(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】回路基板、回路基板の接続構造、および、回路基板の接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/14 20060101AFI20221220BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20221220BHJP
H01P 1/04 20060101ALI20221220BHJP
H01P 3/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
H05K1/14 C
H05K1/02 P
H01P1/04
H01P3/08 200
(21)【出願番号】P 2022521922
(86)(22)【出願日】2021-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2021017818
(87)【国際公開番号】W WO2021230226
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2020084867
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川辺 健太朗
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098011(WO,A1)
【文献】特開2014-86616(JP,A)
【文献】特開2005-136347(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098012(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131286(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131288(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/159521(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/146253(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00―5/22
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性の樹脂層を積層してなり、積層方向の一方端に第1主面を有し、他方端に第2主面を有する積層体と、
前記第1主面に形成された実装導体と、
前記実装導体および前記積層体に形成される他の導体よりも前記第2主面側に形成された面状導体と、
を備え、
前記積層体は、
前記実装導体を用いて導電性接合材によって外部の基板に接合される接続部と、
前記接続部以外の回路部と、を備え、
前記面状導体における前記回路部の領域である第1領域には、第1開口穴を有し、
前記面状導体における前記接続部の領域である第2領域には、第2開口穴を有し、
前記第2領域の面積に対する前記第2開口穴による開口面積の比は、前記第1領域の面積に対する前記第1開口穴による開口面積の比よりも大きい、
回路基板。
【請求項2】
前記積層体は、複数の前記第2開口穴を有する、
請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記積層体は、複数の前記第1開口穴を有し、
複数の前記第2開口穴のうち最も開口面積が小さい前記第2開口穴の開口面積は、複数の前記第1開口穴のうち最も開口面積が大きい前記第1開口穴の開口面積よりも大きい、
請求項2に記載の回路基板。
【請求項4】
複数の前記第1開口穴は、周期的に配置されている、
請求項3に記載の回路基板。
【請求項5】
前記積層体は、複数の前記第1開口穴を有し、
複数の前記第1開口穴は、周期的に配置されている、
請求項1または請求項2に記載の回路基板。
【請求項6】
前記積層体の内部には、前記実装導体に接続し、導電性ペーストを固化することによって形成される層間接続導体を備える、
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の回路基板。
【請求項7】
前記積層方向に視て、前記第2開口穴と前記層間接続導体とは異なる位置に配置されている、
請求項6に記載の回路基板。
【請求項8】
前記面状導体は、前記積層方向に視て、前記接続部の領域において前記層間接続導体の形成領域の外側に、スリット状の開口を有する、
請求項6または請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記積層体の前記第2主面に、絶縁性の保護膜を備え、
前記保護膜は、前記面状導体における前記接続部の領域において、その中央領域を開口する保護膜用開口を有する、
請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の回路基板。
【請求項10】
