IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図1
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図2
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図3
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図4
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図5
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図6
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図7
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図8
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図9
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図10
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図11
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図12
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図13
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図14
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図15
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図16
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図17
  • 特許-多層基板及び多層基板の製造方法 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】多層基板及び多層基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20221220BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20221220BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 N
H05K3/46 G
H01F17/00 D
H01F41/04 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021537324
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029852
(87)【国際公開番号】W WO2021025024
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019146234
(32)【優先日】2019-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上坪 祐介
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074139(WO,A1)
【文献】特開昭62-84586(JP,A)
【文献】特開平6-243753(JP,A)
【文献】特開2003-304047(JP,A)
【文献】実公平2-47607(JP,Y2)
【文献】特表2013-504799(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079941(WO,A1)
【文献】特開2015-201606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0230151(US,A1)
【文献】国際公開第2014/082695(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 17/00
H01F 41/04
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されている複数の絶縁性基材と、
前記複数の絶縁性基材の少なくとも1つ以上の絶縁性基材に設けられた複数の導体パターンと
前記複数の導体パターンのうち、少なくとも1つの導体パターン積層方向に互いに対向する両面に設けられた絶縁性保護膜と、を備え、
前記複数の導体パターンは、前記積層方向に互いに対向する前記両面に前記絶縁性保護膜が設けられた第1導体パターンおよび前記積層方向に互いに対向する前記両面に前記絶縁性保護膜が設けられた第2導体パターンを含み、
前記第1導体パターンおよび前記第2導体パターンは、前記複数の絶縁性基材の一部を挟み、かつ、前記積層方向に視て、互いに重なっている、
多層基板。
【請求項2】
前記複数の絶縁性基材は熱可塑性樹脂である、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記絶縁性保護膜は、前記導体パターンより薄い、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項4】
