(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】キャビネット
(51)【国際特許分類】
A47F 7/00 20060101AFI20221220BHJP
E05D 13/00 20060101ALI20221220BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20221220BHJP
E05F 3/00 20060101ALI20221220BHJP
A47F 3/00 20060101ALI20221220BHJP
A47F 5/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A47F7/00 N
E05D13/00 A
E05D15/06 124Z
E05F3/00 Z
A47F3/00 Z
A47F5/00 Z
(21)【出願番号】P 2019065202
(22)【出願日】2019-03-29
【審査請求日】2022-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000137959
【氏名又は名称】株式会社ムラコシ精工
(74)【代理人】
【識別番号】100167863
【氏名又は名称】大久保 恵
(72)【発明者】
【氏名】吉次 徹
(72)【発明者】
【氏名】横山 辰朗
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-021067(JP,U)
【文献】特開2016-169515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 3/00-7/00
E05D 13/00、15/06
E05F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、
キャビネット本体部には、前記開閉扉の下側を受ける下部ガイドレールが設けられ、前記開閉扉の下側には、上下方向に伸張して、前記下部ガイドレールとの係合を維持する脱輪防止ブロックが取り付けられ
、
前記脱輪防止ブロックは、前記開閉扉の下側に取り付けられる固定部と、前記固定部に対して下側に移動するスライド部とを有し
、
前記下部ガイドレールには、開閉方向に連続して延びる突条部が設けられ、前記スライド部の下面には、前記突条部と係合する係合溝が形成されており、
前記突条部は、その断面形状が円弧状に形成されてい
るとともに、前記係合溝は、前記突状部と曲面で接しながら前記開閉扉が開閉方向へ摺動するように円弧状に形成されていることを特徴とするキャビネット。
【請求項2】
前記開閉扉を開閉方向のいずれかへ引き込むクローザーが設けられていることを特徴とする
請求項1に記載のキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセットした位置に取り付けられた開閉扉を開閉させて物品を収納するキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの食品店舗では、商品を取り出す開口部分を斜めに形成するとともに、商品を陳列する下側の棚部の棚面積を広く確保したキャビネット(食品陳列什器、ショーケースなどともいう)が使用されている。このような食品陳列什器では、利用者が棚部に置かれた商品が見易く、かつ商品を取り出し易いという点で利便性がある。
【0003】
このような食品陳列什器では、食品の衛生状態を保つために、斜めに形成された開口部分を覆うようにして透明の傾斜扉(開閉扉)が設けられることがある。この開閉扉は、本体部に取り付けられた状態で、上部ガイドレールから手前方向へ斜め下側に延びるようにして、平板状、L字形状、或いは曲面状などに形成されている。すなわち、開閉扉は、上部ガイドレールに対して開閉扉の重心が手前側にオフセットした(ずらした)位置に配置されることになる。開閉扉は、この上部ガイドレールに沿って傾斜したままの状態で開閉方向(開口を正面に見て左右方向)に移動できるようになっている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0004】
一方、開閉扉の下側には、特許文献3(特に、
図2、
図4(b)参照)に示すように、
ローラー(戸車)が設けられている。このローラーは、食品陳列什器の下側の棚部の上に載せられて、開閉方向に転動する構造が一般的に用いられている。この構造であれば、部品点数が少なく、安価な製品を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-206640号公報
【文献】特開2009-131435号公報
【文献】特開2012-196313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した食品陳列什器では、清掃の際、或いはタイムセールなどの繁忙時に、開閉扉が着脱できることが好ましい。そのため、この開閉扉は、店員が開閉扉を上側に持ち上げることで上部ガイドレール部分との係合を解除して、取り外せるようにしている。
