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▶ オミクロン−レーザーエイジ レーザープロダクト ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】医療装置の光源を較正する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
A61N5/067
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019566648
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2018059878
(87)【国際公開番号】W WO2018224211
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】102017112483.7
(32)【優先日】2017-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519423529
【氏名又は名称】オミクロン-レーザーエイジ レーザープロダクト ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディンゲス、ディーター
(72)【発明者】
【氏名】フュルステンベルク、ウルフギャング
(72)【発明者】
【氏名】バウマン、ゼンケ-ニルス
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-085737(JP,A)
【文献】特許第5861021(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0102861(US,A1)
【文献】特表2003-519790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0107726(US,A1)
【文献】米国特許第05115126(US,A)
【文献】特開2012-225858(JP,A)
【文献】特開平09-047518(JP,A)
【文献】国際公開第2010/116964(WO,A1)
【文献】特表2003-501650(JP,A)
【文献】特開2010-051440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18 - 18/28
A61N 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置の光源を較正する方法であって、前記光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能である結果、前記光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が前記少なくとも1つの導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、前記医療装置は少なくとも1つの較正ポートに接続され、前記較正ポートは、前記較正ポートに導入された導光ファイバから異なる空間方向に放射される光の強度を表わす放射特性を決定するセンサ手段を有し、
前記方法は、
a)前記導光ファイバを前記光源に接続する段階と、
b)前記導光ファイバの位置決め装置を前記較正ポートに挿入する段階であって、前記位置決め装置は、前記導光ファイバを受容する受容チャネルと、少なくとも1つの放射開口部とも有し、前記少なくとも1つの放射開口部は、前記導光ファイバから分離した光パワーを少なくとも1つの規定の空間方向に伝送することを可能にする、段階と、
c)前記導光ファイバを前記位置決め装置の前記受容チャネルに導入する段階と、
d)規定の光パワーの電磁放射を前記導光ファイバに結合する段階と、
e)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの前記射特性を、前記較正ポートの領域で実際の放射特性として決定する段階と、
f)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの所望の放射特性を、前記導光ファイバに結合された前記光パワー用の前記較正ポートの領域で前記センサ手段によって決定する段階と、
g)決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較する段階と、
h)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応する場合、前記導光ファイバをさらなる使用のために取り外す段階と、
i)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応しない場合、エラーメッセージを出力する段階と
を備える、方法であって、
前記センサ手段は、前記較正ポートの側面に配置された少なくとも1つの側面側フォトダイオードと、前記較正ポートの長手方向端部に配置された少なくとも1つの正面側フォトダイオードとも有し、
前記実際の放射特性を決定する段階は、前記導光ファイバから分離した前記光パワーにより、前記少なくとも1つの側面側フォトダイオード及び前記少なくとも1つの正面側フォトダイオードで発生したそれぞれの光電流を決定する段階を有し、
決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較する段階は、決定された前記光電流をそれぞれのフォトダイオードの所望の放射特性に含まれる光電流と比較する段階を有する、方法
【請求項2】
医療装置の光源を較正する方法であって、前記光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能である結果、前記光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が前記少なくとも1つの導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、前記医療装置は少なくとも1つの較正ポートに接続され、前記較正ポートは、前記較正ポートに導入された導光ファイバから異なる空間方向に放射される光の強度を表わす放射特性を決定するセンサ手段を有し、
前記方法は、
a)前記導光ファイバを前記光源に接続する段階と、
b)前記導光ファイバの位置決め装置を前記較正ポートに挿入する段階であって、前記位置決め装置は、前記導光ファイバを受容する受容チャネルと、少なくとも1つの放射開口部とも有し、前記少なくとも1つの放射開口部は、前記導光ファイバから分離した光パワーを少なくとも1つの規定の空間方向に伝送することを可能にする、段階と、
c)前記導光ファイバを前記位置決め装置の前記受容チャネルに導入する段階と、
d)規定の光パワーの電磁放射を前記導光ファイバに結合する段階と、