前記導体パターンはパターンニングされた金属箔であり、
前記絶縁性保護膜は前記金属箔の酸化膜である、
請求項1から3のいずれかに記載の多層基板。
【請求項5】
前記絶縁性保護膜は熱圧着時の温度より低い温度で熱硬化する熱硬化性樹脂の膜である、
請求項1又は2に記載の多層基板。
【請求項6】
前記絶縁性保護膜は前記複数の絶縁性基材に比べて誘電率が低い、
請求項1から5のいずれかに記載の多層基板。
【請求項7】
前記絶縁性保護膜は前記絶縁性基材より厚い、
請求項6に記載の多層基板。
【請求項8】
前記導体パターンに導通する層間接続導体を備え、
前記層間接続導体は、前記絶縁性保護膜を介さずに直接接続されている、
請求項1から7のいずれかに記載の多層基板。
【請求項9】
前記導体パターンは前記積層の方向に巻回軸を有するコイルパターンである、
請求項1から8のいずれかに記載の多層基板。
【請求項10】
前記絶縁性保護膜は、1種類であり、
前記絶縁性保護膜は、前記第1導体パターンの前記両面以外の面の一部に設けられている、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の多層基板。
【請求項11】
前記絶縁性保護膜は、第1絶縁性保護膜及び第2絶縁性保護膜を含み、
前記第1絶縁性保護膜及び前記第2絶縁性保護膜のそれぞれは、前記第2導体パターンに接しており、
前記第1絶縁性保護膜の材料は、前記第2絶縁性保護膜の材料と異なる、
請求項1から請求項9のいずれかに記載の多層基板。
【請求項12】
前記複数の絶縁性基材の材料は、互いに同じであり、
前記複数の絶縁性基材は、互いに直接接合されている、
請求項1から請求項11のいずれかに記載の多層基板。
【請求項13】
導体膜の両面に絶縁性保護膜を形成する絶縁性保護膜形成工程と、
絶縁性基材に、前記絶縁性保護膜が形成された導体膜を配置し、前記絶縁性保護膜が形成された導体膜をパターンニングして導体パターンを形成する導体パターン形成工程と、
前記導体パターンが形成された絶縁性基材を含む複数の絶縁性基材を積層し、熱圧着して一体化する積層体形成工程と、を有する、
多層基板の製造方法。
【請求項14】
前記絶縁性保護膜は、前記絶縁性基材よりも前記導体膜に対する密着性が高い、
請求項13に記載の多層基板の製造方法。
【請求項15】
前記導体膜は金属箔であり、
前記絶縁性保護膜は前記金属箔の酸化膜であり、
前記導体パターン形成工程で、前記絶縁性基材に、還元剤を含有する導電性ペーストによる層間接続導体を形成し、
前記積層体形成工程で、前記層間接続導体の前記導電性ペーストに含有される前記還元剤によって前記絶縁性保護膜を還元し、前記導体パターンと前記層間接続導体とを導通させる、
請求項13又は14に記載の多層基板の製造方法。
【請求項16】
絶縁性基材、第1絶縁性保護膜、導体膜の順に積層される積層体を形成する第1絶縁性保護膜形成工程と、
前記導体膜をパターンニングして導体パターンを形成する導体パターン形成工程と、
前記絶縁性基材上に、前記導体パターンを覆う第2絶縁性保護膜を形成する第2絶縁性保護膜形成工程と、
前記導体パターンが形成された絶縁性基材を含む複数の絶縁性基材を積層し、熱圧着して一体化する積層体形成工程と、を有する、
多層基板の製造方法。
【請求項17】
前記第2絶縁性保護膜は、前記絶縁性基材よりも前記導体膜に対する密着性が高い、
請求項16に記載の多層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁性基材が積層されて形成された多層基板及び多層基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、導体パターンが形成された絶縁性基材が積層され熱圧着されることで構成される多層基板が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱圧着時の絶縁性基材の流動による導体パターンの位置ずれに起因する、導体パターン同士の短絡を防止するため、導体パターンの少なくとも一方面側に絶縁性保護膜が形成された多層基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/074139号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の絶縁性基材が積層され、熱圧着されることで形成される多層基板においては、基材間を接合させる接着層が無いので、積層された複数の絶縁性基材全体が熱圧着時に流動し、導体パターンの変位、傾斜、変形、が比較的大きい。また、未硬化状態のプリプレグを介して導体パターンが積層方向に対向する多層基板においては、プリプレグが、その熱硬化前に流動し、導体パターンの変位、傾斜、変形、が比較的大きい。これらの構造において、導体パターンの絶縁性保護膜の形成されていない面同士が対向するような配置であると、絶縁性保護膜で絶縁されない状態で導体パターン同士が導通してしまうおそれがある。つまり、絶縁性基材の両面に、その絶縁性基材を挟んで対向する導体パターンが形成されている場合や、積層方向に隣接する絶縁性基材の互いに離れた側の面に導体パターンが形成される場合、導体パターンのうち、絶縁性保護膜で保護されていない部分同士が接触するおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、複数の導体パターンの変位、傾斜、変形による、導体パターン同士の接触を効果的に抑制した多層基板、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての多層基板は、積層されている複数の絶縁性基材と、前記複数の絶縁性基材の少なくとも1つ以上の絶縁性基材に設けられた複数の導体パターンと前記複数の導体パターンのうち少なくとも1つ導体パターン積層方向に互いに対向する両面に設けられた絶縁性保護膜と、を備え、前記複数の導体パターンは、前記積層方向に互いに対向する前記両面に前記絶縁性保護膜が設けられた第1導体パターンおよび前記積層方向に互いに対向する前記両面に前記絶縁性保護膜が設けられた第2導体パターンを含み、前記第1導体パターンおよび前記第2導体パターンは、前記複数の絶縁性基材の一部を挟み、かつ、前記積層方向に視て、互いに重なっていることで構成される。
