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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】検査装置、測定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20221220BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20221220BHJP
   G01S 7/497 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G01S17/89
G01B11/24 A
G01S7/497
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021536460
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2019029496
(87)【国際公開番号】W WO2021019616
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】辻 聡
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137244(JP,A)
【文献】特開2017-150977(JP,A)
【文献】特開2013-045141(JP,A)
【文献】特開2010-271066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0219336(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象部材に対してビームを照射し、少なくとも光の振幅情報に基づいて前記検査対象部材の点群データを取得する三次元センサと、
前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する方向特定部と、
前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定するチルト量決定部と、を備える検査装置。
【請求項2】
前記チルト量に応じて、前記基準座標系に対して前記固有座標系がチルトするように前記三次元センサの姿勢を変更する姿勢変更部をさらに備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記姿勢変更部が前記三次元センサの姿勢を変更した後に、
前記三次元センサが前記検査対象部材の前記点群データを再度取得し、
前記方向特定部が再度取得された前記点群データより前記所定の方向を再度検出し、
前記チルト量決定部は、前回の前記所定の方向の検出結果と今回の前記所定の方向の検出結果との角度差が、閾値未満の場合には前記チルト量の再度の決定を行なわず、前記閾値以上の場合には前記チルト量を再度決定し、
前記姿勢変更部は、前記チルト量が再度決定された場合に、再度決定された前記チルト量に応じて前記三次元センサの姿勢を変更する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記方向特定部は、前記点群データの分布に基づいて前記所定の方向を検出する、請求項1から3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記分布は分散である、請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記チルト量決定部は、前記所定の方向と、前記三次元センサにおけるビームの走査方向のうちで分解能が最も高い方向と、が直交するように前記チルト量を決定する、請求項1から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記三次元センサによって複数回取得された前記点群データを重ね合わせた重畳点群データを作成する重畳点群データ作成部をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記検査対象部材は異形棒鋼である、請求項1から7のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
少なくとも光の振幅情報に基づいて点群データを取得することができる三次元センサにより検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する第1のステップと、
前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する第2のステップと、
前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定する第3のステップと、を備える測定方法。
【請求項10】
少なくとも光の振幅情報に基づいて点群データを取得することができる三次元センサにより検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する第1のステップと、
前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する第2のステップと、
前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定する第3のステップと、をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、測定方法及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象部材に対してビームを照射することにより取得した点群データにより検査対象部材の三次元形状を推定する技術が知られている。特許文献1には、配管内表面の状態を検出する表面状態センサとレーザー光を照射するレーザー照射部により取得した点群データに基づいて三次元マップを作成し、作成した三次元マップにより自己位置を推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-065171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