e)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの前記放射特性を、前記較正ポートの領域で実際の放射特性として決定する段階と、
f)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの所望の放射特性を、前記導光ファイバに結合された前記光パワー用の前記較正ポートの領域で前記センサ手段によって決定する段階と、
g)決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較する段階と、
h)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応する場合、前記導光ファイバをさらなる使用のために取り外す段階と、
i)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応しない場合、エラーメッセージを出力する段階と
を備える、方法であって、
導光ファイバが第1のファイバタイプ又は第2のファイバタイプのファイバであり、前記第1のファイバタイプは、前記導光ファイバに結合された電磁放射を前記導光ファイバの長手方向に放射するように構成され、前記第2のファイバタイプは、前記導光ファイバに結合された電磁放射を、前記導光ファイバの長手方向に対して短手方向に、前記導光ファイバの規定の長さにわたって放射するように構成され、前記方法はさらに、前記第1のファイバタイプまたは前記第2のファイバタイプのいずれが用いられるかを判定する段階であって、前記所望の放射特性の前記決定は前記判定されたファイバタイプを考慮する、段階を備える、方法。
【請求項3】
導光ファイバが第1のファイバタイプ又は第2のファイバタイプのファイバであり、前記第1のファイバタイプは、前記導光ファイバに結合された電磁放射を前記導光ファイバの長手方向に放射するように構成され、前記第2のファイバタイプは、前記導光ファイバに結合された電磁放射を、前記導光ファイバの長手方向に対して短手方向に、前記導光ファイバの規定の長さにわたって放射するように構成され、前記方法はさらに、前記第1のファイバタイプまたは前記第2のファイバタイプのいずれが用いられるを判定する段階であって、前記所望の放射特性の前記決定は前記判定されたァイバタイプを考慮する、段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のファイバタイプまたは前記第2のファイバタイプのいずれが用いられるを判定する前記段階はユーザ入力を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法はさらに、前記導光ファイバに結合される前記規定の光パワーを、前記光源に接続された前記ファイバタイプに基づいて決定する段階を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記実際の放射特性の前記光電流の比が前記所望の放射特性の前記光電流の比に対応するが、前記実際の放射特性の前記光電流が前記所望の放射特性の対応する前記光電流より低い場合、前記エラーメッセージは、前記導光ファイバの欠陥及び/又は前記導光ファイバと前記光源との間の結合の欠陥及び/又は前記導光ファイバの欠陥放射領域を示す、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記医療装置は少なくとも2つの光源を備え、前記少なくとも2つの光源は導光ファイバにその都度接続可能である結果、前記少なくとも2つの光源で発生した電磁放射がその都度、光源に接続された前記導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、少なくとも方法の段階a)とc)~i)とが、前記少なくとも2つの光源に接続された前記導光ファイバに対して個々に実行される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
医療装置の光源を較正する方法であって、前記光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能である結果、前記光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が前記少なくとも1つの導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、前記医療装置は少なくとも1つの較正ポートに接続され、前記較正ポートは、前記較正ポートに導入された導光ファイバから異なる空間方向に放射される光の強度を表わす放射特性を決定するセンサ手段を有し、
前記方法は、
a)前記導光ファイバを前記光源に接続する段階と、
b)前記導光ファイバの位置決め装置を前記較正ポートに挿入する段階であって、前記位置決め装置は、前記導光ファイバを受容する受容チャネルと、少なくとも1つの放射開口部とも有し、前記少なくとも1つの放射開口部は、前記導光ファイバから分離した光パワーを少なくとも1つの規定の空間方向に伝送することを可能にする、段階と、
c)前記導光ファイバを前記位置決め装置の前記受容チャネルに導入する段階と、
d)規定の光パワーの電磁放射を前記導光ファイバに結合する段階と、
e)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの前記放射特性を、前記較正ポートの領域で実際の放射特性として決定する段階と、
f)前記導光ファイバから分離した前記光パワーの所望の放射特性を、前記導光ファイバに結合された前記光パワー用の前記較正ポートの領域で前記センサ手段によって決定する段階と、
g)決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較する段階と、
h)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応する場合、前記導光ファイバをさらなる使用のために取り外す段階と、
i)前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応しない場合、エラーメッセージを出力する段階と
を備える、方法であって、
前記医療装置は少なくとも2つの光源を備え、前記少なくとも2つの光源は導光ファイバにその都度接続可能である結果、前記少なくとも2つの光源で発生した電磁放射がその都度、光源に接続された前記導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、少なくとも方法の段階a)とc)~i)とが、前記少なくとも2つの光源に接続された前記導光ファイバに対して個々に実行される、方法。
【請求項9】