一方、商品を棚から取り出そうとする利用者が開閉扉を開閉しようとする場合、どの程度の力で開閉すればよいのか勝手が分からず、強い力で動かそうとするときがある。そうすると、開閉扉の上側部分の移動速度と下側部分の移動速度がずれる(速度差が発生する)ことで開閉扉が傾き、下ローラーが浮き上がってしまう。特に、重心が下部ガイドレールの真上にない開閉扉の場合には、浮き上がると開閉扉が前後にずれて脱輪するおそれがあった。これに対し、ローラーの浮き上がりを防止する構造も考えられるが、下側の構造が複雑で高価なものになってしまう。また、開閉扉の着脱作業が容易に行えなくなってしまうというデメリットがある。
【0007】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、開閉扉を容易に着脱することができ、利用者が強い力で開閉したとしても、開閉扉の下側が外れにくいキャビネットを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明は、開閉扉の上部を支持する上部ガイドレールを有し、前記上部ガイドレールよりも手前側にオフセットした位置に前記開閉扉が取り付けられるキャビネットであって、 キャビネット本体部には、前記開閉扉の下側を受ける下部ガイドレールが設けられ、前記開閉扉の下側には、上下方向に伸張して、前記下部ガイドレールとの係合を維持する脱輪防止ブロックが取り付けられ、前記脱輪防止ブロックは、前記開閉扉の下側に取り付けられる固定部と、前記固定部に対して下側に移動するスライド部とを有し、前記下部ガイドレールには、開閉方向に連続して延びる突条部が設けられ、前記スライド部の下面には、前記突条部と係合する係合溝が形成されており、前記突条部は、その断面形状が円弧状に形成されているとともに、前記係合溝は、前記突状部と曲面で接しながら前記開閉扉が開閉方向へ摺動するように円弧状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、前記開閉扉を開閉方向へ引き込むクローザーを設けることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るキャビネットは、キャビネット本体部には、前記開閉扉の下側を受ける下部ガイドレールが設けられ、前記開閉扉の下側には、上下方向に伸張して、前記下部ガイドレールとの係合を維持する脱輪防止ブロックが取り付けられているので、開閉扉の開閉時に不必要に上側への力が作用したとしても、脱輪防止ブロックが下部ガイドレールとの係合を維持するので、開閉扉が簡単に外れない構造にすることができる。一方、清掃時などには、開閉扉を所定の高さ以上に持ち上げることで脱輪防止ブロックと下部ガイドレールとの係合を外して、開閉扉を容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態に係る食品陳列什器であって、傾斜扉を有する食品陳列什器の全体を示す斜視図である。
【
図2】
図1の状態から、右側の傾斜扉を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図3】
図2の状態から、さらに左側の傾斜扉を取り外した状態であって、本体部のみを示す斜視図である。
【
図5】下部ガイドレールに傾斜扉が取り付けられた状態を示す側面図である。
【
図6】下部ガイドレールを単体で示す斜視図である。
【
図7】(A)は下部ガイドレールの平面図、(B)は(A)を下側から見た底面図である。
【
図10】脱輪防止ブロックの斜視図であって、(A)は正常状態、(B)は伸展状態である。
【
図12】脱輪防止ブロックと突条部との係合状態を示す側面図であって、(A)は正常状態、(B)は上側に力が作用した状態を示す。
【
図13】脱輪防止ブロックと突条部との係合状態を示す側面図であって、(A)は後側に力が作用した状態、(B)は前側に力が作用した状態を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1(キャビネット)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、開閉扉3が上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置にある一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有するキャビネットについて説明する。
【0015】
ここで、本明細書でいう「オフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネット」とは、一般的な引き戸のように上部ガイドレールの真下に開閉扉が吊り下げられるものとは異なり、上部ガイドレールよりも手前側で開閉扉が吊り下げられるタイプのキャビネットをいうものとする。より詳細には、開閉扉の重心が上部ガイドレールよりも手前側に位置し、吊り下げられた状態で上部ガイドレールに斜め方向の荷重が作用するタイプのキャビネットである。
