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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】反射特性測定装置及び該方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/50 20060101AFI20221220BHJP
   G01N 21/57 20060101ALI20221220BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20221220BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20221220BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01J3/50
G01N21/57
G01N21/27 B
G01J3/02 C
G01J1/02 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020548033
(86)(22)【出願日】2019-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2019027848
(87)【国際公開番号】W WO2020059269
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2018177781
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】川崎 貴志
【審査官】古川 直樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/208937(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350895(US,A1)
【文献】特開平11-72388(JP,A)
【文献】特開2011-174785(JP,A)
【文献】特開2006-177812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J1/00-G01J4/04
G01J7/00-G01J11/00
G01N21/00-G01N21/01
G01N21/17-G01N21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定開口と、
前記測定開口を介して照明光で測定対象を照明する照明光学系、前記照明光で照明された前記測定対象からの反射光を集光する受光光学系、前記受光光学系によって集められた光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力する受光部、及び、前記照明光で前記測定対象が照明されたときに前記受光信号に基づき前記測定対象の反射特性を測定する測定制御部を有する少なくとも1つの光学測定部と、
前記照明光学系及び前記受光光学系の一方に含まれ、入射光を拡散反射する拡散反射面と、
前記測定開口を介して前記測定対象を視認する位置に設けられた撮像部と、
前記撮像部により前記測定対象の正反射を介して撮像される位置に設けられ、前記撮像部の撮像範囲に収まる大きさを有し、反射率が周囲と異なる基準反射部と、
複数の反射広がり角と、前記複数の反射広がり角にそれぞれ対応する前記基準反射部の複数の画像情報との第1対応関係を予め記憶する画像情報記憶部と、
複数の表面反射率ごとに、前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値との第2対応関係をそれぞれ予め記憶する反射率情報記憶部と、
前記複数の表面反射率ごとに、前記光学測定部の測定値と補正量との第3対応関係をそれぞれ予め記憶する補正情報記憶部と、
前記測定対象が前記照明光により照明されたときに前記撮像部を動作させて前記基準反射部を撮像させる撮像制御部と、
前記撮像部により撮像された前記基準反射部の画像から、前記第1対応関係に基づき、前記測定対象の反射広がり角を求め、求められた前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値とから、前記第2対応関係に基づき、前記測定対象の表面反射率を求め、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記第3対応関係と前記光学測定部の測定値とから、前記補正量を求め、前記光学測定部の測定値から前記補正量を減算して、補正測定値を求める補正処理部と、
を備える反射特性測定装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記測定開口の開口面の法線に対して30°から60°までの範囲内の所定角度傾いた角度から前記測定対象を視認するように、配置されている、
請求項1に記載の反射特性測定装置。
【請求項3】
前記基準反射部は、前記撮像部の光軸を含み前記測定開口の中心及び前記基準反射部の中心を通る基準平面に平行な方向の長さと前記基準平面に直交する方向の長さとが、前記撮像部により撮像された画像において略同じ値になるように、形成されている、
請求項1又は2に記載の反射特性測定装置。
【請求項4】
前記拡散反射面は、積分球の内壁により形成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の反射特性測定装置。
【請求項5】
前記補正情報記憶部は、前記複数の表面反射率ごとに、前記光学測定部の測定値と前記補正量との関係を表す補正関係式を、前記第3対応関係としてそれぞれ予め記憶し、
前記補正処理部は、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記補正関係式を前記補正情報記憶部から読み出し、読み出された前記補正関係式において前記光学測定部の測定値に対応する前記補正量を求める、
請求項1~4のいずれか1項に記載の反射特性測定装置。
【請求項6】
前記光学測定部は、複数であり、
前記複数の光学測定部のそれぞれの分光感度が互いに一致している、
請求項1~5のいずれか1項に記載の反射特性測定装置。
【請求項7】
測定開口と、
前記測定開口を介して照明光で測定対象を照明する照明光学系、前記照明光で照明された前記測定対象からの反射光を集光する受光光学系、前記受光光学系によって集められた光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力する受光部、及び、前記照明光で前記測定対象が照明されたときに前記受光信号に基づき前記測定対象の反射特性を測定する測定制御部を有する少なくとも1つの光学測定部と、
前記照明光学系及び前記受光光学系の一方に含まれ、入射光を拡散反射する拡散反射面と、
前記測定開口を介して前記測定対象を視認する位置に設けられた撮像部と、
前記撮像部により前記測定対象の正反射を介して撮像される位置に設けられ、前記撮像部の撮像範囲に収まる大きさを有し、反射率が周囲と異なる基準反射部と、
を備える反射特定測定装置における反射特性測定方法であって、
前記測定対象が前記照明光により照明されたときに前記撮像部を動作させて前記基準反射部を撮像させる撮像工程と、
複数の反射広がり角と、前記複数の反射広がり角にそれぞれ対応する前記基準反射部の複数の画像情報との第1対応関係に基づき、前記撮像工程において撮像された前記基準反射部の画像から、前記測定対象の反射広がり角を求める第1取得工程と、
前記測定制御部により前記測定対象の反射特性を測定して前記光学測定部の測定値を求める測定工程と、
複数の表面反射率ごとの、前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値との第2対応関係に基づき、求められた前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値とから、前記測定対象の表面反射率を求める第2取得工程と、
前記複数の表面反射率ごとの、前記光学測定部の測定値と補正量との第3対応関係のうち、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記第3対応関係と前記光学測定部の測定値とから、前記補正量を求める第3取得工程と、
前記光学測定部の測定値から前記補正量を減算して、補正測定値を求める第4取得工程と、
を備える反射特性測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象の反射特性を測定する反射特性測定装置及び該方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、測定対象の反射特性の測定は、照明光学系及び受光光学系の光学的条件(ジオメトリ)によって大きい影響を受ける。従って、分光測色計等の反射特性測定装置の多くは、国際照明委員会(CIE)が推奨する45/0(45°照明、垂直受光)、0/45(垂直照明、45°受光)や、d/0(拡散照明、垂直受光)、0/d(垂直照明、拡散受光)等のジオメトリを採用している。従来、それらの内でもd/8(拡散照明、8°受光)ジオメトリは、測定対象の表面の構造に影響されず安定性が高いという特徴を有する鏡面反射成分を含む反射特性(SCI反射特性)と、目視に近いという特徴を有する鏡面反射成分を含まない反射特性(SCE反射特性)との双方の測定が可能であることから、広く用いられている。
【0003】
