(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】床断熱構造及び床断熱材施工方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/76 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
E04B1/76 500Z
E04B1/76 400H
E04B1/76 400J
(21)【出願番号】P 2018168701
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】大屋 綾子
(72)【発明者】
【氏名】君付 政春
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285945(JP,A)
【文献】特開平11-159019(JP,A)
【文献】特開2005-299298(JP,A)
【文献】特開2013-072228(JP,A)
【文献】特開2018-145784(JP,A)
【文献】特開平09-021192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の床部に設けられた複数の床梁と、
前記床梁上に載置された床板と、
前記床梁の建物下方側の端面に取り付けられると共に、略板状に形成されかつ前記床梁の建物下方側の端面を建物下方側の床下空間側から覆う第1断熱材と、
隣接する前記床梁同士の間に設けられかつ前記床梁を前記第1断熱材と連続的に前記床下空間側から覆っている第2断熱材と、
を有する床断熱構造が適用された前記建物の床断熱材施工方法であって、
前記第1断熱材を前記床梁の建物下方側の端面へ取り付ける第1工程と、隣接する前記床梁同士の間に前記床板の建物下方側から前記第2断熱材を吹き付ける第2工程と、
を有する床断熱材施工方法。
【請求項2】
前記第1工程において、前記第1断熱材は前記床梁の建物下方側の端面に押し付けることにより又は接着力により仮保持されている、
請求項
1に記載の床断熱材施工方法。
【請求項3】
前記床断熱構造は、柱と梁とで箱型に形成される建物ユニットを複数並べて構成されたユニット建物に設けられており、
隣接する前記建物ユニットの前記柱同士の間の隙間を埋める第3断熱材を設けた後に前記第1工程及び前記第2工程を施工する、
請求項
1又は請求項
2に記載の床断熱材施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床断熱構造及び床断熱材施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、床材の断熱施工方法について開示されている。この断熱施工方法では、建物の床下空間内に配設されたホースの先端に接続されたスプレーガンから床下空間に入り込んだ作業員が発泡ウレタン製の断熱材を床材の下面に吹き付ける。これにより、新築住宅であるか既設住宅であるかを問わず建物の床部に断熱層を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示された方法の場合、床下空間に作業員が入り込んで断熱材を吹き付ける作業を行うが、床梁が配置された部位では、床梁が建物下方側へ突出しているため、床下空間が特に狭くなる。この場合、作業性が低下するため、施工精度が低下して設定された断熱性能を満たすことができない可能性がある。したがって、上記先行技術はこの点で改良の余地がある。
【0005】
本発明は上記問題を考慮し、設定された断熱性能を満たすことができる床断熱構造及び床断熱材施工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る床断熱構造は、建物の床部に設けられた複数の床梁と、前記床梁の建物下方側の端面に取り付けられると共に、略板状に形成されかつ前記床梁の建物下方側の端面を建物下方側から覆う第1断熱材と、隣接する前記床梁同士の間に設けられかつ前記第1断熱材の配設後の状態において前記床梁の露出面を前記第1断熱材と連続的に建物下方側から覆っている第2断熱材と、を有している。
【0007】
第2の態様に係る床断熱構造は、第1の態様に係る発明において、前記第2断熱材は、建物下方側の端面が前記床梁の下端部より建物下方側に位置している。
【0008】
