(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】プレクチン1結合性抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20221220BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20221220BHJP
A61K 49/16 20060101ALI20221220BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20221220BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221220BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20221220BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20221220BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221220BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20221220BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 L
A61K39/395 T
A61K49/16
A61K51/10 200
A61P35/00
C07K16/28
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2019503642
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(86)【国際出願番号】 US2017026711
(87)【国際公開番号】W WO2017177199
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-04-07
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518357748
【氏名又は名称】ジィールバイオ,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ZIELBIO,INC.
【住所又は居所原語表記】1076 Autumn Hill Court,Crozet,VA 22932,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,キンバリー,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ディマストロマッテオ,ジュリアン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521897(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0151010(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
A61K 39/395
A61K 49/16
A61K 51/10
A61P 35/00
C07K 16/28
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞表面に露出したプレクチン1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片であって、
配列番号24に規定の配列を有する重鎖可変領域および配列番号46に規定の配列を有する軽鎖可変領域を含むか、または
配列番号68に規定の配列を有する重鎖可変領域および配列番号90に規定の配列を有する軽鎖可変領域を含む、前記抗体または抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号92に示されるアミノ酸配列に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号59と少なくとも90%の同一性を共有する配列セットを有する重鎖、および、配列番号81と少なくとも90%の同一性を共有する軽鎖を含む、請求項1または2に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項4】
標的薬剤に結合されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項5】
標的薬剤が、検出可能部分または治療剤である、請求項4に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項6】
検出可能部分が、放射性同位元素、磁性化合物、X線吸収剤、化学化合物、生物学的タグ、および蛍光分子からなる群から選択されるか、または、治療剤が、細胞傷害性部分または免疫調節性部分である、請求項5に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項7】
標的薬剤にリンカーを介して結合されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項8】
リンカーが、フレキシブルなアミノ酸配列またはフォトリンカーである、請求項7に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項9】
標的薬剤が、生理学的に不活性なナノ粒子または蛍光色素を含む、請求項4~8のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項10】
ナノ粒子が、磁性、蛍光性、または放射性である、請求項9に記載の抗体
または抗原結合断片。
【請求項11】
細胞表面に露出したプレクチン1抗原に特異的に結合し、かつ6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む、抗体または抗原結合断片であって、
ここで、CDRH1は配列番号18に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号20に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号22に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号40に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号42に規定の配列を含み、およびCDRL3は配列番号44に規定の配列を含む;または、
ここで、CDRH1は配列番号62に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号64に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号66に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号84に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号86に規定の配列を含み、および、CDRL3は配列番号88に規定の配列を含む、前記抗体または抗原結合断片。
【請求項12】
配列番号24の重鎖可変ドメイン配列および配列番号46の軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項11に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項13】
配列番号68の重鎖可変ドメイン配列および配列番号90の軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項11に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項14】
抗体または抗原結合断片が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、アフィボディ、またはFv断片である、請求項11~13のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項15】
配列番号69に規定の配列を有する重鎖定常ドメインを含むか、または、IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgM、およびIgE定常ドメインからなる群から選択される重鎖定常ドメインを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項16】
抗体または抗原結合断片が、蛍光剤、発光剤、酵素剤および放射性薬剤からなる群から選択される薬剤にコンジュゲートしている、請求項11~15のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片を含む、
診断用または治療用の組成物。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片および薬学的に許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
請求項1~
16のいずれか一項に記載の抗体
または抗原結合断片をコードする、単離された核酸。
【請求項20】
請求項19に記載の単離された核酸を含む、単離された細胞。
【請求項21】
細胞が、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、もしくは昆虫細胞であるか、および/または、細胞が、ハイブリドーマ細胞である、請求項20に記載の単離された細胞。
【請求項22】
がんを処置するための方法における使用のための、請求項18に記載の医薬組成物であって、方法が、がんを有する対象に、請求項18に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項23】
抗体
または抗原結合断片が、標的薬剤に結合されており、抗体
または抗原結合断片が、対象のがん細胞の表面上のプレクチン1に結合する、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
がん細胞を検出するための方法における使用のための、請求項18に記載の医薬組成物であって、方法が、がんを有する対象に、請求項18に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記医薬組成物。
【請求項25】
抗体
または抗原結合断片が、標的薬剤に結合されており、抗体
または抗原結合断片が、対象のがん細胞の表面上のプレクチン1に結合する、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
標的薬剤が、検出可能部分または治療剤である、請求項22または24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
検出可能部分が、放射性同位元素、磁性化合物、X線吸収剤、化学化合物、生物学的タグ、および蛍光分子からなる群から選択されるか、または、治療剤が、細胞傷害性部分または免疫調節性部分である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
抗体
または抗原結合断片が、標的薬剤にリンカーを介して結合されている、請求項22~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
リンカーが、フレキシブルなアミノ酸配列またはフォトリンカーである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
標的薬剤が、生理学的に不活性なナノ粒子または蛍光色素を含む、請求項26~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ナノ粒子が、磁性、蛍光性、または放射性である、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
抗体
または抗原結合断片あるいは
医薬組成物が、1ng/kg~100mg/kgの範囲の用量で投与される、請求項22~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
がん細胞が、卵巣がん細胞、食道がん細胞、頭頸部扁平上皮癌がん細胞、または膵臓がん細胞である、請求項22~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
膵臓がん細胞が、膵管腺癌細胞である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
対象が、哺乳動物である、請求項22~34のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項36】
哺乳動物が、ヒトである、請求項35に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C. $119(e)の元で、2016年4月8日に出願された米国特許仮出願第62/320,117号、名称「プレクチン1結合性抗体およびその使用」の出願日の利益を主張する;その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
膵管腺癌(PDAC)は、米国での癌死亡の4番目の主要原因であり、死に至る急速な臨床経過を示す。一旦診断されると、PDACの中央生存期間は6ヶ月であり、5年生存率はわずか3%である(Li et al., Lancet 363:1049-1057 (2004))。
化学療法および放射線療法はわずかな利益しか有さず、また外科手術は患者の20%のみに可能であるため、外科的切除を可能にする早期検出が、より長い生存のための最良の希望を提供する(Yeo et al., Ann Surg 222:580-588 (1995); discussion 588-592)。実際に、高リスク患者群(例えば、遺伝性がん症候群、慢性膵炎および新規発症糖尿病)におけるPDACまたは高グレード前駆体の検出は、がん診断ポートフォリオにおけるまだ解決されていない重要な必要性を表す(Brentnall et al., Ann. Intern. Med. 131:247-255 (1999);Canto et al., Clin. Gastroenterol. Hepatol. 2:606-621 (2004))。
【0003】
血清CA-19-9は、臨床的に使用されるバイオマーカーである;しかし、初期段階のPDACを検出するのに必要な感度には欠けている(Goggins, J. Clin. Oncol. 23:4524-4531 (2005))。さらに、腹部断面のイメージングは、高リスク患者において早期のPDACを検出するのに信頼できないことが証明されている(Pelaez-Luna et al., Am J Gastroenterol 102:2157-2163 (2007))。
したがって、医学のこの分野で最も重要なことは、診断薬としての結合リガンドの開発のためのバイオマーカーの同定、例えば、前腫瘍病変/早期侵襲病変を検出するため、および処置における使用のための、画像化プローブなどの同定である。
【発明の概要】
【0004】
概要