d/8ジオメトリでは、照明光学系として一般に積分球が用いられるが、積分球による照明では、測定対象からの反射光が再度測定対象を照明する再照明が発生する。積分球の径や積分球の内部構造により、この再照明の量は異なるため、異なる機種間での測定値の互換性を確保することは容易ではない。この課題を解決するための方法として、特許文献1で提案されている技術がある。この特許文献1には、d/8ジオメトリの反射特性測定装置において、測定値の2次関数で前記再照明による誤差を補正する方法が記載されている。
【0004】
また、物体表面の光学特性を評価する装置において、複数の特性を併せて測定したいという要望があるので、例えば測色計と60°光沢計とを一体化した測定器が開発されている。このような測色計と光沢計とが一体化された測定器の中で、例えば測色計がd/8ジオメトリの場合、測定対象を均一な拡散光で照明する必要がある。このため、そのような測色計の照明光学系では、多くの場合、例えば積分球の内壁で形成され測定対象を囲むように配置された高反射率の拡散反射面を光源によって照明することで、間接的に測定対象を拡散光で照明する方法が用いられる。
【0005】
このような拡散反射面を有する照明光学系を持つ測色計に60°光沢計を一体化させる場合、光沢計は、投光光学系によって略平行光で測定対象を照明する。しかし、測定対象の表面が例えば粗面などである場合、拡散反射が発生する.このため、反射された光の一部は、前記拡散反射面を有する照明光学系に入射し、その拡散反射面で反射された光が測定対象を再照明することになる。この再照明は、一般の拡散反射面を有する照明光学系を持たない光沢計では発生しない。このため、測色計との一体化によって拡散反射面を有する照明光学系を持つ光沢計で同一の測定対象を計測した場合に、測定誤差が生じることとなる。
【0006】
この課題を解決するための技術として、特許文献2で提案されている技術がある。この特許文献2に記載された方法では、照明光学系に補正光源と補正センサとが配置され、補正光源発光時の補正センサ出力および光沢センサ出力と、光沢計用の光源発光時の補正センサ出力および光沢センサ出力とから、再照明の光量が推定されて光沢計の測定値の補正が実行される。また、上記特許文献2には、異なる方法として、測色計と光沢計とを有する測定器において、事前に測色計用の光源の発光時の測色センサ出力と光沢センサ出力との関係を測定器に記憶し、光沢計用の光源の発光時の測色センサ出力と前記記憶した関係とから光沢計の測定値の補正量を決定して補正する方法が記載されている。
【0007】
一般に、物体の表面反射率は、材質によって異なる。例えば、鏡面に研磨されたアルミニウムの可視光領域の表面反射率は、80%~90%程度である。一方、ガラスの表面反射率は、垂直入射では約4%であり、60°入射では約10%である。
【0008】
上記特許文献1に記載された方法では、上述のように、事前に2次関数の係数を測定装置に記憶させている。しかし、その係数が、例えば材質がガラスの基準試料に基づき決定されていた場合には、測定対象が金属のように表面反射率の大きく異なる材質の場合、正しく補正されないことがある。
【0009】
また、上記特許文献2に記載された技術では、実測又は光学シミュレーションにより補正センサ出力及び光沢センサ出力と、再照明誤差との対応関係が予め求められているが、特許文献2には、この対応関係は、表面反射率によって異なることが記載されている。したがって、ある材質の基準試料に基づいて求めた対応関係を用いて測定値を補正すると、測定対象が基準試料と表面反射率が異なる材質の場合、正しく補正されずに、測定誤差を発生させてしまうことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-72388号公報
【文献】国際公開第2017/208937号
【発明の概要】
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、測定対象の表面反射率を予め求め、求められた表面反射率に対応する補正量を用いて補正して、測定誤差を精度良く低減することができる反射特性測定装置及び該方法を提供することである。
【0012】
上述した目的を実現するために、本発明の一側面を反映した反射特性測定装置は、
測定対象の反射特性を測定する少なくとも1つの光学測定部を備え、
前記測定対象が照明光により照明されたときに撮像部を動作させて基準反射部を撮像させ、
前記撮像部により撮像された前記基準反射部の画像から、前記測定対象の反射広がり角を求め、求められた前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値とから、前記測定対象の表面反射率を求め、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する、前記光学測定部の測定値と補正量との第3対応関係と前記光学測定部の測定値とから、前記補正量を求め、前記光学測定部の測定値から補正量を減算して、補正測定値を求める。
【0013】
発明の1又は複数の実施形態により与えられる利点及び特徴は以下に与えられる詳細な説明及び添付図面から十分に理解される。これら詳細な説明及び添付図面は、例としてのみ与えられるものであり本発明の限定の定義として意図されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態における反射特性測定装置の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。
図2】反射特性測定装置の光学的構成例を概略的に示す平面図である。
図3図2のIII方向から見た断面図である。
図4図2のIV方向から見た断面図である。
図5】物体における光の反射を説明する図である。
図6】基準反射部及び基準反射部が撮像された画像を概略的に示す図である。
図7】カメラによって撮像された基準反射部の画像の一例を示す図である。
図8】複数の反射広がり角に対する基準反射部の画像の画素値の一例を示す図である。
図9図8における基準画像に対する他の画像の画素値の差分を示す図である。
図10】画素値の差分の絶対値の積分値と反射広がり角との対応関係を示す図である。
図11】表面反射率ごとの測色値と反射広がり角との第2対応関係の一例を概略的に示す図である。
図12】特定サンプル測定時の分光測色計の測定誤差を概略的に示す図である。
図13】分光測色計の補正量を概略的に示す図である。
図14】分光測色計の補正量の異なる例を概略的に示す図である。
図15】補正関係式を求める手順を概略的に示すフローチャートである。
図16】第1実施形態における反射特性測定装置の測定動作の手順を概略的に示すフローチャートである。
図17】第2実施形態における反射特性測定装置の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。
図18】反射特性測定装置の光学的構成例を概略的に示す、図3と同じ方向から見た断面図である。
図19】表面反射率ごとの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係の一例を概略的に示す図である。
図20】特定サンプルを測定したときの光沢計の測定誤差を概略的に示す図である。
図21図20の測定誤差を補正するための光沢計の補正量を概略的に示す図である。
図22】第2実施形態における補正関係式を求める手順を概略的に示すフローチャートである。
図23】第2実施形態における反射特性測定装置の測定動作の手順を概略的に示すフローチャートである。
図24】第2実施形態の反射特性測定装置で測定可能な条件を概略的に示す図である。
図25】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図26】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図27】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図28】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図29】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図30】第2実施形態の反射特性測定装置をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率ごとの分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係を概略的に示す図である。
図31図25の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
図32図26の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
図33図27の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
図34図28の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
図35図29の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
図36図30の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の1または複数の実施の形態が、図面を参照しながら説明される。しかし、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0016】