第3の態様に係る床断熱材施工方法は、建物の床部に設けられた複数の床梁と、前記床梁上に載置された床板と、前記床梁の建物下方側の端面に取り付けられると共に、略板状に形成されかつ前記床梁の建物下方側の端面を建物下方側から覆う第1断熱材と、隣接する前記床梁同士の間に設けられかつ前記床梁を前記第1断熱材と連続的に建物下方側から覆っている第2断熱材と、を有する床断熱構造が適用された前記建物の床断熱材施工方法であって、前記第1断熱材を前記床梁の建物下方側の端面へ取り付ける第1工程と、隣接する前記床梁同士の間に前記床板の建物下方側から前記第2断熱材を吹き付ける第2工程と、を有している。
【0009】
第4の態様に係る床断熱材施工方法は、第3の態様に係る発明において、前記第1工程において、前記第1断熱材は前記床梁の建物下方側の端面に押し付けることにより又は接着力により仮保持されている。
【0010】
第5の態様に係る床断熱材施工方法は、第3又は第4の態様に係る発明において、前記床断熱構造は、柱と梁とで箱型に形成される建物ユニットを複数並べて構成されたユニット建物に設けられており、隣接する前記建物ユニットの前記柱同士の間の隙間を埋める第3断熱材を設けた後に前記第1工程及び前記第2工程を施工する。
【0011】
第1の態様によれば、建物の床部には複数の床梁が設けられており、この床梁の建物下方側の端面には第1断熱材が取り付けられている。第1断熱材は、略板状に形成されており、床梁の建物下方側の端面を建物下方側から覆っている。つまり、床下空間が狭くなる床梁の建物下方側の端面に、略一定の厚さに形成された第1断熱材を貼り付けることで、断熱材を吹き付け難い床梁の建物下方側の端面にも作業性によるばらつきを抑えて略一定の厚さの断熱層を確保することができる。一方、隣接する床梁同士の間には、第2断熱材が設けられている。この第2断熱材は、第1断熱材の配設後の状態において床梁の露出面を第1断熱材と連続的に建物下方側から覆っている。したがって、床梁は第1断熱材と第2断熱材とで建物下方側に露出しない構成となる。このため、安定した断熱性能を得ることができる。
【0012】
第2の態様によれば、第2断熱材における建物下方側の端面が床梁の下端部より建物下方側に位置していることから、第2断熱材は床梁の建物下方側の端面に取り付けられた第1断熱材に当接する。したがって、第2断熱材によって、第1断熱材を保持することができるので、第1断熱材を床梁に取り付ける方法の選定に幅を持たせることができる。これにより、設計自由度を向上させることができる。
【0013】
第3の態様によれば、第1工程にて第1断熱材を床梁の建物下方側の端面に取り付けると共に、第2工程にて隣接する床梁同士の間における床板の建物下方側から第2断熱材が吹き付けられる。つまり、床下空間が狭くなることで断熱材の吹き付け作業性が低下する部位である床梁には、予め第1断熱材が取り付けられることから、床梁への断熱材の吹き付けが不要となり、作業性を向上させることができる。
【0014】
第4の態様によれば、第1工程において、第1断熱材は床梁の建物下方側の端面に押し付けることにより又は接着力により仮保持されていることから、第1断熱材の取り付け作業が容易となって取付精度を向上させることができる。
【0015】
第5の態様によれば、柱と梁とで箱型に形成された建物ユニットを複数並べて構成されるユニット建物の床部において、第1工程及び第2工程の前にユニット建物における隣接する建物ユニットの柱同士の間の隙間を埋めるように第3断熱材を設ける。したがって、ユニット建物特有の柱が隣接する部位の柱同士の間の隙間から熱や空気が移動するのを第3断熱材によって抑制することができる。これにより、ユニット建物においても断熱性能と気密性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る床断熱構造及び床断熱材施工方法は、予め設定された断熱性能を確保することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態に係る床断熱構造を有する建物の一部を建物上方側から見た状態を示す平面図である。
【
図2】
図1におけるA-A線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る床断熱構造の一部を建物上方側から見た状態を示す断面図である。
【
図4】
図3に対し建物側方側から見た状態を示す側面図である。
【