本開示の側面は、臨床的に有用な抗体ベースの薬剤、例えば抗体薬物コンジュゲート(ADC)等の開発の成功が、薬剤のその標的に対する特異性および選択性に影響されるという認識に関する。プレクチン1は、卵巣がん、食道がんおよび頭頸部扁平上皮癌ならびに膵管腺癌を含む種々ながんに対する、有用なバイオマーカーである。ブレンツキシマブ ベドチンによって標的化されるCD30、およびアドトラスツズマブ エムタンシンによって標的化されるHer2などの抗体標的とは対照的に、プレクチン1は、特定のがん細胞(例えば、膵管腺癌細胞、卵巣がん細胞など)においてのみ細胞表面上に存在し、それにより絶妙な特異性および選択性を与えるため、特に有用な標的である。したがって、いくつかの態様において、本開示は、がん細胞の表面上のプレクチン1に特異的に結合する抗体および抗原結合断片、およびその使用方法に関する。いくつかの態様において、本開示に記載の抗プレクチン1抗体のプレクチン1発現細胞への結合は、細胞の死滅を誘導(例えば、アポトーシスを誘発)する。
【0005】
いくつかの側面において、本開示は、配列番号92と少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する、抗体または抗原結合断片を提供する。いくつかの側面において、本開示は、配列番号92に対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する、抗体または抗原結合断片を提供する。いくつかの態様において、抗体は、配列番号92として示されるアミノ酸配列に特異的に結合する。
【0006】
いくつかの側面において、本開示は、細胞表面に露出したプレクチン1抗原に特異的に結合し、6つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む、抗体または抗原結合断片を提供し、ここでCDRH1は、配列番号18に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号20に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号22に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号40に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号42に規定の配列を含み、およびCDRL3は配列番号44に規定の配列を含む;またはここで、CDRH1は配列番号62に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号64に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号66に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号84に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号86に規定の配列を含み、CDRL3は配列番号88に規定の配列を含む。
【0007】
いくつかの態様において、CDRH1は配列番号18に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号20に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号22に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号40に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号42に規定の配列を含み、およびCDRL3は配列番号44に規定の配列を含む。
いくつかの側面において、本開示は、細胞表面に露出したプレクチン1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片を提供し、ここで抗体または抗原結合断片は、配列番号22または配列番号66に規定の配列を有する相補性決定領域3(CDRL3)を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、抗体は、配列番号44または配列番号88に規定の配列を有する相補性決定領域3(CDRL3)を含む軽鎖可変領域を、さらに含む。
【0008】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号24の重鎖可変ドメイン配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号46の軽鎖可変ドメイン配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号24の重鎖可変ドメイン配列および配列番号46の軽鎖可変ドメイン配列を含む。
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片CDRH1は、配列番号62に規定の配列を含み、CDRH2は配列番号64に規定の配列を含み、CDRH3は配列番号66に規定の配列を含み、CDRL1は配列番号84に規定の配列を含み、CDRL2は配列番号86に規定の配列を含み、およびCDRL3は配列番号88に規定の配列を含む。
【0009】
いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号68の重鎖可変ドメイン配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号90の軽鎖可変ドメイン配列を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号68の重鎖可変ドメイン配列および配列番号90の軽鎖可変ドメイン配列を含む。
いくつかの側面において、本開示は、細胞表面に露出したプレクチン1に特異的に結合する抗体または抗原結合断片を提供し、ここで、抗体または抗原結合断片は、配列番号24または配列番号68に規定の配列を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、配列番号46または配列番号90に規定の配列を有する軽鎖可変領域をさらに含む。
【0010】
いくつかの態様において、抗体は、配列番号24に規定の配列を有する重鎖可変領域、および配列番号46に規定の配列を有する軽鎖可変領域を含む。
いくつかの態様において、抗体は、配列番号68に規定の配列を有する重鎖可変領域、および配列番号90に規定の配列を有する軽鎖可変領域を含む。
いくつかの側面において、本開示は、配列番号15と少なくとも85%の同一性を共有する配列セットを有する重鎖可変領域、および配列番号37と少なくとも85%の同一性を共有する軽鎖可変領域を含む、抗体を提供する。いくつかの側面において、本開示は、配列番号15と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の同一性を共有する配列セットを有する重鎖可変領域、および配列番号37と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の同一性を共有する軽鎖可変領域を含む、抗体を提供する。
【0011】
いくつかの側面において、本開示は、配列番号59と少なくとも85%の同一性を共有する配列セットを有する重鎖可変領域、および配列番号81と少なくとも85%の同一性を共有する軽鎖可変領域を含む、抗体を提供する。いくつかの側面において、本開示は、配列番号59と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の同一性を共有する配列セットを有する重鎖可変領域、および配列番号81と少なくとも90%(例えば、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)の同一性を共有する軽鎖可変領域を含む、抗体を提供する。
いくつかの態様において、本開示に記載の抗体または抗原結合断片は、配列番号15または配列番号59に規定の配列を有する重鎖定常ドメインを含む。
【0012】
いくつかの態様において、本開示に記載の抗体または抗原結合断片は、IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgM、およびIgE定常ドメインからなる群から選択される、重鎖定常ドメインを含む。
いくつかの態様において、本開示に記載の抗体または抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab断片、F(ab’)2断片、アフィボディ、またはFv断片である。
【0013】
いくつかの態様において、本開示は、プレクチン1を標的とする抗体-薬物コンジュゲートに関する。いくつかの態様において、本開示に記載の抗体(例えば、抗プレクチン1抗体)は、標的薬剤に結合される。いくつかの態様において、標的薬剤は検出可能部分である。いくつかの態様において、検出可能部分は、放射性同位元素、磁性化合物、X線吸収剤、化学化合物、生物学的タグ、および蛍光分子からなる群から選択される。
いくつかの態様において、標的薬剤は治療剤である。いくつかの態様において、治療剤は、細胞傷害性部分または免疫調節性部分である。
いくつかの態様において、抗体は、標的薬剤にリンカーを介して結合される。いくつかの態様において、リンカーは、フレキシブルなアミノ酸配列である。いくつかの態様において、リンカーはフォトリンカーである。
【0014】
いくつかの態様において、標的薬剤は、生理学的に不活性なナノ粒子を含む。いくつかの態様において、ナノ粒子は、磁性、蛍光性、または放射性である。いくつかの態様において、標的薬剤は蛍光色素を含む。
いくつかの側面において、本開示は、配列番号92に示されるアミノ酸配列への結合について本開示の抗体または抗原結合断片と競合または交差競合する、抗体または抗原結合断片を提供する(例えば、抗プレクチン1抗体)。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、抗体または抗原結合断片とその抗原との間の10-6M未満の平衡解離定数Kdによって、競合または交差競合する。
【0015】
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の抗体(例えば、抗プレクチン1抗体)を含み、任意に薬学的に許容し得る賦形剤をさらに含む、組成物を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、3つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を提供し、ここでCDRH3は、配列番号22に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRH1は配列番号18に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRH2は配列番号20に規定の配列を含む。
いくつかの側面において、本開示は、3つの相補性決定領域(CDR):CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を提供し、ここでCDRL3は、配列番号44に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRL1は配列番号40に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRL2は配列番号42に規定の配列を含む。
【0016】
いくつかの側面において、本開示は、3つの相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、およびCDRH3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を提供し、ここでCDRH3は、配列番号66に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRH1は配列番号62に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRH2は配列番号64に規定の配列を含む。
いくつかの側面において、本開示は、3つの相補性決定領域(CDR):CDRL1、CDRL2、およびCDRL3を含むタンパク質をコードする単離された核酸を提供し、ここでCDRL3は、配列番号88に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRL1は配列番号84に規定の配列を含む。いくつかの態様において、CDRL2は配列番号86に規定の配列を含む。
【0017】
いくつかの側面において、本開示は、配列番号15、24、37、46、59、68、81、または90からなる群から選択される配列に記載された配列を含む、単離された核酸を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の核酸を含む、単離された細胞(例えば、宿主細胞)を提供する。いくつかの態様において、単離された細胞は、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、または昆虫細胞である。いくつかの態様において、細胞はハイブリドーマ細胞である。
いくつかの側面において、本開示は、薬剤を対象のがん細胞に標的化するための方法を提供し、方法は、対象に、標的薬剤に結合された本開示に記載の抗体または組成物(例えば、抗プレクチン1抗体または抗プレクチン1抗体を含む組成物)を投与することを含み、ここで抗体は、対象におけるがん細胞の表面上のプレクチン1に結合する。
【0018】
いくつかの側面において、本開示は、がんを処置するための方法を提供し、方法は、がんを有する対象に、本開示に記載の抗体または組成物(例えば、抗プレクチン1抗体または抗プレクチン1抗体を含む組成物)の有効量を投与することを含む。
いくつかの側面において、本開示は、がん細胞を検出するための方法を提供し、方法は、がんを有する対象に、本開示に記載の抗体または組成物(例えば、プレクチン1抗体または抗プレクチン1抗体を含む組成物)の有効量を投与することを含む。
【0019】
本開示に記載の方法のいくつかの態様において、抗体または組成物は、1ng/kg~100mg/kgの範囲の用量で投与される。
本開示に記載の方法のいくつかの態様において、がん細胞は、卵巣がん細胞、食道がん細胞、頭頸部扁平上皮癌がん細胞、または膵臓がん細胞である。いくつかの態様において、がん細胞は、膵管腺癌細胞である。本開示に記載の方法のいくつかの態様において、対象は哺乳動物、任意にヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、YapCまたはHPDE被覆プレート上の異なるクローンのin vitroでの検証を示す図である。
【
図2】
図2は、細胞死滅アッセイを用いた細胞株のさらなるin vitroでの検証を示す図である。
【
図3】
図3A~3Bは、プレクチン1タンパク質(
図3A、Sec8-His)およびプレクチン1陽性L3.6plがん細胞(
図3B)の、組換えヒトC末端部分におけるPAb1結合特異性を示す図である。
【0021】
【
図4】
図4A~4Gは、L3.6plプレクチン1陽性がん細胞における、PAb1の内在化を示す図である。
図4A~4Bは、エンドソームマーカーLamp-1と合併したPAb1(
図4A)およびIgG対照(
図4B)の染色後の、L3.6plの代表的な共焦点画像を示す。Lamp-1(
図4C)、PAb1(
図4D)、およびLAMP-1とPAb1の共局在(
図4E)の染色を示す。
