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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20221220BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20221220BHJP
   H04J 14/08 20060101ALI20221220BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20221220BHJP
【FI】
H04L12/44 B
H04L12/44 200
H04J14/02
H04J14/08
H04B10/272
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022035213
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2022-03-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)/光アクセスネットワークの仮想化技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中平 佳裕
【審査官】浦口 幸宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-254256(JP,A)
【文献】特開2014-143502(JP,A)
【文献】特開2021-019226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04J 14/02
H04J 14/08
H04B 10/272
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の子局との間で、前記複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムの親局としての通信装置において、
前記複数のサービスのそれぞれを、前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる資源割当手段と、
前記第1~第Kの波長のいずれかで光通信するK個の光終端手段と
を備え、
前記資源割当手段が、
他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、前記要求資源量の値を満たす前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、
他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と将来必要とされる可能性がある許容量の値とを加えた許容資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、前記要求資源量の値を満たす前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に示される通信装置において、特に、各波長において、他の波長への移動ができないサービスの許容資源量の合計と、他の波長への移動可能なサービスの要求資源量の合計を、各波長の資源量以下とすることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1に示される通信装置において、各波長に割当てられるサービスの組合せにおいて、他の波長への移動ができないサービスの許容資源量の合計、および、全サービスの要求資源量の合計、のどちらも、その波長の資源量を下回る割当を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に示される通信装置であって、前記資源割当手段が、前記複数のサービスのそれぞれの前記許容資源量の値が大きいものから順番に選択したサービスの前記要求資源量の値又は前記許容資源量の値と、波長番号の小さいものから順番に選択した波長の未割当の資源量の値との比較により、当該サービスを波長に割り当てる
ことを特徴とする通信装置。
【請求項5】
前記資源割当手段が、
前記複数のサービスのうち、他の波長への移動ができないサービスについて、前記許容資源量の値が大きいものから順番に選択したサービスの前記許容資源量の値と、波長番号の小さいものから順番に選択した波長において許容資源量を減じた残りの資源量の値との比較により、残りの資源量の方が多ければ当該サービスを波長に割り当てる操作をそのサービスの割り当てが終わるまで繰り返し、
その後、他の波長への移動可能なサービスについて、前記要求資源量の値が大きいものから順番に波長番号の小さな波長から順に、波長資源量から割当済のサービスの前記許容資源量を減じた残りの資源量と比較し、後者の方が大きければ、当該サービスをその波長に割り当て、残り資源量の方が小さければ、次の波長で当該サービスの残り資源量を比較して割り当てる操作をこのサービスの割り当てが終わるまで繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記資源割当手段が、更に、前記複数のサービスのそれぞれの要求期間と、前記第1~第Kの波長のそれぞれの割当期間とを用いて、前記複数のサービスのそれぞれを、前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てるものであり、
前記資源割当手段が、
他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスの要求期間に亘って、当該サービスの前記要求資源量の値を割当可能な前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、
他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスの要求期間に将来要求される可能性がある延長期間を加えた期間に亘って、当該サービスの前記許容資源量の値を割当可能な前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる
ことを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記資源割当手段が、前記要求資源量の値に、サービス毎に所定の割合を示す値を乗じた値を用いて、前記許容資源量の値を求めることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の通信装置。
【請求項8】
複数の子局との間で、前記複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムの親局としての通信方法において、
前記複数のサービスのそれぞれを、前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる前記資源割当手段が、
他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、前記要求資源量の値を満たす前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、
他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と将来必要とされる可能性がある許容量の値とを加えた許容資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、前記要求資源量の値を満たす前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる
ことを特徴とする通信方法。
【請求項9】
親局と、複数の子局との間で、前記複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムにおいて、
前記親局としての通信装置が、請求項1~6のいずれかに記載の通信装置であることを特徴とする光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法及び通信システムに関し、例えば、TWDM-PON(Time and Wavelength Division Multiplexing-Passive Optical Network)等の資源を共有する光通信システムで、資源割当を行う際に、利用効率を高めながらも、利用者の追加やサービス期間への対応にも柔軟に対応できる通信装置に適用することができる。
