IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタホーム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-目地部材 図1
  • 特許-目地部材 図2
  • 特許-目地部材 図3
  • 特許-目地部材 図4
  • 特許-目地部材 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】目地部材
(51)【国際特許分類】
   E04F 19/02 20060101AFI20221220BHJP
   E04B 1/68 20060101ALI20221220BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20221220BHJP
   E04F 19/04 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E04F19/02 Q
E04B1/68 Z
E04B1/94 K
E04F19/02 S
E04F19/04 102F
E04F19/04 102G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019092063
(22)【出願日】2019-05-15
(65)【公開番号】P2020186582
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】笹川 拓也
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-025823(JP,A)
【文献】特開2005-090178(JP,A)
【文献】特開2000-355983(JP,A)
【文献】特開2018-003345(JP,A)
【文献】特開2000-282673(JP,A)
【文献】特開平06-026168(JP,A)
【文献】実開平02-001309(JP,U)
【文献】特開2001-303743(JP,A)
【文献】実開平02-121504(JP,U)
【文献】独国実用新案第202004009645(DE,U1)
【文献】特開2000-001918(JP,A)
【文献】特開平08-060756(JP,A)
【文献】特開平08-199697(JP,A)
【文献】特開平06-306963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 19/02-19/04
E04B 1/68-1/686
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣合う建築用面材の間に形成される目地内に挿入され、当該目地の長手方向に沿って延在し、当該目地の長手方向から見た断面視で挿入方向に向かって尖った楕円形状の中空閉断面構造とされた弾性変形可能な挿入部と、
前記挿入部の基端部に形成されると共に、目地への装着状態では、前記隣合う建築用面材の意匠面に架け渡され、かつ前記目地を長手方向に沿って覆う弾性変形可能な化粧部と、
を備え、
前記挿入部は、前記目地の長手方向から見た断面視で、それぞれ断面円弧状に形成され前記挿入部の先端及び前記基端部で互いに接続された一対の側面部を備えており、自然状態において、目地幅方向の幅寸法が前記目地幅の寸法よりも大きく設定されており、
前記化粧部は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて前記挿入部側に傾斜されている、
目地部材。
【請求項2】
前記挿入部は、閉断面内において、前記一対の側面部が互いに接続されている前記挿入部の挿入方向の一端と他端とを繋ぐと共に前記一対の側面部よりも弾性率が高い材料で構成された座屈防止部を備える、請求項1に記載の目地部材。
【請求項3】
前記挿入部は、閉断面内において前記一対の側面部における目地幅方向内側の面における挿入方向の中間部と前記座屈防止部の目地幅方向両側の面の挿入方向における中間部とを繋ぐ弾性変形可能な反発部を備え
前記反発部は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて前記化粧部側に傾斜されており、挿入部が閉断面を潰されるように目地幅方向に圧縮変形された状態において、挿入方向の先端側かつ目地幅方向内側に向かって弾性変形可能に構成されている、請求項2に記載の目地部材。
