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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】電波中継器及び通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/145 20060101AFI20221220BHJP
   H01Q 21/28 20060101ALI20221220BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20221220BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H04B7/145
H01Q21/28
H01Q1/52
H01Q1/22 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020553860
(86)(22)【出願日】2019-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2019042017
(87)【国際公開番号】W WO2020090682
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】P 2018205585
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】有海 仁章
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-084106(JP,A)
【文献】特開2005-072646(JP,A)
【文献】米国特許第06448930(US,B1)
【文献】特開平08-331028(JP,A)
【文献】特開2000-341189(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0272145(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/145
H01Q 21/28
H01Q 1/52
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側を向く法線ベクトルの向きが異なる第1面及び第2面を備えた支持体の前記第1面に設けられた第1アンテナと、
前記支持体の前記第2面に設けられた第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信した高周波信号を前記第2アンテナまで伝送させ、前記第2アンテナで受信した高周波信号を前記第1アンテナまで伝送させる伝送線路と
を有し、前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、及び前記伝送線路は、前記第1アンテナの指向性と前記第2アンテナの指向性とが異なるように構成されており、
前記第1アンテナから放射される電波の偏波方向と、前記第2アンテナから放射される電波の偏波方向とが平行ではなく、
前記第1アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第1面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が、前記第2アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第2面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度と異なっている電波中継器。
【請求項2】
前記第1アンテナ及び前記第2アンテナの一方の指向性が他方の指向性より鋭い請求項1に記載の電波中継器。
【請求項3】
前記第1面の法線方向に平行で、相互に直交する二平面のうち一方の平面内における前記第1アンテナの指向性が他方の平面内における前記第1アンテナの指向性より鋭い請求項1または2に記載の電波中継器。
【請求項4】
前記第1アンテナから放射される電波のE面が、前記第2アンテナから放射される電波のE面と直交する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電波中継器。
【請求項5】
前記支持体が板状の形状を有し、前記第1面及び前記第2面が前記支持体の相互に反対側を向く2つの面である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電波中継器。
【請求項6】
前記第1面の外側を向く法線ベクトルと、前記第2面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が0度より大きく180度未満である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電波中継器。
【請求項7】
建物内の通信機器に接続され、前記建物の中に設置される屋内アンテナと、
前記建物の外に設置され、前記屋内アンテナから放射された電波を受信し、受信した電波を前記建物の外に向けて放射し、または前記建物の外から到来する電波を受信し、受信した電波を前記屋内アンテナに向けて放射する電波中継器と
を有し、
前記電波中継器は、
板状の支持体の一方の面である第1面に設けられた第1アンテナと、
前記支持体の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信した高周波信号を前記第2アンテナまで伝送させ、前記第2アンテナで受信した高周波信号を前記第1アンテナまで伝送させる伝送線路と
を有し、前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、及び前記伝送線路は、前記第1アンテナの指向性と前記第2アンテナの指向性とが異なるように構成されており、前記第1アンテナが前記建物の外から到来する電波の受信、及び前記建物の外への電波の放射を行い、前記第2アンテナが前記屋内アンテナと電波の送受信を行い、
