(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】樹脂組成物、硬化物、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、プリプレグ、多層体、および、繊維強化複合材料
(51)【国際特許分類】
C08G 73/06 20060101AFI20221220BHJP
C08L 79/04 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/21 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/55 20060101ALI20221220BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221220BHJP
C09J 179/04 20060101ALI20221220BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221220BHJP
C09D 179/04 20060101ALI20221220BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221220BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08G73/06
C08L79/04 Z
C08K5/17
C08K5/21
C08K5/55
C08K5/13
C09J179/04 C
C09J11/06
C09D179/04 Z
C09D7/63
C08J5/04 CEZ
C08J5/04 CFG
(21)【出願番号】P 2022113743
(22)【出願日】2022-07-15
(62)【分割の表示】P 2022111281の分割
【原出願日】2022-07-11
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2022086558
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】池田 黄介
(72)【発明者】
【氏名】安田 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】片桐 誠之
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112048271(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110591622(CN,A)
【文献】特開2011-016967(JP,A)
【文献】特開2021-152108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G73/00- 73/26
C08L 1/00-101/14
C08J 5/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)を含む樹脂組成物
であって、
前記アミンアダクト化合物(B)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~30質量部である、樹脂組成物。
【請求項2】
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物、および、下記式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、Ar
1は、各々独立に芳香環を表し、Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Raにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、aは、Ar
1に対するシアナト基の結合個数を表し、各々独立に、1~3の整数であり、bは、Ar
1に対するRaの結合個数を表し、各々独立に、Ar
1の置換可能基数から(a+2)を引いた数を表し、cは、1~50の整数であり、Xは、各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基、スルホニル基(-SO
2-)、2価の硫黄原子(-S-)、または、2価の酸素原子(-O-)のいずれかを表す。)
【化2】
(式(II)中、Ar
2は芳香環を表し、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Rbにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、dは、Ar
2に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、eは、Ar
2に対するRbの結合個数を表し、Ar
2の置換可能基数から(d+2)を引いた数を表す。)
【請求項3】
前記式(I)におけるXが、各々独立に、下記式(III)~(XIV)からなる群より選ばれる2価の連結基を表す、請求項2に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(III)中、Ar
3は、各々独立に芳香環を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、ReおよびRfは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基いずれかを表し、ReおよびRfにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、fは0~5の整数を表す。)
【化4】
(式(IV)中、Ar
4は、各々独立に、芳香環を表し、RiおよびRjは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、RiおよびRjにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、gは0~5の整数を表す。)
【化5】
(式(VIII)中、hは4~7の整数を表し、式(XIII)中、Rkは、各々独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(XV)で表される化合物、および、下記式(XVI)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(XV)中、Ar
5は各々独立に芳香環を表し、Rlは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基、または、オキシメチレン基、ならびに、これらの2つ以上が連結した基を表し、RmおよびRnは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RmおよびRnにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、iは、Ar
5に対するシアナト基の結合個数を表し、1~3の整数であり、jは、Ar
5に対するRmの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から(i+2)を引いた数を表し、kは、Ar
5に対するRnの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から2を引いた数を表し、lは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、各繰り返し単位の配列は任意である。)
【化7】
(式(XVI)中、Ar
6は、各々独立に芳香環を表し、Roは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基またはオキシメチレン基、またはこれらが連結した基を表し、RpおよびRqは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RpおよびRqにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、nは、Ar
6に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、oは、Ar
6に対するRpの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から(n+2)を引いた数を表し、pは、Ar
6に対するRqの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から2を引いた数を表す。qは1以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記ホウ酸エステル(C)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~15質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
さらに、フェノール化合物(D)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記フェノール化合物(D)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~20質量部である、請求項
6に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、靭性付与剤(E)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記靭性付与剤(E)が、熱可塑性樹脂を含む、請求項
8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記靭性付与剤(E)が、パウダー状の樹脂を含む、請求項
8に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記靭性付与剤(E)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~40質量部である、請求項
8に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記ホウ酸エステル(C)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~15質量部であり、
さらに、フェノール化合物(D)を含み、
前記フェノール化合物(D)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~20質量部である、
請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、靭性付与剤(E)を含み、前記靭性付与剤(E)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~40質量部である、請求項
12に記載の樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、封止材料。
【請求項16】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、接着剤。
【請求項17】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、絶縁材料。
【請求項18】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、塗料。
【請求項19】