また、「開閉扉が傾き」とは、開閉扉を強い力で動かしたときに、上部ガイドレールに沿って開閉方向に移動する開閉扉の上側部分と、下部ガイドレールに沿って開閉方向に移動する開閉扉の下側部分との移動速度がずれる(速度差が発生する)ことで、開閉扉が開閉方向に対して傾くことをいう。
【0016】
図1は、傾斜扉3を有する食品陳列什器1の全体を示す斜視図である。また、
図2は、
図1の状態から、右側の傾斜扉3aを取り外した状態を示し、
図3は、さらに左側の傾斜扉3bを取り外した状態であって、キャビネット本体2のみを示す斜視図である。さらに、
図4は、
図3のキャビネット本体2の分解斜視図である。
【0017】
なお、本実施の形態で使用する前後、左右、上下方向とは、
図1で示す方向をいうものとする。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0018】
食品陳列什器1は、
図1~
図4に示すように、食品陳列什器本体部2(以下、本体部2という)の前側に、傾斜した構造の開口部が設けられており、この開口部を覆うようにして2枚の傾斜扉3(
図1の右側に位置する前側扉3a、左側に位置する後側扉3b)が取り付けられている。より詳細には、本体部2の前側部分は、下側から上側に向かうに従い、後側へ斜めに傾斜するように形成されており、この傾斜面が開口している。また、傾斜扉3も同様に、本体部2に取り付けられた状態で、傾斜扉3の上側が下側よりも後側に位置するように傾斜した状態になる。
【0019】
なお、これらの前側扉3aおよび後側扉3bは、いわゆる引き戸タイプの扉であり、左右方向に移動させることでそれぞれ開閉できるようになっている。また、この傾斜扉3は、アクリルまたはガラスなどの透明な材質で形成されており、閉じた状態で本体部2の内部が見えるようになっている。
【0020】
本体部2は、その上側に、上部ガイドレール10が取り付けられている。この上部ガイドレール10は、開閉方向の左右の全長に亘って設けられている。また、この上部ガイドレール10の内部には、
図2~
図4に示すように、上部ガイドレール10に沿って開閉方向に移動可能な取付金具11a、11bが設けられている。この取付金具11a、11bは、図示しない移動ローラーを有し、上部ガイドレール10内をスムーズに移動できるようになっている。なお、上部ガイドレール10の上側には、
図4に示すように、上部ガイドレール10と傾斜扉3の隙間を隠すための化粧板12が取り付けられる。
【0021】
また、本体部2は、その下側に、商品を陳列するための棚部4が設けられている。この棚部4は、上部ガイドレール10よりも手前側まで延びており、棚部4の棚面積を広く確保している。これにより、棚部4に陳列される商品が見やすく、かつ、出し入れし易くしている。
【0022】
さらに、棚部4の前側には、
図1~
図4に示すように、下部ガイドレール20が取り付けられている。この下部ガイドレール20も上部ガイドレール10と同様に、開閉方向の左右の全長に亘って設けられている。なお、下部ガイドレール20の構造については、詳細を後述する。
【0023】
前側扉3aは、
図2に示すように、上側に持ち上げることで本体部2から取り外せるようになっている。より詳細には、前側扉3aの上側部分は、上述した取付金具11a、11aの上に置かれて、図示しない固定具によって固定される。この固定具は、ねじ止めなどで強固に取り付けると前側扉3aの着脱が容易に行えないため、横スライドなどの簡単な構造で着脱できるようにしている。
【0024】
また、前側扉3aの下側部分は、下部ガイドレール20上にローラーを介して置かれている。これらにより、前側扉3aは、取付金具11a、11aが上部ガイドレール10に沿って開閉方向へ移動することで、取り付けられた前側扉3aも開閉方向へ自由に移動できるようになる。
【0025】
なお、後側扉3bの上側部分および下側部分も前側扉3aと同様な構造であり、上側に持ち上げることで本体部2から取り外すことができ、かつ、開閉方向へ自由に移動できる。
【0026】
図5は、下部ガイドレール20に傾斜扉3が取り付けられた状態を示す側面図である。また、
図6は、下部ガイドレール20を単体で示す斜視図である。また、
図7(A)は下部ガイドレール20の平面図、
図7(B)は
図7(A)を右側から見た右側面図である。
【0027】
下部ガイドレール20は、
図5~
図7に示すように、長手方向と垂直な面で切断した断面が、上側が開口する略コ字形状に形成されている。より詳細には、棚部4の前側上面に取り付けられる取付面部21と、この取付面部21の前側から下側に延びる後壁部22と、後壁部22の下端から前側に延びる底面部23と、底面部23の前側から上方へ延びる前壁部24とで構成されている。この底面部23には、
図6および
図7(A)に示すように、左右方向の両端部に切欠き部25がそれぞれ形成されている。
