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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】可変容量型過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20221220BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F02B37/24
F02B39/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021506132
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031208
(87)【国際公開番号】W WO2020188847
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019053099
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133307
【弁理士】
【氏名又は名称】西本 博之
(72)【発明者】
【氏名】林 克憲
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐二
(72)【発明者】
【氏名】植田 隆文
(72)【発明者】
【氏名】鬼束 和宏
(72)【発明者】
【氏名】福原 史彦
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102011086310(DE,A1)
【文献】特開2018-025125(JP,A)
【文献】特開2009-144545(JP,A)
【文献】特開2013-245655(JP,A)
【文献】特開2009-243375(JP,A)
【文献】特開2015-229989(JP,A)
【文献】特表2013-537957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0209232(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸受孔が設けられたシュラウド側リングと、第2軸受孔が設けられたハブ側リングと、前記シュラウド側リングと前記ハブ側リングとの間に形成されるノズル流路と、前記ノズル流路に配置され前記第1軸受孔と前記第2軸受孔とで両持ち支持されるノズルベーンと、を有する可変ノズルユニットと、
前記ノズル流路に接続されるスクロール流路を有し、且つ前記ノズル流路に連通するタービン翼車の入口を有するタービンハウジングと、を備え、
前記シュラウド側リングと前記タービンハウジングとの間には、前記スクロール流路に連通する隙間が形成されており、
前記第1軸受孔は、前記シュラウド側リングを貫通し、前記シュラウド側リングと前記隙間を通じて前記スクロール流路に連通しており、
前記隙間は、前記スクロール流路から前記入口まで延びており、
前記隙間において、前記第1軸受孔の前記隙間側の開口と前記入口との間には前記隙間を塞ぐシール部材が配置されており、
前記第1軸受孔の前記隙間側の前記開口が、前記第1軸受孔の前記ノズル流路側の開口よりも小さい、可変容量型過給機。
【請求項2】
前記第1軸受孔は、前記ノズル流路側に位置し円柱状に設けられ前記ノズルベーンの第1回動軸が挿入される大径部と、前記隙間側に位置し前記大径部よりも小径に設けられた小径部と、を有し、
前記第1回動軸の軸方向の長さが、前記大径部の前記軸方向の長さよりも短い、請求項1に記載の可変容量型過給機。
【請求項3】
前記シュラウド側リングは、
前記大径部が貫通して設けられたリング本体部と、
前記大径部を塞ぐように前記リング本体部の前記隙間側の面に接合され、前記隙間と前記大径部とを連通させる前記小径部が設けられた蓋部材と、を有する、請求項2に記載の可変容量型過給機。
【請求項4】
前記ノズルベーンは、前記第1軸受孔に挿入される第1回動軸と、前記第2軸受孔に挿入される第2回動軸と、を有し、
前記第1回動軸の外径は、前記第2回動軸の外径よりも小さい、請求項1~3の何れか1項に記載の可変容量型過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変容量型過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記特許文献1に記載の可変容量型過給機が知られている。この過給機は、ノズル流路内でノズルベーンを回動させる可変ノズルユニットを備えている。当該可変ノズルユニットでは、ノズルベーンを円滑に回動させるために、ノズルベーンのベーン本体とノズル流路との間に軸方向の僅かなクリアランスがある。ベーン本体はノズル流路内で僅かに軸方向に移動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-243375号公報