【請求項4】
前記化粧部は、当該化粧部の挿入方向側の面にシート状の加熱膨張部材又は発泡部材を備える、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の目地部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物の入隅部を構成する主面材と側面材との隙間に嵌入して隙間を被覆する長尺状の建築用見切り材が開示されている。特許文献1に開示された見切り材は、隙間を被覆する長尺板状のベース板体と、ベース板体の短手方向の中央からずれた位置に長手方向に沿って垂設された立壁板と、立壁板の両面からそれぞれ突設された複数の舌片とを備えている。この見切り材の立壁部が、主面材と側面材との隙間に挿入され、舌片部が弾性変形して隙間の内側面を押圧することにより、隙間の開口部を閉塞するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-58221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された見切り材では、隙間を被覆するベース板体が平板状に形成されているため、例えば建物の出隅部には使用することができない。また、隙間に掛止される複数の舌片部は、互いに干渉しないように奥行方向に離間して配置されており、奥行方向の全長に亘って連続した部材として構成されていない。このため、例えば隙間を形成している面材の板厚が薄い場合には、複数の舌片部のうちのいくつかは隙間の内側面に当接せず、見切り材を保持するための十分な押圧力(反力)を得ることができない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、目地を構成する両側の建築用面材の相対的な配置及び板厚によらず目地を閉塞して被覆することができる目地部材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る目地部材は、隣合う建築用面材の間に形成される目地内に挿入され、当該目地の長手方向に沿って延在する中空閉断面構造とされた弾性変形可能な挿入部と、前記挿入部の基端部に形成されると共に、目地への装着状態では、前記隣合う建築用面材の意匠面に架け渡され、かつ前記目地を長手方向に沿って覆う弾性変形可能な化粧部と、を備え、前記挿入部は、自然状態において、目地幅方向の幅寸法が前記目地幅の寸法よりも大きく設定されており、前記化粧部は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて前記挿入部側に傾斜されている。
【0007】
第1の態様に係る目地部材によれば、中空閉断面構造とされた弾性変形可能な挿入部が、隣合う建築用面材の間に形成される目地内に挿入され、目地の長手方向に沿って延在される。また、挿入部の基端部に形成された弾性変形可能な化粧部が、隣合う建築用面材の意匠面に架け渡されて、目地を長手方向に沿って覆う。ここで、挿入部は、自然状態における目地幅方向の幅寸法が目地幅の寸法よりも大きく設定されているので、目地に挿入された状態においては、目地幅方向の内側に弾性変形した状態とされる。このため、挿入部には、自然状態における形状に戻ろうとする弾性(復元)力が生じるので、目地を構成する両側の建築用面材の側面及び角部の少なくとも一方を押圧し、挿入部が目地に嵌着される。挿入部が、中空閉断面構造とされて奥行方向の全長に亘って連続した部材として構成されているため、目地の両側の建築用面材の配置及び板厚によらず挿入部が目地に嵌着される。
【0008】
また、化粧部は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて挿入部側に傾斜されているので、目地部材が目地に挿入されると、化粧部の目地幅方向の両端が挿入方向の反対側に弾性変形される。このため、化粧部には自然状態における形状に戻ろうとする弾性(復元)力が挿入方向に向かって作用し、化粧部の目地幅方向の両端が建築用面材の意匠面を押圧して建築用面材に密着する。これにより、目地を構成する両側の建築用面材の相対的な配置によらず目地を閉塞して被覆することができる。
【0009】