【0008】
上記構成により、導体パターンの積層方向の両面に絶縁性保護膜が存在する構造となる。
【0009】
本開示の一例としての多層基板の製造方法は、導体膜の両面に絶縁性保護膜を形成する絶縁性保護膜形成工程と、絶縁性基材に、前記絶縁性保護膜が形成された導体膜を貼付し、前記絶縁性保護膜が形成された導体膜をパターンニングして導体パターンを形成する導体パターン形成工程と、前記導体パターンが形成された絶縁性基材を含む複数の絶縁性基材を積層し、熱圧着して一体化する積層体形成工程と、を有する。
【0010】
上記製造方法により、導体パターンの積層方向の両面に絶縁性保護膜が存在する多層基板が得られる。
【0011】
また、本開示の一例としての多層基板の製造方法は、絶縁性基材、第1絶縁性保護膜、導体膜の順に積層される積層体を形成する第1絶縁性保護膜形成工程と、前記導体膜をパターンニングして導体パターンを形成する導体パターン形成工程と、前記絶縁性基材上に、前記導体パターンを覆う第2絶縁性保護膜を形成する第2絶縁性保護膜形成工程と、前記導体パターンが形成された絶縁性基材を含む複数の絶縁性基材を積層し、熱圧着して一体化する積層体形成工程と、を有する。
【0012】
上記製造方法により、導体パターンの周囲に絶縁性保護膜が存在する多層基板が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の導体パターンの変位、傾斜、変形による、導体パターン同士の短絡が効果的に抑制された多層基板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は第1の実施形態に係る多層基板101の斜視図である。
図2図2(A)、図2(B)は、多層基板101の内部の構成を示す部分断面図である。
図3図3(A)、図3(B)、図3(C)は、絶縁性基材11に対する導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32の形成方法を示す部分断面図である。
図4図4(A)、図4(B)は、第2の実施形態に係る多層基板102Aの内部の構成を示す部分断面図である。
図5図5(A)、図5(B)は、第2の実施形態に係る別の多層基板102Bの内部の構成を示す部分断面図である。
図6図6は第3の実施形態に係る多層基板103の斜視図である。
図7図7は多層基板103の分解斜視図である。
図8図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)は、図7に示した導体パターン及び層間接続導体の形成方法の手順を示す断面図である。
図9図9(A)は、本実施形態の多層基板103の複数の絶縁性基材11の積層プレス前の段階での断面図であり、図9(B)は積層プレス後の断面図である。
図10図10(A)、図10(B)、図10(C)は、第4の実施形態に係る多層基板が備える絶縁性保護膜及び導体パターンの形成方法を示す断面図である。
図11図11は第4の実施形態に係る多層基板104の断面図である。
図12図12(A)は第5の実施形態に係る多層基板105Aの複数の絶縁性基材11の積層プレス前の断面図であり、図12(B)は積層プレス後の多層基板105A断面図である。
図13図13(A)、図13(B)は、第5の実施形態に係る別の多層基板が備える、絶縁性保護膜及び導体パターンの形成方法を示す断面図である。
図14図14(A)は第5の実施形態に係る多層基板105Bの複数の絶縁性基材11の積層プレス前の断面図であり、図14(B)は積層プレス後の多層基板105Bの断面図である。
図15図15(A)、図15(B)は、図4(A)、図4(B)に示した多層基板102Aに対する比較例である。
図16図16(A)、図16(B)は、図5(A)、図5(B)に示した多層基板102Bに対する比較例である。
図17図17は、多層基板101Aの内部の構成であって、導体パターン21a、21bに形成された絶縁性保護膜31a、32a、31b、32bを示す部分断面図である。
図18図18は、多層基板101Bの内部の構成であって、導体パターン21c、21dに形成された絶縁性保護膜31c、32c、31d、32dを示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、便宜上実施形態を分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0016】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る多層基板101の斜視図である。図2(A)、図2(B)は、多層基板101の内部の構成を示す部分断面図である。図2(A)は複数の基材の積層プレス前の段階での部分断面図である。図2(B)は積層プレス後の部分断面図であり、図1におけるA-A部分の部分断面図である。