前記面状導体は、前記接続部から前記回路部まで繋がっている、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の回路基板。
【請求項11】
前記面状導体は、グランド導体である、
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の回路基板。
【請求項12】
前記積層体の内部には、前記積層方向の途中位置に、信号導体を備え、
前記信号導体と前記グランド導体とによって、伝送線路が形成されている、
請求項11に記載の回路基板。
【請求項13】
前記グランド導体の幅は、前記信号導体の幅よりも大きい、
請求項12に記載の回路基板。
【請求項14】
請求項1乃至請求項13のいずれかに記載の回路基板と、
前記外部の基板と、を備え、
前記導電性接合材によって、前記回路基板と前記外部の基板とを接続する、
回路基板の接続構造。
【請求項15】
前記外部の基板は、前記回路基板と同様の構成を備える、
請求項13に記載の回路基板の接続構造。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の基板の接続構造の製造方法であって、
前記外部の基板に対して、前記導電性接合材を配置し、
前記積層体の前記接続部を、前記外部の基板に対して前記第1主面を対向させて配置し、
前記面状導体における前記接続部の領域に、ヒータバーを当接させながら、前記回路基板を、前記外部の基板に対して、加熱圧着させる、
回路基板の接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱可塑性の樹脂層を積層してなる積層体を備える回路基板の接続部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の伝送線路が接続された伝送線路装置が記載されている。特許文献1に記載の伝送線路装置は、第1伝送線路と第2伝送線路とを備える。第1伝送線路と第2伝送線路とは、それぞれに熱可塑性樹脂の絶縁性基材を備える。
【0003】
第1伝送線路と第2伝送線路とは、それぞれに接続部を備える。第1伝送線路と第2伝送線路とは、それぞれの接続部において、導電性接合材を介して接続(接合)される。
【0004】
特許文献1に記載の構成では、まず、熱可塑性樹脂の絶縁層を積層して、加熱圧着することによって、第1伝送線路と第2伝送線路とを形成する。
【0005】
次に、接続部を局所的に加熱する等の処理を行うことによって、第1伝送線路の接続部と第2伝送線路の接続部とを接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、接続部は、他の部分よりも大きな熱履歴を受ける。このため、接続部は、意図しない変形やグランド導体等の剥離が生じ易くなる。
【0008】
したがって、本発明の目的は、接続部の意図しない変形や導体等の剥離を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における回路基板は、熱可塑性の樹脂層を積層してなり、積層方向の一方端に第1主面を有し、他方端に第2主面を有する積層体と、第1主面に形成された実装導体と、実装導体および積層体に形成される他の導体よりも第2主面側に形成された面状導体と、を備える。積層体は、実装導体を用いて導電性接合材によって外部の基板に接合される接続部と、接続部以外の回路部と、を備える。面状導体における回路部の領域である第1領域には、第1開口穴を有し、面状導体における接続部の領域である第2領域には、第2開口穴を有する。第2領域の面積に対する第2開口穴による開口面積の比は、第1領域の面積に対する第1開口穴による開口面積の比よりも大きい。
【0010】
この構成では、回路基板が外部の基板に接続される箇所、より具体的には、回路基板を外部の基板に熱履歴を与えて接続(接合)させる箇所において、熱可塑性樹脂の変形を適正に制御し、積層体の意図しない変形や絶縁体層と導体との界面等の剥離が生じ難い。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、積層体の意図しない変形や導体等の剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1(A)は、第1の実施形態に係る回路基板の接続構造10の概略構成を示す側面断面図である。
図1(B)は、第1の実施形態に係る回路基板20の平面図である。
【
図2】
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)、
図2(D)は、回路基板の接続構造10の製造方法を説明するための図である。
【
図3】
図3は、接続部ReJの開口穴292の箇所を拡大した側面断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の変形例に係る回路基板25の平面図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る回路基板20Aの接続部ReJの平面図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係る回路基板20Bの接続部ReJの平面図である。
【
図7】