図4Fは、PAb1の有意な部分がLamp-1と合併し、一方IgG対照はLamp-1と合併しなかったことを示すデータを示す。
図4Gは、L3.6plプレクチン1陽性細胞およびLNCapプレクチン1陰性細胞における、37℃、4℃または過剰の冷PAb1との組み合わせでのインキュベーション後の、内在化
125I-PAb1放射活性の定量化を示す;Comp.は、競合アッセイを指す。
【0022】
【
図5】
図5A~5Dは、PAb1処置後のアポトーシスによるがん細胞死の誘導を示す。
図5Aは、L3.6pl細胞の、蛍光マイナス1(FMO)フローサイトメトリーデータを示す。
図5Bは、対照IgG処置の72時間後の、L3.6plアネキシンV陽性細胞を示す。
図5Cは、PAb1処置の72時間後の、L3.6plアネキシンV陽性細胞を示す。
図5Dは、L3.6plがん細胞が、対照IgG(D)と比較して、PAb1処置後に有意に多くのアポトーシスを経験したことを示す。*、p<0.05。
【0023】
【
図6】
図6A~6Dは、YapCがん細胞のチューブリン異方性に対する、PAb1処置の効果を示す図である。
図6Aは、処置なしのチューブリン染色後のYapCの共焦点顕微鏡画像を示す。
図6Bは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)処置の10分後のチューブリン染色後の、YapCの共焦点顕微鏡画像を示す。
図6Cは、PAb1処置の24時間後のチューブリン染色後の、YapCの共焦点顕微鏡画像を示す。
図6Dは、非処置対照と比較して、PAb1で処置した細胞における異方性の減少を示す。
【
図7】
図7A~7Cは、YapCがん細胞におけるPAb1とチューブリンとの共局在化を示す図である。
図7Aは、チューブリン染色後のYapC細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。
図7Bは、PAb1染色後のYapC細胞の共焦点顕微鏡画像を示す。
図7Cは、チューブリン染色とPAb1染色の共局在(矢印)を示す。
【0024】
【
図8】
図8A~8Eは、皮下YapC腫瘍を有する免疫無防備マウスの、in vivoPAb1用量漸増処置を示す図である。
図8Aは、11日間の処置の後、腫瘍体積は、3mg/kgのPAb1を投与されたマウスにおいて、対照IgGマウスより有意に低いことを示す。1mg/kgのPAb1処置群は、14日目に腫瘍体積の有意な減少を誘発した。PAb1の2つのより高い用量は、0.3mg/kg群と比較して、有意に低い腫瘍体積を示した。*、p<0.05、IgG対3mg/kgのPAb1;#、p<0.05、IgG対1mg/kgのPAb1;°、p<0.05、0.3対3mg/kgのPAb1;・、p<0.05、0.3対1mg/kgのPAb1。
図8Bは、各群の動物の平均体重を示す。動物は処置の全期間中、体重が減少しなかったことに留意されたい。
【0025】
詳細な説明
プレクチン1に結合する抗体
本開示は、がん細胞の表面上のプレクチン1に結合する、抗体および抗原結合断片を提供する。本開示のモノクローナル抗体は、ネズミ、ヒト化またはキメラまたは他の形態であり得る。本開示の抗体の詳細な説明、ならびに本開示の抗体の生産および同定のための方法が、本明細書において提供される。
プレクチン1は、血漿および核膜の細胞骨格を固定することに加えて、中間フィラメントを微小管およびマイクロフィラメントに連結する、高分子量タンパク質(500kDa)である(Sonnenberg, et al., Exp Cell Res 313:2189-2203 (2007)にレビューされている)。
【0026】
一般に、プレクチン1レベルは正常な膵管細胞では低いが、その発現は、ある種のがん(例えば、前駆膵臓上皮内新生物(PanIN)、膵管腺癌細胞(PDAC)、卵巣がん細胞など)を有する細胞において上方制御される。プレクチン1は、正常な線維芽細胞では明確な細胞質および核局在を示し、一方ある種のがん(例えばPDAC)を有する細胞では、細胞膜上の異常な発現が観察される。プレクチン1の細胞内局在の変化は、自己免疫状態である腫瘍随伴性天疱瘡、および関連するリンパ増殖性新生物であるキャッスルマン病においても観察されている(Aho et al., J Invest Dermatol 113:422-423 (1999))。プレクチン1はまた、シグナル伝達において重要な役割を有する。したがって、ある種のがん(例えば、前駆膵臓上皮内新生物(PanIN)、膵管腺癌細胞(PDAC)、卵巣がん細胞など)を有する細胞におけるプレクチン1は、発癌に関連する細胞の移動、極性、およびエネルギー代謝を調節するシグナル伝達経路に、影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの態様において、本開示は、がん細胞の表面上のプレクチン1に結合する、抗体および抗原結合断片を提供する。
【0027】
いくつかの態様において、免疫グロブリンとしても知られている抗体は、それぞれ約25kDaの2本の軽(L)鎖およびそれぞれ約50kDaの2本の重(H)鎖から構成される、四量体グリコシル化タンパク質である。ラムダおよびカッパと呼ばれる2種類の軽鎖が、抗体に見出され得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンはA、D、E、GおよびMの5つの主要なクラスに割り当てることができ、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分類される。各軽鎖は、典型的には、N末端可変(V)ドメイン(VL)および定常(C)ドメイン(CL)を含む。各重鎖は、典型的には、N末端Vドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH1~3)、およびヒンジ領域を含む。VHに最も近いCHドメインは、CH1と命名されている。VHおよびVLドメインは、超可変配列の3つの領域(相補性決定領域、CDR)の足場を形成する、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4つの領域からなる。CDRは、抗体と抗原の特異的相互作用に関与する残基の大部分を含む。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。したがって、重鎖上のCDR構成成分はCDRH1、CDRH2およびCDRH3と呼ばれ、軽鎖上のCDR構成成分はCDRL1、CDRL2およびCDRL3と呼ばれる。CDRは、典型的にはKabatのCDRを指し、これはSequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services (1991), eds. Kabat et al.に記載されている。抗原結合部位を特徴付ける別の標準は、Chothiaに記載の超可変ループを参照する。例えば、Chothia, D. et al. (1992) J. Mol. Biol. 227:799-817;およびTomlinson et al. (1995) EMBO J. 14:4628-4638を参照。さらに別の標準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されるAbMの定義である。一般に、例えば抗体エンジニアリングラボマニュアルにある、抗体可変ドメインのタンパク質配列および構造解析(Ed.: Duebel, S, and Kontermann, R., Springer-Verlag, Heidelberg)を参照。代替的に、KabatのCDRに関して記載された態様は、Chothiaの超可変ループまたはAbM規定ループ、またはこれらの方法のいずれかの組み合わせについての類似の記載された関係を使用して、実施することができる。
【0028】
いくつかの態様において、本開示の抗プレクチン1抗体および抗体をコードする本開示の核酸分子は、以下の表1に示すCDRアミノ酸および核酸配列を含む。
表1
【表1】
【0029】
いくつかの態様において、本開示の抗プレクチン1結合剤(例えば、抗プレクチン1抗体)は、表1に示される抗体のいずれか1つについて提供されるような、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、もしくはCDRL3、またはそれらの組み合わせを含む、任意の抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、抗プレクチン1結合剤は、表1に示される抗体のいずれか1つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。本開示はまた、表1に示される抗体のいずれか1つについて提供されるような、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2またはCDRL3をコードする任意の核酸配列を含む。抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において、特に重要な役割を果たし得る。したがって、本開示の抗プレクチン1抗体またはその核酸分子は、表1に示されるような、または配列番号15、22、24、37、44、46、59、66、68、81、88または90に示される抗体の、少なくとも重鎖および/または軽鎖CDR3を含み得る。
【0030】
抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の完全なアミノ酸および核酸配列を、表2に列挙する。
表2
【表2】
【0031】
いくつかの態様において、本開示の抗プレクチン抗体としては、表1に示されるかまたは本開示の配列表に記載されるような(例えば、配列番号15、24、37、46、59、68、81、または90)、重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメインまたはその両方を含む、任意の抗体を含む。本開示はまた、表1に示されるかまたは本開示の配列表に記載されるような(例えば、配列番号4、13、26、35、48、57、70、または79)、重鎖可変ドメインもしくは軽鎖可変ドメイン核酸配列、またはその両方を含む抗体をコードする、任意の核酸分子を含む。
【0032】
本開示の抗プレクチン1抗体は、抗体定常領域またはその一部を、任意に含んでよい。例えば、VLドメインは、そのC末端で、CκまたはCλなどの軽鎖定常ドメインに結合され得る。同様に、VHドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMなどの重鎖の全部または一部、および任意のアイソタイプのサブクラスに付着され得る。抗体は、適切な定常領域を含み得る(例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, No. 91-3242, National Institutes of Health Publications, Bethesda, Md. (1991)を参照)。したがって、本開示の範囲内の抗体は、当該技術分野で知られている定常領域と組み合わせた、VHおよびVLドメインまたはその抗原結合部分を含むことができる。いくつかの態様において、本開示の抗プレクチン1抗体は、配列番号4、14、26、36、48、58、70、または80によって表される配列を含む、重鎖定常領域を含む。
【0033】
特定の態様において、VHおよび/またはVLドメインを生殖系列配列に戻すことができ、例えば、これらのドメインのFRは、従来の分子生物学技術を用いて、生殖系列細胞によって産生されたドメインと一致するように突然変異される。他の態様において、FR配列はコンセンサス生殖系列配列から分岐したままである。
いくつかの態様において、抗プレクチン1抗体または抗原結合断片は、例えば配列番号6、8、10、12、17、19、21、23、28、30、32、34、39、41、43、45、50、52、54、56、61、63、65、67、72、74、76、78、83、または85に記載などの抗体のフレームワーク領域を、含んでも、含まなくてもよい。いくつかの態様においては、抗プレクチン1抗体はマウス抗体である。いくつかの態様において、抗プレクチン1抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体である。
【0034】
いくつかの態様において、本開示は、抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列および核酸配列のバリアント(例えば、相同体)を意図することを理解されたい。「相同性」は、2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド部分の間の、同一性パーセントを指す。「実質的相同性」という用語は、核酸またはその断片を指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)と、適切なヌクレオチド挿入または欠失と共に最適に整列された場合、整列した配列の約90~100%にヌクレオチド配列同一性があることを言う。例えば、いくつかの態様において、実質的な相同性を共有する核酸配列は、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の、配列同一性を有する。ポリペプチドまたはその断片を指す場合、用語「実質的な相同性」は、別のポリペプチドと、適切なギャップ、挿入または欠失と共に最適に整列された場合、整列された配列の約90~100%にヌクレオチド配列同一性があることを示す。「高度に保存された」という用語は、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは97%を超える同一性を意味する。例えば、いくつかの態様において、高度に保存されたタンパク質は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の同一性を共有する。いくつかの場合において、高度に保存されたとは、100%の同一性を指す場合もある。同一性は、例えば当業者に知られているアルゴリズムおよびコンピュータプログラムの使用によって、当業者に容易に決定される。
【0035】
いくつかの態様において、本開示の抗プレクチン1抗体は、プレクチン1に高い親和性で、例えば10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M以下のKdで、結合することができる。例えば、抗プレクチン1抗体またはその抗原結合断片は、プレクチン1に、5pM~500nM、例えば50pM~100nM、例えば500pM~50nMの親和性で、結合することができる。本開示はまた、プレクチン1への結合について本明細書に記載される抗体のいずれかと競合し、50nM以下の親和性(例えば、20nM以下、10nM以下、500pM以下、50pM以下、または5pM以下)を有する、抗体または抗原結合断片も含む。抗プレクチン1抗体の親和性および結合動態は、バイオセンサー技術(例えば、OCTETまたはBIACORE)を含むがこれに限定されない、当該技術分野で知られている任意の方法を用いて、試験することができる。