基材と、請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
【請求項20】
請求項
19に記載のプリプレグから形成された多層体。
【請求項21】
強化繊維と、請求項1~
13のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物とを含む、繊維強化複合材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、硬化物、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、プリプレグ、多層体、および、繊維強化複合材料に関する。特に、シアン酸エステル化合物を含む樹脂組成物等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、シアン酸エステル化合物は、硬化時にトリアジン環を形成する熱硬化性樹脂として知られている。シアン酸エステルにより得られる硬化物は、ガラス転移温度が高く、誘電率および誘電正接が低く、電気絶縁性や難燃性にも優れるなど、優れた性質を有している。そのため、シアン酸エステル化合物は、電気電子材料や構造用複合材料、接着剤、その他、種々の機能性高分子材料の原料として幅広く用いられている(特許文献1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、シアン酸エステル化合物を含む樹脂組成物は検討されている。そして、近年、その需要はさらに拡大している。例えば、航空宇宙材料用途への利用なども期待できる。
一方、シアン酸エステル化合物を含む樹脂組成物は、取扱性および物流の合理化の観点から常温保管が可能であることが求められ、生産性向上の観点からは硬化性、特に、所定以下の温度で硬化することが望まれる。特に、プリプレグ向けの樹脂組成物には、潜在性(例えば、80℃程度以下での樹脂組成物の安定性と100~185℃程度の間での樹脂組成物の硬化性)が求められる。また、シアン酸エステル化合物を含む樹脂組成物が本来的に有している耐熱性に悪影響を及ぼさないことも求められる。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、優れた耐熱性を維持しつつ、潜在性に優れた樹脂組成物、ならびに、硬化物、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、プリプレグ、多層体、および、繊維強化複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、シアン酸エステル化合物に、アミンアダクト化合物およびホウ酸エステルを配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>シアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)を含む樹脂組成物。
<2>前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物、および、下記式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>に記載の樹脂組成物。
【化1】
(式(I)中、Ar
1は、各々独立に芳香環を表し、Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Raにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、aは、Ar
1に対するシアナト基の結合個数を表し、各々独立に、1~3の整数であり、bは、Ar
1に対するRaの結合個数を表し、各々独立に、Ar
1の置換可能基数から(a+2)を引いた数を表し、cは、1~50の整数であり、Xは、各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基、スルホニル基(-SO
2-)、2価の硫黄原子(-S-)、または、2価の酸素原子(-O-)のいずれかを表す。)
【化2】
(式(II)中、Ar
2は芳香環を表し、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Rbにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、dは、Ar
2に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、eは、Ar
2に対するRbの結合個数を表し、Ar
2の置換可能基数から(d+2)を引いた数を表す。)
<3>前記式(I)におけるXが、各々独立に、下記式(III)~(XIV)からなる群より選ばれる2価の連結基を表す、<2>に記載の樹脂組成物。
【化3】
(式(III)中、Ar
3は、各々独立に芳香環を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、ReおよびRfは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基いずれかを表し、ReおよびRfにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、fは0~5の整数を表す。)
【化4】
(式(IV)中、Ar
4は、各々独立に、芳香環を表し、RiおよびRjは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、RiおよびRjにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、gは0~5の整数を表す。)
【化5】
(式(VIII)中、hは4~7の整数を表し、式(XIII)中、Rkは、各々独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
<4>前記シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(XV)で表される化合物、および、下記式(XVI)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
【化6】
(式(XV)中、Ar
5は各々独立に芳香環を表し、Rlは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基、または、オキシメチレン基、ならびに、これらの2つ以上が連結した基を表し、RmおよびRnは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RmおよびRnにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、iは、Ar
5に対するシアナト基の結合個数を表し、1~3の整数であり、jは、Ar
5に対するRmの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から(i+2)を引いた数を表し、kは、Ar
5に対するRnの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から2を引いた数を表し、lは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、各繰り返し単位の配列は任意である。)
【化7】
(式(XVI)中、Ar
6は、各々独立に芳香環を表し、Roは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基またはオキシメチレン基、またはこれらが連結した基を表し、RpおよびRqは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RpおよびRqにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、nは、Ar
6に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、oは、Ar
6に対するRpの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から(n+2)を引いた数を表し、pは、Ar
6に対するRqの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から2を引いた数を表す。qは1以上の整数を表す。)
<5>前記アミンアダクト化合物(B)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~30質量部である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記ホウ酸エステル(C)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~15質量部である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7>さらに、フェノール化合物(D)を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<8>前記フェノール化合物(D)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~20質量部である、<7>に記載の樹脂組成物。
<9>さらに、靭性付与剤(E)を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<10>前記靭性付与剤(E)が、熱可塑性樹脂を含む、<9>に記載の樹脂組成物。
<11>前記靭性付与剤(E)が、パウダー状の樹脂を含む、<9>または<10>に記載の樹脂組成物。
<12>前記靭性付与剤(E)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~40質量部である、<9>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<13>前記アミンアダクト化合物(B)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~30質量部であり、
前記ホウ酸エステル(C)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01~15質量部であり、
さらに、フェノール化合物(D)を含み、
前記フェノール化合物(D)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~20質量部である、
<1>~<11>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<14>さらに、靭性付与剤(E)を含み、前記靭性付与剤(E)の含有量が、前記シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1~40質量部である、<13>に記載の樹脂組成物。
<15><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の硬化物。
<16><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む、封止材料。
<17><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む、接着剤。
<18><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む、絶縁材料。
<19><1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物を含む、塗料。