(第1実施形態の構成)
図1は、第1実施形態における反射特性測定装置100の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。図2は、反射特性測定装置100の光学的構成例を概略的に示す平面図である。図3は、図2のIII方向から見た断面図である。図4は、図2のIV方向から見た断面図である。
【0017】
図1に示されるように、反射特性測定装置100は、測色用の光源105、測色用の受光センサ110、移動機構115、カメラ120、制御回路140、及び記憶装置170を備える。記憶装置170は、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶装置170は、画像情報記憶部171、反射率情報記憶部172、補正情報記憶部173を含む。各記憶部171~173は、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、各記憶部171~173は、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。各記憶部171~173の記憶内容は、後述される。
【0018】
制御回路140は、中央演算処理装置(CPU)150、メモリ160、周辺回路(図示省略)を含む。メモリ160は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ160は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。メモリ160の例えばROMは、CPU150を動作させる本実施形態の制御プログラムを記憶する。CPU150は、メモリ160に記憶された本実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、測色計制御部151、カメラ制御部152、補正処理部153として機能する。測色計制御部151、カメラ制御部152、補正処理部153の機能は、後述される。
【0019】
図2図4に示されるように、反射特性測定装置100は、積分球1を備える。積分球1(照明光学系の一例に相当)は、その内壁1a(拡散反射面の一例に相当)に高拡散、高反射率の例えば酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化亜鉛等の白色拡散反射塗料が塗布された中空の球である。積分球1は、底部に形成され、測定対象3を照明するための測定開口5と、積分球1の中心より少し高い位置に形成され、光源105からの照明光を入射させるための光源用開口7と、測定開口5の開口面の法線(測定対象3が平滑な場合には測定対象3の法線に一致する)に対して8°傾斜した方向に形成され、測定対象3からの反射光を受光光学系9に入射させるための受光用開口11と、光源用開口7とほぼ同じ高さの位置に形成され、カメラ120が測定対象3を視認するためのカメラ用開口13と、受光光学系9の光軸と対称な方向(つまり測定開口5の開口面の法線に対して-8°傾斜した方向)に形成されたトラップ用開口15と、トラップ用開口15を閉塞するための閉塞部材17と、を備える。
【0020】
移動機構115(図1)は、制御回路140(図1)に電気的に接続され、測色計制御部151により制御されて、閉塞部材17を、トラップ用開口15が閉塞される閉塞位置(図3中、実線)とトラップ用開口15が開放される退避位置(図3中、二点鎖線)とに移動させる。閉塞位置(図3中、実線)に配置された閉塞部材17は、測定対象3が平滑なときに、受光光学系9に対する測定対象3の鏡面反射光の光源となる。一方、閉塞部材17が退避位置(図3中、二点鎖線)に配置されると、トラップ用開口15が開放されるため、受光光学系9に対する測定対象3の鏡面反射光の光源が無くなる。よって、図3において、閉塞位置(図3中、実線)に配置された閉塞部材17によりトラップ用開口15が閉塞された状態で、測定対象3のSCI反射特性が測定され、閉塞部材17が退避位置(図3中、二点鎖線)に移動してトラップ用開口15が開放された状態で、測定対象3のSCE反射特性が測定される。
【0021】
光源105は、例えば白色の発光ダイオード(LED)等で構成される。光源105からの照明光は、積分球1の内壁1aで多重反射されて、拡散照明光として測定対象3を照明する。受光光学系9は、レンズ等からなり、受光光学系9の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して8°傾斜するように配置されている。受光光学系9は、測定対象3からの反射光のうち8°傾斜した方向の成分を集光して分光部21に導く。これによって、反射特性測定装置100では、拡散照明、8°受光のd/8ジオメトリが形成されている。
【0022】
分光部21は、筐体23と、光学系25,27と、反射型回折格子29と、受光センサ110と、を備える。筐体23は、箱形状を有し、光学系25,27、反射型回折格子29、及び受光センサ110を収容する。筐体23には、受光光学系9からの光を入射させるためのスリット状の開口部23aが形成されている。光学系25は、レンズ等からなり、受光光学系9からの光を平行光にして、その平行光を反射型回折格子29に導く。反射型回折格子29は、光学系25からの平行光を回折して反射する。
【0023】
光学系27は、レンズ等からなり、反射型回折格子29により回折された光を波長の順に受光センサ110の異なる位置に導く。受光センサ110(受光部の一例に相当)は、ライン状に並べられた複数の受光素子(例えばフォトダイオード)を含む。受光センサ110の各受光素子は、それぞれ異なる波長の光を受光し、受光した光強度を表す受光信号を出力する。受光センサ110は、制御回路140(図1)に電気的に接続されており、受光センサ110の各受光素子が受光した波長ごとの光強度を表す受光信号は、制御回路140へ出力される。反射特性測定装置100は、上記のように、積分球1、光源105、受光光学系9、分光部21、及び測色計制御部151によって構成される分光測色計(光学測定部の一例に相当)を含む。
【0024】
カメラ120(撮像部の一例に相当)は、測定対象3の正反射を介して、積分球1の内壁1aの一部である撮像領域1bを撮像する。カメラ120は、測定開口5の開口面の法線に対して30°~60°の範囲内の所定角度傾いた角度から、測定対象3を視認するように配置されている。カメラ120は、制御回路140(図1)に電気的に接続されており、撮像により得られた画像を制御回路140へ出力する。
【0025】
図5は、物体における光の反射を説明する図である。図6は、積分球1の撮像領域1bに設けられた基準反射部及び基準反射部が撮像された画像を概略的に示す図である。
【0026】
図5において、物体MTが鏡面のときに、入射光ILが物体MTに入射すると、入射角θと同じ反射角θで、正反射光(鏡面反射光)SRLが出射される。一方、物体MTが完全拡散反射面のときに、入射光ILが物体MTに入射すると、全ての方向に均一に反射された、ランベルトの余弦則に従う拡散反射光DRLが出射される。
【0027】
物体MTが鏡面と完全拡散反射面との間の粗面のときに、入射光ILが物体MTに入射すると、表面散乱反射光SSLが出射される。表面散乱反射光SSLは、正反射光SRLの方向を中心に、粗面の面粗さに対応する角度で広がっている。光学シミュレーションのモデルでは、広がり成分は、正反射角(図5ではθ)の延びる方向(正反射光SRLの方向)に対して任意の反射広がり角を標準偏差とする正規分布になると仮定されている。反射広がり角が0°の表面散乱反射光SSLは、正反射光SRLに等しい。
【0028】
積分球1の撮像領域1bには、周囲と反射率の異なる基準反射部31(図6)が設けられている。基準反射部31は、本実施形態では、図6に示されるように、黒色の十字形状を有している。測定対象3の反射広がり角が0°(つまり測定対象3が鏡面)の場合には、カメラ120によって撮像されると、基準反射部31の鮮明な画像が得られる。これに対して、測定対象3の反射広がり角が0°を超える(つまり測定対象3が粗面の)場合には、正反射方向の反射光は、正反射光SRLではなくて、広がりを持つ表面散乱反射光SSLとなる。このため、図6に示されるように、反射広がり角が大きくなるにつれて、基準反射部31の画像はぼやけて、画像のエッジが、より不鮮明になる。画像情報記憶部171(図1)には、複数の反射広がり角と、その複数の反射広がり角に対応する基準反射部31の複数の画像情報との第1対応関係が、事前に求められて保存されている。
【0029】
図7は、カメラ120によって撮像された基準反射部31の画像31Aの一例を示す図である。図8は、複数の反射広がり角に対する基準反射部31の画像31Aの画素値の一例を示す図である。図9は、図8における反射広がり角0°の基準画像に対する他の反射広がり角の画像の画素値の差分を示す図である。図10は、画素値の差分の絶対値の積分値と反射広がり角との第1対応関係を示す図である。図7図10を用いて、測定対象3の反射広がり角を求める手法の一例が説明される。
【0030】
事前に、反射広がり角が既知の複数の基準試料が積分球1の測定開口5に配置され、カメラ120によって基準反射部31が撮像されて、基準反射部31の画像が、それぞれ得られる。次に、例えば図7において、カメラ120によって撮像された基準反射部31の画像31Aの断面CSに沿った位置の画素値が抽出される。図8には、反射広がり角0°、0.5°、1.0°、2.0°の基準試料が用いられたときの、基準反射部31の画像における断面CSに沿った位置の画素値が示されている。