【0002】
ここで、「資源割当」には「波長割当」が含まれ、「波長割当」と「資源割当」の両表記は同義である。「波長割当」とは波長資源の全部又は一部の割当を指す。
【0003】
また、資源として時間・波長分割多重(TWDMA)された帯域の資源を前提とした例を説明するが、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)多重、符号分割多重による帯域資源の共有方法にも適用できる。
【背景技術】
【0004】
特許文献1には、ONU(Optical Network Unit)の「波長又は方路のグループ割り振りの変更等に伴う通信断を考慮し、公平な帯域割当を実現できる光通信システム及び光通信方法を提供すること(同段落0021参照)」を目的として、特許文献1に記載の数式1と数式2による帯域割当を行うことで、波長の割り振りの変更による悪影響(通信断の時間)を小さくできることが開示されている。
【0005】
特許文献1に記載される手法は、どのONUも波長の割り振りの変更(波長切替)が行なわれることによるパケットの損失は避け得ない事を前提として、その影響を最小化する事を目的としている。
【0006】
しかし、通信中のパケットの損失が許されないサービスも存在する。その様な場合に備えて、特許文献2に記載されている手法が提案されている。
【0007】
特許文献2に記載されている手法は、波長切替を行う間、OLT(Optical Line Terminal)内部に配置した切替キューに、切替中のONU宛の信号を蓄積し、切替完了後に切替キューからONU宛の信号を読み出す事で、パケットの損失が生じる事を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-254256号公報
【文献】特開2014-143502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以下に、従来の手法を用いた場合の課題と、その課題に対する解決策、更に解決策を講じたときでも生じ得る新たな課題を説明する。
【0010】
特許文献2の記載技術のように、切替キューを用いる方法は、パケットの損失は防げるが、遅延の制約条件が厳しいサービス(すなわち、遅延の影響が大きいサービス)には使えない可能性がある。
【0011】
この課題に対して次のよう解決策がある。例えば、サービスの要求条件を満たすために必要なPON区間での許容遅延時間を求める。そして、「(デバイスの波長切替時間)+(波長切替制御時間(ONU-OLT間のネゴシエーション含む))+(伝搬遅延時間)≦(許容遅延時間)」を満たすか否かを判定し、これを満たせないサービスを含むONUについては、波長資源の有効活用及び省電力化のための波長切替を行なわないということで解決することができる。
【0012】
さらに、上述した解決策を用いた場合、システムを省電力化して運用するには、波長を割り当てる際に注意が必要となる。これを図11に示す例を用いて説明する。
【0013】
図11(A1)、図11(A2)、図11(B1)、図11(B2)の例では、λ1~λ3の3波長のそれぞれに、8個のサービスが割り当てられているものとする。「Sx(xは数字)」はサービス番号を示している。「可」は、波長変更が許される遅延の影響が小さいサービスを示し、「不可」は、波長変更が許されない遅延の影響が大きなサービス(低遅延サービス)を示す。各図において、縦軸は時間の流れを示し、横軸は、各波長の帯域(bit/s)の大きさを示す。
【0014】
例えば、サービスS6は波長λ3に割り当てられており、時刻t0から時刻t2を少し超えた時刻まで運用されており、トラヒックが多い時間帯(図11(A1)参照)に、1波長の30%程度の帯域を使用していることを示す。また図には示していないが、各ONUは単数又は複数のサービスを享受しており、1波長でのみ通信できる。そのため、サービスS6に参加しているONUの加入者は、サービスS5とサービスS7も同時に享受できるが、他のサービスは使用できない。
【0015】
図11(A2)は、図11(A1)の状態から、利用者が減ってトラヒックも減少した時間帯(例えば深夜等)になったので、省電力運用のために、波長(ch)割当を変更した場合を示している。
【0016】
このとき、各サービスをなるべく少ない波長に集め、空になった波長、すなわちOLTにおける波長λ3を運用する機能を停止する事で、OLTは省電力な運用が可能となる。しかし、サービスS3は低遅延サービスなので、波長変更ができない。つまり、波長λ1に移動可能な空き帯域があるにも関わらず、サービスS3を波長λ1に変更させることができず、波長λ1とλ2との2波長で運用する。
【0017】
一方で、最初の資源割当時に、図11(B1)の例のように、波長λ1に低遅延サービス(サービスS1、サービスS3、サービスS8)を割り当てたとする。この例の場合、トラヒックが少ない時間帯に、図11(B2)のように波長(ch)割当を変更すれば、全てのサービスを波長λ1に変更することができる。従って、OLTでは、波長λ2とλ3の機能を停止し、波長λ1の機能だけを運用することになるので、OLTは、より少ない電力で運用できる。
【0018】
上述したように、図11(B1)の波長(ch)割当は、省電力化の観点からは優れているように見える。しかし、このような割当方法は、次のような課題が生じ得る。すなわち、帯域の要求が拡大したとき、及び又は、サービスの時間を延長するときに融通が利きにくいという課題がある。
【0019】
例えば、図11(A1)の状態で、サービスS3に加入したいONUが急増して、サービスS3の帯域を2倍に拡大する要求があったとする。その場合、サービスS4を波長λ1に移動させることで対処可能である。他方、図11(B1)の状態で、サービスS3の帯域を2倍に拡大する場合、他のサービス(サービスS1、S8)も波長変更できず、特にサービスS1の帯域に阻まれて、サービスS3の帯域拡大の要求は受けられないという課題がある。
【0020】
また例えば、サービスS3の運用終了時刻を伸ばしたいという要求があった場合、図11(A1)の状態であれば、サービスS3の時間を伸ばすことは可能である。しかし、図11(B1)の状態であれば、時刻t3以降は、帯域の多くがサービスS8に割り当てられており、かつ、サービスS8を別波長に変更できないので、サービスS3の時間を伸ばせないという課題もある。
【0021】
そのため、サービスの帯域拡大要求、及び又は、サービス期間延長要求があったときでも柔軟に波長変更が可能な資源割当を行なうことができる通信装置、通信方法及び光通信システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、複数の子局との間で、複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムの親局としての通信装置において、複数のサービスのそれぞれを、第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる資源割当手段と、第1~第Kの波長のいずれかで光通信するK個の光終端手段とを備え、資源割当手段が、他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす前記第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と将来必要とされる可能性がある許容量の値とを加えた許容資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす第1~第Kの波長のいずれかに割り当てることを特徴とする。
【0023】
第2の本発明は、複数の子局との間で、複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムの親局としての通信方法において、複数のサービスのそれぞれを、第1~第Kの波長のいずれかに割り当てる資源割当手段が、他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスに要求された要求資源量の値と将来必要とされる可能性がある許容量の値とを加えた許容資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす第1~第Kの波長のいずれかに割り当てることを特徴とする。
【0024】