図7は、第4の実施形態に係る回路基板の接続構造10Cの概略構成を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る基板接合構造について、図を参照して説明する。
図1(A)は、第1の実施形態に係る回路基板の接続構造10の概略構成を示す側面断面図である。
図1(B)は、第1の実施形態に係る回路基板20の平面図である。なお、
図1(A)、
図1(B)は、回路基板、基板のそれぞれの一部を示し、
図1(A)は、構成が分かり易いような適切な断面で切った図を示す。また、
図1(A)、
図1(B)では、寸法を適宜誇張して記載している。
図2(A)、
図2(B)、
図2(C)、
図2(D)は、回路基板の接続構造の製造方法を説明するための図である。
図3は、接続部ReJの開口穴292の箇所を拡大した側面断面図である。
【0014】
図1(A)、
図1(B)に示すように、回路基板の接続構造10は、回路基板20、基板30を備える。基板30が、本発明の「外部の基板」に対応する。
【0015】
(回路基板20の構成)
回路基板20は、積層体21、信号導体22、グランド導体231、グランド導体232、実装導体241、層間接続導体251、層間接続導体252、および、保護膜261を備える。
【0016】
積層体21は、複数の絶縁体層201、202、203を備える。複数の絶縁体層201、202、203は、熱可塑性樹脂を材料とする。積層体21は、複数の絶縁体層201、202、203を積層して加熱圧着することによって形成される。これにより、積層体21は、積層方向の一方端に主面211を有し、積層方向の他方端に主面212を有する。主面211が、本発明の「第1主面」に対応し、主面212が、本発明の「第2主面」に対応する。
【0017】
積層体21は、接続部ReJと回路部とを有する。接続部ReJは、積層方向に視て(図のz軸方向に視て:以下、この方向で視ることを平面視と称する)、基板30に重なる部分であり、回路部は、接続部ReJ以外の部分である。この実施形態では、接続部ReJの幅(信号導体22の延びる方向および絶縁体層の積層方向に直交する方向(図のy軸方向)の幅)は、回路部の幅よりも大きい。
【0018】
信号導体22は、信号の伝送方向(例えば、図の例であれば、x軸方向)に沿って延びる形状である。信号導体22は、所謂、線状導体である。信号導体22は、接続部ReJと回路部との両方に、これらに跨がって配置されている。信号導体22は、積層体21における積層方向(z軸方向)の途中位置に配置されている。
【0019】
グランド導体231は、面状導体であり、積層体21の主面211の略全面に配置されている。略全面とは、主面211の全面も含む概念である。すなわち、グランド導体231は、接続部ReJと回路部との両方に、これらに跨がって配置されている。グランド導体231は、積層方向に視て信号導体22に重なるように配置されており、信号導体22よりも幅広の導体である。しかしながら、グランド導体231は、積層体21の幅方向の全体に広がる形状であることが好ましい。
【0020】
グランド導体231における接続部ReJの領域には、信号導体22の一方端を含むように、開口(導体の非形成部)を有する。
【0021】
実装導体241は、例えば、平面視して、矩形の導体である。実装導体241は、主面211に配置されている。実装導体241は、上述のグランド導体231の開口内に配置されており、信号導体22の一方端に重なっている。すなわち、実装導体241は、接続部ReJの領域に配置されている。実装導体241とグランド導体231とは、分離されている。
【0022】
グランド導体232は、面状導体であり、積層体21の主面212の略全面に配置されている。略全面とは、主面212の全面も含む概念である。すなわち、グランド導体232は、接続部ReJと回路部との両方に、これらに跨がって配置されている。グランド導体232は、積層方向に視て信号導体22に重なるように配置されており、信号導体22よりも幅広の導体である。しかしながら、グランド導体232は、積層体21の幅方向の全体に広がる形状であることが好ましい。
【0023】
なお、グランド導体232は、接続部ReJの部分と回路部の部分とで分離されていてもよい。しかしながら、接続部ReJと回路部とでグランド導体232が繋がっていることによって、後述する複数の開口穴291および複数の開口穴292を有していても、グランド特性を安定させることができる。
【0024】
また、グランド導体232およびグランド導体231が面状導体であり、信号導体22よりも幅が広いことで、後述する複数の開口穴291および複数の開口穴292を有していても、特性インピーダンスの変化を抑制でき、外部環境に対する電磁シールド性を高めることができる。特に、本願発明のように、平面視して、グランド導体232およびグランド導体231が信号導体22に重なり、挟みこむ構成であることによって、外部環境に対する電磁シールド性を高めることができる。さらに、本発明のように、グランド導体232が信号導体22に重なり、積層体21の略全幅に亘って存在することで、複数の開口穴291および複数の開口穴292を有していても、特性インピーダンスの変化をさらに効果的に抑制でき、外部環境に対する電磁シールド性をさらに高めることができる。
