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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/02 20060101AFI20221220BHJP
   H03B 5/32 20060101ALI20221220BHJP
   H01L 23/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03B5/32 H
H01L23/04 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020559313
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048700
(87)【国際公開番号】W WO2020122179
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018234555
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 悟
(72)【発明者】
【氏名】古城 有果
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-108385(JP,A)
【文献】特開2012-034086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/00- 9/74
H03B 5/30- 5/42
H01L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、
前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動板の振動部を気密封止する封止部は、平面視で、環状に形成され、
前記第2封止部材の他主面には、外部回路基板に電気的に接続する複数の外部電極端子が形成され、前記各外部電極端子が、平面視で、前記内部空間を囲う外枠部に沿うように配置され
前記外部電極端子が、平面視で、前記外枠部にのみ重畳するように配置されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項2】
基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、
前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、
前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、
前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、
前記圧電振動板の振動部を気密封止する封止部は、平面視で、環状に形成され、
前記第2封止部材の他主面には、外部回路基板に電気的に接続する複数の外部電極端子が形成され、前記各外部電極端子が、平面視で、前記内部空間を囲う外枠部に沿うように配置され、
前記各外部電極端子が、平面視で、略L字状に形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記各外部電極端子が、前記第2封止部材の他主面の隅部に配置されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の圧電振動デバイスにおいて、
前記外部電極端子が、前記第2封止部材の他主面の4隅にそれぞれ配置されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の動作周波数の高周波化や、パッケージの小型化(特に低背化)が進んでいる。そのため、高周波化やパッケージの小型化にともなって、圧電振動デバイス(例えば水晶振動子、水晶発振器など)も高周波化やパッケージの小型化への対応が求められている。
【0003】
この種の圧電振動デバイスでは、その筐体が略直方体のパッケージで構成されている。このパッケージは、例えばガラスや水晶からなる第1封止部材および第2封止部材と、例えば水晶からなり両主面に励振電極が形成された圧電振動板とから構成され、第1封止部材と第2封止部材とが圧電振動板を介して積層して接合される。そして、パッケージの内部(内部空間)に配された圧電振動板の振動部(励振電極)が気密封止されている(例えば、特許文献1)。以下、このような圧電振動デバイスの積層形態をサンドイッチ構造という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-252051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような圧電振動デバイスでは、第2封止部材の第2主面(他主面)に、外部回路基板に電気的に接続するための複数の外部電極端子(裏面端子)が形成されている。また、圧電振動板の振動部を気密封止する封止部(シールパス)が、平面視で、環状に形成されている。
【0006】
ところで、圧電振動デバイスを外部回路基板に実装する際、外部電極端子は、例えば半田等の導電性接着剤を用いて外部回路基板に接続される。外部回路基板への実装時、半田等の導電性接着剤が収縮することによって、外部電極端子を介して、第2封止部材の長辺方向に沿った引張応力あるいは圧縮応力が作用する。つまり、外部回路基板への実装時、第2封止部材が反るように第2封止部材を変形させようとする応力が発生し、この応力がシールパスに作用することが懸念される。
【0007】
しかし、従来では、複数の外部電極端子が、第2封止部材の他主面のほとんどの領域を占めるように配置されており、上述した応力による第2封止部材の変形に対する対策は行われていなかった。このため、外部回路基板への実装時、第2封止部材の変形に起因してシールパスに作用する応力が大きくなる可能性がある。