本明細書で使用する「抗体」という用語は、一般に免疫グロブリンを指す。特異的結合能を維持するかまたは有するそれらの全ての誘導体も、ここに提供される。抗体調製物は、モノクローナルまたはポリクローナルであってよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、用語「抗体断片」または「抗原結合断片」は、完全長未満の抗体の任意の誘導体をいう。一般に抗原結合断片は、全長抗体の特異的結合能力の少なくとも有意な部分を保持する。抗原結合断片の例には、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dsFv二重特異性抗体、アフィボディ、およびFd断片が含まれる。抗原結合断片は、任意の適切な手段によって生産され得る。例えば、抗原結合断片は、酵素的にまたは化学的に無傷の抗体の断片化によって生産され得るか、または部分抗体配列をコードする遺伝子から組換えにより生産され得る。代替的に、抗原結合断片は、完全にまたは部分的に合成的に生産され得る。抗原結合断片は、任意に、一本鎖抗体断片であってもよい。代替的に、断片は、例えばジスルフィド結合によって一緒に連結された複数の鎖を含んでもよい。抗原結合断片はまた、任意に、多分子複合体であってもよい。機能的抗原結合断片は、典型的には少なくとも約50個のアミノ酸を含み、より典型的には少なくとも約200個のアミノ酸を含む。
【0037】
一本鎖Fv(scFv)は、ポリペプチドリンカーによって互いに共有結合された可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)のみからなる、組換え抗原結合断片である。VLまたはVHのいずれかは、NH2末端ドメインであってもよい。ポリペプチドリンカーは、2つの可変ドメインが重大な立体障害なしに架橋されている限り、可変長および組成であってもよい。典型的には、リンカーは、主として、グリシンおよびセリン残基のストレッチで構成され、いくつかのグルタミン酸またはリジン残基が溶解性のために散在している。
二重特異性抗体は、二量体scFvである。二重特異性抗体の成分は、典型的には、ほとんどのscFvより短いペプチドリンカーを有し、二量体として会合することに選好を示す。
【0038】
Fv断片は、非共有結合相互作用によって一緒に保持される1つのVHドメインおよび1つのVLドメインからなる、抗原結合断片である。用語dsFvは、本明細書では、VH-VL対を安定化するための操作された分子間ジスルフィド結合を有するFvを指すために、使用される。
F(ab’)2断片は、免疫グロブリン(典型的にはIgG)からpH4.0~4.5で酵素ペプシンで消化することによって得られるものと本質的に同等な、抗原結合断片である。断片は、組換え生産されてもよい。
Fab断片は、F(ab’)2断片中の2つの重鎖断片を結合するジスルフィド架橋(単数または複数)の還元によって得られるものと本質的に同等な、抗原結合断片である。Fab’断片は、組換え生産されてもよい。
Fab断片は、免疫グロブリン(典型的にはIgG)を酵素パパインで消化することによって得られるものと本質的に同等な、抗原結合断片である。Fab断片は、組換え生産されてもよい。Fab断片の重鎖セグメントは、Fd断片(piece)である。
【0039】
アフィボディは、抗原結合分子(例えば、抗体模倣物)として機能する3本らせん束を含む、小さなタンパク質である。一般に、アフィボディは長さが約58アミノ酸であり、約6kDaのモル質量を有する。独自の結合特性を有するアフィボディ分子は、親タンパク質ドメインの結合活性に関与する2つのαヘリックスに位置する13アミノ酸の無作為化によって、獲得される。所望の標的タンパク質に結合する特異的アフィボディ分子は、数十億の異なるバリアントを含有するプール(ライブラリー)から、ファージディスプレイなどの方法を用いて、単離することができる。
【0040】
プレクチン1に結合する抗体の生産
多くの方法を使用して、本開示の抗体またはその抗原結合断片を得ることができる。例えば、抗体は、組換えDNA法を用いて生産することができる。モノクローナル抗体はまた、既知の方法に従って、ハイブリドーマの生成によって生産され得る(例えば、Kohler and Milstein (1975) Nature, 256: 495-499を参照)。この方法で形成されたハイブリドーマを次に、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(例えば、OCTETまたはBIACORE)分析などの標準的な方法を用いてスクリーニングし、特定の抗原と特異的に結合する抗体を生産する1つ以上のハイブリドーマを同定する。特定の抗原の任意の形態を免疫原として、例えば組換え抗原、天然に存在する形態、その任意のバリアントまたは断片、ならびにその抗原性ペプチドとして(例えば本明細書に記載の任意のエピトープを、線状エピトープとして、または足場内で配座エピトープとして)、使用することができる。抗体を作製する1つの例示的な方法は、抗体またはその断片(例えばscFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーを、スクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えば、Ladner et al., 米国特許第5,223,409号;Smith (1985) Science 228:1315-1317;Clackson et al. (1991) Nature, 352: 624-628;Marks et al. (1991) J. Mol. Biol., 222: 581-597;WO92/18619;WO 91/17271;WO 92/20791;WO 92/15679;WO 93/01288;WO 92/01047;WO 92/09690;およびWO 90/02809に記載されている。
【0041】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原(例えば、プレクチン1)を用いて、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ハムスターもしくはラットなどを、免疫化することができる。一態様において、非ヒト動物はマウスである。
別の態様において、非ヒト動物からモノクローナル抗体を得、次いで当該技術分野で知られている組換えDNA技術を用いて、改変、例えばキメラ化する。キメラ抗体を作製するための様々なアプローチが記載されている。例えば、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851, 1985;Takeda et al., Nature 314:452, 1985、Cabilly et al., 米国特許第4,816,567号;Boss et al., 米国特許第4,816,397号;Tanaguchi et al., 欧州特許公開EP171496;欧州特許公開 0173494、英国特許GB 2177096Bを参照。
【0042】
抗体はまた、当該技術分野で知られている方法によってヒト化され得る。例えば、所望の結合特異性を有するモノクローナル抗体を、商業的にヒト化することができる(Scotgene, Scotland; and Oxford Molecular, Palo Alto, Calif.)。トランスジェニック動物で発現されるような完全ヒト化抗体は、本発明の範囲内である(例えば、Green et al. (1994) Nature Genetics 7, 13;および米国特許第5,545,806号および第5,569,825号参照)。
さらなる抗体産生技術については、Antibodies: A Laboratory Manual, Second Edition. Edited by Edward A. Greenfield, Dana-Farber Cancer Institute, (c)2014を参照のこと。本開示は必ずしも、抗体の特定の供給源、生産方法、または他の特別な特性に限定はされない。
【0043】
本発明のいくつかの側面は、ポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された単離された細胞(例えば、宿主細胞)に関する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であってよい。宿主細胞中に存在するポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよいし、または染色体外に維持されていてもよい。宿主細胞は、任意の原核または真核細胞、例えば細菌、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞などであり得る。いくつかの態様において、真菌細胞は、例えば、サッカロマイセス属のもの、特にS.cerevisiae種のものである。用語「原核生物」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る、全ての細菌を含む。原核生物宿主は、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌、例えば、E. coli、S. typhimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisを含み得る。用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫および脊椎動物細胞、例えばNSOおよびCHO細胞などの哺乳動物細胞を含む。組換え生産手順で使用される宿主に応じて、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体または免疫グロブリン鎖は、グリコシル化されていてもよく、または非グリコシル化されていてもよい。抗体または対応する免疫グロブリン鎖はまた、最初のメチオニンアミノ酸残基を含み得る。
【0044】
いくつかの態様において、ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主は、ヌクレオチド配列の高レベル発現に適した条件下で維持され得、そして必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体または無傷の抗体、抗原結合断片または他の免疫グロブリン形態の、収集および精製が続くことができる;Beychok, Cells of Immunoglobulin Synthesis, Academic Press, N.Y., (1979)を参照。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターが細胞に導入され、抗体または抗原結合断片が産生される。さらに、上記宿主細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物を、抗体または抗体断片の大規模生産のために使用することができる。
【0045】
形質転換された宿主細胞は、発酵槽で増殖させ、当該分野で知られている技術に従って培養して、最適な細胞増殖を達成することができる。一旦発現されると、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリン形態または抗原結合断片は、当該技術分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などに従って、精製することができる;Scopes, "Protein Purification", Springer Verlag, N.Y. (1982)を参照されたい。次いで、抗体または抗原結合断片を、増殖培地、細胞溶解物、または細胞膜画分から単離することができる。例えば、微生物的に発現された抗体または抗原結合断片の単離および精製は、任意の従来の手段、例えば分取クロマトグラフィー分離および免疫学的分離などの、例えば抗体の定常領域に指向されるモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体の使用を伴うものによって、実施することができる。
【0046】
本開示の側面は、モノクローナル抗体の無限に延長された供給源を提供する、ハイブリドーマに関する。本明細書で使用する場合、「ハイブリドーマ細胞」は、Bリンパ芽球と骨髄腫融合パートナーとの融合から誘導される不死化細胞を指す。モノクローナル抗体産生細胞(例えば、ハイブリドーマ細胞)を調製するには、抗体価が確認された個体(例えばマウス)を選択し、最終免疫化から2日~5日後にその脾臓またはリンパ節を採取し、そこに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させて、所望のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製する。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後述のように標識タンパク質と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより、行うことができる。細胞融合は、知られている方法、例えばKochler and Milstein (Nature 256:495 (1975)に記載の方法に従って行うことができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはセンダイウイルス(HVJ)、好ましくはPEGが用いられる。
【0047】
骨髄腫細胞の例には、NS-1、P3U1、SP2/0、AP-1などが含まれる。抗体産生細胞(脾臓細胞)の数と使用する骨髄腫細胞の数の割合は、好ましくは約1:1~約20:1である。PEG(好ましくはPEG1000~PEG6000)は、好ましくは約10%~約80%の濃度で添加される。細胞融合は、両方の細胞の混合物を約20℃~約40℃、好ましくは約30℃~約37℃で約1分~10分間インキュベートすることにより、効率的に行うことができる。
【0048】
様々な方法を、抗体(例えば、本発明の腫瘍抗原または自己抗体に対するもの)を生産するハイブリドーマについてのスクリーニングに使用することができる。例えば、ハイブリドーマの上清を、抗体が直接または担体と一緒に吸着された固相(例えば、マイクロプレート)に添加した後、抗免疫グロブリン抗体(細胞融合にマウス細胞が用いられる場合は、抗マウス免疫グロブリン抗体を用いる)、または放射性物質もしくは酵素で標識されたプロテインAを添加して、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。あるいは、ハイブリドーマの上清を、抗イムノグロブリン抗体またはプロテインAが吸着された固相に加えた後、放射性物質または酵素で標識されたタンパク質を加えて、固相に結合したタンパク質に対するモノクローナル抗体を検出する。
【0049】
モノクローナル抗体の選択は、知られている方法またはその修正法により行うことができる。通常、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地が用いられる。ハイブリドーマが増殖できる限り、任意の選択および増殖培地を用いることができる。例えば、1%~20%、好ましくは1%~10%のウシ胎仔血清を含むRPMI1640培地、1%~10%のウシ胎仔血清を含むGIT培地、ハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM-101、日水製薬)などを用いることができる。通常、培養は、20℃~40℃、好ましくは37℃で、約5日~3週間、好ましくは1週間~2週間、約5%のCO2ガスのもとで行う。ハイブリドーマ培養物の上清の抗体力価は、抗血清中の抗タンパク質の抗体力価についての上記と同様の様式に従って、測定することができる。
【0050】
