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特許7197024情報処理装置、情報処理方法及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20221220BHJP
【FI】
G06T7/00 510F
G06T7/00 300F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021548126
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038178
(87)【国際公開番号】W WO2021059493
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(72)【発明者】
【氏名】早勢 典明
(72)【発明者】
【氏名】矢野 達也
(72)【発明者】
【氏名】野中 哲史
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 裕章
【審査官】片岡 利延
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-108074(JP,A)
【文献】特開2007-323564(JP,A)
【文献】特開2011-044101(JP,A)
【文献】特開2019-159985(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/113634(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/051147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得する取得部と、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行う判定部と、
前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づいて、前記照合精度の劣化の判定を行う、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記順位が1位である照合スコアを複数含む第1分布と前記順位が1位でない照合スコアを複数含む第2分布とに基づいて、前記照合精度の前記劣化要因に関する判定及び前記照合精度の前記劣化の判定を行う、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との少なくとも一方の時間変化に基づいて、前記照合精度の前記劣化要因に関する判定及び前記照合精度の前記劣化の判定を行う、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記出力部は、前記第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化し、かつ前記第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記出力部は、前記第1分布と前記第2分布とがいずれも初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との近接の程度に基づいて、前記照合精度の前記劣化の判定を行う、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との重複面積に基づいて、前記照合精度の前記劣化の判定を行う、
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記管理情報は、前記順位が1位である登録者を示す識別情報を含む、
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記管理情報は、前記照合精度が劣化していることを示す情報を含む、
請求項1乃至11のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記管理情報は、前記照合精度の前記劣化要因に関する情報を含む、
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記出力部は、管理者端末に照合精度の劣化を警告するメッセージを送信することにより前記管理情報の出力を行う、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1生体情報は、前記照合対象者の顔画像又は前記照合対象者の顔画像から抽出された特徴量であり、
前記第2生体情報は、前記登録者の顔画像又は前記登録者の顔画像から抽出された特徴量である、
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行うステップと、
前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、 を備える情報処理方法。
【請求項17】
コンピュータに、
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行うステップと、
前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、
を備える情報処理方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、顔認証によりユーザを判定する情報処理装置が開示されている。情報処理装置は、ユーザの顔画像を撮影し、撮影された顔画像と登録者の顔画像との一致度を数値化したスコアを算出する。そして、情報処理装置は、スコアが閾値以上である登録者が存在する場合に、撮影されたユーザが当該登録者であると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-218672号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような生体認証においては、誤判定の発生率を十分に少なくするように照合精度を維持することが要求される。しかしながら、生体認証システムの状態は導入後の使用状況等に応じて変化するため、照合精度の維持が難しい場合がある。そのため、照合精度を適切に管理する手法が要求されている。
