(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】伝送線路
(51)【国際特許分類】
H01P 3/08 20060101AFI20221220BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20221220BHJP
H01P 5/08 20060101ALI20221220BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H01P3/08 200
H01P5/02 603C
H01P5/08 Z
H05K1/02 P
(21)【出願番号】P 2022521921
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017809
(87)【国際公開番号】W WO2021230224
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】P 2020085754
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 賢二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 卓哉
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-287916(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050238(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/189050(WO,A1)
【文献】特開2002-184898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/08
H01P 5/02
H01P 5/08
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁体層を有する基板と、
前記基板の表層に形成された実装電極と、
前記基板内に形成された信号導体と、
前記基板に形成され、前記複数の絶縁体層の積層方向から見て前記信号導体に重なる第1グランド導体と、
前記実装電極と前記信号導体を電気的に接続し、前記積層方向において前記信号導体と前記第1グランド導体の間に配置された第1接続電極と、
前記実装電極と前記第1接続電極の間に電気的に接続され、前記第1接続電極に接合された第1層間接続導体と、
前記信号導体と前記第1接続電極の間に電気的に接続され、前記第1接続電極に接合され、前記積層方向から見て前記第1層間接続導体に重ならない第2層間接続導体と、を備え、
前記第1グランド導体は、前記積層方向から見て、前記第1接続電極の少なくとも一部に重ならない、伝送線路。
【請求項2】
前記第1グランド導体は、前記積層方向から見て、前記第1接続電極に重ならない、請求項1に記載の伝送線路。
【請求項3】
前記基板に形成され、前記積層方向から見て前記第1接続電極に重なる第2グランド導体を備え、
前記信号導体及び前記第1接続電極は、前記積層方向において、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体の間に配置され、
前記積層方向における前記第1接続電極と前記第2グランド導体の間の距離は、前記積層方向における前記第1接続電極と前記第1グランド導体の間の距離以上であり、
前記第1接続電極の最小幅は前記信号導体の最小幅より大きい、請求項2に記載の伝送線路。
【請求項4】
前記基板に形成され、前記積層方向から見て前記第1接続電極及び前記実装電極に重なる第2グランド導体を備え、
前記信号導体及び前記第1接続電極は、前記積層方向において、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体の間、かつ前記実装電極と前記第2グランド導体の間に配置され、
前記積層方向における前記第1接続電極と前記第2グランド導体の間の距離は、前記積層方向における前記第1接続電極と前記第1グランド導体の間の距離以上であり、
前記第1接続電極の最大幅は前記実装電極の最小幅より小さい、請求項2又は3に記載の伝送線路。
【請求項5】
前記第1接続電極は、前記積層方向から見て、前記第1グランド導体に重なる第1部分と、前記第1グランド導体に重ならない第2部分とを有し、
前記第1部分の最小幅は前記第2部分の最大幅より小さい、請求項1に記載の伝送線路。
【請求項6】
前記第1部分の最小幅は前記第2部分の最小幅より小さい、請求項5に記載の伝送線路。
【請求項7】
前記第1接続電極は、前記積層方向から見て、前記第1グランド導体に重なる第1部分と、前記第1グランド導体に重ならない第2部分とを有し、