【文献】特開2013-002293号公報
【文献】特開2013-245655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
過給機の運転中においては、ベーン本体が、軸方向においてシュラウド側に寄って位置することが、過給機の性能向上のために好ましい。しかしながら、ベーン本体がノズル流路内のどこに位置するかは、ベーン回動軸に対して軸方向に作用する圧力のバランスに依存する。上記のような圧力のバランスは、タービン内の各部位の圧力の関係に関連するものであり、調整することは困難であった。一方で、ベーン本体がシュラウド側に寄りすぎて強く押し付けられる状態は、ノズル流路の壁面との摩擦によってノズルベーンの円滑な回動が阻害される原因になるので、避ける必要がある。
【0005】
本開示は、運転中におけるノズルベーンのベーン本体を適切にシュラウド側に寄せることができる過給機を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の可変容量型過給機は、
第1軸受孔が設けられたシュラウド側リングと、第2軸受孔が設けられたハブ側リングと、前記シュラウド側リングと前記ハブ側リングとの間に形成されるノズル流路と、前記ノズル流路に配置され前記第1軸受孔と前記第2軸受孔とで両持ち支持されるノズルベーンと、を有する可変ノズルユニットと、
前記ノズル流路に接続されるスクロール流路を有するタービンハウジングと、を備え、
前記第1軸受孔は、前記シュラウド側リングを貫通し、前記シュラウド側リングと前記タービンハウジングとの隙間を通じて前記スクロール流路に連通しており、
前記第1軸受孔の前記隙間側の開口が、前記第1軸受孔の前記ノズル流路側の開口よりも小さい、可変容量型過給機である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の過給機によれば、運転中におけるノズルベーンのベーン本体を適切にシュラウド側に寄せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態の可変容量型過給機の断面図である。
図2図2は、ノズルベーンの近傍を拡大して示す断面図である。
図3図3は、ノズルベーンとシュラウド側リングとを分解して示す断面図である。
図4図4は、ノズルベーン近傍の他の構造の例を示す断面図である。
図5図5は、第2実施形態におけるノズルベーンの近傍を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一態様の可変容量型過給機は、
第1軸受孔が設けられたシュラウド側リングと、第2軸受孔が設けられたハブ側リングと、前記シュラウド側リングと前記ハブ側リングとの間に形成されるノズル流路と、前記ノズル流路に配置され前記第1軸受孔と前記第2軸受孔とで両持ち支持されるノズルベーンと、を有する可変ノズルユニットと、
前記ノズル流路に接続されるスクロール流路を有するタービンハウジングと、を備え、
前記第1軸受孔は、前記シュラウド側リングを貫通し、前記シュラウド側リングと前記タービンハウジングとの隙間を通じて前記スクロール流路に連通しており、
前記第1軸受孔の前記隙間側の開口が、前記第1軸受孔の前記ノズル流路側の開口よりも小さい、可変容量型過給機である。
【0010】
前記第1軸受孔は、前記ノズル流路側に位置し円柱状に設けられ前記ノズルベーンの第1回動軸が挿入される大径部と、前記隙間側に位置し前記大径部よりも小径に設けられた小径部と、を有し、
前記第1回動軸の軸方向の長さが、前記大径部の前記軸方向の長さよりも短いこととしてもよい。
【0011】
前記シュラウド側リングは、
前記大径部が貫通して設けられたリング本体部と、
前記大径部を塞ぐように前記リング本体部の前記隙間側の面に接合され、前記隙間と前記大径部とを連通させる前記小径部が設けられた蓋部材と、を有することとしてもよい。
【0012】
前記ノズルベーンは、前記第1軸受部に挿入される第1回動軸と、前記第2軸受部に挿入される第2回動軸と、を有し、
前記第1回動軸の軸方向の視線で見た投影面積と、前記第2回動軸の軸方向の視線で見た投影面積と、が等しいこととしてもよい。
【0013】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しつつ本開示の第1実施形態について詳細に説明する。図1は、可変容量型過給機1の回転軸線Hを含む断面を取った断面図である。過給機1は、例えば、船舶や車両の内燃機関に適用されるものである。