【0005】
本発明は、照合精度を適切に管理することができる情報処理装置、情報処理方法及び記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得する取得部と、前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行う判定部と、前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力する出力部と、を備える情報処理装置が提供される。
【0007】
本発明の他の一観点によれば、照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行うステップと、前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、を備える情報処理方法が提供される。
【0008】
本発明の他の一観点によれば、コンピュータに、
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく照合精度の劣化要因に関する判定を行うステップと、前記照合精度の前記劣化要因に関する判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、を備える情報処理方法を実行させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、照合精度を適切に管理することができる情報処理装置、情報処理方法及び記憶媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る生体認証システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】第1実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る情報処理装置において行われる処理の概略を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る情報処理装置において行われる照合処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る情報処理装置において取得される照合結果の例を示す表である。
図6】第1実施形態に係る情報処理装置において行われる照合状態監視処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る情報処理装置において取得される照合スコアの分布の例を示す表である。
図8】照合スコアの分布と、誤判定との関係を示すグラフの例である。
図9】照合スコアの分布の変動と、誤判定の発生確率との関係を示すグラフの例である。
図10】照合精度の劣化原因と照合スコアの変化の傾向の関係の例を示す表である。
図11】第2実施形態に係る情報処理装置において行われる照合状態監視処理を示すフローチャートである。
図12】第3実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態を説明する。図面において同様の要素又は対応する要素には同一の符号を付し、その説明を省略又は簡略化することがある。
【0012】
[第1実施形態]
本実施形態に係る生体認証システムについて説明する。本実施形態の生体認証システムは、生体認証により、人物の識別を行うためのシステムである。本実施形態の生体認証システムは、例えば、管理区域への入退場管理、空港、国境等における入出国管理、端末、サーバ等におけるログイン管理、電子決済等における本人確認等の用途に用いられるものであり得る。しかしながら、本実施形態の生体認証システムは、人物の識別を行うものであればよく、その用途は特に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態の生体認証システムに適用され得る生体認証の方式は、典型的には、顔認証であり得る。顔認証は、照合対象者の顔画像から得られた特徴量と、複数の登録者の顔画像から得られた特徴量とを照合して照合対象者が登録者のうちの1人と同一人物であるか否かを判定するものであり得る。しかしながら、生体認証の方式は、照合対象者の少なくとも一部の画像を用いる他の方式、例えば、指紋、掌紋、静脈、虹彩等の画像を用いるものであってもよい。以下の説明では、本実施形態の生体認証システムは、入退場ゲート等のように多数の照合対象者が順次訪れる箇所に設けられた顔認証システムであるものとする。
【0014】
なお、本明細書において、照合対象者の顔画像等の特徴部の画像又はこれから得られた特徴量は、より一般的に第1生体情報と呼ばれることもある。また、登録者の顔画像等の特徴部の画像又はこれから得られた特徴量は、より一般的に第2生体情報と呼ばれることもある。
【0015】
図1は、本実施形態に係る生体認証システムのハードウェア構成を示すブロック図である。生体認証システムは、情報処理装置1、撮像装置2及び管理者端末3を備える。情報処理装置1、撮像装置2及び管理者端末3は、有線又は無線により、ネットワークを介して通信可能に接続される。情報処理装置1は、生体認証システムにおける照合処理及び照合状態監視処理を行うコンピュータである。撮像装置2は、照合対象者の顔画像を撮影するデジタルカメラである。管理者端末3は生体認証システムの管理を行う管理者が使用するコンピュータである。
【0016】