第3の本発明は、親局と、複数の子局との間で、前記複数の子局のそれぞれが収容する加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかに割り当て、波長毎に複数の時間スロットで時分割多重し、時分割多重した各波長を多重化した光信号を通信する光通信システムにおいて、親局としての通信装置が、第1の本発明の通信装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、サービスの帯域拡大要求、及び又は、サービス期間延長要求があったときでも柔軟に波長変更が可能な資源割当を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る光通信システムの構成と、OLT及び各ONUの内部構成とを示す構成図である。
図2】実施形態に係る波長(ch)割当部の内部構成を示す内部構成図である。
図3】実施形態に係る波長(ch)割当部による資源割当処理の動作を示すフローチャートである。
図4】実施形態の資源割当方法を用いたときの各サービスの帯域値の大きさを説明する説明図である。
図5】実施形態の資源割当方法を説明する説明図である。
図6】実施形態に係る波長(ch)割当部による、スケジュールも含めた資源割当処理の動作を示すフローチャートである。
図7】実施形態のスケジュールも含めた資源割当方法を説明する説明図である。
図8】変形例における波長(ch)割当部による資源割当処理の動作を示すフローチャートである(その1)。
図9】変形例の資源割当方法を説明する説明図である。
図10】変形例における波長(ch)割当部による資源割当処理の動作を示すフローチャートである(その2)。
図11】従来のサービスの資源割当を説明する説明図である。
図12】変形例の資源割当方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(A)主たる実施形態
以下、本発明に係る通信装置の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
(A-1)実施形態の構成
図1は、実施形態に係る光通信システムの構成と、OLT(親局通信装置)及び各ONU(子局通信装置)の内部構成とを示す構成図である。
【0029】
光通信システム5は、大別して、1台のOLT1と、M(Mは2以上の整数;図1ではM=4)台のONU3(3-1~3-4)と、スプリッタ2とを有する。OLT1と各ONU3とは光ファイバで接続されている。
【0030】
OLT1と各ONU3との間の光通信方式は、第1~第K(Kは2以上の整数)の波長のいずれかを割り当て、波長毎に複数の時間スロット(タイムスロット)で時分割多重化し、時分割多重化した各波長を多重化した光信号で通信する時間波長分割多重化方式(TWDM-PON)を採用する。
【0031】
この実施形態では、OLT1が、第1~第Kの波長のうちいずれかの波長を、各ONU3が接続する波長として割り当てる場合を例示する。各波長には、所定のタイムスロットが規定されている。使用する波長数及びONU3の台数は、実施形態に限定されない。
【0032】
OLT1は、コア網側と接続するコア側網IFと、スプリッタ2経由で各ONU3と接続する加入者側網IFとの2個の通信網インターフェースを有する。ONU3は、スプリッタ2経由でOLT1と接続するコア側網IFと、加入者網と接続する加入者側網IFの2個の通信網インターフェースを有する。
【0033】
OLT1は、下り信号(OLT1からONU3に向けた信号)を、全ONU3に放送的に送信する。OLT1が使用する各波長には、1又は複数のONU3宛の信号が含まれている。したがって、ONU3は、受信した1つの波長の中から、自局宛のPLOAM等の制御信号、加入者向けのユーザデータを抽出する。
【0034】
ONU3は、加入者向けのユーザデータについては、加入者端末に転送する。ONU3は、上り信号(ONU3からOLT1に向けた信号)を、OLT1から指示された波長で、OLT1から指示されたタイミングで送信する。したがって、他のONU3が送信する上り信号との衝突を防ぐことができる。
【0035】
(A-1-1)OLT1の詳細な構成
OLT1は、共通制御部11、振分SW12、波長毎のOSU(Optical Subscriber Unit)13(13-1及び13-2)、合分波部14を有する。
【0036】
[共通制御部11]
共通制御部11は、例えば障害管理、構成管理、加入者・課金管理、性能管理、セキュリティ管理など光通信システム5における光通信処理を管理し、各ONU3との間の光通信を制御する。
【0037】
共通制御部11は、各ONU3が使用する波長をOSU13に指示する。また、共通制御部11は、OSU13のそれぞれにどのONU3を収容させるかを各OSU13に設定する。また、共通制御部11は、ONU3宛のサービスに係る情報が適切なOSU13に届くようにするため、振分SW12に対して各ONU3宛のサービスの情報が、同ONU3が使用する波長のOSU13に送られるように設定する。
【0038】
共通制御部11は、各ONU3が享受するサービスを、どの波長で提供するかを規定する波長(ch)割当部110を有する。
【0039】
なお、光通信システム5としてのPONは、波長多重でなく、符号多重を採用してもよい。PONが符号多重を採用する場合、波長ではなく、符号チャネル(ch)に読み替えればよい。
【0040】
波長(ch)割当部110の詳細な説明は、動作の項で行なうが、波長(ch)割当部110は、サービス毎に必要な帯域を満たすように各波長の資源をサービスに割当てる。波長(ch)割当部110がサービス毎に割り当てた割当結果に基づいて、共通制御部11は、サービスに使用するOSU13に情報が届くように振分SW12からの情報の出力方路と、各ONU13の波長を設定する。
【0041】
ここで、サービスとは、光通信システム5を利用して、加入者端末に提供される通信サービスである。例えば、サービスは、動画やWEBといった一般的なアプリケーションでも良いし、ネットワークスライスの様な通信サービスでも良い。一般的に、通信サービスには、要求帯域等が規定されている。この実施形態では、各通信サービスの要求帯域等に関する情報が、OLT1に保持又は通知されているものとする。
【0042】
図2は、実施形態に係る波長(ch)割当部110の内部構成を示す内部構成図である。
【0043】
図2に示すように、波長(ch)割当部110は、波長(ch)・サービス情報保持部111と、波長(ch)割当計算部112を有する。また波長(ch)割当計算部112は、サービス割当使用帯域指定部113を有する。
【0044】
波長(ch)・サービス情報保持部111は、必須情報として、波長(ch)別帯域情報、サービス別帯域情報、サービス別波長(ch)変更可否情報、サービス別帯域マージン情報を保持する。また、波長(ch)・サービス情報保持部111は、オプション情報として、サービス別割当期間情報、サービス別割当期間マージン情報、資源共有可否情報、資源共有時最大提供帯域情報を保持する。なお、必須情報及びオプション情報は、上述した情報に限らず、他の情報を保持するようにしてもよい。
【0045】
波長(ch)割当計算部112は、波長(ch)・サービス情報保持部111に保持されている情報を用いて、どの波長(ch)に、サービスを割り当てるかを計算するものである。
【0046】
サービス割当使用帯域指定部113は、波長(ch)計算を行なう際、波長(ch)にサービスを割り当てる際に、サービスの帯域の値を、どの値にするか決めるものである。
【0047】
また、近年、PONの仮想化技術が進み、この波長(ch)割当部110及び共通制御部11のそれぞれの機能が、OLT1の物理的な装置の外部に分散配置される場合がある。この様に分散配置されて、物理的に別の装置に実装される場合も、論理的には同じシステムの一部と読み替えて実装可能である。
【0048】
[振分SW]
振分SW12は、コア網と接続しており、コア網とOSU13との間のパケットの送受信を中継するスイッチである。
【0049】
振分SW12は、コア網から加入者向けのユーザデータのパケットを受信すると、パケットに含まれているデータを解析する。振分SW12は、パケットがONU3宛のユーザデータであるとき、共通制御部11から通知されたONU3の収容先に関する情報に基づいて、当該ONU3を収容しているOSU13に対して、当該パケットを転送する。また、振分SW12は、OSU13-1又はOSU13-2から受け取ったユーザデータを含むパケットを受け取ると、そのパケットをコア網に送信する。
