(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンの新規結晶
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20221220BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20221220BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20221220BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221220BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C07D471/04 104A
A61K31/444
A61P7/02
A61P9/00
A61P43/00 111
C07D471/04 CSP
(21)【出願番号】P 2020557880
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2019046893
(87)【国際公開番号】W WO2020111268
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2018224434
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000185983
【氏名又は名称】小野薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】藤戸 貴之
(72)【発明者】
【氏名】小野 静香
(72)【発明者】
【氏名】大谷 修平
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-218449(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093285(WO,A1)
【文献】特表2015-500868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 471/04
A61K 31/444
A61P 7/02
A61P 9/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)。
【請求項2】
結晶形態である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも2つの回折ピークを有する結晶形態である、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約13.3、約14.1、約14.7、約15.1、約15.8、約16.5、約17.4、約17.7、約18.0、約18.4、約18.9、約19.3、約19.8、約20.6、約20.9、約22.4、約22.8、約23.2、約24.2、約25.0、約25.5、約25.8、約26.3、約27.2、約27.6、約27.9、約28.6、約29.5、および約31.0度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする結晶形態である、請求項2に記載の化合物。
【化1】
【請求項6】
示差走査熱量測定において、オンセット温度が約214℃または発熱ピーク温度が約215℃である結晶形態である、請求項2または3に記載の化合物。
【請求項7】
図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする結晶形態である、請求項6記載の化合物。
【化2】
【請求項8】
共結晶である、請求項1~7記載の化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物を含有する
、医薬組成物。
【請求項10】
血液凝固第XIa因子阻害剤である
、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
血液凝固第XIa因子関連疾患の予防および/または治療剤である
、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
血液凝固第XIa因子関連疾患が血栓塞栓疾患である
、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
血栓塞栓疾患が、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、または心腔もしくは末梢循環における血栓塞栓性障害である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
血栓塞栓疾患が、脳卒中、脳血栓症、脳塞栓症、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、または人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓症および/または血栓塞栓症である、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項15】
血漿カリクレイン阻害剤である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
血漿カリクレイン関連疾患の予防および/または治療剤である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
血漿カリクレイン関連疾患が、網膜症、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、加齢性黄斑変性症、血腫の予防および/または治療、血管透過性増加と関連する障害、浮腫関連疾患、遺伝性血管浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、臨床的に重要な黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、網膜浮腫、神経膠原関連浮腫、脳浮腫、リンパ浮腫、血管浮腫、外傷性脳障害、出血性卒中、脳内出血、脳動脈瘤、動静脈奇形、虚血、または脳虚血である、請求項16記載の医薬組成物。
【請求項18】
血漿カリクレイン関連疾患が、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症、遺伝性血管浮腫、または糖尿病性黄斑浮腫である、請求項16記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンの新規結晶等に関する。
【背景技術】
【0002】
血栓症およびその合併症である血栓塞栓症(以下、血栓塞栓性疾患)は、癌と並んで成人における死亡原因の上位を占め、近年重要な問題となっている。血栓塞栓性疾患は、血栓が血管傷害部位で形成されることにより、もしくはその血栓が遊離して血流に乗って別の血管内に運ばれ血管を閉塞することにより発生する。血栓塞栓性疾患には、例えば深部静脈血栓症と肺塞栓症の総称である静脈血栓塞栓症、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、その他種々の動脈および静脈血栓症等が含まれる。
【0003】
血管の損傷などで血管壁に発現した組織因子は、血液凝固カスケードの起点となり、血中に微量に存在する血液凝固第VII因子と複合体を形成する。本複合体は血液凝固第IX因子および血液凝固第X因子を活性化し、活性化血液凝固第X因子がプロトロンビンをトロンビンへ変換する。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンへ変換し、最終的に不溶性フィブリンが形成する(開始期)。この過程で産生されたトロンビンは、開始期の血栓形成を促すと考えられ、止血に重要と考えられる一方で、血液凝固第XI因子を活性化し、活性化血液凝固第XI因子(以下、FXIaともいう。)を介して爆発的なトロンビン産生を引き起こし(増幅期)、その結果、血栓が増大することが報告されている(非特許文献1-3参照)。
【0004】
血栓塞栓性疾患の治療および/または予防には一般的に抗凝固薬剤が用いられているが、既存の抗凝固薬剤は、優れた抗血栓作用を示す一方で、出血合併症という重篤な副作用が問題となっているか、あるいは出血合併症を引き起こさないために、投与量が制限され、十分な抗血栓作用を発揮していない可能性が考えられる。このような状況下で、病的血栓の成長あるいは増大を抑制し、かつ止血血栓の形成に影響しない、新しい作用機序を有する血栓症や血栓塞栓症の治療剤および/または予防剤が必要とされている。その標的の一つとして、近年、FXIaが注目されている。血液凝固第XI因子は、血液凝固の調節に関与する血漿中セリンプロテアーゼの一つであり、活性化血液凝固第XII因子、トロンビン、または自身によってFXIaとなる。FXIaは、古典的血液凝固カスケードにおいては内因系あるいは接触系と呼ばれる血液凝固経路の構成因子の一つであり、Arg-AlaとArg-Val間のペプチド結合を選択的に切断することにより、血液凝固第IX因子を活性化する。FXIaの安全性は、血友病Cと呼ばれるヒトの血液凝固第XI因子欠損症において、主に術後または外傷後の軽度から中程度の出血を特徴とした観察結果から支持されている。さらに、FXIaの効果と安全性の高さについては、ヒトの血液凝固第XI因子欠損症の観察結果に加えて、血液凝固第XI因子欠損マウスを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける実験結果およびサルまたはウサギを用いた実験的血栓症および出血モデルにおける抗血液凝固第XI因子中和抗体またはアンチセンスの実験結果から証明されている(非特許文献4-8参照)。
【0005】
以上の結果から、FXIaは抗血栓治療剤および/または予防剤を開発する上で、出血という副作用の無い非常に魅力的な標的であり、FXIa阻害剤は出血等の望ましくない副作用を持たない、非常に強力かつ安全な抗血栓治療剤または予防剤になることが期待されている。
【0006】
ところで、特許文献1には、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンが、選択的な血液凝固第XIa因子阻害剤であり、血栓塞栓疾患等の治療薬として有用であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2016/093285号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【文献】ブラッド・コアグレーション・アンド・フィブリノリシス(Blood Coagulation and Fibrinolysis)、2006年、第17巻、251-257頁
【文献】サイエンス(Science)、1991年、第253巻、909-912頁
【文献】ブラッド(Blood)、2003年、第102巻、953-955頁
【文献】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2005年、第3巻、695-702頁
【文献】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1982-1988頁
【文献】ブラッド(Blood)、2012年、第119巻、2401-2408頁
【文献】ブラッド(Blood)、2009年、第113巻、936-944頁
【文献】ジャーナル・オブ・トロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Journal of Thrombosis and Haemostasis)、2006年、第4巻、1496-1501頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
