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特許7196974廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法および回収設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法および回収設備
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20221220BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20221220BHJP
   C22B 3/02 20060101ALI20221220BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20221220BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20221220BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20221220BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/00 601
C22B3/02
C22B3/06
C22B3/22
C22B3/44 101B
C22B3/44 101Z
C22B47/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021150620
(22)【出願日】2021-09-15
【審査請求日】2022-11-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100204401
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 睦美
(72)【発明者】
【氏名】篠田 万里子
(72)【発明者】
【氏名】山口 東洋司
(72)【発明者】
【氏名】小澤 純仁
(72)【発明者】
【氏名】木島 秀夫
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/075136(WO,A1)
【文献】特開2015-206077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
C22B 1/00
C22B 3/06
C22B 3/44
C22B 3/22
C22B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を選別する選別工程と、
前記選別工程で選別された前記マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、
前記破砕・篩い分け工程で得られた前記粉粒体に、酸溶液および酸化剤を混合して第1浸出液および第1浸出残渣を得る酸・酸化剤処理工程と、
前記酸・酸化剤処理工程で得られた前記第1浸出液と前記第1浸出残渣とを分離する第一の固液分離工程と、
前記第一の固液分離工程で分離された前記第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を混合して第2浸出液および第2浸出残渣を得る酸・還元剤処理工程と、
前記酸・還元剤処理工程で得られた前記第2浸出液と前記第2浸出残渣とを分離する第二の固液分離工程と、
前記第二の固液分離工程で分離された前記第2浸出液から、該第2浸出液に含有される亜鉛イオン、鉄イオンおよびマンガンイオンのうち、前記亜鉛イオンおよび鉄イオンを除去して、前記マンガンイオンを含有する溶液を得るマンガン抽出工程と、
をこの順に施し、
前記マンガン抽出工程が、
前記亜鉛イオンに硫化物を作用させて該亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程と、さらに、得られた亜鉛含有沈殿物を分離する亜鉛分離工程とを含む亜鉛除去工程と;
前記鉄イオンを酸化させて該鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程と、さらに、得られた鉄含有沈殿物を分離する鉄分離工程とを含む鉄除去工程と;
を順不同に含む、廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法。
【請求項2】
前記酸・酸化剤処理工程における前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウム溶液、酸素、オゾン、過マンガン酸カリウム溶液のいずれかである、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】
前記酸・酸化剤処理工程における前記酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸である、請求項1または2に記載の回収方法。
【請求項4】
前記酸・酸化剤処理工程における前記粉粒体と前記酸溶液との固液比が50g/L以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項5】
前記酸・還元剤処理工程における前記酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸である、請求項1~4のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項6】
前記酸・還元剤処理工程における前記還元剤が、過酸化水素、硫化ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、および硫酸鉄のいずれかである、請求項1~5のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項7】
前記マンガン抽出工程が、前記亜鉛除去工程、続いて前記鉄除去工程の順に行われ、
前記亜鉛除去工程では、前記第2浸出液に硫化物を作用させて該第2浸出液中の亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程を施した後に、得られた亜鉛含有沈殿物とマンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液とを固液分離する亜鉛分離工程を施し、
前記鉄除去工程では、前記亜鉛除去工程で得られた前記第3溶液を酸化させて該第3溶液中の鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程を施した後に、得られた鉄含有沈澱物とマンガンイオンを含有する第4溶液とを固液分離する鉄分離工程を施す、請求項1~6のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項8】
前記硫化物沈殿処理工程において、前記第2浸出液をpH:2以上6以下に調整する、請求項7に記載の回収方法。
【請求項9】
前記酸化処理工程において、前記マンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液に対して空気曝気を行う、またはさらに該第3溶液に対して酸化剤を添加し、かつ該第3溶液をpH:3以上7以下に調整する、請求項7または8に記載の回収方法。
【請求項10】
前記マンガン抽出工程が、前記鉄除去工程、続いて前記亜鉛除去工程の順に行われ、
前記鉄除去工程では、前記第2浸出液を酸化させて該第2浸出液中の鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程を施した後に、得られた鉄含有沈澱物とマンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液とを固液分離する鉄分離工程を施し、
前記亜鉛除去工程では、前記鉄除去工程で得られた前記第3溶液に硫化物を作用させて該第3溶液中の亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程を施した後に、得られた亜鉛含有沈澱物とマンガンイオンを含有する第4溶液とを固液分離する亜鉛分離工程を施す、請求項1~6のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項11】
前記硫化物沈殿処理工程において、前記マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液をpH:2以上6以下に調整する、請求項10に記載の回収方法。
【請求項12】
前記酸化処理工程において、前記第2浸出液に対して空気曝気を行い、かつ該第2浸出液をpH:3以上7以下に調整する、請求項10または11に記載の回収方法。
【請求項13】
前記硫化物沈殿処理工程において使用する硫化物が、水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素のうちのいずれかである、請求項1~12のいずれか一項に記載の回収方法。
【請求項14】
廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を選別する選別装置と、
前記選別装置で選別された前記マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を装入して破砕処理を施し、破砕処理物を得る破砕装置と、
前記破砕装置で得られた前記破砕処理物に篩い分け処理を施して粉粒体を得る篩い分け装置と、
前記篩い分け装置で得られた前記粉粒体に、酸溶液および酸化剤を作用させる酸・酸化剤処理槽と、
前記酸・酸化剤処理槽で得られた第1浸出液と第1浸出残渣とを分離する第一の固液分離装置と、
前記第一の固液分離装置で分離された前記第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を作用させる酸・還元剤処理槽と、
前記酸・還元剤処理槽で得られた第2浸出液と第2浸出残渣とを分離する第二の固液分離装置と、
前記第二の固液分離装置で分離された前記第2浸出液から、該第2浸出液に含有される亜鉛イオン、鉄イオンおよびマンガンイオンのうち、前記亜鉛イオンおよび鉄イオンを除去して、前記マンガンイオンを含有する溶液を得るマンガン抽出装置群と、
をこの順で備え、
前記マンガン抽出装置群が、
前記亜鉛イオンに硫化物を作用させて該亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理槽と、さらに、得られた亜鉛含有沈殿物を固液分離する亜鉛分離装置とを含む亜鉛除去装置群と;
前記鉄イオンを酸化させて該鉄イオンを沈殿させる酸化処理槽と、さらに、得られた鉄含有沈殿物を固液分離する鉄分離装置とを含む鉄除去装置群と;
を順不同に含む、廃乾電池に含有されるマンガンの回収設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃乾電池からの有価金属の回収方法および回収設備に関する。本発明は、とくに有価金属として、廃棄されたマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を酸および酸化剤で処理した後に、廃乾電池の主要有価成分であるマンガンを分離し、各種電池用として使用可能な程度の高純度マンガンとして回収できる、廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法および回収設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属資源の枯渇や取引価格の上昇等により、低品位の原鉱や、精鉱、製鉄所副生成物、産業廃棄物等から有価金属を積極的に回収することが必要になってきた。例えば、有価金属の一つであるマンガンは、産業界の多岐に亘る分野で必須の金属とされており、将来、その需要量が埋蔵量を上回ることが懸念されている。とくに、製鉄所では、従来から製鋼原料としてマンガンを大量に消費しており、マンガン源の確保は、製鉄分野において極めて重要な問題である。また近年では、リチウムイオン電池を初めとする二次電池用にマンガンの消費が増大しており、この二次電池分野においても、マンガン源の確保は極めて深刻な問題となっている。