ハイブリドーマの培養物から直接免疫グロブリンを得る代わりに、不死化ハイブリドーマ細胞を、その後の発現および/または遺伝子操作のための再配列された重鎖および軽鎖遺伝子座の供給源として使用することができる。再配列された抗体遺伝子は、適切なmRNAから逆転写されてcDNAを生産することができる。所望される場合、重鎖定常領域は、異なるアイソタイプのものと交換され得るか、または完全に排除され得る。可変領域は、一本鎖Fv領域をコードするように連結することができる。複数のFv領域を連結して、複数の標的に対する結合能を付与することができ、またはキメラ重鎖および軽鎖の組合せを用いることができる。任意の適切な方法を、抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の生成のために使用してもよい。
【0051】
いくつかの態様において、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸が得られ、標準的な組換え宿主細胞にトランスフェクトすることができる発現ベクターに挿入される。種々のかかる宿主細胞を使用することができる。いくつかの態様において、哺乳動物宿主細胞は、効率的なプロセシングおよび生産のために有利であり得る。この目的に有用な典型的な哺乳類細胞系には、CHO細胞、293細胞、またはNSO細胞が含まれる。抗体または抗原結合断片の生産は、宿主細胞の増殖およびコード配列の発現に適した培養条件下で、改変された組換え宿主を培養することにより、行うことができる。抗体または抗原結合断片は、それらを培養物から単離することによって、回収することができる。発現系は、シグナルペプチドを含むように設計して、得られた抗体が培地中に分泌されるようにすることができる;しかし、細胞内生産も可能である。
【0052】
本開示はまた、本明細書に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドも含む。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドによってコードされる可変領域は、上記のハイブリドーマのいずれか1つによって生産される抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
抗体または抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、例えば、DNA、cDNA、RNAまたは合成的に生産されたDNAまたはRNA、またはこれらのポリヌクレオチドのいずれかを、単独でまたは組み合わせて含む組換え生産キメラ核酸分子であり得る。いくつかの態様において、ポリヌクレオチドはベクターの一部である。かかるベクターは、適切な宿主細胞中で、および適切な条件下で、ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含み得る。
【0053】
いくつかの態様において、ポリヌクレオチドは、原核細胞または真核細胞における発現を可能にする発現制御配列に、作動可能に連結される。ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節要素は、当業者によく知られている。それらは、転写の開始を促進する調節配列、および任意に転写の終結および転写物の安定化を促進するポリAシグナルを含み得る。さらなる調節要素は、転写および翻訳エンハンサー、および/または天然に関連するまたは異種のプロモーター領域を含み得る。原核生物宿主細胞での発現を可能にし得る調節要素には、例えば、大腸菌におけるPL、Lac、TrpまたはTacプロモーターが含まれ、真核生物宿主細胞での発現を可能にする調節要素の例は、酵母におけるAOX1またはGAL1プロモーター、または、哺乳動物および他の動物細胞における、CMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、またはグロビンイントロンを含む。
【0054】
転写の開始に役割を果たす要素に加えて、かかる調節要素はまた、ポリヌクレオチドの下流にあるSV40ポリA部位またはtkポリA部位などの、転写終結シグナルも含むことができる。さらに、使用される発現系に依存して、ポリペプチドを細胞区画に誘導するか、またはそれを培地に分泌することができるリーダー配列を、ポリヌクレオチドのコード配列に付加することができ、これは当該技術分野でよく知られている。リーダー配列(単数または複数)の構築は、適切な相において、翻訳、開始および終結配列、並びに好ましくは、翻訳されたタンパク質またはその一部分の分泌を例えば細胞外培地に向けることができるリーダー配列を用いて実施される。任意に、発現された組換え産物の安定化または単純化された精製などの所望の特性を付与するCまたはN末端同定ペプチドを含む融合タンパク質をコードする異種ポリヌクレオチド配列を、使用することができる。
【0055】
いくつかの態様において、軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドは、両方または片方の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードし得る。同様に、ポリヌクレオチドは同一プロモーターの制御下にあってもよく、または発現のために別々に制御されてもよい。さらに、いくつかの側面は、ベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージであって、遺伝子操作に便利に使用され、かつ抗体または抗原結合断片の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを、任意に、抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドと組み合わせて含むものに関する。
【0056】
いくつかの態様において、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトすることができるベクター中の真核生物プロモーター系として提供されるが、原核宿主のための制御配列もまた使用され得る。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、またはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターを、ポリヌクレオチドまたはベクターの標的細胞集団への送達に、使用することができる(例えば、細胞を操作して、抗体または抗原結合断片を発現する)。様々な適切な方法を用いて、組換えウイルスベクターを構築することができる。いくつかの態様において、標的細胞に送達するために、ポリヌクレオチドおよびベクターをリポソームにおいて再構成することができる。ポリヌクレオチド(例えば、配列および発現制御配列をコードする免疫グロブリン鎖の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン(単数または複数))を含有するベクターは、細胞宿主の種類に依存して変化する適切な方法によって、宿主細胞に導入することができる。
【0057】
修飾
本開示のいくつかの側面は、プレクチン1を標的とする抗体-薬物コンジュゲートに関する。本明細書で使用する「抗体薬物コンジュゲート」は、標的分子(例えば、治療分子などの生物学的に活性な分子、および/または検出可能な標識)に連結された、抗体またはその抗原結合断片を含む分子を指す。したがって、いくつかの態様において、本開示の抗体または抗原結合断片は、検出可能な標識で修飾することができ、これには、限定はされないが、プレクチン1の検出および単離のための、酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、放射性物質、陽電子放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および親和性標識を含む。検出可能な物質は、本開示のポリペプチドに、直接的に、または中間体(例えば、当該技術分野で知られているリンカーなど)を介して間接的に、当該分野で知られている技術を使用して、結合またはコンジュゲートすることができる。適切な酵素の非限定的な例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる;適切な補欠分子族複合体の非限定的な例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれる;適切な蛍光物質の非限定的な例には、ビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド、またはフィコエリスリンが含まれる;発光物質の一例は、ルミノールを含む;生物発光物質の非限定的な例には、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが含まれる;適切な放射性物質の例には、放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体または他の放射性同位元素、例えばヨウ素(131I、125I、123I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(115mIn、113mIn、112In、111In)、およびテクネチウム(99Tc、99mTc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、86R、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、およびスズ(113Sn、117Sn)が含まれる。検出可能な物質は、本開示のプレクチン1抗体に直接的に、または中間体(例えば、当該技術分野で知られているリンカーなど)を介して間接的に、当該分野で知られている技術を使用して結合またはコンジュゲートすることができる。検出可能な物質にコンジュゲートした抗プレクチン1抗体は、本明細書に記載の診断アッセイに使用してもよい。
【0058】
いくつかの態様において、本開示の抗体または抗原結合断片は、治療部分(例えば、治療剤)で修飾され得る。本明細書で使用する「治療剤」という用語は、細胞機能を阻害し、細胞複製を阻害し、または哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞を殺すことができる、化学物質または薬物またはタンパク質を指す。治療剤の例は、限定はされないが、細胞毒性部分、放射性同位元素、植物、真菌または細菌起源の分子(例えば、植物由来毒素(例えば二次代謝産物))、グリコシド、抗菌化合物(例えばストレプトマイシン、ペニシリンなど)、生物学的タンパク質(例えばタンパク質毒素)、粒子(例えば、ウイルスコートタンパク質を介した、組換えウイルス粒子)、またはそれらの混合物であり得る。治療剤は、細胞内活性薬物または他の薬剤、例えば、短距離高エネルギーアルファエミッタ(例えば、131I)などの短距離放射エミッタであることができる。
【0059】
いくつかの態様において、治療剤は、免疫調節性部分(例えば、免疫調節剤)である。本明細書で使用する「免疫調節剤」は、薬剤に応答して対象の免疫応答を増減する、化合物または分子を指す。例えば免疫調節剤は、対象の腫瘍に対する免疫応答を増強することができ、例えばインターロイキン-1(IL-1)および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などの炎症性サイトカインのレベルを上昇させる。対象の免疫応答を増加させる免疫調節剤の例としては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、インターフェロン、イミキモド、細菌由来の細胞膜画分、特定のインターロイキンおよびサイトカイン(例えば、IL-1β、IL-6、およびTNF-α)、および免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1阻害剤、PD1-L阻害剤など)が挙げられる。いくつかの態様において、免疫調節剤は、対象の免疫応答を低下させ得る(例えば、免疫抑制を媒介または達成する)。免疫抑制性免疫調節剤の例としては、限定はされないが、免疫抑制薬物(例えば、グルココルチコイド、細胞分裂停止剤、抗炎症性モノクローナル抗体(例えば、抗IL-2受容体抗体)、およびイムノフィリンを標的とする薬剤(例えば、シクロスポリン、シロリムスなど))を含む。
【0060】
いくつかの態様において、抗体は、標的薬剤にリンカーを介して結合される。本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、架橋におけるように、1つの分子または配列を別の分子または配列に付着させる、アミノ酸配列などの分子または配列を指す。「連結した」、「コンジュゲートした」または「結合した」とは、共有結合、または非共有結合、またはファンデルワールス力などの他の結合によって、付着または結合されることを意味する。本開示に記載の抗体は、標的薬剤(例えば、治療部分または検出可能部分)に、直接的に、例えばタンパク質またはペプチド検出可能部分を有する融合タンパク質として(任意の連結配列、例えばフレキシブルなリンカー配列を有するか、または有さないで)、または化学的結合部分(coupling moiety)を介して、連結することができる。かかる結合部分の多くは当該技術分野で知られており、例えば、国際特許出願公開WO2003/036092号に記載されているように、ペプチドリンカーまたは化学的リンカーなどである。いくつかの態様において、リンカーは、フレキシブルなアミノ酸配列である。フレキシブルなアミノ酸配列の例には、2つ以上のグリシン残基のストレッチ(例えば、GGGS;配列番号93)を含む、グリシンおよびセリンに富んだリンカーが含まれる。いくつかの態様において、リンカーはフォトリンカーである。フォトリンカーの例には、ケチル反応性ベンゾフェノン(BP)、アントラキノン(AQ)、ニトレン反応性ニトロフェニルアジド(NPA)、およびカルベン反応性フェニル-(トリフルオロメチル)ジアジリン(PTD)が含まれる。
【0061】
いくつかの態様において、標的薬剤は、生理学的に不活性なナノ粒子を含む。がん細胞を画像化するために開発され使用されるナノ粒子の例には、磁性ナノ粒子およびそれらの磁気蛍光アナログが含まれ(例えば、Weissleder et al., Nat. Biotechnol., 19:316-317 (2001;McCarthy et al., Nanomedicine, 2:153-167 (2007);Hogemann et al., Bioconjug. Chem., 11:941-946 (2000)、および Josephson et al., Bioconjug. Chem., 10:186-191 (1999)を参照)、これらは、単離されたペプチドリガンドおよびファージディスプレイされたペプチドと共に使用することが意図される。磁性分子と蛍光分子の両方を同じ分子内に組み込んだマルチモーダルナノ粒子が知られており、これらは、蛍光顕微鏡法(この非常に小さい粒子の蛍光部分を検出する)およびMRI(その磁性部分を検出する)に使用されている。いくつかの態様において、ナノ粒子は、磁性、蛍光性、または放射性である。いくつかの態様において、標的薬剤は蛍光色素を含む。
【0062】
医薬組成物
いくつかの側面において、本開示は、抗プレクチン1抗体を含む医薬組成物に関する。いくつかの態様において、組成物は、抗プレクチン1抗体および薬学的に許容し得る担体を含む。本明細書で使用する用語「薬学的に許容し得る担体」とは、薬学的投与に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含むことが意図される。かかる媒体および薬剤の、薬学的に活性な物質のための使用は、当該技術分野において知られている。任意の従来の媒体または薬剤は、活性化合物と不適合である場合を除き、組成物中でのその使用が意図される。補充的活性化合物も、組成物に組み込むことができる。医薬組成物は、下記のように調製することができる。活性成分は、任意の従来の薬学的に許容し得る担体または賦形剤と、混合または配合することができる。組成物は滅菌であってよい。