前記第1部分の面積は前記第2部分の面積より小さい、請求項1に記載の伝送線路。
【請求項8】
前記第1接続電極の最小幅は前記信号導体の最小幅より小さい、請求項5から7の何れかに記載の伝送線路。
【請求項9】
前記基板に形成され、前記積層方向から見て前記第1接続電極に重なる第2グランド導体と、
前記第1グランド導体と前記第2グランド導体を電気的に接続する第2接続電極と、を備え、
前記信号導体、前記第1接続電極、及び前記第2接続電極は、前記積層方向において、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体の間に配置され、
前記積層方向における前記第1接続電極と前記第2グランド導体の間の距離は、前記積層方向における前記第1接続電極と前記第1グランド導体の間の距離以上であり、
前記第1接続電極と前記第2接続電極は、前記積層方向から見て、重ならない、請求項1から8の何れかに記載の伝送線路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に構成された伝送線路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の伝送線路として、例えば、特許文献1に記載の信号伝送線路がある。この信号伝送線路は、積層絶縁体、信号導体パターン、及び2つのグランド導体パターンを備える。積層絶縁体は積層された複数の絶縁体層で構成される。信号導体パターン及びグランド導体パターンは積層絶縁体に形成される。信号導体パターンはグランド導体パターンの間に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の信号伝送線路では、電子部品が実装される実装電極の下方で層間接続導体が直列に配置されているため、実装電極の平坦性が損なわれる虞がある。実装電極における良好な接続のためには、実装電極が高い平坦性を有することが好ましい。しかし、実装電極の平坦性を保つために、導体パターンを用いると、今度は特性インピーダンスがずれる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、実装電極の平坦性を保つことと、特性インピーダンスのずれを抑制することを可能にする伝送線路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の伝送線路は、複数の絶縁体層を有する基板と、前記基板の表層に形成された実装電極と、前記基板内に形成された信号導体と、前記基板に形成され、前記複数の絶縁体層の積層方向から見て前記信号導体に重なる第1グランド導体と、前記実装電極と前記信号導体を電気的に接続し、前記積層方向において前記信号導体と前記第1グランド導体の間に配置された第1接続電極と、前記実装電極と前記第1接続電極の間に電気的に接続され、前記第1接続電極に接合された第1層間接続導体と、前記信号導体と前記第1接続電極の間に電気的に接続され、前記第1接続電極に接合され、前記積層方向から見て前記第1層間接続導体に重ならない第2層間接続導体と、を備え、前記第1グランド導体は、前記積層方向から見て、前記第1接続電極の少なくとも一部に重ならない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実装電極の平坦性を保ち、伝送線路の特性インピーダンスのずれを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路10の平面図である。
【
図4】
図4は第1の実施形態に係る第1接続電極171の平面図である。
【
図5】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)、及び
図5(E)は、第1の実施形態の変形例に係る第1接続電極171の平面図である。
【
図6】
図6は第1の実施形態のさらに別の変形例に係る伝送線路30の要部の平面図である。
【
図7】
図7は第1の実施形態のさらに別の変形例に係る伝送線路40の要部の平面図である。
【
図8】
図8は、実装電極42、信号導体43、及び第1接続電極471の平面図である。
【
図9】
図9は本発明の第2の実施形態に係る伝送線路70の断面図である。
【
図12】
図12(A)及び
図12(B)は第2の実施形態の変形例に係る第1接続電極871,971の平面図である。
【
図13】他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
【
図14】他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
【
図15】他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