第2の態様に係る目地部材は、第1の態様に係る目地部材において、前記挿入部は、閉断面内において挿入方向の一端と他端とを繋ぐ座屈防止部を備える。
【0010】
第2の態様に係る目地部材によれば、挿入部の閉断面内において挿入方向の一端と他端とを繋ぐ座屈防止部が設けられるので、目地部材が目地に挿入される際に、挿入方向の反対方向へ閉断面が潰れることを抑制又は防止し、目地部材を目地に挿入する際の作業性が向上する。
【0011】
第3の態様に係る目地部材は、第2の態様に係る目地部材において、前記挿入部は、閉断面内において目地幅方向の一端と前記座屈防止部とを繋ぐ弾性変形可能な反発部を備える。
【0012】
第3の態様に係る目地部材によれば、挿入部の閉断面内において目地幅方向の一端と座屈防止部とを繋ぐ弾性変形可能な反発部は、挿入部が目地に挿入される際に目地幅方向の内側に向かって弾性変形される。このため、反発部が自然状態に戻ろうとする弾性(復元)力が生じ、目地を構成する面材を押圧するので、より強固に挿入部が目地に嵌着される。
【0013】
第4の態様に係る目地部材は、第3の態様に係る目地部材において、前記反発部は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて前記化粧部側に傾斜されている。
【0014】
第4の態様に係る目地部材によれば、自然状態における反発部は、目地幅方向の両端に向かうにつれて化粧部側に傾斜されているので、挿入部が目地に挿入される際、挿入方向前方側かつ幅方向内側に弾性変形された反発部には、自然状態に戻ろうとする弾性(復元)力が挿入方向斜め後方に向かって作用する。この弾性力に対して挿入部が建築用面材から受ける反力は、挿入部の幅方向内側かつ挿入方向に向かう方向(斜め前方)に作用するため、目地部材は、より目地の奥へ前進することとなる。これにより、目地部材を目地に挿入する際の作業性が向上する。
【0015】
第5の態様に係る目地部材は、第1~第4の態様のいずれか一つに係る目地部材において、前記化粧部は、当該化粧部の挿入方向側の面にシート状の加熱膨張部材又は発泡部材を備える。
【0016】
第5の態様に係る目地部材によれば、化粧部の挿入方向側の面、すなわち建築用面材の意匠面に当接する側の面に加熱膨張部材又は発泡部材が設けられている。このため、加熱膨張部材が設けられている場合には、火災時に膨張して、隙間からの延焼等を防止することができる。また、発泡部材が設けられている場合には、気密性、断熱性及び防水性の少なくともいずれか一つを向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明に係る目地部材は、目地を構成する両側の建築用面材の相対的な配置及び板厚によらず目地を閉塞して被覆することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(A)は本実施形態に係る目地部材の自然状態における横断面図であり、(B)は(A)に示される目地部材が建築用面材の平継部の目地に適用された状態を示す横断面図である。
図2】(A)は図1(A)に示される目地部材が建物の入隅部の目地に適用された状態を示す横断面図であり、(B)は目地部材が(A)とは別の入隅部の目地に適用された状態を示す横断面図である。
図3図1(A)に示される目地部材が建物の出隅部の目地に適用された状態を示す横断面図である。
図4】本実施形態に係る目地部材が建築用面材の平継部の目地へ挿入される過程を示し、(A)は目地への挿入前、(B)は挿入途中、(C)は挿入完了時の状態を示す横断面図である。
図5】本実施形態の変形例に係る目地部材の図1(A)に対応する横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1図5を用いて、本発明に係る目地部材の実施形態について説明する。
【0020】
図1(A)には、本実施形態に係る目地部材10の自然状態における横断面図が示されている。図1(B)には、目地部材10が適用された建物12の一部の横断面図が示されている。これらの図に示されるように、目地部材10は、建物12の平継部13を構成する壁面方向に互いに隣合う「建築用面材」としての面材14と面材16との隙間である目地18内に挿入されて、目地18の長手方向に沿って延在される中空閉断面構造の挿入部20と、目地18を意匠面側から覆うように目地18の長手方向に沿って配置される化粧部22と、を含んで構成されている。