前記第1アンテナから放射される電波の偏波方向と、前記第2アンテナから放射される電波の偏波方向とが平行ではなく、
前記第1アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第1面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が、前記第2アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第2面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度と異なっている通信システム。
【請求項8】
前記屋内アンテナと前記電波中継器が、それぞれ前記建物の窓ガラスの内側の面及び外側の面に取り付けられており、前記電波中継器の前記第2面と前記屋内アンテナとが前記窓ガラスを挟んで対向している請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
さらに、前記建物の外に設置され、前記電波中継器の前記第1アンテナと電波の送受信を行う無線伝送ノードを有する請求項7または8に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波中継器及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送の電波を受信する共同アンテナをマンション等の共同住宅の屋上に設置し、このアンテナで受信された信号を各戸に分配する共同受信設備が用いられる場合がある。共同アンテナで受信した信号を各戸に分配するミリ波通信システムが下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載されたミリ波通信システムは、共同住宅の屋上に設置されるミリ波送信機からの電波を、各戸のベランダに設置されるミリ波受信機で受信する。このミリ波受信器を、各戸の室内に配置したチューナに接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-357196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたミリ波通信システムでは、ベランダに設置された受信機と室内に設置されたチューナとを接続するために、外壁にケーブルを通すための穴を開けなければならない。本発明の目的は、外壁に穴を開けることなく、建物内と建物の外との間で信号の送受信を行うことが可能な電波中継器及び通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によると、
外側を向く法線ベクトルの向きが異なる第1面及び第2面を備えた支持体の前記第1面に設けられた第1アンテナと、
前記支持体の前記第2面に設けられた第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信した高周波信号を前記第2アンテナまで伝送させ、前記第2アンテナで受信した高周波信号を前記第1アンテナまで伝送させる伝送線路と
を有し、前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、及び前記伝送線路は、前記第1アンテナの指向性と前記第2アンテナの指向性とが異なるように構成されており、
前記第1アンテナから放射される電波の偏波方向と、前記第2アンテナから放射される電波の偏波方向とが平行ではなく、
前記第1アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第1面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が、前記第2アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第2面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度と異なっている電波中継器が提供される。
【0007】
本発明の他の観点によると、
建物内の通信機器に接続され、前記建物の中に設置される屋内アンテナと、
前記建物の外に設置され、前記屋内アンテナから放射された電波を受信し、受信した電波を前記建物の外に向けて放射し、または前記建物の外から到来する電波を受信し、受信した電波を前記屋内アンテナに向けて放射する電波中継器と
を有し、
前記電波中継器は、
板状の支持体の一方の面である第1面に設けられた第1アンテナと、
前記支持体の前記第1面とは反対側の第2面に設けられた第2アンテナと、
前記第1アンテナで受信した高周波信号を前記第2アンテナまで伝送させ、前記第2アンテナで受信した高周波信号を前記第1アンテナまで伝送させる伝送線路と
を有し、前記第1アンテナ、前記第2アンテナ、及び前記伝送線路は、前記第1アンテナの指向性と前記第2アンテナの指向性とが異なるように構成されており、前記第1アンテナが前記建物の外から到来する電波の受信、及び前記建物の外への電波の放射を行い、前記第2アンテナが前記屋内アンテナと電波の送受信を行い、
前記第1アンテナから放射される電波の偏波方向と、前記第2アンテナから放射される電波の偏波方向とが平行ではなく、
前記第1アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第1面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が、前記第2アンテナの放射エネルギが最大となる方向と前記第2面の外側を向く法線ベクトルとのなす角度と異なっている通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
建物の外から到来する電波を第1アンテナが受信し、第2アンテナから建物内に向けて電波を放射するように電波中継器を設置すると、建物の外壁に穴を開けることなく、建物の内外で通信を行うことが可能になる。建物の外側を向く第1アンテナの指向性と、建物の内側を向く第2アンテナの指向性とが同一である場合と比べて、電波環境に応じて柔軟に対応することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1A及び図1Bは、それぞれ第1実施例による電波中継器の斜視図である。