図5】第2実施形態に係る床断熱構造の一部を建物側方側から見た状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、
図1~4を用いて、本発明に係る床断熱構造及び床断熱材施工方法の第1実施形態について説明する。
【0019】
(建物の全体構成)
図1に示されるように、基礎10の上には、建物12が設けられている。この建物12の一例として、本実施形態ではユニット建物が採用されており、二つの建物ユニット14と、当該建物ユニット14における短手方向の寸法を半分にした建物ユニットの変形例としての二つのハーフユニット16と、が連結されることによって構成されている。
【0020】
建物ユニット14は、図示はしないが箱型(直方体状)を成しており、建物ユニット14の四隅に柱としての外柱18が配設されている。外柱18は平面視で四角筒状の角形鋼により形成されている。建物ユニット14の外柱18の上端部はそれぞれ4本の図示しない梁としての天井大梁によって連結され、各外柱18の下端部はそれぞれ床梁としての4本の床大梁20によって連結されている。また、天井大梁及び床大梁20は建物12の高さ方向に沿って切断したときの断面形状がコ字状を成す溝形鋼により形成されている(
図2参照)。
【0021】
ハーフユニット16は、建物ユニット14と略同様の構成とされている。すなわち、図示はしないが箱型(直方体状)を成しており、ハーフユニット16の四隅に外柱22が配設されている。外柱22は外柱18と同様の大きさ及び構成とされている。すなわち、平面視で四角筒状の角形鋼により形成されている。また、ハーフユニット16の各外柱22の上端部がそれぞれ4本の図示しない天井大梁によって連結され、各外柱22の下端部がそれぞれ床梁としての4本の床大梁20によって連結されている。さらに、天井大梁及び床大梁20は建物12の高さ方向に沿って切断したときの断面形状が建物ユニット14の床大梁20と同様にコ字状を成す溝形鋼により形成されている。なお、建物ユニット14の床大梁20と、ハーフユニット16の床大梁20とは、サイズ以外同一の構成とされているため、同一の符号を付して説明する。
【0022】
建物ユニット14同士は、それぞれの短手方向に沿って延設された一方の床大梁20同士が隣接して連結されている。また、建物ユニット14とハーフユニット16とは、建物ユニット14の長手方向に沿って延設された一方の床大梁20と、ハーフユニット16の長手方向に沿って延設された一方の床大梁20と、が隣接して連結されている。これによって、建物12は平面視で略矩形状に形成されている。
【0023】
以上のような建物12が基礎10上に固定されている。基礎10は、建物12の全周に沿って連続して設けられた外周基礎10Aと、外周基礎10Aにより囲まれた内側空間(床下空間13)に設けられた柱受け基礎10Bとを有している。外周基礎10Aは、鉄筋コンクリート造の布基礎とされており、床下地盤の内部に埋設されたフーチング部(不図示)と、その上方へ向かって延びる立ち上がり部10AAと、を含んで構成されている。なお、床下空間13の地盤面(GL)の全面は、土間コンクリート15により覆われている。また、床下空間13は、外周基礎10Aに形成された図示しない換気孔により建物外部と連通されている。
【0024】
柱受け基礎10Bは、外周基礎10Aと同様に、鉄筋コンクリート造の独立基礎とされており、床下地盤の内部に埋設されたフーチング部(不図示)と、その上方へ向かって延びる四角柱状の立ち上がり部10BAと、を含んで構成されている。柱受け基礎10Bは、外周基礎10Aと図示しない基礎梁を介して繋がっている。
【0025】
建物12は、各外柱18、22をそれぞれ基礎10上に載置した状態で設置されている。具体的には、建物ユニット14及びハーフユニット16の各外柱18、22のうち建物外周部に配置される外柱18、22は外周基礎10A上に設置され、屋内側に配置される外柱18、22は柱受け基礎10B上に設置されている。
【0026】
(床部)
建物12の床部30には、床断熱構造32が設けられている。この床部30は、上述した床大梁20と、床梁としての床小梁34と、床板36(