【0003】
一方、日本国内では、莫大な量の乾電池が生産され、消費され、産業廃棄物として処分および破棄されている。産業廃棄物として破棄されている乾電池(廃乾電池)の一部には、マンガン含有率が高いものが存在する。例えば、1次電池として代表的なマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池は、正極材料に二酸化マンガンを使用している。
したがって、これらの廃乾電池からマンガン成分を高純度に回収することができれば、マンガン源の安定的な確保という面で有望である。
【0004】
しかしながら、廃乾電池にはマンガン以外に亜鉛、鉄といった金属成分が含まれる。前者は負極材料および電解液に、後者は乾電池外筒部に主に含有される。したがって、廃乾電池からマンガンを回収する際には、亜鉛および鉄といった金属成分をマンガンから可能な限り分離することが肝要である。
【0005】
発明者らは、廃乾電池から亜鉛および鉄を分離し、マンガンを高純度に回収する技術を検討し、特許文献1「廃乾電池からのマンガン回収方法および回収設備」を提案した。特許文献1での提案は、図1に示すとおり、廃乾電池を破砕・篩い分けして得られた粉粒体に酸溶液および還元剤を混合する酸浸出を行い、その後亜鉛および鉄を沈殿除去することにより、高純度なマンガンを得る手法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2021/075135号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に示す方法には、マンガンの歩留に更なる検討の余地があった。すなわち、廃乾電池を破砕・篩い分けして得られる粉粒体にはマンガンの次に亜鉛が多く含まれており、酸浸出処理によりマンガンとともに多量の亜鉛が浸出液中に移行する。続いて、この浸出液中の亜鉛に対して硫化剤による沈殿除去を行うと、亜鉛が硫化物として沈殿する際に一部のマンガンが巻き込まれて沈殿する(共沈する)ことにより、マンガンの歩留が低下する。また、硫化剤は一般的な酸やアルカリに比べコストが高いため、多量の亜鉛を硫化剤で沈殿除去することにはコスト面でも課題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、廃乾電池中に含まれるマンガンを、亜鉛および鉄の混入が極めて少ない高純度のマンガン含有溶液として歩留良く回収できる、廃乾電池からのマンガン回収方法および回収設備を提供することを目的とする。
なお、ここでいう「高純度のマンガン含有溶液」とは、溶液中に、不純物としての亜鉛(Zn)および鉄(Fe)が常用のJIS規格に規定される分析法を用いた分析でいずれも分析限界未満、例えば0.1mg/L未満であるマンガン含有溶液をいうものとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
廃乾電池から、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を選別し、これらを破砕して篩い分けすると、乾電池を構成する材料が篩上の固形物と篩下の粉粒体とに分離される。乾電池を構成する材料のうち、主に鉄皮状包装材、亜鉛缶、真鍮棒、紙材、プラスチック等は、破砕後に箔状や片状の固形物となり、篩上に分離される。一方、二酸化マンガン、炭素、塩化亜鉛、塩化アンモン、苛性カリ、或いは更に放電により生成したMnO(OH)、Zn(OH)2、Mn(OH)2、ZnO等は、粉粒体となり、篩下に分離される。なお、通常、この粉粒体には、微量の鉄が不可避的に混入する。
【0010】
本発明者らは、マンガンの歩留を高めるために、マンガンの溶解を抑制しつつ亜鉛の浸出を促進させて、予め亜鉛のみを選択的に除去する手法について鋭意検討した。その結果、粉粒体に酸溶液を作用させる際に、酸化剤を更に添加することにより、マンガンの溶解量を抑制しつつ亜鉛を優先的に浸出液へ浸出、除去可能なことを知見した(酸・酸化剤処理工程)。
そして、本発明者らは、酸・酸化剤処理工程によって亜鉛量のみが大幅に低減された粉粒体(第1浸出残渣)に酸と還元剤とを作用させて、マンガン、鉄および残存する亜鉛を更に浸出させた浸出液(第2浸出液)を得たのち、この第2浸出液から、所定の手順に従って、残存する亜鉛成分と鉄成分とを選択的に沈殿・分離させれば、その沈殿・分離工程の順序にかかわらず、高純度のマンガン溶液を簡便かつ高い歩留で得ることができることを知見した。
【0011】
より具体的な一態様である手順Aとして、本発明者らは、上記第2浸出液に、水硫化ナトリウムNaHS等の硫化物を作用させることにより、第2浸出液中になお残存する亜鉛イオンを硫化物(亜鉛含有硫化物)として選択的に沈殿させる硫化物沈殿処理工程と、得られた亜鉛含有沈殿物を分離する亜鉛分離工程とを施すことにより、第2浸出液から亜鉛成分を更に除去し(手順Aにおける亜鉛除去工程)、該亜鉛除去工程後に残された溶液(第3溶液)中の亜鉛イオン濃度を分析限界である0.1mg/L未満に容易に低減できること;その後、この第3溶液に更に酸化処理工程を施し、鉄イオンを鉄含有沈殿物として更に分離(鉄分離工程)すれば、鉄成分の分離後に残された溶液(第4溶液)として、高純度のマンガン溶液を簡便かつ高い歩留で得られることを確認した(手順Aにおける鉄除去工程)。
【0012】
また、具体的な他の態様である手順Bとして、本発明者らは、上記第2浸出液を、例えば空気で酸化させることにより、第2浸出液中に含まれる鉄イオンを、例えば水酸化物として選択的に沈殿させて、第2浸出液から鉄成分のみを優先的に分離しつつ、鉄成分の分離後に残された溶液(第3溶液)中の鉄イオン濃度を大幅に低減できること(手順Bにおける鉄除去工程);その後、この第3溶液に、水硫化ナトリウムNaHS等の硫化物を作用させる硫化物沈殿処理を施して、なお残存する亜鉛イオンを亜鉛含有沈殿物として更に分離すれば、分離後に残された第4溶液として、高純度のマンガン溶液を簡便かつ高い歩留で得られることも確認した(手順Bにおける亜鉛除去工程)。
【0013】
本発明者らが上記手順AおよびBのそれぞれに沿って行った実験(A)および(B)の結果について説明する。
実験(A)
廃乾電池から、マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池を選別し(選別工程)、更に破砕・篩い分け工程を施して粉粒体を得た。
得られた粉粒体に、以下の条件で酸溶液および酸化剤を混合し、酸・酸化剤処理工程を行った。
酸溶液:硫酸(量:100mL、濃度:1.0mol/L(約8.7質量%))
酸化剤:次亜塩素酸ナトリウム水溶液
(有効塩素5.0%以上、量:酸溶液に対して50質量%)
処理時間:1時間の撹拌
粉粒体と酸溶液との固液比:100g/L
次に、得られた混合物を、孔径1μmのろ紙でろ過し、第1浸出液と第1浸出残渣とを固液分離した(第一の固液分離工程)。分離された第1浸出残渣中のマンガン、亜鉛、鉄の濃度をICP発光分光法により定量した。酸・酸化剤処理工程前後での成分分析結果を表1に示す。酸・酸化剤処理工程後に分離された第1浸出残渣中の亜鉛濃度は3.53質量%にまで著しく低下した。一方、該第1浸出残渣中のマンガン濃度は、酸化剤の添加によりマンガン成分が第1浸出液へと溶解することを良好に抑制できたため、58.59質量%と大幅に高まった。その結果、粉粒体から第1浸出残渣へのマンガンの歩留は99.99%であった。
【0014】
【表1】
【0015】
表1より、酸・酸化剤処理工程後の第1浸出残渣には、粉粒体に含まれていたマンガンが良好に維持されたまま亜鉛の大部分が除去されること、しかしながら、多少の亜鉛がなお残存することが分かる。そこで、後述するとおり、酸・酸化剤処理工程後に分離された第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を作用させる酸・還元剤処理を施して、残存する亜鉛成分を更に浸出させたうえで、得られた第2浸出液に硫化物沈殿処理を施せば、後に詳述するように残存する亜鉛成分を選択的かつ十分に沈殿させることができる。その結果、マンガンの歩留を高めつつ、亜鉛成分の除去を確実に、容易に、しかも安価に行うことができる。
【0016】
酸・酸化剤処理工程後に分離された第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を作用させる酸・還元剤処理工程を施した。その後、得られた混合物を孔径1μmのろ紙でろ過する第二の固液分離工程を施して、第2浸出液および第2浸出残渣を得た。なお、酸・還元剤処理工程で用いた酸溶液は硫酸(濃度:1.0mol/L(約8.7質量%))、還元剤は30%過酸化水素水とし、処理時間は1時間として撹拌した。この酸・還元剤処理工程および第二の固液分離工程によって、少なくともマンガンイオン、鉄イオンおよび残存する亜鉛イオンを含有する第2浸出液が得られた。
得られた第2浸出液中のマンガン濃度、亜鉛濃度、鉄濃度を、ICP発光分析法で定量分析したところ、マンガン濃度は31826mg/L、亜鉛濃度は1919mg/L、鉄濃度は163mg/Lであった。
【0017】
ついで、得られた第2浸出液に、硫化物として水硫化ナトリウムNaHSを、種々の条件で添加する硫化物沈殿処理工程を施した。なお、水硫化ナトリウム(NaHS)は、蒸留水に溶解させ、溶液の状態で添加した。
硫化物沈殿処理の条件は次のとおりとした。
第2浸出液:100mL
硫化物の種類:水硫化ナトリウム(NaHS)
硫化物の添加量:溶解亜鉛に対して硫黄として1~3当量
反応中の第2浸出液のpH:0.5~5
pH調整剤:3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム
処理時間:水硫化ナトリウム添加後0.5時間の撹拌
そして、硫化物沈殿処理後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過して固液分離を行い(亜鉛分離工程)、分離された第3溶液の成分(亜鉛、鉄、マンガン)をICP発光分析法で定量分析した。予め酸・酸化剤処理工程で亜鉛のみを大部分除去しておいたため、上記亜鉛分離工程においては、ろ紙の目詰まりは全く確認されず、固液分離を簡便に行うことができた。なお、得られた分析値は、水硫化ナトリウム溶液とpH調整剤の添加で希釈された影響を補正した。得られた結果を図5に示す。
【0018】
図5(a)から、硫化物の添加量が1当量の場合(NaHS:1当量)、亜鉛の沈殿除去は行われているものの、分析限界(0.1mg/L)を上回り不完全であり、しかも、第2浸出液のpHを高めた際の最終的なZnの除去率は安定していないことがわかる。
一方、図5(b)に示すように、硫化物の添加量が2当量(NaHS:2当量)となると、亜鉛の沈殿除去が顕著になっている。とくに、第2浸出液のpHが3以上である条件では、亜鉛除去工程(硫化物沈殿処理工程および亜鉛分離工程)後の第3溶液中の亜鉛濃度が分析限界(0.1mg/L)未満となるまで除去されていることがわかる。また、図5(c)に示す硫化物の添加量が3当量(NaHS:3当量)の場合でも、2当量の場合と同様の傾向を示し、とくに、第2浸出液のpHが3以上であるときの亜鉛濃度が分析限界(0.1mg/L)を下回り、亜鉛の沈殿除去が顕著となっている。