図2図2は、第1実施例の第1アンテナのパッチと、第2アンテナのパッチとの接続構成を示す模式図である。
図3図3は、第1実施例による通信システムを水平方向から見た概略図である。
図4図4は、第1実施例の変形例による通信システムを水平方向から見た概略図である。
図5図5Aは、第2実施例による電波中継器の第1面側から見た斜視図であり、図5Bは、第2実施例による電波中継器の第2面側から見た斜視図である。
図6図6は、第2実施例による電波中継器の第1アンテナのパッチと第2アンテナのパッチとの接続構成を示す模式図である。
図7図7A及び図7Bは、それぞれ第2実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。
図8図8Aは、第3実施例による電波中継器の第1面側から見た斜視図であり、図8Bは、第3実施例による電波中継器の第2面側から見た斜視図である。
図9図9A及び図9Bは、それぞれ第3実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。
図10図10は、第4実施例による電波中継器の第1アンテナのパッチと第2アンテナのパッチとの接続構成を示す模式図である。
図11図11A及び図11Bは、それぞれ第4実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。
図12図12は、第5実施例による電波中継器の第1アンテナのパッチと第2アンテナのパッチとの接続構成を示す模式図である。
図13図13は、第6実施例による電波中継器の第1アンテナのパッチと、第2アンテナのパッチとの接続構成を示す模式図である。
図14図14A及び図14Bは、それぞれ第7実施例による電波中継器の平板状の支持体を、第1面21側及び第2面22側から見たときの構成要素のレイアウトを示す図であり、図14Cは、第7実施例による電波中継器の断面構造を示す図である。
図15図15A及び図15Bは、それぞれ第8実施例による電波中継器の斜視図及び平面図である。
図16図16A及び図16Bは、それぞれ第9実施例による電波中継器の斜視図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施例]
図1Aから図3までの図面を参照して、第1実施例による電波中継器及び通信システムについて説明する。
【0011】
図1A及び図1Bは、それぞれ第1実施例による電波中継器20の斜視図である。第1実施例による電波中継器20は、板状の支持体25、第1アンテナ31、及び第2アンテナ32を含む。板状の支持体25の一方の面である第1面21に、第1アンテナ31が設けられており、反対側の第2面22に、第2アンテナ32が設けられている。支持体25には、例えば誘電体基板が用いられる。
【0012】
図1Aは、第1面21側から見た電波中継器20の斜視図であり、図1Bは、第2面22側から見た電波中継器20の斜視図である。支持体25の厚さ方向をz軸方向とするxyz直交座標系を定義する。第1面21及び第2面22は、共にxy面に平行である。第1面21から第2面22に向かう方向をz軸の正の向きと定義する。第1面21の外側を向く法線ベクトルと、第2面22の外側を向く法線ベクトルとは、相互に反対側を向いている。第1面21の外側を向く法線ベクトルはz軸の負の側を向き、第2面22の外側を向く法線ベクトルはz軸の正の側を向いている。
【0013】
第1アンテナ31及び第2アンテナ32は、共にパッチアレイアンテナである。第1アンテナ31は、y軸方向を行方向としx軸方向を列方向とする4行4列の行列状に配置された16個のパッチ33を含む。第2アンテナ32は、y軸方向を行方向としx軸方向を列方向とする8行8列の行列状に配置された64個のパッチ34を含む。第1アンテナ31のパッチ33及び第2アンテナ32のパッチ34の共振周波数は等しい。なお、両者の共振周波数を厳密に一致させる必要はなく、両者の共振周波数が多少ずれていても、電波中継器としての十分な特性が得られる。
【0014】
支持体25の内部に伝送線路が設けられている。この伝送線路は、第1アンテナ31で受信した高周波信号を第2アンテナ32まで伝送させ、第2アンテナ32で受信した高周波信号を第1アンテナ31まで伝送させる導波路として機能する。この伝送線路には、例えばストリップラインが用いられる。
【0015】
図2は、第1アンテナ31のパッチ33と、第2アンテナ32のパッチ34との接続構成を示す模式図である。1本の伝送線路40の一端の分岐点45からトーナメント表(系統図)形に分岐した複数の伝送線路41が、それぞれ第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35に接続されている。同様に、1本の伝送線路40の他の分岐点46からトーナメント表(系統図)形に分岐した複数の伝送線路42が、それぞれ第2アンテナ32の複数のパッチ34の給電点36に接続されている。なお、伝送線路40の長さをゼロとし、一方の分岐点45と他方の分岐点46とを一致させてもよい。
【0016】
第1アンテナ31の複数のパッチ33の各々の給電点35は、パッチ33の幾何中心からx軸の負の方向にずれた位置に配置されている。同様に、第2アンテナ32の複数のパッチ34の各々の給電点36も、パッチ34の幾何中心からx軸の負の方向にずれた位置に配置されている。このため、第1アンテナ31及び第2アンテナ32から放射される電波のE面がx軸に平行になる。
【0017】
第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35から分岐点45までの伝送線路41の線路長は、すべてのパッチ33において等しい。同様に、第2アンテナ32の複数のパッチ34の給電点36から分岐点46までの伝送線路42の線路長は、すべてのパッチ34において等しい。
【0018】