【0050】
[OSU]
OSU13(13-1及び13-2)は、各ONU3との間で授受する光信号を終端する光終端部である。例えば、OSU13-1は波長λ1を送受信し、OSU13-2は波長λ2を送受信し、複数のONU3のそれぞれは、OSU13-1とOSU13-2のいずれかと通信する。
【0051】
OSU13は、共通制御部11からの指示に従って、1又は複数のONU3を収容する。OSU13は、共通制御部11から、各ONU3の上り信号の送信帯域に関する情報を受け取り、その情報に基づいて、ONU3の上り方向の帯域に応じたタイムスロットを割り当てる。この割当に関して共通制御部11から指示されるONU3の送信帯域は、各ONU3個別の帯域の場合もあれば、複数台のONU3で共有するサービス別の帯域が指示され、ONU3から通知される上りの要求に応じてDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)機能で適切に割り振る場合もある。また、OSU13は、各ONU3の送信可能時間(送信を許容する時刻情報)を共通制御部11に通知するとともに、各ONU3に割り当てたタイムスロットの割当情報を管理する。
【0052】
また、OSU13は、OSU制御部131、固定波長送受信部132を有する。
【0053】
OSU制御部131は、OSU13の動作を制御する。PONでは、複数のONU3が共通の線路を用いるため、上り信号が衝突しないように、OSU13は、各ONU3が送信すべき時刻を、各ONU3に指示する。その際、OSU制御部131は、共通制御部11の波長(ch)割当部110から取得した資源割当の割当情報に基づいて、時間表に相当するBwMAPを作成する。
【0054】
固定波長送受信部132は、コア網からのユーザデータ又は共通制御部11からの制御データをペイロードに含め(なお、制御データはヘッダ部に挿入される場合もある。)、OSU制御部131からのBwMapをフレームヘッダを付与してフレームを作成する。そして、固定波長送受信部132はフレームを光信号に変換して合分波部14に与える。
【0055】
また、固定波長送受信部132は、合分波部14から受信した光信号を電気信号に変換して、フレームデータを抽出し、共通制御部11に与えるべきデータを共通制御部11に与える。
【0056】
[合分波部]
合分波部14は、OSU13(13-1及び13-2)から送信された光信号(「信号光」とも呼ぶ。)を波長多重して、波長多重化した光信号を送出する。これにより、波長多重化された光信号がスプリッタ2を介して各ONU3に送信される。また、合分波部14は、スプリッタ2を介して、光信号を受光すると、光信号を分波し、分波した光信号をOSU13-1及びOSU13-2に与える。
【0057】
(A-1-2)ONUの詳細な構成
ONU3(3-1~3-4)は、ONU制御部31、合分波部32、波長可変光送信部33、波長可変光受信部34、フレーム組立・分解部35を有する。
【0058】
ONU制御部31は、フレーム組立・分解部35により分解されたフレームを解析して、波長可変光送信部33及び波長可変光受信部34の動作を制御する。
【0059】
1芯方式の場合、1本の光ファイバを上り下りの送受信の両方で用いるのでその上り下りの信号の合分波を行う機能が合分波部32であり、スプリッタ2を介して受信した下りの光信号を波長可変光受信部34に与えるとともに、波長可変光送信部33からの光信号をスプリッタ2に送信する。
【0060】
波長可変光受信部34は、ONU制御部31から指定された波長の信号を電気信号に変換し、フレーム組立・分解部35に与える。
【0061】
波長可変光送信部33は、フレーム組立・分解部35から送信すべきフレームを、ONU制御部31から指定された波長の光信号に変換して、合分波部32に送信する。波長可変光送信部33は、OSU13から受信したBwMapで指示された時刻に、上りフレームを送信する。
【0062】
フレーム組立・分解部35は、クロック信号に基づいて、送信すべきフレームを組み立てたり、受信したフレームを分解する。フレーム組立・分解部35は、加入者側網から受信した上り信号をペイロードに挿入して上りフレームを組み立てる。
【0063】
(A-2)実施形態の動作
(A-2-1)全体動作
光通信システム5としてのPONでは、複数のONU3が共通の線路を用いる為、上り信号が衝突しない様に、各ONU3の送信すべき時刻を、OSU13が各ONU3に指示する。その際、OSU制御部131がBwMapを作成する。
【0064】
コア網側からONU3に送信される加入者宛情報は、振分SW12から、宛先ONUが送受信する波長のOSU13に送られる。固定波長送受信部132は、フレームのペイロード部に加入者宛情報のデータを付与し、フレームのヘッダ部にBwMapを付与する。OSU13から加入者宛てに送信されたフレームは、合分波部14で合波され、スプリッタ2に送信される。
【0065】
スプリッタ2では、信号が全ONU3に放送的に分配される。ONU3にコア網から入力された光信号は、合分波部32で分波され、波長可変光受信部34に送られる。波長可変光受信部34は、指定された光波長の信号を受信して電気信号に変換し、フレーム組立・分解部35に、クロック信号とともに送られる。フレーム組立・分解部35は、BwMap等の制御信号をONU制御部31に、本ONU宛の加入者宛情報だけをONU3の加入者側網IFへ送る。同じ波長の別ONU宛の情報はここで廃棄される。
【0066】
他方、加入者からの上り信号は、ONU3のフレーム組立・分解部35に送られ、ONU制御部31で作られる制御信号と共に、上りフレームに搭載される。上りのフレームは、BwMapで指示された時刻に波長可変光送信部33から送信される。
【0067】
上り信号は、合分波部14により、送信波長毎に割り当られたOSU13に送られる。OSU13の固定波長送受信部132により上り信号が受信されると、固定波長送受信部132により抽出された制御情報は、OSU制御部131及び共通制御部11に送られる。上り信号に含まれる加入者が送信した情報は、コア網側網IFからコア網に送信される。
【0068】
(A-2-2)波長(ch)割当処理
以下に、波長(ch)割当部110による、サービスへの波長(ch)割当処理の動作を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0069】
まず、オペレータにより、サービスをどの波長(ch)に割り当てるかの割当計算を行なうための基本的な情報が、波長(ch)・サービス情報保持部111に入力される。
【0070】
波長(ch)の割当計算に必須な情報は、各波長(ch)がどれだけの帯域を有しているかを示す波長(ch)別帯域情報、各サービスがそのサービスを当面の加入者に提供するのに必要な帯域であるサービス別帯域情報、そのサービスの波長(ch)を別波長(ch)に変更してよいか否かを示すサービス別波長(ch)変更可否情報、このサービスの帯域が例えば加入者の増加により、将来どの程度拡大するかを見込んだサービス別帯域マージン情報を有する。
【0071】
なお、サービス別波長(ch)変更可否情報は、既存技術を適用することができ、例えば、サービスの要求条件を満たすために必要なPON区間での許容遅延時間を求める。そして、「(デバイスの波長切替時間)+(波長切替制御時間(ONU-OLT間のネゴシエーション含む))+(伝搬遅延時間)≦(許容遅延時間)」を満たすか否かを判定して「可」又は「不可」を設定したものとする。
【0072】
また、波長(ch)の割当計算のオプションの情報は、サービス別割当期間情報、サービス別の割当期間がどの程度まで延長される可能性があるかを示すサービス別割当期間マージン情報、例えば深夜等のあまり使用されてない時間にサービスを使用するとき、他のサービスに帯域使用を許可するか否かを示す資源共有可否情報、資源共有可否情報で他のサービスへの帯域使用を許可する場合、最大でどれだけ他のサービスに帯域を貸し与えるかを示す資源共有時最大提供帯域を有する。
【0073】
図3は、実施形態に係る波長(ch)割当部110による波長(ch)割当処理の動作を示すフローチャートである。
【0074】
波長(ch)割当計算部112は、波長を割り当てていない未割当サービスのうち、帯域の値が最大のサービスを読み出す(ステップS101)。
【0075】
ここで、波長(ch)割当計算部112は、当該サービスに要求されている要求帯域の値(例えば、サービス別帯域情報の値)と、将来必要になる可能性がある帯域マージンの値(例えば、サービス別帯域マージン情報の値)とを加えた値を、当該サービスの帯域の値とする。そして、波長(ch)割当計算部112は、サービス毎の帯域の値を比較して、その帯域値が最も大きいサービスを選択する。