【
図16】他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
【
図17】他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
【
図18】他の実施形態に係る伝送線路の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以降、本発明を実施するための複数の形態を示す。各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。各々の実施形態では、その実施形態以前に説明した点と異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0010】
《第1の実施形態》
図1は本発明の第1の実施形態に係る伝送線路10の平面図である。
図2は伝送線路10のA-A断面図である。
図3は伝送線路10の要部の平面図である。
図3では、レジスト膜191の図示を省略している。
【0011】
伝送線路10は、平面形状を有し、一方向に延伸している。伝送線路10は、基板11、実装電極12、信号導体13、グランド導体141,142、層間接続導体16、及び接続電極17を備える。接続電極17は第1接続電極171及び第2接続電極172,173を含む。層間接続導体16は、第1層間接続導体161、第2層間接続導体162、及び層間接続導体163,164,165を含む。グランド導体141は本発明の「第1グランド導体」の一例である。グランド導体142は本発明の「第2グランド導体」の一例である。基板11の第1主面S1には電子部品20が実装されている。電子部品20は、整列した接続端子(信号端子)21及び接続端子(グランド端子)22を有する。
【0012】
伝送線路10は、実装電極12と信号導体13を接続する接続部151、及びグランド導体141とグランド導体142とを接続する接続部152を備える。接続部151は、第1層間接続導体161、第2層間接続導体162、及び第1接続電極171を有する。接続部152は層間接続導体163,164,165及び第2接続電極172,173を有する。伝送線路10は、接続部151が設けられた第1領域Z1、及び信号導体13が設けられた第2領域Z2を有する。
【0013】
基板11は積層された複数の絶縁体層111,112,113,114で構成される。実装電極12は基板11の表層に形成される。信号導体13は基板11内に形成される。グランド導体141は、基板11に形成され、複数の絶縁体層111~114の積層方向(以後、単に積層方向と称する)から見て(平面視で)信号導体13に重なる。グランド導体142は、基板11に形成され、平面視で、実装電極12、信号導体13、及び第1接続電極171に重なる。信号導体13、第1接続電極171、及び第2接続電極172,173は、積層方向において、グランド導体141とグランド導体142の間に配置される。
【0014】
信号導体13はそれぞれの信号線路に対して定義される。信号導体13は、同一層内にある連続した(分離していない)導体パターンであり、信号線路を構成して信号を伝達する導体パターンのうち最も大きい面積を有するものである。
【0015】
第1接続電極171は、実装電極12と信号導体13を電気的に接続し、積層方向において信号導体13とグランド導体141の間に配置される。積層方向における第1接続電極171とグランド導体142の間の距離は、積層方向における第1接続電極171とグランド導体141の間の距離以上である。第1層間接続導体161は、実装電極12と第1接続電極171の間に電気的に接続され、第1接続電極171に接合される。第2層間接続導体162は、信号導体13と第1接続電極171の間に電気的に接続され、第1接続電極171に接合される。さらに、第2層間接続導体162は平面視で第1層間接続導体161に重ならない。換言すれば、第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162は積層方向において直線状に整列していない。グランド導体141は平面視で第1接続電極171に重ならない。
【0016】
第2接続電極172,173は、グランド導体141とグランド導体142を電気的に接続する。第1接続電極171と第2接続電極172,173は平面視で重ならない。
【0017】
また、第1接続電極171の延伸方向に直交し、かつ積層方向に直交する方向から見て、接続部152を構成する層間接続導体163~165は接続部151を構成する第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162に重ならない。
【0018】