次に、第1実施例による電波中継器20の動作について説明する。第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35から分岐点45までの伝送線路41の長さが、すべてのパッチ33で同一であるため、すべてのパッチ33は同一の位相で励振される。このため、第1アンテナ31のメインビームは、支持体25の第1面21(図1A)の正面方向(z軸の負の方向)を向く。同様に、第2アンテナ32のメインビームは、支持体25の第2面(図1B)の正面方向(z軸の正の方向)を向く。
【0019】
第1面21(図1A)の正面方向から到来した電波を第1アンテナ31が受信すると、受信された高周波信号が伝送線路41、40、42を介して第2アンテナ32のパッチ34まで伝送され、複数のパッチ34が同位相で励振される。その結果、第2アンテナ32から第2面22(図1B)の正面方向に電波が放射される。逆に、第2面22(図1B)の正面方向から到来した電波を第2アンテナ32が受信すると、第1アンテナ31から第1面21(図1A)の正面方向に電波が放射される。
【0020】
第2アンテナ32のパッチ34が第1アンテナ31のパッチ33より多いため、第2アンテナ32の指向性が第1アンテナ31の指向性より鋭い。第1アンテナ31が向く空間においては、通信可能距離として遠い距離をカバーすることができる。第2アンテナ32が向く空間においては、第2面22の正面方向に放射する電波の強度を高めるとともに、正面方向から到来する電波の受信感度を高めることができる。このように、第1アンテナ31の指向性と第2アンテナ32の指向性とが異なっている。
【0021】
図3は、第1実施例による通信システムの概略断面図である。この通信システムは、電波中継器20、屋内アンテナ50及び無線伝送ノード60を含む。電波中継器20として、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B、及び図2)が用いられる。電波中継器20は、マンション等の建物55の外、例えばベランダ51に、第1アンテナ31が建物55の外を向き、第2アンテナ32が建物55の中を向く姿勢で設置される。建物55の中、例えば窓ガラス56の室内側の面に屋内アンテナ50が設置されている。電波中継器20の第2面22(図1B)が窓ガラス56を介して屋内アンテナ50に対向している。
【0022】
電波中継器20の第1アンテナ31、第2アンテナ32、及び屋内アンテナ50のそれぞれのメインビーム31A、32A、50Aのイメージ形状を破線で示す。第2アンテナ32のメインビーム32Aは屋内アンテナ50の方を向き、屋内アンテナ50のメインビーム50Aは電波中継器20の方を向く。これにより、第2アンテナ32と屋内アンテナ50との間に無線伝送路26が確立される。屋内アンテナ50はケーブル53を介して屋内の通信機器52に接続されている。
【0023】
建物55の外に無線伝送ノード60が設置されている。無線伝送ノード60の送受信アンテナ61は、電波中継器20の第1アンテナ31の電波送受信可能範囲内に配置されている。これにより、建物55の外の無線伝送ノード60と第1アンテナ31との間に無線伝送路27が確立される。
【0024】
次に、第1実施例の優れた効果について説明する。
第1実施例では、電波中継器20と屋内アンテナ50との間で無線伝送路26が確立されるため、建物55の外壁にケーブル通過用の穴を開けることなく、通信機器52と屋外の無線伝送ノード60との間で通信を行うことができる。電波中継器20の第1アンテナ31のメインビーム31Aが第2アンテナ32のメインビーム32Aより広角である。このため、複数の無線伝送ノード60が広い範囲に分布している場合にも、複数の無線伝送ノード60を通信可能範囲内に収めることができる。逆に、第2アンテナ32の指向性が鋭いため、第2アンテナ32の利得を高めることができる。
【0025】
また、第1実施例では、第1アンテナ31及び第2アンテナ32にパッチアレイアンテナを用いている。パッチアンテナの指向性は正面方向に強く、裏面への電波の漏洩が少ない。このため、第1アンテナ31と第2アンテナ32との干渉を抑制することができる。
【0026】
次に、第1実施例の変形例について説明する。
第1実施例では、第1アンテナ31として4行4列のパッチアレイアンテナを用い、第2アンテナ32として8行8列のパッチアレイアンテナを用いたが、パッチの配置は4行4列や8行8列に限定されない。例えば、2行2列、3行3列等の配置にしてもよい。ただし、第2アンテナ32の指向性を第1アンテナ31の指向性より鋭くするために、第2アンテナ32のパッチ34(図1B)の個数を、第1アンテナ31のパッチ33(図1A)の個数より多くすることが好ましい。
【0027】
また、第1実施例では、第1アンテナ31及び第2アンテナ32としてパッチアレイアンテナを用いたが、その他のアレイアンテナを用いてもよい。例えば、複数のモノポールアンテナを行列状に配置したアレイアンテナを用いてもよい。
【0028】
図4は、第1実施例の変形例による通信システムの概略断面図である。本変形例においては、屋内アンテナ50が窓ガラス56の内側の面に取り付けられており、電波中継器20の第2面22(図1B)が窓ガラス56の外側の面に対向する姿勢で、電波中継器20が窓ガラス56の外側の面に取り付けられている。この状態で、電波中継器20の第2面22と屋内アンテナ50とが窓ガラス56を挟んで対向している。
【0029】
本変形例においては、電波中継器20の第2アンテナ32と屋内アンテナ50との距離が短いため、第2アンテナ32と屋内アンテナ50との間で送受信される電波の減衰を少なくすることができる。
【0030】
[第2実施例]
次に、図5Aから図7Bまでの図面を参照して第2実施例による電波中継器及び通信システムについて説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B図2)及び通信システム(図3)と共通の構成については説明を省略する。
【0031】
図5Aは、第2実施例による電波中継器20を第1面21側から見た斜視図であり、図5Bは、第2実施例による電波中継器20を第2面22側から見た斜視図である。支持体25の第1面21に第1アンテナ31(図5A)が設けられており、第2面22に第2アンテナ32(図5B)が設けられている。第1実施例では、第1アンテナ31(図1A)の複数のパッチ33が4行4列に配置されているが、第2実施例では第1アンテナ31の複数のパッチ33が8行4列に配置されている。第2アンテナ32の構成は、第1実施例による電波中継器20の第2アンテナ32(図1B)の構成と同一である。