【0017】
本実施形態では、多層基板101は直方体状の外観を有する。多層基板101は、それぞれ熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁性基材11と、これら絶縁性基材11のうち、所定の絶縁性基材11に設けられた導体パターン21と、を備える。なお、本実施形態では、図面の明瞭性及び説明の容易性を考慮して、基材の積層数を少なくして表している。
【0018】
導体パターン21の下面には絶縁性保護膜31が形成されていて、導体パターン21の上面には絶縁性保護膜32が形成されている。図2(A)、図2(B)に表れている範囲では、全ての導体パターン21の下面および上面の両面に上記絶縁性保護膜31,32が形成されている。
【0019】
絶縁性基材11は液晶ポリマー(LCP)等の熱可塑性樹脂のシート材である。導体パターン21は銅箔をパターン化したものであり、絶縁性保護膜31,32は、後に示すように、例えば銅箔表面に形成された電気絶縁性の銅酸化皮膜である。
【0020】
下面に絶縁性保護膜31および上面に絶縁性保護膜32が形成された複数の導体パターン21は、積層プレス前の状態において、図2(A)に表されているように、複数の絶縁性基材11に設けられている。積層プレス前の状態では、導体パターン21は、絶縁性保護膜31が絶縁性基材11に接触するように、絶縁性基材11に設けられている。図2(A)に示した状態から、複数の絶縁性基材11を積層し、加熱プレスすることにより、図2(B)に表れているように、絶縁性基材10中に導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32が埋設された多層基板101が構成される。絶縁性基材10は複数の絶縁性基材11の積層により一体化された基材である。
【0021】
上記加熱プレス時に、絶縁性基材11の樹脂が流動することで、各導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32は、図2(B)に示すように変位、傾斜、変形する場合がある。その結果、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21同士が極近接する場合がある。しかし、積層方向に対向する導体パターン21、21、この例では、上側の導体パターン21と、下側の導体パターン21、のそれぞれは、絶縁性保護膜31、32で保護されている。導体パターン21は絶縁性保護膜31,32で保護されているので、導体パターン21同士が接触(短絡)することを抑制できる。
【0022】
例えば、Y方向から見て、図2(B)に示すように、上側の導体パターン21の下面に形成された絶縁性保護膜31と、下側の導体パターン21の上面に形成された絶縁性保護膜32とが接触または極近接することで、導体パターン21同士が短絡することを抑制できる。
【0023】
図3(A)、図3(B)、図3(C)は、絶縁性基材11に対する導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32の形成方法を示す部分断面図である。この例では、図3(A)に示すように、先ず、例えば酸素プラズマ処理により、導体膜21Fに酸化処理を施すことによって、導体膜21Fの両面に酸化膜である絶縁性保護膜31F,32Fを形成する。例えば、導体膜21Fは銅箔やアルミニウム箔等の金属箔であり、絶縁性保護膜31F,32Fは銅酸化膜やアルミニウム酸化膜等の金属酸化膜である。絶縁性保護膜31F,32Fは導体膜21Fより薄い。例えば、導体膜21Fの厚みは10μmであり、絶縁性保護膜31F,32Fの厚みは3~5μmである。この絶縁性保護膜31F,32Fが形成された導体膜21Fを、絶縁性保護膜31Fと絶縁性基材11が対向(接触)するようにして、絶縁性基材11に貼付する。例えば、液晶ポリマー(LCP)等の熱可塑性樹脂シートである絶縁性基材11に、銅酸化膜が形成された銅箔を熱可塑性樹脂のシートに熱圧着することによって一体化する。例えば180℃以上320℃以下の範囲内の所定の温度(例えば300℃)で加熱プレスする。その後、図3(C)に示すように、絶縁性保護膜31F,32Fが被覆された導体膜21Fをエッチングによりパターンニングする。例えば、フォトリソグラフィによってパターンニングする。
【0024】
上記絶縁性保護膜31F,32Fと導体膜21Fとの熱膨張率の差は大きいので、絶縁性保護膜31F,32Fは導体膜21Fに比べて薄いほうが好ましい。ただし、導体膜21Fの両面に絶縁性保護膜31F,32Fが形成されるので、上記熱膨張率の差があっても、歪みが相殺されるので、反りや捩れは少ない。
【0025】
このようにして、両面に絶縁性保護膜31,32が形成された導体パターン21を備える絶縁性基材11を構成する。
【0026】
なお、図2(A)、図2(B)では、全ての導体パターン21の両面に絶縁性保護膜31,32が形成された例を示したが、積層方向で近接する可能性のある導体パターン同士の一方にのみ、その導体パターンの両面に絶縁性保護膜31,32が形成されていてもよい。
【0027】
本実施形態によれば、上記のとおり、絶縁性保護膜31F,32Fが導体膜21Fより薄いことにより、上記フォトリソグラフィなどによるパターンニングを効率良く行うことができる。また、導体膜21Fを金属箔で構成し、絶縁性保護膜31,32を金属酸化皮膜で構成することにより、両面に絶縁性保護膜が形成された導体パターンを少ない工数で形成できる。また、絶縁性基材11が熱可塑性樹脂であるので、絶縁性基材11同士を直接熱圧着させることができる。そのため、全体に少ない層数で、薄型の多層基板が構成できる。また、例えば熱硬化性基材を、接着層を介して接合するような積層構造に比べて、少ない工数で製造できる。