【0025】
信号導体22、グランド導体231、グランド導体232、および、実装導体241は、例えば、銅箔等によって実現される。
【0026】
層間接続導体251および層間接続導体252は、積層体21の接続部ReJに形成されている。
【0027】
層間接続導体251は、平面視において、信号導体22と実装導体241とに重なる位置に配置されている。層間接続導体251は、信号導体22と実装導体241とを接続する。
【0028】
層間接続導体252は、平面視において、信号導体22と重ならず、グランド導体231とグランド導体232とに重なる位置に配置されている。層間接続導体252は、グランド導体231とグランド導体232とを接続する。なお、層間接続導体252は、複数配置されている。
【0029】
層間接続導体251、層間接続導体252は、例えば、導電性ペーストを固化することによって形成される。
【0030】
なお、図示を省略しているが、層間接続導体252と同様の層間接続導体は、回路部にも、所定のパターンで形成されている。
【0031】
保護膜261は、積層体21の主面211側に配置されている。保護膜261は、所謂レジスト膜等であり、絶縁性を有する。保護膜261は、グランド導体231における接続部ReJの領域の一部を外部に露出する開口を有する。また、保護膜261は、実装導体241を部分的に外部に露出する開口を有する。これらの開口が、基板30への接続に利用される。
【0032】
これにより、回路基板20は、実装導体241の露出部とグランド導体231の接続部ReJでの露出部を外部接続端子とした、トリプレートのストリップ線路型の伝送線路を実現する。
【0033】
(基板30の構成)
基板30は、絶縁性の基材31、信号用ランド導体32、グランド用ランド導体33、保護膜34を備える。基材31は、主面311と主面312とを有する。基材31は、例えば、FR4等の樹脂基板によって実現される。
【0034】
信号用ランド導体32、および、グランド用ランド導体33は、主面311に配置されている。信号用ランド導体32、および、グランド用ランド導体33は、例えば、銅箔等によって実現される。
【0035】
保護膜34は、基材31の主面311側に配置されている。保護膜34は、所謂レジスト膜等であり、絶縁性を有する。保護膜34は、信号用ランド導体32、および、グランド用ランド導体33の一部を外部に露出する開口を有する。これらの開口が、回路基板20への接続に利用される。
【0036】
(回路基板20と基板30との接続構造)
平面視において、回路基板20の接続部ReJは、基板30に重なっている。より具体的には、実装導体241の露出部と信号用ランド導体32の露出部とは重なっている。グランド導体231の接続部ReJでの露出部と、グランド用ランド導体33の露出部とは、重なっている。そして、実装導体241と信号用ランド導体32とは、導電性接合材41によって接続される。グランド導体231とグランド用ランド導体33とは、導電性接合材42によって接続される。なお、導電性接合材41および導電性接合材42は、例えば、はんだである。
【0037】
この導電性接合材41および導電性接合材42による接続は、回路基板20の接続部ReJと基板30との重なる部分に対する加熱および加圧によって実現される。
【0038】
(回路基板20と基板30との接続構造の製造方法)
上述の構成は、次のような製造方法によって実現される。まず、
図2(A)に示すように、グランド導体231が形成された絶縁体層201、信号導体22が形成された絶縁体層202、グランド導体232が形成された絶縁体層203を積層する。絶縁体層201、および、絶縁体層202には、層間接続導体251用の貫通孔が形成されており、導電性ペーストが充填されている。また、絶縁体層201、絶縁体層202、および、絶縁体層203には、層間接続導体252用の貫通孔が形成されており、導電性ペーストが充填されている。
【0039】
次に、絶縁体層201、絶縁体層202、絶縁体層203が積層された部材を、加熱圧着し、積層体21を形成する。この際、導電性ペーストは固化し、層間接続導体251および層間接続導体252が形成される。そして、積層体21の主面211側に、保護膜261が形成されることによって、
図2(B)に示すように、回路基板20は形成される。
【0040】
次に、基板30の信号用ランド導体32の露出部、および、グランド用ランド導体33の露出部に、はんだ等の導電性接合材を配置する。
【0041】
次に、
図2(C)に示すように、回路基板20の接続部ReJと基板30とを重ね合わせる。この際、回路基板20は、主面211が基板30に対向するように配置される。そして、回路基板20(積層体21)の主面212側から、ヒータバー90によって、回路基板20の接続部ReJを基板30に対して、加熱圧着する。この際、
図2(C)、
図2(D)に示すように、ヒータバー90は、接続部ReJの略全面に接するように、少なくとも、平面視において、導電性接合材に重なる位置を含むように回路基板20の主面212側から押し込まれる。
【0042】
これにより、導電性接合材は固化して、回路基板20と基板30とは接続される。
【0043】
(グランド導体のより具体的な構成)