前記導光ファイバを取り外した後に、前記導光ファイバに接続された前記光源は、規定の期間の間、350~850nmの波長を有する光を前記導光ファイバに結合する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの光源を備える医療装置であって、前記少なくとも1つの光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能である結果、前記少なくとも1つの光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が前記少なくとも1つの導光ファイバに少なくとも部分的に結合され、前記医療装置は少なくとも1つの較正ポートに接続され、前記少なくとも1つの較正ポートは、前記少なくとも1つの較正ポートに導入された導光ファイバから異なる空間方向に放射される光の強度を表わす放射特性を決定するセンサ手段を有し、
前記医療装置は、
前記医療装置に接続され且つ前記少なくとも1つの較正ポートに配置された導光ファイバに規定の光パワーの電磁放射を結合し、
前記導光ファイバから分離した光パワーの前記射特性を、前記少なくとも1つの較正ポートの領域で実際の放射特性として決定し、
前記導光ファイバから分離した前記光パワーの所望の放射特性を、前記導光ファイバに結合された前記光パワー用の前記少なくとも1つの較正ポートの領域で決定し、
決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較し、
前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応する場合、前記導光ファイバを使用のために取り外し、
前記実際の放射特性が前記所望の放射特性に対応しない場合、エラーメッセージを出力する
ように構成される、医療装置であって、
前記センサ手段は、前記少なくとも1つの較正ポートの側面に配置された少なくとも1つの側面側フォトダイオードと、前記少なくとも1つの較正ポートの長手方向端部に配置された少なくとも1つの正面側フォトダイオードとも有し、
前記実際の放射特性を決定する前記医療装置は、前記導光ファイバから分離した前記光パワーにより、前記少なくとも1つの側面側フォトダイオード及び少なくとも1つの正面側フォトダイオードで発生したそれぞれの光電流を決定するように構成され、
決定された前記実際の放射特性を決定された前記所望の放射特性と比較する前記医療装置は、決定された前記光電流をそれぞれのフォトダイオードの所望の放射特性に含まれる光電流と比較するように構成される、医療機器
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1で請求される、医療装置の光源を較正する方法、及び請求項9で請求される、対応する医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野でのレーザシステムの多様な応用例が、最近の先行技術において知られている。通常の応用例のほかに、外科又は眼科などでは、例えばレーザシステムで発生した放射線も、がんの治療、例えば光線力学的治療法(PDT)との関連でますます用いられている。これには、特定の波長を有する光による活性化の結果として、光物理プロセスによって、例えば腫瘍細胞又は細菌を攻撃する活性物質を放出する感光性薬剤の使用が必要になる。この場合、特定の波長及び特定の強度(放射照度)を有する光が、対応する薬剤の活性化に必要となる。このために、十分に狭いスペクトル帯域幅を有するレーザ光及び他の電磁放射を両方とも用いることが可能である。
【0003】
光線力学的治療法の治療オプションの場合には、一般に、表面的治療と侵襲的(特に侵入型)治療とが区別される。しかしながら、両方の領域では通常、治療に用いられる電磁放射は導光ファイバに結合され、治療部位で導光ファイバから分離する。治療のタイプに応じて、用いられるファイバは、それぞれの放射特性がここでは異なる。
【0004】
治療の際に、必要な強度の光に治療組織が実際にさらされることを確実にするために、先行技術では、治療する前に光源を較正することが知られている。この場合、較正は一般に、ファイバから分離した光パワー全体がファイバに結合されたパワーにある程度対応しているかどうかを比較して、所望の光パワーが治療部位で利用できるようにすることが必要になる。こうしたことが当てはまらない場合、導光ファイバに結合された光パワーは、分離した光パワーが医療要件に対応するように適合することができる。しかしながら、一般に、光が分離するファイバの種類と、光がファイバから分離する方式とについては区別されていない。これに関しては、ファイバの設計に応じて、分離した同じ光パワーに対して、ファイバから分離した強度が異なるということが起こり得る。したがって、先行技術では、ファイバから分離したパワーが較正後に全体で正しいが、誤って選択されたファイバによって強度が高すぎる又は低すぎるというリスクがあり、その結果、治療が不可能になる、又は患者の傷害が懸念されることになる。
【発明の概要】
【0005】
こうした背景の下に、本発明は、医療装置の光源を較正する方法を提供するという目的に基づいており、本発明では、用いられる電磁放射の誤って選択された分離強度による不適切な治療が回避される。
【0006】
本発明の主な特徴が請求項1及び代替の独立請求項9に記載されている。実施形態が請求項2から8及び請求項10の主題である。
【0007】
第1の態様において、本発明は、医療装置の光源を較正する方法に関し、光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能であり、その結果、光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が導光ファイバに少なくとも部分的に結合される。医療装置は少なくとも1つの較正ポートに接続され、較正ポートは、較正ポートに導入された導光ファイバの空間放射特性を決定するセンサ手段を有する。この場合、本方法は次に挙げる段階を備える。
【0008】
まず、導光ファイバが光源に接続され、導光ファイバ用の位置決め装置が較正ポートに挿入される。位置決め装置は、導光ファイバを受容する受容チャネル、及び少なくとも1つの放射開口部も含む。少なくとも1つの放射開口部によって、導光ファイバから分離した光パワーを少なくとも1つの規定の空間方向に伝送することが可能になる。その後、導光ファイバは位置決め装置の受容チャネルに導入され、規定の光パワーを有する電磁放射が導光ファイバに結合される。この後に、導光ファイバから分離した光パワーの空間放射特性を、較正ポートの領域でセンサ手段によって実際の放射特性として決定し、また導光ファイバから分離した光パワーの所望の放射特性も、導光ファイバに結合された光パワー用の較正ポートの領域で決定する段階が続く。決定された実際の放射特性は次に、所望の放射特性と比較され、実際の放射特性が所望の放射特性に対応する場合、導光ファイバはさらなる使用のために取り外される。一方、実際の放射特性が所望の放射特性に対応しない場合、本方法は、エラーメッセージを出力して終了する。
【0009】