医薬品の原薬としては、取り扱いやすく、吸湿性、経口吸収性に優れる結晶が望ましい。特許文献1に記載の(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンの物性を調べたところ、フリー体、および二塩酸塩の結晶性は著しく低いことがわかった。また、二水和物は、結晶とはなるものの、後述するように、吸湿性が高く、経口吸収性が低いことがわかった。これらのことから、結晶を形成し、医薬品として取り扱いに優れた新たな原薬形態(塩、溶媒和物または共結晶など)の取得が望まれた。したがって、本発明の課題は、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンの塩、溶媒和物または共結晶として結晶を形成し、さらには低吸湿性および/または経口吸収性に優れる原薬形態を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために検討を行い、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンが、数あるコフォーマー(coformer)の中でも特定のコフォーマー、すなわち、α-レゾルシン酸、ゲンチジン酸、ニコチンアミドおよび3-ヒドロキシ安息香酸と、結晶を形成することを見出した。また、更なる検討を重ねた結果、これらの中でも、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)(以下、化合物Aまたは本発明化合物と略記することがある。)が、低吸湿性および/または経口吸収性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、例えば下記の実施態様を提供する。
[1](3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1);
[2]結晶形態である、前記[1]記載の化合物;
[3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも2つの回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[3-1]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも3つの回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[3-2]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも4つの回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[3-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも5つの回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[3-4]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[4]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約13.3、約14.1、約14.7、約15.1、約15.8、約16.5、約17.4、約17.7、約18.0、約18.4、約18.9、約19.3、約19.8、約20.6、約20.9、約22.4、約22.8、約23.2、約24.2、約25.0、約25.5、約25.8、約26.3、約27.2、約27.6、約27.9、約28.6、約29.5、および約31.0度の回折角(2θ)に回折ピークを有する結晶形態である、前記[2]記載の化合物;
[5]
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする結晶形態である、前記[2]に記載の化合物;
[6]示差走査熱量測定において、オンセット温度が約214℃または発熱ピーク温度が約215℃である結晶形態である、前記[2]~[5]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物;
[7]
図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする結晶形態である、前記[6]記載の化合物;
[8]共結晶である、前記[1]~[7]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物;
[9]前記[1]~[8]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物を含有する医薬組成物;
[10]血液凝固第XIa因子阻害剤である前記[9]に記載の医薬組成物;
[11]血液凝固第XIa因子関連疾患の予防および/または治療剤である前記[9]に記載の医薬組成物;
[12]血液凝固第XIa因子関連疾患が血栓塞栓疾患である前記[11]記載の医薬組成物;
[13]血栓塞栓疾患が、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、または心腔もしくは末梢循環における血栓塞栓性障害である、前記[12]記載の医薬組成物;
[14]血栓塞栓疾患が、脳卒中、脳血栓症、脳塞栓症、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、または人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓症および/または血栓塞栓症である、前記[12]記載の医薬組成物;
[15]前記[1]~[8]または[3-1]~[3-4]のいずれか一項に記載の化合物の有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、血栓塞栓疾患の予防および/または治療方法;
[16]血栓塞栓疾患の予防および/または治療に使用される、前記[1]~[8]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物;
[17]血栓塞栓疾患の予防および/または治療剤の製造のための、前記[1]~[8]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物の使用;
[18]製造工程において酢酸エチルを用いることを特徴とする、前記[1]~[8]または[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の化合物の製造方法;
[19]下記構造式;
【0012】
【0013】
で示される化合物;
[20](3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンと3-ヒドロキシ安息香酸の共結晶。
[20-1](3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)。
[20-2]結晶である、[20-1]記載の化合物。
[20-3]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度の回折角(2θ)に少なくとも2つの回折ピークを有する、[20-2]記載の結晶。
[20-4]粉末X線回折スペクトルにおいて、約9.4、約13.3、約14.1、約14.7、約15.1、約15.8、約16.5、約17.4、約17.7、約18.0、約18.4、約18.9、約19.3、約19.8、約20.6、約20.9、約22.4、約22.8、約23.2、約24.2、約25.0、約25.5、約25.8、約26.3、約27.2、約27.6、約27.9、約28.6、約29.5、および約31.0度の回折角(2θ)に回折ピークを有する、[20-2]記載の結晶。
[20-5]
図5に示される粉末X線回折スペクトルチャートを特徴とする[20-2]に記載の結晶。
[20-6]示差走査熱量測定において、オンセット温度が約214℃または発熱ピーク温度が約215℃である、[20-2]または[20-3]に記載の結晶。
[20-7]
図10に示される示差走査熱量測定チャートを特徴とする[20-6]記載の結晶。
[20-8]共結晶である、[20-1]記載の化合物。
[20-9]共結晶である、[20-1]~[20-7]のいずれか一項に記載の結晶。
[20-10][20-1]に記載の化合物または[20-2]に記載の結晶を含有する医薬組成物。
[20-11]血液凝固第XIa因子阻害剤である[20-10]に記載の医薬組成物。
[20-12]血液凝固第XIa因子関連疾患の予防および/または治療剤である[20-10]に記載の医薬組成物。
[20-13]血液凝固第XIa因子関連疾患が血栓塞栓疾患である[20-12]記載の医薬組成物。
[20-14]血栓塞栓疾患が、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、または心腔もしくは末梢循環における血栓塞栓性障害である、[20-13]記載の医薬組成物。
[20-15]血栓塞栓疾患が、脳卒中、脳血栓症、脳塞栓症、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、または人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓症および/または血栓塞栓症である、[20-13]記載の医薬組成物。
【発明の効果】
【0014】
化合物Aは結晶を形成し、かつ低吸湿性および/または経口吸収性に優れた医薬品原薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1(11)の化合物の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図2】実施例2の化合物の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図3】実施例3の化合物の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図4】実施例4の化合物の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図5】実施例5の化合物の粉末X線回折スペクトルチャートを表す(縦軸は強度(counts)を表し、横軸は2θ(度)を表す。)。
【
図6】実施例1(11)の化合物の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図7】実施例2の化合物の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図8】実施例3の化合物の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図9】実施例4の化合物の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図10】実施例5の化合物の示差走査熱量測定(DSC)チャートを表す(縦軸は熱流束(W/g)を表し、横軸は温度(℃)を表す。)。
【
図11】実施例1(11)の化合物の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。
【
図12】実施例2の化合物の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。
【
図13】実施例3の化合物の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。
【
図14】実施例4の化合物の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。
【
図15】実施例5の化合物の熱重量測定(TG)チャートを表す(横軸に、縦軸は重量の変化率(Weight(%))を表し、横軸は温度(Temperature(℃))を表す。)。
【
図16】実施例1(11)の化合物(2水和物)、実施例2の化合物(RES)、実施例3の化合物(GEN)、実施例4の化合物(NIA)、および実施例5の化合物(3HBA)の等温吸着曲線を表す(縦軸は乾燥質量の変化(%)を表し、横軸は相対湿度(RH)(%)を表す。)。
【
図17】実施例1(11)の化合物(2水和物)、実施例4の化合物(NIA)、および実施例5の化合物(3HBA)の共結晶のサル経口投与時(1mg/kg)の血中濃度推移を表す(縦軸は血漿中の化合物濃度(ng/mL)を表し、横軸は時間(h)を表す。)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンとは、以下の構造式
【0017】
【0018】
(式中、記号
【0019】
【0020】
は、α配置を表し、
【0021】
【0022】
は、β配置を表す。)で表される化合物を意味する。
【0023】
また、上記の構造式で表される化合物は、特許文献1の実施例2(10)に記載のように、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノンと命名することもできる。
【0024】
本発明において、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)とは、以下の構造式
【0025】