【0063】
典型的には、医薬組成物は、有効量の薬剤(例えば、抗プレクチン1抗体または、抗プレクチン1抗体と標的薬剤を含む抗体薬物コンジュゲート)を送達するために製剤化される。一般に、活性剤の「有効量」は、所望の生物学的応答(例えば、癌性細胞の死滅または腫瘍増殖の抑制)を誘発するのに十分な量を言う。剤の有効量は、所望の生物学的エンドポイント、化合物の薬物動態、処置される疾患(例えば、プレクチン1の表面発現を特徴とする特定のがん)、投与様式、および患者などの因子に依存して変わり得る。
組成物は、その投与がレシピエント患者により許容され得る場合に、「薬学的に許容し得る担体」であると言われる。滅菌リン酸緩衝食塩水は、薬学的に許容し得る担体の一例である。他の適切な担体は、当該技術分野においてよく知られている。例えば、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Ed. (1990)を参照。
【0064】
慣用的に使用され、活性剤に対して不活性である任意の投与様式、ビヒクルまたは担体は、本開示の医薬組成物を調製および投与するために利用され得ることが、当業者に理解されるであろう。かかる方法、ビヒクルおよび担体の実例は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciencesの第4版(1970年)に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示の原理を知った当業者は、好適で適切なビヒクル、賦形剤および担体を決定すること、または活性成分を配合して本開示の医薬組成物を形成することに、困難を経験しないであろう。
【0065】
化合物(例えば、抗プレクチン1抗体または、抗-プレクチン1抗体と標的薬剤を含む抗体薬物コンジュゲート)の有効量(治療有効量とも呼ばれる)は、がんに関連する少なくとも1つの有害作用(例えば、腫瘍の成長、転移)を改善するのに十分な量である。医薬組成物に含まれる治療有効量は、それぞれの場合に、いくつかの因子、例えば、処置される患者のタイプ、サイズおよび状態、意図される投与様式、意図された剤形を組み込む患者のキャパシティなどに依存する。一般に、約0.1~約250mg/kg、好ましくは約0.1~約100mg/kgを提供するための、活性剤のある量が各剤形に含まれる。当業者は、適切な治療有効量を、経験的に決定することができるであろう。
【0066】
本明細書で提供される教示と組み合わせて、様々な活性化合物を選択すること、および、効力、相対バイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の重症度および選択された投与様式などの因子を重みづけすることによって、実質的な毒性を引き起こさず、しかも特定の対象を処置するのに完全に有効な、効果的な予防または治療処置レジメンを計画することができる。任意の特定の用途に対する有効量は、処置される疾患または状態、投与される特定の治療剤、対象のサイズ、または疾患もしくは状態の重篤度などの因子に依存して、変化し得る。当業者は、特定の核酸および/または他の治療剤の有効量を、過度の実験を必要とすることなく、経験的に決定することができる。
【0067】
いくつかの場合おいて、本開示の化合物は、コロイド分散系で調製される。コロイド分散系には、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、およびリポソームを含む、脂質ベースの系が含まれる。いくつかの態様において、本開示のコロイド系は、リポソームである。リポソームは、in vivoまたはin vitroで送達ベクターとして有用な、人工膜血管である。0.2~4.0μmのサイズの大きな単層ベシクル(LUV)は、大きな巨大分子をカプセル化できることが示されている。
リポソームは、モノクローナル抗体、糖、糖脂質、またはタンパク質などの特異的なリガンドにリポソームを結合することによって、特定の組織を標的とすることができる。リポソームを例えば平滑筋細胞に標的化するために有用であり得るリガンドとしては、限定はされないが、以下が含まれる:平滑筋細胞特異的受容体および分子と相互作用する、無傷の分子または分子の断片、例えば、がん細胞の細胞表面マーカーと相互作用する抗体。かかるリガンドは、当業者に知られている結合アッセイによって容易に同定され得る。さらに他の態様において、リポソームを、当該技術分野で知られている抗体に結合させることにより、組織に標的化することができる。
【0068】
本開示に記載の化合物は、単独で(例えば、生理食塩水または緩衝液中で)または当該技術分野で知られている任意の送達ビヒクルを用いて、投与され得る。例えば、以下の送達媒体が記載されている:渦巻状物;エマルソーム(Emulsome);ISCOM;リポソーム;生細菌ベクター(例えば、Salmonella、Escherichia coli, 、Bacillus Calmette-Guerin、Shigella、Lactobacillus);生ウイルスベクター(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、単純ヘルペス);ミクロスフェア;核酸ワクチン;ポリマー(例えば、カルボキシメチルセルロース、キトサン);ポリマーリング;プロテオソーム;フッ化ナトリウム;トランスジェニック植物;ビロソーム;およびウイルス様粒子。
本開示の製剤は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合性担体、アジュバント、および任意に他の治療成分を日常的に含んでよい、薬学的に許容し得る溶液において投与される。
【0069】
薬学的に許容し得る担体という用語は、ヒトまたは他の脊椎動物に投与するのに適した、1つ以上の適合する固体または液体充填剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。担体という用語は、天然または合成の有機または無機成分を意味し、これを活性成分と組み合わせると適用が容易となる。医薬組成物の成分はまた、所望の薬学的効率を実質的に損なう相互作用がないような様式で、本開示の化合物と互いに混合することができる。
糖衣錠コアは、適切なコーティングと共に提供される。この目的のために、濃縮糖溶液を使用することができ、これは任意に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。識別のために、または活性化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、染料または顔料を錠剤または糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0070】
本明細書に記載の製剤に加えて、化合物はまた、デポー製剤として製剤化することもできる。かかる長時間作用性の製剤は、適切なポリマー材料または疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、または難溶性誘導体として、例えば難溶性塩として、製剤化され得る。
医薬組成物はまた、適切な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含み得る。かかる担体または賦形剤の例には、限定はされないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーが含まれる。
【0071】
適切な液体または固体医薬製剤形態は、例えば、吸入用の水性または生理食塩水、マイクロカプセル化された、渦巻状化(encochleated)された、微細な金粒子上にコーティングされた、リポソームに含まれた、霧状の、エアロゾル、皮膚への移植のためのペレット、皮膚にスクラッチされる鋭利な物体上に乾燥された、形態である。医薬組成物はまた、顆粒、粉末、錠剤、被覆錠剤、(マイクロ)カプセル、坐剤、シロップ、エマルジョン、懸濁液、クリーム、滴剤または活性成分の持続放出を伴う調製物を含み、その調製において、賦形剤および添加剤および/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、潤滑剤、香味剤、甘味料または可溶化剤などが、上記のように慣習的に使用される。医薬組成物は、種々の薬物送達系における使用に適している。薬物送達のための方法の簡単な概説については、Langer R (1990) Science 249:1527-1533を参照;これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0072】
化合物はそれ自体で(純粋な)、または薬学的に許容し得る塩の形態で、投与することができる。医薬に使用される場合、塩は薬学的に許容され得るべきであるが、薬学的に許容されない塩は、その薬学的に許容し得る塩を調製するために便宜的に使用され得る。かかる塩には、限定はされないが、次の酸から調製されるものが含まれる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸およびベンゼンスルホン酸。かかる塩はまた、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製することができ、例えば、カルボン酸基のナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などである。
適切な緩衝剤には、酢酸および塩(1~2%w/v);クエン酸および塩(1~3%w/v);ホウ酸および塩(0.5~2.5%w/v);およびリン酸および塩(0.8~2%w/v)を含む。適切な防腐剤には、塩化ベンザルコニウム(0.003~0.03%w/v);クロロブタノール(0.3~0.9%w/v);パラベン(0.01~0.25%w/v)およびチメロサール(0.004~0.02%w/v)を含む。
【0073】
組成物は、単位剤形で提供するのが好都合であり、薬学の分野で周知の方法のいずれかによって調製することができる。すべての方法は、化合物を、1種以上の補助成分を構成する担体と会合させるステップを含む。一般に組成物は、化合物を、液体担体、細かく分割された固体担体、またはその両方と、均一かつ密接に接触させ、次いで必要に応じて生成物を成形することによって、調製される。液体投与単位は、バイアルまたはアンプルである。固体投与単位は、錠剤、カプセルおよび坐剤である。
【0074】
処置方法
本開示の側面は、ある種のがん細胞の表面上のプレクチン1に特異的に結合する抗体の発見に関する。いくつかの態様において、本開示に記載の抗プレクチン1抗体のある種のがん細胞への結合は、細胞の死滅を誘導する(例えば、アポトーシスの誘発)。任意の特定の理論に束縛されることを望まないが、本開示に記載の抗体は、いくつかの態様において、プレクチン1の表面発現を特徴とするがんを処置するために有用である。本明細書で使用する場合、「がんを処置する」とは、患者のがん細胞の数を減少させること、患者におけるがん細胞の増殖を遅くすること、患者におけるがん細胞の転移を減少させることを指し、がんの症状を緩和するかまたは患者の寿命を延ばす、任意の種類の応答を含む。
【0075】
プレクチン1の表面発現を特徴とするがんの例には、限定はされないが、卵巣がん細胞、食道がん細胞、頭頸部扁平上皮癌がん細胞、または膵臓がん細胞(例えば、膵管腺癌(PDAC))が含まれる。しかし、他のがん(例えば、肺がん、膀胱がん、乳がん、食道がん、口腔がん、舌がん、歯肉がん、皮膚がん(例えば黒色腫、基底細胞癌、カポジ肉腫など)、筋肉がん、心臓がん、肝臓がん、気管支がん、軟骨がん、骨がん、胃がん、前立腺がん、精巣がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、子宮がん、結腸がん、結腸直腸がん、胃がん、腎臓がん、膀胱がん、リンパ腫がん、脾臓がん、胸腺がん、甲状腺がん、脳がん、ニューロンがん、中皮腫、胆嚢がん、眼がん(例えば、角膜のがん、ブドウ膜のがん、脈絡膜の癌、黄斑のがん、硝子体液がんなど)、関節がん(例えば、滑膜がん)、グリア芽細胞腫、白血球がん(例えば、リンパ腫、白血病など)、遺伝性非ポリポーシスがん(HNPC)、大腸炎関連がんなどが、評価されるべきである。がんとしてはさらに、肉腫(骨肉腫およびカポジ肉腫など)が例示され、これは本開示に記載の抗プレクチン1抗体を用いて処置され得る。
【0076】
いくつかの側面において、本開示は、がんを処置する方法を提供し、方法は、がんを有する対象に、本開示に記載の抗体または組成物(例えば、抗プレクチン1抗体または抗プレクチン1抗体を含む組成物)の有効量を投与することを含む。いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。いくつかの態様において、対象はヒトである。
一般に、本開示の抗体および医薬組成物は、好ましくは化合物または混合物を、錠剤、カプセルまたは丸剤として経口的に、または非経口、静脈内、皮内、筋肉内または皮下、または経皮的に投与するのに適した、薬学的に許容し得る担体または賦形剤を含む。
【0077】
抗プレクチン1抗体および/または他の化合物を含有する医薬組成物は、薬物を投与するための任意の適切な経路により、投与することができる。様々な投与経路が利用可能である。選択される特定の様式は、当然のことながら、選択された特定の1つまたは複数の薬剤、処置される特定の状態、および治療効力に必要とされる投与量に依存する。本開示の方法は、一般的に言えば、医学的に許容し得る任意の投与様式を使用して実施することができ、これは、臨床的に許容し得ない悪影響を引き起こすことなく治療効果を生じる、任意の様式を意味する。様々な投与様式が、本明細書で論じられる。治療に用いるためには、抗プレクチン1抗体および/または他の治療剤の有効量を、所望の表面、例えば粘膜や全身に送達する任意の様式で、対象に投与することができる。
【0078】
本開示の医薬組成物の投与は、当業者に知られている任意の手段によって達成され得る。投与経路には、限定されないが、経口、非経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、皮下、眼、膣および直腸が含まれる。全身経路には、経口および非経口が含まれる。吸入による投与のために、いくつかの種類の装置が定期的に使用される。これらの種類の装置には、定量吸入器(MDI)、呼吸作動MDI、乾燥粉末吸入器(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサー/保持チャンバー、およびネブライザーが含まれる。
【0079】
経口投与の場合、化合物は、活性化合物(単数または複数)を当該技術分野で知られている薬学的に許容し得る担体と組み合わせることによって、容易に製剤化することができる。かかる担体は、本開示の化合物を、処置される対象による経口摂取のための錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして製剤化することを可能にする。経口使用のための医薬調製物を、固体賦形剤として得ることができ、得られる混合物を任意に粉砕し、顆粒混合物を加工し、所望により適切な助剤を添加した後、錠剤または糖衣錠コアを得る。適切な賦形剤は、特に、充填剤、例えば糖であって、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはソルビトールを含むもの;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、コムギデンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)である。必要に応じて崩壊剤を添加してもよく、例えば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどである。任意に、経口製剤はまた、生理食塩水または内部酸性条件を中和するための緩衝液中で製剤化してもよく、または担体なしで投与してもよい。