【0019】
なお、図5からは、亜鉛除去工程により、鉄の沈殿除去も行われることがわかる。図5(b)に示すように、硫化物の添加量が2当量(NaHS:2当量)の場合には、第2浸出液のpHが3以上となる条件で鉄が沈殿除去され、pHが5程度の場合はFe濃度が1mg/L程度にまで低減することがわかる。図5(b)に示すこの条件下では、pHの上昇によってMnも一部沈殿してしまうものの、本願では、酸・酸化剤処理工程によって高いMn含有率を維持した第1浸出残渣を利用しているので、従来は19000mg/L程度にまで低下していた第3溶液中のマンガン濃度を、25000mg/L程度までの低下に抑えることができた。
【0020】
また、図5(c)に示す硫化物の添加量が3当量(NaHS:3当量)の場合でも、2当量の場合と同様の傾向をもって、鉄が沈殿除去されることがわかる。図5(c)に示すように、第2浸出液のpHが5の場合にとくに鉄の沈殿除去が著しくなり、0.5mg/L程度となるまで除去されていることがわかる。図5(c)においてpHが5である場合には、pHの上昇によってMnも一部沈殿してしまうものの、本願では、酸・酸化剤処理工程によって高いMn含有率を維持した第1浸出残渣を利用しているので、従来は15000mg/L程度にまで低下していた第3溶液中のマンガン濃度を、23000mg/L程度までの低下に抑えることができた。
【0021】
実験(A)について上記したように、粉粒体に酸・酸化剤処理をして得られた第1浸出残渣を用いれば、マンガンが維持されつつ多量の亜鉛が除去されているので、最終的に回収されるマンガンの歩留を高めるのに有利である。更に、酸・還元剤処理工程を施して得られた、マンガンイオン、鉄イオンおよび残存する亜鉛イオンを含有する第2浸出液に対する亜鉛除去工程によれば、亜鉛含有沈殿物の量が低減されるので、亜鉛沈殿時のマンガンの共沈を抑制できるとともに、亜鉛分離時のろ紙の目詰まり等のトラブルを回避して、滞りなく亜鉛成分を分析限界未満にまで沈殿・分離除去できる。また、亜鉛(Zn)とともに、鉄(Fe)も一部沈殿する場合がある。鉄(Fe)濃度がある程度まで沈殿除去されている場合には、この段階で処理を終えることも考えられる。しかし、鉄を更に高度に除去するため、亜鉛除去工程後に分離された第3溶液中に含まれる鉄イオンを水酸化物等の鉄含有沈澱物として沈澱させる鉄除去工程(酸化処理工程および鉄分離工程)をさらに施すこととした。
【0022】
実験(B)
実験(A)と同様の手法に従い、選別工程、破砕・篩い分け工程、酸・酸化剤処理工程および第一の固液分離工程を経て得られた第1浸出残渣に酸溶液および還元剤を作用させる酸・還元剤処理を施して、第2浸出液および第2浸出残渣を得た。分離された第2浸出液中のマンガン濃度、亜鉛濃度、鉄濃度をICP発光分析法により測定したところ、マンガン濃度は31826mg/L、亜鉛濃度は1919mg/L、鉄濃度は163mg/Lであった。
【0023】
ついで、得られた第2浸出液に、酸化処理として空気曝気を施した(酸化処理工程)。空気曝気の条件は次のとおりとした。
吹込み量:(第2浸出液量と同体積)/分
曝気時間:30分
反応中の第2浸出液のpH:4~6
pH調整剤:3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム
ここで、吹込み量および曝気時間は、通常の実用的な条件(吹込み量:溶液量に対して0.1~1倍量/分、曝気時間:15~60分)の範囲内である。
そして、空気曝気後の第2浸出液全量を孔径:1μmのろ紙で吸引ろ過して固液分離し(鉄分離工程)、分離された第3溶液の成分濃度(亜鉛、鉄、マンガン)をICP発光分析法で測定した。なお、得られた測定値については、pH調整剤による希釈の影響を補正した。得られた結果を図6に示す。酸化処理工程によるマンガンおよび亜鉛の沈殿はほとんど確認されなかったため、図6には、鉄除去工程(酸化処理工程および鉄分離工程)後の第3溶液中の鉄濃度のみを示す。
【0024】
図6から、第2浸出液がpH:4~6で、Fe(鉄)が選択的に沈殿除去されることがわかる。なお、図示していないが、このpH範囲ではマンガン、亜鉛はほとんど沈殿せず、pH:6において、亜鉛がわずかに沈殿除去されていたものの、その量は10~20mg/L程度と少なかった。第2浸出液がpH:5または6の場合には、鉄の沈殿除去が顕著に進行し、鉄濃度が0.1mg/Lを下回るまでに低減している。このように、第2浸出液に安価な酸化処理である空気曝気を施すだけで、鉄濃度を大幅に低減できた。
【0025】
図6のうち、pH:5に調整した第2浸出液に空気曝気(酸化処理)を施して鉄濃度を0.1mg/L未満に低減し、固液分離による鉄分離工程を施して得られた第3溶液に対して、さらに種々の条件で硫化物沈殿処理工程を施した。
硫化物沈殿処理の条件は次のとおりとした。
第3溶液:100mL
硫化物の種類:水硫化ナトリウム(NaHS)
硫化物の添加量:溶解亜鉛に対して硫黄として1~3当量
反応中の第3溶液のpH:0.5~5
pH調整剤:3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム
処理時間:水硫化ナトリウム添加後0.5時間の撹拌
上記した硫化物沈殿処理工程後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過して固液分離を行い(亜鉛分離工程)、分離された第4溶液について、その成分をICP発光分析法で分析した。予め酸・酸化剤処理工程で亜鉛のみを大部分除去しておいたため、上記亜鉛分離工程においても、ろ紙の目詰まりは全く確認されず、固液分離を簡便に行うことができた。
【0026】
その結果、硫化物の添加量が1当量の場合(NaHS:1当量)、亜鉛の沈殿除去は行われているものの、分析限界(0.1mg/L)を上回り不完全であり、しかも、第3溶液のpHを高めた際の最終的なZnの除去率は安定していなかった。
一方、硫化物の添加量が2当量(NaHS:2当量)となると、亜鉛の沈殿除去が顕著になり、とくに、第3溶液のpHが3以上である条件では、亜鉛除去工程後の第4溶液中の亜鉛濃度は分析限界(0.1mg/L)未満となるまでに、沈殿・除去された。
また、硫化物の添加量が3当量(NaHS:3当量)の場合でも、2当量の場合と同様の傾向を示し、亜鉛の沈殿除去が顕著であった。なお、硫化物の添加量が3当量(NaHS:3当量)かつ第3溶液のpHが5程度の場合であっても、酸・酸化剤処理工程によって高いMn含有率を維持した第1浸出残渣を利用しているので、従来は16000mg/L程度にまで低下していた第4溶液中のマンガン濃度を、22000mg/L程度までの低下に抑えることができた。
【0027】
実験(B)について上記したように、粉粒体に酸・酸化剤処理工程をして得られた第1浸出残渣を用いれば、マンガンが維持されつつ多量の亜鉛が除去されているので、最終的に回収されるマンガンの歩留を高めるのに有利である。更に、酸・還元剤処理工程を施して得られた、マンガンイオン、鉄イオンおよび残存する亜鉛イオンを含有する第2浸出液に、まず酸化処理を施せば、空気曝気という簡便な酸化処理を施すことだけで、鉄成分の大部分を沈殿・分離除去した溶液とすることができる(鉄除去工程)。そして、その後に分離された第3溶液に硫化物を作用させる硫化物沈殿処理工程を施せば、亜鉛含有沈殿物の量が低減されるので、亜鉛沈殿時のマンガンの共沈を抑制できるとともに、亜鉛分離時のろ紙の目詰まり等のトラブルを回避して、滞りなく亜鉛成分を分析限界未満までに沈殿・除去できる(亜鉛除去工程)。
【0028】
このように、実験(A)および(B)によれば、前処理工程としての酸・酸化剤処理工程において粉粒体中の亜鉛の大部分をあらかじめ除去した第1浸出残渣を用いることにより、亜鉛除去工程および鉄除去工程の工程順序に関わらず、亜鉛および鉄をともに確実かつ簡便に沈殿・分離除去でき、高いマンガンの歩留をもって高純度のマンガン含有溶液を製造できることを知見した。
【0029】
本発明は、かかる知見に基づきさらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を選別する選別工程と、
前記選別工程で選別された前記マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を破砕、篩い分けして粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と、
前記破砕・篩い分け工程で得られた前記粉粒体に、酸溶液および酸化剤を混合して第1浸出液および第1浸出残渣を得る酸・酸化剤処理工程と、
前記酸・酸化剤処理工程で得られた前記第1浸出液と前記第1浸出残渣とを分離する第一の固液分離工程と、
前記第一の固液分離工程で分離された前記第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を混合して第2浸出液および第2浸出残渣を得る酸・還元剤処理工程と、
前記酸・還元剤処理工程で得られた前記第2浸出液と前記第2浸出残渣とを分離する第二の固液分離工程と、
前記第二の固液分離工程で分離された前記第2浸出液から、該第2浸出液に含有される亜鉛イオン、鉄イオンおよびマンガンイオンのうち、前記亜鉛イオンおよび鉄イオンを除去して、前記マンガンイオンを含有する溶液を得るマンガン抽出工程と、
をこの順に施し、
前記マンガン抽出工程が、
前記亜鉛イオンに硫化物を作用させて該亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程と、さらに、得られた亜鉛含有沈殿物を分離する亜鉛分離工程とを含む亜鉛除去工程と;
前記鉄イオンを酸化させて該鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程と、さらに、得られた鉄含有沈殿物を分離する鉄分離工程とを含む鉄除去工程と;
を順不同に含む、廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法。
【0030】
(2)前記酸・酸化剤処理工程における前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウム溶液、酸素、オゾン、過マンガン酸カリウム溶液のいずれかである、(1)に記載の回収方法。
【0031】
(3)前記酸・酸化剤処理工程における前記酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸である、(1)または(2)に記載の回収方法。
【0032】
(4)前記酸・酸化剤処理工程における前記粉粒体と前記酸溶液との固液比が50g/L以上である、(1)~(3)のいずれかに記載の回収方法。
【0033】
(5)前記酸・還元剤処理工程における前記酸溶液が、質量%濃度1.4%以上45%以下の希硫酸または質量%濃度1%以上14%以下の希塩酸である、(1)~(4)のいずれかに記載の回収方法。
【0034】
(6)前記酸・還元剤処理工程における前記還元剤が、過酸化水素、硫化ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、および硫酸鉄のいずれかである、(1)~(5)のいずれかに記載の回収方法。
【0035】
(7)前記マンガン抽出工程が、前記亜鉛除去工程、続いて前記鉄除去工程の順に行われ、
前記亜鉛除去工程では、前記第2浸出液に硫化物を作用させて該第2浸出液中の亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程を施した後に、得られた亜鉛含有沈殿物とマンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液とを固液分離する亜鉛分離工程を施し、