【0026】
(式中、すべての記号は前記と同じ意味を表す。)で表される化合物を意味する。
【0027】
また、上記の構造式で表される化合物は、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1:1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン 一-3-ヒドロキシ安息香酸和物、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン 3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン 3-ヒドロキシ安息香酸 (1:1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-一-3-ヒドロキシ安息香酸和物、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン・3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン・3-ヒドロキシ安息香酸 (1:1)、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン・一-3-ヒドロキシ安息香酸和物、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン 3-ヒドロキシ安息香酸、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン・3-ヒドロキシ安息香酸、
(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン3-ヒドロキシ安息香酸、または、
(3S)-3-[2-(6-Amino-2-fluoropyridin-3-yl)-4-fluoro-1H-imidazol-5-yl]-7-[5-chloro-2-(1H-tetrazol-1-yl)phenyl]-2,3-dihydroindolizin-5(1H)-one mono-3-hydroxybenzoate
と命名することもできる。
【0028】
化合物名の表記上、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンと3-ヒドロキシ安息香酸の間のハイフン(-)は、下記表1のとおり、全角ダッシュ(em Dash)で表される場合もあるし、二連ハイフン(--)で表される場合もある。
【0029】
【0030】
化合物Aのある形態としては、例えば付加物である。付加物とは、二つの別の分子(A)と(B)が、結合の性質は変化しているがどちらの分子も原子の増減がないような形で直接結合(付加)することにより生じた新たな化学種(AB)を意味する。付加物には、塩や共結晶が含まれる。
【0031】
化合物Aは、一実施形態において(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンと3-ヒドロキシ安息香酸との付加物である。
【0032】
化合物Aは、一実施形態において(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンと3-ヒドロキシ安息香酸との共結晶である。化合物Aは、以下の(a)および(b)の少なくとも一つの物理化学データによって特徴づけられる。好ましくは、(a)および(b)の両方の物理化学データによって特徴づけられる。(a)(i)
図5に示される粉末X線回折スペクトル、(ii)
図5に示される粉末X線回折スペクトルの回折角(2θ)、(iii)表6に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)(約9.4、約13.3、約14.1、約14.7、約15.1、約15.8、約16.5、約17.4、約17.7、約18.0、約18.4、約18.9、約19.3、約19.8、約20.6、約20.9、約22.4、約22.8、約23.2、約24.2、約25.0、約25.5、約25.8、約26.3、約27.2、約27.6、約27.9、約28.6、約29.5、および約31.0度)を有する粉末X線回折スペクトル、(iv)表6に示される回折角(2θ)と実質的に同じ回折角(2θ)から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル、または(v)約9.4、約14.1、約15.8、約16.5、約17.4、約18.4、約20.6、および約22.4度から選択される回折角(2θ)に少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは5つ超のピークを有する粉末X線回折スペクトル、(b)
図10に示される示差走査熱量測定(DSC)、またはオンセット温度が約214℃または発熱ピーク温度が約215℃である発熱ピークを有する。
【0033】
[同位体標識化]
化合物Aは、1つ以上の原子を同位元素で置換されていてもよく、同位体標識された化合物A、例えば放射性同位体を組み込んだ化合物Aは、薬物および/または基質の組織分布研究等において有用である。上記同位元素としては、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、35S、18F、36Cl、123I、125I等が挙げられる。
【0034】
[毒性]
化合物Aの毒性は低いものであるため、安全に使用することができる。
【0035】
[医薬品への適用]
化合物Aは、強力なFXIa阻害活性を有する。したがって、本発明化合物は血栓塞栓性疾患、例えば、動脈性心血管血栓塞栓性障害、静脈性心血管血栓塞栓性障害、動脈性脳血管血栓塞栓性障害、静脈性脳血管血栓塞栓性障害、および心腔または末梢循環における血栓塞栓性障害の予防および/または治療に有用である。
【0036】
動脈性心血管血栓塞栓性障害としては、例えば、冠動脈疾患、虚血性心筋症、急性冠症候群、冠状動脈血栓症、不安定狭心症および非Q波心筋梗塞の虚血性合併症、医学的に管理されるか、もしくは経皮的冠インターベンションを伴うST上昇型および/または非ST上昇型急性心筋梗塞、安定(労作性)狭心症等の狭心症、異型狭心症、不安定狭心症、心筋梗塞(初回心筋梗塞または再発性心筋梗塞等)、急性心筋梗塞、冠動脈バイパス手術後の血管再閉塞および狭窄、経皮経管的血管形成術、心臓/経冠動脈ステント留置手術後や冠動脈のための血栓溶解療法後の再閉塞および狭窄または虚血性突然死等が挙げられる。
【0037】
静脈性心血管血栓塞栓性疾患としては、例えば、主要な一般外科手術、腹部手術、人工股関節置換術、膝関節置換術、股関節骨折手術、多発骨折、多発外傷、外傷、脊髄損傷、火傷における、もしくは重症管理室入室時における深部静脈血栓症(DVT)および/または肺塞栓症(PE)、身体活動が著しく制限された急性内科疾患患者におけるDVTおよび/またはPE、癌化学療法施行患者におけるDVTおよび/またはPE、脳卒中患者におけるDVTおよび/またはPE、PEの有無にかかわらない症候性または無症候性のDVT等が挙げられる。
【0038】
動脈性脳血管血栓塞栓性障害としては、例えば、脳卒中、虚血性脳卒中、脳梗塞急性期、非弁膜症性心房細動または弁膜症性心房細動患者における脳卒中、大脳動脈血栓症、脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)、ラクナ梗塞、アテローム性血栓性脳梗塞、Branch atheromatous disease(BAD)、大脳動脈塞栓症、脳血栓症、脳血管障害、無症候性脳梗塞または脳血管性認知症等が挙げられる。
【0039】
静脈性脳血管血栓塞栓性障害としては、例えば、頭蓋内静脈血栓症、脳塞栓症、脳血栓症、脳静脈洞血栓症、頭蓋内静脈洞血栓症または海綿静脈洞血栓症等が挙げられる。
【0040】
心腔または末梢循環における血栓塞栓性疾患としては、静脈血栓症、全身性静脈血栓塞栓症、再発性静脈血栓塞栓症、血栓性静脈炎、非弁膜症および弁膜症性心房細動、心原性塞栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、慢性閉塞性肺疾患、抗リン脂質抗体症候群、肝塞栓症、肝中心静脈閉塞症(VOD)、腎臓塞栓症、腎静脈血栓症、腎動脈閉塞、膜性腎症または巣状糸球体硬化症による難治性ネフローゼ、脾静脈血栓症、上腸間膜動脈閉塞症、門脈血栓症、網膜静脈閉塞症、アテローム性動脈硬化症、アテローム血栓症、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)、末梢動脈疾患、動脈塞栓症、糖尿病およびメタボリック症候群およびそれらの続発症、または血栓形成を促進する人工物(医療用インプラント、医療用デバイス、カテーテル、ステント、人工心臓弁、人工心肺または血液透析器等)の表面に血液が曝露される治療により引き起こされる血栓症等が挙げられる。
【0041】
血栓塞栓性疾患として好ましくは、冠動脈疾患、不安定狭心症、急性冠症候群、心房細動、心筋梗塞(初回心筋梗塞または再発性心筋梗塞等)、虚血性突然死、一過性脳虚血発作、脳卒中、末梢動脈疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢閉塞性動脈疾患、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、大脳動脈血栓症、脳塞栓症、腎臓塞栓症、門脈血栓症、肺塞栓症、肺梗塞、肝塞栓症、肝中心静脈閉塞症(VOD)/類洞閉塞症候群(SОS)、血栓性微小血管障害症(TMA)、播種性血管内凝固症候群(DIC)、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷(ALI)、抗リン脂質抗体症候群、冠動脈バイパス移植(グラフト)手術に起因する血栓症または血栓症を促進する人工物(医療用インプラント、医療用デバイス、カテーテル、ステント、人工心臓弁、人工心肺または血液透析器等)の表面に血液が曝露される治療により起こる血栓症等が挙げられる。
【0042】
本明細書において、心房細動、アテローム性硬化症または敗血症には、心房細動、アテローム性硬化症または敗血症により引き起こされる血栓塞栓性疾患が含まれる。
【0043】
血栓塞栓性疾患としてより好ましくは、脳卒中、脳血栓症、脳塞栓症、静脈血栓症、静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、または人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓症および/または血栓塞栓症が挙げられる。
【0044】
静脈血栓塞栓症(VTE)には、深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓症(PE)または深部静脈血栓症を伴う肺塞栓症が含まれる。VTEの予防および/または治療には、深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症の治療および/または再発抑制、下肢整形外科手術(人工膝関節全置換術、人工股関節全置換術又は股関節骨折術等)施行患者のVTEの発症抑性、身体活動が著しく制限された急性内科疾患患者におけるDVTおよび/またはPEの発症抑制、腹部外科手術施行患者の術中および/または術後におけるVTEの発症抑制、癌化学療法施行患者におけるDVTおよび/またはPEの発症抑制が含まれる。
【0045】
虚血性脳卒中の予防および/または治療には、非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制および/または治療、塞栓源を特定できない塞栓性脳卒中(ESUS)患者における再発性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制および/または治療、急性冠症候群(ACS)を合併した心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制および/または治療、慢性腎臓病(CKD)または末期腎不全を伴う心房細動患者における虚血性脳卒中および全身性塞栓症の発症抑制および/または治療、Branch atheromatous disease(BAD)の再発抑制および/または治療、虚血性脳卒中(心原性脳塞栓症を除く)後の再発抑制および/または治療が含まれる。
【0046】