なお、この生体認証システムの全体構成は一例であり、例えば、情報処理装置1と撮像装置2が一体の装置として構成されていてもよい。また、生体認証システムは、認証結果に基づいて開閉動作する入退場ゲート、認証結果を照合対象者に通知する表示装置、照合対象者が保持している身分証明カードを読み取るカードリーダ等の別の装置を更に含んでいてもよい。
【0017】
情報処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)101、RAM(Random Access Memory)102、ROM(Read Only Memory)103及びHDD(Hard Disk Drive)104を備える。また、情報処理装置1は、通信I/F(Interface)105、入力装置106及び出力装置107を備える。なお、情報処理装置1の各部は、不図示のバス、配線、駆動装置等を介して相互に接続される。
【0018】
図1では、情報処理装置1を構成する各部が一体の装置として図示されているが、これらの機能の一部は外付け装置により提供されるものであってもよい。例えば、入力装置106及び出力装置107は、CPU101等を含むコンピュータの機能を構成する部分とは別の外付け装置であってもよい。
【0019】
CPU101は、ROM103、HDD104等に記憶されたプログラムに従って所定の演算を行うとともに、情報処理装置1の各部を制御する機能をも有するプロセッサである。RAM102は、揮発性記憶媒体から構成され、CPU101の動作に必要な一時的なメモリ領域を提供する。ROM103は、不揮発性記憶媒体から構成され、情報処理装置1の動作に用いられるプログラム等の必要な情報を記憶する。HDD104は、不揮発性記憶媒体から構成され、撮像装置2と送受信するデータの一時記憶、情報処理装置1の動作用プログラムの記憶等を行う記憶装置である。
【0020】
通信I/F105は、イーサネット(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の規格に基づく通信インターフェースである。通信I/F105は、撮像装置2、管理者端末3等の他の装置との通信を行うためのモジュールである。
【0021】
入力装置106は、キーボード、ポインティングデバイス等であって、ユーザが情報処理装置1を操作するために用いられる。ポインティングデバイスの例としては、マウス、トラックボール、タッチパネル、ペンタブレット等が挙げられる。
【0022】
出力装置107は、例えば表示装置である。表示装置は、液晶ディスプレイ、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ等であって、情報の表示、操作入力用のGUI(Graphical User Interface)等の表示に用いられる。入力装置106及び出力装置107は、タッチパネルとして一体に形成されていてもよい。
【0023】
なお、情報処理装置1のハードウェア構成は例示であり、これら以外の装置が追加されていてもよく、一部の装置が設けられていなくてもよい。また、一部の装置が同様の機能を有する別の装置に置換されていてもよい。更に、本実施形態の一部の機能がネットワークを介して他の装置により提供されてもよく、本実施形態の機能が複数の装置に分散されて実現されるものであってもよい。例えば、HDD104は、半導体メモリを用いたSSD(Solid State Drive)に置換されていてもよい。また、HDD104は、クラウドストレージに置換されていてもよい。このように情報処理装置1のハードウェア構成は適宜変更可能である。
【0024】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置1の機能ブロック図である。情報処理装置1は、撮像制御部111、照合部112、スコア取得部113、判定部114、出力部115及び記憶部116を備える。なお、スコア取得部113はより一般的に取得部と呼ばれることがある。
【0025】
CPU101は、ROM103、HDD104等に記憶されたプログラムをRAM102にロードして実行することで、所定の演算処理を行う。また、CPU101は、当該プログラムに基づいて、通信I/F105等の情報処理装置1の各部及び撮像装置2を制御する。これにより、CPU101は、撮像制御部111、照合部112、スコア取得部113、判定部114、出力部115及び記憶部116の機能を実現する。各機能ブロックにより行われる具体的な処理の内容については後述する。
【0026】
なお、図2において情報処理装置1内に記載されている機能ブロックの各機能の一部又は全部は、情報処理装置1の外部の装置に設けられていてもよい。すなわち、上述の各機能は、情報処理装置1によって実現されてもよく、外部の装置との協働により実現されてもよい。
【0027】
図3は、本実施形態に係る情報処理装置1において行われる処理の概略を示すフローチャートである。本例においては、生体認証システムは、照合対象者が訪れる度に照合を行うとともに、所定時間ごとに照合状態の監視を行う。図3の処理は、生体認証システムが稼働を開始した後、稼働を終了するまで、繰り返し実行される。
【0028】
ステップS10において、情報処理装置1は、生体認証システムの撮像装置2の撮影範囲に照合対象者が存在しているか否かを判定する。照合対象者が存在すると判定された場合(ステップS10においてYES)、処理はステップS20に移行する。照合対象者が存在しないと判定された場合(ステップS10においてNO)、処理はステップS30に移行する。なお、この判定は、例えば、撮像装置2により近傍の画像を取得し、取得された画像中に人物の顔が存在しているか否かに基づいて行われ得る。
【0029】
ステップS20において、情報処理装置1は、照合対象者の顔画像を取得して、その顔画像から得られた特徴量と登録者の特徴量とを照合する照合処理を行う。
【0030】