【0032】
図6は、第2実施例による電波中継器20の第1アンテナ31のパッチ33と第2アンテナ32のパッチ34との接続構成を示す模式図である。図6には、第1アンテナ31の1列分の8個のパッチ33と、第2アンテナ32の1列分の8個のパッチ34とを示している。第1実施例では、図2に示したように、分岐点45から第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35までの伝送線路41の線路長は複数のパッチ33において同一である。
【0033】
これに対し、第2実施例では、分岐点45から第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35までの伝送線路41の線路長は、パッチ33の行ごとに異なっている。例えば、パッチ33の行がx軸の正の側から負の側に1行ずれると、伝送線路41の線路長がΔLだけ長くなる。同一行内の複数のパッチ33については、伝送線路41の線路長は同一である。分岐点46から第2アンテナ32の複数のパッチ34の給電点36までの伝送線路42の線路長は、すべてのパッチ34について同一である。
【0034】
第2実施例では、第1アンテナ31の列方向に並ぶ複数のパッチ33について伝送線路41の線路長に、上述のように差が設けられているため、第1アンテナ31から放射される電波の等位相面38がxy面に対してx軸方向に傾斜する。その結果、第1アンテナ31のメインビームの方向が、正面方向(z軸の負の方向)からx軸の負の方向にチルトする。チルト角θ1は、伝送線路41の線路長の差ΔLに依存する。第2アンテナ32のメインビームは、第1実施例の場合と同様に正面方向(z軸の正の方向)を向く。
【0035】
図7A及び図7Bは、それぞれ第2実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。第1実施例の場合と同様に、電波中継器20が建物55のベランダ51に設置されている。電波中継器20は、x軸の正の方向(パッチ33(図5A)の列方向)が鉛直上向きの姿勢になるように取り付けられる。
【0036】
第1アンテナ31の複数のパッチ33(図5A)は、第1実施例の場合と同様に4列に配置されている。このため、第1アンテナ31のメインビーム31A(図7B)は水平方向に関して広角である。第1アンテナ31の複数のパッチ33(図1A)は、x軸方向には8個配置されている。このため、第1アンテナ31は垂直方向に関して鋭い指向性を持つ。すなわち、第1アンテナ31のメインビーム31A(図7A)の垂直方向への広がりは狭い。さらに、メインビーム31Aは水平方向から下向き(x軸の負の方向)にチルトしている。
【0037】
次に、第2実施例の優れた効果について説明する。
第2実施例においても、第1実施例と同様に、建物55の外壁に穴を開けることなく屋内の通信機器52と屋外の無線伝送ノード60との通信を行うことができる。第1アンテナ31のメインビーム31Aは、水平方向に関しては第1実施例の場合と同様に広い範囲をカバーすることができる。また、垂直方向に関してメインビーム31Aを鋭くしているため、第1実施例の場合よりも第1アンテナ31の利得を高めることができる。
【0038】
第2実施例による電波中継器20は、無線伝送ノード60の送受信アンテナ61が電波中継器20より低い位置に設置されているときに有効である。例えば、第2実施例による電波中継器20は、マンションの高層階のベランダ51に設置するとよい。
【0039】
[第3実施例]
次に、図8Aから図9Bまでの図面を参照して第3実施例による電波中継器及び通信システムについて説明する。以下、第2実施例による電波中継器20及び通信システム(図5Aから図7Bまでの図面)と共通の構成については説明を省略する。
【0040】
図8Aは、第3実施例による電波中継器20を第1面21側から見た斜視図であり、図8Bは、第3実施例による電波中継器20を第2面22側から見た斜視図である。第2実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33(図5A)が8行4列に配置されている。これに対し、第3実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33が8行8列に配置されている。第2アンテナ32の構成は第2実施例による第2アンテナ32の構成と同様である。
【0041】
第3実施例では、第1アンテナ31がx軸方向(垂直方向)及びy軸方向(水平方向)の両方において鋭い指向性を持つ。第2実施例では、x軸方向に並ぶ複数のパッチ33(図6)について伝送線路41の線路長に差を設け、y軸方向に並ぶ複数のパッチ33(図6)については伝送線路41の線路長を同一にしている。これに対し、第3実施例では、x軸方向に並ぶ複数のパッチ33(図6)について伝送線路41の線路長に差を設け、y軸方向に並ぶ複数のパッチ33(図6)についても伝送線路41の線路長に差を設けている。このため、第1アンテナ31のメインビームが、正面方向からx軸方向にチルトするとともに、y軸方向にもチルトする。
【0042】
図9A及び図9Bは、それぞれ第3実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。第1アンテナ31のメインビーム31A及び第2アンテナ32のメインビーム32Aの垂直方向に関する形状は、第2実施例(図7A)の場合と同様である。
【0043】
第3実施例では、水平方向に関しても第1アンテナ31のメインビーム31A(図9B)が細く絞られている。さらに、メインビーム31Aは第1アンテナ31の正面方向からy軸方向にチルトしている。
【0044】
次に、第3実施例の優れた効果について説明する。