<20>基材と、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物とから形成された、プリプレグ。
<21><20>に記載のプリプレグから形成された多層体。
<22>強化繊維と、<1>~<14>のいずれか1つに記載の樹脂組成物の硬化物とを含む、繊維強化複合材料。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、優れた耐熱性を維持しつつ、潜在性に優れた樹脂組成物、ならびに、硬化物、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、プリプレグ、多層体、および、繊維強化複合材料を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格で説明される測定方法等が年度によって異なる場合、特に述べない限り、2022年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本明細書において、樹脂固形分とは、充填材および溶剤を除く成分をいい、シアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)、ならびに、必要に応じて配合される他の熱硬化性化合物、およびその他の樹脂添加剤成分(フェノール化合物(D)、靭性付与剤(E)等)を含む趣旨である。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)を含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、優れた耐熱性を維持しつつ、潜在性に優れた樹脂組成物が得られる。
このメカニズムは以下の通りであると推測される。すなわち、本実施形態の樹脂組成物において、シアン酸エステル化合物(A)に対し、アミンアダクト化合物(B)が有する窒素原子部分が、シアン酸エステル化合物(A)の硬化の際の触媒として働くと推測される。一方、樹脂組成物の保存時は、ホウ酸エステル(C)が有するホウ素が、アミンアダクト化合物(B)が有する窒素原子をキャップし、樹脂組成物の硬化を抑制し、樹脂組成物の安定性を確保していると推測される。すなわち、保存時は、アミンアダクト化合物(B)がシアン酸エステル化合物(A)の硬化の際の触媒として寄与することを抑制していると推測される。また、加熱により、ホウ酸エステル(C)が有するホウ素とアミンアダクト化合物(B)が有する窒素原子との間の結合が切れると推測される。すなわち、加熱により、アミンアダクト化合物(B)がシアン酸エステル化合物(A)の硬化を促進する触媒として寄与するようになる。さらに、ルイス酸であるホウ酸エステル(C)も、シアン酸エステル化合物(A)の硬化の際の触媒として働くと推測される。さらに、本実施形態の樹脂組成物においては、アミンアダクト化合物(B)およびホウ酸エステル(C)を配合しても、耐熱性を高いレベルで維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
<シアン酸エステル化合物(A)>
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)を含む。
シアン酸エステル化合物(A)としては、一分子に2つ以上の-OCN基を有する化合物であることが好ましく、一分子に2~10の-OCN基を有する化合物であることがより好ましい。また、本実施形態のシアン酸エステル(A)は、シアン酸エステル化合物のプレポリマーであってもよい。
より具体的には、シアン酸エステル化合物(A)としては、特開2022-046517号公報の段落0027~0028の記載、特開2022-046517号公報の段落0024~0043の記載、特開2020-012065号公報の段落0012~0014の記載のシアネートエステル樹脂を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0011】
本実施形態においては、シアン酸エステル化合物(A)が、下記式(I)で表される化合物、および、下記式(II)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【化8】
(式(I)中、Ar
1は、各々独立に芳香環を表し、Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Raにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、aは、Ar
1に対するシアナト基の結合個数を表し、各々独立に、1~3の整数であり、bは、Ar
1に対するRaの結合個数を表し、各々独立に、Ar
1の置換可能基数から(a+2)を引いた数を表し、cは、1~50の整数であり、Xは、各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基、スルホニル基(-SO
2-)、2価の硫黄原子(-S-)、または、2価の酸素原子(-O-)のいずれかを表す。)
【化9】
(式(II)中、Ar
2は芳香環を表し、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Rbにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、dは、Ar
2に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、eは、Ar
2に対するRbの結合個数を表し、Ar
2の置換可能基数から(d+2)を引いた数を表す。)
【0012】
式(I)中、Ar1は、各々独立に芳香環を表し、Ar1が表す芳香環としては、特に制限されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0013】
式(I)中、Raは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、水素原子、または炭素数2~6のアルケニル基が好ましい。Raにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよい。
【0014】
上記炭素数1~6のアルキル基としては、特に制限されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0015】
上記炭素数2~6のアルケニル基としては、特に制限されないが、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基が挙げられる。このなかでも、炭素数2~10のアルケニル基が好ましく、炭素数2~5のアルケニル基がより好ましい。また、アルケニル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0016】
上記炭素数1~4のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。アルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。
【0017】
上記炭素数6~12のアリール基としては、特に制限されないが、例えば、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0018】
また、Raにおけるアルキル基またはアリール基が有していてもよい置換基としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シアナト基、アルコキシ基、カルボニル基、アミノ基、イミノ基、チオール基、スルホ基、ニトロ基、アシル基、アルデヒド基、アリール基が挙げられる。
【0019】
式(I)中、aは、Ar1に対するシアナト基の結合個数を表し、各々独立に、1~3の整数であり、好ましくは1~2の整数であり、より好ましくは1である。
式(I)中、bは、Ar1に対するRaの結合個数を表し、各々独立に、Ar1の置換可能基数から(a+2)を引いた数を表す。
式(I)中、cは、1~50の整数であり、好ましくは1~10の整数であり、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1である。
【0020】
式(I)中、Xは、各々独立に、単結合、炭素数1~50の2価の有機基、スルホニル基(-SO
2-)、2価の硫黄原子(-S-)、または、2価の酸素原子(-O-)のいずれかを表す。Xで表される炭素数1~50の2価の有機基としては、特に制限されないが、例えば、窒素数1~10の2価の有機基(-N-R-N-(ここでRは有機基を示す))、カルボニル基(-CO-)、カルボキシ基(-C(=O)O-)、カルボニルジオキサイド基(-OC(=O)O-)、後述する式(III)~(XIV)で表される構造からなる群より選ばれる2価の連結基が挙げられることが好ましく、式(III)~(XIV)からなる群より選ばれる2価の連結基を表すことがより好ましい。
【化10】
(式(III)中、Ar
3は、各々独立に芳香環を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または、炭素数6~12のアリール基を表し、Rc、Rd、Rg、および、Rhにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、ReおよびRfは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基いずれかを表し、ReおよびRfにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、fは0~5の整数を表す。)
【化11】
(式(IV)中、Ar
4は、各々独立に、芳香環を表し、RiおよびRjは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、RiおよびRjにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、gは0~5の整数を表す。)
【化12】
(式(VIII)中、hは4~7の整数を表し、式(XIII)中、Rkは、各々独立に水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表す。)
【0021】
式(III)および式(IV)中、Ar3およびAr4で表される芳香環としては、Ar1で例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。また、上記式中、Rc、Rd、Rg、Rh、Re、Rf、RiおよびRjで表される、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシ基、およびその置換基としては、Raで例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。
【0022】
式(II)中、Ar2は芳香環を表し、式(I)におけるAr1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(II)中、Rbは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基のいずれかを表し、Rbにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、式(I)におけるRaと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(II)中、dは、Ar2に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、eは、Ar2対するRbの結合個数を表し、Ar2の置換可能基数から(d+2)を引いた数を表す。