この場合、「光源」が、十分に狭いスペクトル帯域幅を有する電磁放射のあらゆる所望のソースになり得るので、これはPDTに用いるのに好適である。これには、例えばLED、具体的にはレーザ放射を発生させるレーザダイオードが必要になり得る。この場合、光源で発生した放射線は、対応する光ユニットにより導光ファイバ(例えば光ファイバ)に結合されるのが好ましい。導光ファイバは、例えば、400~600μmの直径を有し得る。レーザ光は、説明される方法との関連で、電磁放射として用いられるのが好ましい。
【0010】
この文脈での放射特性とは、導光ファイバから異なる空間方向に放射される光パワーの比を表し、導光ファイバに結合される光パワーを考慮している。この場合、実際の放射特性と所望の放射特性との対応関係は、規定の許容範囲を考慮して決定することができる。例として、それぞれの比が5%未満の差で互いにずれている場合、これらの特性の「対応関係」を指すことが可能である。この場合、許容範囲レベルは、それぞれ異なる比に対して異なるように選択され得る。
【0011】
この場合、上述した方法は、導光ファイバから分離した絶対光パワーではなく、導光ファイバから分離した放射線の放射特性を用いて、光源を較正するという利点を有する。具体的には、現在どの種類の導光ファイバが光源に接続されているかが、求めた放射線の放射特性から決定され得る。ここで、特定の治療法又はファイバの種類に対して所望の放射特性が知られている場合、正しいファイバが光源に接続されているかどうかという事実が、特性を比較することで識別され得る。
【0012】
この場合、所望の放射特性が実際の放射特性に対応しなければ、これには複数の原因があり得る。誤ったファイバ若しくは誤ったファイバタイプが光源に接続されているか、又は較正ポートに挿入された位置決め装置が、位置決め装置により放出される空間方向が導光ファイバの放射特性と一致しないために、用いられている導光ファイバに合わない。実際の放射特性が所望の放射特性に対応し、その結果、ファイバをさらなる使用のために取り外すことができるのは、正しい位置決め装置と組み合わせて正しいファイバを用いる場合だけである。
【0013】
「さらなる使用」とは、例えば、導光ファイバに結合された光パワーが適合していることになり得るので、導光ファイバから分離した十分な強度によって、治療を開始することができる。導光ファイバから分離した光パワーが既に治療に十分な場合、さらなる使用として、患者の治療もすぐに開始することができる。
【0014】
実際の放射特性が所望の放射特性に対応しない場合に出力されるエラーメッセージは、ここでは、どんなエラー原因が存在すると考えられるかについての情報を含み得る。これに関して、ずれに基づいて、例えば、誤ったファイバが用いられたのか、又は誤った位置決め装置が用いられたのかを判定することが可能である。この場合、特性を比較するために用いられる所望の放射特性は、例えば、医療装置のメモリから読み出すことができ、用いられている導光ファイバについての情報に基づいて規定することができる。
【0015】
エラーメッセージが出力された場合、1つの実施形態によれば、光源からの電磁放射のさらなる放射を防止する安全な状態に、医療装置が自動的に置かれることができるようになっている。この場合、医療装置の現在の構成に変化が生じた場合にだけ、上記安全な状態が再度解除できるようになっている。そのような変化は、例えば、導光ファイバ若しくは位置決め装置の交換、又は導光ファイバに結合された光パワーの変化である可能性がある。この場合、エラーメッセージは、そのような構成の変化が生じた後にだけ、装置を再始動できるという指示を含み得る。
【0016】
この場合、論理的に意味がある限り、本発明による本方法の個々の方法の段階も、異なる順序で実行することができる。これに関しては、例として、位置決め装置を較正ポートに挿入することが、実際には、導光ファイバを光源に接続する前に実行されてもよい。同様に、所望の放射特性も実際の放射特性が知られる前に決定されてよい。
【0017】
既に上述したように、用いられる導光ファイバは放射特性が異なり得る。この場合、1つの実施形態によれば、導光ファイバが第1のファイバタイプのファイバ又は第2のファイバタイプのファイバになるようになっている。第1のファイバタイプは、導光ファイバに結合された電磁放射をファイバの長手方向に放射するように構成され、第2のファイバタイプは、導光ファイバに結合された電磁放射をファイバの長手方向に対してファイバの規定の長さにわたって短手方向に放射するように構成される。この場合、本方法はさらに、用いられているファイバタイプを判定する段階を備え、所望の放射特性の決定は、判定されたファイバタイプを考慮する。
【0018】
第2のファイバタイプの場合、ファイバタイプを判定するときに、電磁放射が半径方向にファイバから分離する際のファイバの長さも同時に判定できることが、ここで規定されてよい。そのほかに、さらなるファイバパラメータも、ファイバタイプについての情報に符号化され得る。例として、第1のファイバタイプを判定するときに、ファイバ断面の形状についての情報を同時に取得することができる。
【0019】
ファイバタイプを判定するために、例えば、ファイバにRFIDチップ、又はファイバタイプを求めることができる類似の識別機能を備えることができるようになっている。この場合、例として、ファイバが光源に接続された時点で、医療装置は、RFIDチップから読み取ることにより、どのファイバタイプが接続されたかを独自に判定し、それに応じて、所望の放射特性を期待されるように選択することができる。これには、エラー原因、すなわち接続されたファイバの誤った選択という意味での誤った装置の操作が回避され得るという利点がある。
【0020】
ファイバタイプの自動識別の代替案として、さらなる実施形態によれば、ユーザ入力を含むのに用いられるファイバタイプを決定するようになっている。医療装置の光源の較正をさらに簡略化するために、さらなる実施形態によれば、本方法がさらに、光源に接続されたファイバタイプに基づいて、導光ファイバに結合される規定の光パワーを決定する段階を含むようになっている。この場合、例として、ユーザ又は医療装置自体が、導光ファイバから分離する強度を予め規定できるようになっている。この強度は、用いられる導光ファイバに関する情報に基づいて、医療装置により、ファイバに結合される光パワーに自動的に変換される。その結果、誤った操作の可能性がさらに低減される。
【0021】
さらなる実施形態によれば、ユーザが特定の種類の治療及び治療される領域のサイズだけを予め規定することも可能である。その結果、医療装置は、どのファイバタイプを用いる必要があるか、また治療に必要な強度をファイバから分離するためにどのような光パワーをファイバに結合すればよいかを独自に決定する。それに応じて、医療装置は、選択された種類の治療から、どのような所望の放射特性が期待されるかも決定する。したがって、治療パラメータの定義付けを完全に自動化することができ、その結果、誤った操作が事実上排除される。
【0022】