【0021】
目地部材10は、例えばEPDM等のゴム、または樹脂材料等を押出成形することによって一体に形成された長尺状の部材である。すなわち、図1(A)に示される断面形状が一様に延在されている。本実施形態においては、目地部材10は、二色成形により形成されており、挿入部20、化粧部22、及び後述する反発部28は弾性変形可能な同一の材料により構成されていると共に、後述する座屈防止部26は、他の部分よりも弾性率の高い材料(弾性変形しにくい材料)によって構成されている。なお、目地部材10を三色以上の多色成形により押出成形して、挿入部20、化粧部22、及び反発部28をそれぞれ異なる弾性率を有する材料で構成してもよい。
【0022】
挿入部20は、一対の側面部24を含んで構成されている。一対の側面部24は、各々が断面略円弧状に構成されており、挿入部20の先端側(目地18への挿入方向P側)で互いに接続されている。このため、挿入部20は、挿入方向Pに向かって尖った断面略楕円形状とされている。また、一対の側面部24は、基端側(目地18への挿入方向Pの反対側)が化粧部22の短手方向(幅方向)中央部に接続されている。さらに、一対の側面部24は、挿入方向Pにおける両端以外の部分では互いに離間され、挿入方向Pにおける中央部付近で互いの距離が最大となるように形成されている。換言すると、挿入部20の断面形状は木の葉状とされ、挿入方向Pにおける両端から中央に向かうにつれて幅が大きくなるように構成されている。
【0023】
自然状態における挿入部20の目地幅方向の幅寸法(幅が最大となる位置での幅寸法)W1(図1(A)参照)は、目地18の幅寸法W2(図1(B)参照)よりも大きく設定されている。このため、目地18内に挿入部20が挿入された状態においては、挿入部20の幅寸法が「目地幅の寸法」としての目地18の幅寸法W2と同一とされて挿入部20が目地幅方向内側に弾性変形した状態にある。挿入部20の一対の側面部24には、自然状態における形状(すなわち幅寸法W1)に戻ろうとする弾性(復元)力F1が生じるので、目地18を形成する面材14、16の側面14A、16Aを押圧し、挿入部20が目地18に嵌着されている。
【0024】
化粧部22は、挿入部20の基端部20Aに連結され、面材14の意匠面14Bと、面材16の意匠面16Bとに架け渡されると共に、目地18を長手方向に沿って覆うように構成されている。換言すると、化粧部22の幅方向の全長W3(化粧部22を略平坦に変形させた時の幅寸法)が、目地18の幅寸法W2よりも大きく設定されていると共に、化粧部22の自然状態の幅寸法が目地18の幅寸法W2よりも大きく設定されている。また、化粧部22は、挿入部20を挟んで反対方向に延在する左側部22Aと右側部22Bとを備えている。目地部材10が建物12の目地18に適用される前の自然状態において、化粧部22の左側部22A及び右側部22Bは、目地幅方向の両端に向かうにつれて挿入部20側、すなわち挿入方向P側に傾斜されており、互いに角度Qを成している(図1(A)参照)。また、化粧部22の左側部22A及び右側部22Bは、化粧部22の短手方向両端に向かうにつれて厚さが薄くなるように構成されている。
【0025】
化粧部22は、上述の通り弾性変形可能な材料で構成されている。このため、建物12の目地18に適用されて化粧部22の左側部22A及び右側部22Bのなす角度が自然状態における角度Qよりも大きくなると(図1(B)参照)、自然状態における角度Qに戻ろうとする弾性(復元)力F2が作用して左側部22A及び右側部22Bが面材14、16の意匠面14B、16Bをそれぞれ押圧して面材14、16に密着する。
【0026】
また、目地部材10における挿入部20の閉断面内には、挿入方向Pの一端と他端とを直線的に繋ぐ座屈防止部26が設けられている。すなわち、座屈防止部26は、一対の側面部24が互いに連結されている挿入部20の挿入方向Pの先端側から、化粧部22に連結されている挿入部20の基端部20Aまで延在されている。座屈防止部26は、上述の通り、挿入部20、化粧部22、及び反発部28よりも弾性率が高い材料によって構成されている。なお、座屈防止部26を他の部分(挿入部20、化粧部22、及び反発部28)と同じ材料で構成してもよいが、他の部分よりも弾性率が高い材料で構成されることにより、挿入方向Pの弾性変形がより効果的に抑制されて挿入時の作業性が向上するので、他の部分よりも弾性率が高い材料で構成することが好ましい。