【0028】
なお、以上の例では、熱可塑性樹脂である絶縁性基材を有する多層基板について示したが、熱硬化性樹脂による絶縁性基材を有する多層基板についても同様に適用できる。例えば、未硬化状態のプリプレグ(ガラス布にエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させてBステージ(半硬化)まで硬化させた基材)を介して導体パターンが積層方向に対向する多層基板においても適用できる。このことは以降に示す他の実施形態においても同様である。
【0029】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、積層後に互いに近接する導体パターンの位置関係が第1の実施形態で示した例とは異なる多層基板について示す。
【0030】
図4(A)、図4(B)は、第2の実施形態に係る多層基板102Aの内部の構成を示す部分断面図である。図4(A)は複数の基材の積層プレス前の段階での部分断面図である。図4(B)は積層プレス後の部分断面図である。また、図5(A)、図5(B)は、第2の実施形態に係る別の多層基板102Bの内部の構成を示す部分断面図である。図5(A)は複数の基材の積層プレス前の段階での部分断面図である。図5(B)は積層プレス後の部分断面図である。
【0031】
多層基板102A,102Bいずれも、それぞれ熱可塑性樹脂からなる複数の絶縁性基材11と、これら絶縁性基材11のうち、所定の絶縁性基材11に設けられた導体パターン21と、を備える。
【0032】
導体パターン21の下面には絶縁性保護膜31が形成されていて、導体パターン21の上面には絶縁性保護膜32が形成されている。図4(A)、図4(B)に示す例では、図2(A)、図2(B)に示した例とは異なり、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21が、所定の絶縁性基材11の両面に形成されている。また、図5(A)、図5(B)に示す例では、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21が上面に形成された絶縁性基材11と、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21が下面に形成された絶縁性基材11と、が積層方向に隣接配置されている。その他の構成については第1の実施形態で示したとおりである。
【0033】
図4(A)に示した状態から、複数の絶縁性基材11を積層し、加熱プレスすることにより、図4(B)に表れているように、絶縁性基材10中に導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32が埋設された多層基板102Aが構成される。同様に、図5(A)に示した状態から、複数の絶縁性基材11を積層し、加熱プレスすることにより、図5(B)に表れているように、絶縁性基材10中に導体パターン21及び絶縁性保護膜31,32が埋設された多層基板102Bが構成される。絶縁性基材10は複数の絶縁性基材11の積層により一体化された基材である。
【0034】
上記加熱プレス時に、絶縁性基材11の樹脂の流動に伴い、図5(B)に示すように、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21同士が極近接する場合がある。しかし、導体パターン21は絶縁性保護膜31,32で保護されているので、導体パターン21同士が接触(短絡)することを抑制できる。
【0035】
ここで、比較例としての多層基板の構成及び問題点について、図15(A)、図15(B)、図16(A)、図16(B)を参照して説明する。図15(A)、図15(B)は、図4(A)、図4(B)に示した多層基板102Aに対する比較例である。また、図16(A)、図16(B)は、図5(A)、図5(B)に示した多層基板102Bに対する比較例である。図15(A)は複数の基材の積層プレス前の段階での部分断面図であり、図15(B)はその積層プレス後の部分断面図である。同様に、図16(A)は別の例の多層基板における複数の基材の積層プレス前の段階での部分断面図であり、図16(B)はその積層プレス後の部分断面図である。
【0036】
図15(A)、図16(A)に示すいずれの例も、絶縁性基材11上に形成された状態の導体パターンの露出面に絶縁性保護膜30が被覆されている。このように、絶縁性保護膜30が被覆されていない面同士が対向するように導体パターン21が配置される構造では、図15(B)、図16(B)に表れているように、導体パターン21同士が接触するおそれがある。
【0037】
これに対して、本実施形態の多層基板102A,102Bでは、既に示したとおり、導体パターン21は絶縁性保護膜31,32で保護されているので、導体パターン21同士が接触(短絡)することを抑制できる。
【0038】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、層間接続導体を備える多層基板について示す。図6は第3の実施形態に係る多層基板103の斜視図である。図7は多層基板103の分解斜視図である。多層基板103は複数の絶縁性基材11が積層されて成る。各絶縁性基材11は熱可塑性樹脂からなる。
【0039】