【0023】
さらに、前記シアン酸エステル化合物(A)は、下記式(XV)で表される化合物、および、下記式(XVI)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種以上を含むことがより好ましい。
【化13】
(式(XV)中、Ar
5は各々独立に芳香環を表し、Rlは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基、または、オキシメチレン基、ならびに、これらの2つ以上が連結した基を表し、RmおよびRnは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RmおよびRnにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、iは、Ar
5に対するシアナト基の結合個数を表し、1~3の整数であり、jは、Ar
5に対するRmの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から(i+2)を引いた数を表し、kは、Ar
5に対するRnの結合個数を表し、Ar
5の置換可能基数から2を引いた数を表し、lは1以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、各繰り返し単位の配列は任意である。)
【0024】
式(XV)中、Ar5表される芳香環としては、Ar1で例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。
式(XV)中、RmおよびRnで表される、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシ基、およびその置換基としては、Raで例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。
式(XV)中、lは1以上の整数を表し、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
式(XV)中、mは1以上の整数を表し、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
【0025】
【化14】
(式(XVI)中、Ar
6は、各々独立に芳香環を表し、Roは、各々独立に、メチレン基、メチレンオキシ基、メチレンオキシメチレン基またはオキシメチレン基、またはこれらが連結した基を表し、RpおよびRqは、各々独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、または、炭素数1~4のアルコキシ基を表し、RpおよびRqにおけるアルキル基またはアリール基は置換基を有していてもよく、nは、Ar
6に対するシアナト基の結合個数を表し、2~3の整数であり、oは、Ar
6に対するRpの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から(n+2)を引いた数を表し、pは、Ar
6に対するRqの結合個数を表し、Ar
6の置換可能基数から2を引いた数を表す。qは1以上の整数を表す。)
【0026】
式(XVI)中、Ar6表される芳香環としては、Ar1で例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。
式(XVI)中、RpおよびRqで表される、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~4のアルコキシ基、およびその置換基としては、Raで例示したものと同様のものを例示することができ、好ましい範囲も同様である。
式(XVI)中、qは1以上の整数を表し、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~5である。
【0027】
本実施形態で用いるシアン酸エステル化合物(A)は、上述の通り、プレポリマーであってもよい。プレポリマーの例には、上記式(I)で表される化合物、および/または、上記式(II)で表される化合物を2分子以上(好ましくは2~10分子)の反応物であるプレポリマー(シアネート基が一部残存しているもの)などが例示される。このようなプレポリマーを用いることにより、プリプレグとした際の取り扱い性に優れた樹脂組成物とすることが容易になる。
【0028】
本実施形態の樹脂組成物におけるシアン酸エステル化合物(A)の含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、65質量部以上であることがさらに好ましく、70質量部以上であることが一層好ましく、75質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、高耐熱性がより向上する傾向にある。また、前記シアン酸エステル化合物(A)の含有量の上限は、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)の樹脂固形分がすべてシアン酸エステル化合物(A)となる量であり、具体的には、樹脂組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対し、99質量部以下であることが好ましく、97質量部以下であることがより好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0029】
<アミンアダクト化合物(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、アミンアダクト化合物(B)を含む。アミンアダクト化合物(B)を含むことにより、保存時の安定性に優れ、かつ、加熱時の硬化性に優れた樹脂組成物が得られる。
アミンアダクト化合物(B)は、通常、常温(例えば、25℃)で固体であり、加熱により軟化を開始し、反応性が向上するものである。アミンアダクト化合物(B)の軟化温度は、90℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましく、また、150℃以下であることが好ましく、145℃以下であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、保存時の安定性がより向上する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、硬化性がより向上する傾向にある。前記軟化温度は、JIS K7234:1986に準拠した試験方法により求められる。
【0030】
アミンアダクト化合物(B)は、アミン化合物のアダクト体であり、アミン化合物(好ましくはイミダゾール化合物または第3級アミノ基を有する化合物)と、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、尿素化合物、イソシアネート化合物およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれる少なくも1種の化合物とのアダクト体であることが好ましく、アミン化合物と、尿素化合物、イソシアネート化合物およびエポキシ樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物とのアダクト体であることがより好ましく、アミン化合物と、イソシアネート化合物および/またはエポキシ樹脂とのアダクト体であることがさらに好ましい。
【0031】
前記アミンとしては、例えば、活性水素を1分子内に1個以上有し、かつ、第1級アミノ基、第2級アミノ基および第3級アミノ基からなる群から選ばれる少なくとも1種を1分子内に1個以上(好ましくは1~3個、より好ましくは1または2個、さらに好ましくは1個)有するものであればよく、第2級アミノ基または第3級アミノ基を分子内に1個以上有することが好ましい。アミン化合物としては、上述の通り、イミダゾール化合物または第3級アミノ基を有する化合物が好ましい。
【0032】
イミダゾール化合物としては、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0033】
第3級アミノ基を有する化合物としては、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジン、N-アミノエチルピペラジン、1,4ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルホルモリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N-ジメチル-N'-フェニルウレア、N,N-ジメチル-N'-(3,4-ジクロロフェニル)ウレア、トルエンビス(ジメチルウレア)、4,4'-メチレンビス(フェニルジメチルウレア)、2-メルカプトピリジン、2-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメチルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドが例示される。
【0034】
前記尿素化合物は、ウレイド結合、ウレイレン結合およびNH-CO-Nからなる群から選ばれる少なくとも1種を有する化合物であれば特に制限されない。例えば、尿素、リン酸尿素、シュウ酸尿素、酢酸尿素、ジアセチル尿素、ジベンゾイル尿素、トリメチル尿素が挙げられる。
【0035】
前記イソシアネート化合物は特に制限されない。例えば、n-ブチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのような単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート等のような多官能化合物が挙げられる。
【0036】
前記エポキシ樹脂は、特に、制限されない。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、グリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸と、エピクロロヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル;エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、環式脂肪族エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、4,4-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0037】
本実施形態で用いるアミンアダクト化合物(B)は、上記の他、特開2021-075698号公報の段落0067~0077の記載、特開2019-123825号公報の段落0040~0052の記載、特開2016-153513号公報の段落0030~0038の記載、特開2013-151700号公報の段落0023の記載、特開2020-200389号公報の段落0037~段落0051に記載、特開2020-100684号公報の段落0026~0036に記載のものを用いることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0038】