【0080】
経口的に使用することができる医薬製剤は、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチンおよびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤でできた軟質密封カプセルを含む。プッシュフィットカプセルは、活性成分を、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および任意に安定剤と混合して、含むことができる。軟質カプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解または懸濁されてもよい。さらに、安定剤を添加してもよい。経口投与のために製剤化されたマイクロスフェアを使用することもできる。かかるマイクロスフェアは、当該技術分野において十分に定義されている。経口投与のための全ての製剤は、かかる投与に適した投与量でなければならない。口腔投与のために、組成物は、従来の方法で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとってもよい。
【0081】
吸入による投与のために、本開示による使用のための化合物は、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、適切な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用を伴って、便利に送達され得る。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、決定され得る。吸入器または注入器で使用するための例えばゼラチンのカプセルおよびカートリッジは、化合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含有するように、製剤化することができる。
化合物は、それらを全身に送達することが望ましい場合、例えばボーラス注射または連続注入による、注射による非経口投与のために、製剤化してもよい。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数用量容器中に、防腐剤を加えて提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンなどの形態をとってよく、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの処方剤を含有し得る。
【0082】
非経口投与のための医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物の水溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどを含み得る。任意に、懸濁液はまた、適切な安定剤または化合物の溶解度を高めて高濃度の溶液の調製を可能にする薬剤を含有してもよい。
代替的に、活性化合物は、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌の発熱物質非含有水などで構成するための、粉末形態であってもよい。
化合物はまた、例えばココアバターまたは他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含有する、坐剤または停留浣腸などの直腸または膣用組成物中に製剤化することができる。
【0083】
他の送達システムは、時間放出、遅延放出または持続放出送達システムを含むことができる。かかるシステムは、化合物の反復投与を避けることができ、対象および医師の利便性を高める。多くの種類の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらには、ポリマーベースシステム、例えばポリ(ラクチドグリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などが含まれる。薬物を含有する上記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達システムはまた、非ポリマーシステムを含み、これらには:コレステロールなどのステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸またはモノ、ジおよびトリグリセリドなどの中性脂肪を含む、脂質;ヒドロゲル放出システム;シラスティックシステム;ペプチドベースのシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラント;などが挙げられる。具体的な例には、限定はされないが、(a)本開示の薬剤が、マトリックス内の形態で含有される侵食システムであって、例えば米国特許第4,452,775号、第4,675,189号および第5,736,152号に記載されているもの;および(b)活性成分がポリマーから制御された速度で浸透する拡散システムであって、例えば米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号に記載されているもの、が含まれる。さらに、ポンプベースのハードウェア送達システムを使用することができ、そのうちのいくつかは移植用に適合される。
【0084】
本開示に記載の抗プレクチン1抗体および組成物は、対象(例えば、がんを有する対象)に、複数の機会に投与することができる。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物が対象に送達される機会の回数は、2~10回の範囲(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回)である。いくつかの態様において、異種核酸は、対象に10回より多く送達される。
【0085】
いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、暦日(例えば、24時間の期間)に1回以内、投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、2、3、4、5、6または7暦日に1回以内、投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、暦週(例えば、7暦日)に1回以内、投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、隔週以内(例えば、2暦週の期間に1回)で、投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、暦月に1回(例えば、30暦日に1回)以内、投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、6暦月に1回以内で投与される。いくつかの態様において、本開示の抗体または組成物の用量は、対象に、暦年(例えば、365日またはうるう年で366日)に1回以内、対象に投与される。
【0086】
イムノアッセイ
いくつかの態様において、本開示は、in situまたはin vitroで、例えばがん細胞などの細胞の表面上のプレクチン1を検出するための方法に関する。いくつかの態様において、本開示は、対象から得た試料中の細胞の表面上のプレクチン1を検出するための方法に関する。試料は対象から、例えば、腫瘍またはその一部を対象から抽出することによって、得ることができる。いくつかの態様において、細胞は、腫瘍から単離され得る。しかし、いくつかの態様において、細胞は、単離された腫瘍の文脈において検査されてもよい。
いくつかの態様において、in situでプレクチン1を検出する方法は、対象に、標識(例えば、放射性標識)にコンジュゲートしたプレクチン1抗体または抗原結合断片を、抗体または抗原結合断片が対象の例えばがん細胞などの細胞上のプレクチン1のアクセス可能なエピトープと共に結合複合体を形成することができる条件下で、送達すること;および、対象における標識を検出すること(例えば、単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)、陽電子放射断層撮影法(PET)およびシンチグラフィーを含む、オートラジオグラフィーまたは他の核医学検査技術を用いて)、を含む。
【0087】
いくつかの態様において、対象から得られた腫瘍試料中のプレクチン1を検出する方法は、(a)試料を、抗体または抗原結合断片と、抗体または抗原結合断片の抗原への結合に適した条件下で、接触させること、抗原が試料中に存在する場合は、それによって結合複合体を形成すること;および(b)例えば、腫瘍の細胞の表面で、抗原に結合した抗体または抗原結合断片のレベルを決定すること(例えば、結合複合体のレベルを決定すること)、を含む。
【0088】
本明細書で使用する場合、結合複合体は、抗原(例えば、プレクチン1タンパク質)に結合した抗体または抗原結合断片の、生体分子複合体を指す。結合複合体は、単一の特異性を有する抗体または抗原結合断片、または異なる特異性を有する2つ以上の抗体または抗原結合断片を含んでよい。一態様において、結合複合体は、同じ抗原上の異なる抗原部位を認識する2つ以上の抗体を含む。いくつかの例では、抗体または抗原結合断片は、RNA、DNA、多糖類またはタンパク質などの他の生体分子が結合した抗原に、結合することができる。一態様において、結合複合体は、異なる抗原を認識する2つ以上の抗体を含む。いくつかの態様において、結合複合体(例えば、抗原に結合した固定化抗体または抗原結合断片)中の抗体または抗原結合断片は、それ自体が抗原として、抗体または抗原結合断片(例えば、検出可能に標識された抗体または抗原結合断片)に結合されてもよい。したがって、結合複合体は場合によっては、複数の抗原および複数の抗体または抗原結合断片を含むことができる。結合複合体中に存在する抗原は、それらの本来のin situ立体配座であってもよく、そうでなくてもよい。いくつかの態様において、結合複合体は、抗体または抗原結合断片と精製タンパク質抗原との間、または抗原を含む単離されたタンパク質(ここで抗原はその本来のin situ立体配座ではない)との間に、形成される。
いくつかの態様において、結合複合体は、抗体または抗原結合断片と、精製されたタンパク質抗原との間に形成され、その抗原はその天然のin situ立体配座ではなく、固体支持体(例えばPVDF膜)に固定されている。いくつかの態様において、結合複合体は、抗体または抗原結合断片、および例えば天然のin situ立体配座(例えば、細胞の表面上)で存在する細胞表面タンパク質とで形成される。結合複合体中の抗体または抗原結合断片は、検出可能に標識されていてもいなくてもよい。いくつかの態様において、結合複合体は、検出可能に標識された抗体または抗原結合断片および非標識の抗体または抗原結合断片を含む。いくつかの態様において、結合複合体は、検出可能に標識された抗原を含む。いくつかの態様において、結合複合体中の抗体または抗原結合断片は、1つ以上の固体支持体に固定化される。いくつかの態様において、結合複合体中の抗原は、1つ以上の固体支持体に固定化される。例示的な固体支持体は、本明細書に開示されており、当業者には明らかであろう。上記結合複合体の例は、限定することを意図するものではない。結合複合体の他の例は、当業者には明らかであろう。
【0089】
検出、診断、およびモニタリング方法のいずれかにおいて、抗体または抗原結合断片、または抗原は、固体支持体表面に、直接的または間接的にコンジュゲートすることができる。固体支持体へのコンジュゲーションのための方法は標準的であり、共有および非共有相互作用を介して達成することができる。コンジュゲーション法の非限定的な例には、吸着、架橋、プロテインA/G-抗体相互作用、およびストレプトアビジン-ビオチン相互作用が含まれる。コンジュゲーションの他の方法は、当業者には容易に明らかであろう。
【0090】
いくつかの側面において、前述の検出、診断およびモニタリング方法は、抗原に結合した抗体または抗原結合断片(例えば、結合複合体)のレベルを、1つ以上の参照標準と比較することを含む。参照標準は、例えば、子癇前症を有するか、または有していない対象における対応するプレクチン1のレベルであり得る。一態様において、参照標準は、プレクチン1を含まない試料中で検出されるプレクチン1のレベルである(例えば、バックグラウンドレベル)。代替的に、バックグラウンドレベルは、特定のプレクチン1を含有する試料から、試料を非特異的抗体(例えば、非免疫血清から得られた抗体)と接触させることにより、決定することができる。次に再度、参照標準は、プレクチン1を含有する試料中で検出されるプレクチン1のレベルであってよい(例えば、陽性対照)。場合によっては、参照標準は、試料中の様々な濃度のプレクチン1に関連する一連のレベルであり、試験試料中のプレクチン1の濃度を定量するのに有用である。参照標準の前述の例は限定的ではなく、他の適切な参照標準は、当業者には容易に明らかであろう。
【0091】
別の態様は、上記の抗体、抗原結合断片、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞の任意の1つおよび、任意に適切な検出手段を含む、診断用組成物に関する。抗体または抗原結合断片は、例えば、それらが液相で利用され得るかまたは固相担体に結合され得るイムノアッセイにおける使用に適している。抗体または抗原結合断片を利用することができるイムノアッセイの例は、直接的または間接的な形式の、競合および非競合イムノアッセイである。かかるイムノアッセイの例は、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(イムノメトリックアッセイ)、フローサイトメトリー、ウェスタンブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫組織化学、免疫顕微鏡法、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ、およびプロテオミクスアレイである。抗原および抗体または抗原結合断片は、多くの異なる固体支持体(例えば、担体、膜、カラム、プロテオミクスアレイなど)に結合することができる。固体支持体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然及び修飾セルロース、例えばニトロセルロース、ポリアクリルアミド、アガロース及びマグネタイトが挙げられる。支持体の性質は、固定されるか、または溶液(例えば、ビーズ)中に懸濁させることができる。
【0092】
さらなる態様により、本明細書で提供される抗体および抗原結合断片は、対象におけるプレクチン1発現を、対象から生物学的試料を得ることにより評価するための方法においても使用することができ、該試料は、血液試料、任意の他の適切な体液試料(例えばリンパ液)、または組織試料(例えば、膵臓組織、卵巣組織、対象の頭部または頸部からの組織、乳房組織、肺組織など)であってよい。この手順は、試料(例えば、膵臓組織)またはそれから単離されたタンパク質試料を、抗体または抗原結合断片と、抗体または抗原結合断片と抗原との間の結合複合体の形成を可能にする条件下で、接触させることを含み得る。かかる結合複合体のレベルは次に、当該技術分野で知られている方法によって決定することができる。