【0008】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、外部回路基板への実装時、圧電振動板の振動部を気密封止する封止部に作用する応力を低減することが可能な圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、前記圧電振動板の振動部を気密封止する封止部は、平面視で、環状に形成され、前記第2封止部材の他主面には、外部回路基板に電気的に接続する複数の外部電極端子が形成され、前記各外部電極端子が、平面視で、前記内部空間を囲う外枠部に沿うように配置され、前記外部電極端子が、平面視で、前記外枠部にのみ重畳するように配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、外部電極端子が、平面視で外枠部に沿うように配置されているので、外部電極端子のうち、内部空間に重畳する部分をできる限り小さくすることができる。これにより、外部回路基板への実装時、第2封止部材の変形に起因する封止部に作用する応力を低減することができ、封止部の気密性を向上させることができる。また、外部電極端子が、平面視で、外枠部にのみ重畳するように配置されているので、外部電極端子のうち、内部空間に重畳する部分をなくすことができ、外部回路基板への実装時、第2封止部材の変形に起因する封止部に作用する応力をより低減することができ、封止部の気密性をより向上させることができる。
【0011】
また、本発明は、基板の一主面に第1励振電極が形成され、前記基板の他主面に前記第1励振電極と対になる第2励振電極が形成された圧電振動板と、前記圧電振動板の前記第1励振電極を覆う第1封止部材と、前記圧電振動板の前記第2励振電極を覆う第2封止部材と、が設けられ、前記第1封止部材と前記圧電振動板とが接合され、かつ前記第2封止部材と前記圧電振動板とが接合されることによって、前記第1励振電極と前記第2励振電極とを含む前記圧電振動板の振動部を気密封止した内部空間が設けられた圧電振動デバイスにおいて、前記圧電振動板の振動部を気密封止する封止部は、平面視で、環状に形成され、前記第2封止部材の他主面には、外部回路基板に電気的に接続する複数の外部電極端子が形成され、前記各外部電極端子が、平面視で、前記内部空間を囲う外枠部に沿うように配置され、前記各外部電極端子が、平面視で、略L字状に形成されていることを特徴とする
【0012】
上記構成によれば、外部電極端子が、平面視で外枠部に沿うように配置されているので、外部電極端子のうち、内部空間に重畳する部分をできる限り小さくすることができる。これにより、外部回路基板への実装時、第2封止部材の変形に起因する封止部に作用する応力を低減することができ、封止部の気密性を向上させることができる。また、各外部電極端子が、平面視で、略L字状に形成されているので、外枠部の限られたスペースを効率的に活用して外部電極端子を配置することができる
【0013】
上記構成において、前記各外部電極端子が、前記第2封止部材の他主面の隅部に配置されていることが好ましい。この場合、前記外部電極端子が、前記第2封止部材の他主面の4隅にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0014】
これらの構成によれば、外枠部の限られたスペースを効率的に活用して外部電極端子を配置することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の圧電振動デバイスによれば、外部電極端子が、平面視で外枠部に沿うように配置されているので、外部電極端子のうち、内部空間に重畳する部分をできる限り小さくすることができる。これにより、外部回路基板への実装時、第2封止部材の変形に起因する封止部に作用する応力を低減することができ、封止部の気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態にかかる水晶発振器の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図2図2は、水晶発振器の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図3図3は、水晶発振器の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図4図4は、水晶発振器の水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図5図5は、水晶発振器の水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図6図6は、水晶発振器の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図7図7は、水晶発振器の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図8】変形例にかかる水晶発振器を示す図7相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施の形態では、本発明を適用する圧電振動デバイスが水晶発振器である場合について説明する。
【0018】
まず、本実施の形態にかかる水晶発振器100の基本的な構造を説明する。水晶発振器100は、図1に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、第2封止部材30、およびICチップ40を備えて構成されている。この水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶発振器100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)C1が形成され、この内部空間C1に振動部11(図4,5参照)が気密封止される。
【0019】
また、第1封止部材20における水晶振動板10との接合面と反対側の主面には、ICチップ40が搭載される。電子部品素子としてのICチップ40は、水晶振動板10とともに発振回路を構成する1チップ集積回路素子である。
【0020】
本実施の形態にかかる水晶発振器100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、後述するスルーホールを用いて電極の導通を図っている。
【0021】
次に、上記した水晶発振器100における水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30の各部材について、図1~7を用いて説明する。なお、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。図2~7は、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの一構成例を示しているに過ぎず、これらは本発明を限定するものではない。