グランド導体232には、複数の開口穴291、および、複数の開口穴292を有する。開口穴291が、本発明の「第1開口穴」に対応し、開口穴292が、本発明の「第2開口穴」に対応する。複数の開口穴291および複数の開口穴292は、グランド導体232における導体の非形成部によって実現される。
【0044】
複数の開口穴291は、グランド導体232における回路部の領域に配置されている。複数の開口穴292は、グランド導体232における接続部ReJの領域に配置されている。グランド導体232における回路部の領域が本発明の「第1領域」に対応し、グランド導体232における接続部ReJの領域が本発明の「第2領域」に対応する。
【0045】
開口穴292の開口面積は、開口穴291の開口面積よりも大きい。接続部ReJの領域における複数の開口穴292によるグランド導体232に対する開口面積(接続部の開口面積)は、回路部の領域における複数の開口穴291によるグランド導体232の開口面積(回路部の開口面積)よりも大きい。より具体的には、グランド導体232の第2領域の面積に対する複数の開口穴292の開口面積の合計面積の比は、グランド導体232の第1領域の面積に対する複数の開口穴291の開口面積の合計面積の比よりも大きい。なお、接続部の開口面積は、回路部の開口面積と同程度であってもよいが、大きい方が好ましい。
【0046】
このような開口穴291および開口穴292を有することによって、回路基板20の積層体21の形成時、すなわち、加熱圧着時に、積層体21を構成する複数の絶縁層から発生するガスを、積層体21の外部に逃がすことができる。これにより、積層体21の意図しない変形を抑制できる。また、信号導体22、グランド導体231およびグランド導体232と、積層体21との間、すなわち回路基板20に存在する各界面での剥離を抑制できる。
【0047】
さらに、上述のように、回路基板20を基板30へ接続する際、主として接続部ReJが加熱および加圧され、回路部へは、殆ど加熱および加圧されない。したがって、接続部ReJは、回路部よりも大きな熱および圧力を受けることになる。しかしながら、接続部の開口面積が回路部の開口面積よりも大きいことにより、接続部ReJが回路部よりも大きな(多くの)熱および圧力を受けても、開口面積の大きさに応じて、接続部ReJは、適切なガス抜きを実現できる。これにより、接続部ReJにおいて、積層体21の意図しない変形を抑制でき、回路基板20に存在する各界面での剥離を抑制できる。
【0048】
また、上述の構成では、回路部において、複数の開口穴291の開口面積は、接続部ReJに配置された複数の開口穴292の開口面積よりも小さい。より具体的には、個々の開口穴291の開口面積は、個々の開口穴292の面積よりも小さい。これにより、上述の作用効果とともに、積層体21の回路部における特性インピーダンスの変化を抑制し、電磁シールド性を高めることができる。また、複数の開口穴291が周期的に配置されることによって、局所的な特性インピーダンスの変化、電磁シールド性の低下を抑制できる。
【0049】
また、回路部は、接続部ReJよりも、回路基板に占める割合が大きいことが多い。したがって、回路基板20としても、上述の作用効果が得られるとともに、特性インピーダンスの変化を抑制し、電磁シールド性を高めることができる。すなわち、この構成では、特性インピーダンスの変化を抑制し、電磁シールド性を高めながら、回路部よりも意図しない変形や界面の剥離が生じ易い接続部ReJに対して、意図しない変形や界面の剥離を抑制できる。
【0050】
また、上述の構成では、複数の開口穴292を分散して備える構成を採用している。したがって、より大きな開口穴を1個または少数備える場合よりも、特性インピーダンスの局所的な不連続や、電磁シールド性の劣化を抑制できる。また、ヒータバー90が接触しない領域が一部に集中することを避けられるため、接続部ReJを全体的に均一に加熱、加圧することができる。
【0051】
また、接続部ReJには、層間接続導体251および層間接続導体252が存在する。層間接続導体251および層間接続導体252は、上述のように、導電性ペーストを加熱によって固化することによって実現される。この際、導電性ペーストから多くのガスが発生する。例えば、導電性ペーストに含まれる樹脂の固化、導電性ペーストを構成するCu-Sn合金の反応時に、ガスが発生する。しかしながら、接続部の開口面積が大きいことにより、導電性ペースから発生するガスを、接続部ReJの開口穴292から外部に、効果的に放出できる。すなわち、層間接続導体251および層間接続導体252を有していても、接続部ReJは、適切なガス抜きを実現できる。これにより、接続部ReJにおいて、積層体21の意図しない変形を抑制でき、回路基板20に存在する各界面での剥離を抑制できる。
【0052】
また、本実施形態の構成では、平面視において、層間接続導体251および層間接続導体252と、複数の開口穴292との位置は、異なる。すなわち、層間接続導体251および層間接続導体252の位置には、グランド導体232が配置される。したがって、ヒータバー90からの熱を、層間接続導体251および層間接続導体252の固化に利用できる、この熱を効果的に伝達できる。これにより、層間接続導体251および層間接続導体252の固化をより確実に実現できる。よって、層間接続導体251および層間接続導体252の信頼性、ひいては、回路基板20の信頼性は向上する。