【0028】
取付面部21は、
図5に示すように、棚部4の上面とほぼ面一になるように取り付けられ、段差のない構造になっている。また、後壁部22は、棚部4の前側端面と面で接しており、下側に作用する力をこの棚部4でも受けられるようにしている。
【0029】
底面部23には、
図5~
図7に示すように、2つの突条部26が形成されている。この2つの突条部26は、下部ガイドレール20の左右方向に亘って連続しており、かつ、前後方向に所定の間隔を空けて配置されている。また、突条部26は、その断面形状が円弧状に形成されている(
図5および
図12,
図13参照)。
【0030】
この突条部26には、
図5に示すように、前側扉3aおよび後側扉3bの下部に設けられた受けローラー30(
図9参照)が上側から載せられて、この突条部26に沿って開閉方向へと移動するようになっている。詳細には、前側扉3aの受けローラー30が前側の突条部26上を移動し、後側扉3bの受けローラー30が後側の突条部26上を移動する。
【0031】
図8は、傾斜扉3の下部の拡大斜視図である。また、
図9は、受けローラー30の単体の斜視図、
図10は、脱輪防止ブロック40の斜視図であって、(A)は正常状態、(B)は伸張した状態を示している。さらに、
図11は、脱輪防止ブロック40の分解斜視図である。
【0032】
傾斜扉3の下側には、
図8に示すように、左右方向に亘って連続する下桟5が設けられている。この下桟5の断面形状は、
図5に示すように、下側が開口する逆U字形状に形成されている。このU字状の内部には、
図8に示すように、左右方向の両端部に受けローラー30が取り付けられ、中央部に脱輪防止ブロック40が取り付けられる。なお、脱輪防止ブロック40の取付位置、個数などは、例えば、受けローラー30の横側にそれぞれ設けるなど、傾斜扉3の形状や大きさなどに鑑みて適宜変更して設けることができる。
【0033】
受けローラー30は、
図9に示すように、取付板31と、この取付板31に固定されたローラー部32とで構成されている。取付板31の両端には、2つの取付穴31aが設けられており、下桟5の逆U字状の天井部分にねじによって取り付けられる。ローラー部32には、前後方向に延びる回転軸33を中心に自在に回転するローラー34が取り付けられている。
【0034】
脱輪防止ブロック40は、
図10(A)、
図10(B)および
図11に示すように、上側に位置する固定部41と、下側に位置するスライド部42とで構成されている。この固定部41は、内側が中空形状になっており、下側の開口からスライド部42が挿入され、固定部41に対しスライド部42が上下に移動する。
【0035】
固定部41は、略T字形状に形成されており、その上側に2つの取付穴41aが設けられている。この取付穴41aには、受けローラー30と同様に、ねじによって下桟5の逆U字形状の天井部分に取り付けられる。また、固定部41には、正面から見て上下方向に延びる2つの長穴43が形成されている。この長穴43は、左右方向に間隔を空けて配置されており、内部の中空部分を挟んで前後方向に貫通する態様で設けられている。
【0036】
スライド部42は、
図11に示すように、略直方体形状に形成されている。このスライド部42の前後および左右の4箇所には、上下方向に延在し、外側方向に突出する案内突部49がそれぞれ設けられている。この4つの案内突部49は、固定部41の中空内部に形成された4つの案内溝(図示せず)に入り込み、スライド部42が固定部41に対してスムーズに上下移動できるようにしている。
【0037】
スライド部42には、左右に2つの挿通穴44が形成されている。この挿通穴44は、固定部41の長穴43と対応する位置にあり、固定部41にスライド部42を挿入した状態で、長穴43と挿通穴44にピン45が挿入される。これにより、スライド部42は、長穴43の長さの範囲内で、
図10で示すL1寸法からL2寸法まで上下に移動する(伸張する)ことができるようになる。
【0038】
また、スライド部42の上面には、円柱状に上方へ突出する3つのばね受け47が設けられている。このばね受け47には、上下方向に伸縮する3つのコイルばね46がそれぞれ取り付けられる。このコイルばね46によって、スライド部42は固定部41に対して、常に下側へと付勢された状態になる(
図10(B)参照)
【0039】
さらに、スライド部42の下面には、左右方向の両端部まで連続して延びる係合溝48が形成されている。この係合溝48は、
図5に示すように、下から上へ凹んだ形状になっており、その断面形状における溝の上部が円弧状になっている。この円弧形状の径は、上述した下部ガイドレール20の突条部26の円弧状の径とほぼ等しく形成されており、傾斜扉3を開閉する際に、この係合溝48が突条部26と曲面で接しながら開閉方向へと摺動する。
【0040】
なお、
図5に示すように、受けローラー30のローラー34にも、その外周面に周方向に沿って同じ形状の溝が設けられている。これにより、ローラー34は、突条部26と曲面で接しながら回転するようになっている。