血栓形成を促進する人工物表面に血液が暴露される治療により引き起こされる血栓塞栓性疾患の予防および/または治療には、人工弁置換術施行患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療、植込型、全置換型、経皮的、あるいは体外設置型等の補助人工心臓の装着患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療、冠動脈ステント留置患者の血栓塞栓性疾患の予防および/または治療が含まれる。
【0047】
急性冠症候群(ACS)、冠動脈疾患、末梢動脈疾患の予防および/または治療には、急性冠症候群(ACS)患者における心血管イベントの抑制、冠動脈疾患または末梢動脈疾患患者における心血管イベントの抑制、心血管リスクの高い糖尿病患者(より好ましくは、2型糖尿病患者)における心血管イベントの抑制が含まれる。
【0048】
また、化合物Aは血漿カリクレイン阻害作用を有するため、血漿カリクレインが関与する疾患の予防および/または治療に有用である。
【0049】
血漿カリクレインが関与する疾患としては、例えば、網膜症、糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症、増殖性および非増殖性網膜症、加齢性黄斑変性症(AMD)、血腫の予防および/または治療、血管透過性増加と関連する障害、浮腫関連疾患、遺伝性血管浮腫(HAE)、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、臨床的に重要な黄斑浮腫(CSME)、嚢胞様黄斑浮腫(CME)、網膜浮腫、神経膠原関連浮腫、脳浮腫、リンパ浮腫、血管浮腫、外傷性脳障害、出血性卒中、脳内出血、脳動脈瘤、動静脈奇形、脊髄損傷、虚血再灌流傷害、虚血、脳虚血、疼痛、炎症要素を伴う障害、脳炎、多発性硬化症、掻痒、関節炎、炎症性腸疾患、痛風、乾癬、星状細胞活性化関連疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、クロイツフェルト・ヤコブ病、癲癇、本態性高血圧、糖尿病または高脂血症と関連する血圧上昇、腎不全、慢性腎疾患、心不全、タンパク尿または手術時の失血等が挙げられる。
【0050】
血漿カリクレインが関与する疾患として好ましくは、浮腫関連疾患、遺伝性血管浮腫、黄斑浮腫、脳浮腫、網膜症、虚血再灌流傷害に関連する浮腫形成、心肺バイパスまたは冠動脈バイパス移植などの手術中の失血が挙げられる。
【0051】
化合物Aを医薬適用するにあたっては、本発明化合物を単剤として用いるだけではなく、例えば、
(1)その予防、治療および/または症状改善効果の補完および/または増強、
(2)その動態・吸収改善、投与量の低減、および/または
(3)その副作用の軽減のために、他の有効成分、例えば、以下に列挙するような薬剤等と組み合わせて用いてもよい。
【0052】
化合物Aを血栓塞栓性疾患の予防および/または治療に用いる場合、化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤としては、例えば、抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、ステロイドまたはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0053】
抗凝固剤として、トロンビン阻害剤、アンチトロンビンIII活性化剤、ヘパリン補因子II活性化剤、他のFXIa阻害剤、血漿および/または組織カリクレイン阻害剤、プラスミノゲン活性化抑制因子(PAI-1)阻害剤、トロンビン活性化線溶阻害剤(TAFI)阻害剤、第VIIa因子阻害剤、第VIIIa因子阻害剤、第IXa因子阻害剤、第Xa因子阻害剤、第XIIa因子阻害剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0054】
抗血小板剤として、GPII/IIIa遮断薬、プロテアーゼ活性化受容体(PAR-1)アンタゴニスト、PAR-4アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼIII阻害剤、他のホスホジエステラーゼ阻害剤、P2X1アンタゴニスト、P2Y1受容体アンタゴニスト、P2Y12アンタゴニスト、トロンボキサン受容体拮抗剤、トロンボキサンA2合成酵素阻害剤、シクロオキシゲナーゼ-1阻害剤、ホスホリパーゼD1阻害剤、ホスホリパーゼD2阻害剤、ホスホリパーゼD阻害剤、糖タンパク質VI(GPVI)アンタゴニスト、糖タンパク質Ib(GPIB)アンタゴニスト、GAS6アンタゴニスト、アスピリン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0055】
化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤として、好ましくは、抗血小板剤である。
【0056】
抗血小板剤として、好ましくは、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール、カングレロール、エリノグレル、シロスタゾール、サルポグレラート、イロプロスト、ベラプロスト、リマプロストおよび/またはアスピリン、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0057】
化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤として、好ましくは、ワルファリン、未分画ヘパリン、低分子量ヘパリン、エノキサパリン、ダルテパリン、ベミパリン、チンザパリン、セミュロパリン ナトリウム(AVE-5026)、ダナパロイド、合成五糖、フォンダパリヌクス、ヒルジン、ジスルファトヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、デシルジン、アルガトロバン、アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、インドメタシン、メフェナマート、ドロキシカム、ジクロフェナク、スルフィンピラゾン、ピロキシカム、チクロピジン、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロール、カングレロール、エリノグレル、シロスタゾール、サルポグレラート、イロプロスト、ベラプロスト、リマプロスト、チロフィバン、エプチフィバチド、アブシキシマブ、メラガトラン、キシメラガトラン、ダビガトラン、リバロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダレキサバン、ベトリキサバン、TAK-442、組織プラスミノゲン活性化因子、改変型組織プラスミノゲン活性化因子、アニストレプラーゼ、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、ガベキサート、メシル酸ガベキサート、ナファモスタット、シベレスタット、シベレスタットナトリウム水和物、アルベレスタット(AZD-9668)、ZD-8321/0892、ICI-200880、ヒトエラフィン(tiprelestat)、エラフィン、α1-アンチトリプシン(A1AT)、コルチゾン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロンおよびトリアムシノロン、またはそれらの組み合わせである。
【0058】
別の実施形態において、化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤としては、例えば、カリウムチャネル開口薬、カリウムチャネル遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、水素ナトリウム交換輸送体阻害剤、抗不整脈剤、抗動脈硬化剤、抗凝固剤、抗血小板剤、抗血栓剤、血栓溶解剤、フィブリノーゲン拮抗剤、利尿降圧剤、ATPアーゼ阻害剤、電解質コルチコイド受容体アンタゴニスト、ホスホジエステラーゼ阻害剤、抗糖尿病剤、プロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、抗炎症剤、抗酸化剤、血管新生モジュレーター、骨粗鬆症治療剤、ホルモン補充療法、ホルモン受容体モジュレーター、経口避妊薬、抗肥満薬、抗うつ薬、抗不安剤、抗精神病剤、抗増殖剤、抗腫瘍剤、抗潰瘍および胃食道逆流症剤、成長ホルモン剤および/または成長ホルモン分泌促進物質、甲状腺模倣薬、抗感染剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、コレステロール/脂質異常症治療薬および脂質プロフィール改善療法、および模擬的虚血性のプレコンディショニングおよび/または気絶心筋剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0059】
別の実施形態において、化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤としては、例えば、さらに抗不整脈剤、抗高血圧剤、抗凝固剤、抗血小板剤、血栓溶解剤、線維素溶解剤、カルシウムチャネル遮断薬、カリウムチャネル遮断薬、コレステロール/脂質低下剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、エラスターゼ阻害剤、抗炎症剤、またはそれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0060】
抗不整脈剤としては、IKur阻害薬、エラスターゼ阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、ステロイド等が挙げられる。
【0061】
抗高血圧剤としては、ACE阻害薬、AT-1受容体拮抗薬、β-アドレナリン受容体アンタゴニスト、ETA受容体アンタゴニスト、デュアルETA/AT-1受容体拮抗薬、バソペプチダーゼ阻害剤等が挙げられる。
【0062】
好ましい実施形態において、化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤としては、抗血小板剤またはそれらの組み合わせである。
化合物Aと組み合わせて用いられる薬剤は、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、別々の製剤を同一投与経路または別投与系路で投与する形態をとってもよい。別々の製剤を投与する場合は、必ずしも同時投与である必要はなく、必要に応じて投与に時間差を設けてもよい。また、投与に時間差を設ける場合、投与の順序に特に制限はなく、望む薬効が得られるように適宜調節すればよい。
化合物Aと組み合わせて用いられるこれら他の薬剤の投与量は、その薬剤もしくは類似薬の臨床上用いられている用量を基準に適宜増減することができる。また、本発明化合物と他の薬剤との配合比は、投与対象の年齢や体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状等を考慮して適宜調節することができる。おおむね、1重量部の本発明化合物に対して、他の薬剤を0.01乃至100重量部組み合わせればよい。他の薬剤は複数のものを用いてもよい。また、他の薬剤は、上に列挙したもののほか、それと同一メカニズムを有する薬物であってもよい。このような薬物には、現在までに見出されているものだけでなく、今後見出されるものも含まれる。
【0063】
化合物Aは、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。経口剤としては、例えば、内服用液剤(例えば、エリキシル剤、シロップ剤、薬剤的に許容される水剤、懸濁剤、乳剤)、内服用固形剤(例えば、錠剤(舌下錠、口腔内崩壊錠を含む)、丸剤、カプセル剤(ハードカプセル、ソフトカプセル、ゼラチンカプセル、マイクロカプセルを含む)、散剤、顆粒剤、トローチ剤)等が挙げられる。非経口剤としては、例えば、液剤(例えば、注射剤(硝子体内注射剤、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤等)、点眼剤(例えば、水性点眼剤(水性点眼液、水性懸濁点眼液、粘性点眼液、可溶化点眼液等)、非水性点眼剤(非水性点眼液、非水性懸濁点眼液等))等)、外用剤(例えば、軟膏(眼軟膏等))、点耳剤等が挙げられる。これらの製剤は、速放性製剤、徐放性製剤などの放出制御剤であってもよい。これらの製剤は公知の方法、例えば、日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
【0064】
経口剤としての内服用液剤は、例えば、有効成分を一般的に用いられる希釈剤(例えば、精製水、エタノールまたはそれらの混液等)に溶解、懸濁または乳化されることにより製造される。さらにこの液剤は、湿潤剤、懸濁化剤、乳化剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、保存剤、緩衝剤等を含有していてもよい。