三次元センサを用いた検査対象部材の測定において、取得される点群データの質は、検査対象部材に対する三次元センサの配置のさせ方によって変わってくることが分かっている。取得された点群データの質が十分でない場合、検査対象部材の三次元形状を精度良く推定することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、三次元センサを用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る検査装置は、検査対象部材に対してビームを照射し、少なくとも光の振幅情報に基づいて前記検査対象部材の点群データを取得する三次元センサと、前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する方向特定部と、前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定するチルト量決定部と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様に係る検査方法は、少なくとも光の振幅情報に基づいて点群データを取得することができる三次元センサにより検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する第1のステップと、前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する第2のステップと、前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定する第3のステップと、を備える。
【0008】
本発明の第3の態様に係る非一時的なコンピュータ可読媒体は、少なくとも光の振幅情報に基づいて点群データを取得することができる三次元センサにより検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する第1のステップと、前記検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、前記点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する第2のステップと、前記三次元センサに対する座標軸である固有座標系において、前記所定の方向の点群データの数が増えるように、前記基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定する第3のステップと、をコンピュータに実行させるプログラムが格納されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、三次元センサを用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態2に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態2に係る検査装置の検査対象部材としての鉄筋である、異形棒鋼の外形を示す模式図である。
図4】基準三次元直交座標系及び固有三次元直交座標系について説明する模式図である。
図5】三次元センサのビームの照射方向について説明する模式図である。
図6】三次元センサから照射されたビームの走査方向について説明する模式図である。
図7】実施の形態2に係る検査装置において、検査装置において、三次元センサを用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサをチルトさせるための処理の流れについて説明するフローチャートである。
図8】主成分分析の手法により、検査対象部材の点群データから基準方向を検出する方法について説明する模式図である。
図9図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する方法について説明する模式図である。
図10図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する方法について説明する模式図である。
図11図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する別の方法について説明する模式図である。
図12図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する別の方法について説明する模式図である。
図13】検査装置において、三次元センサを用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサをチルトさせるための処理の流れの別の例について説明する
図14】実施の形態3に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0012】
[実施の形態1]
以下、実施の形態1について説明する。
図1は、実施の形態1に係る検査装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すように、検査装置10は、三次元センサ11と、方向特定部12と、チルト量決定部13と、を備えている。
【0013】
三次元センサ11は、検査対象部材に対してビームを照射し、少なくとも光の振幅情報に基づいて検査対象部材の点群データを取得する。方向特定部12は、検査対象部材に対する座標軸である基準座標系において、点群データの数が最も多く存在する所定の方向を特定する。チルト量決定部13は、三次元センサ11に対する座標軸である固有座標系において、所定の方向の点群データの数が増えるように、基準座標系に対する配置を変更するためのチルト量を決定する。

【0014】
このようにすることで、三次元センサ11を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができる。
【0015】
[実施の形態2]
以下、実施の形態2について説明する。
まず、実施の形態2に係る検査装置の構成について説明する。図2は、実施の形態2に係る検査装置110の構成を示すブロック図である。図2に示すように、検査装置110は、三次元センサ111と、方向特定部112と、チルト量決定部113と、姿勢変更部114と、を備えている。
【0016】
三次元センサ111は、検査対象部材に対してビームを照射し、少なくとも光の振幅情報に基づいて検査対象部材の点群データを取得する。三次元センサ111は、例えば3D-LiDAR(Light Detection and Ranging)センサである。
【0017】
ここで、検査対象部材は、異形棒鋼と呼ばれる(異形鉄筋とも呼ばれる)鉄筋である。図3は、異形棒鋼の外形を示す模式図である。図3に示すように、異形棒鋼には表面に「リブ」や「節」と呼ばれる凹凸の突起が設けられている。異形棒鋼は径に応じて“D10”、“D13”、“D16”、“D19”のような規格名が定められている。規格名に示される数字は、例えば、D10の直径が9.53mm、D13の直径が12.7mmと、異形棒鋼のおおよその直径を示している。すなわち、異形棒鋼の直径は2~3mmごとに規格化されている。
【0018】
再び図2を参照し、方向特定部112は、点群データにおいて最も点の数が多く存在する所定の方向である基準方向を検出する。方向特定部112は、点群データの分布に基づいて基準方向を検出する。ここで、点群データの分布は、点群データにおける点の分散である。