【0014】
図1に示されるように、過給機1は、タービン2とコンプレッサ3とを備えている。タービン2は、タービンハウジング4と、タービンハウジング4に収納されたタービン翼車6と、を備えている。タービンハウジング4は、タービン翼車6の周囲において周方向に延びるスクロール流路16を有している。コンプレッサ3は、コンプレッサハウジング5と、コンプレッサハウジング5に収納されたコンプレッサ翼車7と、を備えている。コンプレッサハウジング5は、コンプレッサ翼車7の周囲において周方向に延びるスクロール流路17を有している。
【0015】
タービン翼車6は回転軸14の一端に設けられており、コンプレッサ翼車7は回転軸14の他端に設けられている。タービンハウジング4とコンプレッサハウジング5との間には、軸受ハウジング13が設けられている。回転軸14は、軸受15を介して軸受ハウジング13に回転可能に支持されており、回転軸14、タービン翼車6及びコンプレッサ翼車7が一体の回転体12として回転軸線H周りに回転する。
【0016】
タービンハウジング4には、排気ガス流入口(図示せず)及び排気ガス流出口10が設けられている。内燃機関(図示せず)から排出された排気ガスが、排気ガス流入口を通じてタービンハウジング4内に流入し、スクロール流路16を通じてタービン翼車6に流入し、タービン翼車6を回転させる。その後、排気ガスは、排気ガス流出口10を通じてタービンハウジング4外に流出する。
【0017】
コンプレッサハウジング5には、吸入口9及び吐出口(図示せず)が設けられている。上記のようにタービン翼車6が回転すると、回転軸14を介してコンプレッサ翼車7が回転する。回転するコンプレッサ翼車7は、吸入口9を通じて外部の空気を吸入する。この空気が、コンプレッサ翼車7及びスクロール流路17を通過して圧縮され吐出口から吐出される。吐出口から吐出された圧縮空気は、前述の内燃機関に供給される。
【0018】
過給機1のタービン2について、更に説明する。以下の説明において、単に「軸方向」、「径方向」、「周方向」というときには、タービン翼車6の回転軸方向(回転軸線H方向)、回転径方向、及び回転周方向をそれぞれ意味するものとする。
【0019】
タービン2において、スクロール流路16とタービン翼車6とを接続するノズル流路19には、可動のノズルベーン21が設けられている。複数のノズルベーン21が回転軸線Hを中心とする円周上に等間隔に配置されている。各々のノズルベーン21は、同期して、回転軸線Hに平行な回動軸線J周りに回動する。複数のノズルベーン21が上記のように回動することで、隣接するノズルベーン21同士の隙間が拡縮しノズル流路19の開度が調整される。
【0020】
ノズルベーン21を上記のように駆動するために、タービン2は可変ノズルユニット20を備えている。可変ノズルユニット20は、タービンハウジング4の内側に嵌め込まれており、タービンハウジング4と軸受ハウジング13とで挟み込まれて固定されている。
【0021】
可変ノズルユニット20は、上記の複数のノズルベーン21と、ノズルベーン21を軸線方向に挟むシュラウド側リング33とハブ側リング34と、を有している。シュラウド側リング33とハブ側リング34とは、それぞれ回転軸線Hを中心とするリング状を成しており、タービン翼車6を周方向に囲むように配置されている。シュラウド側リング33とハブ側リング34とで軸方向に挟まれた領域が前述のノズル流路19を構成する。シュラウド側リング33とハブ側リング34とは、軸方向に延びる複数の連結ピン29で連結されている。連結ピン29の寸法が高精度に作製されることで、ノズル流路19の軸線方向の寸法精度が確保されている。
【0022】
シュラウド側リング33には、ノズルベーン21と同数の軸受孔31(第1軸受孔)が設けられている。ハブ側リング34にも同様に、ノズルベーン21と同数の軸受孔32(第2軸受孔)が設けられている。ノズルベーン21は、ノズル流路19内で回動するベーン本体22と、ベーン本体22からシュラウド側リング33側に延びる円柱状のベーン回動軸23(第1回動軸)と、ハブ側リング34側に延びる円柱状のベーン回動軸24(第2回動軸)とを有している。ベーン回動軸23とベーン回動軸24は、同じ外径の円柱形状をなしている。ベーン回動軸23は軸受孔31に対して回動可能に挿入され、ベーン回動軸24は軸受孔32に対して回動可能に挿入されている。この構造により、ノズルベーン21は、軸受孔31と軸受孔32とによって、両持ち支持されている。
【0023】