第3実施例においても、第2実施例と同様に、建物55の外壁に穴を開けることなく屋内の通信機器52と屋外の無線伝送ノード60との通信を行うことができる。さらに、第3実施例では、第1アンテナ31のメインビーム31Aが第2実施例の第1アンテナ31のメインビーム31A(図7A図7B)よりも細く絞られている。このため、第1アンテナ31の利得をより高めることができる。
【0045】
第3実施例においては、第1アンテナ31のメインビーム31Aを、無線伝送ノード60の送受信アンテナ61の方を向くように、垂直方向及び水平方向にチルトさせるとよい。例えば、チルト角の異なる複数の電波中継器20を準備しておき、電波中継器20の設置位置ごとに最適のチルト角を持つ電波中継器20を選択するとよい。
【0046】
[第4実施例]
次に、図10から図11Bまでの図面を参照して第4実施例による電波中継器及び通信システムについて説明する。以下、第2実施例による電波中継器20(図5A図5B図6)及び通信システム(図7A図7B)と共通の構成については説明を省略する。
【0047】
図10は、第4実施例による電波中継器20の第1アンテナ31のパッチ33と第2アンテナ32のパッチ34との接続構成を示す模式図である。第2実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33(図5A)が8行4列に配置されているが、第4実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33が4行4列に配置されている。図10には、第1アンテナ31の1列分の4個のパッチ33と、第2アンテナ32の1列分の8個のパッチ34とを示している。
【0048】
分岐点45から第1アンテナ31の複数のパッチ33の給電点35までの伝送線路41の線路長は、パッチ33の行ごとに異なっている。例えば、パッチ33の行がx軸の正の側から負の側に1行ずれると、伝送線路41の線路長がΔLだけ長くなる。このため、第1アンテナ31から放射される電波の等位相面38がxy面からx軸方向に傾斜する。その結果、第1アンテナ31のメインビームが正面方向からx軸の負の方向にチルトする。
【0049】
図11A及び図11Bは、それぞれ第4実施例による通信システムを水平方向から見た概略図及び上方から見た概略図である。第1アンテナ31のメインビーム31Aは、第2アンテナ32のメインビーム32Aよりも広角である。第1アンテナ31のメインビーム31A(図11A)は、第1アンテナ31の正面方向から下方(x軸の負の方向)にチルトしている。
【0050】
次に、第4実施例の優れた効果については説明する。
第4実施例では、水平方向に関して第2実施例(図7B)と同様に、第1アンテナ31が広い範囲をカバーする。垂直方向に関しては、第1アンテナ31が、第2実施例(図7A)の場合よりも広い範囲をカバーすることができる。複数の無線伝送ノード60が垂直方向に分布している場合、第4実施例による電波中継器20を採用するとよい。
【0051】
[第5実施例]
次に、図12を参照して第5実施例による電波中継器20について説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0052】
図12は、第5実施例による電波中継器20の第1アンテナ31のパッチ33と第2アンテナ32のパッチ34との接続構成を示す模式図である。第1実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33(図1A)が4行4列に配置されているが、第5実施例では、第1アンテナ31の複数のパッチ33(図1A)が8行8列に配置されている。第2アンテナ32においても同様に、パッチ34が8行8列に配置されている。図12には、第1アンテナ31の1列分の8個のパッチ33と、第2アンテナ32の1列分の8個のパッチ34とを示している。
【0053】
第1実施例では、1本の伝送線路40(図2)から分岐した複数の伝送線路41がそれぞれ第1アンテナ31のパッチ33に接続され、1本の伝送線路40(図2)から分岐した複数の伝送線路42がそれぞれ第2アンテナ32のパッチ34に接続されている。これに対し、第5実施例では、第1アンテナ31のパッチ33と第2アンテナ32のパッチ34とが1対1に対応しており、対応するパッチ33と34との組ごとに伝送線路48が設けられている。すなわち、1本の伝送線路48が、1つのパッチ33と1つのパッチ34とを接続する。
【0054】
伝送線路48の線路長は、列方向(x軸方向)に関してx軸の負の方向に1行ずれるごとに、伝送線路48の線路長がΔLだけ長くなっている。同一行内のパッチ33とパッチ34との組に関しては、伝送線路48の線路長は等しい。
【0055】
次に、第5実施例による電波中継器20の動作について説明する。
第1アンテナ31に、正面方向に対してx軸方向にチルトした方向から電波が到来すると、複数のパッチ33に高周波電流が発生する。到来電波の等位相面38を破線で示す。x軸方向に隣り合うパッチ33に発生する高周波電流には位相差ΔP1が生ずる。この位相差ΔP1を持つ高周波電流が線路長の異なる伝送線路48を通って第2アンテナ32のパッチ34まで伝送され、第2アンテナ32のパッチ34に高周波電流が発生する。
【0056】
第2アンテナ32のパッチ34に発生する高周波電流には、第1アンテナ31の複数のパッチ33に発生する高周波電流の位相差ΔP1に、伝送線路48の線路長の差ΔLに依存する位相差が加算または減算された位相差ΔP2が発生する。第2アンテナ32から、この位相差ΔP2に基づく方向に電波が放射される。第2アンテナ32から放射される電波の等位相面39を破線で示す。第2アンテナ32に電波が入射する場合にも、同様に、電波の到来方向及び伝送線路48の線路長の差ΔLに応じて決まる方向に、第1アンテナ31から電波が放射される。
【0057】
第1実施例では、第1アンテナ31のメインビーム31A及び第2アンテナ32のメインビーム32A(図3)の方向が固定されている。これに対し、第5実施例による電波中継器20は、第1アンテナ31及び第2アンテナ32の一方のアンテナへの到来電波の伝搬方向を変化させて、他方のアンテナから電波を放射する。このように、第1アンテナ31の放射エネルギが最大となる方向と第1面21の法線とのなす角度が、第2アンテナ32の放射エネルギが最大となる方向と第2面22の法線とのなす角度と異なっている。この場合でも、広い意味で、第1アンテナ31の指向性と第2アンテナ32の指向性とが異なっているということができる。