【0027】
さらに、目地部材10における挿入部20の閉断面内には、一対の側面部24と座屈防止部26とを繋ぐ弾性変形可能な反発部28が設けられている。具体的には、反発部28は、座屈防止部26の両側の面から一対の側面部24までそれぞれ架け渡された左側部28Aと右側部28Bとを含んで構成されている。また、反発部28の左側部28Aと右側部28Bとは、挿入部20の目地幅方向の両端に向かうにつれて化粧部22側、すなわち挿入方向Pと反対側に傾斜されている。
【0028】
本実施形態に係る目地部材10を建物12の平継部13の目地18に適用する例を示したが(図1(B)参照)、建物12の他の場所の目地に適用してもよい。例えば、図2(A)に示されるように、本実施形態に係る目地部材10を建物12の入隅部30に適用してもよい。この入隅部30は、「建築用面材」としての面材32と面材34とで構成されており、面材32の側面32Aが面材34の意匠面34Aに対向するように、互いに直交する位置に配置されている。面材32の側面32Aと面材34の意匠面34Aとの間には、目地36が形成されている。本実施形態に係る目地部材10の挿入部20の自然状態における目地幅方向の幅寸法W1(図1(A)参照)は、「目地幅の寸法」としての目地36の幅寸法W4よりも大きく設定されている。これにより、挿入部20の一対の側面部24には、自然状態における形状(すなわち幅寸法W1)に戻ろうとする弾性(復元)力F1が生じるので、目地36を形成する面材32の側面32Aと面材34の意匠面34Aとを押圧し、挿入部20が目地36に嵌着されている。
【0029】
また、化粧部22は、自然状態における角度Q(図1(A)参照)に戻ろうとする弾性(復元)力F2が作用するので、左側部22A及び右側部22Bが面材34の意匠面34A及び面材32の意匠面32Bをそれぞれ押圧して面材34、32に密着する。
【0030】
また、図2(B)に示されるように、本実施形態に係る目地部材10を建物12の別の入隅部40に適用してもよい。この入隅部40は、「建築用面材」としての面材42と面材44とが互いに直交する位置に配置されており、面材42の側面42Aと面材44の側面44Aとで目地46が形成されている。この構成では、目地46の幅は挿入方向Pの前方側に向かうにつれて大きくなっている。本実施形態に係る目地部材10の挿入部20の自然状態における幅寸法W1(図1(A)参照)は、「目地幅の寸法」としての目地46の意匠面側の幅寸法W5(すなわち目地46の幅が最小となる位置での幅寸法)よりも大きく設定されている。また、挿入部20は、挿入方向Pにおける中央部付近で幅寸法が最大となるように形成されており、挿入部20が目地46内に挿入された状態において、一対の側面部24の化粧部22との接合部近傍(すなわち、基端部20A近傍)は面材42の側面42Aと面材44の側面44Aとで幅方向内側に弾性変形された状態となる。これにより、挿入部20の一対の側面部24には自然状態における形状に戻ろうとする弾性力F1が生じるので、目地46を形成する面材42、44の側面42A、44Aを押圧し、挿入部20が目地46に嵌着されている。
【0031】
また、化粧部22は、自然状態における角度Q(図1(A)参照)に戻ろうとする弾性力F2が作用するので、左側部22A及び右側部22Bが面材44の意匠面44B及び面材42の意匠面42Bをそれぞれ押圧して面材44、42に密着する。
【0032】
さらに、図3に示されるように、本実施形態に係る目地部材10を建物12の出隅部50に適用してもよい。この出隅部50は、「建築用面材」としての面材52と面材54とが互いに直交する位置に配置されており、面材52の側面52Aと面材54の側面54Aとで目地56が形成されている。この構成では、目地56の幅は挿入方向Pの前方側に向かうにつれて小さくなっている。本実施形態に係る目地部材10の挿入部20の自然状態における幅寸法W1(図1(A)参照)は、「目地幅の寸法」としての目地56の幅寸法W6(すなわち目地56の幅が最小となる位置での幅寸法)よりも大きく設定されている。これにより、挿入部20の一対の側面部24には、自然状態における形状(すなわち幅寸法W1)に戻ろうとする弾性力F1が生じるので、目地56の幅が最小となる位置で面材52、54の角部52C、54Cを押圧し、挿入部20が目地56に嵌着されている。