【0076】
なお、通信資源には様々な要素があり、例えば、通信資源が通信帯域である場合、波長の帯域の値を「資源量の値」、当該サービスに要求されている要求帯域の値を「要求資源量の値」、将来必要になる可能性がある帯域マージンの値を「許容量の値」、要求帯域の値とマージンの値とを加算した値を「許容資源量の値」とも呼ぶ。
【0077】
次に、波長(ch)割当計算部112は、複数の波長(ch)の中から、波長番号が最小の波長(ch)を選択する(ステップS102)。
【0078】
この実施形態では、未割当サービスがあるときには、波長番号が小さいものから順に割当可能か否かを判断するため、ステップS102に例示するように、波長番号が小さいものを選択するようにしている。
【0079】
波長(ch)割当計算部112は、選択した波長(ch)に割り当て可能な帯域の値を導出する(ステップS103)。
【0080】
例えば、サービスが割り当てられていない波長(ch)については、波長(ch)別帯域情報に基づいて、当該波長(ch)の割り当て可能な帯域の値を求めることができる。また例えば、当該波長(ch)に他のサービスが割り当てられている場合には、当該波長(ch)の波長(ch)別帯域情報の値から、既に割り当てられている他のサービスのサービス別帯域情報の値を減算して、当該波長(ch)の割り当て可能な帯域の値(すなわち、残りの帯域)(帯域A)を求めることができる。
【0081】
ここで(帯域A)は2つの場合に分けられる。第1の場合は、その波長における「資源量」から、割り当て済みの全サービスの「要求資源量」を合計して減算した(残帯域A1)を用いる場合である。第2の場合は、(残帯域A1)と、その波長の「資源量」から波長変更不可のサービスの「許容資源量」の合計を減じた値とを比較し、小さい方を(残帯域A2)として用いる場合である。第1の場合すなわち残帯域A1は波長変更可能なサービスの割当時に、第2の場合すなわち残帯域A2は、波長変更不可のサービスの割当時に用いる。
【0082】
次に、波長(ch)割当計算部112では、サービス割当使用帯域指定部113が、当該サービスのサービス別波長(ch)変更可否情報に基づいて、当該サービスが波長(ch)変更可能か否かを判断する(ステップS104)。
【0083】
そして、当該サービスが波長(ch)変更可能であるとき(ステップS104/Yes)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値とする(ステップS105)。
【0084】
他方、当該サービスが波長(ch)変更可能でないとき(ステップS104/No)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値と、サービス別帯域マージン情報の値とを加算した値とする(ステップS106)。
【0085】
そして、当該波長(ch)に当該サービスを割り当て可能であるかを判断するために、波長(ch)割当計算部112は、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値と、波長(ch)の割当可能な残りの帯域(帯域A)の値とを比較する(ステップS107)。ここで用いる(帯域A)は、当該サービスが波長変更可能な場合は(残帯域A1)を、当該サービスが波長変更不可の場合は(残帯域A2)を用いる。
【0086】
波長(ch)の割当可能な残りの帯域の値が、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値よりも大きい場合(ステップS107/Yes)、当該波長(ch)に当該サービスを割り当てることが可能なので、波長(ch)割当計算部112は当該サービスを当該波長(ch)に割り当てる(ステップS108)。
【0087】
そして、他に未割当のサービスがあれば(ステップS109/Yes)、ステップS101に移行して、他の未割当サービスについて処理を繰り返し行なう。他に未割当のサービスがなければ(ステップS109/No)、全てのサービスについて波長(CH)割当が成功したと判断し(ステップS110)、処理を終了する。
【0088】
ステップS107で、波長(ch)の割当可能な残りの帯域の値が、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値以下の場合(ステップS107/No)、当該波長(ch)に当該サービスを割り当てることが不可能なので、波長(ch)割当計算部112は、別の波長(ch)を選択するため、次に波長番号の小さい波長(ch)が存在するか否かを確認する(ステップS111)。
【0089】
そして、次に波長番号の小さい波長(ch)があれば(ステップS111/Yes)、ステップS103に移行して、処理を繰り返す。他方、次に波長番号が小さい波長(ch)がなければ、すなわち全ての波長で波長(ch)割当ができなければ(ステップS111/No)、波長(ch)割当は失敗したと判断し(ステップS112)、処理を終了する。
【0090】
上述したように、割当対象とするサービスが、低遅延サービス等のように遅延に大きな影響を及ぼすものであり、他の波長(ch)への変更ができないものである場合、「サービス別帯域情報の値とサービス別帯域マージン情報の値(以下、単に「マージン」とも呼ぶ。)とを加算した値」を、当該サービスの帯域の値とする。これにより、マージンを考慮した帯域で資源割当をしているので、将来、当該サービスの帯域要求が拡大されたときでも、波長(ch)変更をせずに、拡大要求後の帯域でサービスを提供することができる。
【0091】
他方、割当対象とするサービスが、他の波長(ch)への変更が可能である場合には、サービス別帯域情報の値を、当該サービスの帯域の値とする。これにより、遅延を許可できるサービスについては、波長(ch)の残帯域に応じて、割り当て可能な波長(ch)に変更(移動)して割り当てることができる。
【0092】
実施形態によるサービスの波長(ch)割当の方法を、図4及び図5を用いて説明する。
【0093】
図4(A)及び図4(B)において、サービスを識別するため、例えば「sX(Xは数字)」はXの識別番号を持つサービスXであることを示している。「可」は、波長(ch)変更が可能であることを示しており、「不可」は、波長(ch)変更ができないことを示している。また、「塗りつぶした四角」の横幅(横の長さ)は、当該サービスの要求帯域を示し、その縦の長さは、当該サービスの割当期間を示している。「塗りつぶしていない四角」の横幅(横の長さ)は、当該サービスのサービス別帯域のマージンを示し、その縦の長さは、当該サービスのサービス別割当期間のマージンを示している。
【0094】
図4(A)に例示するように、各サービスの要求帯域の値が大きい順にサービスを並べると、「S1」>「S2」>「S3」>「S4」>「S5」となる。
【0095】
他方、実施形態のように、波長(ch)変更不可のサービスについては、要求帯域の値にマージンを加算した値を帯域の値とし、波長(ch)変更可のサービスについては、要求帯域の値を帯域の値として、帯域の値の大きい順にサービスを並べると、図4(B)のように、「S4」>「S1」>「S5」>「S2」>「S3」となる。このように、図4(A)と比較して、波長に割り当てるサービスの帯域値の大きさが異なる。更に、以下のように、波長に割り当てるサービスの順番も異なる。
【0096】
図5は、図3に例示するフローに従って、「S1」~「S6」の各サービスを、波長1~波長3のいずれかの波長(ch)に割り当てる処理を示している。
【0097】
まず、「S4」の帯域の値が最も大きいので「S4」が選択される。このとき、「S4」は波長(ch)変更不可なので、「S4」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で判断される。波長番号の小さい波長λ1の残帯域の値と、「S4」の帯域の値とが比較されると、波長λ1の残帯域の値が「S4」の帯域の値より大きいので、波長λ1に「S4」を割り当て可能であるので、波長λ1に「S4」が割り当てられる。
【0098】
次に帯域の値が大きい「S1」が選択される。「S1」は波長(ch)変更可なので、ここで使用する「S1」の帯域の値は、要求帯域の値であり、割り当て可能な残帯域はA1が用いられる。波長λ1に割り当て可能な残帯域、「S1」の帯域の値とが比較されると、波長λ1の残帯域の方が大きいため、波長λ1に「S1」を割り当てる。