【0022】
水晶振動板10は、図4,5に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101,第2主面102)が平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。本実施の形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図4,5に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0023】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111,第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。
【0024】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111,第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するための引出配線(第1引出配線113,第2引出配線114)が接続されている。第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0025】
水晶振動板10の両主面(第1主面101,第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動側封止部としては振動側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動側封止部としては振動側第2接合パターン122が形成されている。振動側第1接合パターン121および振動側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0026】
また、水晶振動板10には、図4,5に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図4,5では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0027】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0028】
第1封止部材20は、図2,3に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶発振器100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0029】
第1封止部材20の第1主面201(ICチップ40を搭載する面)には、図2に示すように、発振回路素子であるICチップ40を搭載する搭載パッドを含む6つの電極パターン22が形成されている。ICチップ40は、金属バンプ(例えばAuバンプなど)23(図1参照)を用いて電極パターン22に、FCB(Flip Chip Bonding)法により接合される。
【0030】
第1封止部材20には、図2,3に示すように、6つの電極パターン22のそれぞれと接続され、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4,第5スルーホール212,213は、図2,3の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0031】
第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4,第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。
【0032】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止側第1封止部としての封止側第1接合パターン24が形成されている。封止側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。
【0033】
また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。
【0034】
第2封止部材30は、図6,7に示すように、1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)は平坦平滑面(鏡面加工)として形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0035】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止側第2封止部としての封止側第2接合パターン31が形成されている。封止側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。
【0036】
第2封止部材30の第2主面302(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、水晶発振器100の外部に設けられる外部回路基板(図示省略)に電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。
【0037】
第2封止部材30には、図6,7に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。このようにスルーホールの内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された外部電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。
【0038】
上記の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶発振器100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間C1、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0039】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶発振器100では、第1励振電極111、第2励振電極112、ICチップ40および外部電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。