図7において、下から2層目の絶縁性基材11と、下から3層目の絶縁性基材11の上面に、絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21がそれぞれ形成されている。絶縁性保護膜31,32で被覆された導体パターン21はいずれも、矩形スパイラル状のコイル導体パターンである。
【0040】
図7において、最下層の絶縁性基材11の下面には端子電極51,52が形成されている。端子電極51と下から2層目の導体パターン21の外終端とは層間接続導体41,42を介して接続されていて、下から2層目の導体パターン21の内終端と下から3層目の導体パターン21の内終端とは層間接続導体43を介して接続されている。また、下から3層目の導体パターン21の外終端と端子電極52とは層間接続導体44,45,46を介して接続されている。
【0041】
各層間接続導体41,42,43,44,45,46は、基材に形成した孔内に、例えばSn系導電性ペーストを印刷塗布し、加熱プレス時の熱で溶融し、その後固化したものである。
【0042】
図8(A)、図8(B)、図8(C)、図8(D)は、図7に示した導体パターン及び層間接続導体の形成方法の手順を示す断面図である。先ず、絶縁性保護膜(例えば銅酸化皮膜)31F,32Fが形成された導体膜(例えば銅箔)21Fを絶縁性基材11に貼付する(図8(A))。次に、絶縁性保護膜31F,32Fが被覆された導体膜21Fをエッチングによりパターンニングする(図8(B))。その後、絶縁性基材11に孔Hを形成し、その孔H内に、還元剤を含有する例えばSn系導電性ペーストを印刷塗布し、仮硬化させることにより、固化前の層間接続導体43を形成する。上記還元剤は、例えば、アルコール系、アルデヒド系等の還元剤である。
【0043】
図9(A)は、本実施形態の多層基板103の複数の絶縁性基材11の積層プレス前の段階での断面図であり、図9(B)は積層プレス後の断面図である。図9(A)において、下から3層目の絶縁性基材11は図8(D)に示した絶縁性基材11である。下から2層目の絶縁性基材11には、両面に絶縁性保護膜31,32が形成された導体パターン21が形成されている。
【0044】
各絶縁性基材11を積層し、加熱プレスすると、層間接続導体43が接する絶縁性保護膜31,32のそれぞれの箇所は、導電性ペーストに含まれる還元剤によって、酸化膜が還元されることで導電体となり、又は除去されて、層間接続導体43を介して導体パターン21同士が電気的に導通する。
【0045】
このようにして、コイルデバイスやインダクタが構成される。特に、コイル導体パターンが積層される場合に本発明の作用効果が顕著に現れる。
【0046】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、酸化膜以外の絶縁性保護膜を備える多層基板及びその製造方法について示す。
【0047】
図10(A)、図10(B)、図10(C)は、第4の実施形態に係る多層基板が備える絶縁性保護膜及び導体パターンの形成方法を示す断面図である。図11は第4の実施形態に係る多層基板104の断面図である。
【0048】
先ず、絶縁性基材11、第1絶縁性保護膜31F及び導体膜21Fによる3層構造のシートを形成する(図10(A))。ここで第1絶縁性保護膜31Fは例えばフッ素樹脂の膜であり、導体膜21Fは銅箔である。
【0049】
次に、第1絶縁性保護膜31Fと共に導体膜21Fをフォトリソグラフィ等によってパターンニングする(図10(B))。その後、絶縁性基材11の上面に、第2絶縁性保護膜32Fを印刷塗布する(図10(C))。この絶縁性保護膜32Fは例えばフッ素樹脂の膜である。
【0050】
その後、各絶縁性基材11を積層し、例えば180℃以上320℃以下の範囲内の所定の温度(例えば300℃)で加熱プレスする。このことによって、図11に示すように、周囲が絶縁性保護膜31,32Fで被覆された導体パターン21を備える多層基板104を得る。
【0051】
上記フッ素樹脂としては、例えば、
PTFE=ポリテトラフルオロエチレン(4フッ化)
PFA=テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体
FEP=テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(4.6フッ化)
ETFE=テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体
PVDF=ポリビニリデンフルオライド(2フッ化)
PCTFE=ポリクロロトリフルオロエチレン(3フッ化)
ECTFE=クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体
等である。
【0052】
本実施形態のように、絶縁性保護膜31,32Fとして、密着性の高いエポキシ樹脂やフッ素樹脂を使用できる。この絶縁性保護膜31,32Fと導体パターン21との密着性が高いことにより、熱圧着時に、導体パターン21と共に絶縁性保護膜31,32Fが変位した場合、絶縁性保護膜31,32Fの膜厚が薄くなることはあっても、導体パターン21を露出させることはない。そのため、導体パターン21の絶縁性が確保される。
【0053】
また、本実施形態のように、絶縁性保護膜がフッ素樹脂であれば、このフッ素樹脂はLCP等による絶縁性基材11よりも低誘電率であるので、絶縁性保護膜31,32Fを設けることによる、信号線路としての特性変化が少ない。また、絶縁性保護膜31,32Fが絶縁性基材11よりも低誘電率であり、また、低誘電正接であるので、高周波信号に対する損失が抑えられる。