【0065】
経口剤としての内服用固形剤は、例えば、有効成分を賦形剤(例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、微結晶セルロース、デンプン等)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)、崩壊剤(例えば、繊維素グリコール酸カルシウム等)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム等)、安定剤、溶解補助剤(グルタミン酸、アスパラギン酸等)等と混合し、常法に従って製剤化される。また、必要によりコーティング剤(例えば、白糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート等)で被覆していてもよいし、また2以上の層で被覆していてもよい。
【0066】
非経口剤としての外用剤は公知の方法または通常使用されている処方により製造される。例えば、軟膏剤は有効成分を基剤に研和または溶融させて製造される。軟膏基剤は公知あるいは通常使用されているものから選ばれる。例えば、高級脂肪酸または高級脂肪酸エステル(例えば、アジピン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、アジピン酸エステル、ミリスチン酸エステル、パルミチン酸エステル、ステアリン酸エステル、オレイン酸エステル等)、ロウ類(例えば、ミツロウ、鯨ロウ、セレシン等)、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等)、高級アルコール(例えば、セタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール等)、シリコン油(例えば、ジメチルポリシロキサン等)、炭化水素類(例えば、親水ワセリン、白色ワセリン、精製ラノリン、流動パラフィン等)、グリコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、マクロゴール等)、植物油(例えば、ヒマシ油、オリーブ油、ごま油、テレピン油等)、動物油(例えば、ミンク油、卵黄油、スクワラン、スクワレン等)、水、吸収促進剤、かぶれ防止剤から選ばれるものを単独または2種以上を混合して用いられる。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、着香剤等を含んでいてもよい。
【0067】
非経口剤としての注射剤には溶液、懸濁液、乳濁液および用時溶剤に溶解または懸濁して用いる固形の注射剤を包含される。注射剤は、例えば有効成分を溶剤に溶解、懸濁または乳化させて用いられる。溶剤として、例えば注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノールのようなアルコール類等およびそれらの組み合わせが用いられる。さらにこの注射剤は、安定剤、溶解補助剤(例えば、グルタミン酸、アスパラギン酸、ポリソルベート80(登録商標)等)、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤等を含んでいてもよい。これらは最終工程において滅菌するか無菌操作法によって製造される。また無菌の固形剤、例えば凍結乾燥品を製造し、その使用前に無菌化または無菌の注射用蒸留水または他の溶剤に溶解して使用することもできる。
【0068】
化合物Aまたは化合物Aと他の薬剤を上記の目的で用いるには、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常、成人一人当たり、一回につき、1ngから1000mgの範囲で一日一回から数回経口投与されるかまたは成人一人当たり、一回につき、0.1ngから10mgの範囲で一日一回から数回非経口投与されるかまたは一日1時間から24時間の範囲で静脈内に持続投与される。もちろん前記したように、投与量は種々の条件により変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、また範囲を越えて投与の必要な場合もある。
【0069】
本発明において、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン、もしくはその塩、溶媒和物、または共結晶等は、例えば後記する実施例、これらに準ずる方法に従って製造することが出来る。なお、再結晶を行う際、種晶は、使用しても、または使用しなくてもよい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
クロマトグラフィーによる分離の箇所およびTLCに示されているカッコ内の溶媒は、使用した溶出溶媒または展開溶媒を示し、割合は体積比を表す。
NMRの箇所に示されているカッコ内は測定に使用した溶媒を示す。
本明細書中に用いた化合物名は、一般的にIUPACの規則に準じて命名を行なうコンピュータプログラム、Advanced Chemistry Development社のACD/Name(登録商標)を用いるかまたはIUPAC命名法に準じて命名したものである。
【0072】
以下の実施例におけるLC/MS分析で用いられた測定時間、溶媒およびカラム条件を以下に示す。なお、tRは保持時間を意味する。
条件a.カラムYMC-Triart C18、2.0mmx30mm、1.9μm;カラム温度30℃;移動相(A液)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液および(B液)0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
条件b.カラムWaters ACQUITY UPLC(登録商標) BEH C18、 2.1mm x 30mm、 1.7 μm;カラム温度40℃;移動相(A液)0.1%ギ酸水溶液および(B液)0.1%ギ酸アセトニトリル溶液;流速1.0mL/min;分析時間1.5分;グラジエント:0分(A液/B液=95/5)、0.1分(A液/B液=95/5)、1.2分(A液/B液=5/95)、1.4分(A液/B液=5/95)、1.41分(A液/B液=95/5),1.5分(A液/B液=95/5)
【0073】
[実験例]
実施例1(1):6-フルオロ-5-ヨード-2-ピリジナミン
N-ヨードスクシンイミド(56.5g)を氷冷下、6-フルオロ-2-ピリジナミン(25.6g)のN,N-ジメチルホルムアミド(200mL)溶液に分割投入(3回)した。室温で3時間撹拌した後、反応液に市水(0.5L)を加えた。酢酸エチル/ヘキサン(1/1、300mL)で3回抽出し、有機層を飽和亜硫酸水溶液(0.5L)、飽和炭酸ナトリウム水溶液(0.5L、2回)、市水(0.5L)、飽和食塩水(0.5L)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣にヘキサン/酢酸エチル(3/1、150mL)を加え、室温下スラリー洗浄し、ろ過した。得られた固体を乾燥し、以下の物性値を有する標題化合物(36.7g)を得た。
TLC:Rf 0.56(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)。
【0074】
実施例1(2):ビス(2-メチル-2-プロパニル) (6-フルオロ-5-ヨード-2-ピリジニル)イミドジカルボナート
実施例1(1)で製造した化合物(36.7g)と4-ジメチルアミノピリジン(0.9g)のアセトニトリル(300mL)溶液にジ-tert-ブチルジカーボネート(74.0g)のアセトニトリル(100mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、飽和塩化アンモニウム水溶液(400mL)で洗浄し、水層を酢酸エチル(200mL)で抽出した。合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→10:90)し、以下の物性値を有する標題化合物(45.06g)を得た。
1H-NMR (CDCl3): δ 8.14 (t, 1H), 7.03 (dd, 1H), 1.47 (s, 18H)。
【0075】
実施例1(3):2-メチル-2-プロパニル (5-シアノ-6-フルオロ-2-ピリジニル)カルバマート
実施例1(2)で製造した化合物(9.1g)、シアン化亜鉛(II)(7.32g)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2g)の1-メチル-2-ピロリジノン(60mL)溶液を減圧下脱気した。マイクロウェーブ照射下、130℃で1時間撹拌した後、放冷した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、セライトろ過により不溶物を除去し、不溶物を酢酸エチル(50mL)で洗浄した。ろ液を分液し、水層を酢酸エチル(100mL)で再抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=5:95→80:20)することで以下の物性値を有する標題化合物(2.1g)を得た。
TLC:Rf 0.25(酢酸エチル:ヘキサン=10:90)。
【0076】
実施例1(4):2-メチル-2-プロパニル [6-フルオロ-5-(N-ヒドロキシカルバミミドイル)-2-ピリジニル]カルバマート
実施例1(3)で製造した化合物(1.56g)とヒドロキシルアミン塩酸塩(0.91g)のエタノール(40mL)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(2.84mL)を加え、40℃で終夜撹拌した。反応溶液を濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル(50mL)に溶解した。市水(50mL)を加え、洗浄した後、有機層を乾燥後、濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(1.93g)を得た。
LC/MS tR 0.60分; MS (ES+) m/z 271 (M+H) (条件a)。
【0077】
実施例1(5):2-メチル-2-プロパニル (5-カルバミミドイル-6-フルオロ-2-ピリジニル)カルバマート 酢酸塩
実施例1(4)で製造した化合物(1.93g)の酢酸(10mL)溶液に無水酢酸(0.75mL)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液に水酸化パラジウム(II)(20%、250mg)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間撹拌した。反応液をセライトろ過し、ろ液を減圧濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.99g)を得た。
LC/MS tR 0.59分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0078】
実施例1(6):2-メチル-2-プロパニル (5-カルバミミドイル-6-フルオロ-2-ピリジニル)カルバマート 塩酸塩
実施例1(5)で製造した化合物(2.6g)のメタノール(10mL)溶液に10%塩化水素/メタノール(6.5mL)溶液を加え、室温で10分間撹拌した。反応液にトルエンを加え濃縮し、以下の物性値を有する未精製の標題化合物(2.63g)を得た。
LC/MS tR 0.58分; MS (ES+) m/z 255 (M+H) (条件a)。
【0079】
実施例1(7):(3S)-3-(クロロアセチル)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン
(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-1,2,3,4-テトラゾール-1-イル)フェニル]-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロインドリジン-3-カルボン酸(国際公開第2013/093484号パンフレットの実施例9に記載)(3.0g)のジクロロメタン(15mL)溶液に、1-クロロ-N,N,2-トリメチル-1-プロペン-1-アミン(1.33mL)を氷冷下加え、0℃にて40分間撹拌した。トリメチルシリルジアゾメタン(2Mヘキサン溶液、8.4mL)を加えた後、さらに0℃で1時間撹拌した。濃塩酸(0.87mL)を氷冷下加え、室温で20分撹拌した。反応液に市水(50mL)を加え、ジクロロメタン(50mL)で2回抽出した。有機層を乾燥後、濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=40:60→100:0)し、以下の物性値を有する標題化合物(2.32g)を得た。