【0040】
具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212および電極パターン22を順に経由して、ICチップ40に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213および電極パターン22を順に経由して、ICチップ40に接続される。また、ICチップ40は、電極パターン22、第3スルーホール211、第1スルーホール161および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。
【0041】
水晶発振器100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。また、水晶発振器100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0042】
上述のように構成された水晶発振器100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動側第1接合パターン121および封止側第1接合パターン24の拡散接合によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動側第2接合パターン122および封止側第2接合パターン31の拡散接合によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0043】
このように拡散接合によってシールパス115,116が形成された水晶発振器100において、第1封止部材20と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有し、第2封止部材30と水晶振動板10とは、1.00μm以下のギャップを有する。つまり、第1封止部材20と水晶振動板10との間のシールパス115の厚みが、1.00μm以下であり、第2封止部材30と水晶振動板10との間のシールパス116の厚みが、1.00μm以下(具体的には、本実施の形態のAu-Au接合では0.15μm~1.00μm)である。なお、比較例として、Snを用いた従来の金属ペースト封止材では、5μm~20μmとなる。
【0044】
本実施の形態では、第2封止部材30の第2主面(他主面)302には、外部回路基板に接続する複数(本実施の形態では4つ)の外部電極端子32が形成され、各外部電極端子32が、平面視で、内部空間C1を囲う外枠部W1に沿うように配置されている。以下、この点について説明する。
【0045】
図7には、内部空間C1と外枠部W1との境界線L1を2点鎖線で示している。つまり、境界線L1は、内部空間C1の外周縁であって、外枠部W1の内周縁になっている。本実施の形態では、境界線L1は、平面視で、水晶振動板10の外枠部12の内周縁に略一致する位置に設けられている。
【0046】
外枠部W1は、水晶発振器100において、第1封止部材20および水晶振動板10と、第2封止部材30および水晶振動板10とが略隙間のない状態で密着している部分になっている。略隙間のない状態で密着しているとは、第1封止部材20および水晶振動板10の隙間と、第2封止部材30および水晶振動板10の隙間とが、上述したギャップ(1.00μm)以下で密着していることを意味する。本実施の形態では、外枠部W1は、平面視で、水晶振動板10の外枠部12に略一致する位置に設けられている。
【0047】
内部空間C1は、水晶発振器100において、第1封止部材20および水晶振動板10と、第2封止部材30および水晶振動板10とが密着しておらず、隙間を有する部分になっている。この場合、第1封止部材20および水晶振動板10の隙間と、第2封止部材30および水晶振動板10の隙間とが、上述したギャップ(1.00μm)よりも大きくなっている。また、水晶振動板10の振動部11と外枠部12の間の空間の部分も、内部空間C1になっている。内部空間C1は、シールパス115,116よりも内周側に設けられている。本実施の形態では、内部空間C1は、平面視で、水晶振動板10の外枠部12よりも内側の領域に略一致する位置に設けられている。
【0048】
本実施の形態では、第2封止部材30の第2主面302に形成された4つの外部電極端子32は、平面視で、内部空間C1を囲う外枠部W1に沿うように配置されている。詳細には、各外部電極端子32は、平面視で、外枠部W1にのみ重畳するように配置されており、外枠部W1と内部空間C1とに跨らないように配置されている。各外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅の領域に配置されている。各外部電極端子32は、平面視で、略L字状に形成されている。各外部電極端子32は、X軸方向に沿って延びるX軸方向部分およびZ´軸方向に沿って延びるZ´軸方向部分を有しており、X軸方向部分の一端とZ´軸方向部分の一端とが、第2封止部材30の第2主面302の4隅で接続されている。
【0049】
本実施の形態によれば、外部電極端子32が、平面視で外枠部W1に沿うように配置されているので、水晶発振器100の外部回路基板への実装時、シールパス115,116に作用する応力を低減することができ、シールパス115,116の気密性を向上させることができる。この点について以下に説明する。
【0050】
水晶発振器100を外部回路基板に実装する際、外部電極端子32は、例えば半田等の導電性接着剤を用いて外部回路基板に接続される。外部回路基板への実装時、半田等の導電性接着剤が収縮することによって、外部電極端子32を介して、第2封止部材30に対しZ´軸方向に沿った引張応力あるいは圧縮応力が作用する。つまり、外部回路基板への実装時、第2封止部材30が反るように第2封止部材30を変形させようとする応力が発生し、この応力がシールパス115,116に作用する可能性がある。この場合、外部電極端子32のうち、平面視で、内部空間C1に重畳する部分が大きいほど、外部回路基板への実装時、第2封止部材30の変形に起因してシールパス115,116に作用する応力が大きくなる可能性があり、シールパス115,116の気密性を確保できなくなる可能性がある。その理由は、外部電極端子32が、外枠部W1に重畳する比較的安定した部分と、内部空間C1に重畳する比較的不安定な部分とに跨って配置されるためであると考えられる。