チルト量決定部113は、点群データの点の数が増えるように、基準座標系としての基準三次元直交座標系に対して固有座標系としての固有三次元直交座標系をチルトさせるためのチルト量を、基準方向に基づいて決定する。姿勢変更部114は、チルト量に応じて、基準三次元直交座標系に対して三次元センサをチルトさせる。
【0019】
次に、基準三次元直交座標系及び固有三次元直交座標系について説明する。
基準三次元直交座標系は基準とする三次元直交座標系で、三次元センサ111の姿勢が変わっても不変である。固有三次元直交座標系は三次元センサ111に固有の三次元直交座標系で、三次元センサ111の姿勢に追随して変わる。
【0020】
図4は、基準三次元直交座標系及び固有三次元直交座標系について説明する模式図である。図4に示すように、基準三次元直交座標系は、第1軸としてのx軸、第2軸としてのy軸、第3軸としてのz軸からなる。これに対し、固有三次元直交座標系は、第4軸としてのxu軸、第5軸としてのyu軸、第6軸としてのzu軸からなる。基準三次元直交座標系と固有三次元直交座標系は、三次元センサ111の基準点P1を原点としている。x軸に対するxu軸の角度のずれをθ1、y軸に対するyu軸の角度のずれをθ2、x軸に対するxu軸の角度のずれをθ3で表す。基準三次元直交座標系に対する固有三次元直交座標系のチルト量は、例えば(θ1、θ2、θ3)と表すことができる。
【0021】
図5は、三次元センサ111のビームの照射方向について説明する模式図である。図5に示すように、検査対象部材において三次元センサ111から照射されたビームが当たった箇所代表点である点Pとする。上述した固有三次元直交座標系は極座標表示に変換することができる(以下、固有三次元直交座標系を極座標表示したものを固有三次元極座標系と呼ぶ)。点Pは、固有三次元直交座標系で(xu、yu、zu)、固有三次元極座標系で(d、φ、θ)と表されるとする。ここで、dは、原点から点Pまでの距離、すなわち動径である。φは、xu軸とxu軸とyu軸を含む平面への動径ベクトル(原点から点Pに向かうベクトル)の射影がなす角度である。θはxu軸とyu軸を含む平面と動径ベクトルがなす角度である。xu=d・cosθ・cosφ、yu=d・cosθ・sinφ、zu=d・sinθの関係が成り立つ。なお、ビームが検査対象部材に当たった箇所の代表点は、ビームの光軸上にあるものとする。
【0022】
図6は、三次元センサ111から照射されたビームの走査方向について説明する模式図である。図6に示すように、三次元センサ111のビームの走査方向は、例えば、固有三次元直交座標系のxu軸と平行な方向(水平走査方向)と、固有三次元直交座標系のzu軸に平行な方向(垂直走査方向)である。三次元センサ111のビームの、水平走査方向における分解能(刻み角度)はφs、垂直走査方向における分解能(刻み角度)はθsである。各走査方向における分解能は、刻み角度が小さい程高い。
【0023】
次に、検査装置110において、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサ111をチルトさせるための処理の流れについて説明する。なお、以下の説明では図2についても適宜参照する。
【0024】
図7は、検査装置110において、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサ111をチルトさせるための処理の流れについて説明するフローチャートである。図7に示すように、まず、三次元センサ111により、検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する(ステップS101)。続いて、方向特定部112が、取得された点群データより、点群データにおいて最も点の数が多く存在する方向である基準方向を検出する(ステップS102)。続いて、チルト量決定部113が、点群データの点の数が増えるように、基準とする三次元直交座標系である基準三次元直交座標系に対して三次元センサに固有の三次元直交座標系である固有三次元直交座標系をチルトさせるためのチルト量を、基準方向に基づいて決定する(ステップS103)。続いて、姿勢変更部114が、決定されたチルト量に応じて三次元センサ111をチルトさせる(ステップS104)。
【0025】
次に、図7のステップS102において基準方向を検出する方法の詳細について説明する。
図7のステップS102において基準方向を検出する方法として、主成分分析(PCA:Principal Component Analysis)の手法を適用することができる。主成分分析の手法では、主成分(固有ベクトル)の固有値が分散である。主成分分析の手法では、固有値が大きいから順に第1主成分、第2主成分、・・・と呼ぶ。検査対象部材の点群データは3つのパラメータ(x、y、z)から成るため、第1主成分、第2主成分、第3主成分と、3つの主成分が得られる。
【0026】
図8は、主成分分析の手法により、検査対象部材の点群データから基準方向を検出する方法について説明する模式図である。上述したように、基準方向は、検査対象部材から取得された点群データにおいて最も点の数が多く存在する方向である。図8に示すように、主成分分析の手法では、点群データにおいて最も点の数が多く存在する方向である基準方向において、点の分散に相当する、主成分の固有値が最大になる。つまり、主成分の固有値が最大となる第1主成分が基準方向である。よって、主成分分析の手法によって第1主成分を検出することで基準方向を検出することができる。
【0027】
次に、図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する方法の詳細について説明する。
図9及び図10は、図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する方法について説明する模式図である。図9に示すように、まず、固有三次元直交座標系が基準三次元直交座標系に一致している状態であるとする。また、基準方向が基準三次元直交座標系のz軸方向に一致しているとする。
【0028】
この状態から、図10に示すように、基準方向に対して固有三次元直交座標系のzu軸がθ傾くように、y軸を回転軸として三次元センサ111をチルトさせる。三次元センサ111のチルトは、姿勢変更部114(図2参照)が実行する。このθは、検査対象部材における点群データの点の数が増えるように決定する。
【0029】
ここに示す例では、検査対象部材より取得された点群データにおける点の数が5つである図9に示す状態から、検査対象部材より取得された点群データにおける点の数が8つである図10に示す状態になるように、チルト量を決定する。また、ここに示す例では、y軸を回転軸として三次元センサ111をチルトさせているため、図4を参照して説明した、基準三次元直交座標系に対する固有三次元直交座標系のチルト量(θ1、θ2、θ3)は、(θ、0、θ)である。なお、チルトさせる角度は、時計回りを正、反時計回りを負とする。つまり、ここに示す例ではθは負である。