本実施形態の樹脂組成物におけるアミンアダクト化合物(B)の含有量は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることがさらに好ましく、0.5質量部以上であることが一層好ましく、0.8質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、硬化促進効果がより向上する傾向にある。また、前記アミンアダクト化合物(B)の含有量の上限値は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることがさらに好ましく、5質量部以下であることが一層好ましく、3質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の保存時の安定性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、アミンアダクト化合物(B)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0039】
<ホウ酸エステル(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、ホウ酸エステル(C)を含む。ホウ酸エステル(C)を含むことにより、保存時の安定性に優れ、かつ、加熱時の硬化性に優れた樹脂組成物が得られる。
本実施態様において、ホウ酸エステル(C)としては、アミンアダクト化合物(B)に含まれる窒素原子の活性を抑制することができる化合物が好ましい。
ホウ酸エステル(C)としては、式(C)で表される化合物が好ましい。
【化15】
(式(C)中、Rは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、前記炭化水素基中に1つまたは2つ以上の酸素原子を含んでいてもよい。)
【0040】
Rが有していてもよい置換基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシ基が例示される。これらの置換基は、炭化水素基の末端であってもよいし、末端以外の部分に有していてもよい。
Rは、炭素数1~20の置換基を有さない炭化水素基であることが好ましく、置換基を有さない炭素数1~10のアルキル基(好ましくは直鎖または分岐の炭素数1~10のアルキル基)または置換基を有さない炭素数6~12のアリール基(好ましくはフェニル基)であることがより好ましい。
式(C)における3つのRは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0041】
本実施形態で用いるホウ酸エステル(C)の分子量は、104~1500であることが好ましく、104~1000であることがより好ましく、104~500であることがさらに好ましく、104~350であることが一層好ましい。
本実施形態で用いるホウ酸エステル(C)の具体例としては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリアリル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリオクチル、ホウ酸トリイソオクチル、ホウ酸トリノニル、ホウ酸トリデシル、ホウ酸トリドデシル、ホウ酸トリヘキサデシル、ホウ酸トリオクタデシル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリシクロヘキシル、ホウ酸トリベンジル、ホウ酸トリトリル、ホウ酸トリエタノールアミン、トリス-o-フェニレンビスボレート、ビス-o-フェニレンピロボレート、ビス-2,3-ジメチルエチレンフェニレンピロボレート、ビス-2,2-ジメチルトリメチレンピロボレート、トリス(2-エチルヘキシロキシ)ボラン、ビス(1,4,7,10-テトラオキサウンデシル)(1,4,7,10,13-ペンタオキサテトラデシル)(1,4,7-トリオキサウンデシル)ボラン、2-(β-ジメチルアミノイソプロポキシ)-4,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、2-(β-ジエチルアミノエトキシ)-4,4,6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(β-ジメチルアミノエトキシ)-4,4,6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(β-ジイソプロピルアミノエトキシ)-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(β-ジイソプロピルアミノエトキシ)-4-メチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(γ-ジメチルアミノプロポキシ)-1,3,6,9-テトラプキサ-2-ボラシクロウンデカン、および2-(β-ジメチルアミノエトキシ)-4,4-(4-ヒドロキシブチル)-1,3,2-ジオキサボリナン、2,2-オキシビス(5,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボナリン)等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物におけるホウ酸エステル(C)含有量は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.08質量部以上であることがさらに好ましく、0.1質量部以上であることが一層好ましく、0.2質量部以上であることがより一層好ましく、0.4質量部以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物の安定性および硬化性がより向上する傾向にある。また、前記ホウ酸エステル(C)含有量の上限値は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましく、3質量部以下であることが一層好ましく、1質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物の安定性および硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、ホウ酸エステル(C)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物における、アミンアダクト化合物(B)とホウ酸エステル(C)の質量比率(アミンアダクト化合物(B)/ホウ酸エステル(C))が0.5以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.5以上であることがさらに好ましい。前記下限値以上とすることにより、本発明の効果がより効果的に向上する傾向にある。前記アミンアダクト化合物(B)とホウ酸エステル(C)の質量比率(アミンアダクト化合物(B)/ホウ酸エステル(C))は、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましく、3.5以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下および下限値以上とすることにより、本発明の効果がより効果的に向上する傾向にある。
【0044】
<フェノール化合物(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物(D)を含むことが好ましい。フェノール化合物を含むことにより、硬化性がより向上する傾向にある。
本実施形態におけるフェノール化合物(D)は、ベンゼン環に少なくとも水酸基が直接に結合した構造を有する化合物を意味し、ベンゼン環に少なくとも水酸基が直接に結合した構造を有する化合物であることが好ましい。また、フェノール化合物(D)は、低分子であっても高分子であってもよい。また、フェノール化合物(D)が有するベンゼン環は、水酸基以外の他の置換基を有していてもよい。前記ベンゼン環が水酸基以外の置換基を有する場合、1つのベンゼン環当たり、水酸基以外の他の置換基1~3つを有することが好ましい。
他の置換基としては、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数6~20のアリールカルボニル基、ハロゲン原子が例示され、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数1~20のアルキルカルボニル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数6~20のアリールカルボニル基が好ましく、炭素数1~20の炭化水素基がより好ましい。また、ベンゼン環に結合している他の置換基2つが互いに結合して環を形成していてもよい。ベンゼン環に結合している他の置換基2つが互いに結合して環を形成している例としては、ナフタレン環やインダン環等が例示される。
本実施形態で用いるフェノール化合物(D)は、好ましくはベンゼン環に、水酸基が、1つまたは2つ直接結合した構造を有する化合物であることが好ましい。置換基としては、炭素数5~20の炭化水素基(好ましくはアルキル基)が例示される。
本実施形態で用いるフェノール化合物(D)の一例は、低分子化合物であり、例えば、分子量が94~1000の化合物であり、94~500の化合物であることが好ましい。
また、本実施形態で用いるフェノール化合物(D)の他の一例は、高分子化合物であり、例えば、分子量が1000超10万以下のフェノール化合物であり、1000超10000以下のフェノール化合物であることが好ましい。
本実施形態で用いるフェノール化合物(D)の具体例としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、o-イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール等のブチルフェノール、p-tert-オクチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、トリヒドロキシベンゼン、スチレン化フェノール、オキシ安息香酸エステル、チモール、p-ナフトール、p-ニトロフェノール、p-クロロフェノール、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシレノールノボラック樹脂が挙げられ、ノニルフェノール、ジノニルフェノールが好ましい。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物がフェノール化合物(D)を含む場合、その含有量は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以上であることが一層好ましく、5質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、硬化性がより向上する傾向にある。また、前記フェノール化合物(D)の含有量の上限値は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、17質量部以下であることがより好ましく、14質量部以下であることがさらに好ましく、12質量部以下であることが一層好ましく、10質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、フェノール化合物(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0046】
<靭性付与剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、靭性付与剤(E)を含んでいてもよい。靭性付与剤(E)を配合することにより、得られる硬化物の靭性をより向上させることができる。
靭性付与剤(E)としては、樹脂が例示される。靭性付与剤(E)としての樹脂の一例は熱可塑性樹脂であり、また、他の一例は、パウダー状の樹脂である。