図2参照)と、を有している。床小梁34は、建物ユニット14に複数設けられており、建物ユニット14の短手方向に沿って延設された角鋼管状に形成されている。床小梁34の長手方向の端部は、建物ユニット14の長手方向に延設された一対の床大梁20にそれぞれ結合されている。同様に、床小梁34は、ハーフユニット16にも複数設けられており、ハーフユニット16に設けられた床小梁34は、ハーフユニット16の短手方向に沿って延設されている。床小梁34の長手方向の端部は、ハーフユニット16長手方向に延設された一対の床大梁20にそれぞれ結合されている。なお、建物ユニット14の床小梁34と、ハーフユニット16の床小梁34とは、サイズ以外同一の構成とされているため、同一の符号を付して説明する。
【0027】
図2に示されるように、床大梁20及び床小梁34の建物上方側面20A、34Aには、床板36が載置されている。この床板36は、一例として合板又はパーティクルボード等により構成されており、図示しない締結具により床大梁20及び床小梁34に締結されている。この床板36により、床大梁20及び床小梁34は、建物上方側から覆われている。
【0028】
床板36の裏面側、すなわち床板36の床下空間13側の面には、床裏断熱材40が設けられている。床裏断熱材40は、一例として板状に形成されたウレタンフォーム等の樹脂系断熱材により構成されており、床板36の裏面側における床大梁20及び床小梁34に当接した箇所以外の範囲に貼り付けられている。
【0029】
(第1断熱材)
床大梁20の建物下方側の端面20Bには、第1断熱材44が建物下方側から取り付けられている。この第1断熱材44は、建物上下方向を板厚方向とする略板状に形成されて おり、一例としてウレタンフォーム等の樹脂系断熱材により構成されている。なお、床大梁20に取り付けられた第1断熱材44は、隣接する床大梁20同士における一方側の建物下方側の端面20Bから他方側の建物下方側の端面20Bに亘って取り付けられており、それぞれの床大梁20の建物下方側の端面20Bが床下空間13に露出しない大きさに設定されている。換言すると、床大梁20の建物下方側の端面20Bは、第1断熱材44により建物下方側から覆われている。
【0030】
床小梁34の建物下方側の端面34Bには、床大梁20と同様に第1断熱材46が建物下方側から取り付けられている。すなわち、第1断熱材46は、建物上下方向を板厚方向とする略板状に形成されており、一例としてウレタンフォーム等の樹脂系断熱材により構成されている。なお、床小梁34に取り付けられた第1断熱材46は、床小梁34の建物下方側の端面34Bが床下空間13に露出しない大きさに設定されている。換言すると、床小梁34の建物下方側の端面34Bは、第1断熱材46により建物下方側から覆われている。
【0031】
第1断熱材44、46の厚さは、所定の厚さに設定されており、この所定の厚さとは、第1断熱材44、46の建物下方側の端面44A、46Aから土間コンクリート15までの間に図示しない作業員が入り込める程度の空間高さ(一例として本実施形態では330mm以上)が確保できる厚さとされている。
【0032】
第1断熱材44、46は、床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに押し付けることで、図示しない両面テープによって床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bにそれぞれ仮保持されている。なお、本実施形態では、第1断熱材44、46は両面テープにより建物下方側の端面20B、34Bに固定されているが、これに限らず、コストや必要とする保持力に合わせてフックやクリップ等その他の保持部材により仮保持される構成でもよい。
【0033】
(第2断熱材)
床大梁20と、これに隣接する床小梁34との間には、第2断熱材50が建物下方側から設けられている。この第2断熱材50は、一例としてスプレーガンにより吹き付け可能とされた発泡ウレタンフォームなどの樹脂系断熱材により構成されており、床板36の裏面の床裏断熱材40、床大梁20及び床小梁34に向かって床下空間13(建物下方側)から吹き付けることで、床大梁20の下端部20C及び床小梁34の下端部34Cを建物下方側から覆っている。したがって、床板36の裏面の床裏断熱材40、床大梁20及び床小梁34のそれぞれに形状に追従して隙間なく第2断熱材50が設けられている。換言すると、発泡ウレタン層が床大梁20と、これに隣接する床小梁34との間を建物下方側から埋めるように設けられている。
【0034】