【0031】
次に、反射広がり角0°の基準画像に対する、他の反射広がり角の画像の画素値の差分が算出される。図9には、反射広がり角0°の基準画像に対する、反射広がり角0.5°、1.0°、2.0°の画像の画素値の差分が、それぞれ示されている。図10には、これらの画素値の差分の絶対値を積分した積分値(基準反射部の画像情報の一例に相当)と反射広がり角との第1対応関係が示されている。図10に示される第1対応関係が、画像情報記憶部171に予め記憶されている。反射広がり角0°の基準画像の断面CSに沿った位置の画素値が、画像情報記憶部171に予め記憶されている。
【0032】
反射特性測定装置100で測定する際には、測定対象3が積分球1の測定開口5に配置された状態で、カメラ制御部152(撮像制御部の一例に相当)は、カメラ120を制御して、基準反射部31を撮像する。補正処理部153は、撮像画像の断面CSに沿った位置の画素値を抽出する。補正処理部153は、画像情報記憶部171に記憶されている反射広がり角0°の基準画像の断面CSに沿った位置の画素値に対する、撮像画像の断面CSに沿った位置の画素値の差分を算出する。補正処理部153は、この差分の絶対値を積分した積分値を算出し、算出した積分値に対応する反射広がり角を、画像情報記憶部171に記憶されている第1対応関係(図10)から求める。この求められた反射広がり角が、測定対象3の反射広がり角である。
【0033】
なお、基準反射部31は、カメラ120の光軸を含み測定開口5の中心及び基準反射部31の中心を通る基準平面に平行な方向の長さと基準平面に直交する方向の長さとが、カメラ120により撮像された画像において略同じ値になるように、形成されている。例えば、基準反射部31は、基準平面に平行な方向のサイズが、基準平面に直交する方向のサイズに比べて、大きくなるように形成されている。本実施形態では、例えば、図6に示される十字形状の基準反射部31において、縦軸の幅が横軸の幅より長くなるように形成され、横軸の長さが縦軸の長さより長くなるように形成されている。
【0034】
図11は、表面反射率ごとの測色値と反射広がり角との第2対応関係の一例を概略的に示す図である。図11を用いて、第1実施形態における測定対象3の表面反射率を求める手法の一例が説明される。
【0035】
事前に、積分球1のモデル(例えばd/8ジオメトリ、積分球1の直径、測定開口5の直径、測定対象上の測定径、光源105の種類等)が設定され、測色値の波長が設定されて、光学シミュレーションが実行される。この光学シミュレーションにおいて、図11の例では、入力データとして、測定対象の表面反射率が4%、50%、90%の3種類に設定され、かつ、測定対象の反射広がり角が0°~8°の範囲に設定される。光学シミュレーションの結果として、それぞれの入力データについて、SCI反射特性の測色値とSCE反射特性の測色値とが得られる。
【0036】
SCI反射特性の測色値からSCE反射特性の測色値を減算した測色値(SCI-SCE)が算出され、測色値(SCI-SCE)を縦軸とし、反射広がり角を横軸として、表面反射率ごとに光学シミュレーションの結果をまとめると図11が得られる。図11では、表面反射率が4%、50%、90%のときの測色値(SCI-SCE)と反射広がり角との第2対応関係4CC、5CC、9CCが、それぞれ示されている。この図11に示される、複数(図11の例では3個)の表面反射率ごとの測色値(SCI-SCE)と反射広がり角との第2対応関係が、反射率情報記憶部172(図1)に予め記憶される。
【0037】
反射特性測定装置100で測定する際には、測定対象3が積分球1の測定開口5に配置された状態で、測色計制御部151(測定制御部の一例に相当)は、閉塞部材17を閉塞位置に配置してトラップ用開口15を閉じて光源105を発光させて、受光センサ110から出力される波長ごとの受光信号をSCI反射特性の測色値として取得し、メモリ160に一時的に保存する。次に、測色計制御部151は、閉塞部材17を退避位置に配置してトラップ用開口15を開いて光源105を発光させて、受光センサ110から出力される波長ごとの受光信号をSCE反射特性の測色値として取得し、メモリ160に一時的に保存する。
【0038】
補正処理部153は、光学シミュレーションで設定された波長の、SCI反射特性の測色値からSCE反射特性の測色値を減算して、測色値(SCI-SCE)を算出する。光源105が発光されたときに、カメラ制御部152(図1)は、カメラ120を動作させて基準反射部31を撮像する。補正処理部153は、上述のように、測定対象3の反射広がり角を求める。
【0039】
補正処理部153は、測色値(SCI-SCE)と、測定対象3の反射広がり角とに基づき、反射率情報記憶部172(図1)に記憶されている図11の第2対応関係から、測定対象3の表面反射率を求める。例えば、求められた測定対象3の反射広がり角が約2°で、測色値(SCI-SCE)が約84であれば、測定対象3の表面反射率は、約90%と求められる。
【0040】
表面反射率が約4%の材質は、例えば、屈折率が約1.5の誘電体(プラスチック又はガラス等)である。表面反射率が約50%の材質は、例えば、鉄等の反射率の低い金属である。表面反射率が約90%の材質は、例えば、アルミニウム等の反射率の高い金属である。なお、屈折率が約1.5の誘電体の材質では、一般に、垂直入射のときに表面反射率は約4%となるが、60°入射のときは表面反射率が約10%となる。一方、金属のような材質では、表面反射率は入射角にあまり依存しない。
【0041】
図12は、特定サンプルを測定したときの分光測色計の測定誤差を概略的に示す図である。図13は、図12の測定誤差を補正するための分光測色計の補正量を概略的に示す図である。図14は、分光測色計の補正量の異なる例を概略的に示す図である。図12図14を用いて、分光測色計の補正手法の一例が説明される。
【0042】
図12において、特定サンプルSS1~SS5は、それぞれ、分光測色計の基準機で値付けされた標準試料である。特定サンプルSS1~SS5は、例えば、可視光波長域において凡そ一定の反射率を示し、反射率が0%~100%の間でサンプル毎に凡そ等間隔に反射率が異なる表面を持つ平板で構成されている。基準機の測定値は、予め定められた基準波長における測定値である。分光測色計の測定値は、それぞれ、特定サンプルSS1~SS5を積分球1の測定開口5に配置して測定したときの、上記基準波長における測定値である。分光測色計の測定誤差は、それぞれ、特定サンプルSS1~SS5毎に、分光測色計の測定値から基準機の測定値を減算した値である。なお、本実施形態では、図12に示される基準機の測定値及び分光測色計の測定値は、例えばSCI反射特性の測定値である。
【0043】
図13において、横軸は、分光測色計の測定値を表し、縦軸は、分光測色計の補正量を表す。黒丸は、それぞれ、図12に示される分光測色計の測定誤差をプロットしたものである。すなわち、測定誤差を補正量とすることにより、測定値から補正量を減算すると、測定誤差をゼロに近づけることができる。曲線は、プロットされた黒丸との誤差が最小になるように最小二乗法で係数が求められた2次多項式(補正関係式の一例に相当)で表されている。この2次多項式が事前に求められ、分光測色計の測定値と分光測色計の補正量との第3対応関係として、補正情報記憶部173(図1)に予め記憶されている。
【0044】
図14において、横軸は、分光測色計の測定値を表し、縦軸は、分光測色計の補正量を表す。黒丸は、それぞれ、表面反射率が4%の特定サンプルを用いたときの、分光測色計の測定誤差をプロットしたものである。実線は、プロットされた黒丸との誤差が最小になるように最小二乗法で係数が求められた2次多項式で表されたものである。白丸は、それぞれ、表面反射率が40%の特定サンプルを用いたときの、分光測色計の測定誤差をプロットしたものである。破線は、プロットされた白丸との誤差が最小になるように最小二乗法で係数が求められた2次多項式で表されたものである。なお、本実施形態では、図14に示される分光測色計の測定値及び測定誤差の算出に用いた基準機の測定値も、例えばSCI反射特性の測定値である。
【0045】
図14の例では、表面反射率が4%の2次多項式(補正関係式の一例に相当)と、表面反射率が40%の2次多項式(補正関係式の一例に相当)とが事前に求められて、分光測色計の測定値と分光測色計の補正量との第3対応関係として、補正情報記憶部173(図1)に予め記憶されている。
【0046】
反射特性測定装置100で測定する際には、求められた測定対象3の表面反射率が4%のときは、補正処理部153(図1)は、実線(表面反射率が4%)の2次多項式を補正情報記憶部173から読み出して、補正量を求める。一方、求められた測定対象3の表面反射率が40%のときは、補正処理部153(図1)は、破線(表面反射率が40%)の2次多項式を補正情報記憶部173から読み出して、補正量を求める。
【0047】
なお、図14の例では、表面反射率が4%と40%との2種類の補正量が示されているが、これに限られない。更に、例えば表面反射率が90%の特定サンプルを用いて、分光測色計の測定誤差を求め、表面反射率が90%の2次多項式を事前に求めて、補正情報記憶部173(図1)に予め記憶するようにしてもよい。
【0048】
(第1実施形態の動作)
図15は、補正関係式を求める手順を概略的に示すフローチャートである。図15の動作は、反射特性測定装置100を用いた測定が行われる前に実行される。
【0049】