【0054】
図10図11では、絶縁性保護膜31,32Fが絶縁性基材11より薄い例を示したが、絶縁性保護膜31,32Fは絶縁性基材11より厚くてもよい。そのことにより、導体パターン21に近接する低誘電率の層(絶縁性保護膜31,32F)が厚くなるので、導体パターン21の変位、傾斜、変形による電気的な特性変化の低減及び上記低損失化が効果的になされる。
【0055】
なお、上記絶縁性保護膜32Fは熱硬化性樹脂であってもよい。例えば、絶縁性基材11の上面に、ペースト状の熱硬化性樹脂を印刷塗布することによって、絶縁性保護膜32Fを形成する。この熱硬化性樹脂による絶縁性保護膜32Fは、積層体形成時のプレス温度よりも低い温度で熱硬化する熱硬化性樹脂を主成分とする膜である。例えばエポキシ系接着剤である。続いて、各絶縁性基材11の状態(積層前の単体の状態)で、熱硬化性樹脂による絶縁性保護膜32Fを積層体形成時のプレス温度よりも低い温度で熱硬化させる。この熱硬化性樹脂の熱硬化開始温度が例えば120℃以上である場合、120℃以上加熱プレス温度未満の温度で加熱することにより、絶縁性保護膜32Fを熱硬化させる。この熱硬化性樹脂が熱硬化すると、絶縁性基材11に比べて高温での流動性は低い。そのため、導体パターン21の変位、傾斜、変形が抑制される。
【0056】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、酸化膜以外の絶縁性保護膜を備える多層基板及びその製造方法について示す。
【0057】
図12(A)は第5の実施形態に係る多層基板105Aの複数の絶縁性基材11の積層プレス前の断面図であり、図12(B)は積層プレス後の多層基板105A断面図である。図12(A)に示すように、それぞれ導体パターン21を形成した絶縁性基材11と絶縁性基材11との間に、絶縁性保護膜32Fを挟み込んで積層し、加熱プレスする。図12(A)において、最下層の、絶縁性基材11に形成されている絶縁性保護膜31及び導体パターン21の構造は、図10(B)に示した構造と同じである。
【0058】
上記加熱プレスによって、図12(B)に示すように、周囲が絶縁性保護膜31,32Fで被覆された導体パターン21を備える多層基板105Aを得る。この構造により積層方向に隣接する導体パターン21同士の接触が回避される。
【0059】
図13(A)、図13(B)は、第5の実施形態に係る別の多層基板が備える、絶縁性保護膜及び導体パターンの形成方法を示す断面図である。先ず、図13(A)に表れているように、絶縁性基材11、絶縁性保護膜31F及び導体膜21Fによる3層構造のシートを形成する。ここで絶縁性保護膜31Fは例えばフッ素樹脂層であり、導体膜21Fは銅箔である。次に、絶縁性保護膜31Fを残したまま、導体膜21Fをフォトリソグラフィ等によってパターンニングし、導体パターン21を形成する(図13(B))。
【0060】
図14(A)は第5の実施形態に係る別の多層基板105Bの複数の絶縁性基材11の積層プレス前の断面図であり、図14(B)は積層プレス後の多層基板105Bの断面図である。図14(A)に示すように、それぞれ導体パターン21を形成した絶縁性基材11と絶縁性基材11との間に、絶縁性保護膜32Fを挟み込んで積層し、加熱プレスする。
【0061】
上記加熱プレスによって、図14(B)に示すように、周囲が絶縁性保護膜31F,32Fで被覆された導体パターン21を備える多層基板105Bを得る。この構造により積層方向に隣接する導体パターン21同士の接触が回避される。
【0062】
図14(A)では、個別の絶縁性保護膜32Fを積層する例を示したが、絶縁性保護膜32Fを、図14(A)に示した最下層の絶縁性保護膜31F及び導体パターン21の上部に塗布形成してもよい。または下から3層目の絶縁性基材11の下面に塗布形成してもよい。
【0063】
第5の実施形態でも第4の実施形態と同様に、次のような作用効果を奏する。
【0064】
絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)と導体パターン21との密着性が高いので、熱圧着時に、導体パターン21と共に絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)が変位した場合、絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)の膜厚が薄くなることがあっても、導体パターン21を露出させることはない。そのため、導体パターン21の絶縁性が確保される。
【0065】
また、絶縁性保護膜が低誘電率であるので、絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)を設けることによる、信号線路としての特性変化が少ない。また、絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)が絶縁性基材11よりも低誘電率であり、また、低誘電正接であるので、高周波信号に対する損失が抑えられる。
【0066】
なお、第5の実施形態でも第4の実施形態と同様に、絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F)は絶縁性基材11より厚くてもよい。そのことにより、導体パターン21に近接する低誘電率の層(絶縁性保護膜31,32F(又は31F,32F))が厚くなるので、導体パターン21の変位、傾斜、変形による電気的な特性変化が低減され、低損失化が効果的になされる。
【0067】