熱可塑性樹脂としては、一般に、主鎖に、炭素-炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、チオエーテル結合、スルホン結合およびカルボニル結合から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂であることが好ましいが、部分的に架橋構造を有していても差し支えない。また、結晶性を有していても非晶性であってもよい。特に、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェニルトリメチルインダン構造を有するポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリエーテルニトリル樹脂およびポリベンズイミダゾール樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂が好ましく、ポリイミド樹脂がより好ましい。
ポリイミド樹脂としては、特開2022-045273号公報の段落0013~段落0021の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0047】
パウダー状の樹脂としては、パウダー状の熱可塑性樹脂であることが好ましく、スチレン型パウダー、ブタジエン型パウダー、および、アクリル型パウダー等のゴムパウダー;コアシェル型ゴムパウダー;シリコーン型パウダー等が挙げられる。これらのパウダー状の樹脂の中でも、得られる硬化物の剛性に一層優れかつ、反りを一層低減できる観点から、シリコーン型パウダーであることが好ましい。
【0048】
シリコーン型パウダーとしては、例えば、シリコーンレジンパウダー、シリコーンゴムパウダー、および、シリコーン複合パウダー等が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物の剛性に一層優れ、かつ、反りを一層低減する観点から、シリコーン複合パウダーであることが好ましい。
シリコーン複合パウダーとしては、例えば、信越化学工業社製のKMP-600(商品名)、KMP-601(商品名)、KMP-602(商品名)、KMP-605(商品名)、および、X-52-7030(商品名)等が挙げられる。
【0049】
本実施形態の樹脂組成物が靭性付与剤(E)を含む場合、その含有量は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以上であることが一層好ましく、15質量部以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の靭性がより向上する傾向にある。また、前記靭性付与剤(E)の含有量の上限値は、シアン酸エステル化合物(A)100質量部に対し、40質量部以下であることが好ましく、38質量部以下であることがさらに好ましく、33質量部以下であることが一層好ましく、30質量部以下であることがより一層好ましく、27質量部以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物は、靭性付与剤(E)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0050】
<他の熱硬化性樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)以外の他の熱硬化性樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、マレイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、有機基変性シリコーン、アルケニル置換ナジイミド化合物、および、重合可能な炭素-炭素不飽和基を有する樹脂が例示される。これらの詳細は、国際公開第2022/034872号の段落0020~0028、段落0054~0056、段落0067~0070の各記載、特開2022-000506号公報の段落0036~0070の記載、特開2022-046517号公報の段落0049~0057の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
本実施形態の樹脂組成物が、シアン酸エステル化合物(A)以外の他の熱硬化性樹脂を含む場合、その含有量は、樹脂組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対し、5~30質量部であることが好ましい。
また、本実施形態の樹脂組成物は、シアン酸エステル化合物(A)以外の他の熱硬化性樹脂を実質的に含まない構成としてもよい。実質的に含まないとは、樹脂組成物に含まれる樹脂固形分100質量部に対し、5質量部未満であることをいい、3質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0051】
<他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、上記の他、充填材(無機充填材、有機充填材、フィラーなどを含む)、シランカップリング剤、湿潤分散剤、溶剤などを含んでいてもよい。また、耐衝撃性向上剤、硬化促進剤、難燃剤、導電性付与剤、結晶核剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、制振剤、抗菌剤、防虫剤、防臭剤、着色防止剤、熱安定剤、離型剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、着色剤、顔料、染料、発泡剤、制泡剤等を配合してもよい。これらの詳細は、特開2021-195389号公報の段落0057~0052の記載、特開2022-046517号公報の段落0040~0048の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
充填材は、本実施形態の樹脂組成物に含まれる場合、樹脂固形分100質量部に対し、10~500質量部の割合で含まれることが好ましい。また、本実施形態の樹脂組成物は、充填材を実質的に含まない構成とすることもできる。充填材を実質的に含まないとは、樹脂組成物における充填材の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、10質量部未満であることをいい、5質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、1質量部以下であることがさらに好ましい。
【0052】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、80℃における粘度が、0.05~50Pa・sであることが好ましい。このような粘度とすることにより、各種材料として好ましく用いることができる。本実施形態の樹脂組成物の80℃における粘度は、さらには、0.10Pa・s以上であることが好ましく、また、40Pa・s以下であることが好ましく、30Pa・s以下であることがより好ましく、20Pa・s以下であることがさらに好ましく、10Pa・s以下であることが一層好ましく、8Pa・s以下であることがより一層好ましい。
特に、本実施形態の樹脂組成物をプリプレグに用いる場合は、80℃における粘度が、0.1Pa・s以上であることが好ましく、2Pa・s以上であることがより好ましく、また、10Pa・s以下であることが好ましく、8Pa・s以下であることがより好ましい。
上記粘度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物は、保存時の安定性に優れていることが好ましい。例えば、各組成物を80℃で60分保持した際の粘度について、試験開始前の粘度を100としたときの相対粘度として示したとき、180以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましく、140以下であることがさらに好ましく、130以下であることが一層好ましく、120以下であることがより一層好ましい。前記相対粘度の下限は、100であることが好ましく、101以上であっても十分に性能要求を満たすものである。
上記相対粘度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0054】
本実施形態の樹脂組成物は、硬化性に優れていることが好ましい。例えば、示差走査熱量計を用い、開始温度40℃、終了温度380℃、昇温速度3℃/分の測定条件において、各組成物の発熱挙動を観察し、ピークトップ温度が185℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、175℃以下であることがさらに好ましく、170℃以下であることが一層好ましく、165℃以下であることがより一層好ましい。また、前記ピークトップ温度の下限値は、100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、130℃以上であることが一層好ましく、135℃以上であることがより一層好ましい。
上記ピークトップ温度は、後述する実施例の記載に従って測定される。
【0055】
本実施形態の樹脂組成物は、耐熱性が高い方が好ましい。例えば、本実施形態の樹脂組成物を135℃にて8時間、さらに、177℃にて4時間加熱して得た硬化物のガラス転移温度が180℃以上であることが好ましく、184℃以上であることがより好ましく、190℃以上であることがさらに好ましく、195℃以上であることが一層好ましく、200℃以上であることがより一層好ましい。一方、前記ガラス転移温度の上限は特に定めるものではないが、300℃以下が実際的であり、250℃以下であっても十分に要求性能を満たすものである。
なお、前記ガラス転移温度(Tg)は、前記樹脂組成物の硬化物を、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置でDMA法により、貯蔵弾性率G’を測定し、オンセットの値をガラス転移温度(Tg)とする。
詳細は後述する実施例の記載に従って測定される。
【0056】
<用途>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化物、プリプレグ、多層体、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、または、繊維強化複合材料として好適に用いることができる。以下、これらについて説明する。
【0057】
<<硬化物>>
本実施形態の硬化物は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物である。硬化物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶融または溶媒に溶解させた後、型内に流し込み、熱や光などを用いて通常の条件で硬化させることにより得ることができる。熱硬化の場合、硬化温度は、特に限定されないが、硬化が効率的に進み、かつ、得られる硬化物の劣化を防止する観点から、120~300℃の範囲内が好ましい。光硬化の場合、光の波長領域は、特に限定されないが、光重合開始剤等により効率的に硬化が進む100~500nmの範囲で硬化させることが好ましい。
【0058】
<<プリプレグ>>
本実施形態のプリプレグは、基材と、本実施形態の樹脂組成物とから形成されたプリプレグである。より具体的には、本実施形態のプリプレグは、基材と、前記基材に適用(例えば、含浸または塗布)した樹脂組成物ないしはその硬化物とを有する。すなわち、前記プリプレグにおいて、樹脂組成物は、未硬化であってもよいし、半硬化物を含む硬化物であってもよい。また、樹脂組成物から溶剤を除去したものであってもよい。