ステップS1500において、測色計制御部151は、分光測色計の基準機で値付けされた複数の特定サンプル(図12の例では、特定サンプルSS1~SS5)が、それぞれ積分球1の測定開口5に配置された状態で、測色を行う。ステップS1505において、補正処理部153は、各特定サンプルの測定値の、基準機の測定値に対する測定誤差を算出する。ステップS1510において、補正処理部153は、測定誤差を用いて補正関係式(本実施形態では2次多項式)を求め、求められた補正関係式を補正情報記憶部173に保存する。
【0050】
図15の動作は、表面反射率ごとに繰り返して実行される。例えば特定サンプルSS1~SS5の表面反射率が10%の場合には、次に、例えば表面反射率が50%の5個の特定サンプルを用いて、ステップS1500~S1510が実行され、更に、例えば表面反射率が90%の5個の特定サンプルを用いて、ステップS1500~S1510が実行される。なお、後述の第2実施形態で図24を用いて説明されるように、測定条件が変更される場合には、図15の動作は、さらに、測定条件ごとに繰り返して実行される。
【0051】
図16は、第1実施形態における反射特性測定装置100の測定動作の手順を概略的に示すフローチャートである。例えばユーザにより、積分球1の測定開口5が測定対象3の表面に接触するように反射特性測定装置100が配置され、反射特性測定装置100の表面に設けられた測定スイッチ(図示省略)が操作されると、図16に示される動作が開始される。
【0052】
ステップS1600において、測色計制御部151は、測色用の光源105を発光させる。ステップS1605(撮像工程の一例に相当)において、カメラ制御部152は、カメラ120を動作させて基準反射部31を撮像させ、基準反射部31の画像をメモリ160に保存する。
【0053】
ステップS1610(第1取得工程の一例に相当)において、補正処理部153は、画像情報記憶部171に記憶されている反射広がり角0°の基準画像の断面CSに沿った位置の画素値と、メモリ160に保存された基準反射部31の画像の断面CSに沿った位置の画素値と、画像情報記憶部171に記憶されている上記積分値と反射広がり角との第1対応関係(図10)と、を用いて、測定対象3の反射広がり角を求める。
【0054】
ステップS1615(測定工程の一例に相当)において、測色計制御部151は、測定対象3の測色を行う。すなわち、測色計制御部151は、受光センサ110の各受光素子から出力される受光信号をメモリ160に保存する。このとき、測色計制御部151は、移動機構115を動作させて閉塞部材17を移動させ、トラップ用開口15が開いた状態でSCE反射特性の測色値を測定し、トラップ用開口15が閉じた状態でSCI反射特性の測色値を測定する。
【0055】
ステップS1620(第2取得工程の一例に相当)において、補正処理部153は、求められた反射広がり角と、測定されたSCE反射特性の測色値及びSCI反射特性の測色値と、反射率情報記憶部172に記憶されている、複数の表面反射率ごとの、測色値(SCI-SCE)と反射広がり角との第2対応関係(図11)と、を用いて、測定対象3の表面反射率を求める。
【0056】
ステップS1625において、補正処理部153は、補正情報記憶部173に記憶されている補正関係式のうち、求められた表面反射率に対応する補正関係式を補正情報記憶部173から読み出す。ステップS1630(第3取得工程の一例に相当)において、補正処理部153は、読み出した補正関係式を用いて、分光測色計の測定値に対応する補正量を求める。ステップS1635(第4取得工程の一例に相当)において、補正処理部153は、分光測色計の測定値から補正量を減算し、減算結果を分光測色計の補正後の測定値である補正測定値として、メモリ160に保存する。
【0057】
(第1実施形態の効果)
以上説明されたように、第1実施形態によれば、測定対象3の正反射を介してカメラ120により撮像された、基準反射部31の画像を用いて、測定対象3の反射広がり角が求められる。求められた測定対象3の反射広がり角と測色値(SCI-SCE)とを用いて、表面反射率ごとの測色値(SCI-SCE)と反射広がり角との第2対応関係から、測定対象3の表面反射率が求められる。分光測色計の測定値と分光測色計の補正量との関係を表す2次多項式のうち、求められた測定対象3の表面反射率に対応する2次多項式が読み出され、分光測色計の測定値に対応する補正量が求められる。求められた補正量が分光測色計の測定値から減算されて、減算結果が、分光測色計の補正後の測定値である補正測定値として、メモリ160に保存される。このように、測定対象3の表面反射率を求めて、測定対象3の表面反射率に対応する2次多項式を用いて補正されるので、精度良く測定誤差を低減することができる。
【0058】
第1実施形態によれば、カメラ120は、測定開口5の開口面の法線に対して30°から60°までの範囲内の所定角度傾いた角度から測定対象3を視認するように、配置されている。測定開口5の開口面の法線に対して30°未満の上記法線に対して平行に近い角度から測定対象3を視認すると、測定対象3の正反射を介して撮像される範囲は、カメラ120に近くなるため、基準反射部31の大きさ及び位置に制約が生じる。一方、測定開口5の開口面の法線に対して60°を超えるような大きい角度θから長さLの測定対象3を視認すると、測定対象3の見た目の大きさがLcosθと小さくなる。このため、測定対象3の正反射を介して撮像される基準反射部31の画像の大きさが、基準反射部31の大きさに比べて小さくなるので、反射広がり角を求める精度が低下する懸念がある。これに対して、第1実施形態によれば、測定開口5の開口面の法線に対して30°から60°までの範囲内の所定角度傾いた角度から、測定対象3が視認されるので、上記のような問題が生じないという利点がある。
【0059】
第1実施形態によれば、基準反射部31は、カメラ120の光軸を含み測定開口5の中心及び基準反射部31の中心を通る基準平面に平行な方向の長さと基準平面に直交する方向の長さとが、カメラ120により撮像された画像において略同じ値になるように、形成されている。カメラ120が測定対象3の正反射を介して基準反射部31を撮像する際に、カメラ120の光軸に対して傾いた方向については、撮像された基準反射部31の画像が縮小される。基準反射部31の画像が小さくなると、反射広がり角を求める精度が低下する懸念がある。これに対して、第1実施形態によれば、上記のように形成されているので、上記のような問題が生じないという利点がある。
【0060】
(第2実施形態の構成)
図17は、第2実施形態における反射特性測定装置200の電気的構成例を概略的に示すブロック図である。図18は、反射特性測定装置200の光学的構成例を概略的に示す、図3と同じ方向から見た断面図である。
【0061】
図17に示されるように、反射特性測定装置200は、光源105、受光センサ110、移動機構115、カメラ120、光沢測定用の光源125、光沢測定用の受光センサ130、制御回路140A、及び記憶装置170Aを備える。記憶装置170Aは、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶装置170Aは、画像情報記憶部171、反射率情報記憶部172A、補正情報記憶部173Aを含む。各記憶部171,172A,173Aは、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、各記憶部171,172A,173Aは、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。各記憶部172A,173Aの記憶内容は、後述される。
【0062】
制御回路140Aは、CPU150A、メモリ160A、周辺回路(図示省略)を含む。メモリ160Aは、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ160Aは、例えばROM、RAM、EEPROMなどを含む。メモリ160Aの例えばROMは、CPU150Aを動作させる本実施形態の制御プログラムを記憶する。CPU150Aは、メモリ160Aに記憶された本実施形態の制御プログラムにしたがって動作することによって、測色計制御部151、カメラ制御部152、補正処理部153A、光沢計制御部154として機能する。測色計制御部151、カメラ制御部152、補正処理部153A、光沢計制御部154の機能は、後述される。
【0063】
図18に示されるように、反射特性測定装置200は、積分球1Aを備える。積分球1A(照明光学系の一例に相当)は、第1実施形態の積分球1と同様に、その内壁1aに高拡散、高反射率の白色拡散反射塗料が塗布された中空の球である。積分球1Aは、測定開口5、光源用開口7、受光用開口11、カメラ用開口13、トラップ用開口15、閉塞部材17に加えて、光沢測定用の光源125からの照明光を入射させるための光源用開口41と、測定対象3からの反射光を光沢測定用の受光光学系43に入射させるための受光用開口45と、を備える。
【0064】
光源125は、例えば白色のLED等で構成される。光源125と光源用開口41との間に、照明光学系47が配置されている。照明光学系47は、レンズ等からなり、照明光学系47の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して60°傾斜するように配置されている。照明光学系47は、光源125からの照明光を平行光にして、測定開口5の開口面の法線に対して60°傾斜する方向から、測定対象3を照明する。
【0065】