絶縁体層111~114は上側から下側にこの順で配置される。絶縁体層111~114は、例えば液晶ポリマー(LCP)のような熱可塑性樹脂で構成されるが、他の絶縁材料で構成されてもよい。絶縁体層111~114は、例えば加熱プレスにより一体化されるが、接着剤で互いに接合されてもよい。
【0019】
なお、本願明細書において、「上側」及び「下側」という文言は、一方側と他方側とを区別するための便宜的なものである。同様に、「上面」及び「下面」という文言は、一方側の主面と他方側の主面とを区別するための便宜的なものである。
【0020】
実装電極12及びグランド導体141は、基板11の第1主面S1、即ち絶縁体層111の上面に配置される。第1接続電極171及び第2接続電極172は絶縁体層112の上面に配置される。信号導体13及び第2接続電極173は絶縁体層113の上面に配置される。グランド導体142は、基板11における第1主面S1の反対側の第2主面S2、即ち絶縁体層114の下面に配置される。実装電極12、信号導体13、グランド導体141,142、及び接続電極17は、導体パターンであり、例えばCu箔をパターニングすることで形成される。
【0021】
第1層間接続導体161及び層間接続導体163は絶縁体層111に配置される。第2層間接続導体162及び層間接続導体164は絶縁体層112に配置される。層間接続導体165は絶縁体層113,114に配置される。層間接続導体16は、例えば、絶縁体層111~114の貫通孔に充填した電性ペーストを硬化させることで形成される。
【0022】
信号導体13は、伝送線路10の延伸方向と同じ方向に延伸し、互いに対向するグランド導体141,142の間に配置される。これにより、ストリップライン構造が形成される。
【0023】
グランド導体141はスリットSL1を有する。スリットSL1は、矩形状を有するが、他の形状を有してもよい。実装電極12及び第1接続電極171は平面視でスリットSL1内に配置される。スリットSL1は、信号特性の向上のために、第1接続電極171の延伸方向に沿って形成されることが好ましい。
【0024】
なお、グランド導体141には複数のスリットSL1が個別に設けられているが、幾つか又は全てのスリットSL1が互いに繋がっていてもよい。
【0025】
図4は第1の実施形態に係る第1接続電極171の平面図である。
図4では、
図3より具体的に第1接続電極171の形状を描写している。
図4では、第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162の位置、第1層間接続導体161の位置と第2層間接続導体162の位置を繋ぐ直線の方向α、及び方向αに垂直な方向βも示している。第1接続電極171は、第1層間接続導体161に接合された部分、第2層間接続導体162に接合された部分、及びそれらの間を延伸する部分を有する。
【0026】
ここで、第1接続電極、信号導体、及び実装電極の幅について説明しておく。第1接続電極の幅は、平面視で、第1層間接続導体の位置と第2層間接続導体の位置とを繋ぐ直線の方向に垂直な方向における第1接続電極の長さである。信号導体の幅は、平面視で、信号導体の延伸方向に垂直な方向における信号導体の長さである。実装電極の幅は、平面視で、実装電極に接合された層間接続導体の位置と実装電極に接合された接続端子の位置とを繋ぐ直線の方向に垂直な方向における実装電極の長さである。
【0027】
図5(A)、
図5(B)、
図5(C)、
図5(D)、及び
図5(E)は、第1の実施形態の変形例に係る第1接続電極171の平面図である。
図5(A)から
図5(E)では、第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162の位置、第1層間接続導体161の位置と第2層間接続導体162の位置を繋ぐ直線の方向α、及び方向αに垂直な方向βも示している。
図5(A)に示すように、第1接続電極171は、その方向αにおける中央部でより大きい幅を有してもよい。
図5(B)に示すように、第1層間接続導体161又は第2層間接続導体162は、平面視で第1接続電極171からはみ出していてもよい。
図5(C)に示すように、第1接続電極171は、その方向αにおける中央部で括れていてもよい。
図5(D)に示すように、第1接続電極171は、第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162のどちらにも接合されない突出部を有してもよい。
図5(E)に示すように、第1接続電極171は、その延伸方向の途中で曲がっていてもよい。
【0028】
ここで、基板11が実装電極12と信号導体13との間に3つ以上の絶縁体層を有する場合における接続部151の変形例について述べておく。
【0029】