【0033】
また、目地部材10が目地56に嵌着された状態において、化粧部22の左側部22Aと右側部22Bとが成す角度は、自然状態における角度Q(図1(A)参照)よりも大きくなるように設定されている。このため、自然状態に戻ろうとする弾性力F2が作用して左側部22A及び右側部22Bが面材54の意匠面54B及び面材52の意匠面52Bをそれぞれ押圧して面材54、52に密着する。
【0034】
<作用及び効果>
次に、図4(A)~図4(C)を参照して、本実施形態に係る目地部材10を平継部13に取り付ける施工手順を通じて本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
まず、図4(A)に示されるように、2つの面材14、16の間に形成される目地18内に本実施形態に係る目地部材10の挿入部20が挿入される。このとき、中空閉断面構造とされた弾性変形可能な挿入部20は、幅方向外側から内側に向かって両側から閉断面を潰すように矢印R方向へ圧縮変形される。これにより、反発部28の左側部28A及び右側部28Bが挿入方向P及び幅方向内側に向かって弾性変形される。このとき、挿入部20の圧縮変形は、作業者の手によって行ってもよいし、図示しない施工用工具を用いてもよい。なお、挿入部20の先端の断面形状は挿入方向Pの前方側に向かって尖っているため、挿入部20を圧縮変形させずに目地18に挿入することも可能であるが、圧縮変形させることにより挿入部20の幅が狭くなり目地18への挿入がより容易になる。また、挿入部20を圧縮変形させることにより反発部28が挿入方向Pに向かって弾性変形し、目地部材を目地の奥へ前進させる効果(詳細は後述する)がより得られやすくなるので、圧縮変形させてから挿入することが好ましい。
【0036】
また、挿入部20の閉断面内には、挿入方向Pの一端と他端とを繋ぐ座屈防止部26が設けられている。これにより、目地部材10が目地18に挿入される際に、挿入方向Pと反対方向へ挿入部20の閉断面が潰れることを抑制又は防止し、目地部材10を目地18に挿入する際の作業性が向上する。座屈防止部26は、一対の側面部24と同じ材料で構成してもよいが、一対の側面部24よりも弾性率が高い材料で構成されることにより、挿入部20の挿入方向Pの弾性変形がより効果的に抑制されるので、一対の側面部24よりも弾性率が高い材料で構成することが好ましい。
【0037】
挿入部20が目地18に挿入されると、図4(B)に示されるように、挿入部20は、自然状態の形状に戻ろうとする。ここで、挿入部20の自然状態における幅寸法W1(図1(A)参照)が目地18の幅寸法W2(図1(B)参照)よりも大きく設定されているので、目地18を構成する両側の面材14、16の側面14A、16A及び角部14C、16Cの少なくとも一方を挿入部20の一対の側面部24が押圧する。
【0038】
また、挿入前に挿入方向Pの前方側かつ幅方向内側に向かって弾性変形されていた反発部28(図4(A)参照)が、自然状態の形状に戻ろうとする。ここで、反発部28は、自然状態において、幅方向両端に向かうにつれて化粧部22側、すなわち挿入方向Pと反対側に傾斜されているので、挿入部20が目地18に挿入されると、反発部28には挿入方向Pと反対方向に向かう弾性(復元)力が生じる。この弾性力は、一対の側面部24が自然状態に戻ろうとする弾性力と共に面材14、16に入力され(F3として図示)、これらの弾性(復元)力F3に対して挿入部20が面材14、16から受ける反力は、挿入部20の幅方向内側かつ挿入方向P(すなわち、斜め前方)に向かう方向に作用するため、目地部材10は、目地18の奥へ挿入方向Pにさらに前進することとなる。また、一対の側面部24の先端部分も自然状態の尖った形状に戻ろうとするので、目地部材10は、全体として目地18の奥へ前進する。これにより、目地部材10を目地18に挿入する際の作業性が向上する。
【0039】