第2断熱材50の厚さ、すなわち建物上下方向の寸法は、床裏断熱材40(又は床大梁20の建物上方側面20A)の裏面から第1断熱材44、46の板厚方向略中央部に対応した部位までとされている。換言すると、第2断熱材50の建物下方側の端面50Aは、床大梁20及び床小梁34のそれぞれの下端部20C、34Cより建物下方側に位置している。すなわち、第2断熱材50は、第1断熱材44、46の側面にも吹き付けられていることから、第2断熱材50と第1断熱材44、46とが結合されている。以上の構成の第2断熱材50は、床大梁20と、これに隣接する床小梁34との間のみならず、床小梁34同士が隣接する部位の間(
図1参照)にもそれぞれ設けられている。
【0035】
(第3断熱材)
図3に示されるように、建物ユニット14及びハーフユニット16の各外柱18、22のうち屋内側に配置される外柱18、22の間には、第3断熱材52が設けられている。この第3断熱材52は、一例としてグラスウール等の繊維系断熱材とされており、外柱18、22同士の間の隙間を埋めるように設けられている。
【0036】
図4に示されるように、第3断熱材52は、外柱18、22の下端部に対応した部位に設けられている。具体的には、外柱18、22同士の間の隙間における柱受け基礎10Bの上面10BBから床板36の上面に対応した部位までの範囲に設けられている。したがって、床下空間13から外柱18、22同士の間の隙間を介して床上空間(床板36の上方側の空間、室内)への熱や空気の移動が抑制される。
【0037】
(第4断熱材)
図3に示されるように、建物ユニット14及びハーフユニット16の床大梁20同士の間の隙間には、第4断熱材56が設けられている。この第4断熱材56は、一例としてグラスウール等の繊維系断熱材とされており、床大梁20同士の間の隙間を埋めるように設けられている。
【0038】
(施工方法)
次に、床断熱材施工方法について説明する。
【0039】
図1に示されるように、建物12の建築地にて設けられた基礎10上に、工場にて生産された建物ユニット14及びハーフユニット16が載置された後、
図3に示されるように、建物ユニット14及びハーフユニット16の各外柱18、22のうち屋内側に配置される外柱18、22の間における下端側(
図4参照)に第3断熱材52を設ける。そして、建物ユニット14及びハーフユニット16の床大梁20同士の間の隙間に、第4断熱材56を設ける。
【0040】
次に、
図2に示されるように、床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに、第1断熱材44、46をそれぞれ取り付ける。この第1断熱材44、46は、床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bにそれぞれ押し付けることで、クリップを介して仮保持される。第1断熱材44、46は、略板状、すなわち定型とされていることから、床大梁20及び床小梁34の真下以外の床下空間13の高さに余裕がある所から床大梁20及び床小梁34への固定作業がやり易くなる。また、第1断熱材44、46はそれぞれ、床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに対応したサイズとされていることから、床板36の裏面を全て第1断熱材44、46にて覆う場合と比べてサイズを小さくすることができるので、床下空間13内への搬入が比較的容易となる。なお、この工程が、請求項3に記載の「第1工程」に相当する。
【0041】
次に、床大梁20とこれに隣接する床小梁34との間及び隣接する床小梁34同士の間に、床下空間13に配設されたホースの先端に接続されたスプレーガン(いずれも不図示)から第2断熱材50を床板36の裏面の床裏断熱材40、床大梁20及び床小梁34に向かって吹き付ける。そして、第2断熱材50が床裏断熱材40(又は床大梁20の建物上方側面20A)の裏面から第1断熱材44、46の板厚方向略中央部に対応した部位に達するまで吹き付けられる。これにより、床大梁20とこれに隣接する床小梁34との間及び隣接する床小梁34同士の間の空間は、第2断熱材50によりそれぞれ埋められている。換言すると、第1断熱材44、46が配設された後の状態において床大梁20と床小梁34との露出面を第2断熱材50が建物下方側から覆っている。また、第2断熱材50は、第1断熱材44、46の側面にも吹き付けられることで、第2断熱材50と第1断熱材44、46とが結合されている。これにより、第1工程にて床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに仮保持されている第1断熱材44が永続的に固定される。なお、この工程が、請求項3に記載の「第2工程」に相当する。