さらなる実施形態によれば、センサ手段は、側面に配置された少なくとも1つの側面側フォトダイオードを較正ポートに有し、また較正ポートの長手方向端部に配置された少なくとも1つの正面側フォトダイオードも有する。この場合、実際の放射特性を決定することは、導光ファイバから分離した光パワーによってフォトダイオードで発生するそれぞれの光電流を決定することを含み、決定された実際の放射特性を決定された所望の放射特性と比較することは、決定された光電流をそれぞれのフォトダイオードの所望の放射特性に含まれる光電流と比較することを含む。
【0023】
少なくとも1つの側面側フォトダイオード及び1つの正面側フォトダイオードを用いると、決定された光電流に基づいて、用いられる導光ファイバに対して長手方向及び短手方向に、専用の放射比較が可能になる。ここでは、較正ポートに互いに正反対に位置する2つの側面側フォトダイオードが提供されることが好ましい。そのような配置の結果として、導光ファイバの放射特性についてより良好な分解能を与えることが可能になる。この場合、フォトダイオード又はフォトダイオードで発生する光電流を、放射特性を決定するために、組み合わせて検討すること、及び別々に検討することの両方が可能になる。用いられるフォトダイオードの数に応じて、異なるように配置されたフォトダイオードの光電流の任意の組み合わせも、放射特性の決定に影響を与え得る。
【0024】
所望の放射特性及び実際の放射特性を決定するのに光電流を用いると、さらなる実施形態によれば、実際の放射特性の光電流の比が所望の放射特性の光電流の比に対応するが、実際の放射特性の光電流が、対応する所望の放射特性の光電流より低い場合、エラーメッセージは、導光ファイバの欠陥及び/又は導光ファイバと光源との間の結合の欠陥を示すことが規定される。具体的には、決定された光パワーの比を上述のように表す実際の放射特性そのものが、所望の放射特性に対応する場合、用いられる位置決め装置と組み合わせて用いられる導光ファイバは正しく選択されている。しかしながら、光電流全体の絶対値が低すぎる場合、これは、ファイバ、又は光源と導光ファイバとの間の領域における、光パワーの損失の増大を示す。これは具体的には、医療装置が、所望の治療種類をユーザごとに選択することに基づいて、導光ファイバに結合される光パワーを独自に選択するよう構成される場合である。
【0025】
医療装置が1つの光源を有し、当該光源が少なくとも1つの導光ファイバに接続され、本発明による方法に従って較正され得ることは上述されている。さらなる実施形態によれば、医療装置が少なくとも2つの光源を有するようにここではなっており、これらの光源は、その都度、導光ファイバに接続可能であり、その結果、光源で発生した電磁放射が、その都度、光源に接続された導光ファイバに少なくとも部分的に結合される。この場合、方法の段階が、光源に接続された導光ファイバに対して個々に実行される。位置決め装置の挿入は、必ずしも各導光ファイバに対して実行される必要はない。これに関して、同一のファイバが異なる光源で用いられることが実際には可能であり、その結果、較正プロセスの間に位置決め装置を交換する必要はない。一方、個々の光源に接続された導光ファイバの放射特性が、異なる放射方向(正面又は半径方向)によって異なる場合、較正ポートに挿入された対応する位置決め装置も、較正プロセスを実行するときに交換する必要がある。このように、多数の導光ファイバを並行して較正することができるので、並行して治療される、患者の複数の領域で治療が可能になる。
【0026】
医療装置の操作又は較正方法の実装をさらに簡略化するために、さらなる実施形態によれば、ファイバを取り外した後に、ファイバに接続される光源は、規定の期間の間、350~850nmの波長を有する光をファイバに結合することが規定されている。実際には、既に較正された導光ファイバが、ある期間の間(例えば5分)、人に見える電磁スペクトルで光を発し続けるので、どのファイバが既に較正されているか、またどのファイバがまだ較正されていないかを、ユーザが容易に認識することができる。この実施形態のさらなる利点は、較正が実行された後に、較正ポートのセンサ手段は、較正されたファイバが較正ポートから取り除かれていない場合、依然として放射線を検出することである。この場合、誤ったファイバが較正ポートに配置されている、又はファイバの較正が既に終了しているというエラーメッセージをユーザに表示することが可能である。このように、既に較正されているファイバとまだ較正されていないファイバとの間のファイバの取り違えが結果的に回避され得る。
【0027】
ユーザに対する本方法の安全性を高めるために、さらなる実施形態によれば、較正プロセスの際に測定された放射特性の瞬時の変化を識別すると、医療装置は安全な状態に、例えば、医療装置の少なくとも1つの光源がオフになり、ユーザが最初に起動できない状態に切り替わることが規定される。測定された放射特性のそのような瞬時の変化は、例えば、その間に導光ファイバが較正ポートから取り出された場合、又は導光ファイバがファイバに沿ったある位置で切断された場合に起こる。光源をオフにすると、導光ファイバから出てくる電磁放射がユーザに傷害をもたらすのを防止することが可能になる。医療装置の安全な状態は、例えば、対応するユーザ入力によって再度解除することができる。
【0028】
さらなる態様において、本発明は少なくとも1つの光源を有する医療装置に関する。光源で発生した規定の光パワーの電磁放射が導光ファイバに少なくとも部分的に結合されるように、光源は少なくとも1つの導光ファイバに接続可能である。医療装置は、少なくとも1つの較正ポートに接続される。較正ポートは、較正ポートに導入された導光ファイバの空間放射特性を決定するセンサ手段を有する。本装置は、本装置に接続され且つ較正ポートに配置された導光ファイバに規定の光パワーの電磁放射を結合し、導光ファイバから分離した光パワーの空間放射特性を、較正ポートの領域で実際の放射特性として決定し、導光ファイバから分離した光パワーの所望の放射特性を、導光ファイバに結合した光パワー用の較正ポートの領域で決定し、決定された実際の放射特性を決定された所望の放射特性と比較し、実際の放射特性が所望の放射特性に対応する場合、導光ファイバを用いるために取り外すように構成される。実際の放射特性が所望の放射特性に対応しない場合、本装置はさらに、エラーメッセージを出力するように構成される。
【0029】
この場合、1つの実施形態によれば、較正ポートの側面に配置された少なくとも1つの側面側フォトダイオード、及び較正ポートの長手方向端部に配置された少なくとも1つの正面側フォトダイオードも有するセンサ手段になっている。本装置は次に、実際の放射特性を決定し、導光ファイバから分離した光パワーによりフォトダイオードで発生するそれぞれの光電流を決定するように構成され、さらに、決定された実際の放射特性を決定された所望の放射特性と比較して、決定された光電流をそれぞれのフォトダイオードの所望の放射特性に含まれる光電流と比較するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明のさらなる特徴、詳細、及び利点が、特許請求の範囲の表現から、また図面を参照した以下の例示的な実施形態の説明からも明らかである。