【0051】
これに対し、本実施の形態では、外部電極端子32が、平面視で外枠部W1に沿うように配置されているので、外部電極端子32のうち、内部空間C1に重畳する部分をできる限り小さくすることができる。これにより、外部回路基板への実装時、第2封止部材30の変形に起因するシールパス115,116に作用する応力を低減することができ、シールパス115,116の気密性を向上させることができる。
【0052】
しかも、外部電極端子32が、平面視で、外枠部W1にのみ重畳するように配置されており、外枠部W1と内部空間C1とに跨らないように配置されているので、外部電極端子32のうち、内部空間C1に重畳する部分をなくすことができる。これにより、外部回路基板への実装時、第2封止部材30の変形に起因するシールパス115,116に作用する応力をより低減することができ、シールパス115,116の気密性をより向上させることができる。
【0053】
また、外部電極端子32が、第2封止部材30の第2主面302の4隅の領域に配置されており、さらに、外部電極端子32が、平面視で、略L字状に形成されている。このように、4つの外部電極端子32が、平面視で、内部空間C1を囲うように設けられているので、外枠部W1の限られたスペースを効率的に活用して外部電極端子32を配置することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、外部電極端子32が、第2封止部材30の第2主面302側にのみ設けられ、第1封止部材20の第1主面301側には設けられていない。第1封止部材20の第1主面201側には、ICチップ40を搭載するための電極パターン22が設けられている。つまり、外部電極端子32が、水晶発振器100の片面(第2封止部材側)にのみ形成されるようになっている。さらに、水晶発振器100において、第2封止部材30上の外部電極端子32が、第1封止部材20上の電極パターン22と同一の膜構成(層構成)になっており、例えば、上述した各種接合パターンと同一の膜構成とすることが可能になっている。具体的には、外部電極端子32および電極パターン22は、複数の層が積層された構成なっており、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着形成されているものとすることが好ましい。このように、外部電極端子32および電極パターン22の膜構成を、水晶発振器100に形成される他の接合パターンや配線、電極等と同一の膜構成にすることによって、外部電極端子32および電極パターン22を、水晶発振器100に形成される他の接合パターンや配線、電極等と同時にパターニングでき、好ましい。加えて、第2封止部材30上の外部電極端子32が、第1封止部材20上の電極パターン22と同一の膜構成(層構成)になっていることで、これらの膜構成による応力バランスを均一化することができ、より好ましい構成になっている。
【0055】
今回開示した実施の形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0056】
上記実施の形態では、本発明を水晶発振器100に適用した場合について説明した。しかし、これに限定されるものではなく、第1封止部材20、水晶振動板10、および第2封止部材30が積層された構成の水晶振動子に本発明を適用してもよい。
【0057】
上記実施の形態では、第2封止部材30の第2主面302の外部電極端子32の数を4つとしたが、これに限定されるものではなく、外部電極端子32の数を、例えば、2つ、6つ、あるいは8つ等としてもよい。また、外部電極端子32の形状は略L字状に限らず、任意の形状であってもよい。例えば、図8に示すように、外部電極端子32の形状を、X軸方向に沿って延びるX軸方向部分のみを有する略矩形状としてもよい。また、全ての外部電極端子32の形状は同一でなくてもよく、例えば、4つの外部電極端子32のうちの1つを、マーキング用の突起または切欠きを有する形状としてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、外部電極端子32を、平面視で、外枠部W1にのみ重畳するように配置したが、外部電極端子32の一部分が内部空間C1に重畳していてもよい。この場合、外部電極端子32のうち、内部空間C1に重畳する部分をできる限り小さくする観点から、外部電極端子32のほとんどの全ての部分(例えば90%以上の面積の部分)が外枠部W1に重畳し、残り僅かの部分(例えば10%以下の面積の部分)が内部空間C1に重畳することが好ましい。
【0059】
上記実施の形態では、第1封止部材20の第2主面202および第2封止部材30の第1主面301が平坦面である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第1封止部材20の第2主面202および第2封止部材30の第1主面301の少なくとも一方に凹部が形成されていてもよい。また、水晶振動板10の振動部11を外枠部12に比べて薄く形成してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、第1封止部材20および第2封止部材30を水晶板によって形成したが、これに限定されるものではなく、第1封止部材20および第2封止部材30を、例えば、ガラスや、セラミックスによって形成してもよい。
【0061】
この出願は、2018年12月14日に日本で出願された特願2018-234555号に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
10 水晶振動板(圧電振動板)
11 振動部
20 第1封止部材
30 第2封止部材
32 外部電極端子
100 水晶発振器(圧電振動デバイス)
111 第1励振電極
112 第2励振電極
115,116 シールパス(封止部)
302 第2主面(他主面)
C1 内部空間
W1 外枠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8