【0053】
さらに、この構成では、平面視して、層間接続導体251と導電性接合材41とが重なっており、層間接続導体252と導電性接合材42とが重なっている。そして、これらは、グランド導体232に重なり、複数の開口穴292には重ならない。したがって、ヒータバー90からの熱を、導電性接合材41および導電性接合材42に、効果的に伝達できる。これにより、導電性接合材41および導電性接合材42の固化をより確実に実現できる。よって、導電性接合材41および導電性接合材42の信頼性、すなわち、回路基板20と基板30との接続信頼性は、向上する。
【0054】
なお、本実施形態の態様では、層間接続導体251、層間接続導体252、導電性接合材41および導電性接合材42と、複数の開口穴292とが、完全に重ならない。しかしながら、層間接続導体251、層間接続導体252、導電性接合材41および導電性接合材42と、複数の開口穴292とは、部分的に重なってもよい。ただし、上述の熱伝達の効率を考慮すると、層間接続導体251、層間接続導体252、導電性接合材41および導電性接合材42と、複数の開口穴292とは、完全に重ならないことが好ましい。
【0055】
なお、開口穴292の開口面積は、例えば、
図3に示すように、回路基板20と基板30との接続後において、積層体21が開口穴292から盛り上がっても、グランド導体232の外面2320上にはみ出さない程度であることが好ましい。すなわち、開口穴292の開口面積は、回路基板20と基板30との接続後の状態において、積層体21の露出面がグランド導体232の外面2320よりも突出しない程度であればよい。これにより、グランド導体232と信号導体22との間が、不必要に短くなることを抑制できる。したがって、回路基板20で伝送する高周波信号に対する特性インピーダンスの不必要な変化は、抑制される。
【0056】
また、上述の説明では、開口穴292および開口穴291の平面形状は円形であるが、円形に限るものではない。すなわち、それぞれが上述の機能を有する開口面積を有していれば、開口穴292および開口穴291の平面形状は、他の形状であってもよい。
【0057】
(第1の実施形態の変形例)
本発明の第1の実施形態の変形例に係る基板接合構造について、図を参照して説明する。
図4は、第1の実施形態の変形例に係る回路基板
25の接続部の平面図である。
【0058】
図4に示すように、第1の実施形態の変形例に係る回路基板25は第1の実施形態に係る回路基板20に対して、平面視において信号導体22と開口穴291、開口穴292が重ならない点で異なる。回路基板25の他の構成は、回路基板20と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0059】
グランド導体232には、複数の開口穴291、および、複数の開口穴292を有する。開口穴291は、グランド導体232における回路部の領域に周期的に配置されている。開口穴291は、平面視において信号導体22に重ならない。また、開口穴292は、グランド導体232における接続部ReJの領域に周期的に配置されている。開口穴292は、平面視において信号導体22に重ならない。
【0060】
この構成では、信号導体22を避けて開口穴291、開口穴292が形成されているため、第1の実施形態における作用効果とともに、信号導体22に対する電磁シールド性の低下を抑制できる。
【0061】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る基板接合構造について、図を参照して説明する。
図5は、第2の実施形態に係る回路基板20Aの接続部の平面図である。
【0062】
図5に示すように、第2の実施形態に係る回路基板20Aは、第1の実施形態に係る回路基板20に対して、スリット開口293を有する点で異なる。回路基板20Aの他の構成は、回路基板20と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0063】
スリット開口293は、グランド導体232における接続部ReJの領域に配置される。スリット開口293は、部分的な枠状であり、グランド導体232における導体の非形成部によって実現される。
【0064】
スリット開口293は、平面視において、複数の開口穴292が形成される領域、および、層間接続導体251および層間接続導体252が形成される領域に配置される。言い換えれば、上述のヒータバー90が接触する領域の略全域を内側に含むように配置される。
【0065】
これにより、ヒータバー90からの熱は、グランド導体232におけるスリット開口293に囲まれる領域から、その外方へ漏洩し難くなる。したがって、ヒータバー90の熱は、効果的に接続部ReJの内部に伝達される。この結果、上述のような、導電性接合材41、導電性接合材42、層間接続導体251および、層間接続導体252の固化を効果的に実現できる。また、接続部ReJの側端部付近での不必要な積層体21の流動は抑制される。
【0066】