【0031】
図1】本発明による方法を実行するシステムの概略図を示す。
【0032】
図2】位置決め装置及びファイバを有する較正ポートの概略図を示す。
【0033】
図3】本発明による方法のフロー図を示す。
【0034】
以下の本文では、互いに類似した又は同一の特徴が、同じ参照符合で識別される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明による方法を実行するのに好適なシステム100の概略図を示す。このために、システム100は、図示した実施形態において、2つの光源104と、操作要素106と、較正ポート108とを有する医療装置102を備える。操作要素106は、例えば、操作パラメータの表示と、システム100のユーザによる所望の操作パラメータの設定との両方に好適なタッチ式ディスプレイであってよい。操作要素106は、不可欠な要素として図1に示されており、複数の要素から構成される操作要素106にもなり得るようになっている。例として、操作要素106に加えて、医療装置102には光源104を短期間オフにすることが可能な非常用オフスイッチも設けることができる。
【0036】
システム100はさらに、位置決め装置110と、図示されている実施形態には導光ファイバ112も備え、位置決め装置110は較正ポート108に挿入されており、導光ファイバ112は、まず一端が光源104に接続され、次に導光ファイバ112の他端が位置決め装置110に挿入されている。この場合、導光ファイバ112は光源104に、例えば対応するファイバコネクタ、例えばFC/PC又はF-SMAコネクタ又は専用のプラグ接続を介して接続され得る。システム100は、例えば既に序文で言及されているように、光線力学的治療法との関連で用いられ得る。この場合、まず光活性化可能な物質を含んだ薬剤が患者に投与される。上記物質が特定の波長及び強度を有する光に照射された場合、上記物質の活性成分の変換又は活性化が光物理プロセスによって起こる。その結果、例えば細菌又はがん細胞が上記活性成分によって攻撃される。治療の種類に応じて、この場合、異なる種類の導光ファイバ112及び異なる強度が、治療される組織に導入される。このために、光源104により導光ファイバ112に結合される光パワーが、導光ファイバ112の種類及び治療される領域とも協調することが一般に必要になる。この場合、導光ファイバ112の種類に関して、正面に放射する導光ファイバ112と半径方向に放射する導光ファイバ112とは、通常区別される。半径方向に放射するファイバの場合、ファイバの規定の長さにわたり放射が生じる。
【0037】
半径方向に放射するファイバ112を用いて、例えば、特定の光パワーがファイバ112の放射領域の特定の長さに対して選択されるが、それとは異なる放射長を有するファイバ112が挿入された場合、これにより、実際の所望のパラメータから逸脱した強度になり、その強度が、治療の際に導光ファイバ112から分離することになる。結果として、薬剤を活性化させることができないか、又は過剰に高い光パワーによって治療組織がやけどを負うというリスクがある。本発明によれば、そのような誤った治療は、光源104に接続された導光ファイバ112が、治療用に取り外される前に、まず較正ポート108によって較正されることにより、回避されることが意図されている。
【0038】
図2は、導光ファイバ112の較正の過程で起こり得る、位置決め装置110及び導光ファイバ112が挿入された較正ポート108の様々な可能な構成を示す。図示された変形例の全てにおいて、較正ポート108は3つのフォトダイオード114を有し、それらのフォトダイオードは較正ポート108で放射される電磁放射を検出できるように、且つ結果としてフォトダイオードで発生する光電流に基づいて電磁放射を定量化できるように、較正ポート108に配置される。
【0039】
較正ポート108は、円筒形状、カットアウトなどの円形であることが好ましく、これに応じた形状の位置決め装置110が中に挿入され得る。位置決め装置110は、例えば、プラスチックから製造され、且つ導光ファイバ112から出てくる電磁放射を少なくとも部分的に吸収する効果を有する物体である。例として、位置決め装置110はポリオキシメチレン(POM)から製造することができる。ファイバタイプと位置決め装置110との様々な組み合わせが、図2のa)、図2のb)、図2のc)、及び図2のd)に示されている。
【0040】
図2のa)は、ファイバ端において、導光ファイバ112又は導光ファイバ116のコア120に誘導される電磁放射をファイバ112の正面方向に分離するように構成される導光ファイバ112を示す。較正ポート108に配置された図2のa)の位置決め装置110は、ここでは、この種類の導光ファイバ112に適合する。このために、位置決め装置110は回転対称物体として具現化されるのが好ましく、その端面にカットアウト118を有し、このカットアウトを通って、導光ファイバ112又はファイバコア116から分離した電磁放射が位置決め装置110から出てくることができる。
【0041】
位置決め装置110と導光ファイバ112との組み合わせの放射特性を確認するために、較正ポート108から出てくる電磁放射によってフォトダイオード114で発生した光電流が測定される。導光ファイバ112の種類と位置決め装置110の形状とによって、較正ポート108の長手方向端部に配置されたフォトダイオード114が比較的高い光電流を検出し、較正ポート108の側面に配置されたフォトダイオード114は、導光ファイバ112から半径方向に出てくる放射線の大部分が位置決め装置110の材料に吸収されるため、比較的低い光電流のみを検出することが期待されるはずである。これは、導光ファイバ112と位置決め装置110との正しい組み合わせに期待される放射特性に対応する。この場合、較正ポート108の側面に配置されたフォトダイオード114も、位置決め装置110内の散乱によって低光パワーを有する電磁放射にさらされるように、位置決め装置110は導光ファイバ112から分離した電磁放射に対して部分的に透明になっている。
【0042】