前記鉄除去工程では、前記亜鉛除去工程で得られた前記第3溶液を酸化させて該第3溶液中の鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程を施した後に、得られた鉄含有沈澱物とマンガンイオンを含有する第4溶液とを固液分離する鉄分離工程を施す、(1)~(6)のいずれかに記載の回収方法。
【0036】
(8)前記硫化物沈殿処理工程において、前記第2浸出液をpH:2以上6以下に調整する、(7)に記載の回収方法。
【0037】
(9)前記酸化処理工程において、前記マンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液に対して空気曝気を行う、またはさらに該第3溶液に対して酸化剤を添加し、かつ該第3溶液をpH:3以上7以下に調整する、(7)または(8)に記載の回収方法。
【0038】
(10)前記マンガン抽出工程が、前記鉄除去工程、続いて前記亜鉛除去工程の順に行われ、
前記鉄除去工程では、前記第2浸出液を酸化させて該第2浸出液中の鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程を施した後に、得られた鉄含有沈澱物とマンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液とを固液分離する鉄分離工程を施し、
前記亜鉛除去工程では、前記鉄除去工程で得られた前記第3溶液に硫化物を作用させて該第3溶液中の亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程を施した後に、得られた亜鉛含有沈澱物とマンガンイオンを含有する第4溶液とを固液分離する亜鉛分離工程を施す、(1)~(6)のいずれかに記載の回収方法。
【0039】
(11)前記硫化物沈殿処理工程において、前記マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液をpH:2以上6以下に調整する、(10)に記載の回収方法。
【0040】
(12)前記酸化処理工程において、前記第2浸出液に対して空気曝気を行い、かつ該第2浸出液をpH:3以上7以下に調整する、(10)または(11)に記載の回収方法。
【0041】
(13)前記硫化物沈殿処理工程において使用する硫化物が、水硫化ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化水素のうちのいずれかである、(1)~(12)のいずれかに記載の回収方法。
【0042】
(14)廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を選別する選別装置と、
前記選別装置で選別された前記マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方を装入して破砕処理を施し、破砕処理物を得る破砕装置と、
前記破砕装置で得られた前記破砕処理物に篩い分け処理を施して粉粒体を得る篩い分け装置と、
前記篩い分け装置で得られた前記粉粒体に、酸溶液および酸化剤を作用させる酸・酸化剤処理槽と、
前記酸・酸化剤処理槽で得られた第1浸出液と第1浸出残渣とを分離する第一の固液分離装置と、
前記第一の固液分離装置で分離された前記第1浸出残渣に、酸溶液および還元剤を作用させる酸・還元剤処理槽と、
前記酸・還元剤処理槽で得られた第2浸出液と第2浸出残渣とを分離する第二の固液分離装置と、
前記第二の固液分離装置で分離された前記第2浸出液から、該第2浸出液に含有される亜鉛イオン、鉄イオンおよびマンガンイオンのうち、前記亜鉛イオンおよび鉄イオンを除去して、前記マンガンイオンを含有する溶液を得るマンガン抽出装置群と、
をこの順で備え、
前記マンガン抽出装置群が、
前記亜鉛イオンに硫化物を作用させて該亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理槽と、さらに、得られた亜鉛含有沈殿物を固液分離する亜鉛分離装置とを含む亜鉛除去装置群と;
前記鉄イオンを酸化させて該鉄イオンを沈殿させる酸化処理槽と、さらに、得られた鉄含有沈殿物を固液分離する鉄分離装置とを含む鉄除去装置群と;
を順不同に含む、廃乾電池に含有されるマンガンの回収設備。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、廃乾電池に含まれる有価成分であるマンガン成分を、亜鉛成分および鉄成分から高精度かつ簡便に分離し、二次電池電極材用の原料として利用できる程度の高純度のマンガンを、歩留り高く、安価に回収でき、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】特許文献1に示すマンガンの回収工程を説明するフローである。
図2】本発明のマンガンの回収方法の工程を説明するフローである。
図3】本発明のマンガンの回収方法の一実施形態(手順A)を説明するフローである。
図4】本発明のマンガンの回収方法の他の実施形態(手順B)を説明するフローである。
図5図3のフローに従った硫化物沈殿処理工程における、亜鉛、鉄およびマンガンの沈殿除去に及ぼす硫化物添加量((a)NaHS:1当量、(b)NaHS:2当量、(c)NaHS:3当量)およびpH条件の影響を示すグラフである。
図6図4のフローに従った酸化処理工程における、鉄の沈殿除去に及ぼすpHの影響を示すグラフである。
図7】本発明のマンガンの回収設備の一実施形態(構成A)を説明する模式図である。
図8】本発明のマンガンの回収設備の他の実施形態(構成B)を説明する模式図である。
図9】酸・酸化剤処理工程におけるマンガンおよび亜鉛の浸出除去に及ぼす酸化剤の添加量の影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明は、廃乾電池を対象とし、廃乾電池に含まれる有価成分であるマンガン成分を、該廃乾電池に共に含まれる亜鉛成分および鉄成分と分離し、高純度のマンガン含有溶液として高い歩留で回収する、マンガンの回収方法および回収設備である。以下、本発明の実施形態について、図を参照して具体的に説明する。以下の実施形態は、本発明の好適な一例を示すものであり、これらの例によって本発明が何ら限定されるものではない。
【0046】
(マンガンの回収方法)
本発明のマンガンの回収方法は、図2に示すように、選別工程、破砕・篩い分け工程、酸・酸化剤処理工程、第一の固液分離工程、酸・還元剤処理工程、第二の固液分離工程、およびマンガン抽出工程を順に有する。また、マンガン抽出工程は、所定の亜鉛除去工程および鉄除去工程を順不同で含む。
本発明の回収方法が上記所定の工程に従うことにより、廃乾電池に含まれるマンガン以外の成分を、順に、確実かつ簡便に除去することができる。その結果、本発明の回収方法に従えば、廃乾電池を利用して、マンガン成分を、二次電池電極材用の原料として利用できる程度の高純度で、高い歩留で容易に回収可能である。本発明の回収方法は、後述するマンガンの回収設備を用いて好適に実施することができる。
【0047】
選別工程
廃乾電池は、様々な種類の乾電池が混在した形で回収されるのが一般的である。このため、本発明では、回収された廃乾電池の中から、マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方又は両方(マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池)を選別する。後の工程でマンガン成分を効率的に抽出するために、マンガン乾電池のみを選別してもよく、アルカリマンガン乾電池のみを選別してもよく、マンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の両方を選別してもよい。選別方法としては、手選別、選別装置を利用する機械選別など、いずれの方法を用いてもよい。
【0048】
破砕・篩い分け工程
次に、選別工程で選別したマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池を破砕する。破砕の目的は、選別工程で選別したマンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の構成材料から、マンガン、亜鉛、炭素以外の成分を含む材料を可能な限り排除することにある。
これらの廃乾電池を破砕すると、包装材(鉄、プラスチックおよび紙等)や、マンガン乾電池の負極材料である亜鉛缶、アルカリマンガン乾電池の集電体である真鍮棒は、箔状または片状の固形物となる。一方、正極材料である二酸化マンガン、マンガン乾電池の集電体である炭素棒、アルカリマンガン乾電池の負極材料である亜鉛粉、放電により生成したMnO(OH)、Zn(OH)2、Mn(OH)2、ZnOなどの化合物、および各種電解液は、箔状・片状の固形物よりも更に細かい粉粒体となる。
【0049】
廃乾電池の破砕には通常、破砕装置を使用する。破砕装置の型式については特に限定されず、例えば、破砕後に、乾電池を構成している包装材等の固形物と粉粒体がよく分離される型式のものが好ましい。このような破砕装置としては、例えば、2軸回転式の破砕装置が挙げられる。
上記した破砕物の篩い分け(箔状または片状の固形物と、粉粒体との篩い分け)に使用する篩の目開きは、おおよそ、1mm以上が好ましく、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。篩の目開きは、1~20mm程度が好ましく、1~10mm程度がより好ましく、1~3mm程度が更に好ましい。篩の目開きが上記下限以上であれば、マンガン成分を含む粉粒体をより多く確保できる。また、篩の目開きが上記上限以下であれば、マンガン以外の目的外成分を含む固形物をより排除でき、後の工程をより効率的に行える。
【0050】
したがって、廃乾電池を破砕したのち、上述した目開きの篩を用いて篩い分けすれば、廃乾電池から包装材等の大きな固形物が除去され、主にマンガン・亜鉛成分とともに炭素を含有する粉粒体を効率的に得ることができる。
このように、破砕・篩い分け工程を経て得られた粉粒体は、マンガン乾電池および/またはアルカリマンガン乾電池の主要構成材料である、二酸化マンガン、炭素、塩化亜鉛または塩化アンモン、苛性カリ、更には、放電によって生成したMnO(OH)、Zn(OH)2、Mn(OH)2、ZnOなどが混合した粉粒体である。なお、通常、この粉粒体には、鉄成分が不可避的に混入する。
【0051】
酸・酸化剤処理工程
酸・酸化剤処理工程は、本願の回収方法の特徴となる重要な工程である。酸・酸化剤処理工程では、破砕・篩い分け工程を経て得られた粉粒体に、酸溶液および酸化剤を混合する。酸溶液に加えて酸化剤をも作用させることにより、粉粒体中のマンガンの価数を高め、マンガンが第1浸出液中に浸出することを回避しつつ、主として粉粒体中の亜鉛のみを第1浸出液中に浸出させることができる。その結果、マンガン含有量が高く、亜鉛含有量が大幅に低減された第1浸出残渣を得ることができ、マンガンの歩留を高めることに有利となる。
【0052】
酸・酸化剤処理工程における酸溶液に使用する酸は、一般的な酸でよく、硫酸、硝酸、塩酸またはその他の酸を用いることができる。価格や目的に応じて適宜選択できるが、コストおよび調達の容易さ等を考慮すると、酸溶液として硫酸または塩酸を用いるのが好ましい。