各ベーン回動軸24はハブ側リング34を貫通しており、各ベーン回動軸24の端部がハブ側リング34の裏面側で駆動機構27に接続されている。駆動機構27は、ハブ側リング34と軸受ハウジング13との間に形成された機構スペース28に収納されている。駆動機構27を介して、アクチュエータ(図示せず)からの駆動力が各ベーン回動軸24に伝達される。上記駆動力によって、各ノズルベーン21がベーン回動軸23,24を中心として回動軸線J周りに回動する。
【0024】
ノズルベーン21を回動させるためのクリアランスとして、ベーン本体22の軸方向の長さは、ノズル流路19の軸方向の長さよりも僅かに短くされている。従って、ノズルベーン21には僅かに軸方向の遊びがあり、すなわち、ベーン本体22はノズル流路19内で僅かに軸方向に移動可能である。
【0025】
図2及び図3を参照しながら、ノズルベーン21の近傍の構造について説明する。図2は、ノズルベーン21の近傍を拡大して示す断面図である。図3は、ノズルベーン21とシュラウド側リング33とを分解して示す断面図である。
【0026】
図に示されるように、タービンハウジング4とシュラウド側リング33との間には、軸方向に隙間37が形成されている。隙間37は、スクロール流路16からタービン翼車6の入口まで延びている。隙間37は、タービン翼車6の入口近傍においてシール部材39でシールされているので、スクロール流路16からタービン翼車6の入口に抜けるガスは極めて少ない。
【0027】
軸受孔31は、シュラウド側リング33を軸方向に貫通して形成されており、ノズル流路19側と隙間37側との両方に開口している。以下では、軸受孔31のノズル流路側の開口を開口41と呼び、軸受孔31の隙間37側の開口を開口42と呼ぶ。開口42の口径は、開口41の口径よりも小さい。軸受孔31は、上記開口41を含みノズル流路19側に設けられた大径部43と、上記開口42を含み隙間37側に設けられた小径部44と、を有している。大径部43及び小径部44は、回動軸線Jを円柱軸とする円柱形状をなしている。大径部43と小径部44との境界位置には、段差面45が形成されている。
【0028】
大径部43の内径はベーン回動軸23の外径よりも僅かに大きい。この大径部43に円柱形状のベーン回動軸23が挿入される。一方、小径部44の内径は、大径部43の内径よりも小さく、ベーン回動軸23の外径よりも小さい。また、大径部43の軸方向の長さk1は、ベーン回動軸23の軸方向の長さk2よりも長い。従って、ベーン回動軸23を大径部43に挿入した状態において、大径部43の先端面23aと段差面45との間には、軸方向の隙間47が形成される。
【0029】
軸受孔31は、隙間37を通じてスクロール流路16に連通しているので、軸受孔31内の圧力は、スクロール流路16の圧力の影響を受ける。そして、軸受孔31内の圧力に起因して、ベーン回動軸23の先端面23aには、回動軸線Jに沿ってノズルベーン21をハブ側リング34側に向けて押す力が作用する。この力を「F1」とする。
【0030】
その一方、ハブ側リング34とタービンハウジング4との間には周方向の隙間49が形成されている。この隙間49を通じて、機構スペース28とスクロール流路16とが連通されている。従って、機構スペース28内の圧力は、スクロール流路16の圧力の影響を受ける。そして、機構スペース28内の圧力に起因して、ベーン回動軸24の先端面24aには、回動軸線Jに沿ってノズルベーン21をシュラウド側リング33側に向けて押す力が作用する。この力を「F2」とする。前述したように、ベーン本体22はノズル流路19内で僅かに軸方向に移動可能である。そして、ノズル流路19内におけるベーン本体22の軸方向位置は、上記の力F1と力F2とのバランスに依存する。なお、ベーン回動軸23とベーン回動軸24とは外径が等しいことから、軸方向の視線で見た投影面積も互いに等しい。従って、結局のところ、ベーン本体22の軸方向位置は、隙間47の圧力(以下、圧力P1とする)と機構スペース28内の圧力(以下P2とする)とのバランスに依存することになる。
【0031】
続いて、以上のような本実施形態の過給機1による作用効果について説明する。過給機1の性能の向上のためには、運転中において、ベーン本体22がノズル流路19内でシュラウド側リング33に近い側に寄っていることが好ましい。過給機1では、軸受孔31の隙間37側の開口42が、軸受孔31のノズル流路19側の開口41よりも小さくなっている。従って、軸受孔31内の圧力は、口径が絞られた開口42を介してスクロール流路16の圧力の影響を受けることになる。
【0032】