【0099】
次に帯域の大きい「S5」が選択される。「S5」は波長(ch)変更不可なので、「S5」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で、波長の残帯域は(残帯域A2)で判断される。この時点で波長λ1にはサービスS4とS1が割当済で、残帯域は、図5のR1とR2を比較して小さい方であるR2が(残帯域A2)として比較される。残帯域(A2)の値は「S5」の帯域の値より小さく、「S5」の帯域を割り当てられないので、波長λ2が選択される。そして、波長λ2の残帯域(帯域A2)の値と、「S5」の帯域の値とが比較されて、波長λ2の残帯域の値が「S5」の帯域の値より大きいので、波長λ3に「S5」が割り当てられる。
【0100】
次に帯域の大きい「S2」が選択される。「S2」は波長(ch)変更可なので、「S2」の帯域の値は、要求帯域の値であり、波長の残帯域は(帯域A1)が用いられる。波長番号の小さい波長λ1の残帯域の値と、「S2」の帯域の値とが比較され、波長λ1の残帯域の値が「S2」の帯域の値より大きいので、波長λ1に「S2」が割り当てられる。
【0101】
つぎに「S3」が選択される。「S3」は波長(ch)変更可なので、「S3」の帯域の値は、要求帯域の値であり、波長の残帯域は(帯域A1)が用いられる。波長λ1に割り当て可能な残帯域がわずかなので、その次に波長番号が小さい波長λ2が選択される。波長λ2の残帯域の値が「S3」の帯域の値より大きいので、波長λ2に「S3」が割り当てられる。「S6」についても「S3」と同じ割当が行われる。
【0102】
「S6」の波長(ch)割当後、未割当のサービスがないので割当成功となり、処理は終了する。なお、仮に、未割当サービスが残ったまま、波長の選択ができないときには割当失敗となり、処理は終了する。
【0103】
(A-2-3)サービス割当時間も含めた資源割当処理
次に、サービスの割当時間のスケジュールも含めた資源割当処理を、図6及び図7を用いて説明する。
【0104】
図6は、実施形態に係る波長(ch)割当部110による資源割当処理の動作を示すフローチャートである。
【0105】
波長(ch)割当計算部112は、波長を割り当てていない未割当サービスのうち、帯域の値が大きいものからサービスを読み出す(ステップS201)。
【0106】
ここでも、図3の場合と同様に、波長(ch)割当計算部112は、サービスの要求帯域値とマージン値を加算した値を用いて、帯域の大きさを判断する。
【0107】
次に、波長(ch)割当計算部112は、複数の波長(ch)の中から、波長番号が最小の波長(ch)を選択する(ステップS202)。
【0108】
波長(ch)割当計算部112は、選択した波長(ch)の割り当て可能な帯域の値と、割り当て可能な時間(割当開始時刻から終了時刻までの時間)とを導出する(ステップS203)。
【0109】
次に、波長(ch)割当計算部112では、サービス割当使用帯域指定部113が、当該サービスのサービス別波長(ch)変更可否情報に基づいて、当該サービスが波長(ch)変更可能か否かを判断する(ステップS204)。
【0110】
そして、当該サービスが波長(ch)変更可能であるとき(ステップS204/Yes)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値とし、当該サービスの割当時間を、サービス別割当期間情報の値とする(ステップS205)。
【0111】
他方、当該サービスが波長(ch)変更可能でないとき(ステップS204/No)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値と、サービス別帯域マージン情報の値とを加算した値とし、当該サービスの割当時間を、サービス別割当期間の値とサービス別割当期間マージン情報の値とを加算した値とする(ステップS206)。
【0112】
そして、当該波長(ch)に当該サービスを割り当て可能であるかを判断するために、波長(ch)割当計算部112は、波長(ch)に、未割当サービスの割当期間の空きがあり、かつ、波長(ch)の残りの帯域の値が未割当サービスの帯域の値よりも大きいか否かが判断される(ステップS207)。
【0113】
波長(ch)に、未割当サービスの割当期間の空きがあり、かつ、波長(ch)の残りの帯域の値が未割当サービスの帯域の値よりも大きい場合(ステップS207/Yes)、波長(ch)割当計算部112は当該サービスを当該波長(ch)に割り当てる(ステップS209)。
【0114】
その後、他に未割当のサービスがあれば(ステップS210/Yes)、ステップS201に移行して、他の未割当サービスについて処理を繰り返し行なう。他に未割当のサービスがなければ(ステップS210/No)、全てのサービスについて波長(ch)割当が成功したと判断し(ステップS211)、処理を終了する。
【0115】
ステップS207で、波長(ch)に、未割当サービスの割当期間の空きがない、又は、波長(ch)の残りの帯域の値が未割当サービスの帯域の値以下の場合(ステップS207/No)、ステップS212に移行する。
【0116】
ステップS212では、当該波長(ch)に当該サービスを割り当てることが不可能なので、波長(ch)割当計算部112は、別の波長(ch)を選択するため、次に波長番号の小さい波長(ch)が存在するか否かを確認する(ステップS212)。
【0117】
そして、次に波長番号の小さい波長(ch)があれば(ステップS212/Yes)、ステップS203に移行して、処理を繰り返す。他方、次に波長番号が小さい波長(ch)がなければ(ステップS212/No)、波長(ch)割当は失敗したと判断し(ステップS213)、処理を終了する。なお、(3-2-3)においても、残り帯域の値は、(A-2-2)で述べた(帯域A1)および(帯域A2)を求め、割当てるサービス波長変更が可能なサービスは(帯域A1)を、波長変更不可のサービスの場合は(帯域A2)を用いる。
【0118】
図7は、図6に例示するフローに従って、「S1」~「S6」の各サービスを、波長1~波長3のいずれかの波長(ch)に割り当てる処理を示している。S1~S3は波長変更不可のサービス、S4~S6は波長変更可能なサービスである。S1~S6は各々T2,T0,T1,T3,T0,T4の時刻からサービスが開始されるものとする。また、S4~S5は時間の延長が生じる可能性あるサービス,それ以外は時間の延長が生じる可能性のないサービスを示している。
【0119】
まず、「S4」の帯域の値が最も大きいので「S4」が選択される。このとき、「S4」は波長(ch)変更不可なので、「S4」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で判断され、「S4」の割当時間は、スケジューリングされた割当時間に、将来延長される可能性があるマージン時間を加算した値で判断される。また、波長番号が最も小さい波長λ1が選択される。波長λ1では、「S4」の割当時間に割り当て可能であり、かつ、波長λ1の残帯域の値が「S4」の帯域の値より大きい。従って、この場合、波長λ1に「S4」を割り当て可能なので、波長λ1に「S4」が割り当てられる。
【0120】
次に帯域の値が大きい「S1」が選択される。「S1」は波長(ch)変更可なので、「S1」の帯域の値は要求帯域の値で判断され、「S1」の割当時間はスケジューリングされた割当時間で判断される。波長番号が最も小さい波長λ1において、「S1」の割当時間が「S4」のマージンの時間と一部重複するが「S1」は波長変更可能なので、後に「S1」の帯域が伸びても別の波長に移動できるので、、波長λ1に「S1」を割り当てる。
【0121】
次に帯域の大きい波長(ch)変更不可の「S5」が選択される。「S5」は波長(ch)変更不可なので、「S5」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で判断され、「S5」の割当時間は、スケジューリングされた割当時間に、将来延長される可能性があるマージン時間を加算した値で判断される。波長番号が最も小さい波長λ1では、「S5」の割当時間が「S4」の時間と一部重複するため、波長λ1に「S5」を割り当てることができない。したがって、その次に波長番号が小さい波長λ2が選択される。波長λ2では、「S5」の割当時間が空であり、かつ、波長λ2の残帯域の値が「S5」の帯域の値より大きいので、波長λ2に「S5」が割り当てられる。
【0122】