硫酸を用いる場合には、硫酸濃度が質量%濃度で1.4%以上45%以下の希硫酸を用いることが好ましい。より具体的には、硫酸濃度は、1.4%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、5%以上が更に好ましく、45%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、25%以下が更に好ましい。硫酸は、濃度が2%以上30%以下の希硫酸であることがより好ましく、さらに好ましくは、濃度が5%以上25%以下の希硫酸である。
塩酸を用いる場合には、塩酸濃度が質量%濃度で1%以上14%以下の希塩酸を用いることが好ましい。より具体的には、塩酸濃度は、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、14%以下が好ましく、8%以下がより好ましい。塩酸は、濃度が2%以上8%以下の希塩酸であることがより好ましい。
酸・酸化剤処理工程における酸溶液の濃度が上記下限に満たなければ、粉粒体中の亜鉛成分を第1浸出液へと十分に浸出し難く、後の亜鉛除去工程において微細な亜鉛含有沈殿物が多量に生成されやすい。その結果、亜鉛分離工程においてマンガンが共沈し易くなり、マンガンの歩留が低下する要因となる。また、亜鉛含有沈殿物がろ紙、ろ布等の目詰まりの原因になるなど、亜鉛成分を簡便に除去し難い。一方、酸・酸化剤処理工程における酸溶液の濃度が上記上限を上回れば、回収目的であるマンガンまでも第1浸出液へと過剰に浸出しやすく、最終的に高濃度のマンガン含有溶液を高歩留で得難い。
【0053】
使用する硫酸または塩酸は、市販されているものであればいずれも使用できるが、工業用または有害金属成分の少ない廃酸を希釈して使用すれば、酸溶液のコストを低減することができる。また、ここでの「質量%濃度」は、酸溶液中の酸の質量を該酸溶液全体の質量で除したものに100を乗じた値である。
なお、いずれの酸溶液を用いる場合でも、亜鉛成分の浸出に必要な酸濃度は、粉粒体と酸溶液との固液比、粉粒体の量、粉粒体中の亜鉛の含有量、粉粒体中の亜鉛の形態等によって変動する。そのため、予め実機を想定した予備実験を行うことで、最適な酸濃度を決定することが好ましい。
【0054】
酸・酸化剤処理工程に用いる酸化剤は、マンガンの溶解を抑制するために添加される。酸化剤の種類は特に規定されず、一般的な酸化剤を用いることができる。しかしながら、二クロム酸カリウムのようなマンガン以外の重金属を含む酸化剤は、重金属成分がマンガン中に不純物として残存するおそれがある。したがって、次亜塩素酸ナトリウム溶液、酸素、オゾン、過マンガン酸カリウム溶液等のマンガン以外の重金属を含まない酸化剤を用いることが望ましく、酸化剤の価格および酸化力の観点から次亜塩素酸ナトリウム溶液を用いることがより好ましい。なお、過酸化水素は本系においてはむしろ還元剤として作用するため、不適である。
酸化剤が酸素及びオゾン等の気体である場合は、酸化剤を酸溶液中に吹き込んで添加することができる。酸化剤の吹込み量は、一例として、酸溶液の体積の0.25~3倍の流量/分(例えば、100mLの酸溶液量に対して25~300mL/分の酸化剤)とすることができ、最終的には予備実験を経て決める。
【0055】
酸・酸化剤処理工程における粉粒体と酸溶液との固液比(粉粒体(g)/酸溶液(L))は50g/L以上が好ましく、100g/L以上がより好ましく、500g/L以下が好ましい。固液比が上記下限に満たなければ、粉粒体を処理するのに必要な反応槽の大きさが大きくなり、設備費がかさむ。また、粉粒体に対して酸溶液が過多となり、目的成分であるマンガンまで第1浸出液へと浸出しやすい。一方、固液比が上記上限を上回れば、粉粒体と酸溶液との混合物の粘度が高まり、十分に撹拌することが困難になる。また、粉粒体に対して酸溶液が過少となり、酸溶液が亜鉛を第1浸出液へと十分に浸出し難く、粉粒体から効率的に亜鉛成分を除去し難い。
上記の好適固液比は、混合する酸化剤が次亜塩素酸ナトリウム溶液および過マンガン酸カリウム溶液等の液体であるか、酸素及びオゾン等の気体であるかに関わらない。
【0056】
酸化剤が次亜塩素酸ナトリウム等の液体である場合を例に挙げると、酸・酸化剤処理工程における酸化剤の添加量は、マンガン成分を高い歩留で第1浸出残渣中に含有させる観点から、酸溶液に対して20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。また、用いる次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度は5%以上が好ましい。酸・酸化剤処理工程における撹拌温度は特に制限されないが、通常、0~100℃であり、撹拌時間は30分以上が好ましく、120分以下が好ましい。撹拌時間が30分未満であると反応が完結しないおそれがあり、一方、2時間超であると反応がそれ以上進行し難くなるからである。
酸化剤が酸素およびオゾン等の気体である場合を例に挙げると、酸化剤の吹込み量は、酸溶液の体積の0.25倍以上の流量/分が好ましく、3倍以下の流量/分が好ましい。撹拌温度及び撹拌時間は、上述した液体の酸化剤の場合と同様である。
【0057】
第一の固液分離工程
第一の固液分離工程では、酸・酸化剤処理工程で得られた第1浸出液と第1浸出残渣とを固液分離する。分離された第1浸出液は、通常、浸出した亜鉛イオンを主に含有し、亜鉛とともに一部溶解したマンガンイオンと鉄イオンとを更に含有することがある。しかしながら、本願では酸化剤の添加によりマンガンの溶解を抑制しているので、第1浸出液中のマンガン含有量は従来よりも低く制御されている。一方、分離された固体の第1浸出残渣は、主にマンガンおよび鉄と、残留した亜鉛とを含む。本願では酸化剤の添加によりマンガンの溶解を抑制しているので、第1浸出残渣中のマンガン含有量は従来よりも高く制御され、例えば表1に示すとおり50質量%超、更には55質量%以上を達成することができる。
固液分離手段は特に限定されない。固液分離工程には、常用の手段である、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる手段を用いることが好ましい。
【0058】
酸・還元剤処理工程
酸・還元剤処理工程では、酸・酸化剤処理工程および第一の固液分離工程を経て得られた第1浸出残渣に酸溶液および還元剤を混合し、該第1浸出残渣に含まれるマンガン成分を次工程で得られる第2浸出液へとほぼ完全に浸出させる。酸・酸化剤処理工程を経た第1浸出残渣中には高い歩留でマンガンが含有されているため、該第1浸出残渣を利用して得られる第2浸出液中のマンガンの歩留も高めやすい。
ここで、本明細書において「ほぼ完全に」とは、ある工程後の残渣サンプル(この場合は第2浸出残渣)について、常用のJIS規格に規定される分析法に従って測定した場合に、目的成分(この場合はマンガン)の量が分析限界未満、例えば0.1mg/L未満である状態を指す。
【0059】
酸・還元剤処理工程における酸溶液は、還元剤と併用することにより、主に、第1浸出残渣になお残留する亜鉛成分を更に浸出させつつ、マンガン成分をも浸出させるために添加される。酸溶液に使用する酸は、一般的な酸でよく、上述した酸・酸化剤処理工程における酸の種類および条件に好適に従うことができる。
酸・還元剤処理工程における酸溶液の濃度が上述した下限に満たなければ、第1浸出残渣中のマンガン成分を第2浸出液へと十分に浸出し難く、マンガン回収率(歩留)が低下しやすい。一方、酸・還元剤処理工程における酸溶液の濃度が上述した上限を上回れば、後段の工程でpH調整のために必要なアルカリ薬剤量が増大し、コスト悪化の懸念がある。
なお、酸・酸化剤処理工程後に第1浸出残渣に残留した亜鉛成分については、還元剤の有無に拘わらず酸の濃度を上昇していけば、ほぼ完全に溶解(浸出)する。
【0060】
また、酸・還元剤処理の効率化を図る観点からは、酸・還元剤処理工程における第1浸出残渣と酸溶液との固液比(第1浸出残渣(g)/酸溶液(L))を50g/L以上とすることが好ましい。一方、固液比が800g/Lを超えると、粘度が上昇してハンドリング上の問題が生じたり、固液分離工程時の歩留まりが悪化したりする可能性がある。このため、固液比は800g/L以下とすることが好ましい。また、酸・還元剤処理の処理温度(雰囲気温度、酸溶液の温度等)は、室温(15~25℃前後)でも十分な効果が得られるが、加温を行ってもよい。加温温度は、例えば、60~80℃とすることができる。加温を行えば、処理溶液が沸騰しない範囲で温度を高めるほど反応効率の向上が期待できる。酸・還元剤処理の処理時間は、5分以上が好ましく、6時間以下が好ましい。
【0061】
還元剤は、主に、第1浸出残渣に含まれる3価、4価といった酸に溶解し難い価数を有するマンガン成分を還元し、良好に浸出させるために添加され、常用の種々の還元剤がいずれも適用できる。還元剤としては、過酸化水素H2O2、硫化ナトリウムNa2S・9H2O、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3、チオ硫酸ナトリウムNa2S2O3、硫酸鉄FeSO4・7H2Oが好適に例示できる。硫黄系の還元剤は、亜硫酸ガス、硫化水素ガス等の腐食性ガスを発生する場合があり、安全性等の観点から注意を要する。この観点から、還元剤は過酸化水素H2O2とすることがより好ましい。
なお、還元剤の添加量(g)は、第1浸出残渣に含まれるマンガンの形態に依存するため、とくに限定しないが、酸溶液(L)に対して1~500g/L程度あれば十分である。
【0062】
第二の固液分離工程
第二の固液分離工程では、酸・還元剤処理工程で得られた第2浸出液と第2浸出残渣とを固液分離する。分離された第2浸出液は、マンガンイオン、鉄イオン、および残存していた亜鉛イオンを含有する。一方、分離された固体の第2浸出残渣は、主として炭素が残留した結果である。これにより、粉粒体、続いて第1浸出残渣に含まれていたマンガン成分、亜鉛成分および鉄成分と、炭素とを分離することができる。
固液分離手段は特に限定されない。固液分離工程には、常用の手段である、例えば重力沈降分離、ろ過、遠心分離、フィルタプレス、膜分離などから選ばれる手段を用いることが好ましい。
【0063】
マンガン抽出工程
第二の固液分離工程で分離された第2浸出液から、亜鉛イオンおよび鉄イオンを除去して、マンガンイオンを含有する溶液(マンガン含有溶液)を高純度で得る、マンガン抽出工程を行う必要がある。具体的には、マンガン抽出工程は、所定の亜鉛除去工程および鉄除去工程を順不同で含む。より具体的には、マンガン抽出工程が含む亜鉛除去工程は、亜鉛イオンに硫化物を作用させて亜鉛イオンを沈殿させる硫化物沈殿処理工程と、得られた亜鉛含有沈殿物を分離する亜鉛分離工程とを含む。また、マンガン抽出工程が含む鉄除去工程は、鉄イオンを酸化させて鉄イオンを沈殿させる酸化処理工程と、得られた鉄含有沈殿物を分離する鉄分離工程とを含む。
このように、マンガン抽出工程において、亜鉛イオンおよび鉄イオンをそれぞれ選択的に沈殿させて、第2浸出液から亜鉛イオンおよび鉄イオンを確実に取り除くことにより、最終的に、目的成分であるマンガン成分を高純度かつ高歩留で簡便に回収することができる。
【0064】
マンガン抽出工程では、亜鉛イオンを優先的に沈殿除去する亜鉛除去工程を先に行ってもよいし(手順A)、鉄イオンを優先的に沈殿除去する鉄除去工程を先に行ってもよい(手順B)。工程をより簡素化しやすい観点からは、鉄除去工程を先に行うこと(手順B)が好ましい。
手順Aでは、まず、第2浸出液から、亜鉛含有沈澱物と、マンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液との混合物を得た後に、これらを分離する。また、手順Bでは、まず、第2浸出液から、鉄含有沈殿物と、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液との混合物を得た後に、これらを分離する。以下、手順Aおよび手順Bについて詳述する。