従ってこの場合、開口42による圧力損失により、仮に開口42が開口41と同口径であった場合に比べれば、軸受孔31内の隙間47の圧力P1は低下する。そうすると、ベーン回動軸23の先端面23aに作用する力F1が低下し、その結果、ベーン本体22は、ノズル流路19内でシュラウド側リング33に近い側に寄る傾向が表れる。その一方、力F1が小さすぎると、ベーン本体22がシュラウド側リング33に押し当てられ、摩擦によってベーン本体22の円滑な回動が阻害されるので、好ましくない。従って、力F1を適切に調整することが必要である。
【0033】
本実施形態の過給機1においては、開口42の口径及び小径部44の内径を適切に設計することで、圧力P1と圧力P2とのバランスを調整し、ベーン本体22に作用する軸方向の力(力F1と力F2との差)を比較的容易に調整することができる。そして、これにより、運転中のベーン本体22の軸方向位置が比較的容易に調整可能であり、過給機1の性能を向上することができる。
【0034】
なお、ノズルベーン21に作用する上記のような力F1,F2のバランスを調整する手法としては、図4に例示されるような構成の採用も考えられる。すなわち、ベーン回動軸23,24の互いの外径d1,d2を異なるものにして、軸方向の視線で見たベーン回動軸23,24の投影面積を調整することも考えられる。図4の例では、ベーン回動軸23の外径d1がベーン回動軸24の外径d2よりも小さい。しかしながら、ベーン回動軸23,24の外径を異なるものにするには、ノズルベーン21の作動性に関わる設計を変更する必要がある。このような構成に比較して、本実施形態の過給機1では、小径部44の内径を適切に設計して圧力P1を調整すればよいので、設計が比較的容易である。
【0035】
また、ノズルベーン21に作用する力F1を低減させるための他の構造として、軸受孔31の隙間37側を完全に塞ぎ、すなわち、軸受孔31を有底の孔にすることも考えられる。しかしながらこの構造では、力F1が小さくなりすぎ、ベーン本体22がシュラウド側リング33に押し当てられ、摩擦によってベーン本体22の円滑な回動が阻害される可能性もある。このような問題が回避し易い点において、本実施形態の過給機1が好ましい。
【0036】
(第2実施形態)
続いて、図5を参照しながら本開示の第2実施形態について説明する。本実施形態における可変容量型過給機は、第1実施形態におけるシュラウド側リング33に代えて、シュラウド側リング53を有している。これ以外の点については、本実施形態の可変容量型過給機は、第1実施形態の可変容量型過給機1と同様の構成を備えるので、同一又は同等の構成要素に対して図面に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0037】
図5に示されるように、シュラウド側リング53は、リング本体部54と蓋部材55とを備えている。リング本体部54には、軸方向に貫通しベーン回動軸23が挿入される貫通孔73が設けられている。貫通孔73の軸方向の長さは、ベーン回動軸23の軸方向の長さよりも長い。蓋部材55は、貫通孔73を塞ぐようにリング本体部54の隙間37側の面に接合されている。そして、蓋部材55を貫通する小孔74が設けられており、小孔74が隙間37と貫通孔73とを連通させている。小孔74の内径は貫通孔73の内径よりも小さい。蓋部材55は、軸方向の視線で見て、リング本体部54とほぼ同型状の円環状を呈する。なお、蓋部材55が一体の円環状部材であることは必須ではない。例えば、各貫通孔73に対応する位置に、それぞれ別の蓋部材が設けられてもよい。
【0038】
以上のような構造により、上記貫通孔73で構成される大径部63と、上記小孔74で構成される小径部64と、を備えた軸受孔51を構築することができる。そして、軸受孔51の隙間37側の開口62が、軸受孔51のノズル流路19側の開口61よりも小さいといった構成が実現される。よって、本実施形態の過給機によっても、第1実施形態の過給機1と同様の作用効果が得られる。
【0039】
本開示は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。また、上述した実施形態に記載されている技術的事項を利用して、変形例を構成することも可能である。各実施形態の構成を適宜組み合わせて使用してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 可変容量型過給機
4 タービンハウジング
16 スクロール流路
19 ノズル流路
21 ノズルベーン
20 可変ノズルユニット
33,53 シュラウド側リング
34 ハブ側リング
31,51 軸受孔(第1軸受孔)
32 軸受孔(第2軸受孔)
23 ベーン回動軸(第1回動軸)
24 ベーン回動軸(第2回動軸)
37 隙間
41,61 開口
42,62 開口
43,63 大径部
44,64 小径部
54 リング本体部
55 蓋部材
図1
図2
図3
図4
図5