【0058】
[第6実施例]
次に、図13を参照して第6実施例による電波中継器について説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0059】
図13は、第6実施例による電波中継器20の第1アンテナ31のパッチ33と、第2アンテナ32のパッチ34との接続構成を示す模式図である。第1実施例では、第1アンテナ31のパッチ33の給電点35(図2)が、パッチ33の幾何中心からx軸方向にずれており、第2アンテナ32のパッチ34の給電点36(図2)も、パッチ34の幾何中心からx軸方向にずれている。このため、第1アンテナ31から放射される電波のE面及び第2アンテナ32から放射される電波のE面は、共にy軸に対して垂直である。
【0060】
これに対し、第6実施例においては、第1アンテナ31のパッチ33の給電点35が、パッチ33の幾何中心からy軸方向にずれている。このため、第1アンテナ31から放射される電波のE面はx軸に対して垂直である。このため、第1アンテナ31から放射される電波のE面と、第2アンテナ32から放射される電波のE面とが相互に直交する。
【0061】
次に、第6実施例の優れた効果について説明する。
第6実施例では、電波中継器20に到来する電波のE面と電波中継器20から放射される電波のE面とが相互に直交するため、両者の干渉を低減することができる。
【0062】
次に、第6実施例の変形例について説明する。
第6実施例では、第1アンテナ31から放射される電波のE面と、第2アンテナ32から放射される電波のE面とが相互に直交するが、両者が平行にならないような構成としてもよい。また、第1アンテナ31から放射される電波の偏波方向と、第2アンテナ32から放射される電波の偏波方向とが平行にならない構成にしてもよい。この構成においても、両者が平行である構成と比べて、到来電波と放射電波との干渉を抑制することができる。
【0063】
[第7実施例]
次に、図14A図14B、及び図14Cを参照して第7実施例による電波中継器20について説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B図2)と共通の構成については説明を省略する。第1実施例では、第1アンテナ31及び第2アンテナ32をパッチアレイアンテナで構成しているが、第7実施例では、スロットアレイアンテナで構成している。
【0064】
図14A及び図14Bは、それぞれ第7実施例による電波中継器20の平板状の支持体25を、第1面21側及び第2面22側から見たときの構成要素のレイアウトを示す図である。図14Cは、第7実施例による電波中継器20の断面構造を示す図である。なお、図14Cは、電波中継器20をある平面で切断した断面図を表しているのではなく、支持体25の厚さ方向に関する構成要素の位置関係を表している。支持体25には、例えば金属、樹脂表面に金属メッキした複合材料等を用いることができる。
【0065】
支持体25の第1面21に複数の放射スロット71(図14A図14C)が設けられている。複数の放射スロット71は、例えば4行4列の行列状に配置されている。4つの放射スロット71に対して1つのキャビティ73が設けられている。キャビティ73よりも深い位置に導波路75が設けられている。図14Aにおいて、導波路75にハッチングを付している。導波路75は中心の結合アパーチャ79からトーナメント表(系統図)形に分岐し、結合アパーチャ77を介してキャビティ73に結合している。
【0066】
支持体25の第2面22に複数の放射スロット72(図14B図14C)が設けられている。複数の放射スロット72は、例えば8行8列の行列状に配置されている。4つの放射スロット72に対して1つのキャビティ74が設けられている。キャビティ74よりも深い位置に導波路76が設けられている。図14Bにおいて、導波路76にハッチングを付している。導波路76は中心の結合アパーチャ79からトーナメント表(系統図)形に分岐し、結合アパーチャ78を介してキャビティ74に結合している。
【0067】
放射スロット71、72が、それぞれ第1実施例のパッチ33、34(図2)に対応する。複数の放射スロット71により第1アンテナ31が構成され、複数の放射スロット72により第2アンテナ32が構成される。キャビティ73、導波路75、及び結合アパーチャ77が、第1実施例の伝送線路41(図2)に対応する。キャビティ74、導波路76、及び結合アパーチャ78が、第1実施例の伝送線路42(図2)に対応する。中心の結合アパーチャ79が、第1実施例の伝送線路40(図2)に対応する。このように、第7実施例では、第1アンテナ31と第2アンテナ32とを接続する伝送線路として導波路が用いられる。
【0068】
第7実施例においても、第1実施例と同様に、第1アンテナ31の指向性と第2アンテナ32の指向性とが異なっている。このため、第1実施例と同様の優れた効果が得られる。
【0069】
[第8実施例]
次に、図15A及び図15Bを参照して第8実施例による電波中継器20について説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B図2)と共通の構成については説明を省略する。
【0070】
図15A及び図15Bは、それぞれ第8実施例による電波中継器20の斜視図及び平面図である。図15Bにおいて伝送線路49を模式的に示している。第1実施例では、電波中継器20の支持体25(図1A図1B)が板状の形状を有している。これに対して第8実施例では、支持体25が三角柱状の形状を有している。支持体25の3つの側面のうち1つが第1面21に相当し、他の1つの側面が第2面22に相当する。第1面21の外側を向く法線ベクトルと第2面22の外側を向く法線ベクトルとのなす角度は0度より大きく180度より小さい。
【0071】