図2のb)は、側面に又は半径方向に放射する導光ファイバ112用の、そのような半径方向に放射する導光ファイバ112と組み合わせた位置決め装置110が、図2のa)と同一の較正ポート108に挿入されている状況を示す。この導光ファイバ112の場合、ここでは、一般に電磁放射の放射を完全に遮蔽する導光ファイバのクラッド120がファイバ112の長さに沿った規定の領域において開いている結果、電磁放射がファイバ112から半径方向に出てくることができる。放射線が導光ファイバ112から半径方向に出てくることができるのを可能にするために、ファイバコア116は、入射電磁放射をファイバ112に対して短手方向に散乱するように構成された散乱中心として標的微細損傷を備えることができる。この場合、散乱中心はファイバコア116全体に一様に分布していることが好ましい。さらに、ファイバコア116は、入射電磁放射をファイバ112に対して短手方向に散乱させるディフューザ材料で部分的に置き換えることができる。ディフューザ材料は、例えば、光散乱粒子(フレーク)を内部に含むシリコーンであってよい。この場合、位置決め装置110は、導光ファイバ112が位置決め装置110に完全に導入された状態で、露出したファイバコア116の領域に正確に配置された側面カットアウト118を有するように正確に具現化される結果、ファイバコア116から半径方向に出てくる電磁放射を、較正ポート108の側面側フォトダイオード114で検出することができる。
【0043】
一方、導光ファイバ112の長手方向端部では、ファイバ112は、電磁放射がファイバ112の長手方向においてファイバから分離しないように構成される。これは、密閉したファイバクラッド120で図示されている。電磁放射を遮断するミラーなどの構成部品、例えば、ファイバ112から半径方向にまだ分離していない光パワーがファイバ112の半径方向に放射する領域に再度反射される効果を有する構成部品がファイバの端部に配置されることが好ましい。結果として、残留電磁放射が導光ファイバ112の半径方向に放射する領域を再度通過し、その結果、ファイバ112の半径方向に放射する領域の長さ全体にわたりより高く且つより一様な、半径方向に分離した光パワーを実現することが可能になる。
【0044】
図2のa)に基づく位置決め装置110と導光ファイバ112の組み合わせから期待される放射特性とは、較正ポート108の側面に配置されたフォトダイオード114が比較的高い光電流を検出し、較正ポート108の正面に配置されたフォトダイオード114が非常に低い光電流のみを検出するという事実にある。
【0045】
本発明による較正の場合、つまり図2のa)及び図2のb)に示される組み合わせの場合、決定された放射特性又は実際の放射特性は、その都度、対応するファイバのタイプによる治療が実際に想定されるという条件で、期待される所望の放射特性に対応する。したがって、この場合、正しい種類の導光ファイバ112が光源104に接続されているのが明らかであるため、較正後に、ファイバはさらなる使用のために取り外されるであろう。
【0046】
図2のc)は、半径方向に放射するファイバ112用の位置決め装置110と、電磁放射の正面放射用に構成された導光ファイバ112との組み合わせを示す。この組み合わせにおいて、導光ファイバ112が規定の光パワーを有する電磁放射にさらされた場合、その都度、非常に低い光電流のみが、較正ポート108の正面に配置されたフォトダイオード114及び較正ポート108の側面に配置されたフォトダイオード114の両方で検出されるであろう。正面方向では、導光ファイバ112から分離した電磁放射は位置決め装置110によって減衰し、半径方向では、連続したファイバクラッド120によって、電磁放射が導光ファイバから出てくることが防止される。したがって、決定された実際の放射特性は、正面又は半径方向に放射するファイバに期待される所望の放射特性に対応しないであろう。したがって、本発明によれば、較正の過程で、導光ファイバ112はさらなる使用のために取り外されることはなく、むしろ誤った導光ファイバ112又は誤った位置決め装置110のいずれかが用いられたことを示すエラーメッセージが出力されるであろう。
【0047】
図2のd)は、図2のc)に対して直交する場合を示しており、半径方向に放射する導光ファイバ112が、導光ファイバ112からの電磁放射の正面放射用に設けられた位置決め装置110と組み合わせて用いられていた。この場合も、導光ファイバ112が電磁放射にさらされると、その都度、非常に低い光電流のみが、較正ポート108の全てのフォトダイオード114で検出されるであろう。なぜならば、半径方向では、放射された放射線が位置決め装置110に吸収され、正面方向では、導光ファイバ112のクラッド120が電磁放射の放射を防止することになるからである。したがって、ここでも、決定された実際の放射特性を所望の放射特性と比較すると、特性間の相違が求められる結果、較正のために提供されるファイバ112はさらなる使用のために取り外されることはなく、むしろエラーメッセージが出力される。
【0048】
例として、選択された治療法又は治療シナリオが、半径方向に放射する導光ファイバ112が用いられることを規定しているが、放射特性が図2のa)に従って決定される場合、本発明によれば、導光ファイバ112は同様に、さらなる使用のために取り外されることはないであろう。これと同様に、正面に放射する導光ファイバ112を必要とする応用例では、図2のb)に基づく放射特性を検出すると、導光ファイバ112は同様に、さらなる使用のために取り外されることはないであろう。
【0049】
既に上述したように、半径方向に放射する導光ファイバ112の放射領域の長さは、応用シナリオに応じて異なってよい。この場合、位置決め装置110は、導光ファイバ112の半径方向に放射する領域の異なる長さに合わせて位置決め装置を用いることが可能になるように構成されることが好ましい。半径方向に放射する異なる長さの領域を有する導光ファイバ112の区別が、ファイバ112に結合される光パワーを考慮して可能になる。
【0050】
例として、2ワットの入力パワーが、半径方向に2cmの長さにわたって電磁放射を分離する導光ファイバ112に結合されるようになっている場合、これにより、ファイバから異なる空間方向に分離し、また較正ポート108のフォトダイオード114で測定される光パワーの比に関して、特定の放射特性がもたらされる。しかしながら、2ワットの入力パワーの場合、半径方向に4cmの長さにわたって電磁放射を分離するファイバが、例えば、光源104に誤って接続された場合、ファイバから出てくる強度は、実際に想定されるファイバの期待値に対応しないであろう。したがって、エラーメッセージが医療装置102によって出力されるであろう。
【0051】
しかしながら、半径方向に放射する領域がより短い又はより長いファイバでは、半径方向に分離した同じ比の光パワー又は強度を、較正ポート108のフォトダイオード114で測定することが可能である。しかしながら、このために、半径方向に放射する領域がより短い場合には、より低い入力パワーが、又は半径方向に放射する領域がより長い場合には、より高い入力パワーが、導光ファイバ112に結合される必要があるであろう。したがって、ファイバから分離した光パワーの比が、おそらく異なるファイバタイプによって異なることはないが、ファイバタイプの区別が依然として、ファイバに結合された光パワーを考慮すると可能である。
【0052】