プリプレグの製造方法は、常法にしたがって行うことができ、特に限定されない。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を基材に適用(好ましくは塗布)し、プリプレグを作製することができる。このとき、樹脂組成物を加熱して基材に塗布した後常温に戻してもよいし、樹脂組成物に溶剤を添加して基材に塗布した後、溶剤を除去してもよい。
また、例えば、本実施形態の樹脂組成物を基材に適用した後、100~200℃の乾燥機中で1~30分加熱するなどして半硬化(Bステ-ジ化)させることで、本実施形態のプリプレグを作製することもできる。
【0059】
樹脂組成物中の樹脂固形分および充填材の総量は、プリプレグの総量に対して、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは35質量%以上であり、さらに好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。樹脂組成物の含有量が上記範囲内であることにより、プリプレグの成形性がより向上する傾向にある。
【0060】
プリプレグの基材としては、特に限定されず、目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。基材を構成する繊維の具体例としては、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス、球状ガラス、NEガラス、Lガラス、Tガラスなどのガラス繊維;クォーツ繊維、炭素繊維、ボロン繊維、バザルト繊維などのガラス以外の無機繊維;ポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン(株)製)、コポリパラフェニレン・3,4'オキシジフェニレン・テレフタラミド(テクノーラ(登録商標)、帝人テクノプロダクツ(株)製)などの全芳香族ポリアミド;2,6-ヒドロキシナフトエ酸・パラヒドロキシ安息香酸(ベクトラン(登録商標)、(株)クラレ製)、ゼクシオン(登録商標、KBセーレン製)などのポリエステル;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(ザイロン(登録商標)、東洋紡績(株)製)、ポリイミドなどの有機繊維が挙げられる。これらのなかでも、炭素繊維、および/または、ガラス繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、炭素繊維からなることがより好ましい。これら基材は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマット、サーフェシングマットなどが挙げられる。織布の織り方としては、特に限定されないが、例えば、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、これらを開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さや質量は、特に限定されないが、通常は0.01~0.3mm程度のものが好適に用いられる。とりわけ、強度と吸水性との観点から、基材は、ガラス繊維および/または炭素繊維の織布が好ましい。
【0062】
本実施形態の多層体は、本実施形態のプリプレグから形成される。本実施形態の多層体は、前記プリプレグを2プライ以上重ねたものであることが好ましい。本実施形態の多層体において、プリプレグ中の樹脂組成物は、未硬化であってもよいし、半硬化物を含む硬化物であってもよい。
本実施形態の多層体は、本実施形態の樹脂を逸脱しない範囲で他の構成層を有していてもよい。
【0063】
本実施形態のプリプレグおよび多層体は、航空宇宙向け材料用として好ましく用いられる。
【0064】
<<封止材料>>
本実施形態の封止材料は、本実施形態の樹脂組成物を含む。封止材料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した樹脂組成物と、封止材料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで封止材料を製造することができる。なお、混合の際の、各成分の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0065】
<<接着剤>>
本実施形態の接着剤は、本実施形態の樹脂組成物を含む。接着剤の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した樹脂組成物と、接着剤用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで接着剤を製造することができる。なお、混合の際の、各成分の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0066】
<<絶縁材料>>
本実施形態の絶縁材料は、本実施形態の樹脂組成物を含む。絶縁材料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した樹脂組成物と、絶縁材料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで接着剤を製造することができる。なお、混合の際の、各成分の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0067】
<<塗料>>
本実施形態の塗料は、本実施形態の樹脂組成物を含む。塗料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、上記した樹脂組成物と、塗料用途で一般的に用いられる各種公知の添加剤あるいは溶媒等を、公知のミキサーを用いて混合することで塗料を製造することができる。なお、混合の際の、各成分の添加方法は、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。
【0068】
<<繊維強化複合材料>>
本実施形態の繊維強化複合材料は、強化繊維と、本実施形態の樹脂組成物の硬化物とを含む。好ましくは、強化繊維と、前記強化繊維に樹脂組成物を適用(好ましくは含浸または塗布)し、硬化させた硬化物とを有する。
強化繊維としては、一般的に公知のものを用いることができ、特に限定されない。その具体例としては、Eガラス、Dガラス、Lガラス、Sガラス、Tガラス、Qガラス、UNガラス、NEガラス、球状ガラス等のガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、PBO繊維、高強力ポリエチレン繊維、アルミナ繊維、および炭化ケイ素繊維などが挙げられる。強化繊維の形態や配列については、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、チョップド等から適宜選択できる。また、強化繊維の形態としてプリフォーム(強化繊維からなる織物基布を積層したもの、またはこれをステッチ糸により縫合一体化したもの、あるいは立体織物や編組物などの繊維構造物)を適用することもできる。
【0069】
これら繊維強化複合材料の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。その具体例としては、リキッド・コンポジット・モールディング法、レジン・フィルム・インフュージョン法、フィラメント・ワインディング法、ハンド・レイアップ法、プルトルージョン法等が挙げられる。このなかでも、リキッド・コンポジット・モールディング法の一つであるレジン・トランスファー・モールディング法は、金属板、フォームコア、ハニカムコア等、プリフォーム以外の素材を成形型内に予めセットしておくことができることから、種々の用途に対応可能であるため、比較的、形状が複雑な複合材料を短時間で大量生産する場合に好ましく用いられる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0071】
<合成例1 シアン酸エステル(SNCN)の合成>
反応器内で、α-ナフトールアラルキル型フェノール樹脂(製品名:SN495V、OH基当量:236g/eq.日鉄ケミカル&マテリアル社製:ナフトールアラルキルの繰り返し単位数nは1~5のものが含まれる。)0.47mol(OH基換算)を、クロロホルム500mLに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.7molを添加した。温度を-10℃に保ちながら反応器内に0.93molの塩化シアンのクロロホルム溶液300gを1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後さらに、0.1molのトリエチルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸500mLで洗浄した後、水500mLでの洗浄を4回繰り返した。これを硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気することにより、褐色固形のα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂(以下、SNCN)を得た。得られたα-ナフトールアラルキル型シアン酸エステル樹脂を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、2264cm-1付近のシアン酸エステル基の吸収が確認された。
【0072】
<合成例2 シアン酸エステルの合成(P-2M)>
反応器内で、ビスフェノールM(OH基当量:173g/eq.三井化学ファイン社製)0.5mol(OH基換算)を、クロロホルム500mLに溶解させ、この溶液にトリエチルアミン0.75molを添加した。温度を-10℃に保ちながら反応器内に1.0molの塩化シアンのクロロホルム溶液300gを1.5時間かけて滴下し、滴下終了後、30分撹拌した。その後さらに、0.1molのトリエチルアミンとクロロホルム30gの混合溶液を反応器内に滴下し、30分撹拌して反応を完結させた。副生したトリエチルアミンの塩酸塩を反応液から濾別した後、得られた濾液を0.1N塩酸500mLで洗浄した後、水500mLでの洗浄を4回繰り返した。これを硫酸ナトリウムにより乾燥した後、75℃でエバポレートし、さらに90℃で減圧脱気することにより、淡黄色固形のビスM型シアン酸エステル樹脂(以下、P-2M)を得た。得られたビスM型シアン酸エステル樹脂を赤外吸収スペクトルにより分析したところ、2234cm-1および2270cm-1付近のシアン酸エステル基の吸収が確認された。
【0073】
<組成物の調製>
実施例1
シアン酸エステル化合物(A)として、合成例1で得られたSNCN 50質量部と、ビスフェノールA型シアン酸エステル(商品名:TA 三菱瓦斯化学社製)50質量部を、アミンアダクト化合物(B)として、アミキュアPN-50(軟化温度110℃、味の素ファインテクノ社製)1質量部を、ホウ酸エステル(C)としてホウ酸トリエチル(東京化成工業社製)0.5質量部を、フェノール化合物(D)として4-ノニルフェノール(東京化成工業社製)6質量部を、スクリュー管瓶に投入し、加熱、攪拌混合して組成物を得た。
【0074】
実施例2
実施例1において、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリフェニル(東京化成工業社製)0.5質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0075】
実施例3
実施例1において、アミキュアPN-50 1質量部を用いる代わりに、アミキュアMY-25(軟化温度130℃、味の素ファインテクノ社製)1質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0076】
