、ハニカム部材131が通電状態に切り替えられた際には、より多くの微細水を放出することが可能となり、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
更に、微細水放出装置100が複数のハニカム部材131を有する場合、放出制御部151及び放出準備制御部152は、それぞれのハニカム部材131の間で時間的に重なるように(ラップするように)通電状態と非通電状態とを連続的に切り替えることができる。このように、時間的に重なるように(ラップするように)通電状態と非通電状態とを連続的に切り替えることにより、微細水放出装置100が発生する微細水の発生量を均一化することができ、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態及び上記各変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0112】
例えば、上記実施形態及び上記各変形例においては、基材部11が導電性を有する材料から形成されるようにした。これに代えて、粒子13がPEDOT/PSS等の導電性を有する場合、基材部11を導電性を有しない材料から形成することも可能である。
【0113】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100が送風装置120を一体に備えるように構成した。しかしながら、微細水放出装置100が送風装置120を別体として備えるように構成することも可能である。この場合、送風機能を有している機器、例えば、ドライヤーや、エアコン、扇風機等に対して、送風装置120を排した微細水放出装置100を取り付けることができる。これにより、送風機能を有している機器が送風していることに合わせて、微細水放出装置100の制御装置150が微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)を通電状態又は非通電状態とすることによって、微細水放出装置100は微細水を放出し又は水分を吸着することができる。従って、この場合においても、上記実施形態及び上記各変形例と同様の効果が期待できる。
【0114】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、制御装置150を構成する放出準備制御部152が放出準備モードを実行することにより、微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)がケース110の流路Lに導入された空気の水分を吸着(吸湿)するようにした。これに代えて、又は、加えて、例えば、ケース110の内部において、送風装置120と微細水発生部130(ハニカム部材131、第一ケース部材132及び第二ケース部材133)との間に水分を含ませて湿らせたシート部材を流路Lの内部にて挟み込むように配置することも可能である。或いは、ケース110の内部において、送風装置120と微細水発生部130との間にて、流路Lの内部に蒸気状(霧状)の水分を噴霧する噴霧機構を配置することも可能である。
【0115】
このように、シート部材や噴霧機構を配置する場合、放出準備モードにおいては、上記実施形態の場合と異なり、放出準備制御部152は送風装置120を第一方向に回転駆動し、空気を流路L内にて第一空間S1側から第二空間S2側に向けて流す。これにより、シート部材に含まれる水分や噴霧機構から噴霧された水分は、空気に含まれて微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)に向けて供給される。このため、シート部材や噴霧機構は、非通電状態で冷却されている膜部12(粒子13)が水分(水クラスタ)を吸着(吸湿)することを効果的に補助することができる。
【0116】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100は微細水のみを第二空間S2に放出するようにした。これに加えて、微細水放出装置100が微細水と同時に、スチーム状の水や薬剤を放出するように構成することも可能である。この場合、微細水放出装置100には、例えば、水や薬剤を貯留するタンクを備えたスチーム発生装置を設けることができる。これにより、上述したように、微細水放出装置100が微細水を放出すると同時に、スチーム発生装置が水や薬剤をスチーム状にして第二空間S2放出することができる。
【0117】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水発生部130がハニカム部材131の全体に膜部12(粒子13)が設けられるように構成した。これに代えて、例えば、ハニカム部材131の中心部分に貫通孔を設け、この貫通孔にアロマオイル等の芳香剤を貯留するように構成することも可能である。この場合には、放出制御部151が放出モードを実行して通電状態によりハニカム部材131(基材部11)の温度を上昇させることにより、上述したように微細水を第二空間S2に放出することができるとともに、貯留された芳香剤を蒸発させて芳香成分も第二空間S2に放出することができる。
【0118】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100がケース110の内部に送風装置120及び微細水発生部130をそれぞれ一つずつ備えるように構成した。これに代えて、微細水放出装置100がケース110の内部に送風装置120及び微細水発生部130をそれぞれ複数備えるように構成することも可能である。この場合、例えば、送風装置120及び微細水発生部130からなる対をケース110の軸線方向に対して直交する方向に並列して複数設けたり、ケース110の軸線方向に沿って直列に複数設けたりすることができる。
【0119】
これにより、それぞれの対(送風装置120及び微細水発生部130)を順番に作動させたり、同時に作動させたりすることができる。従って、この場合には、微細水を第二空間S2に放出する放出量や放出距離の調整が可能であり、又、微細水を継続して放出する放出時間の調整が可能となる。
【0120】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、制御装置150は、微細水を発生させて放出する場合には、通電部140の開閉器143を閉路して、送風装置120を作動させるとともに微細水発生部130を通電状態とするようにした。一方、制御装置150は、微細水の発生及び放出を停止する場合には、通電部140の開閉器143を開路して、送風装置120の作動を停止させるとともに微細水発生部130を非通電状態とするようにした。
【0121】