【0030】
チルト量の決定において、θを、例えば、±15°、±30°、±45°、±60°と15°刻みで振って、検査対象部材の点群データにおける点の数が最も多くなるθを見つけるようにしてもよい。このようにすることで、最適なチルト量を効率的に決定することができる。
【0031】
検査対象部材より取得される点群データの数が多くなれば、検査対象部材の測定をより精度良く行なうことができる。上述したように、本実施の形態に係る検査装置110では、検査対象部材より取得される点群データの数が増えるようにチルト量を決定し、決定したチルト量に応じて、基準三次元直交座標系に対して三次元センサ111をチルトさせる。これにより、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができる。
【0032】
図11及び図12は、図7のステップS103において、基準方向に基づいてチルト量を決定する別の方法について説明する模式図である。ここでは、検査対象部材が、鉄筋などのように、基準方向における長さが十分に長く、基準方向に垂直な方向における長さが基準方向における長さと比較して著しく短いものであるとする。また、三次元センサ111のビームの分解能は、水平走査方向よりも垂直走査方向の方が高いとする。
【0033】
図11に示すように、分解能が最も高い垂直走査方向が基準方向に水平になるように三次元センサ111を設置した場合、取得された点群データにおいて、基準方向には点の数が多く並ぶが、基準方向に垂直な方向には点の数が1点しかない。つまり、取得された点群データにおいて、基準方向に垂直な方向の点の数が基準方向の点の数に対して著しく少なくなる。
【0034】
そこで、図12に示すように、基準方向と、三次元センサ111におけるビームの走査方向のうちで分解能が最も高い方向である垂直走査方向と、が直交するように、チルト量を決定する。この例では、基準三次元直交座標系に対する固有三次元直交座標系のチルト量(θ1、θ2、θ3)は、(-90°、0、-90°)である。これにより、基準方向に垂直な方向の点の数を増やすことができる。
【0035】
このように、検査対象部材が、基準方向の長さが十分に長く、基準方向に垂直な方向における長さが著しく短いものである場合、基準方向と、三次元センサ111におけるビームの走査方向のうちで分解能が最も高い方向と、が直交するようにチルト量を決定する。これにより、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができる。
【0036】
[変形例1]
検査装置110において、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサ111をチルトさせるための処理の流れの別の例について説明する。なお、以下の説明では図2についても適宜参照する。
【0037】
図13は、検査装置110において、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、質の良い点群データを取得することができるように三次元センサ111をチルトさせるための処理の流れの別の例について説明するフローチャートである。図13に示すように、まず、少なくとも光の振幅情報に基づいて点群データを取得することができる三次元センサ111により検査対象部材に対してビームを照射して点群データを取得する(ステップS201)。続いて、取得された点群データより基準方向を検出する(ステップS202)。続いて、点群データの点の数が増えるように、基準とする三次元直交座標系である基準三次元直交座標系に対して三次元センサに固有の三次元直交座標系である固有三次元直交座標系をチルトさせるためのチルト量を、最新の基準方向に基づいて決定する(ステップS203)。続いて、姿勢変更部114が、決定されたチルト量に応じて三次元センサ111をチルトさせる(ステップS204)。
【0038】
ステップS204に続いて、三次元センサ111が検査対象部材の点群データを再度取得する(ステップS205)。続いて、方向特定部112が再度取得された点群データより基準方向を検出する(ステップS206)。続いて、姿勢変更部114は、前回の基準方向の検出結果と今回の基準方向の検出結果との角度差が、閾値未満か否かを判定する(ステップS207)。ステップS207において、前回の基準方向の検出結果と今回の基準方向の検出結果との角度差が、閾値未満の場合には、処理を終了させる。ステップS207において、前回の基準方向の検出結果と今回の基準方向の検出結果との角度差が、閾値以上の場合には、ステップS203に処理を戻す。三次元センサ111をチルトさせるための処理を上述のように行うことで、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、より質の良い点群データを取得することができる。
【0039】
[実施の形態3]
以下、実施の形態3について説明する。
図14は、実施の形態3に係る検査装置210の構成を示すブロック図である。図14に示すように、検査装置210は、三次元センサ111と、方向特定部112と、チルト量決定部113と、重畳点群データ作成部115と、を備えている。つまり、検査装置210は、重畳点群データ作成部115を備えていることのみ、図2に示す検査装置110の構成と異なる。重畳点群データ作成部115は、三次元センサ111によって複数回取得された点群データを重ね合わせた重畳点群データを作成する。このようにすることで、三次元センサ111を用いた検査対象部材の測定において、より質の良い点群データを取得することができる。
【0040】
上述の実施の形態では、本発明をハードウェアの構成として説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、各処理を、CPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0041】
上述の処理を実現するためのプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0042】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0043】
10、110、210 検査装置
11、111 三次元センサ
12、112 方向特定部
13、113 チルト量決定部
114 姿勢変更部
115 重畳点群データ作成部
図1
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