ステップS30において、情報処理装置1は、所定時間が経過したかどうかを判定する。所定時間が経過していると判定された場合(ステップS30においてYES)、処理はステップS40に移行する。所定時間が経過していないと判定された場合(ステップS30においてNO)、処理はステップS10に移行する。なお、この判定に用いられる所定時間の始期は、例えば、生体認証システムの稼働開始時刻であってもよく、後述する照合状態監視処理が最後に行われた時刻であってもよい。
【0031】
ステップS40において、情報処理装置1は、過去の照合処理の結果に基づいて照合状態監視処理を行う。情報処理装置1は、照合状態監視処理の結果に基づいて、照合状態を示す管理情報を管理者端末3に送信する。
【0032】
図4は、本実施形態に係る情報処理装置1において行われる照合処理を示すフローチャートである。図4は、図3のステップS20の照合処理をより詳細に示すものである。
【0033】
ステップS201において、撮像制御部111は、撮像装置2を制御して照合対象者を含む画像を撮影して取得する。取得された画像は、記憶部116に記憶される。本実施形態では、照合対象者の顔の特徴を特徴量として抽出するため、この画像には少なくとも照合対象者の顔が含まれていればよい。以下ではこの画像を顔画像と呼ぶ場合がある。なお、顔以外の部分を用いた認証方式を行う場合には、画像には少なくとも特徴量の抽出に用いられる部分が含まれていればよい。
【0034】
ステップS202において、照合部112は、撮像装置2により取得された顔画像に含まれる目、鼻等の特徴点から、照合対象者の特徴量を抽出する。
【0035】
ステップS203において、照合部112は、照合対象者の特徴量と、記憶部116にあらかじめ記憶されている複数の登録者の各々の特徴量とを照合する。ここで、複数の登録者とは、本実施形態の生体認証システムにおいて照合対象者と同一人物であるか否かを判定すべき人物のことである。例えば、本実施形態の生体認証システムが入退場ゲートの通行可否の判定に用いられる場合には、複数の登録者は、入退場ゲートの通行が認められている人物であり得る。
【0036】
この照合において、照合部112は、照合に用いられた特徴量の一致度を示す照合スコアを複数の登録者の各々について算出する。算出された照合スコアは、登録者と対応付けて記憶部116に記憶される。照合スコアの値の定義は、照合に用いるアルゴリズムに応じて適宜設定され得る。以下の説明では、照合スコアの値は、0から1の間の数であり、値が大きいほど特徴量間の一致度が高いことを示しているものとする。なお、複数の登録者のそれぞれに対して照合を行うことにより得られた1組の照合スコアは、照合スコア群と呼ばれることもある。
【0037】
ステップS204において、照合部112は、照合スコア群の中の各照合スコアの順位を算出する。この順位は、照合スコアの値が大きいほど、すなわち特徴量間の一致度が高いほど高順位であるものとする。算出された順位は、登録者と対応付けて記憶部116に記憶される。
【0038】
ステップS205において、照合部112は、照合スコア群の中に順位が1位、かつ照合スコアの値が所定の閾値以上である照合スコアの登録者があるか否かを判定する。そのような照合スコアが存在する場合(ステップS205においてYES)、処理はステップS206に移行する。そのような照合スコアが存在しない場合(ステップS205においてNO)、処理はステップS207に移行する。なお、照合スコア群の中には順位が1位の照合スコアは必ず存在するので、上述の判定条件は、「順位が1位の照合スコアが閾値以上であるか否か」と言い換えてもよい。
【0039】
ステップS206において、照合部112は、照合対象者は順位が1位の照合スコアに対応する登録者と同一人物であると判定する。すなわち、照合部112は、照合対象者は複数の登録者のうちの1人であると判定する。
【0040】
ステップS207において、照合部112は、照合対象者は複数の登録者のいずれとも同一人物ではないと判定する。すなわち、照合部112は、照合対象者は登録者ではないと判定する。
【0041】
図5は、本実施形態に係る情報処理装置1において取得され、記憶部116に記憶される照合結果の例を示す表である。なお、この表に示されているデータは、本実施形態の処理を説明するために作られた仮想データである。
【0042】
図5には、5人の「登録者」と各登録者に対応付けて記憶された「顔画像データ」、「特徴量」、「照合日時」、「照合スコア」、「順位」及び「判定結果」が表形式で示されている。図5には、同日の3つの照合時刻(10:21、10:23、10:26)に実行された3セットの照合結果が記載されている。1回目の照合(10:21)においては、登録者AAAの照合スコアが5人の照合スコア群の中で最も大きく、1位であるため、登録者AAAが照合対象者と同一人物であると判定されている。登録者AAA以外の4人の登録者は、照合対象者と同一人物ではありえないため、照合スコアに関わらず他人であると判定されている。なお、本例では、すべての照合において1位の照合スコアは閾値を超えているものとする。
【0043】
同様に、2回目の照合(10:23)においては順位が1位の登録者CCCが照合対象者と同一人物であると判定されており、3回目の照合(10:26)においては順位が1位の登録者DDDが照合対象者と同一人物であると判定されている。すなわち、図5に示されている例は、10:21における照合対象者はAAAであり、10:23における照合対象者はCCCであり、10:26における照合対象者はDDDであることを示している。
【0044】
図6は、本実施形態に係る情報処理装置1において行われる照合状態監視処理を示すフローチャートである。図6は、図3のステップS40の照合状態監視処理をより詳細に示すものである。
【0045】
ステップS401において、スコア取得部113は、過去の照合により得られた照合スコア群及び各照合スコアの順位を記憶部116から読み出して取得する。
【0046】