これに代えて、例えば、送風装置120への通電を維持して作動を継続させることができる構成において、微細水を放出及び停止する場合、制御装置150が、通電部140の開閉器143を閉路又は開路となるように制御して、微細水発生部130を通電状態と非通電状態とに切り替えて微細水の放出と停止を行うようにすることも可能である。
【0122】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100が微細水発生部130(ナノサイズ水粒子放出素子10)によって水クラスタから形成させた微細水をそのまま第二空間S2に放出するようにした。これに加えて、例えば、水クラスタをプラズマ化する装置、例えば、周知の低温プラズマ生成手段であるコロナ放電、沿面放電等を備えて、水クラスタ(微細水)から酸化力の強い活性酸素(OHラジカル)を効率よく生成することも可能である。このように、水クラスタ(微細水)から生成した活性酸素(OHラジカル)は、強い酸化力により、例えば、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を空気清浄機に適用した場合には、除菌や防虫、防カビ等に効果を発揮することができる。
【0123】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、通電部140の電源142が商用電源であるとした。このため、上記実施形態及び上記各変形例の微細水放出装置100は、設置型となる。これに代えて、電源142を充放電可能なバッテリとすることにより、微細水放出装置100を可搬型(所謂、コードレス型)とすることが可能となる。
【0124】
又、上記実施形態及び上記各変形例においては、利用者が微細水放出装置100の制御装置150を直接操作して作動させるようにした。これに代えて、又は、加えて、例えば、利用者が、制御装置150の遠隔操作を可能とするリモコンを操作したり、制御装置150の作動時間及び停止時間をタイマ設定したりすることによって、微細水放出装置100を作動させることが可能である。或いは、微細水放出装置100に人感センサや温湿度センサ等が設けられている場合には、制御装置150がこれらのセンサによる検出結果に応じて、微細水放出装置100を作動させることも可能である。
【0125】
更に、上記実施形態及び上記各変形例においては、微細水放出装置100を美容機器に適用し、利用者の皮膚に効果的に微細水を浸透させるようにした。上述したように、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が発生して放出する微細水は、粒径が50ナノメートル以下の結合水であり、且つ、無帯電(無電荷)である。従って、微細水放出装置100は、美容機器以外にも適用可能である。
【0126】
例えば、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)をドライヤーに適用して利用者の頭皮や髪の毛に微細水を放出した場合には、微細水が頭皮や髪の毛に浸透して保湿効果を与えることができる。その結果、例えば、髪の艶の向上、かゆみ防止、フケ防止、抜け毛防止等が期待できる。又、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を育毛促進器に適用した場合、利用者の頭皮に塗布された育毛剤の浸透を促進することができ、育毛促進が期待できる。
【0127】
又、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)をドラッグデリバリ装置に適用して薬剤を塗布した皮膚に微細水を放出した場合には、薬剤の経皮吸収を促進することができ、例えば、各種疾患に対する薬剤の効果の向上が期待できる。又、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)をドライアイ防止機器(アイマスク等)に適用して利用者の目や顔に微細水を放出した場合には、微細水の浸透によって目の乾燥を抑制することが期待できる。更に、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を吸入器や人工呼吸器に適用して利用者の口腔内の粘膜等に微細水を放出した場合には、微細水が粘膜等に浸透することによる保湿効果や加湿効果の向上が期待できる。
【0128】
又、これらの場合、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が発生した微細水を利用者(ヒト)に直接的に放出するようにした。これに代えて、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)が発生した微細水をヒト以外の物に放出することも可能である。例えば、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を冷蔵庫や食品庫に適用して食品に微細水を放出する場合、微細水は無帯電(無電荷)の結合水であるため、保存している食品の保湿効果を高めることができる。その結果、例えば、冷蔵庫にて冷蔵保存している食品の鮮度維持や食品庫にて保存している食品の風味向上等が期待できる。
【0129】
又、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を植物育成装置に適用して微細水を植物に放出する場合、例えば、苗木に微細水を放出することにより、苗木の成長促進が期待できる。更に、微細水放出装置100(ナノサイズ水粒子放出素子10)を静電気除去装置に適用して微細水を工業製品等に放出する場合、微細水は無帯電(無電荷)であるため、例えば、紙や半導体、塗料等の静電気を除去する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0130】
10…微細水放出素子、11…基材部、12…導電性高分子膜部、13…粒子、13a…コア部、13b…シェル部、13c…ナノチャンネル(チャンネル)、13c1…噴出口(開口)、100…微細水放出装置、110…ケース、120…送風装置(送風部)、130…微細水発生部、131…ハニカム部材(基材部)、132…第一ケース部材、133…第二ケース部材、134…電極、140…通電部、141…電線、142…電源、143…開閉器、150…制御装置(制御部)、151…放出制御部、152…放出準備制御部、160…通信装置、230…微細水発生部、231…ライナー部、232…コルゲート部、233…電極、L…流路、S1…第一空間、S2…第二空間
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