【0065】
亜鉛除去工程(手順A)
手順(A)における亜鉛除去工程では、固液分離された第2浸出液に、まず硫化物沈殿処理工程を施す。この硫化物沈殿処理工程では、第2浸出液に硫化物を作用させ、該第2浸出液中に含まれるイオンのうち主として残存する亜鉛イオンを亜鉛硫化物として沈殿させ、第2浸出液から除去可能にする。この処理により、第2浸出液から、マンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液と亜鉛含有沈殿物との混合物が得られる。
【0066】
第二の固液分離工程で分離された第2浸出液には、マンガンイオン、鉄イオン、さらに残存する亜鉛イオンが含まれており、第2浸出液に硫化物を作用すると、含まれる2価の金属イオンは、硫化物イオンS2-と反応して、硫化物を生成し沈殿する。この硫化物の沈殿のしやすさは、溶解度積KSPに依存する。マンガン、亜鉛、鉄の硫化物の溶解度積を、下記に示す。
MnS:KSP=2.5×10-10
ZnS:KSP=1.6×10-24
FeS:KSP=6.3×10-18
(Lange, N.A.:Lange’s Handbook of Chemistry. Thirteenth edition 1985)
溶解度積KSPの値が小さいほど、硫化物を形成しやすいことから、マンガン、亜鉛、鉄のうちでは、亜鉛(Zn)が最も硫化物を形成しやすいことになる。したがって、マンガン、亜鉛、鉄のイオンを含む第2浸出液に硫化物を作用させた場合には、亜鉛(Zn)を選択的に硫化物として沈殿させることができる。そして、硫化物イオンの濃度、第2浸出液のpHを調整することにより、第2浸出液中の亜鉛イオン濃度を分析限界(0.1mg/L)未満に簡便に低減することができる。
ここで、上述のとおり、第2浸出液に亜鉛イオンが多量に含有されていると、硫化物沈殿処理工程によって多量かつ微細な亜鉛含有沈殿物が生成するので、マンガンの共沈を促進して最終的なマンガンの歩留を低めやすい。また、続く固液分離時にろ布等を目詰まりさせやすく、亜鉛分離工程が困難となる。しかしながら、本発明では、硫化物沈殿処理工程に先立つ酸・酸化剤処理工程において、あらかじめ粉粒体中の大部分の亜鉛成分を取り除きつつマンガン成分を留めているため、マンガンの共沈を良好に回避して最終的なマンガンの歩留を高めることができる。また、亜鉛含有沈殿物の量および質を制御でき、後述の亜鉛分離工程を簡便かつ効率的に行うことができる。
【0067】
作用させる硫化物としては、水硫化ナトリウムNaHS、硫化ナトリウムNaS、硫化水素H2Sが好適に例示できる。なお、硫化水素はガスなので、曝気する必要がある。したがって、作用させる硫化物としては、水硫化ナトリウムおよび硫化ナトリウムがより好ましい。
【0068】
作用させる硫化物量は、溶解亜鉛に対する硫黄Sとして1.1当量以上5当量以下とすることが好ましい。硫化物量は、溶解亜鉛に対する硫黄Sとして1.1当量以上が好ましく、2当量以上がより好ましく、5当量以下が好ましく、3当量以下がより好ましく、3当量未満が更に好ましい。硫化物量が上記下限以上であれば、亜鉛イオンをより良好に沈殿させることができる。また、硫化物量が上記下限以下であれば、意図しないマンガンイオンの沈殿をより抑制しやすいとともに、作用させる硫化物量が過剰となって経済的に不利となることを防止できる。
【0069】
また、硫化物を作用させる際の第2浸出液のpHは、2未満と低すぎると亜鉛の沈殿が不十分になりやすく、一方、6を超えて高くなるとマンガンの沈殿量が高まり、回収できるマンガン量の低減が著しく、マンガンロスが進行し、マンガン歩留りが低下しやすい。この観点から、硫化物沈殿処理工程における第2浸出液のpHは、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、6以下が好ましく、5以下がより好ましく、5未満が更に好ましい。第2浸出液のpHは、好ましくはpH2以上6以下、より好ましくはpH2以上5以下、さらに好ましくはpH3以上5以下、一層好ましくはpH3以上5未満である。
【0070】
続いて、手順(A)における亜鉛除去工程では、上述した硫化物沈殿処理工程で得られた混合物を第3溶液と亜鉛含有沈殿物とに分離して、亜鉛成分を除去する。
より具体的には、硫化物沈殿処理工程で得られた、マンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液と、主として残存する亜鉛の硫化物が沈殿した亜鉛含有沈殿物とを分離する。これにより、硫化物沈殿処理工程後の混合物から亜鉛成分を容易に分離でき、マンガンイオンおよび鉄イオンを含む第3溶液を得ることができる。分離手段は特に限定されることなく、上述した固液分離工程に従えばよい。生成した亜鉛含有沈殿物が多量又は微細であると、マンガンの共沈が生じたり、亜鉛分離時にろ布の目詰まり等のトラブルが起きたりしやすいところ、本発明では、酸・酸化剤処理工程において、あらかじめ粉粒体中の大部分の亜鉛成分を取り除きつつマンガン成分を留めているため、マンガンの共沈を良好に回避して最終的なマンガンの歩留を高めることができる。また、亜鉛含有沈殿物の量および微細化を抑制し、亜鉛分離工程を簡便かつ効率的に行うことができる。
なお、上記した硫化物沈殿処理では、溶液中から鉄(Fe)分の一部が沈殿除去される場合がある。この場合、予め設定した鉄成分濃度未満に鉄分が除去されていれば、この段階で処理を終えることも考えられる。しかし、手順(A)では、鉄成分をさらに分離除去して高純度のマンガン成分を得るべく、後述する鉄除去工程を更に行う。
【0071】
鉄除去工程(手順A)
手順(A)では、上述した亜鉛除去工程に続き、鉄除去工程を施す。手順(A)における鉄除去工程では、まず、先の亜鉛除去工程で得られたマンガンイオンおよび鉄イオンを含有する第3溶液に酸化処理工程を施し、該第3溶液中の鉄イオンを鉄含有沈殿物として、鉄成分を分離除去可能にする。この処理により、第3溶液からは、マンガンイオンを高純度に含有する第4溶液(マンガン含有溶液)と鉄含有沈殿物との混合物が得られる。
【0072】
酸化処理方法としては、第3溶液の好適なpHを含め、後述する手順(B)での酸化処理方法に従えばよい。ここで、硫化物沈殿処理工程を経て得られた第3溶液に、実用的な条件で空気曝気を施すと、第3溶液中の鉄成分を完全に分離除去しきれない場合がある。というのは、硫化物沈殿処理工程で添加した硫化物が、この工程では還元剤として作用する。この還元剤によって、空気曝気で供給された酸素が消費され、空気曝気量によっては酸素量が不足し、処理後の溶液中に分離除去できない鉄分が残存するからであると考えられる。なお、空気曝気を続ければ、硫化物は硫酸イオンとなり、最終的には溶液が酸化雰囲気になって、鉄成分も沈殿する。しかし、この手法では曝気時間が長くなり、実用的ではない。
【0073】
そこで、手順(A)の酸化処理工程では、空気曝気を施したのち、仕上げ酸化処理として、さらに酸化剤を添加することが好ましい。酸化剤の添加量は、酸化還元電位(vs.SHE)を測定し、酸化還元電位が550mV以上となるように調整することが好ましい。酸化剤としては、過酸化水素、過マンガン酸カリウムが好適に例示できる。
【0074】
なお、亜鉛除去工程を施したのち、適正期間放置したうえで酸化処理工程を施せば、仕上酸化処理を施すことなく、空気曝気のみの処理で十分に鉄成分を沈殿させることができる。これは、前段の硫化物沈殿処理工程で生じた第3溶液中の、還元性物質である硫化水素が空気中に放散され、第3溶液が酸化されやすくなる、すなわち、酸化還元電位が上がりやすくなることに起因すると考えられる。ここでいう適正期間は、密閉系であるか開放系であるか等の保存状態によって異なるため一概には言えないが、数日から1週間程度と推察される。
【0075】
そして、手順(A)における鉄除去工程では、上述した酸化処理工程で得られた混合物を第4溶液と鉄含有沈殿物とに分離して、鉄成分を除去する。このようにして、高純度のマンガン含有溶液(第4溶液)を回収することができる。
分離手段は特に限定されることなく、上述した固液分離工程に従えばよい。
【0076】
鉄除去工程(手順B)
次に、手順(B)における鉄除去工程では、固液分離工程で得られた第2浸出液に、まず酸化処理を施す。この酸化処理では、第2浸出液を酸化させて該第2浸出液中に含まれるイオンのうち鉄イオンを鉄含有沈殿物として沈殿させ、まず鉄成分を第2浸出液から除去可能にする。この処理により、第2浸出液から、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液と鉄含有沈殿物との混合物が得られる。
【0077】
酸化処理方法としては、常用の酸化処理方法が適用できるが、本実施形態では、安価な酸化処理方法である、空気曝気のみで十分である。空気曝気の条件としては、通常の実用的な条件(吹込み量:(浸出液量に対して0.1倍量~1倍量)/分、曝気時間:15~60分)とすることが、経済的な観点から好ましい。なお、仕上げ酸化として、酸化剤を添加する処理を付加してもよい。
【0078】
なお、酸化処理は、pH調整剤を用いて、第2浸出液のpHを調整して行うことが好ましい。第2浸出液のpHが3未満と低すぎると鉄成分が沈殿し難い。一方、第2浸出液のpHが7を超えて高すぎるとマンガン成分も同時に沈殿しやすい。このため、第2浸出液は、pH3~7の範囲に調整することが好ましい。第2浸出液は、より好ましくはpH5以上であり、より好ましくはpH6以下であり、更に好ましくはpH5~pH6近傍である。これにより、マンガンの沈殿を抑制しつつ、第2浸出液から鉄成分を沈殿・分離除去可能な状態にでき、ひいては、不純分の少ない高純度マンガン含有溶液を高歩留で得ることができる。
【0079】
続いて、手順(B)における鉄除去工程では、上述した酸化処理工程で得られた混合物を、マンガンイオンおよび亜鉛イオンを含有する第3溶液と、主として水酸化鉄を含み得る鉄含有沈殿物とに分離する。これにより、酸化処理工程後の混合物から鉄成分を容易に分離除去し、マンガン成分および亜鉛成分を含む第3溶液を得ることができる。
分離手段は特に限定されることなく、上述した固液分離工程に従えばよい。
【0080】
亜鉛除去工程(手順B)
手順(B)では、上述した鉄除去工程に続き、亜鉛除去工程を施す。手順(B)における亜鉛除去工程では、先の鉄除去工程で得られた第3溶液に硫化物を作用させ、該第3溶液中のイオンのうち主として亜鉛イオンを亜鉛硫化物として沈殿させ、残存する亜鉛成分を第3溶液から除去可能にする。この処理により、第3溶液からは、マンガンイオンを高純度に含有する第4溶液(マンガン含有溶液)と亜鉛含有沈殿物との混合物が得られる。
【0081】
先の鉄除去工程で分離された第3溶液には、マンガンイオンおよび残留する亜鉛イオンが含まれており、第3溶液に硫化物を作用すると、上述した手順(A)の硫化物沈殿処理工程と同様のメカニズムに従って、亜鉛成分が選択的に硫化物として沈殿する。そして、添加する硫化物の量、硫化物イオンの濃度、第3溶液のpHを調整することにより、第3溶液中の亜鉛イオン濃度を分析限界(0.1mg/L)未満に容易に低減することができる。
硫化物の種類および第3溶液の好適なpHは、上述した手順(A)の硫化物沈殿処理における好適な硫化物の種類および第2浸出液のpHに従えばよい。第3溶液のpHは、特にpH:4が好ましい。
また、作用させる硫化物量は、溶解亜鉛に対する硫黄Sとして1.1当量以上が好ましく、2当量以上がより好ましく、5当量以下とすることが好ましい。作用させる硫化物量が1.1当量未満では、亜鉛の沈殿除去は進行しているものの不完全であり、しかも最終的な除去率も安定しない。作用させる硫化物量が2当量以上であれば、亜鉛の沈殿除去も顕著となる。また、作用させる硫化物量が5当量を超えると、作用させる硫化物量が過剰となり、マンガンも沈殿除去される場合がある。