また、上記絶縁性保護膜32Fは熱硬化性樹脂であってもよい。そのことにより、第4の実施形態で示したとおりの作用効果を奏する。
【0068】
《他の実施形態》
以上に示した第1の実施形態から第4の実施形態では、複数の層に形成されている、導体パターンのいずれもが絶縁性保護膜で被覆された例を示したが、積層方向に隣接する導体パターンの一方だけが絶縁性保護膜で被覆されていてもよい。
【0069】
以上に示した幾つかの例では、導体パターン21又は導体膜21Fの酸化膜を第1絶縁性保護膜31又は第2絶縁性保護膜32として用いるか、フッ素樹脂層を第1絶縁性保護膜31又は第2絶縁性保護膜32として用いたが、その他の絶縁性材料を用いることも可能である。この第1絶縁性保護膜31及び第2絶縁性保護膜32は、加熱プレス時の温度で、絶縁性基材11よりも流動性が高くてもよい。第1絶縁性保護膜31及び第2絶縁性保護膜32は、絶縁性基材11よりも導体パターン21又は導体膜21Fに対する密着性が高いことが好ましい。このことにより、第1絶縁性保護膜31及び第2絶縁性保護膜32が加熱プレス時に流動しても、導体パターン21に第1絶縁性保護膜31及び第2絶縁性保護膜32を密着させることができる。
【0070】
以上に示した各実施形態では、絶縁性基材11の積層数を敢えて少なくした多層基板を示したが、例えば、絶縁性基材11の総積層数を20層程度としてもよい。
【0071】
本発明の多層基板に用いる熱可塑性樹脂としては、上記LCP以外に例えばポリ・エーテル・エーテル・ケトン(PEEK)等を用いることもできる。
【0072】
以上に示した各実施形態では、一単位の部品について図示したが、当然ながら、複数の素子形成部を含む集合基板状態で各工程の処理がなされ(大判プロセスによって製造され)、最後に個片に分離されてもよい。
【0073】
図7図8図9に示した例では、コイルデバイスやインダクタを例示したが、本発明の多層基板は、アンテナ、アクチュエータ、センサ等各種電子部品に適用できる。また、本発明の多層基板は、チップ部品形状に限らず、その他の任意形状の部品として構成された部品を含む。
【0074】
また、位置精度および工数を考慮すると、絶縁性保護膜31が導体パターン21の下面の全体を、絶縁性保護膜32の導体パターン21の上面の全体を、覆うように設けられることが好ましい。しかし、導体パターン21に形成される絶縁性保護膜31、32は、以上に示した各実施形態のように、導体パターン21の上面および下面を覆うように形成される例に限定されない。
【0075】
図17は、多層基板101Aの内部の構成であって、導体パターン21a、21bに形成された絶縁性保護膜31a、32a、31b、32bを示す部分断面図である。図18は、多層基板101Bの内部の構成であって、導体パターン21c、21dに形成された絶縁性保護膜31c、32c、31d、32dを示す部分断面図である。
【0076】
導体パターン21aは、図17に示すように、下面に絶縁性保護膜31aと上面に絶縁性保護膜32aとが形成されている。絶縁性保護膜31aは、導体パターン21aの下面の一部に設けられていてもよい。また、絶縁性保護膜32bは、導体パターン21bの上面の一部に設けられていてもよい。例えば、絶縁性保護膜31aは、絶縁性保護膜32aの一部と積層方向において、重なるように形成されている。また、導体パターン21bには、下面に絶縁性保護膜31bと、上面に絶縁性保護膜32bが形成されている。絶縁性保護膜32bは、絶縁性保護膜31bの一部と積層方向において、重なるように形成されている。絶縁性保護膜31a,32aが形成された導体パターン21aおよび絶縁性保護膜31b,32bが形成された導体パターン21bが極近接する場合がある。しかし、導体パターン21aおよび導体パターン21bは、絶縁性保護膜31aおよび絶縁性保護膜32bが接触(または極近接)することで、導体パターン21aと導体パターン21bとが接触(短絡)することを抑制できる。
【0077】
また、積層方向に互いに重なる導体パターン21aの絶縁性保護膜31aと導体パターン21bの絶縁性保護膜32bとは、少なくともその一部が重なるように構成されていればよい。
【0078】
また、例えば、図18に示すように、多層基板101Bの導体パターン21cには、絶縁性保護膜31c、32cが形成されている。また、導体パターン21dには、絶縁性保護膜31d、32dが形成されている。導体パターン21cの絶縁性保護膜31cおよび導体パターン21dの絶縁性保護膜32dは、導体パターン21cと導体パターン21とが極近接する部分にのみ、それぞれ形成されている。このような場合においても、導体パターン21cおよび導体パターン21dは、絶縁性保護膜31cおよび絶縁性保護膜32dが接触または極近接するので、導体パターン21cと導体パターン21dとが接触(短絡)することを抑制できる。
【0079】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。例えば、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
H…孔
10,11…絶縁性基材
21…導体パターン
21F…導体膜
30…絶縁性保護膜
31…第1絶縁性保護膜
32…第2絶縁性保護膜
31F,32F…絶縁性保護膜
41,42,43,44,45,46…各層間接続導体
51,52…端子電極
101,102A,102B,103,104,105A,105B…多層基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18