第1面21に第1アンテナ31の複数のパッチ33が配置されており、第2面22に第2アンテナ32の複数のパッチ34が配置されている。支持体25の中に伝送線路49が設けられている。伝送線路49は、第1アンテナ31の複数のパッチ33と、第2アンテナ32の複数のパッチ34とを接続する。伝送線路49による接続形態として、第1実施例による電波中継器20の伝送線路40、41(図2)の接続形態と同一の接続形態が採用される。このため、第1アンテナ31のメインビームは第1面21の法線方向を向き、第2アンテナ32のメインビームは第2面22の法線方向を向く。
【0072】
次に、第8実施例の優れた効果について説明する。
第8実施例においても、第1実施例の場合と同様に、第1アンテナ31で受信した電波を第2アンテナ32から放射させ、その逆に第2アンテナ32で受信した電波を第1アンテナ31から放射させることができる。また、第2アンテナ32の指向性が第1アンテナ31の指向性より鋭くなるという効果が得られる。第1実施例では、第1面21の外側を向く法線ベクトルと第2面22の外側を向く法線ベクトルとが相互に反対方向を向いているため、中継される電波の伝搬方向は変化しない。これに対して第8実施例では、第1面21の外側を向く法線ベクトルと第2面22の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が180度未満であるため、中継される電波の伝搬方向を変化させることができる。
【0073】
次に、第8実施例の変形例について説明する。
第8実施例では、支持体25の形状を三角柱としているが、他の形状としてもよい。例えば中空の三角筒としてもよく、四角柱以上の多角柱または多角筒としてもよい。さらに、外側を向く法線ベクトルのなす角度が0度より大きく180度未満の第1面21及び第2面22を持つ不定形の形状としてもよい。
【0074】
また、第8実施例では、伝送線路49による接続形態を第1実施例(図2)の場合と同様にしているが、伝送線路49による接続形態として、第2実施例(図6)、第4実施例(図10)、第5実施例(図12)のいずれかの実施例の接続形態を採用してもよい。
【0075】
[第9実施例]
次に、図16A及び図16Bを参照して第9実施例による電波中継器20について説明する。以下、第1実施例による電波中継器20(図1A図1B)と共通の構成については説明を省略する。
【0076】
図16A及び図16Bは、それぞれ第9実施例による電波中継器20の斜視図及び側面図である。図16Bにおいて、伝送線路49を模式的に示している。第1実施例では、1枚の板状の支持体25の第1面21に第1アンテナ31が設けられ、反対側の第2面22に第2アンテナ32が設けられている。これに対して第9実施例では、支持体25Aの第1面21に第1アンテナ31の複数のパッチ33が設けられており、支持体25Aとは異なる支持体25Bの第2面22に、第2アンテナ32の複数のパッチ34が設けられている。支持体25Aの第1面21の外側を向く法線ベクトルと、支持体25Bの第2面22の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が90度である。
【0077】
第1アンテナ31の複数のパッチ33と第2アンテナ32の複数のパッチ34とは、その個数及び配置が異なっている。
【0078】
支持体25Aと支持体25Bとが、フレキシブル基板28によって接続されている。第1アンテナ31の複数のパッチ33と第2アンテナ32の複数のパッチ34とが、フレキシブル基板28に設けられた伝送線路49によって接続されている。伝送線路49による接続形態は、第1実施例による電波中継器20の場合と同様である。
【0079】
第1アンテナ31のメインビームは第1面21の法線方向を向き、第2アンテナ32のメインビームは第2面22の法線方向を向く。すなわち、両者のメインビームの向く方向は、直角に交差する。
【0080】
次に、第9実施例の優れた効果について説明する。
第9実施例による電波中継器20においては、第1アンテナ31で受信した電波を偏向させて第2アンテナ32から放射させ、その逆に第2アンテナ32で受信した電波を偏向させて第1アンテナ31から放射させることができる。偏向角は直角である。また、指向特性が相対的に広角の方のアンテナにより、広い範囲に分布している送受信ノードと電波の送受信を行うことができる。また、指向特性が相対的に鋭い方のアンテナにより、高い利得を実現することができる。
【0081】
次に、第9実施例の変形例について説明する。
第9実施例では、第1面21の外側を向く法線ベクトルと第2面22の外側を向く法線ベクトルとのなす角度が直角であるが、両者のなす角度をその他の角度にしてもよい。また、第9実施例では、第1アンテナ31及び第2アンテナ32をパッチアレイアンテナで構成しているが、第7実施例(図14A図14B)のようにスロットアレイアンテナで構成してもよい。この場合には、フレキシブル基板28に代えて導波管で支持体25Aと25Bとを接続すればよい。
【0082】
上述の各実施例は例示であり、異なる実施例で示した構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることは言うまでもない。複数の実施例の同様の構成による同様の作用効果については実施例ごとには逐次言及しない。さらに、本発明は上述の実施例に制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【符号の説明】
【0083】
20 電波中継器
21 第1面
22 第2面
25、25A、25B 支持体
26、27 無線伝送路
28 フレキシブル基板
31 第1アンテナ
31A 第1アンテナのメインビーム
32 第2アンテナ
32A 第2アンテナのメインビーム
33 第1アンテナのパッチ
34 第2アンテナのパッチ
35、36 給電点
38、39 等位相面
40、41、42 伝送線路
45、46 分岐点
48、49 伝送線路
50 屋内アンテナ
50A 屋内アンテナのメインビーム
51 ベランダ
52 通信機器
53 ケーブル
55 建物
56 窓ガラス
60 無線伝送ノード
61 送受信アンテナ
71、72 放射スロット
73、74 キャビティ
75、76 導波路
77、78、79 結合アパーチャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16