受光光学系43は、レンズ等からなり、受光光学系43の光軸が測定開口5の開口面の法線に対して照明光学系47の反対側に60°傾斜するように配置されている。受光光学系43は、測定対象3からの反射光のうち60°傾斜した方向の成分を集光して受光センサ130に結像する。これによって、反射特性測定装置200では、拡散照明、8°受光のd/8ジオメトリと、60°照明、60°受光のジオメトリとが形成されている。
【0066】
受光光学系43と受光センサ130との間に、光学フィルタ49が配置されている。光学フィルタ49は、受光光学系43から受光センサ130に導かれる光のうち、予め定められた分光分布の光を通過させるバンドパスフィルタである。光学フィルタ49の分光透過率と、光源125の分光スペクトルとを乗算することにより光沢計の分光感度が決められる。この第2実施形態では、光学フィルタ49を通過する光の波長範囲が、測色用の受光センサ110に入射する光の波長範囲に一致するような光学フィルタ49が用いられている。一方、測色計では分光反射率が求められるが、求まった分光反射率に対して、光学フィルタ49の分光透過率と光源125の分光スペクトルとを乗算して波長方向に積算することで、光沢計と同じ分光感度で得られる測定値と見做すことができる。
【0067】
受光センサ130(受光部の一例に相当)は、受光素子(例えばフォトダイオード)を含む。受光センサ130の受光素子は、光学フィルタ49を通過した光を受光し、受光した光強度を表す受光信号を出力する。受光センサ130は、制御回路140Aに電気的に接続されており、受光センサ130の受光素子が受光した光強度を表す受光信号は、制御回路140Aへ出力される。
【0068】
反射特性測定装置200は、上記のように、積分球1A、光源105、受光光学系9、分光部21、測色計制御部151によって構成される分光測色計(光学測定部の一例に相当)と、光源125、照明光学系47、受光光学系43、光学フィルタ49、光沢計制御部154によって構成される光沢計(光学測定部の一例に相当)と、を含む。
【0069】
図19は、表面反射率ごとの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係の一例を概略的に示す図である。図19を用いて、第2実施形態における測定対象3の表面反射率を求める手法の一例が説明される。
【0070】
事前に、光沢計のモデル(例えば60°照明/60°受光のジオメトリ、測定開口5の直径、測定対象上の測定径、光源125の種類、光学フィルタ49の通過波長等)が設定されて、光学シミュレーションが実行される。この光学シミュレーションにおいて、図19の例では、入力データとして、測定対象の表面反射率が10%、20%、50%、90%の4種類に設定され、かつ、測定対象の反射広がり角が0°~10°の範囲に設定される。光学シミュレーションの結果として、それぞれの入力データについて、光沢計の測定値が得られる。
【0071】
光沢計の測定値を縦軸とし、反射広がり角を横軸として、表面反射率ごとに光学シミュレーションの結果をまとめると図19が得られる。図19では、表面反射率が10%、20%、50%、90%のときの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係RR、2RR、5RR、9RRが、それぞれ示されている。この図19に示される、表面反射率ごとの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係が、反射率情報記憶部172A(図17)に予め記憶される。
【0072】
反射特性測定装置200で測定する際には、測定対象3が積分球1Aの測定開口5に配置された状態で、光沢計制御部154(測定制御部の一例に相当)は、光源125を発光させて、受光センサ130から出力される受光信号を光沢計の測定値として取得し、メモリ160に一時的に保存する。測色用の光源105が発光されたときに、カメラ制御部152(図17)は、カメラ120を動作させて基準反射部31を撮像する。補正処理部153Aは、第1実施形態と同様に、測定対象3の反射広がり角を求める。
【0073】
補正処理部153Aは、光沢計の測定値と、測定対象3の反射広がり角とに基づき、反射率情報記憶部172A(図17)に記憶されている図19の第2対応関係から、測定対象3の表面反射率を求める。例えば、求められた測定対象3の反射広がり角が約1°で、光沢計の測定値が約3.7GLであれば、測定対象3の表面反射率は、約50%と求められる。
【0074】
図20は、特定サンプルを測定したときの光沢計の測定誤差を概略的に示す図である。図21は、図20の測定誤差を補正するための光沢計の補正量を概略的に示す図である。図20図21を用いて、光沢計の補正手法の一例が説明される。
【0075】
図20において、特定サンプルSS11~SS15は、それぞれ、光沢計の基準機で値付けされた標準試料である。基準機の測定値は、基準となる光沢計による標準試料の測定値である。光沢計の測定値は、それぞれ、特定サンプルSS11~SS15が積分球1Aの測定開口5に配置されて測定されたときの測定値である。分光測色計の測定値は、それぞれ、特定サンプルSS11~SS15が積分球1Aの測定開口5に配置されて測定されたときの分光反射率に対し、光沢計の分光感度を乗算し、波長で積分した値である。光沢計の測定誤差は、それぞれ、特定サンプルSS11~SS15毎に、光沢計の測定値から基準機の測定値を減算した値である。なお、この第2実施形態では、図20に示される分光測色計の測定値は、例えばSCI反射特性の測定値である。
【0076】
図21において、横軸は、分光測色計の測定値を表し、縦軸は、光沢計の補正量を表す。黒丸は、それぞれ、図20に示される光沢計の測定誤差をプロットしたものである。すなわち、測定誤差を補正量とすることにより、測定値から補正量を減算すると、測定誤差をゼロに近づけることができる。曲線は、プロットされた黒丸との誤差が最小になるように最小二乗法で係数が求められた2次多項式(補正関係式の一例に相当)で表されている。この2次多項式が事前に求められて、分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係として、補正情報記憶部173A(図17)に予め記憶されている。
【0077】
(第2実施形態の動作)
図22は、第2実施形態における補正関係式を求める手順を概略的に示すフローチャートである。図22の動作は、反射特性測定装置200を用いた測定が行われる前に実行される。
【0078】
ステップS2200において、測色計制御部151及び光沢計制御部154は、光沢計の基準機で値付けされた複数の特定サンプル(図20の例では、特定サンプルSS11~SS15)が、それぞれ積分球1Aの測定開口5に配置された状態で、測色及び光沢測定を行う。ステップS2205において、補正処理部153Aは、各特定サンプルの光沢計の測定値の、基準機の測定値に対する測定誤差を算出する。ステップS2210において、補正処理部153Aは、測定誤差を用いて補正関係式(本実施形態では2次多項式)を求め、求められた補正関係式を補正情報記憶部173Aに保存する。
【0079】
図22の動作は、表面反射率ごとに繰り返して実行される。例えば特定サンプルSS11~SS15の表面反射率が10%の場合には、次に、例えば表面反射率が50%の5個の特定サンプルを用いて、ステップS2200~S2210が実行され、更に、例えば表面反射率が90%の5個の特定サンプルを用いて、ステップS2200~S2210が実行される。なお、図24を用いて後述されるように、測定条件が変更される場合には、図22の動作は、さらに、測定条件ごとに繰り返して実行される。
【0080】
図23は、第2実施形態における反射特性測定装置200の測定動作の手順を概略的に示すフローチャートである。例えばユーザにより、積分球1Aの測定開口5が測定対象3の表面に接触するように反射特性測定装置200が配置され、反射特性測定装置200の表面に設けられた測定スイッチ(図示省略)が操作されると、図23に示される動作が開始される。
【0081】
ステップS1600~S1605は、図16のステップS1600~S1605と同じである。ステップS2300(第1取得工程の一例に相当)において、補正処理部153Aは、画像情報記憶部171に記憶されている反射広がり角0°の基準画像の断面CSに沿った位置の画素値と、基準反射部31の画像の断面CSに沿った位置の画素値と、画像情報記憶部171に記憶されている上記積分値と反射広がり角との第1対応関係(図10)と、を用いて、測定対象3の反射広がり角を求める。
【0082】
ステップS2305(測定工程の一例に相当)において、分光測色計、光沢計により測定対象3が測定される。すなわち、測色計制御部151は、受光センサ110の各受光素子から出力される受光信号をメモリ160Aに保存する。なお、この第2実施形態では、例えば、測色計制御部151は、移動機構115を動作させて、トラップ用開口15が閉じた状態でSCI反射特性の測色値を測定する。測色計制御部151は、測定終了後、測色用の光源105を消灯する。次いで、光沢計制御部154は、測定対象3の光沢測定を行う。すなわち、光沢計制御部154は、光沢測定用の光源125を発光し、光沢測定用の受光センサ130の受光素子から出力される受光信号をメモリ160Aに保存する。
【0083】
ステップS2310(第2取得工程の一例に相当)において、補正処理部153Aは、求められた反射広がり角と、測定された光沢計の測定値と、反射率情報記憶部172Aに記憶されている、表面反射率ごとの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係(図19)と、を用いて、測定対象3の表面反射率を求める。