【0041】
次に、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1の動作・作用について詳細に説明する。
図12および
図13は、脱輪防止ブロック40が下部ガイドレール20の突条部26と係合している各種状態を示している。なお、図を簡易にするために、
図12および
図13では、下部ガイドレール20と前側扉3aに取り付けられる脱輪防止ブロック40のみを表示し、後側の突条部26上を移動する脱輪防止ブロック40は省略して記載する。また、後側扉3bに取り付けられる脱輪防止ブロック40も、前側扉3と同じ動作・作用であるため、その詳細な説明を省略する。
【0042】
図12(A)に示すように、脱輪防止ブロック40は、下部ガイドレール20の突条部26に係合溝48を係合させて取り付けられる。このとき、脱輪防止ブロック40は、傾斜扉3の自重によってコイルばね46が押し込まれ、スライド部42が固定部41内に入り込んだ状態になる(
図10(A)の状態)。食品陳列什器1の利用者が傾斜扉3を開閉するときは、正常な動作ではこの状態で開閉方向へ移動することになる。
【0043】
一方、傾斜扉3はその重心が上部ガイドレール10よりも前側に位置するため、利用者が傾斜扉3を開閉する際に、一般的な引戸とは違い、傾斜扉3に上方或いは前後方向に不必要な力を作用させてしまうことがある。以下では、このような場合について説明する。
【0044】
傾斜扉3を傾ける力が作用した場合、受けローラー30は、傾斜扉3と一緒に上側に持ち上げられて、突条部26との係合が外れてしまう。一方、脱輪防止ブロック40のスライド部42は、コイルばね46の付勢力によって押し下げられ、
図12(B)に示すように、突条部26と係合溝48との係合が外れないようになる。そのため、上側へ作用する力がなくなって傾斜扉3が下側へ戻ったときに、脱輪防止ブロック40が正常状態(L1寸法)に収縮するとともに、受けローラー30が前後にずれずに再び突条部26と係合する元の状態(脱輪しない状態)に戻ることになる。すなわち、傾斜扉3が不用意に突条部26のガイドから外れることがない。
【0045】
また、店員が傾斜扉3を外そうとする場合には、脱輪防止ブロック40が上下にスライドする寸法L2以上に傾斜扉3を上側へ持ち上げることで、従来と同等に容易に取り外すことができる。
【0046】
また、傾斜扉3が傾いて後側へ押し出す力が作用した場合、
図13(A)に示すように、突条部26と係合溝48とは係合したまま、脱輪防止ブロック40が突条部26の円弧形状に沿って後側へ傾くことで力を逃がすようになる。そのため、押し出す力に対して、脱輪防止ブロック40が突条部26のガイドから外れることがない。また、スライド部42の係合溝48の前後には、角部がR面取りされており、脱輪防止ブロック40が前後に傾いた際に、下部ガイドレール10と干渉することを防止している。
【0047】
なお、
図13(B)に示すように、傾斜扉3を前側に引く力が作用した場合も同様に、脱輪防止ブロック40が突条部26の円弧形状に沿って前側へ傾くようになり、引く力に対して、脱輪防止ブロック40が突条部26のガイドから外れることがない。また、前後方向の力に対しては、受けローラー30も同様に、円弧形状に沿って傾くようになり、突条部26のガイドから外れることがない。
【0048】
次に、下部ガイドレール20の作用について説明する。
下部ガイドレール20は、
図5および
図12、
図13に示すように、棚部4の上面よりも一段低い位置で傾斜扉3の下側を下側から覆う、いわゆる樋のような構造になっている。この構造であれば、傾斜扉3の下側がこの下部ガイドレール20を越えて前後に外れないようになるため、より安全性が高められる。
【0049】
また、一段低い位置で受けることで、傾斜扉3の下桟5が下部ガイドレール20内に収まるようにしている。すなわち、下桟5は不透明であるため、棚部4と同じ高さで受けるようにすると、下桟5によって棚部4の手前側に死角ができてしまう。そのため、商品名を記載したプレートなどを手前側に置くことができない。これに対し、本実施形態の構造では、下桟5による死角が極力なくなるようにしているので、棚部4の手前側に死角ができず、棚部4をより広い面積で使用できるようになる。
【0050】
さらに、棚部4の上面と下部ガイドレールとの間に段差などを設けていない構造であるため、棚部4の上面に落ちた屑(例えば、食品のカスや、ゴミなど)を下部ガイドレール20の底面部23に掃き落とすようにすることができる。これにより、清掃が簡単で、棚部4の上面を常にきれいに保つことができる。なお、底面部23に掃き落とされた屑は、底面部23に形成された切欠き部25(
図7(A)参照)から排出できるようになっている。
【0051】