ステップS402において、判定部114は、順位が1位の照合スコアを複数個抽出して、順位が1位の照合スコアの分布を生成する。ステップS403において、判定部114は、順位が2位の照合スコアを複数個抽出して、順位が2位の照合スコアの分布を生成する。以下、順位が1位の照合スコアを複数含む分布を第1分布と呼び、順位が2位の照合スコアを複数含む分布を第2分布と呼ぶことがある。
【0047】
ステップS404において、判定部114は、第1分布と第2分布とに基づいて、照合部112における照合状態を解析し、照合精度の劣化を判定する。この処理の詳細については後述する。照合精度が劣化していると判定された場合(ステップS405においてYES)、処理はステップS406に移行する。照合精度が劣化していると判定されなかった場合(ステップS405においてNO)、ステップS406はスキップされ、照合状態監視処理は終了する。
【0048】
ステップS406において、出力部115は、管理情報を管理者端末3に送信する。これにより管理者は、照合状態の監視結果を適時に取得することができる。管理情報は、典型的には、生体照合システムの照合精度が劣化していることを示す情報を含む。この送信の具体例としては、管理者が管理者端末3で管理情報を閲覧できるように、生体照合システムの照合精度が劣化していることを警告するメッセージを管理者の宛先に電子メールで送信するというものであり得る。管理者がすぐに閲覧できる電子メール等の態様で管理情報が送信されることにより、管理者は生体認証システムに対して迅速に措置を採ることができる。
【0049】
なお、ステップS406の処理において、管理者端末3に送信される管理情報には、順位が1位である登録者を示す識別情報(登録者番号、登録者氏名等)が含まれていてもよい。これにより、管理者は、実際に取得された顔画像等により照合の妥当性を確認しつつ、適切な措置を採ることができる。この識別情報は、例えば、登録者の番号、登録者の氏名、登録者の顔画像ファイル名、登録者の特徴量ファイル名等の登録者と対応付けることが可能な情報であればよい。
【0050】
図7は、本実施形態に係る情報処理装置1において取得される照合スコアの第1分布及び第2分布の例を示す表である。この表に示されているデータは、仮に図5のデータから照合スコアを抽出した場合に得られる第1分布及び第2分布に含まれるデータを示すものである。図5に示されている多数の照合スコアの中から順位が1位の照合スコアのみを抽出すると、0.91、0.88、0.79という3つの照合スコアが得られる。また、同様に順位が2位の照合スコアのみを抽出すると、0.44、0.36、0.49という3つの照合スコアが得られる。図7の表はこれらを照合日時の順序に並べたものである。
【0051】
1位の照合スコアの第1分布と2位の照合スコアの第2分布とを比較すると、全体として第1分布の値の方が大きい。また、各分布の値にはばらつきが見られる。ここで、第1分布は照合対象者と登録者が同一人物であると判定された場合の照合スコアの分布であり、第2分布は照合対象者と登録者が他人であると判定された場合の照合スコアの分布である。これらのことから、第1分布と第2分布のデータを多く収集してヒストグラム等の形で照合スコアの中心又は広がり方の傾向を調べることで照合状態を解析することができる。
【0052】
判定部114において第1分布と第2分布から照合状態を解析するための手法についてより詳細に説明する。図8は、生体認証における照合スコアの分布と、誤判定との関係を示すグラフの例である。図8において、「第1分布(1位)」は、照合スコアが1位、すなわち、照合対象者と登録者が同一人物である(照合対象者が登録者本人)と判定された場合の照合スコアを多数取得したときに得られる分布である。「第2分布(2位)」は、照合スコアが2位、すなわち、照合対象者と登録者が同一人物ではない(照合対象者と登録者とが他人)と判定された場合の照合スコアを多数取得したときに得られる分布である。
【0053】
図8の「閾値」は、照合において本人であるか他人であるか判定するための照合スコアの閾値である。照合スコアが閾値以上である場合、本人であると判定され、照合スコアが閾値よりも小さい場合、他人であると判定される。
【0054】
2つの分布には重複部分が存在する場合がある。そのため、閾値を適切に設定したとしても少なくともその重複部分については誤判定が発生する。誤判定には2種類のモードがある。第1分布の中の照合スコアが閾値よりも小さい部分、すなわち、図8の「本人拒否」と示されている部分は、実際には本人であるにも関わらず同一人物ではないという誤判定が生じる範囲である。第2分布の中の照合スコアが閾値以上の部分、すなわち、図8の「他人受入」と示されている部分は、実際には他人であるにも関わらず同一人物であるという誤判定が生じる範囲である。
【0055】
「本人拒否」、「他人受入」の部分の面積は、これらの誤判定の発生確率に相当する。閾値の設定を変えることで「本人拒否」と「他人受入」の面積を変えることができるため、誤判定の発生確率をある程度調整することは可能である。しかしながら、「第1分布(1位)」と「第2分布(2位)」の分布に重複部分が存在する場合には、2種類の誤判定の発生確率はトレードオフであり、両方を同時にゼロにすることはできない。そして、誤判定の生じやすさは2つの分布の重複面積の大きさに依存する。2つの分布の重複面積の大きさは、2つの分布の照合スコアの中心、広がりの大きさ等によって決まる。
【0056】
図9(a)及び図9(b)は、照合スコアの分布の変動と、誤判定の発生確率との関係を示すグラフの例である。図9(a)は、生体認証システムの稼働開始直後の初期状態における照合スコアの分布の例である。初期状態においては、生体認証システムは、誤判定の発生確率を十分に少なくするため、第1分布と第2分布の重複面積が少なくなるようにあらかじめ調整されている。図9(b)は、生体認証システムの稼働後に第1分布と第2分布の分布が変化した後の照合スコアの分布の例である。生体認証システムは稼働を行っていくにつれてデータベースに登録される登録者数の変動、使用環境の変化等の種々の要因により誤判定の発生確率が変化することがある。