【0084】
ステップS2315において、補正処理部153Aは、補正情報記憶部173Aに記憶されている補正関係式のうち、求められた表面反射率に対応する補正関係式を補正情報記憶部173Aから読み出す。ステップS2320(第3取得工程の一例に相当)において、補正処理部153Aは、読み出した補正関係式を用いて、分光測色計の測定値に対応する光沢計の補正量を求める。ステップS2325(第4取得工程の一例に相当)において、補正処理部153Aは、光沢計の測定値から補正量を減算し、減算結果を光沢計の補正後の測定値である補正測定値として、メモリ160Aに保存する。
【0085】
(第2実施形態の効果)
図24は、第2実施形態の反射特性測定装置200で測定可能な測定条件を概略的に示す図である。一般に、反射特性測定装置では、複数の測定条件で測定可能に構成されている。図24において、測色計条件の測定径は、測定対象3からの反射光を受光光学系9が受光する際の反射光の直径である。受光光学系9の入射側(つまり測定対象3側)に、所定の開口径を有する絞りを配置することにより、測定径が規定される。第2実施形態では、受光光学系9は、直径25[mm]以上の範囲の測定対象3からの反射光を受光可能に構成されている。受光光学系9の入射側に、開口径が25,8,4[mm]の絞りを配置すると、それぞれ、測定径が25,8,4[mm]に規定される。
【0086】
測色計条件の測定開口径は、測定対象3が測定開口5に露出する領域の直径である。第2実施形態では、測定開口5の直径は、30[mm]である。測定開口5の直ぐ外側に、開口径が11,7[mm]のマスク板を配置すると、それぞれ、測定開口径が11,7[mm]に規定される。マスク板を配置しなければ、測定開口径は30[mm]となる。
【0087】
光沢計条件の測定径は、測定対象3からの反射光を受光光学系43が受光する際の反射光の直径である。受光光学系43の入射側(つまり測定対象3側)に、所定の開口径を有する絞りを配置することにより、測定径が規定される。第2実施形態では、受光光学系43は、直径10[mm]以上の範囲の測定対象3からの反射光を受光可能に構成されている。受光光学系43の入射側に、開口径が10,3[mm]の絞りを配置すると、それぞれ、測定径が10,3[mm]に規定される。
【0088】
図25図30は、それぞれ、第2実施形態の反射特性測定装置200をモデルとし、図24に示される測定条件の1つで光学シミュレーションを行ったときの、表面反射率が10%、50%、90%における分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係をそれぞれ概略的に示す図である。図25図30において、横軸は、分光測色計の測定値を表し、縦軸は、光沢計の補正量を表す。図25図30の黒丸は、それぞれ、光学シミュレーションの結果として得られた光沢計の測定誤差をプロットしたものである。図25図30の曲線は、プロットされた黒丸との誤差が最小になるように最小二乗法で係数が求められた2次多項式(補正関係式の一例に相当)で表されている。
【0089】
図25図28の測定条件MC1は、光沢計条件の測定径がΦ10[mm]、測色計条件の測定開口径がΦ30[mm]、測定径がΦ25.4[mm]である。図26図29の測定条件MC2は、光沢計条件の測定径がΦ10[mm]、測色計条件の測定開口径がΦ11[mm]、測定径がΦ8[mm]である。図27図30の測定条件MC3は、光沢計条件の測定径がΦ3[mm]、測色計条件の測定開口径がΦ7[mm]、測定径がΦ4[mm]である。図25図27は、SCI反射特性の測定値であり、図28図30は、SCE反射特性の測定値である。
【0090】
図31図36は、それぞれ、図25図30の光沢計の補正量で補正したときの光沢計の各測定値の補正残差を概略的に示す図である。図25図30に示されるように、表面反射率ごとに第3対応関係を備え、測定対象の表面反射率に対応する第3対応関係を用いて補正することにより、図31図36に示されるように、光沢計の各測定値の補正残差を低減できることが明らかとなった。
【0091】
以上説明されたように、第2実施形態によれば、測定対象3の正反射を介してカメラ120により撮像された、基準反射部31の画像を用いて、測定対象3の反射広がり角が求められる。求められた測定対象3の反射広がり角と光沢計の測定値とを用いて、表面反射率ごとの光沢計の測定値と反射広がり角との第2対応関係から、測定対象3の表面反射率が求められる。記憶されている、複数の表面反射率に対応する各2次多項式のうち、求められた測定対象3の表面反射率に対応する2次多項式が読み出され、分光測色計の測定値に対応する光沢計の補正量が求められ、光沢計の測定値から補正量が減算されて、減算結果が、光沢計の補正後の測定値である補正測定値として、メモリ160Aに保存される。このように、測定対象3の表面反射率を求め、求められた測定対象3の表面反射率に対応する2次多項式を用いて補正されるので、測定誤差を精度良く低減することができる。
【0092】
(その他)
(1)上記第1実施形態では、分光測色計の測定値と分光測色計の補正量との第3対応関係として、2次多項式が補正情報記憶部173に予め記憶され、上記第2実施形態では、分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係として、2次多項式が補正情報記憶部173Aに予め記憶されているが、これに限られない。
【0093】
例えば、分光測色計の測定値と分光測色計の補正量との第3対応関係をテーブル形式で表した補正テーブルが補正情報記憶部173に予め記憶されてもよく、分光測色計の測定値と光沢計の補正量との第3対応関係をテーブル形式で表した補正テーブルが補正情報記憶部173Aに予め記憶されてもよい。
【0094】
(2)上記第1、第2実施形態では、積分球1,1Aが照明光学系に含まれる拡散照明、8°受光のd/8ジオメトリが形成されているが、これに限られない。例えば、積分球1,1Aが受光光学系に含まれる8°照明、拡散受光の8/dジオメトリが形成されていてもよい。この場合、上記各実施形態と同様に、カメラ120は、積分球1,1Aに対して配置され、基準反射部31は、積分球1,1Aの内壁1aに設けられてもよい。
【0095】
例えば、積分球が用いられないジオメトリであってもよい。この場合には、反射特性測定装置の筐体の内壁に、周囲と反射率が異なる基準反射部31が設けられてもよい。カメラ120は、測定対象3の正反射を介して、反射特性測定装置の筐体の内壁の基準反射部31が設けられた領域を含む撮像領域を撮像してもよい。
【0096】
(3)上記第1、第2実施形態では、反射広がり角0°に対する反射広がり角の大きさを表す指標として、反射広がり角0°の基準画像に対する、他の反射広がり角の画像の画素値の差分の絶対値を積分した積分値が用いられているが、これに限られない。
【0097】
例えば図8に示される、反射広がり角0°、0.5°、1.0°、2.0°等の基準試料が用いられたときの、基準反射部31の画像における断面CSに沿った位置の画素値が、それぞれの反射広がり角と対応付けられて、画像情報記憶部171に予め記憶されていてもよい。
【0098】
例えば反射特性測定装置100で測定する際には、測定対象3が積分球1の測定開口5に配置された状態で、カメラ制御部152は、カメラ120を制御して、基準反射部31を撮像してもよい。補正処理部153は、撮像画像の断面CSに沿った位置の画素値を抽出してもよい。補正処理部153は、抽出した画素値を、画像情報記憶部171に予め記憶されている、反射広がり角0°、0.5°、1.0°、2.0°等の基準試料が用いられたときの画素値と、1つずつ比較してもよい。補正処理部153は、抽出した画素値と最も相関の高い画素値の反射広がり角を測定対象3の反射広がり角として求めてもよい。
【0099】
(4)上記第1、第2実施形態は、測色計として、分光測色計を備えているが、これに限られない。例えば、測色計として、3刺激値型測色計を備えてもよい。3刺激値型測色計は、それぞれX、Y、Zの等色関数のフィルターを備える3つのセンサーを有する。そこで、この場合には、光沢計の分光感度は、3つのうちいずれかのセンサーの分光感度と一致していればよい。
【0100】
以上のように、本実施形態によれば、測定対象の表面反射率を予め求め、求められた表面反射率に対応する補正量を用いて測定値を補正しているので、測定誤差を精度良く低減することができる。
【0101】
本明細書は、上記のように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下に纏める。
【0102】
第1態様に係る反射特性測定装置は、
測定開口と、
前記測定開口を介して照明光で測定対象を照明する照明光学系、前記照明光で照明された前記測定対象からの反射光を集光する受光光学系、前記受光光学系によって集められた光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力する受光部、及び、前記照明光で前記測定対象が照明されたときに前記受光信号に基づき前記測定対象の反射特性を測定する測定制御部を有する少なくとも1つの光学測定部と、
前記照明光学系及び前記受光光学系の一方に含まれ、入射光を拡散反射する拡散反射面と、
前記測定開口を介して前記測定対象を視認する位置に設けられた撮像部と、