次に帯域の値が大きい「S2」が選択される。「S2」は波長(ch)変更可なので、「S1」と「S4」の帯域の値は要求帯域の値で判断され、「S1」と「S4」の割当時間はスケジューリングされた割当時間で判断され、「S2」の割当時間はスケジューリングされた割当時間で判断される。波長番号が最も小さい波長λ1で、「S2」の割当時間に割り当て可能であり、かつ、波長λ1の残帯域の値が「S2」の帯域の値より大きい。従って、この場合、波長λ1に「S2」を割り当て可能なので、波長λ1に「S2」が割り当てられる。次に帯域の大きい「S3」が選択される。「S3」は波長(ch)変更可なので、「S3」の帯域の値は、要求帯域の値である。波長番号が最も小さい波長λ1では、「S3」の割当時間は、S1,S2,S4が存在し、かつ、波長λ1の残帯域の値が「S3」の帯域の値より小さい。従って、この場合、波長λ1に「S3」を割り当て不可能なので、次に波長番号の小さな波長λ2で割当可能か調べる。波長λ2には「S5」が存在するが、マージンを含まない帯域と時間で比較すれば良く、S4の要求帯域と割当時間以外に「S4」の帯域を必要な時間確保できるため、波長λ2に「S3」が割り当てられる。
【0123】
次に帯域の大きい波長(ch)変更不可の「S6」が選択される。「S6」は波長(ch)変更不可なので、「S6」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で判断され、「S6」の割当時間は、スケジューリングされた割当時間に、将来延長される可能性があるマージン時間を加算した値で判断される。波長番号が最も小さい波長λ1では、「S6」の割当時間が「S4」の時間と一部重複するため、波長λ1に「S6」を割り当てることができない。したがって、その次に波長番号が小さい波長λ2が選択される。波長λ2では、「S6」の割当時間に波長λ2の残帯域の値が「S6」の帯域の値より大きな値を取り得るので、波長λ2に「S6」が割り当てられる。
【0124】
「S6」の波長(ch)割当後、未割当のサービスがないので割当成功となり、処理は終了する。なお、仮に、未割当サービスが残ったまま、波長の選択ができないときには割当失敗となり、処理は終了する。
【0125】
なお、上記の資源割当が成功しても、実際に帯域やサービス期間の追加要求があった場合に、割当が出来ない場合があり得る。これを防ぐには、波長変更不可のサービスは上記割当の波長で、波長変更可能なサービスは波長の変更が許されるが、全サービスで許容資源量いっぱいまで資源を使った場合でも資源割当が可能な組み合わせが存在する事を確認する事で実現できる。
【0126】
(A-2-4)資源割当処理の変形例(その1)
図3図5を用いて説明した波長(ch)割当部110による、サービスへの波長(ch)割当処理の変形例を例示する。
【0127】
図8は、波長(ch)割当部110による資源割当処理の変形例を示すフローチャートである。図8では、図3と同一の処理には同一符号を付している。この変形例の説明では、図3の処理との重複を避けるため、図3の処理との差分を中心に説明する。
【0128】
なお図8及び図9は、サービス及び波長(ch)の帯域の値に基づいて資源割当をする場合を例示するが、スケジューリングされた割当期間も含めて資源割当する場合にも同様に適用できる。
【0129】
まず、波長(ch)割当計算部112は、複数の波長(ch)の中から、波長番号が最小の波長(ch)を選択する(ステップS301)。
【0130】
次に、波長(ch)割当計算部112は、未割当サービスのうち、帯域値の大きいものから順にサービスを読み出す(ステップS302)。
【0131】
波長(ch)割当計算部112では、サービス割当使用帯域指定部113が、当該サービスのサービス別波長(ch)変更可否情報に基づいて、当該サービスが波長(ch)変更可能か否かを判断する(ステップS104)。
【0132】
そして、当該サービスが波長(ch)変更可能であるとき(ステップS104/Yes)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値とする(ステップS105)。
【0133】
他方、当該サービスが波長(ch)変更可能でないとき(ステップS104/No)、サービス割当使用帯域指定部113は、当該サービスの帯域を、サービス別帯域情報の値と、サービス別帯域マージン情報の値とを加算した値とする(ステップS106)。
【0134】
そして、当該波長(ch)に当該サービスを割り当て可能であるかを判断するために、波長(ch)割当計算部112は、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値と、波長(ch)の割当可能な残りの帯域の値とを比較する(ステップS107)。
【0135】
波長(ch)の割当可能な残りの帯域の値が、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値よりも大きい場合(ステップS107/Yes)、当該波長(ch)に当該サービスを割り当てることが可能なので、波長(ch)割当計算部112は当該サービスを当該波長(ch)に割り当てて(ステップS108)、その後ステップS309に移行する。
【0136】
他方、波長(ch)の割当可能な残りの帯域の値が、サービス割当使用帯域指定部113に指定されたサービス帯域の値以下の場合(ステップS107/NO)、サービスの波長(ch)割当を行わずにステップS309に移行する。
【0137】
そして、他に未割当のサービスがあれば(ステップS309/Yes)、ステップS310に移行する。他に未割当のサービスがなければ(ステップS309/No)、全てのサービスについて波長(ch)割当が成功したと判断し(ステップS313)、処理を終了する。
【0138】
ステップS310では、波長(ch)割当計算部112が、現在の波長(ch)の残帯域より小さい帯域の値を持つ未割当サービスを選択可能であるか判断する(ステップS310)。そして、選択可能であれば(ステップS310/Yes)、ステップS104に移行して、繰り返し処理を行なう。他方、選択できない場合(ステップS310/No)、ステップS311に移行する。
【0139】
ステップS311では、波長(ch)割当計算部112が、別の波長(ch)を選択するため、波長番号の小さい順に別の波長(ch)を選択可能か判断する(ステップS311)。
【0140】
別の波長(ch)があれば(ステップS311/Yes)、波長番号の小さいものから順に波長(ch)を選択して、ステップS302に移行して、処理を繰り返す。他方、別の波長(ch)がなければ(ステップS311/No)、波長(ch)割当は失敗したと判断し(ステップS112)、処理を終了する。なお、資源割当処理の変形例(その1)においても、残り帯域の値は、(A-2-2)で述べた(帯域A1)および(帯域A2)を求め、割当てるサービスの波長変更が可能なサービスは(帯域A1)を、波長変更不可のサービスの場合は(帯域A2)を用いる。
【0141】
図9は、図8に例示する処理フローに従って、「S1」~「S6」の各サービスを、波長1~波長3のいずれかの波長(ch)に割り当てる処理を示している。
【0142】
まず、波長番号が最も小さい波長λ1が選択される。次に、帯域値の最も大きい「S4」が選択される。このとき、図3の場合と同様に、「S4」は波長(ch)変更不可なので、「S4」の帯域の値は、要求帯域の値にマージン値が加算された値で判断される。そして、波長λ1の残帯域の値と、「S4」の帯域の値とが比較され、波長λ1の残帯域の値が「S4」の帯域の値より大きいので、波長λ1に「S4」を割り当てられる。
【0143】
次に、未割当サービスが存在し、未割当サービスのうち、当該波長λ1の残り帯域値より小さい帯域値を持つサービスとして「S1」が選択される。「S1」は波長(ch)変更可なので、「S1」の帯域の値は、要求帯域の値である。波長λ1の残帯域の値と、「S1」の帯域の値とが比較され、波長λ1の残帯域の値が「S1」の帯域の値より大きいので、波長λ1に「S1」が割り当てられる。
【0144】
次に、未割当サービスで帯域の大きな「S5」は、波長変更不可なので、当該波長λ1の残帯域はA2が使用され、「S5」の帯域はこれより大きいため、割当ができない。
【0145】
次に、未割当サービスで帯域の大きな「S2」は、波長変更可能なので、当該波長λ1の残帯域はA1が使用され、「S2」の帯域はこれより小さいため波長λ2に割り当てられる。
【0146】