目地部材10が目地18に取り付けられると、図4(C)に示されるように、挿入部20の基端部20Aに連結された弾性変形可能な化粧部22が、2つの面材14、16の意匠面に架け渡されて、目地18をその長手方向に沿って覆う。また、化粧部22は、自然状態において、目地幅方向の両端に向かうにつれて挿入部20側に傾斜されているので(図1(A)参照)、目地部材10が目地18に取り付けられると、化粧部22の目地幅方向の両端が挿入方向Pと反対側に弾性変形される。このため、化粧部22には自然状態における形状に戻ろうとする弾性力F2が挿入方向Pに向かって作用し、化粧部22の目地幅方向の両端が面材14、16の意匠面14B、16Bを押圧して面材14、16に密着される。これにより、目地18を構成する両側の面材14、16の相対的な配置によらず目地18を被覆することができる。
【0040】
また、挿入部20には、自然状態における形状に戻ろうとする弾性力F1が生じるので、目地18を構成する両側の面材14、16の側面14A、16A及び角部14C、16Cの少なくとも一方を押圧し、挿入部20が目地18に嵌着される。挿入部20が、中空閉断面構造とされて奥行方向(挿入方向P)の全長に亘って連続した部材として構成されているため、目地18の両側の面材14、16の相対的な配置及び板厚によらず挿入部20が目地に嵌着される。
【0041】
さらに、挿入部20の閉断面内には挿入部20の目地幅方向の一端(一対の側面部24)と座屈防止部26とを繋ぐ弾性変形可能な反発部28が設けられるので、挿入部20が目地18に取り付けられると、幅方向内側に弾性変形された反発部28の左側部28A及び右側部28Bがそれぞれ自然状態に戻ろうとする弾性力が生じ、面材14、16に挿入部20がより強固に嵌着される。
【0042】
上述の構成によれば、目地18を構成する両側の面材14、16の相対的な配置によらず目地18を閉塞して被覆することができる。例えば、図1(B)及び図4(A)~図4(C)に示される平継部13以外にも、図2(A)に示される入隅部30、図2(B)に示される別の入隅部40、及び図3に示される出隅部50等の種々の建築用面材の相対位置に対して適用が可能である。換言すると、本実施形態に係る目地部材10は、目地の断面形状によらず適用が可能である。平継部13以外に適用した場合にも、上述の平継部13の場合と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。また、目地の両側の面材が成す角度は、180度及び90度以外の角度であってもよく、様々な角度に対応することができる。さらに、目地18、36、46、56の両側の面材14、16、32、34、42、44、52、54の少なくとも一方が、例えばガラス板のような板厚が薄いものであっても適用が可能であると共に、両側の面材の板厚が異なっていても適用が可能である。さらに、挿入部20の挿入方向Pにおける寸法(奥行寸法)よりも板厚が厚い2つの面材の間の目地に対しても適用が可能である。
【0043】
上述の通り、本実施形態に係る目地部材10は目地18、36、46、56の両側の面材14、16、32、34、42、44、52、54の相対的な配置及び板厚によらず使用することができるため、建物12の様々な場所に適用することが可能である。例えば、建物12の内壁、外壁、天井と壁の取り合い、窓回り等に適用が可能である。また、板厚による制限を受けにくいため、面材14、16、32、34、42、44、52、54として、ガラス板、外壁仕上げ材、金属、石膏ボードなど、様々な材料の面材に適用が可能である。さらに、両側の面材14、16、32、34、42、44、52、54が異なる板厚を有している場合にも適用が可能であり、このため、左右で異なる材料の面材を使用する場合にも適用が可能である。
【0044】
〔変形例〕
以下、図5を用いて、本実施形態の変形例について説明する。なお、前述した本実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0045】
変形例に係る目地部材60は、挿入部20と、化粧部22と、を含んで構成されると共に、挿入部20の閉断面内には座屈防止部26及び反発部28が設けられている点で上記実施形態に係る目地部材10と同一の構成とされている。変形例に係る目地部材60は、上記実施形態に係る目地部材10と同一の構成に加えて、化粧部22の挿入方向側の面に設けられた一対の加熱膨張部材62を備えている。一例として、片面に接着剤が塗布されたテープ状の加熱膨張部材62を化粧部22に貼ってもよい。
【0046】
上記変形例によれば、化粧部22の挿入方向側の面に一対の加熱膨張部材62が設けられることにより、火災時には加熱膨張部材62が膨張して、目地の隙間からの延焼等を防止することができる。