接続部151は1つの第1接続電極及び2つ以上の層間接続導体で構成されてもよい。接続部151は複数の第1接続電極及び3つ以上の層間接続導体で構成されてもよい。この場合、接続部151の幾つかの層間接続導体が平面視で互いに重なってもよい。また、接続部151は、複数の絶縁体層に亘る層間接続導体を有してもよいし、積層方向において直線状に並ぶ複数の層間接続導体を有してもよい。
【0030】
例えば、基板11が実装電極12と信号導体13との間に3層を有する場合、接続部151は、1つの第1接続電極、1層に亘る1つの層間接続導体、及び2層に亘る1つの層間接続導体で構成されてもよい。あるいは、接続部151は、1つの第1接続電極、互いに直線状に並ぶ2つの層間接続導体、及び当該2つの層間接続導体と直線状に並ばない1つの層間接続導体で構成されてもよい。あるいは、接続部151は2つの第1接続電極及び3つの層間接続導体で構成されてもよい。
【0031】
基板11が実装電極12と信号導体13との間に3つ以上の絶縁体層を有する場合でも、接続部151は少なくとも1つの第1接続電極を有すればよい。即ち、第1層間接続導体と第2層間接続導体が積層方向において重ならなければよい。これにより、後述のように、実装電極12の平坦性が改善される。
【0032】
但し、実装電極12に物理的に接続される実装電極12直下の層間接続導体は、実装電極12の平坦性に大きな影響を与える。同様に、1つの第1接続電極を介して実装電極12直下の層間接続導体に接続される層間接続導体は、実装電極12の平坦性に大きな影響を与えることがある。このため、これらの層間接続導体は基板11内の他のどの層間接続導体にも重ならないことが好ましい。また、これらの層間接続導体は、複数の絶縁体層に亘って形成されないことが好ましいし、積層方向において他の層間接続導体と直線状に並ばないことが好ましい。
【0033】
接続部151が複数の接続電極及び3つ以上の層間接続導体で構成される場合、接続部151は、階段形状、ジグザグ形状、又は他の形状を有してもよい。
【0034】
層間接続導体163,164は平面視で重ならない。一方、層間接続導体163,165は平面視で重なる。これにより、接続部152は、ジグザグ形状を有するが、階段形状又は他の形状を有してもよい。
【0035】
接続部151,152は、電子部品20の接続端子21,22の配置に対応して、伝送線路10の幅方向において間隔をあけて配置される。接続部152は、平面視で、接続部151より電子部品20に近接して、又は電子部品20に重なるように配置される。
【0036】
基板11の第1主面S1にはレジスト膜191が形成される。基板11の第2主面S2にはレジスト膜192が形成される。レジスト膜191,192は、基板11の表面に形成された導体パターンを覆うように形成される。但し、レジスト膜191には、実装電極12の一部を露出させる開口、及びグランド導体141の一部を露出させる開口が形成される。
【0037】
電子部品20は、その接続端子21,22が伝送線路10の幅方向に整列するように配置される。接続端子21は、はんだ231を介して、レジスト膜191の開口から露出した実装電極12に接続される。接続端子22は、はんだを介して、レジスト膜191の開口から露出したグランド導体141に接続される。電子部品20は、例えば、コネクタ、ICのような信号端子を有する電子部品である。
【0038】
伝送線路の設計パラメータは所望の特性が得られるように適宜定められる。伝送線路の設計パラメータの具体例を以下に示す。
【0039】
絶縁体層の層厚T1:50μm
導体パターンの厚みT2:12μm
第1接続電極の最小幅W1及び信号導体の最小幅W3:60μm以上100μm以下
実装電極とグランド導体との間隔D1:40μm以上
接続電極の幅を信号導体より狭くする場合、接続電極の最小幅W1をW3-20μm以上、W3-10μm以下に定める。また、導体パターンは、実際には、約1~2μm絶縁体層に埋没している。
【0040】
第1の実施形態によれば、第1接続電極171は、積層方向において信号導体13よりグランド導体141に近づくが、平面視でグランド導体141に重ならない。このため、第1接続電極171とグランド導体141と間の容量値が信号導体13とグランド導体141と間の容量値より増加することが抑制される。従って、伝送線路10の第1領域Z1おける特性インピーダンスが伝送線路10の第2領域Z2おける特性インピーダンスからずれることが抑制される。
【0041】
また、樹脂シートを熱圧着して基板11を形成する際、樹脂シートより硬い層間接続導体16が直線状に並んでいると、基板11の表面がその層間接続導体16の形成箇所で突出する虞がある。第1の実施形態によれば、第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162が直線状に並んでいないので、実装電極12の平坦性の低下が抑制される。その結果、実装電極12と電子部品20の良好な接続が得られる。