次に、未割当のサービスは他にも存在するが、波長λ1の残りの帯域値よりも小さい帯域値を持つサービスは存在しない。したがって、次に波長番号が小さい波長λ2が選択される。そして、未割当サービスのうち、帯域値が大きい「S5」が選択される。「S5」は波長(ch)変更不可なので、「S1」の帯域の値は、要求帯域とマージンをあわせた「許容資源量の値」である。波長λ2の残帯域A2の値と、「S5」の帯域の値とが比較され、波長λ2の残帯域A2の値が「S5」の帯域の値より大きいので、波長λ2に「S1」が割り当てられる。
【0147】
次に、未割当サービスが存在し、未割当サービスのうち、当該波長λ2の残り帯域値より小さい帯域値を持つサービスとして「S3」が選択される。「S3」は波長(ch)変更可なので、「S3」の帯域の値は、要求帯域の値である。波長λ2の残帯域A1の値と、「S3」の帯域の値とが比較され、波長λ2の残帯域A1の値が「S3」の帯域の値より大きいので、波長λ2に「S3」が割り当てられる。
【0148】
次に、未割当サービスのうち、帯域値が大きい「S6」が選択される。「S6」は波長(ch)変更可能なので、「S5」の帯域の値は、要求帯域の値で判断される。そして、波長λ2の残帯域A1の値と、「S6」の帯域の値とが比較され、波長λ3の残帯域A1が「S6」の帯域の値より大きいので、波長λ2に「S6」を割り当てられる。
【0149】
「S6」の波長(ch)割当後、未割当のサービスがないので割当成功となり、処理は終了する。なお、仮に、未割当サービスが残ったまま、波長の選択ができないときには割当失敗となり、処理は終了する。
【0150】
(A-2-5)資源割当処理の変形例(その2)
図10は、波長(ch)割当部110による資源割当処理の変形例を示すフローチャートである。
【0151】
ここまでの実施例では、主に初期割当を行う場合に特に好適な方法を述べたが、ここでは、割当が行われた後、あるサービスの帯域やサービス区間が増える(マージンを使用する)場合や、減る場合に好適な方法を示す。すなわち、波長変更不可のサービスは波長を変更せず、波長変更可のサービスは変更する場合もあり得る割当方法を示す。この割当は、資源再配置とも呼ばれる。
【0152】
図10では、図3と同一の処理には同一符号を付している。この変形例の説明では、図3の処理との重複を避けるため、図3の処理との差分を中心に説明する。
【0153】
なお図10は、サービス及び波長(ch)の帯域の値に基づいて資源割当をする場合を例示するが、スケジューリングされた割当期間も含めて資源割当する場合にも同様に適用できる。
【0154】
この変形例は、サービス別波長(ch)変更可否情報に基づいて、波長(ch)変更可のサービスを取り除き、波長(ch)変更不可のサービスはそのままの波長で、帯域の増減を行なう。
【0155】
つまり、図10に例示するように、波長(ch)割当計算部112が、不割当サービスのうち、波長(ch)変更不可のサービスから順番に読み出す(ステップS401)。
【0156】
このとき、複数の波長(ch)変更不可のサービスがある場合には、帯域値が大きい順に、波長(ch)変更不可のサービスを読み出す。そして、波長(ch)変更不可のサービスについて、図3と同様に、S102以降の処理を行なって波長(ch)割当を行なう。この段階で、資源割当が出来なければ、割当失敗であるが、増加される帯域や使用期間がマージンの範囲内であれば、割当は成功するはずである。
【0157】
波長(ch)変更不可の全てのサービスについて資源割当が終了した後、波長(ch)変更可のサービスについて、図10の処理に従って、資源割当を行なう。この場合も同様に、帯域値の大きいサービス(波長(ch)変更可のサービス)から順番に選択する。また、波長(ch)についても波長番号が小さいものから順番に選択して割り当てを行なう。
【0158】
未割当のサービスがなくなれば、割当成功。未割当のサービスが残ったまま、割当可能な波長がなくなれば、割当失敗となる。なお、ここでも、残り帯域の値は、(A-2-2)で述べた(残帯域A1)および(残帯域A2)を求め、割当てるサービス波長変更が可能なサービスは(残帯域A1)を、波長変更不可のサービスの場合は(残帯域A2)を用いる。
【0159】
(A-2-6)資源割当処理の変形例(その3)
(a)上述した資源割当処理では、波長(ch)変更不可のサービスの帯域値に関して、要求帯域値(サービス別帯域情報の値)にマージンの値(サービス別帯域マージン情報の値)を加算した値を用いるものとして説明した。
【0160】
しかし、これに限定されず、何割かの固定マージン率を設定し、そのマージン率を乗じて使用してもよい。例えば、サービス別帯域マージン情報として0.5を設定し、要求帯域に0.5を乗算して得た値を、要求帯域値に加算するようにしてもよい。
【0161】
なお、(A-2-6)では、サービスの拡大要求帯域に関するマージン値を例示したが、サービスの割当期間に関するマージン値についても同様に適用できようできる。
【0162】
(b)上述した資源割当処理では、将来の帯域拡大や提供期間の延長に対応する資源割当に適用する方法を述べた。しかし、これに限らず、例えば、要求帯域+マージンおよび要求帯域を、要求帯域および実使用帯域と読み替えて帯域割当を行い、実使用帯域が小さい時は、なるべく少ない波長資源での割当を行い省電力に運用する方法として利用する事もできる。
【0163】
(c)上述では、帯域の拡大や利用期間の延長に対処可能という条件を満たす範囲で可能な限り帯域利用効率を向上させる割当方法について述べた。ここでは、帯域利用効率は上記の例ほど高くないが、波長変更不可のサービスの帯域の増加において、『高速に』帯域を増やせる割当方法を図12を用いて説明する。
【0164】
これまでは、波長変更可能なサービスは、波長変更不可のサービスの許容値(マージン)に割り当てることを許していたが、ここでは図12に示すようにそれを許さない。すなわち、残帯域を、その波長の資源量から、波長可変サービスの場合は要求資源量を、波長変更が不可のサービスの場合は許容帯域量を減じた値を用いる。資源割当の際も、波長可変サービスの場合は要求資源量を、波長変更が不可のサービスの場合は許容帯域量を減じた値を用いて残帯域と比較する。この方法を用いれば、波長変更可能サービスの波長を変更するのは、波長可変サービスの帯域かサービスの提供期間が増えた場合だけで、波長変更不可のサービスの帯域やサービスの提供期間が増えた場合は行われないため、波長切替の回数を減らしたり、波長変更が可能なサービスの帯域を増やすまでの時間を短くできるという効果がある。
【0165】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、将来的に必要な資源(例えば、波長、割当期間等)を増やしたい場合に、それを受け入れ可能な確率が多く、かつ、使用する資源の利用効率の高い波長(ch)資源の割当が可能な通信装置を構築する事ができる。
【0166】
実施形態によれば、サービスの帯域拡大要求、及び又は、サービス期間延長要求があったときでも柔軟に波長変更が可能な資源割当を行なうことができる。
【符号の説明】
【0167】
1…OLT、2…スプリッタ、3(3-1~3-4)…ONU、5…光通信システム、
11…共通制御部、110…波長(ch)割当部、111…サービス情報保持部、112…割当計算部、113…サービス割当使用帯域指定部、
12…振分スイッチ(SW)、13(13-1~13-2)…OSU、131…OSU制御部、132…固定波長送受信部、14…合分波部、
31…ONU制御部、32…合分波部、33…波長可変光送信部、34…波長可変光受信部、35…フレーム組立・分解部。
【要約】
【課題】サービスの帯域拡大要求、及び又は、サービス期間延長要求があったときでも柔軟に波長変更が可能な資源割当を行なえるようにする。
【解決手段】本発明は、加入者端末に提供される複数のサービスのそれぞれを、第1~第Kの波長のいずれかに割り当て、時間波長分割多重化方式の光通信システムの親局装置において、資源割当手段が、他の波長への移動可能なサービスについては、当該サービスの要求資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす波長に割り当て、他の波長への移動ができないサービスについては、当該サービスの要求資源量の値と将来必要とされる可能性がある許容量の値とを加えた許容資源量の値と、各波長の資源量の値との比較結果に基づいて、要求資源量の値を満たす波長に割り当てる。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12