【0057】
例えば、図9(b)のように第1分布の照合スコアが小さくなって第2分布と接近すると、2つの分布の重複面積が大きくなり、「本人拒否」、「他人受入」の誤判定の発生確率が上昇する。このような理由により、生体認証システムの運用においては、状態の変化による誤判定の発生確率の変化を監視することが望まれる。誤判定の発生確率は、第1分布及び第2分布の状態に依存するため、この監視を行うにあたっては、第1分布と第2分布とを取得することが有効である。
【0058】
ステップS404における照合状態の解析と照合精度の劣化の判定についてより詳細に説明する。照合状態の解析手法は、第1分布と第2分布から照合状態が把握されるものであればよい。例えば、第1分布と第2分布が近接している場合に誤判定が生じやすくなることから、第1分布と第2分布の近接の程度を定量化し、所定の閾値よりも第1分布と第2分布が近接している場合に照合精度が劣化していると判定するという手法が採用され得る。近接の程度の定量化には、例えば、第1分布と第2分布の平均値、中央値、分散等のような分布の全体を統計的に考慮する手法を用いてもよいが、第1分布と第2分布の重複面積を用いてもよい。重複面積は誤判定の発生確率に直結するため、照合精度の抽出に有効である。
【0059】
また、照合状態の解析と照合精度の劣化の判定の手法は、第1分布と第2分布との少なくとも一方の時間変化に基づいて照合精度が劣化しているか否かを判定するものであってもよい。照合精度が劣化する際には、第1分布と第2分布の絶対値よりも時間変化の方に特徴が顕著に現れる場合がある。そのため、時間変化に基づいて照合精度の劣化を判定したほうがよい場合がある。判定基準の具体例としては、初期状態と照合状態の監視を行った時点との間の分布の変化量が所定の閾値以上であるか否かを判定基準としてもよい。また、分布が初期状態から変化した方向を判定基準に含めてもよい。この判定基準の設定方法に関して、照合精度の劣化要因と分布の変化の関係を更に詳細に説明する。
【0060】
図10は、照合精度の劣化原因と照合スコアの変化の傾向の関係を示す表である。図10に記載された例を参照しつつ、照合精度の劣化原因ごとの第1分布と第2分布の変化の傾向を説明する。
【0061】
登録者を追加登録することにより、記憶部116に記憶されている登録者数が増加すると、照合スコアが高い登録者が本人以外にも現れる確率が高くなる。したがって、このケースでは、第2分布の照合スコアが上昇する。第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化した場合に、照合精度が劣化していると判定するというアルゴリズムを用いることにより、この劣化原因による照合精度の劣化を判定することができる。
【0062】
また、登録者の属性(年齢、性別等)の分布が変化すると、当初想定されていた属性に対応した照合条件では、照合対象者と登録者が同一人物である場合であっても高い照合スコアが得られにくくなる。したがって、このケースでは、第1分布の照合スコアが低下する。これの判定には、第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化した場合に、照合精度が劣化していると判定するというアルゴリズムが用いられ得る。なお、属性分布の変化の具体例としては、生体照合システムが当初は若年者向けであったが実際の運用時には高齢の人物が多く登録された場合が挙げられる。
【0063】
また、顔画像の登録方法の変更等により低品質な顔画像が多く登録される場合がある。この場合、照合対象者と登録者が同一人物である場合であっても高い照合スコアが得られにくくなる。また、低品質な顔画像では、照合対象者と登録者とが同一人物でない場合にも偶発的に高い照合スコアが得られることもある。したがって、このケースでは、第1分布の照合スコアが低下し、第2分布の照合スコアが上昇する。これの判定には、第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化し、かつ第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化した場合に、照合精度が劣化していると判定するというアルゴリズムが用いられ得る。なお、低品質な顔画像の例としては、携帯電話に搭載されたカメラ等の低品質な撮像装置で撮影された顔画像、顔が斜めになっている顔画像等が挙げられる。偶発的に高い照合スコアが得られる例としては、登録されている顔と、照合対象者の顔とがどちらも斜めになっている場合が挙げられる。
【0064】
また、登録から長い時間が経過して登録者の顔が経年変化すると、照合対象者と登録者とが同一人物であっても高い照合スコアが得られにくくなる。したがって、このケースでは、第1分布の照合スコアが低下する。これの判定には、第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化した場合に、照合精度が劣化していると判定するというアルゴリズムが用いられ得る。
【0065】
また、撮像装置2が設置されている場所の照明環境が変化すると、顔画像の輝度が想定されている輝度から外れるため、本人照合時、他人照合時のいずれも高い照合スコアが得られにくくなる。したがって、このケースでは、第1分布及び第2分布の照合スコアが低下する。これの判定には、第1分布と第2分布とがいずれも初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化した場合に、照合精度が劣化していると判定するというアルゴリズムが用いられ得る。
【0066】
以上のように、照合精度の劣化要因に応じた様々な態様で第1分布と第2分布が変化する。そのため、生体照合システムの仕様、設置環境等に応じて生じ得る劣化要因を推測した上で、上述のアルゴリズムを単独で、あるいは適宜組み合わせることで、照合精度の劣化を適切に判定することができる。