【0042】
また、第1接続電極171の延伸方向に直交し、かつ積層方向に直交する方向(伝送線路10の幅方向)から見て、接続部152を構成する層間接続導体163~165は接続部151を構成する第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162に重ならない。このため、電子部品20の接続端子21,22の間隔が狭くても、接続部151の第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162と接続部152の層間接続導体163~165との間隔が確保されるので、接続部151の第1層間接続導体161及び第2層間接続導体162と接続部152の層間接続導体163~165との容量結合が抑制される。
【0043】
また、第1接続電極171と第2接続電極172,173は平面視で重ならない。このため、第1接続電極171と第2接続電極172,173の容量結合が抑制される。
【0044】
また、第1層間接続導体161、第2層間接続導体162、及び層間接続導体163~165は、直線状に整列しておらず、第1接続電極171及び第2接続電極172,173を介して接続される。このため、伝送線路10の湾曲に応じて、変形しやすい第1接続電極171及び第2接続電極172,173が湾曲するので、伝送線路10の湾曲性が保たれる。
【0045】
図6は第1の実施形態のさらに別の変形例に係る伝送線路30の要部の平面図である。伝送線路30は伝送線路10と次の点で異なる。即ち、伝送線路30は、スリットSL1を有するグランド導体141に代えて、スリットSL2を有するグランド導体341を備える。スリットSL2は、第1接続電極171により近い端部において、円弧形状又は丸みを有する。
【0046】
矩形状のスリットの端部を円弧状に変えることで、スリットの面積を増加させずに、第1接続電極171の延伸方向において第1接続電極171とグランド導体との間隔をより広くできる。このため、スリットからの放射ノイズを増加させずに、第1接続電極171とグランド導体との容量結合をより抑制できる。
【0047】
第1接続電極171とグランド導体との間隔を広くするために、スリットを円形状にしてもよい。但し、スリットを円形状にすると、スリットの幅が広くなる。このため、電子部品20の接続端子21,22の間隔が狭い場合、円形状のスリットより、円弧状の端部を有するスリットの方が好ましい。
【0048】
図7は第1の実施形態のさらに別の変形例に係る伝送線路40の要部の平面図である。伝送線路40は伝送線路10と次の点で異なる。即ち、伝送線路40は、実装電極12、信号導体13、及び第1接続電極171に代えて、実装電極42、信号導体43、及び第1接続電極471を備える。
【0049】
図8は、実装電極42、信号導体43、及び第1接続電極471の平面図である。
図8では、実装電極42、信号導体43、及び第1接続電極471の位置をずらして図示している。第1接続電極471の最小幅W1は信号導体43の最小幅W3より大きい。第1接続電極471の最大幅W2は実装電極42の最小幅W4より小さい。
【0050】
第1接続電極の最小幅W1を信号導体の最小幅W3より大きくすることで、第1接続電極での導体損を抑制できる。
【0051】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1接続電極は、平面視で、基板の上面側のグランド導体に重なる第1部分と、基板の上面側のグランド導体に重ならない第2部分とを有する。
【0052】
図9は本発明の第2の実施形態に係る伝送線路70の断面図である。
図10は伝送線路70の要部の平面図である。
図10では、レジスト膜191の図示を省略している。
【0053】
伝送線路70は第1の実施形態に係る伝送線路10と次の点で異なる。即ち、伝送線路70は、スリットSL1を有するグランド導体141に代えて、スリットSL3を有するグランド導体741を備える。また、伝送線路70は、第1接続電極171を有する接続部151に代えて、第1接続電極771を有する接続部751を備える。スリットSL3の長さはスリットSL1の長さより短く、第1接続電極771は一部分において平面視でグランド導体741に重なる。第1接続電極771の最小幅W1は信号導体13の最小幅W3より小さい。
【0054】
図11は第1接続電極771の平面図である。
図11では、
図10より具体的に第1接続電極771の形状を描写している。第1接続電極771は、平面視で、グランド導体741に重なる第1部分7711、及びグランド導体741に重ならない第2部分7712を有する。第1部分7711の最小幅W5は第2部分7712の最大幅W6より小さい。第1部分7711の面積は第2部分7712の面積より小さい。
【0055】