【0082】
そして、手順(B)における亜鉛除去工程では、上述した硫化物沈殿処理工程で得られた混合物を、第4溶液と、主として亜鉛硫化物が沈殿した亜鉛含有沈殿物とに分離して、亜鉛成分を除去する。このようにして、残存する亜鉛成分をも除去して、マンガン成分のみを含む高純度な溶液を簡便に、しかも高歩留で回収することができる。
上述のとおり、第3溶液に亜鉛イオンが多量に含有されていると、硫化物沈殿処理工程によって多量かつ微細な亜鉛含有沈殿物が生成するので、マンガンの共沈を促進して最終的なマンガンの歩留を低めやすい。また、続く固液分離時にろ布等を目詰まりさせやすく、亜鉛分離工程が困難となる。しかしながら、本発明では、硫化物沈殿処理工程に先立つ酸・酸化剤処理工程において、あらかじめ粉粒体中の大部分の亜鉛成分を取り除きつつマンガン成分を留めているため、マンガンの共沈を良好に回避して最終的なマンガンの歩留を高めることができる。また、亜鉛含有沈殿物の量および質を制御でき、亜鉛分離工程を簡便かつ効率的に行うことができる。
分離手段は特に限定されることなく、上述した固液分離工程に従えばよい。
【0083】
上記した各工程を順次経ることにより、廃乾電池に含まれる、マンガン成分以外の炭素成分、亜鉛成分、鉄成分をほぼ完全に分離除去でき、亜鉛成分および鉄成分を分析限界未満まで低減した、高純度のマンガン含有溶液として高い歩留まりで回収することができる。
なお、得られたマンガン含有溶液は、例えば、アルカリ沈殿させて高純度のマンガン水酸化物として各種用途に用いてもよい。また、得られたマンガン含有溶液は、Ni等の他の金属を混合したのち、アルカリ沈殿処理等を施し、二次電池電極材用の材料として利用してもよい。
【0084】
(マンガンの回収設備)
次に、本発明のマンガンの回収設備について説明する。本発明の回収設備は、選別装置、破砕装置、篩い分け装置、酸・酸化剤処理槽、第一の固液分離装置、酸・還元剤処理槽、第二の固液分離装置、およびマンガン抽出装置群を順に備え、本発明のマンガンの回収方法と同様の特徴および効果を有する。また、マンガン抽出装置群は、所定の亜鉛除去装置群および鉄除去装置群を順不同で含む。
そして、本発明のマンガン回収設備は、例えば、本発明のマンガン回収方法を実施する際に好適に利用することができる。
【0085】
構成A
本発明の回収設備の一態様として、上述の手順(A)を好適に実施可能な構成(A)について図7に示す。図7に模式的に示すように、回収設備は、選別装置10と、破砕装置20aと、篩い分け装置20bと、酸・酸化剤処理槽30と、第一の固液分離装置40と、酸・還元剤処理槽50と、第二の固液分離装置60と、硫化物沈殿処理槽70と、亜鉛分離装置80と、酸化処理槽90と、鉄分離装置100と、マンガン含有溶液回収槽150とを、上流から下流に向かってこの順で備えることができる。ここで、硫化物沈殿処理槽70および亜鉛分離装置80は亜鉛除去装置群を構成し、酸化処理槽90および鉄分離装置100は鉄除去装置群を構成する。また、亜鉛除去装置群および鉄除去装置群はマンガン抽出装置群を構成する。
【0086】
選別装置10では、廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池の一方または両方を選別する。選別装置の種類はとくに限定せず、形状や放射線等を利用して分別する装置が好適に例示できる。なお、廃乾電池の選別は手選別としてもよい。
破砕装置20aは、通常の破砕機がいずれも適用できるが、2軸回転式の破砕機とすることが好ましい。
篩い分け装置20bは、目開き1mm以上20mm以下の篩を備えたものとすることが好ましい。篩い分け装置20bの目開きは、マンガンの回収方法について上述した理由と同様に、おおよそ、1mm以上が好ましく、20mm以下が好ましく、10mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましい。
【0087】
酸・酸化剤処理槽30および酸・還元剤処理槽50は、それぞれ、粉粒体と酸溶液および酸化剤とを、並びに、第1浸出残渣と酸溶液および還元剤とを混合して、浸出反応を進行させるため、タンクに撹拌機を備えた一般的な撹拌槽とすることが好ましい。酸化剤として酸素およびオゾン等の気体を使用する場合は、酸化剤をタンク内に流通させるための散気設備をさらに具備することが好ましい。
【0088】
硫化物沈殿処理槽70は、第2浸出液に硫化物を作用させる硫化物処理を施すため、タンクに撹拌機を備えた一般的な撹拌槽とすることが好ましい。また、pH調整剤を添加して第2浸出液のpHを調整可能なpH調整装置を更に備えることが好ましい。
また、酸化処理槽90は、第3溶液に酸化処理を施すため、タンクに撹拌機を備えた一般的な撹拌槽とすることが好ましい。また、pH調整剤を添加して第3溶液のpHを調整可能なpH調整装置を更に備えることが好ましい。
【0089】
第一の固液分離装置40、第二の固液分離装置60、亜鉛分離装置80、鉄分離装置100はいずれも、例えば、重力沈降分離装置、ろ過装置、遠心分離装置、フィルタプレス装置、膜分離装置などから選ばれる装置を用いることができる。なお、各分離装置には、固液分離された沈殿物等を回収できる回収槽110、120、130、140を備えることが好ましい。
マンガン含有溶液回収槽150は、鉄分離装置100で固液分離されたマンガン含有溶液(第4溶液)を回収して、貯液でき、払い出し自在に構成されたタンクとすることが好ましい。
【0090】
構成B
また、本発明の回収設備の他の態様として、上述の手順(B)を好適に実施可能な構成(B)について図8に示す。図8に模式的に示すように、回収設備は、選別装置10と、破砕装置20aと、篩い分け装置20bと、酸・酸化剤処理槽30と、第一の固液分離装置40と、酸・還元剤処理装置50と、第二の固液分離装置60と、酸化処理槽71と、鉄分離装置81と、硫化物沈殿処理槽91と、亜鉛分離装置101と、マンガン含有溶液回収槽150とを、上流から下流に向かってこの順で備えることができる。ここで、酸化処理槽71および鉄分離装置81は鉄除去装置群を構成し、硫化物沈殿処理槽91および亜鉛分離装置101は亜鉛除去装置群を構成する。また、鉄除去装置群および亜鉛除去装置群はマンガン抽出装置群を構成する。
【0091】
ここで、選別装置10、破砕装置20a、篩い分け装置20b、酸・酸化剤処理槽30、第一の固液分離装置40、酸・還元剤処理槽50、第二の固液分離装置60、鉄分離装置81、亜鉛分離装置101、回収槽110、120、130、140、マンガン含有溶液回収槽150は、いずれも構成Aについて上述したとおりである。
酸化処理槽71は、第2浸出液に酸化処理を施すため、タンクに撹拌機を備えた一般的な撹拌槽とすることが好ましい。また、pH調整剤を添加して第2浸出液のpHを調整可能なpH調整装置を更に備えることが好ましい。
また、硫化物沈殿処理槽91は、第3溶液に硫化物を作用させる硫化物沈殿処理を施すため、タンクに撹拌機を備えた一般的な撹拌槽とすることが好ましい。また、pH調整剤を添加して第3溶液のpHを調整可能なpH調整装置を更に備えることが好ましい。
なお、本発明では、回収設備を構成する各種装置、反応槽、回収槽は、上記したそれぞれの機能を有する限り、その構造等は問わない。
【実施例
【0092】
以下、実施例に基づき、さらに本発明について説明する。なお、以下の実施例は、本発明の好適な一例を示すものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、以下の実施例は、本発明の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、そのような態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0093】
(実施例1)
粉粒体の作製
廃乾電池からマンガン乾電池およびアルカリマンガン乾電池を選別する選別工程と、選別した廃乾電池を破砕し、目開き2.8mmの篩で篩い分けし、廃乾電池の粉粒体を得る粉砕・篩い分け工程とを施し、廃乾電池の粉粒体を得た。得られた粉粒体(酸・酸化剤処理工程前)の主要な化学成分を表1に示す。なお、得られた粉粒体は、表1に示す元素の他に、酸化物または水酸化物に由来する酸素、若干の水素および水分を含む。
ここで、上述の実験(A)と実施例1とでは、酸・酸化剤処理工程前の粉粒体における化学成分の結果が同じであったため、両結果をともに表1に掲載する。
【0094】
酸・酸化剤処理工程
得られた粉粒体を酸・酸化剤処理槽30に投入し、酸・酸化剤処理工程を施した。酸・酸化剤処理工程では、粉粒体30gに酸溶液300mLと酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム溶液80mLとを混合し、粉粒体から主に亜鉛成分を浸出させた。酸溶液の酸濃度は、硫酸濃度:2N(約8.7質量%)とした。なお、酸浸出処理時間は1時間とし、酸浸出処理は撹拌処理とした。この場合、粉粒体と酸溶液との比である固液比は100g/Lであり、酸化剤の添加量は酸溶液の添加量の26.7質量%であった。
【0095】
第一の固液分離工程
酸・酸化剤処理工程後、得られた第1浸出液と第1浸出残渣との混合物を、第一の固液分離装置40に装入し、孔径1μmのろ紙でろ過して固液分離した。得られた第1浸出残渣中のマンガン濃度、亜鉛濃度、鉄濃度(質量%)を、ICP発光分析法により定量した。粉粒体から第1浸出残渣へのマンガンの歩留は99.99%と高かった。結果を表1に併記する。
ここで、上述の実験(A)と実施例1とでは、酸・酸化剤処理工程後の第1浸出残渣における化学成分の結果が同じであったため、両結果をともに表1に掲載する。
【0096】
酸・還元剤処理工程
第一の固液分離工程で得られた第1浸出残渣と、酸溶液としての2N(約8.7質量%)硫酸と、還元剤としての30%過酸化水素水とを酸・還元剤処理槽50に投入し、1時間の撹拌処理を行った。固液比(第1浸出残渣/酸溶液)を50g/Lとした。
【0097】
第二の固液分離工程
得られた第2浸出液と第2浸出残渣との混合物を、第二の固液分離装置60に装入し、孔径1μmのろ紙でろ過して固液分離した。第二の固液分離工程後に得られる第2浸出液中のマンガン濃度、亜鉛濃度、鉄濃度(mg/L)を、ICP発光分析法により定量した。得られた結果を、表2の「第二の固液分離工程後の第2浸出液」として示す。
【0098】
第3溶液の作製(亜鉛除去工程)
次に、第二の固液分離工程により得られた第2浸出液を、硫化物沈殿処理槽70に装入し、第2浸出液中になお残存する亜鉛成分に硫化物を作用させる硫化物沈殿処理工程を行った。硫化物沈殿処理工程では、第2浸出液に、硫化物として水硫化ナトリウムNaHSを、溶解亜鉛に対し硫黄Sとして2当量となるように添加した。なお、水硫化ナトリウムは、蒸留水に溶解させた溶液の状態で添加した。また、硫化物沈殿処理中の第2浸出液のpHが4となるようにpH調整液(3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム)で調整した。また、硫化物沈殿処理の処理時間は30分とし、撹拌処理とした。
【0099】
上記した硫化物沈殿処理工程後の混合物を亜鉛分離装置80に装入し、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過して固液分離する亜鉛分離工程を施し、第3溶液と亜鉛含有沈殿物とに分離した。ここで、従来の亜鉛分離工程では35分程度かかっていたろ過時間が、粉粒体に対する酸・酸化剤処理工程を予め行った本実施例の亜鉛分離工程では、15分程度に短縮された。そして、得られた第3溶液の成分をICP発光分析法により定量分析した。なお、水硫化ナトリウム溶液およびpH調整剤の添加量を記録し、これら溶液で希釈された影響を分析値から補正した。得られた結果を、表2の「亜鉛除去工程後の第3溶液」として併記する。