LC/MS tR 0.80分; MS (ES+) m/z 390 (M+H) (条件a)。
【0080】
実施例1(8):2-メチル-2-プロパニル [5-(5-{7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル}-1H-イミダゾール-2-イル)-6-フルオロ-2-ピリジニル]カルバマート
実施例1(6)で製造した化合物(1.5g)および実施例1(7)で製造した化合物(1.0g)のアセトニトリル(50mL)溶液に炭酸カリウム(0.70g)を加え、80℃で17時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(100mL)で希釈した後、市水(100mL)、飽和食塩水(200mL)で洗浄し、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(1.11g)を得た。
LC/MS tR 0.81分; MS (ES+) m/z 590 (M+H) (条件a)。
【0081】
実施例1(9):2-メチル-2-プロパニル [5-(5-{(3S)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル}-4-フルオロ-1H-イミダゾール-2-イル)-6-フルオロ-2-ピリジニル]カルバマートおよび2-メチル-2-プロパニル [5-(5-{(3R)-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-5-オキソ-1,2,3,5-テトラヒドロ-3-インドリジニル}-4-フルオロ-1H-イミダゾール-2-イル)-6-フルオロ-2-ピリジニル]カルバマート
実施例1(8)で製造した化合物(264mg)および炭酸ナトリウム(118mg)のアセトニトリル(10mL)/テトラヒドロフラン(5mL)懸濁液に、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタン ビス(テトラフルオロボラート)(selectfluor(登録商標))(95mg)を加え氷/食塩浴にて冷却下で3時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチル(20mL)で希釈し、亜硫酸ナトリウム水溶液(40mL)を加えた。水層を酢酸エチル(50mL)で2回抽出し、合わせた有機層を乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、酢酸エチル:ヘキサン=50:50→100:0、続いてメタノール:酢酸エチル=5:95)し、実施例2(9)のS体化合物とR体化合物の混合物(71.2mg)を得た。得られた混合物(20mg)を光学分割(DAICEL、CHIRALFLASH(登録商標)IC カラム、(粒子径:20μm;カラム長:100 x 30 mm I.D.)流速:24mL/min;カラム温度:室温;移動相(A):アセトニトリル;移動相(B):メタノール;イソクラティック(移動相(A):移動相(B)=90:10)20分;検出器:UV Yamazen UV-254W UV-Detector)によって精製し、標題化合物(実施例1(9)のS体化合物:7.9mg、実施例1(9)のR体化合物:7.7mg)を得た。なお、上記条件により光学分割した際における標題化合物の保持時間は、それぞれ13分(実施例1(9)のS体化合物)および9.5分(実施例1(9)のR体化合物)であった。
【0082】
それぞれの標題化合物を下記括弧内の液体クロマトグラフィー条件により分析した際における物性値を以下に示す。
実施例1(9)のS体化合物:
LC tR 10.4分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
実施例1(9)のR体化合物:
LC tR 7.95分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相アセトニトリル/メタノール=90/10、流速1.0mL/min)。
【0083】
実施例1(10):(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン
【0084】
【0085】
実施例1(9)のS体化合物(436mg)の酢酸エチル(6mL)懸濁液に濃塩酸(2mL)を加え、室温で20分間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、得られた残渣をテトラヒドロフラン(10mL)で再溶解した。その溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20mL)を加え、酢酸エチル (20mL、2回)で抽出した。有機層を合わせ、乾燥後、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製(アミノシリカ、メタノール:酢酸エチル=0:100→5:95)し、以下の物性値を有する標題化合物(321mg)を得た。また本化合物の絶対立体配置は、本化合物とFXIaとの複合体の単結晶を用いて、X線結晶構造解析により決定した。
TLC:Rf 0.60(メタノール:酢酸エチル=5:95);
1H-NMR (CD3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39-3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC tR 22.5分(カラムDAICEL CHIRALPAK(登録商標) IC 5μm 4.6mm×250mm、移動相ヘキサン/酢酸エチル=30/70、流速1.0mL/min);
[α]25
D=+44.1°(CH3OH、c=1.00)。
【0086】
実施例1(11):(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物
【0087】
【0088】
実施例1(10)の化合物(100mg)をアセトニトリル(1.0mL)及び水(0.018mL)に75℃にて加熱溶解させ、その後40℃にて2時間撹拌、室温で30分撹拌し、生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで標題化合物(76mg)を得た。
1H-NMR (CD3OD): δ 9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.74 - 7.65 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.21 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.83 (dd, 1H), 3.39 - 3.06 (m, 2H), 2.62 - 2.48 (m, 2H);
LC/MS tR 0.82分;MS(ES+) m/z 508(M+H) (条件a)。
【0089】
実施例1(12):(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン
実施例1(9)のS体化合物の代わりに、実施例1(9)のR体化合物を用いて、実施例1(10)と同様の操作を行い、以下の物性値を有する標題化合物を得た。
1H-NMR (CD3OD): δ9.31 (s, 1H), 7.91 (dd, 1H), 7.71 - 7.68 (m, 3H), 6.44 (dd, 1H), 6.20 (s, 1H), 6.03 (s, 1H), 5.84 (dd, 1H), 3.37-3.06 (m, 2H), 2.61 - 2.53 (m, 2H)。
【0090】
実施例1(13):(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物
実施例1(10)の化合物の代わりに、実施例1(12)の化合物を用いて、実施例1(11)と同様の操作を行い、以下の物性値を有する表題化合物を得た。
1H- NMR (DMSO-d6): δ 11.70 (s, 1H), 9.64 (s, 1H), 7.89 - 7.75 (m, 4H), 6.75 (brs, 2H), 6.38 (dd, 1H), 6.01 (d, 1H), 5.92 (s, 1H) , 5.69 (dd, 1H), 3.18 - 3.00 (m, 2H), 2.50 - 2.24 (m, 2H)。
【0091】
[結晶化検討]
実施例1(10)の化合物の結晶化検討を行った。なお、以下の検討において、光学異性が結果に影響を与えない実験については、実施例1(12)または実施例1(13)の化合物を用いて行ったものもある。
【0092】
先ず、実施例1(10)の化合物を用いて、実施例1(10)の化合物の塩の結晶化の可能性を検討した。
11種類の酸性(塩酸(1当量)、硫酸(1当量)、メタンスルホン酸(1当量)、4-トルエンスルホン酸、エタンスルホン酸(1当量)、イセチオン酸(1当量)、エタンジスルホン酸(1/2当量)、1,5-ナフタレンジスルホン酸(1/2当量)、シクラミン酸(1当量)、硝酸(1当量))を用い、12種類の溶媒(メタノール、エタノール,2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、水)を用い、自動結晶化装置(Freeslate製Core Module(X))の蒸発濃縮法(40℃加熱、室温蒸発)にて、実施例1(10)の化合物の塩の結晶化を検討した。
本検討の結果、種々の上記条件において、実施例1(10)の化合物の塩の結晶として得られたものはなかった。
【0093】
次いで、フリー体(実施例1(10)の化合物)としての結晶化検討を行った。
実施例1(13)の化合物を用いて,51種類の溶媒(メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、メチル tert-ブチルエーテル(MTBE)、テトラヒドロフラン、ヘプタン、トルエン、ジクロロメタン、水、1,4-ジオキサン、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、フルオロベンゼン、ブチロニトリル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジクロロエタン、炭酸ジメチル、ピリジン、1,2-ジメトキシエタン、tert-アミルアルコール、シクロヘキサン、トリエチルアミン、2,2,2-トリフルオロエタノール、オクタン、2-ヘキサノン、酢酸ブチル、シクロペンタノン、3-メチル-1-ブタノール、クロロベンゼン、2-エトキシエタノール、クメン、アニソール、N,N-ジメチルホルムアミド、メシチレン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ホルムアミド)を用い、自動結晶化装置(Freeslate製Core Module(X))を用いて、フリー体の結晶化を検討した。結晶化方法として、スラリー法(25℃および40℃)、沈殿法(室温析出)、蒸発濃縮法(40℃または80℃加熱、室温蒸発)の3条件を設定し、溶媒・結晶化方法を組み合せて、各塩に対して576通りの結晶化条件を設定した。
【0094】
本検討の結果、実施例1(12)として、結晶性良好な結晶として得られたのは、二水和物のみ(実施例1(13))であった。本データから、この鏡像体である実施例1(10)の化合物においても、結晶性良好な結晶は2水和物のみ(実施例1(11))となるが、実施例1(11)の化合物は、後述するように吸湿性が高いこと、および経口吸収性が低いことから、このまま医薬品の原薬として選択することはできないことが分かった。
これまでの塩およびフリー体検討で課題に合致する結晶を得ることができなかったことから、さらに、以下のように、実施例1(10)の化合物の共結晶の結晶化検討を行った。
【0095】
実施例1(13)の化合物を用いて、共結晶の結晶化の可能性を検討した。