図3は、医療装置の光源を較正する、本発明による方法のフロー図を示す。例として、図1に図示するシステム100が、このために用いられ得る。最初の方法の段階200では、まず導光ファイバ112が医療装置102の較正される光源104に接続される。さらに、図2に図示した位置決め装置110が、例えば段階202において、医療装置102の較正ポート108に挿入される。ここで、較正ポート108は、必ずしも医療装置102において具現化される必要はなく、むしろ、較正ポート108は、較正ポート108により決定された実際の放射特性を医療装置102に伝達することが可能なように、対応するデータ接続を介して医療装置102に接続される別個の構成部品であってもよいことに留意されたい。
【0053】
導光ファイバ112が光源104に接続され、また位置決め装置110が較正ポート108に挿入された後に、方法の段階204では、導光ファイバが位置決め装置の受容チャネルに導入される。このために、位置決め装置110は、較正ポート108から突出する第1の端部側に漏斗状の経路を有することが好ましく、その結果、ファイバに設けられた位置決め装置のチャネルに、導光ファイバ112を容易に導入することができる。この場合、ファイバ112は、停止するまで位置決め装置110に導入する必要がある結果、導光ファイバ112のそれぞれの放射領域が、対応する領域又は位置決め装置110のカットアウト118の領域に位置するようになる。そうでなければ、正しく選択された導光ファイバ112と位置決め装置との組み合わせにもかかわらず、誤った放射特性がおそらく決定されるであろう。
【0054】
例えば、操作要素106を介して、対応する医療装置102の動作によりトリガされる方式では、段階206において、規定の光パワーを有する電磁放射が光源104で発生し、対応するファイバ接続を介して導光ファイバ112に結合される。この場合、導光ファイバ112に結合される放射線は、較正ポートの領域内で導光ファイバ112の対応する領域から分離する結果、方法の段階208において、較正ポート108の領域内で導光ファイバ112から分離した光パワーの空間放射特性は、較正ポート108のフォトダイオード114によって実際の放射特性として決定され得る。
【0055】
その後、導光ファイバ112の所望の放射特性が段階210で決定される。この場合、例として、医療装置102が、所望の種類の治療の指示に基づいて、どのタイプの導光ファイバ112が光源104に接続されるかを規定できるようになっている。この場合、所望の放射特性は、用いられるファイバタイプについての情報に基づいて選択される。あるいは、導光ファイバ112自体も、識別機能、例えば、光源104と導光ファイバ112との間の接続部で、対応する読み取り機によって読み取られるRFIDチップを備えることができる。この場合、医療装置102は、どの導光ファイバ112又はどのファイバタイプが光源104に接続されたかを独自に判定することができる。
【0056】
次に、所望の放射特性は、判定されたファイバタイプに基づいて確認され、例えば、医療装置102において利用できる状態を保った記憶媒体から読み出すことができる。
【0057】
その後の方法の段階212では、決定された実際の放射特性は決定された所望の放射特性と比較される。ここで、実際の放射特性が所望の放射特性に対応すると判定された場合、導光ファイバ112はさらなる使用のために取り外される。これは、方法の段階214で行われる。この場合、所望の放射特性に対する実際の放射特性の対応関係は、許容範囲を考慮して決定することができる結果、所望の放射特性及び実際の放射特性は同一である必要はなく、一定の許容範囲内で対応することが意図されている。導光ファイバのさらなる使用は、例えば、患者の直接的な治療であってよく、又は導光ファイバに結合される光パワーは、導光ファイバから分離した強度が治療に必要な強度に対応するように、前もって適合されてよい。
【0058】
一方、段階212で、実際の放射特性が所望の放射特性に対応しない、すなわち、実際の放射特性がおそらく存在する許容範囲の外側にあると判定された場合、エラーメッセージが段階216で出力され、上記エラーメッセージは、ファイバ112の較正に成功しなかったことを示す。この場合、エラーメッセージは、例えば、誤ったファイバタイプ若しくは誤った位置決め装置110が用いられたこと、又は結合された所与の光パワーに対して、導光ファイバ112から出てくる光パワーが明らかに低すぎる(このことは、導光ファイバ112又はファイバ入力結合の欠陥を示し得る)、若しくは明らかに高すぎる(このことは同様に、欠陥、又は半径方向に放射する導光ファイバ112の領域の誤って選択された長さを示し得る)ことも示すことができる。この場合、エラーメッセージは、対応する情報を含むことができる。
【0059】
複数の導光ファイバ112を用いて、それぞれが医療装置の光源104に接続されると、上述した方法は、これらのファイバ112のそれぞれに対して個々に繰り返され得る。この場合、1つの実施形態によれば、既に取り外されたファイバ112が、較正後に、人に見えるスペクトルの範囲の光を放射し続けることができるようになっている。その結果、ユーザは、ファイバ112が既に較正されているかどうかを容易に認識することができる。
【0060】
本発明は、上述した複数の実施形態のうちの1つに限定されることはなく、むしろ、多様な方法で修正可能である。
【0061】
これに関しては、3つのフォトダイオード114の代わりに、実質的に任意の数のフォトダイオード114が較正ポート108にあってもよいようになっており、これらのフォトダイオードは、較正ポート内に任意に配置できる。この場合、多数のフォトダイオード114によって、導光ファイバ112の空間放射特性のより良好な又はより正確な検出がもたらされ得る。
【0062】
さらに、フォトダイオード114は、例えば、CCD又はCMOSセンサなどの他のセンサ手段にも置き換えられ得る。そのようなセンサを用いると、例えば、位置決め装置から出てくる電磁放射の詳細な画像を判定することが可能になり、較正プロセスの過程で現在用いられているファイバタイプは、同様に、この画像から判定することができる。
【0063】
基本的に2つの種類の位置決め装置110、すなわち、半径方向に電磁放射を放射できるもの、又は長手方向に電磁放射を放射できるものが提供されることがさらに上述されている。しかしながら、本発明との関連で、両方の放射方向に同時に好適な位置決め装置110を用いることが実際には可能である。位置決め装置110は、位置決め装置に配置された導光ファイバ112の空間放射特性が決定できるように作られるだけでよい。
【0064】
構造的な詳細と空間配置と方法の段階とを含む、特許請求の範囲と本明細書と図面とから明らかな全ての特徴及び利点は、それ自体と様々な組み合わせとの両方で本発明に不可欠なものであり得る。
【符号の説明】
【0065】
100:システム
102:医療装置
104:光源
106:操作要素
108:較正ポート
110:位置決め装置
112:導光ファイバ
114:フォトダイオード
116:ファイバコア
118:カットアウト
120:ファイバクラッド
図1
図2a)】
図2b)】
図2c)】
図2d)】
図3