図12(A)及び
図12(B)は、第2の実施形態の変形例に係る第1接続電極871,971の平面図である。伝送線路70は、第1接続電極771に代えて、
図12(A)に示すような第1接続電極871、又は
図12(B)に示すような第1接続電極971を備えてもよい。
【0056】
第1接続電極871は、平面視で、グランド導体741に重なる第1部分8711、及びグランド導体741に重ならない第2部分8712を有する。第1接続電極871の幅は、その延伸方向において途中で変化する。第1部分8711の最小幅W5は第2部分8712の最大幅W6より小さい。第1部分8711の面積は第2部分8712の面積より小さい。
【0057】
第1接続電極971は、平面視で、グランド導体741に重なる第1部分9711、及びグランド導体741に重ならない第2部分9712を有する。第1部分9711の最小幅W5は第2部分9712の最大幅W6より小さい。第1部分9711の最小幅W5は第2部分9712の最小幅W7より小さい。第1部分9711の面積は第2部分9712の面積より小さい。
【0058】
第2の実施形態では、伝送線路70の延伸方向において、実装電極12の直前までグランド導体741が形成される。このため、高周波信号が伝送線路70から出力される直前まで、高周波信号への外部ノイズの重畳が防止される。特に、伝送線路70の信号線を積層方向に持ち上げる第2層間接続導体162が位置する箇所で、他の箇所より、電界強度が強くなる。第2の実施形態では、その箇所がグランド導体741によって覆われているので、高周波信号への外部ノイズの重畳が効果的に防止されている。
【0059】
また、スリットSL3からのノイズの放射がより抑制される。
【0060】
さらに、第1接続電極771,871,971は、それぞれ、平面視でグランド導体741に重なるが、グランド導体741に対向する面積が小さくなるように形成される。このため、第1接続電極771,871又は971とグランド導体741と間の容量値の増加、従って伝送線路70の特性インピーダンスのずれが抑制される。
【0061】
《他の実施形態》
図13、
図14、
図15、
図16、及び
図17は、他の実施形態に係る伝送線路の断面図である。
図13から
図17示すように、接続部151は、例えば、基板11内に実装された電子部品や配線との不要な導通、結合、又は干渉を避けるため、第2主面S2側に迂回するように形成されてもよい。この場合、第1接続電極171は信号導体13とグランド導体142の間に配置される。グランド導体142は、部分的に除かれ、第1接続電極171の少なくとも一部に重ならない。これにより、第1接続電極171とグランド導体142の間の容量
結合が抑制される。
【0062】
なお、
図13から
図17では、上記基板11内に実装された電子部品や配線の図示を省略している。
【0063】
図13に示すように、層間接続導体16は、複数層を貫通するビアホールでもよい。また、
図18に示すように、1つの層間接続導体16が、異なる種類の樹脂シートから形成された複数の絶縁体層511,512を貫通してもよい。
図14から
図17に示すように、接続部151は、3つ以上の層間接続導体16、及び複数の接続電極17を有してもよい。
図17に示すように、接続部151は平面視で重なる層間接続導体16を有してもよい。さらに、
図17に示すように、グランド導体142は内層に形成されてもよい。
【0064】
図16に示すように、接続部151の接続電極17は、平面視で、グランド導体141とグランド導体143を接続する接続部551に重ならない。このように、接続部151の接続電極17は、平面視で、グランドに繋がった配線部に重ならないことが好ましい。これにより、接続部151の接続電極17と当該配線部の容量結合が抑制される。
【0065】
最後に、上記の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上記の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0066】
S1…第1主面
S2…第2主面
Z1…第1領域
Z2…第2領域
10,30,40,70…伝送線路
11…基板
12,42…実装電極
13,43…信号導体
16…層間接続導体
17…接続電極
20…電子部品
21,22…接続端子
111,112,113,114,511,512…絶縁体層
141,142,143,341,741…グランド導体
151,152,551,751…接続部
161…第1層間接続導体
162…第2層間接続導体
163,164,165…層間接続導体
171,471,771,871,971…第1接続電極
172,173…第2接続電極
191,192…レジスト膜
7711,8711,9711…第1部分
7712,8712,9712…第2部分