【0067】
なお、本実施形態で述べた例では、第2分布に含まれる照合スコアは順位が2位のもののみであるが、1位以外のものであれば3位以下のものを抽出してもよい。3位以下の照合スコアも2位と同様に他人を照合した場合の照合スコアとして扱うことができるため、2位だけでなく3位以下のものも第2分布に含めることでより多くのデータを抽出することができる。
【0068】
以上のように、本実施形態の情報処理装置1は、照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、順位が1位でない照合スコアとに基づいて、照合精度の劣化を判定することができる。そして、情報処理装置1は、判定結果に応じて管理情報を出力することで、管理者に照合状態を通知することができる。これにより管理者は、照合状態を適時に把握することができ、照合精度の劣化等が生じた場合には、生体認証システムに対して迅速に対処を行うことが可能となる。また、本実施形態の情報処理装置1は、生体照合システムを通常通りに運用しながら照合状態の監視を行うことができるため、照合精度の検査を別途行う必要がない。以上のように、本実施形態によれば、照合状態を適切に管理することができる情報処理装置1が提供される。
【0069】
[第2実施形態]
本実施形態の生体認証システムにおいては、照合状態監視処理の内容が第1実施形態と相違するが、それ以外の部分については第1実施形態と同様である。以下では主として第1実施形態との相違点について説明するものとし、共通部分については説明を省略又は簡略化する。
【0070】
図11は、本実施形態に係る情報処理装置1において行われる照合状態監視処理を示すフローチャートである。図11は、図3のステップS40の照合状態監視処理をより詳細に示すものである。ステップS401からステップS405までの処理は第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0071】
ステップS407において、判定部114は、第1分布と第2分布とに基づいて、照合精度の劣化要因を判定する。この劣化要因の判定には、例えば、図10に示されているような劣化原因と分布の変化との相関関係をあらかじめ調査しておき、第1分布と第2分布の変化の傾向から劣化要因を判定する手法が用いられ得る。この調査結果から第1分布と第2分布の変化方向及び変化量を入力として劣化要因を出力するルールベースの判定アルゴリズムを構築することで、照合精度の劣化要因を判定することができる。また、この調査結果を教師データとする機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて照合精度の劣化要因を判定してもよい。なお、劣化要因を1つに絞り込むことが難しい場合には、劣化要因の候補を複数個判定して、複数個提示してもよい。
【0072】
ステップS406において、出力部115は、管理情報を管理者端末3に送信する。管理情報は、生体照合システムの照合精度が劣化していること及び照合精度の劣化要因に関する情報を含む。この送信方法の具体例は、生体照合システムの照合精度が劣化していることの警告メッセージ及び推定される劣化要因の候補を示すメッセージを管理者の宛先に電子メールで送信するというものであり得る。これにより、管理者は、判定された劣化要因を活用しつつ、生体認証システムに対して迅速に措置を採ることができる。
【0073】
本実施形態によれば、第1実施形態で述べた効果が得られることに加えて、判定部114により劣化要因を取得することができるため、照合精度をより適切に管理することができる情報処理装置1が提供される。
【0074】
上述の実施形態において説明したシステムは以下の第3実施形態のようにも構成することができる。
【0075】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係る情報処理装置4の機能ブロック図である。情報処理装置4は、取得部401、判定部402及び出力部403を備える。取得部401は、照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、第1生体情報と第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得する。判定部402は、照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、順位が1位でない照合スコアとに基づく判定を行う。出力部403は、判定の結果に基づいて、管理情報を出力する。
【0076】
本実施形態によれば、照合精度を適切に管理することができる情報処理装置4が提供される。
【0077】
[変形実施形態]
本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0078】
上述の実施形態の機能を実現するように該実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記録させ、記憶媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記憶媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記憶媒体だけでなく、そのプログラム自体も各実施形態に含まれる。また、上述の実施形態に含まれる1又は2以上の構成要素は、各構成要素の機能を実現するように構成されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路であってもよい。
【0079】