【0093】
いくつかの態様において、抗原が試料中に存在する場合、生体試料を抗体または抗原結合断片と、抗体または抗原結合断片とプレクチン1タンパク質との結合に適した条件下で接触させ、抗原に結合した抗体またはその抗原結合断片からなる結合複合体を形成させる。この接触ステップは、典型的には、反応チャンバー、例えば、チューブ、プレートウェル、膜バス、細胞培養皿、顕微鏡スライドなどで行われる。いくつかの態様において、抗体または抗原結合断片は、固体支持体上に固定化される。いくつかの態様において、抗原は固体支持体上に固定化される。いくつかの態様において、固体支持体は、反応チャンバーの表面である。いくつかの態様において、固体支持体は、高分子膜(例えば、ニトロセルロースストリップ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜など)である。他の適切な固体支持体を使用してもよい。
【0094】
いくつかの態様において、抗体および抗原結合断片は、抗原と接触する前に、固体支持体上に固定される。他の態様において、抗体および抗原結合断片の固定化は、結合複合体の形成後に実施される。さらに他の態様において、抗原は、結合複合体の形成前に、固体支持体上に固定される。いくつかの態様において、固定化された結合複合体を検出するために、検出試薬を反応チャンバーに加える。いくつかの態様において、検出試薬は、検出可能に標識され抗原に指向された二次抗体を含む。いくつかの態様において、一次抗体または抗原結合断片は、それ自体が検出可能に標識され、それによって検出試薬である。
【0095】
一側面において、検出方法は、次のステップを含む:抗体または抗原結合断片を固体支持体に固定化すること;試料(例えば、生物学的試料または単離されたタンパク質試料)を固体支持体に、抗原が試料中に存在する場合に抗原の抗体または抗原結合断片への結合を可能にする条件下で、適用すること;過剰の試料を固体支持体から除去すること;検出可能に標識された抗体または抗原結合断片を、検出可能に標識された抗体または抗原結合断片を抗原結合固定化抗体または抗原結合断片に結合させる条件下で、適用すること;固体支持体を洗浄し、固体支持体上の標識の存在についてアッセイすること。
【0096】
いくつかの態様において、抗原をPVDF膜などの固体支持体上に固定化した後、抗体および抗原結合断片と反応チャンバー(例えば、膜浴)中で接触させる。検出試薬を反応チャンバーに加えて、固定化された結合複合体を検出する。いくつかの態様において、検出試薬は、抗原に対して指向された、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの態様において、検出試薬は、一次抗体または抗原結合断片に対して指向された、検出可能に標識された二次抗体を含む。本明細書に開示されるように、検出可能な標識は、例えば、放射性同位体、フルオロフォア、発光分子、酵素、ビオチン部分、エピトープタグ、または色素分子であってよい。いくつかの態様において、一次抗体または抗原結合断片はそれ自体が検出可能に標識され、それによって検出試薬である。適切な検出可能な標識は、本明細書に記載されており、当業者には容易に明らかであろう。
【0097】
したがって、家庭または臨床使用(ケアサービスの地点)に適した診断キットが提供され、これは以下を含む:(a)検出可能に標識されたおよび/もしくは標識されていない抗体または抗原結合断片を、抗原結合試薬(例えば、プレクチン1結合試薬)として;(b)検出試薬;および任意に、(c)試薬を使用して試料中の抗原を検出するための、完全な説明書。いくつかの態様において、診断キットは、抗体または抗原結合断片、および/または固体支持体上に固定化されたプレクチン1を含む。本明細書に記載の任意の固体支持体は、診断キットへの組み込みに適している。好ましい態様において、固体支持体は、プレートウェルの反応チャンバーの表面である。典型的には、プレートウェルは、6、12、24、96、384および1536から選択されるいくつかのウェルを有するマルチウェルプレート内にあるが、これに限定はされない。他の態様において、診断キットは、検出可能に標識された抗体または抗原結合断片を提供する。診断キットは、これらの態様に限定されず、キット組成物における他の変化は、当業者には容易に明らかであろう。
【0098】
本開示は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは決してさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通じて引用される全ての参考文献(文献参照、発行された特許、公開特許出願、および係属中の特許出願を含む)の全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例】
【0099】
大腸菌におけるヒトプレクチン1の発現および精製
Hisタグベクター(15mg/L、配列番号2)およびGSTタグベクター(30mg/L、配列番号3)の両方の発現準備完了構築物を使用して、モノクローナル抗体を生成した。発現を評価するために、プラスミドを大腸菌のB株に形質転換した。試験は4mLの試験管で行い、以下の変数を調べた:温度、発現時間、およびイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)の濃度。
細胞を遠心分離により収穫した。細胞ペレットを超音波処理によって溶解し、標的タンパク質を、ニッケルカラムを用いた一段階精製で得た。画分をプールし、保存緩衝液に対して透析した。異なる保存緩衝液を使用して、0.4mg/mLを超える最も安定なタンパク質を生じたものを決定した。タンパク質を、SDS-PAGEおよびウェスタンブロットにより標準的なプロトコルを用いて分析し、分子量および純度の測定値を得た。タンパク質の濃度は、Bradfordタンパク質アッセイにより、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準として用いて測定した。
【0100】
抗ヒトプレクチン1タンパク質のモノクローナルの開発
標的タンパク質(配列番号1の下線部分;配列番号92に示す)を認識する、抗ヒトプレクチン1タンパク質モノクローナル抗体の特定のパネルを開発した。
最初に、5匹のBALB/cマウスをGenScriptのMonoExpress免疫プロトコルで免疫化し、2週間観察した。
【0101】
電気融合を用いて2回の融合を行った。このプロセスを用いた平均融合効率は、約1ハイブリドーマ/5000個のB細胞である。ハイブリドーマクローンの予想収量は2×104であり、融合細胞を96ウェルプレートにプレートした。ELISAを実施して、陽性クローンについて融合タンパク質をスクリーニングした。次いで陽性クローンからの上清を、標的タンパク質に対するELISAによってさらにスクリーニングした。10*Hisタグタンパク質をカウンタースクリーンとして使用した。選択されたクローンは、標的タンパク質に対して陽性であり、10*Hisタグタンパク質に対して陰性であった。陽性クローンを、ヒト組換えSec8(プレクチン1セクション8)で被覆した24ウェルプレートに広げ、各クローンの上清2mLを集めた後、細胞を保存のために凍結した。表3は、ヒト組換えプレクチン1セクション8で被覆したプレート上で増殖させた細胞系のOD450nmを示す。
【0102】
【0103】
2つの融合体からの陽性一次クローンを、限界希釈によってサブクローニングし、サブクローンが単一の親細胞から確実に得られるようにした。クローンを3世代にわたり増殖させた。サブクローンをELISAによりさらにスクリーニングした。ELISAの結果に基づいて、各一次クローンの2つの安定したサブクローン細胞株を凍結保存した。
クローンPAb1およびPAb2は、最も特異的なプレクチン結合能を示した(
図1)。クローンPAb3、PAb4およびPAb5も、がん細胞を死滅させる能力を示した(
図2)。
ローラーボトルを使用して、約15mg/Lの濃度で抗体を生産した。抗体タンパク質を、プロテインA/Gアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用いてさらに精製し、保存のためにPBS緩衝液中に透析した。品質管理のために、抗体を、SDS-PAGEによる純度試験、OD
280nmでの吸収による濃度測定、およびELISAによる抗原反応性に供した。
【0104】
選択された抗体を、標準的な全長抗体配列決定に供した。抗体は、全RNA抽出、RT-PCR、および5’RACEおよび3’RACE PCRを受けた。可変領域および定常領域の標的PCR断片をゲル精製し、配列決定ベクターにクローニングした。各鎖の少なくとも5つの独立した陽性クローンを配列決定して、コンセンサス配列を推定した。
【0105】
PAb1およびPAb2のモノクローナル抗体配列決定
PAb1およびPAb2を、以下の手順を用いて配列決定した。GenScriptにより回収されたハイブリドーマ細胞から、TRIzol(登録商標)試薬(Ambion、カタログ番号:15596-026)およびTRIzol(登録商標)試薬の技術マニュアルの手順を使用して、全RNAを単離した。次いで、全RNAをアガロースゲル電気泳動により分析した。アイソタイプ特異的アンチセンスプライマーまたはユニバーサルプライマーを使用して、PrimeScript(商標)1st Strand cDNA合成キットと製造業者のプロトコルを用いて、全RNAをcDNAに逆転写した。VH、VL、CHおよびCLの抗体断片を増幅した。次いで、増幅された抗体断片を、標準的な分子クローニング法を用いて、標準クローニングベクターに別々にクローニングした。コロニーPCRを行って、正確なサイズのインサートを有するクローンを同定した。正しいサイズのインサートを有する5つより多くの単一コロニーを、各抗体断片について配列決定した。
【0106】
最終的に、正しいVH、VL、CH、CL挿入サイズを有する5つの単一コロニーを、配列決定のために送った。5つの異なるクローンのVH、VL、CH、CL遺伝子は、ほぼ同一であることが判明した。以下の配列の節に列挙されるPAb1およびPAb2コンセンサス配列は、PAb1およびPAb2抗体の配列を表す。
【0107】
PAb1を用いたin vitroアッセイ
in vitro結合アッセイを行った。
図3Aは、PAb1がプレクチン1タンパク質の組換えヒトC末端部分に特異的に結合することを示す。データは、PAb1が、組換えヒトSec8-Hisタンパク質に、高親和性(例えば、K
d<1nM)で選択的に結合することを示す。
図3Bは、プレクチン1陽性L3.6plがん細胞に対する、PAb1結合特異性を示す;PAb1は、プレクチン1陰性LNCaP細胞に結合しなかった。
図4A~4Gは、L3.6plプレクチン1陽性がん細胞における、PAb1の内在化を示す。エンドソームマーカーLAMP-1と合併した、PAb1(
図4A)またはIgG対照(
図4B)によるL3.6pl細胞の染色を実証する、代表的な共焦点顕微鏡画像が示されている。PAb1とLAMP-1の共局在が観察された(
図4C~4E)。定量アッセイは、PAb1の有意な部分がLAMP-1と合併したが、一方IgG対照は合併しなかったことを示した。37℃、4℃、またはL3.6pl細胞における低温PAb1とのインキュベーション後に内在化された
125I-PAb1放射活性の測定は、4℃対374℃の両方の細胞株で放射能の減少を示し、一方内在化活性は、
図4Gに示すように、冷PAb1(比較)との競合の間に、L3.6p1細胞においてのみ減少した。
【0108】
図5A~5Dは、PAb1での処置後のアポトーシスによるがん細胞死の誘導に関するデータを示す。
図5Aは、フローサイトメトリーによる、L3.6pl細胞の蛍光マイナス1対照実験を示す。
図5Bは、IgG対照での処置の72時間後の、L3.6plアネキシンV陽性細胞を示す。
図5Cは、PAb1による処置の72時間後の、L3.6plアネキシンV陽性細胞を示す。データは、PAb1処置のL3.6pl細胞が、対照のIgG処置細胞と比較して、有意に多くのアポトーシス(アネキシンVにより評価)を経験したことを示す(
図5D)。
がん細胞型および健康な細胞型の生存を、PAb1またはIgG対照のいずれかによる処置から72時間後に測定した。ロジスティック非線形回帰によってEC50を計算し、細胞生存率を50%低下させたmAb(nM)の濃度として報告した。データを表4(下記)に示す。
【0109】
【0110】
PAb1処置の、YapCがん細胞のチューブリン異方性に対する影響を、共焦点顕微鏡法によって調べた。
図6Aは、PAb1で処置されていないYapC細胞における、チューブリン染色を示す。
図6Bは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)処置の10分後の、チューブリン染色を示す;MMAEはチューブリン重合をブロックする。
図6Cは、PAb1処置の24時間後のチューブリン染色を示す。データは、未処理の対照細胞と比較した、PAb1で処置した細胞における異方性の減少を示す(
図6D)。
YapCがん細胞におけるPAb1とチューブリンとの共局在もまた調査した。チューブリン染色(
図7A)およびPAb1染色(
図7B)後の、YapCの代表的な共焦点顕微鏡画像を示す。データは、チューブリンおよびPAb1が、死滅細胞の表面上に共局在することを示す(
図7C;矢印)。増加したPAb1染色も、結合細胞(couple cell)で観察された。
【0111】
PAb1を用いたin vitroアッセイ
皮下のYapC腫瘍を有する免疫無防備状態のマウスに、PAb1またはIgG対照のいずれかを投与した。データは、11日後、3mg/kgのPAb1で処置したマウスが、IgG対照で処置したマウスよりも有意に小さい腫瘍体積を有することを示した(
図8A)。データはまた、1mg/kgのPAb1のマウスが、14日目に腫瘍体積の有意な減少を誘発することも示した。PAb1の2回の高用量(1mg/kgおよび3mg/kg)は、0.3mg/kgのPAb1で処置したマウスと比較して、有意に低い腫瘍体積をもたらし(
図8A)、用量依存的効果を示した。データはまた、PAb1で処置した動物は、処置の全期間中、体重が減少しなかったことも示した(
図8B)。3mg/kgのPAb1で処置したマウスの、0日目、14日目および25日目の写真も示す(
図8C~8E)。
【0112】
配列
>配列番号1-プレクチン(ヘミデスモソームタンパク質1)、Homo sapiens;標的タンパク質に
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【表5-1】
【0113】
【0114】
【0115】
>配列番号2-pET-10NC-Plec C末端:
Hisタグ-EK切断部位-ヒトプレクチン1(セクション8)-
終止コドン(344個のアミノ酸;MW=36959.2;予測pI=8.80)
【表6】
【0116】
>配列番号3-pGEX2t-セクション8:
GSTタグ-トロンビン切断部位-ヒトプレクチン1(セクション8)-
終止コドン(540個のアミノ酸;MW=59809.3;予測pI=8.15)
【表7】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
配列番号92-プレクチン(ヘミデスモソームタンパク質1)、Homo sapiens;標的タンパク質に
下線
【表10】
【配列表】