本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1によれば、傾斜扉3の上部を支持する上部ガイドレール10を有し、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に傾斜扉3が取り付けられ、キャビネット本体部2には、傾斜扉3の下側を受ける下部ガイドレール20が設けられ、傾斜扉3の下側には、傾斜扉3が傾いたときに、上下方向に伸張して、下部ガイドレール20との係合を維持する脱輪防止ブロック40が取り付けられているので、傾斜扉3の開閉時に不必要に傾ける力が作用したとしても、脱輪防止ブロック40が下部ガイドレール20との係合を維持するので、傾斜扉3が簡単に外れない構造にすることができる。一方、清掃時などには、傾斜扉3を所定の高さ以上に持ち上げることで脱輪防止ブロック40との係合を外して、傾斜扉3を容易に取り外すことができる。
【0052】
また、脱輪防止ブロック40は、傾斜扉3の下側に取り付けられる固定部41と、固定部41に対して下側に移動するスライド部42とを有しているので、スライド部42を上下に誘導する簡単な構造で、脱輪防止ブロック40を上下に方向に伸縮させることができる。
【0053】
さらに、下部ガイドレール20には、開閉方向に連続して延びる突条部26が設けられ、スライド部42の下面には、突条部26と係合する係合溝48が形成されており、突条部26は、その断面形状が円弧状に形成されているので、傾斜扉3の開閉時に不必要に前後方向への力が作用したとしても、円弧形状の突条部26を支点にして脱輪防止ブロック40が前後方向に傾いて、その力を受けるようにすることができる。これにより、脱輪防止ブロック40が突条部26から外れ難くすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態に係る傾斜扉を有するキャビネットについて述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0055】
例えば、本実施の形態では、上部ガイドレール10よりも手前側にオフセットした位置に開閉扉が取り付けられるキャビネットの一例として、傾斜した開口部を覆うようにして取り付けられた傾斜扉3を有する食品陳列什器1について説明したが、これに限定されない。例えば、特許文献2、3で開示されているような略L字形状、曲面形状に形成された開閉扉を有するキャビネットであっても、開閉扉がオフセットした位置に取り付けられるものであれば同様の課題が発生するので、本発明の効果を奏するようになる。
【0056】
また、本実施の形態では、キャビネットの一例として食品陳列什器1について説明しているが、扉がオフセットした位置に取り付けられて使用されるものであれば、書類棚、保管棚など、種々のものに使用することができる。
【0057】
さらに、本実施の形態では、脱輪防止ブロック40において、スライド部42をコイルばね46で下側に付勢して移動させる構成であるが、これに限定されない。例えば、スライド部42の重量を重くし或いは重りを付加してスライド部42が自重で下側に移動するようにしてもよい。すなわち、傾斜扉3を上側に持ち上げたときに、スライド部42が下側に移動する構造であれば、従来の一般的な技術を適用してこれを実現することができる。
【0058】
また、本実施の形態では、下部ガイドレール20側に突出する突条部26を設け、脱輪防止ブロック40側に、突条部26と係合する係合溝48が設けられているが、突条部26と係合溝48の凹凸がそれぞれ逆に構成されていてもよい。この場合でも、傾斜扉3が傾けられたときに、適宜対応することができる。
【0059】
一方、本実施形態の食品陳列什器1には、傾斜扉3を開閉方向に移動させるクローザーが設けられることがある。このクローザーとは、傾斜扉3が半開きのときに、閉じた状態まで強制的に移動させたり、強い力で閉じようとしたときにその力を緩衝するためのものである。食品陳列什器では、内部の衛生を保つために傾斜扉3を閉じた状態に保つことは有用であり、近年では需要が増えている。
【0060】
このクローザーを、オフセットした開閉扉を有する食品陳列什器1に取り付けると、上下のローラーに速度差が生じやすくなり、傾斜扉3が傾くおそれがある。そして、傾斜扉3は重心が下部ガイドレール20上にないために、脱輪しやすくなる。そのため、クローザーを取り付けた食品陳列什器1に脱輪防止ブロック40の構造を適用すれば、クローザーの動作の確実性をさらに高めることになる。
【符号の説明】
【0061】
1 食品陳列什器(キャビネット)
2 食品陳列什器本体(本体部)
3 傾斜扉(開閉扉)
3a 前側扉
3b 後側扉
4 棚部
5 下桟
10 上部ガイドレール
11a、11b 取付金具
12 化粧板
20 下部ガイドレール
21 取付面部
22 後壁部
23 底面部
24 前壁部
25 切欠き部
26 突条部
30 受けローラー
31 取付板
31a 取付穴
32 ローラー部
33 回転軸
34 ローラー
40 脱輪防止ブロック
41 固定部
42 スライド部
43 長穴
44 挿通穴
45 ピン
46 コイルばね
47 ばね受け
48 係合溝
49 案内突部