【0042】
(実施形態の作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0043】
本実施形態によれば、
図1に示されるように、建物12の床部30には複数の床大梁20及び床小梁34が設けられており、
図2に示されるように、この床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bには第1断熱材44、46が取り付けられている。第1断熱材44、46は、略板状に形成されており、床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bを建物下方側から覆っている。つまり、床下空間13が狭くなる床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに、略一定の厚さに形成された第1断熱材44、46を貼り付けることで、第2断熱材50を吹き付け難い床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bにも作業性によるばらつきを抑えて略一定の厚さの断熱層を確保することができる。一方、隣接する床大梁20及び床小梁34同士の間には、第2断熱材50が設けられている。この第2断熱材50は、床大梁20及び床小梁34を第1断熱材44、46と連続的に建物下方側から覆っている。換言すると、第2断熱材50は、第1断熱材44、46の配設後の状態において床大梁20及び床小梁34の露出面を第1断熱材44、46と連続的に建物下方側から覆っている。したがって、床大梁20及び床小梁34は第1断熱材44、46と第2断熱材50とで建物下方側に露出しない構成となる。このため、安定した断熱性能を得ることができる。これにより、設定された断熱性能を満たすことができる。
【0044】
また、第2断熱材50における建物下方側の端面50Aが床大梁20及び床小梁34の下端部20C、34Cより建物下方側に位置していることから、第2断熱材50は床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに取り付けられた第1断熱材44、46に当接する。したがって、第2断熱材50によって、第1断熱材44、46を保持することができるので、第1断熱材44、46を床大梁20及び床小梁34に取り付ける方法の選定に幅を持たせることができる。これにより、設計自由度を向上させることができる。
【0045】
さらに、第1工程にて第1断熱材44、46を床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに取り付けると共に、第2工程にて隣接する床大梁20及び床小梁34同士の間における床板36の建物下方側から第2断熱材50が吹き付けられる。つまり、床下空間13が狭くなることで第2断熱材50の吹き付け作業性が低下する部位である床大梁20及び床小梁34には、予め第1断熱材44、46が取り付けられることから、床大梁20及び床小梁34への第2断熱材50の吹き付けが不要となり、作業性を向上させることができる。
【0046】
さらにまた、第1工程において、第1断熱材44、46は床大梁20及び床小梁34の建物下方側の端面20B、34Bに押し付けることにより両面テープによって仮保持されていることから、第1断熱材44、46の取り付け作業が容易となって取付精度を向上させることができる。
【0047】
また、外柱18、22と床大梁20及び床小梁34とで箱型に形成された建物ユニット14、ハーフユニット16を複数並べて構成されるユニット建物の床部30において、第1工程及び第2工程の前にユニット建物における隣接する建物ユニット14、ハーフユニット16の外柱18、22同士の間の隙間を埋めるように第3断熱材52を設ける。したがって、ユニット建物特有の外柱18、22が隣接する部位の外柱18、22同士の間の隙間から熱や空気が移動するのを第3断熱材52によって抑制することができる。これにより、ユニット建物においても断熱性能と気密性能を確保することができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、