該記憶媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disk)-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。また該記憶媒体に記録されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS(Operating System)上で動作して処理を実行するものも各実施形態の範疇に含まれる。
【0080】
上述の各実施形態の機能により実現されるサービスは、SaaS(Software as a Service)の形態でユーザに対して提供することもできる。
【0081】
なお、上述の実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0082】
上述の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0083】
(付記1)
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得する取得部と、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく判定を行う判定部と、
前記判定の結果に基づいて、管理情報を出力する出力部と、
を備える情報処理装置。
【0084】
(付記2)
前記判定部は、前記順位が1位である照合スコアを複数含む第1分布と前記順位が1位でない照合スコアを複数含む第2分布とに基づいて、前記判定を行う、
付記1に記載の情報処理装置。
【0085】
(付記3)
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との少なくとも一方の時間変化に基づいて、前記判定を行う、
付記2に記載の情報処理装置。
【0086】
(付記4)
前記出力部は、前記第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
付記3に記載の情報処理装置。
【0087】
(付記5)
前記出力部は、前記第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する
付記3に記載の情報処理装置。
【0088】
(付記6)
前記出力部は、前記第1分布が初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化し、かつ前記第2分布が初期状態から上昇する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
付記3に記載の情報処理装置。
【0089】
(付記7)
前記出力部は、前記第1分布と前記第2分布とがいずれも初期状態から低下する方向に所定の閾値以上変化したと判定された場合に、前記管理情報を出力する、
付記3に記載の情報処理装置。
【0090】
(付記8)
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との近接の程度に基づいて、前記判定を行う、
付記2に記載の情報処理装置。
【0091】
(付記9)
前記判定部は、前記第1分布と前記第2分布との重複面積に基づいて、前記判定を行う、
付記8に記載の情報処理装置。
【0092】
(付記10)
前記管理情報は、前記順位が1位である登録者を示す識別情報を含む、
付記1乃至9のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0093】
(付記11)
前記管理情報は、照合精度が劣化していることを示す情報を含む、
付記1乃至10のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0094】
(付記12)
前記管理情報は、前記照合精度の劣化要因に関する情報を含む、
付記11に記載の情報処理装置。
【0095】
(付記13)
前記判定部は、前記順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づいて、前記劣化要因を更に判定する、
付記12に記載の情報処理装置。
【0096】
(付記14)
前記出力部は、管理者端末に照合精度の劣化を警告するメッセージを送信することにより前記管理情報の出力を行う、
付記1乃至13のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0097】
(付記15)
前記第1生体情報は、前記照合対象者の顔画像又は前記照合対象者の顔画像から抽出された特徴量であり、
前記第2生体情報は、前記登録者の顔画像又は前記登録者の顔画像から抽出された特徴量である、
付記1乃至14のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【0098】
(付記16)
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、
を備える情報処理方法。
【0099】
(付記17)
コンピュータに、
照合対象者の少なくとも一部を含む画像から得られた第1生体情報と、複数の登録者に対応する複数の第2生体情報とを照合することにより得られた、前記第1生体情報と前記第2生体情報との間の一致度を各々が示す複数の照合スコアを含む照合スコア群を取得するステップと、
前記照合スコア群の中での順位が1位である照合スコアと、前記順位が1位でない照合スコアとに基づく判定を行うステップと、
前記判定の結果に基づいて、管理情報を出力するステップと、
を備える情報処理方法を実行させるためのプログラムが記憶された記憶媒体。
【符号の説明】
【0100】
1、4 情報処理装置
2 撮像装置
3 管理者端末
101 CPU
102 RAM
103 ROM
104 HDD
105 通信I/F
106 入力装置
107 出力装置
111 撮像制御部
112 照合部
113 スコア取得部
114、402 判定部
115、403 出力部
116 記憶部
401 取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12