なお、スリット開口293は、全周に亘って連続する形状であってもよいが、部分的に不連続な箇所を有することが好ましい。これにより、接続部ReJでのグランドが安定する。また、スリット開口293の内側領域の面積は、ヒータバー90の接触面の面積よりも大きいことが好ましい。これにより、ヒータバー90の接触位置に誤差が生じても、スリット開口293の内部のみに接触し易い。
【0067】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る基板接合構造について、図を参照して説明する。
図6は、第3の実施形態に係る回路基板20Bの接続部ReJの平面図である。
【0068】
図6に示すように、第3の実施形態に係る回路基板20Bは、第2の実施形態に係る回路基板20Aに対して、保護膜262を備える点で異なる。回路基板20Bの他の構成は、回路基板20Aと同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0069】
保護膜262は、保護膜261と同様に、所謂レジスト膜等である。保護膜262は、積層体21の主面212側に配置されている。
【0070】
保護膜262は、接続部ReJと回路部との両方に跨がって配置されている。保護膜262は、回路部においては、グランド導体232の全面を覆っている。
【0071】
保護膜262は、接続部ReJにおいては、保護膜用開口2620を有している。保護膜262は、保護膜用開口2620を除き、グランド導体232の全面を覆っている。
【0072】
平面視において、保護膜用開口2620は、スリット開口293の内側領域に配置される。さらに、平面視において、保護膜用開口2620は、層間接続導体251、層間接続導体252、導電性接合材41および導電性接合材42に重なっている。
【0073】
このような構成によって、回路基板20Bは、回路部と接続部ReJの一部とにおいて、グランド導体232を外部環境から保護できる。そして、ヒータバー90による加熱加圧の際に、ヒータバー90をグランド導体232に直接接触させることができる。特に、保護膜用開口2620の形状をヒータバー90の接触面の形状よりも大きくすることで、ヒータバー90をグランド導体232に、より確実に接触させることができる。
【0074】
さらに、本実施形態の構成では、スリット開口293は、保護膜262と重なっている。すなわち、スリット開口293には、保護膜262が埋まり込んでいる。これにより、ヒータバー90による加熱加圧時における積層体21のスリット開口293からの流出を抑制できる。したがって、グランド導体232と信号導体22との距離が短くなることを抑制でき、所望の特性インピーダンスを、より確実に実現できる。
【0075】
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る基板接合構造について、図を参照して説明する。
図7は、第4の実施形態に係る回路基板の接続構造10Cの概略構成を示す側面断面図である。
【0076】
図7に示すように、第4の実施形態に係る回路基板の接続構造10Cは、第1の実施形態に係る回路基板の接続構造10に対して、基板30が回路基板20に置き換わった点で異なる。回路基板の接続構造10Cの他の構成は、回路基板の接続構造10と同様であり、同様の箇所の説明は省略する。
【0077】
回路基板の接続構造10Cでは、2個の回路基板20を接続して実現される。より具体的には、一方の回路基板20の接続部ReJと他方の回路基板20の接続部ReJとを対向させ、導電性接合材41および導電性接合材42によって接続する。
【0078】
このように、接続される基板がともに、熱可塑性の積層体21を用いる構成であっても、上述のような、開口穴292を備えることによって、接続部ReJに対する上述の各種の作用効果を奏することができる。
【0079】
なお、上述の説明では、グランド導体232は、積層体21の主面212に形成されている態様を示した。しかしながら、グランド導体232は、積層体21の内部に配置されている他の導体よりも主面212に近い位置に配置されていれば、主面212よりも積層体21の内側の層に配置されていてもよい。また、上述の説明では、面状導体としてグランド導体を例に示した。しかしながら、接続部ReJにおいて、積層体21の内部に配置されている他の導体よりも主面212に近い位置に配置された導体が、面状導体であれば、上述の構成を適用することができる。
【0080】
また、上述の各実施形態の構成は、適宜組み合わせることが可能であり、それぞれの組合せに応じた作用効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0081】
10、10C:回路基板の接続構造
20、20A、20B、25:回路基板
21:積層体
22:信号導体
30:基板
31:基材
32:信号用ランド導体
33:グランド用ランド導体
34:保護膜
41、42:導電性接合材
90:ヒータバー
201、202、203:絶縁体層
211、212:主面
231、232:グランド導体
241:実装導体
251、252:層間接続導体
261、262:保護膜
291、292:開口穴
293:スリット開口
311、312:主面
2320:外面
2620:保護膜用開口