60種類の試薬(シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、L-酒石酸、D-酒石酸、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2,4-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、3,4-ジヒドロキシ安息香酸、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、サッカリン、オロト酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、L-ピログルタミン酸、D-ピログルタミン酸、ベンズアミド、エチルマルトール、ニコチンアミド、グリコール酸、ソルビン酸、L-カンファー酸、D-カンファー酸、尿素、タウリン、マロン酸、L-マンデル酸、D-マンデル酸、マレイン酸、アントラニル酸、L-アラニン、D-アラニン、L-ラクトアミド、D-ラクトアミド、グリシン、L-トリプトファン、D-トリプトファン、N-アセチルグリシン、L-バリン、D-バリン、アスコルビン酸、クエン酸、グルタル酸、エリソルビン酸、ガラクタル酸、L-リンゴ酸、D-リンゴ酸、ソルビトール、myo-イノシトール、グルクロン酸、セバシン酸、コハク酸、D-ヒスチジン)を用い、6種類の溶媒(メタノール、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、ジクロロメタン)を用い、自動結晶化装置(Freeslate製Core Module(X))の蒸発濃縮法(40℃加熱、室温蒸発)にて、共結晶の結晶化を検討した。
【0096】
本検討の結果、種々の上記条件において、3,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、ニコチンアミド、および3-ヒドロキシ安息香酸(以下、それぞれ、RES、GEN、NIA、および3HBAと略記することがある。)の4種類のカウンターのみ、結晶を形成した。3HBAについては、2種類の結晶を形成した。下記に示す通り、4種類のカウンターのうち、RES、GENにおいては示差走査熱量測定、熱重量測定の物性データから吸湿性が懸念された。一方で、NIA、および3HBAについてはその懸念が少なかったことから、S体を作成し、以降の実験に供した。
【0097】
実施例2:(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-α-レゾルシン酸 (2/1)
実施例1(13)の化合物(20mg)にα-レゾルシン酸(2.83mg)とアセトニトリル(100μL)を加え、25℃で1日間撹拌した。生じた析出物を濾取し、ドラフト内で乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物の結晶を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 11.70, 9.65, 9.13, 7.86 - 7.75, 7.14 - 7.13, 6.96 - 6.92, 6.78 - 6.75, 6.40 - 6.36, 6.00, 5.92, 5.71, 5.68, 3.32, 3.20 - 2.93, 2.27 - 2.20。
【0098】
実施例3:(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-ゲンチジン酸 (2/1)
実施例1(13)の化合物(20mg)にゲンチジン酸(2.83mg)とアセトニトリル(100μL)を加え、25℃で1日間撹拌した。生じた析出物を濾取し減圧乾燥することにより、以下の物性値を有する標題化合物の結晶を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 12.67, 11.70, 9.65, 9.53, 7.89 - 7.75, 6.78 - 6.75, 6.40 - 6.37, 6.00, 5.92, 5.71 - 5.68, 3.32, 3.17 - 2.93, 2.26 - 2.20。
【0099】
実施例4:(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-ニコチンアミド (2/1)
実施例1(11)の化合物(500mg)をニコチンアミド(56.1mg)、アセトニトリル(5mL)と混合し、25℃で1日間撹拌した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで、以下の物性値を有する標題化合物(465mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): δ11.71, 9.65, 9.11- 8.89, 8.79 - 8.60, 8.24 - 8.09, 7.90 - 7.72, 7.61, 7.53 - 7.44, 6.75, 6.38, 6.00, 5.93, 5.74 - 5.65, 3.20 - 2.93, 2.29 - 2.19。
【0100】
実施例5:(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)
【0101】
【0102】
実施例1(11)の化合物(500mg)を3-ヒドロキシ安息香酸(127.0mg)、酢酸エチル(5mL)と混合し、25℃で1日間撹拌した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで、以下の物性値を有する標題化合物(529mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 12.82, 11.71, 9.73, 9.65, 7.90 - 7.72, 7.40 - 7.22, 7.02 - 6.93, 6.75, 6.38, 6.00, 5.92, 5.74 - 5.65, 3.20 - 2.93, 2.29 - 2.19。
【0103】
実施例6:(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (2/1)
実施例1(12)の化合物(500mg)を3-ヒドロキシ安息香酸(63.5mg)、アセトニトリル(5mL)と混合し、25℃で1日間撹拌した。生成した析出物を濾取し減圧乾燥させることで、以下の物性値を有する標題化合物(508mg)を得た。
1H-NMR (DMSO-d6): 11.70, 9.73, 9.65, 7.89 - 7.75, 7.35 - 7.27, 7.00 - 6.96, 6.75, 6.38, 6.00, 5.92, 5.70 - 5.68, 3.32, 3.17 - 2.93。
【0104】
[物性データの測定]
結晶が取得できた実施例1(11)、2、3、4、および5の化合物について、下記の条件で物性データを測定した。
(1)粉末X線回折スペクトル:
装置: Rigaku製 SmartLab
ターゲット: Cu
電圧: 45kV
電流: 200mA
(2)示差走査熱量測定(DSC):
装置:メトラー・トレド製 DSC822e 示差走査熱量分析装置
試料量:約1mg
試料セル:アルミパン40μL
窒素ガス流量:40ml/min
昇温速度:10℃/min
(3)熱重量測定(TG):
装置:メトラー・トレド製 TGA851e 熱重量測定装置
試料量:約2mg
試料セル:アルミニウムセル(蓋なし)
窒素ガス流量:60mL/min
昇温速度:10℃/min
【0105】
本発明において、(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オンの塩、溶媒和物または共結晶の各結晶形は、本明細書に記載された物理化学データによって特定されるものであるが、各スペクトルデータは、その性質上多少変わり得るものであるから、厳密に解されるべきではない。
例えば、粉末X線回折スペクトルデータは、その性質上、結晶の同一性の認定においては、回折角(2θ)や全体的なパターンが重要であり、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件によって多少変わり得る。
また、DSCデータにおいても、結晶の同一性の認定においては、全体的なパターンが重要であり、測定条件によって多少変わり得る。
したがって、本発明化合物において、粉末X線回折スペクトルまたはDSCとパターンが、それぞれ全体的に類似するものは、本発明化合物に含まれるものである。
【0106】
本明細書中、粉末X線回折パターンにおける回折角(2θ(度))およびDSC分析における温度(℃)の記載は、当該データ測定法において通常許容される誤差範囲を含むことを意味し、おおよそその回折角およびその温度であることを意味する。例えば、粉末X線回折における回折角(2θ(度))の「約」あるいは「実質的に同じ」は、ある態様としては±0.2度であり、さらに別の態様としては、±0.1度である。DSC分析におけるオンセット温度(℃)および吸熱ピーク温度(℃)の「約」は、ある態様としては±10℃であり、別の態様としては±5℃であり、さらに別の態様としては±2℃である。
【0107】
実施例1(11):(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロ-3-ピリジニル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロ-5(1H)-インドリジノン 二水和物のデータ
粉末X線回折スペクトルにおいて、
図1に示される粉末X線回析スペクトル、表2に示される回折角(2θ)および相対強度を示した。
示差走査熱量測定において、
図6に示すチャートのとおり、約室温から約87℃の範囲に吸熱を示し、約155℃から吸熱および発熱を示した。
熱重量測定において、
図11に示すチャートのとおり、約室温から約60℃までに約6.5%(水1.7分子に相当する)の重量減少を示した。
【0108】
【0109】
実施例2:(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-α-レゾルシン酸 (2/1)のデータ
粉末X線回折スペクトルにおいて、
図2に示される粉末X線回析スペクトル、表3に示される回折角(2θ)および相対強度を示した。
示差走査熱量測定において、
図7に示すチャートのとおり、約室温から約90℃の範囲にブロードな吸熱を示し、約175℃から吸熱および発熱を示した。
熱重量測定において、
図12に示すチャートのとおり、約室温から約63℃までに約1.1%の重量減少を示した。
【0110】
【0111】
実施例3:(3R)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-ゲンチジン酸 (2/1)のデータ
粉末X線回折スペクトルにおいて、
図3に示される粉末X線回析スペクトル、表4に示される回折角(2θ)および相対強度を示した。
示差走査熱量測定において、
図8に示すチャートのとおり、約室温から約100℃の範囲にブロードな吸熱と、約155℃から吸熱および発熱を示した。
熱重量測定において、
図13に示すチャートのとおり、約室温から約56℃までに約1.0%の重量減少を示した。
【0112】
【0113】
実施例4:(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-ニコチンアミド (2/1)のデータ
粉末X線回折スペクトルにおいて、
図4に示される粉末X線回析スペクトル、表5に示される回折角(2θ)および相対強度を示した。
示差走査熱量測定において、
図9に示すチャートのとおり、約144℃から吸熱および発熱を示した。
熱重量測定において、
図14に示すチャートのとおり、約室温から約65℃までに約0.4%(1%未満)の重量減少を示した。
【0114】
【0115】
実施例5:(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸 (1/1)のデータ
粉末X線回折スペクトルにおいて、
図5に示される粉末X線回析スペクトル、表6に示される回折角(2θ)および相対強度を示した。
示差走査熱量測定において、
図10に示すチャートのとおり、約200℃から約234℃の範囲に発熱を示した。オンセット温度は213.6℃、発熱ピーク温度は214.7℃であった。
熱重量測定において、
図15に示すチャートのとおり、約室温からまで約156℃までに重量減少は認められなかった。
【0116】
【0117】
実施例5の化合物の単結晶X線構造解析データを、以下の表7~10に示す。
【0118】
[測定条件]
装置:(株)リガク製 単結晶X線解析装置SuperNova
ターゲット:Cukα(λ=1.54184Å)
測定温度:100K
解析ソフト:Olex2[1]
1.Dolomanov, O.V., Bourhis, L.J., Gildea, R.J, Haward, J.A.K. & Puschmann, H. (2009), J. Appl. Cryst. 42, 339-341.