実施例4
実施例3において、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリフェニル0.5質量部用いたこと以外は、実施例3と同様にして組成物を得た。
【0077】
実施例5
実施例1において、4-ノニルフェノール6質量部を用いる代わりに、2,4-ジノニルフェノール(四日市合成社製)6質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0078】
実施例6
実施例1において、4-ノニルフェノール6質量部を用いる代わりに、4-ノニルフェノール8質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0079】
実施例7
実施例1において、4-ノニルフェノール6質量部を用いる代わりに、4-ノニルフェノール10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0080】
実施例8
実施例1において、SNCN50質量部と、TA 50質量部を用いる代わりに、ビスフェノールA型シアン酸エステルのプレポリマー(商品名:TA-1500、三菱瓦斯化学社製)70質量部と、TA 30質量部を用いたこと、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.15質量部用いたこと、4-ノニルフェノール 6質量部を用いる代わりに、4-ノニルフェノール 10質量部用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0081】
実施例9
実施例8において、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.3質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0082】
実施例10
実施例8において、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.5質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0083】
実施例11
実施例8において、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.7質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0084】
実施例12
実施例8において、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.9質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0085】
実施例13
実施例8において、アミキュアPN-50 1質量部を用いる代わりに、アミキュアPN-50 0.5質量部用いたこと、4-ノニルフェノール10質量部を用いる代わりに、4-ノニルフェノール6質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0086】
実施例14
実施例13において、アミキュアPN-50 0.5質量部を用いる代わりに、アミキュアPN-50 1.5質量部用いたこと、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.45質量部用いたこと以外は、実施例13と同様にして組成物を得た。
【0087】
実施例15
実施例1において、靭性付与剤(E)として、熱可塑性ポリイミド樹脂(商品名:サープリム 三菱瓦斯化学社製)25質量部を加えたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0088】
実施例16
実施例1において、SNCN 50質量部と、TA 50質量部を用いる代わりに、SNCN 65質量部と、合成例2で得られたP-2M 35質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0089】
実施例17
実施例8において、ビスフェノールA型シアン酸エステルのプレポリマー 70質量部と、TA 30質量部を用いる代わりに、ビスフェノールA型シアン酸エステルのプレポリマー 90質量部と、TA 10質量部を用いたこと、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.4質量部用いたこと、4-ノニルフェノール10質量部を用いる代わりに、4-ノニルフェノール9質量部用いたこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0090】
実施例18
実施例17において、ビスフェノールA型シアン酸エステルのプレポリマー 90質量部と、TA 10質量部を用いる代わりに、ビスフェノールA型シアン酸エステルのプレポリマー 85質量部と、TA 15質量部を用いたこと、靭性付与剤(E)として、サープリム 20質量部を加えたこと以外は、実施例17と同様にして組成物を得た。
【0091】
実施例19
実施例18において、ホウ酸トリエチル0.4質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.5質量部用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0092】
実施例20
実施例18において、ホウ酸トリエチル0.4質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.6質量部用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0093】
実施例21
実施例18において、ホウ酸トリエチル0.4質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル0.7質量部用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0094】
実施例22
実施例18において、ホウ酸トリエチル0.4質量部を用いる代わりに、ホウ酸トリエチル1質量部用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0095】
実施例23
実施例18において、サープリム 20質量部を用いる代わりに、シリコーン複合パウダー(商品名:KMP-600 信越化学工業社製)20質量部を用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0096】
実施例24
実施例18において、サープリム 20質量部を用いる代わりに、シリコーン複合パウダー(商品名:KMP-601 信越化学工業社製)20質量部を用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0097】
実施例25
実施例18において、サープリム 20質量部を用いる代わりに、シリコーン複合パウダー(商品名:KMP-602 信越化学工業社製)20質量部を用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0098】
実施例26
実施例18において、サープリム 20質量部を用いる代わりに、シリコーン複合パウダー(商品名:KMP-605 信越化学工業社製)20質量部を用いたこと以外は、実施例18と同様にして組成物を得た。
【0099】
比較例1
実施例1において、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0100】
比較例2
実施例3において、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いなかったこと以外は、実施例3と同様にして組成物を得た。
【0101】
比較例3
実施例1において、アミキュアPN-50 1質量部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0102】
比較例4
実施例2において、アミキュアPN-50 1質量部を用いなかったこと以外は、実施例2と同様にして組成物を得た。
【0103】
比較例5
実施例1において、アミキュアPN-50 1質量部、ホウ酸トリエチル 0.5質量部、ノニルフェノール6質量部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0104】
比較例6
実施例1において、アミキュアPN-50 1質量部、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして組成物を得た。
【0105】
比較例7
実施例8において、ホウ酸トリエチル0.15質量部を用いなかったこと以外は、実施例8と同様にして組成物を得た。
【0106】
比較例8
実施例16において、ホウ酸トリエチル0.5質量部を用いなかったこと以外は、実施例16と同様にして組成物を得た。
【0107】
比較例9
比較例8において、アミキュアPN-50 1質量部を用いる代わりに、コバルト(III)アセチルアセトナート(東京化成工業社製)0.1質量部用いたこと以外は、比較例8と同様にして組成物を得た。
【0108】
<組成物の評価>
上記のようにして得られた各組成物について、下記の基準に従って、各特性の評価を行った。
(1)粘度
動的粘弾性分析装置を用いて、各組成物の80℃での粘度(単位:Pa・s)を測定した。
動的粘弾性分析装置は、Discovery HR-2、TAインスツルメント社製を用いた。
【0109】
(2)安定性
動的粘弾性分析装置を用いて、各組成物を80℃で60分保持した際の粘度を測定した。試験開始前の粘度を100とした際の、試験開始60分後の相対粘度を算出し、安定性を評価した。
動的粘弾性分析装置は、Discovery HR-2、TAインスツルメント社製を用いた。
【0110】
(3)硬化性
示差走査熱量計を用い、開始温度40℃、終了温度380℃、昇温速度3℃/分の測定条件において、各組成物の発熱挙動を観察し、ピークトップ温度(単位:℃)を求めることで、硬化性を評価した。
示差走査熱量計は、DSC7020、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製を用いた。
【0111】
(4)硬化物耐熱性
上記のようにして得られた各組成物を、アルミカップに6g程計量し、硬化炉にて、135℃にて8時間、さらに、177℃にて4時間加熱して、硬化物を得た。
得られた硬化物を用いて、JIS C6481に準拠して動的粘弾性分析装置でDMA法により、貯蔵弾性率G’を測定し、オンセットの値をガラス転移温度(Tg、単位:℃)として硬化物耐熱性を評価した。
動的粘弾性分析装置は、Discovery HR-2、TAインスツルメント社製を用いた。
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
表1~表6からも明らかなように、本発明のシアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト(B)およびホウ酸エステル(C)を使用した樹脂組成物は、安定性と硬化性を有し、および、その硬化物は、優れた耐熱性(高いガラス転移温度)を有することが確認された。
【要約】
【課題】 優れた耐熱性を維持しつつ、潜在性に優れた樹脂組成物、ならびに、硬化物、封止材料、接着剤、絶縁材料、塗料、プリプレグ、多層体、および、繊維強化複合材料の提供。
【解決手段】 シアン酸エステル化合物(A)、アミンアダクト化合物(B)、および、ホウ酸エステル(C)を含む樹脂組成物。
【選択図】 なし