前記撮像部により前記測定対象の正反射を介して撮像される位置に設けられ、前記撮像部の撮像範囲に収まる大きさを有し、反射率が周囲と異なる基準反射部と、
複数の反射広がり角と、前記複数の反射広がり角にそれぞれ対応する前記基準反射部の複数の画像情報との第1対応関係を予め記憶する画像情報記憶部と、
複数の表面反射率ごとに、前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値との第2対応関係をそれぞれ予め記憶する反射率情報記憶部と、
前記複数の表面反射率ごとに、前記光学測定部の測定値と補正量との第3対応関係をそれぞれ予め記憶する補正情報記憶部と、
前記測定対象が前記照明光により照明されたときに前記撮像部を動作させて前記基準反射部を撮像させる撮像制御部と、
前記撮像部により撮像された前記基準反射部の画像から、前記第1対応関係に基づき、前記測定対象の反射広がり角を求め、求められた前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値とから、前記第2対応関係に基づき、前記測定対象の表面反射率を求め、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記第3対応関係と前記光学測定部の測定値とから、前記補正量を求め、前記光学測定部の測定値から前記補正量を減算して、補正測定値を求める補正処理部と、
を備えるものである。
【0103】
第2態様に係る反射特性測定方法は、
測定開口と、
前記測定開口を介して照明光で測定対象を照明する照明光学系、前記照明光で照明された前記測定対象からの反射光を集光する受光光学系、前記受光光学系によって集められた光を受光して受光強度に応じた受光信号を出力する受光部、及び、前記照明光で前記測定対象が照明されたときに前記受光信号に基づき前記測定対象の反射特性を測定する測定制御部を有する少なくとも1つの光学測定部と、
前記照明光学系及び前記受光光学系の一方に含まれ、入射光を拡散反射する拡散反射面と、
前記測定開口を介して前記測定対象を視認する位置に設けられた撮像部と、
前記撮像部により前記測定対象の正反射を介して撮像される位置に設けられ、前記撮像部の撮像範囲に収まる大きさを有し、反射率が周囲と異なる基準反射部と、
を備える反射特定測定装置における反射特性測定方法であって、
前記測定対象が前記照明光により照明されたときに前記撮像部を動作させて前記基準反射部を撮像させる撮像工程と、
複数の反射広がり角と、前記複数の反射広がり角にそれぞれ対応する前記基準反射部の複数の画像情報との第1対応関係に基づき、前記撮像工程において撮像された前記基準反射部の画像から、前記測定対象の反射広がり角を求める第1取得工程と、
前記測定制御部により前記測定対象の反射特性を測定して前記光学測定部の測定値を求める測定工程と、
複数の表面反射率ごとの、前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値との第2対応関係に基づき、求められた前記反射広がり角と前記光学測定部の測定値とから、前記測定対象の表面反射率を求める第2取得工程と、
前記複数の表面反射率ごとの、前記光学測定部の測定値と補正量との第3対応関係のうち、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記第3対応関係と前記光学測定部の測定値とから、前記補正量を求める第3取得工程と、
前記光学測定部の測定値から前記補正量を減算して、補正測定値を求める第4取得工程と、
を備えるものである。
【0104】
第1、第2態様によれば、測定対象が照明光により照明されたときに、測定対象の正反射を介して基準反射部が撮像されて、基準反射部の画像が得られる。測定対象が鏡面のときは、基準反射部の鮮明な画像が得られる。一方、測定対象が粗面のときは、測定対象で光が拡散反射するため、基準反射部のぼやけた画像が得られる。そこで、基準反射部の画像から、第1対応関係に基づき、測定対象の反射広がり角が求められる。求められた反射広がり角と光学測定部の測定値とから、第2対応関係に基づき、測定対象の表面反射率が求められる。求められた測定対象の表面反射率に対応する第3対応関係と光学測定部の測定値とから、補正量が求められ、光学測定部の測定値から補正量が減算されて、補正測定値が求められる。このように、測定対象の表面反射率を予め求め、求められた表面反射率に対応する補正量を用いて測定値を補正しているので、測定誤差を精度良く低減することができる。
【0105】
上記第1態様において、例えば、
前記撮像部は、前記測定開口の開口面の法線に対して30°から60°までの範囲内の所定角度傾いた角度から前記測定対象を視認するように、配置されていてもよい。
【0106】
測定開口の開口面の法線に対して30°未満の上記法線に対して平行に近い角度から測定対象を視認すると、測定対象の正反射を介して撮像される範囲は、撮像部に近くなるため、基準反射部の大きさ及び位置に制約が生じる。一方、測定開口の開口面の法線に対して60°を超えるような大きい角度θから長さLの測定対象を視認すると、測定対象の見た目の大きさがLcosθと小さくなる。このため、測定対象の正反射を介して撮像される基準反射部の画像の大きさが、基準反射部の大きさに比べて小さくなるので、反射広がり角を求める精度が低下する懸念がある。これに対して、この態様によれば、測定開口の開口面の法線に対して30°から60°までの範囲内の所定角度傾いた角度から、測定対象が視認される。したがって、上記のような問題が生じないという利点がある。
【0107】
上記第1態様において、例えば、
前記基準反射部は、前記撮像部の光軸を含み前記測定開口の中心及び前記基準反射部の中心を通る基準平面に平行な方向の長さと前記基準平面に直交する方向の長さとが、前記撮像部により撮像された画像において略同じ値になるように、形成されていてもよい。
【0108】
撮像部が測定対象の正反射を介して基準反射部を撮像する際に、撮像部の光軸に対して傾いた方向については、撮像された基準反射部の画像が縮小される。基準反射部の画像が小さくなると、反射広がり角を求める精度が低下する懸念がある。これに対して、この態様によれば、基準反射部の画像において、撮像部の光軸を含み測定開口の中心及び基準反射部の中心を通る基準平面に平行な方向の長さと基準平面に直交する方向の長さとが、略同じになる。したがって、上記のような問題が生じないという利点がある。例えば、基準反射部を、撮像部の光軸に対して傾いた方向が、撮像部の光軸に平行な方向に比べて、長くなるように形成しておけばよい。
【0109】
上記第1態様において、例えば、
前記拡散反射面は、積分球の内壁により形成されていてもよい。
【0110】
この態様によれば、光学測定部が測色計の場合、積分球が照明光学系に含まれると、d/8ジオメトリ又はd/0ジオメトリの測色計とすることができ、積分球が受光光学系に含まれると、8/dジオメトリ又は0/dジオメトリの測色計とすることができる。
【0111】
上記第1態様において、例えば、
前記補正情報記憶部は、前記複数の表面反射率ごとに、前記光学測定部の測定値と前記補正量との関係を表す補正関係式を、前記第3対応関係としてそれぞれ予め記憶してもよく、
前記補正処理部は、求められた前記測定対象の表面反射率に対応する前記補正関係式を前記補正情報記憶部から読み出し、読み出された前記補正関係式において前記光学測定部の測定値に対応する前記補正量を求めてもよい。
【0112】
測定対象の材質が異なると、測定対象の表面反射率も異なってくる。測定対象の表面反射率が異なると、光学測定部の測定値と補正量との関係も異なってくる。そこで、この態様によれば、複数の表面反射率ごとに、光学測定部の測定値と補正量との関係を表す補正関係式が、それぞれ予め記憶されている。求められた測定対象の表面反射率に対応する補正関係式が読み出され、読み出された補正関係式において光学測定部の測定値に対応する補正量が、求められる。したがって、表面反射率が異なる種々の材質からなる測定対象について、補正精度の低下を防止することができる。
【0113】
上記第1態様において、例えば、
前記光学測定部は、複数であってもよく、
前記複数の光学測定部のそれぞれの分光感度が互いに一致していてもよい。
【0114】
例えば、複数の光学測定部において照明光を発する各光源の分光放射輝度が互いに異なる場合には、各光学測定部の受光部が受光する光のそれぞれの分光スペクトルが異なるものとなる。測定対象によって、波長が異なると表面反射率も異なる場合がある。このため、複数の光学測定部のうち1つの光学測定部の受光部から出力される受光信号に基づく測定値を、他の光学測定部の受光部から出力される受光信号に基づく測定値の補正に使用すると、正確な補正が困難になる場合がある。これに対して、この態様によれば、複数の光学測定部のそれぞれの分光感度が互いに一致しているため、異なる光学測定部の測定値に基づいた補正をより正確に行うことが可能になる。
【0115】
本発明の実施形態が詳細に図示され、かつ、説明されたが、それは単なる図例及び実例であって限定ではない。本発明の範囲は、添付されたクレームの文言によって解釈されるべきである。
【0116】
2018年9月21日に提出された日本国特許出願番号2018-177781の全体の開示は、その全体において参照によりここに組み込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本開示の反射特定測定装置及び該方法は、測定対象の反射特性を測定する装置に用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36