【0047】
なお、加熱膨張部材62に替えて、発泡部材を化粧部22の挿入方向側の面に設けてもよい。この場合には、気密性、断熱性及び防水性の少なくともいずれか一つを向上させることができる。
【0048】
また、挿入部20の閉断面内に加熱膨張部材が充填されていてもよい。この場合には、挿入部20の一対の側面部24が弾性変形可能な程度に加熱膨張部材の硬度を設定しておく。この場合にも、火災時には加熱膨張部材が膨張して目地18の隙間が閉塞されるので、隙間からの延焼等を防止することができる。
【0049】
〔上記実施形態の補足説明〕
なお、上述の実施形態では、挿入部20が閉断面内に座屈防止部26及び反発部28を備える構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、挿入部20が座屈防止部26及び反発部28をいずれも備えない構成としてもよい。また、反発部28を備えずに座屈防止部26を備える構成としてもよい。さらに、座屈防止部26を備えずに反発部28のみを備える構成としてもよい。座屈防止部26を備えない場合には、反発部28は一対の側面部24の間に架け渡され、平面視で幅方向両端に向かうにつれて化粧部22側に傾斜された構成(反発部28の幅方向中央部が挿入方向Pに凸となる構成)としてもよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、挿入部20の一対の側面部24が断面略円弧状とされているが、本発明はこれに限定されない。例えば、一対の側面部24は、挿入方向Pにおける中央部近傍に平面視で幅方向外側に凸となる屈曲部をそれぞれ備えていてもよい。この場合、左右の屈曲部の位置における挿入部20の幅寸法が目地18、36、46、56の幅寸法(幅が最小になる位置での幅寸法)よりも大きく構成されていれば上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、上述の実施形態では、化粧部22の左側部22A及び右側部22Bは、化粧部22の短手方向両端に向かうにつれて厚さが薄くなる構成としたが、本発明の化粧部の形状はこれに限定されない。例えば、化粧部22の意匠面の短手方向両端から立設された立上り部を備えていてもよい。この場合、立上り部は目地部材10の他の部分と一体に押出成形により形成され、目地部材10が目地18、36、46、56に取り付けられた状態で目地18、36、46、56の長手方向に沿って延在される。
【0052】
また、上述の実施形態では、目地部材10は、その長手方向に沿って図1(A)に示される断面形状が一様に延在されているが、化粧部22に後加工を施して目地部材10の断面形状が長手方向に一様でない構成としてもよい。例えば、化粧部22の意匠面に柄や刻印等の装飾を施してもよい。別の例として、化粧部22の幅方向両端を長手方向に沿って波型などの形状にカットしてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態では、反発部28は、自然状態において、幅方向両端に向かうにつれて化粧部22側、すなわち挿入方向Pと反対方向に傾斜されている例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、反発部28は、幅方向に沿って延在されていてもよいし、幅方向両端に向かうにつれて挿入方向Pに傾斜されていてもよい。これらの場合であっても、挿入部20が目地18、36、46、56に挿入されると、反発部28が自然状態に戻ろうとする弾性力が生じて面材14、16、32、34、42、44、52、54を押圧するので、より強固に挿入部20が目地18、36、46、56に嵌着される。
【符号の説明】
【0054】
10、60 目地部材
14、16、32、34、42、44、52、54 面材(建築用面材)
14B、16B、32B、34A、42B、44B、52B、54B 意匠面
18、36、46、56 目地
20 挿入部
20A 基端部
22 化粧部
26 座屈防止部
28 反発部
62 加熱膨張部材
P 挿入方向
W1 挿入部の幅寸法
W2、W4、W5、W6 目地の幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5