図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る床断熱構造について説明する。なお、前述した第1実施形態等と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0049】
この第2実施形態に係る床断熱構造70及び床断熱材施工方法は、基本的な構成は第1実施形態と同様とされ、床大梁20内に第5断熱材72を設ける点に特徴がある。
【0050】
すなわち、
図5に示されるように、溝形鋼である床大梁20の断面内側、すなわち上フランジ21Aとウェブ21Bと下フランジ21Cとで囲まれた溝内部には、第5断熱材72が設けられている。この第5断熱材72は、一例としてグラスウール等の繊維系断熱材とされており、床大梁20の溝を略埋めるように設けられている。
【0051】
(第2実施形態の作用・効果)
次に、第2実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0052】
上記構成によっても、床大梁20内に第5断熱材72を設ける点以外は第1実施形態の床断熱構造32と同様に構成されているので、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、床大梁20内に第5断熱材72が設けられていることによって、第2断熱材50を床下空間13から床大梁20へ向けて吹き付ける際に、床大梁20の溝内部への吹き付けが不要となる。すなわち、床大梁20が複雑な断面形状の場合、入り組んだ部位へ第2断熱材50が吹き付け難い可能性があり、この場合作業性が低下すると共に施工不良が発生する可能性がある。しかし、本実施形態のように、床大梁20の入り組んだ部位を予め第5断熱材72によって埋めて、ある程度ならしておくことで、第2断熱材50を吹き付ける際の作業性の低下を防ぐことができる。これにより、施工不良の発生を抑制して予め設定された断熱性能を確保することができる。
【0053】
なお、上述した第1、第2実施形態では、床大梁20は、溝形鋼とされているが、これに限らず、H型鋼やC型鋼や角鋼管等その他の形状としてもよい。また、床小梁34は、角鋼管状に形成されているが、これに限らず、溝形鋼やH型鋼やC型鋼等その他の形状としてもよい。また、第2実施形態では、床大梁20にのみ第5断熱材72が設けられた構成とされているが、これに限らず、溝形鋼やH型鋼等により複雑な断面形状とされた場合の床小梁34の断面内部に第5断熱材72を設けた構成としてもよい。
【0054】
さらに、第1断熱材44、46、第2断熱材50及び床裏断熱材40は、樹脂系断熱材とされているが、これに限らず、繊維系断熱材により構成されてもよい。さらにまた、第3断熱材52(
図3参照)、第4断熱材56及び第5断熱材72は、繊維系断熱材とされているが、これに限らず、樹脂系断熱材により構成されてもよい。
【0055】
また、第1工程の前に第3断熱材52を設けた構成(
図3参照)とされているが、これに限らず、これ以外のタイミングにて第3断熱材52を設けてもよいし、第3断熱材52を設けない構成としてもよい。
【0056】
さらに、床板36の裏面に床裏断熱材40が設けられた構成とされているが、これに限らず、床裏断熱材40がない状態の床板36の裏面に第2断熱材50を設ける構成としてもよい。さらにまた、床大梁20及び床小梁34の上に床板36が載置された構成とされているが、これに限らず、床大梁20及び床小梁34の上に根太や大引き(いずれも不図示)などが載置され、根太や大引きなどによって床大梁20及び床小梁34と床板36との間に発生する隙間を第3断熱材52や第4断熱材56やその他の断熱材によって埋める構成としてもよい。
【0057】
また、新築物件に施工する方法について説明したが、これに限らず、既設物件に本床断熱材施工方法を施工してもよい。
【0058】
さらに、床断熱構造32、70は、ユニット建物に適用された構成としているが、これに限らず、軸組工法等の他の工法による建物に適用してもよい。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
12 建物
14 建物ユニット
16 ハーフユニット(建物ユニット)
20 床大梁(床梁)
20B 建物下方側の端面
34B 建物下方側の端面
20C 下端部
30 床部
32 床断熱構造
34 床小梁(床梁)
34C 下端部
36 床板
44 第1断熱材
46 第1断熱材
50 第2断熱材
50A 建物下方側の端面
52 第3断熱材
70 床断熱構造