結晶学的データは次の通りである。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
一般に、二つの成分が共結晶として存在することを証明するためには、a/b>1.08(Mol Pharm. 2007 May-Jun;4(3):317-22)、および/または、ΔDc-o>0.08Å(Mol Pharm. 2007 May-Jun;4(3):323-38)であることを示す必要がある。
上記原子座標の表より導かれるa/bおよびΔDc-oの値は、それぞれa/b≒1.091およびΔDc-o≒0.208であることより、実施例1(10)の化合物と3-ヒドロキシ安息香酸は、共結晶として存在していることは明らかである。
なお、当該単結晶X線構造解析データから変換した粉末X線回折スペクトルデータと、実施例5の化合物の実測粉末X線回折スペクトルデータを比較したところ、散乱ピークが一致したことから、実施例5の化合物は共結晶であることは明らかである。
また、固体1H-NMRおよび13C-NMR(CP/MAS)(CP:cross-polarization、MAS:magic-angle spinning)、ならびに1H-13C CP-HETCOR(HETCOR:Heteronuclear Correlation Spectroscopy)の測定結果からも、実施例1(10)の化合物と3-ヒドロキシ安息香酸は、共結晶として存在していることが確認できた。
【0124】
物理化学的実施例1:吸湿性評価
以下の条件で等温吸着曲線測定(DVS)を実施した。
(条件)
装置:SMS社製 DVS Intrinsic
測定温度:25℃
測定範囲:相対湿度0~95%
測定間隔:相対湿度5%
本評価の結果、
図16に示されるように、実施例5の化合物の本評価における重量変化率は1%未満であり、3HBAの共結晶のみが低吸湿性であることがわかった。
【0125】
物理化学的実施例2:溶解度評価
以下の条件で溶解度測定を実施した。
本発明化合物を試験管に約3mg秤量し、撹拌子と37℃に加温した人工腸液(FaSSIF;参照文献1:ファーマシューティカル・リサーチ(Pharmaceutical Research)、第20巻、1674-1680頁、2003年,参照文献2:バイオロジカル・アンド・ファーマシューティカル・ブレティン(Biological & Pharmaceutical Bulletin)、第34巻、401-407頁、2011年)および局方I液5mLを試験管に加えて、試験管を密栓した。試験管を溶解度試験装置(Gilson,Quad-Z 215)に設置して、37℃、700rpmで撹拌した。0.25、0.5、1、3、6、および24時間後に一部試験管中の液を採取した。採取液をフィルターでろ過し、ろ液をアセトニトリルにて2倍希釈した。人工腸液の希釈液は3000rpm、5分間、遠心分離し,その上清を試料溶液とした.局方I液は希釈液自体を試料溶液とし,高速液体クロマトグラフィー法により溶解度を算出した。
【0126】
[測定条件]
装置:Shimadzu HPLC NexeraXRseries
カラム:Waters Xbridge ShieldRP18(4.6mm内径×50mm、3.5μm)
カラム温度:40℃
移動相成分:20mMリン酸二水素カリウム(pH3.0)/アセトニトリル(0分:70/30,5分:25/75)
UV:285nm
流速:1.0mL/min
サンプルラック温度:15℃
サンプル注入量:10μL
測定時間:5分
保持時間:2.6分
【0127】
24時間後の実施例1(11)、実施例4および実施例5の化合物の溶解度を以下の表11に示す。
【0128】
【0129】
実施例1(11)の化合物の局方I液への溶解度は41μg/mLであり、実施例4および実施例5の化合物の局方I液への溶解度はそれぞれ77μg/mLおよび75μg/mLであった。また、実施例1(11)の化合物の人工腸液への溶解度は47μg/mLであり、実施例4および実施例5の化合物の共結晶の人工腸液への溶解度は共に60μg/mLであった。
【0130】
物理化学的実施例3:経口吸収性評価
以下の条件で経口吸収性測定を実施した。
【0131】
[調製・投与および採血方法]
実施例1(11)、実施例4および実施例5の化合物の懸濁液を調製した。懸濁液は0.5%メチルセルロース水溶液で0.33mg/mL(遊離塩基換算)に調製した。各懸濁液を、予め前日から絶食しておいたサル(カニクイザル/雄)に、ゾンデを用いて強制的に胃内へ投与した。なお、投与量は1mg/kgとなるよう、サル体重に応じて調製した。
懸濁液(薬液)投与後、0.25、0.5、1、2、4、7、および24時間後に橈側皮静脈(とうそくひじょうみゃく)よりヘパリン加シリンジを用いて、血液0.5mLを採取した。採取した血液を10000Gで5分間遠心分離して血漿を分取した。なお、試験化合物の経口吸収性の評価に際しては、同投与量(1mg/kg)で静脈内投与を行った際のデータを使用した。経口吸収率(%)は、経口投与時のAUC(血中濃度-時間曲線下面積)を静脈内投与時のAUCで除した値に100を乗じることにより算出した。
【0132】
[分析試料の調製・分析]
血漿10μLに水/アセトニトリル(19/1)200μL及び内標準物質(実施例1(10)の化合物の構造類縁体)含有アセトニトリル10μLを添加して撹拌した。全量を,予めアセトニトリル200μL及び精製水200μLを通したOasis HLB μElution Plateに添加し,減圧吸引した。精製水200μLを添加し,減圧吸引して洗浄した。アセトニトリル200μLを添加し,減圧吸引して96穴プレートに溶出液を回収した。0.1%ギ酸水溶液/アセトニトリル(2/1)290μLに溶出液10μLを添加して撹拌し,LC/MS/MSにて分析した。
【0133】
LC/MS/MSによる分析は、以下の条件で行った。
[LC/MS/MS条件]
測定装置:API-5000(Applied Biosystems/MDS SCIEX社製)
分析カラム:Cadenza CD-C18(2.0mm I.D.×100mm、3μm)
流速:0.4mL/分
移動相成分:0.1%ギ酸水溶液/アセトニトリル(0分:65/35,4.0分:65/35,4.1分:10/90,5.0分:10/90,5.1分:65/35,7.0分:65/35)
スキャンタイプ:MRM(多重反応モニタリング;Multiple Reaction Monitoring)
Polarity:Positive
【0134】
本評価の結果を
図17に示す。実施例1(11)、実施例4および実施例5の化合物のうち、実施例1(11)、および実施例4の化合物の経口吸収率はそれぞれ26%および44%であった。これに対して、実施例5の化合物の経口吸収率はほぼ100%であった。
【0135】
[製剤例]
製剤例1:
化合物A 5mg含有錠
以下の各成分を常法により混合した後打錠して、一錠中に5mgの活性成分を含有する錠剤1万錠を得る。
・(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸(1/1):50g
・カルボキシメチルセルロースカルシウム(崩壊剤):20g
・ステアリン酸マグネシウム(潤滑剤):10g
・微結晶セルロース:920g
【0136】
製剤例2:
化合物A 20mg含有注射剤
以下の各成分を常法により混合した後、溶液を常法により滅菌し、5mLずつアンプルに充填し、常法により凍結乾燥し、1アンプル中20mgの活性成分を含有するアンプル1万本を得る。
・(3S)-3-[2-(6-アミノ-2-フルオロピリジン-3-イル)-4-フルオロ-1H-イミダゾール-5-イル]-7-[5-クロロ-2-(1H-テトラゾール-1-イル)フェニル]-2,3-ジヒドロインドリジン-5(1H)-オン-3-ヒドロキシ安息香酸(1/1):200g
・マンニトール:20g
・蒸留水:50L
【産業上の利用可能性】
【0137】
化合物Aは、非常に強力な血液凝固第XIa因子阻害活性を有することに加え、低吸湿性に優れ、経口吸収性にも優れており、医薬品の原薬として大変有用である。