【0100】
第4溶液の作製(鉄除去工程)
ついで、亜鉛除去工程を経て得られた第3溶液を、酸化処理槽90に装入し、酸化反応を行う酸化処理工程を行った。酸化処理工程では、酸化処理として、まず、得られた第3溶液に空気曝気を施した。空気曝気の条件は、吹込み量:(第3溶液量と同体積)/分、曝気時間:30分とした。空気曝気を施した後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過した中間溶液について、含まれる成分を上記手法で定量分析した。得られた結果を、表2の「酸化処理後の中間溶液」として併記する。
【0101】
ついで、更なる酸化処理として、上記空気曝気後の第3溶液に、直ちに酸化剤を添加した。酸化剤の添加では、第3溶液のpHが5となるように、pH調整液(3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム)を添加して調整したのち、酸化剤として過酸化水素水を、酸化還元電位が550mV以上となるように、約8~16mL添加した。このようにして、第3溶液中の鉄成分を水酸化鉄として沈殿し、除去可能な状態とした。なお、酸化剤による処理時間は30分とした。
【0102】
空気曝気および酸化剤添加による酸化処理工程後の混合物を鉄分離装置100に装入し、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過し、マンガン含有溶液(第4溶液)と鉄含有沈殿物とに固液分離する鉄分離工程を施した。
得られた第4溶液について、含まれる成分を上記手法で定量分析した。なお、過酸化水素水とpH調整剤の添加量を記録し、これら溶液で希釈された影響を分析値から補正した。得られた結果を、表2の「鉄除去工程後の第4溶液」として併記する。得られた第4溶液(マンガンイオン含有溶液)におけるMnの歩留は99%であった。
【0103】
【表2】
【0104】
表2から、本発明のマンガン回収方法の一実施形態である手順Aによれば、廃乾電池に含まれるマンガン成分以外の、亜鉛成分および鉄成分を分析限界(0.1mg/L)未満にまで簡便に分離除去できることがわかる。このように、本発明によれば、廃乾電池に含まれるマンガン成分を、高純度のマンガンイオン含有溶液として、容易かつ効率的に、しかも高歩留で回収できることがわかる。
【0105】
(実施例2)
実施例1と同様に粉粒体の作製を行い、表1に示す組成の粉粒体を得た。また、実施例1と同様に酸・酸化剤処理工程、第一の固液分離工程、酸・還元剤処理工程および第二の固液分離工程を行ったところ、第二の固液分離工程後の第2浸出液中のマンガン、亜鉛、鉄の各成分の含有量(mg/L)は表3のとおりであった。
【0106】
次に、実施例1と同様に第3溶液の作製(亜鉛除去工程)を行ったところ、亜鉛除去工程後の第3溶液中の成分は表3のとおりであった。なお、従来の亜鉛分離工程では35分程度かかっていたろ過時間が、粉粒体に対する酸・酸化剤処理工程を予め行った本実施例の亜鉛分離工程では、25分程度に短縮された。
【0107】
ついで、亜鉛分離工程を経て得られた第3溶液を、室温で1週間放置したのち、酸化処理槽90に装入し、酸化反応を行う酸化処理工程を行った。酸化処理工程では、放置後の第3溶液に酸化処理として空気曝気のみを施した。空気曝気の条件は、吹込み量:(第3溶液量と同体積)/分、曝気時間:30分とした。空気曝気を施した後、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過したマンガン含有溶液(第4溶液)について、含まれる成分を上記手法で定量分析した。得られた結果を、表3の「鉄除去工程後の第4溶液」として併記する。得られた第4溶液(マンガンイオン含有溶液)におけるMnの歩留は99%を超えた。
【0108】
【表3】
【0109】
表3から、本発明のマンガン回収方法の一実施形態である手順Aにおいて、硫化物沈殿処理を施して分離された第3溶液に対し、適正な期間静置したのちに酸化処理工程を施せば、空気曝気のみによる酸化処理でも十分に鉄成分を沈殿物として分離除去できることがわかる。その結果、マンガン成分を高歩留で回収することができた。
【0110】
(実施例3)
実施例1と同様に粉粒体の作製を行い、表1に示す組成の粉粒体を得た。また、実施例1と同様に酸・酸化剤処理工程、第一の固液分離工程、酸・還元剤処理工程および第二の固液分離工程を行ったところ、第二の固液分離工程後の第2浸出液中のマンガン、亜鉛、鉄の各成分の含有量(mg/L)は表4のとおりであった。
【0111】
第3溶液の作製(鉄除去工程)
次に、第二の固液分離工程で分離された第2浸出液に酸化処理工程を施した。酸化処理工程では、得られた第2浸出液に空気曝気を施し、該第2浸出液中に含まれる鉄成分から水酸化鉄を生成し、鉄含有沈殿物として第2浸出液から鉄成分を分離除去可能な状態とした。空気曝気の条件は、吹込み量:(第2浸出液量と同体積 mL)/分、曝気時間:30分とした。なお、酸化処理を施すに当たり、第2浸出液を、pH調整剤(3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム)を用いて、pH:5に調整した。
【0112】
酸化処理後、第3溶液と鉄含有沈殿物とを孔径1μmのろ紙で吸引ろ過し、第3溶液と鉄含有沈殿物とに分離した(鉄分離工程)。そして、鉄除去工程で得られた第3溶液について、含まれる成分(Mn、Zn、Fe)をICP発光分析法により定量分析した。なお、pH調整剤の添加量を記録し、測定値でのpH調整剤による希釈の影響を補正した。得られた第3溶液中のマンガン、亜鉛、鉄の各成分の濃度(mg/L)を、表4の「鉄除去工程後の第3溶液」として併記する。
【0113】
第4溶液の作製(亜鉛除去工程)
ついで、鉄分離工程で分離された第3溶液に硫化物を作用させ、主として、第3溶液中になお残留する亜鉛イオンを亜鉛硫化物(亜鉛含有沈殿物)として沈殿させ、第3溶液から分離除去可能な状態とする硫化物沈殿処理工程を施した。使用した硫化物は水硫化ナトリウムNaHSであり、溶解亜鉛に対し硫黄Sとして2当量となるように添加した。なお、水硫化ナトリウムは、蒸留水に溶解させた溶液の状態で添加した。また、硫化物沈殿処理中の第3溶液のpHが4となるようにpH調整液(3M硫酸または100g/L水酸化ナトリウム)で調整した。また、硫化物沈殿処理の処理時間は30分とし、撹拌処理とした。
【0114】
硫化物沈殿処理後の混合物を、孔径1μmのろ紙で吸引ろ過し、マンガン含有溶液(第4溶液)と亜鉛含有沈殿物とに分離した(亜鉛分離工程)。従来の亜鉛分離工程では35分程度かかっていたろ過時間が、粉粒体に対する酸・酸化剤処理工程を予め行った本実施例の亜鉛分離工程では、25分程度に短縮された。そして、分離後に得られた第4溶液の成分をICP発光分析法により定量分析した。なお、水硫化ナトリウム溶液およびpH調整剤の添加量を記録し、これら溶液で希釈された影響を測定値から補正した。得られた結果を、表4の「亜鉛除去工程後の第4溶液」として併記する。得られた第4溶液(マンガンイオン含有溶液)におけるMnの歩留は95%であった。
【0115】
【表4】
【0116】
表4から、本発明のマンガン回収方法の一実施形態である手順Bによれば、廃乾電池に含まれるマンガン成分以外の亜鉛成分および鉄成分を分析限界(0.1mg/L)未満にまで簡便に分離除去できることがわかる。このように、本発明によれば、廃乾電池に含まれるマンガン成分を、高純度のマンガンイオン含有溶液として、容易かつ効率的に、しかも高い歩留りで回収できることがわかる。
【0117】
(実施例4)
実施例1と同様に粉粒体の作製を行った。得られた粉粒体を酸・酸化剤処理槽30に投入し、酸・酸化剤処理工程を施すにあたり、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウムの添加量を種々変更した。具体的には、粉粒体30gに酸溶液300mLと次亜塩素酸ナトリウム溶液0~200mLとを混合し、粉粒体から主に亜鉛成分を浸出させた。その他の条件は実施例1と同様とした。この場合、粉粒体と酸溶液との固液比は100g/Lであり、酸化剤の添加量は酸溶液の添加量の0~66.7質量%であった。
次いで、得られた第1浸出液と第1浸出残渣との混合物を、第一の固液分離装置40に装入し、孔径1μmのろ紙でろ過して固液分離した。得られた第1浸出液中のマンガン濃度および亜鉛濃度(mg/L)を、ICP発光分析法により定量した。結果を図9に示す。
次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量を60mL(酸溶液の添加量に対して20質量%)以上とすることにより、次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加しない(酸溶液の添加量に対して0質量%)場合に比べ、第1浸出液へのマンガンの溶解量を約1/5に著しく低減可能なことが分かった。また、次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量を150mL(酸溶液の添加量に対して50質量%)以上とすることにより、第1浸出液へのマンガンの溶解量を1mg/L未満にまで抑制でき、粉粒体から第1浸出残渣へのマンガン成分の歩留を99.99%と高めることが可能と分かった。一方、亜鉛は、図9に示すとおり、次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量に関わらず、第1浸出液中に20000mg/L程度溶解していた。したがって、酸化剤としての次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量を60mL(酸溶液の添加量に対して20質量%)以上に制御することが好ましく、150mL(酸溶液の添加量に対して50質量%)以上に制御することがより好ましく、これにより、亜鉛成分を選択的に除去しつつ、マンガン成分を高い歩留で第1浸出残渣に確保し、もってマンガン成分を高い歩留で回収可能であることが分かった。
【符号の説明】
【0118】
10 選別装置
20a 破砕装置
20b 篩い分け装置
30 酸・酸化剤処理槽
40 第一の固液分離装置
50 酸・還元剤処理槽
60 第二の固液分離装置
70 硫化物沈殿処理槽(構成A)
71 酸化処理槽(構成B)
80 亜鉛分離装置(構成A)
81 鉄分離装置(構成B)
90 酸化処理槽(構成A)
91 硫化物沈殿処理槽(構成B)
100 鉄分離装置(構成A)
101 亜鉛分離装置(構成B)
110 回収槽
120 回収槽
130 回収槽
140 回収槽
150 マンガン含有溶液回収槽
【要約】
【課題】廃乾電池から高純度のマンガン含有溶液を高い歩留で回収する。
【解決手段】廃乾電池に含有されるマンガンの回収方法であり、廃乾電池の選別工程と;前記廃乾電池から粉粒体を得る破砕・篩い分け工程と;前記粉粒体の酸・酸化剤処理工程と;第1浸出残渣を分離する第一の固液分離工程と;前記第1浸出残渣から第2浸出液を得る酸・還元剤処理工程と;前記第2浸出液を分離する第二の固液分離工程と;前記第2浸出液からマンガンイオン含有溶液を得るマンガン抽出工程と;をこの順に施し、前記マンガン抽出工程が、所定の亜鉛除去工程と鉄除去工程とを順不同に含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9