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特許7197095官能基の着脱を利用したグラフェンナノ細孔の形成方法及びそれによって形成されたグラフェンナノ細孔を有するグラフェンシート
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  • 特許-官能基の着脱を利用したグラフェンナノ細孔の形成方法及びそれによって形成されたグラフェンナノ細孔を有するグラフェンシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】官能基の着脱を利用したグラフェンナノ細孔の形成方法及びそれによって形成されたグラフェンナノ細孔を有するグラフェンシート
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20221220BHJP
【FI】
C01B32/194
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021089298
(22)【出願日】2021-05-27
(65)【公開番号】P2022180266
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0065950
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521230355
【氏名又は名称】株式会社エスグラフェン
(73)【特許権者】
【識別番号】521081975
【氏名又は名称】ソウル ナショナル ユニヴァーシティ アール アンド ディービー ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】イ グァンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジ ウンジ
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/105559(WO,A1)
【文献】特開2018-118884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00
JSTPlus/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンシートにナノ細孔を形成するためのグラフェンナノ細孔の形成方法であって、
(a)グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップと、
(b)前記官能基が結合された領域が形成されたグラフェンシートを加熱し、前記官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップと、を含み、
前記ステップ(a)は、フッ素(F)を含む活性化気体をグラフェンシートと反応させて前記官能基が結合された領域を形成させることにより行われ、
前記ステップ(a)において、半導体性触媒または金属性触媒を共に利用することを特徴とする、グラフェンナノ細孔の形成方法。
【請求項2】
前記半導体性触媒が、シリコンウェハ(Si wafer)の片であることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンナノ細孔の形成方法。
【請求項3】
前記フッ素(F)を含む活性化気体は、XeF、CF、及びSFからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項に記載のグラフェンナノ細孔の形成方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)の圧力は0.2乃至3Torrであることを特徴とする請求項に記載のグラフェンナノ細孔の形成方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)が行われる圧力または反応時間に形成されるナノ細孔のサイズ、形状、または密度が調節されることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンナノ細孔の形成方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)は、不活性気体の雰囲気または真空雰囲気で50乃至500℃の温度で1乃至24時間行われることを特徴とする請求項1に記載のグラフェンナノ細孔の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能基の着脱を利用したグラフェンナノ細孔の形成方法、及びそれによって形成されたグラフェンナノ細孔を有するグラフェンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(graphene)は炭素原子が集まって形成された2次元平面(2-D plane)構造を有する物質であり、一層乃至数層に構成される。
【0003】
このようなグラフェンはグラファイトとは異なって高い強度、優れた電子移動度と熱伝導度、可視光線に対する高い光透過率を有し、多様な分野でグラフェンに関する研究が行われている。
【0004】
例えば、グラフェンの優れた原子非透過性と積層されたグラフェンフィルムの選択的原子透過性を利用して電気自動車バッテリの核心素材である分離膜と負極材に利用されるか、燃料電池の電解質膜、フィルタ、次世代半導体などにグラフェンを利用しようとする試みが活発に行われている。
【0005】
このようなグラフェンを利用した分離膜またはフィルタ製品の特性を向上させるために、グラフェンにナノ細孔を形成する。
【0006】
従来はグラフェンシートに金属原子や有機分子を蒸着させてから熱処理して穴を形成するか、プラズマまたはレーザを利用してグラフェンシートに孔を形成する方法が利用されていた。
【0007】
ところが、グラフェンシートに金属原子や有機分子を蒸着させてから熱処理して孔を形成する方法は蒸着された物質とグラフェンの化学的反応を利用するためナノサイズの孔(ナノ細孔)を形成することが難しく、その上、対面的にナノ細孔を形成することが不可能である。
【0008】
また、プラズマやレーザを利用して孔を形成する方法はナノ細孔のサイズを均一に維持することが難しく、局所部位に少量の孔しか形成することができなかった。
【0009】
結局、従来のグラフェンシートに孔を形成する方法は産業に適用するには限界がある。
【0010】
よって、グラフェンシートにナノ細孔を形成する新たな法案が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0025098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の一目的は、グラフェンシートにナノ細孔を形成するが、乾式で行うことができ、ナノ細孔のサイズ及び形状を制御することができるグラフェンナノ細孔の形成方法、及びそれによって製造されたナノ細孔を有するグラフェンを提供することである。
【0013】
一方、本発明の明示されていない他の目的は、下記詳細な説明及びその効果から容易に推論し得る範囲内で追加的に考慮されるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記説明した問題を解決するための本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法は、(a)グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップと、(b)前記官能基が結合された領域が形成されたグラフェンシートを加熱し、前記官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップと、を含む。
【0015】
一実施例において、前記ステップ(a)は、フッ素(F)を含む活性化気体をグラフェンシートと反応させて官能基が結合された領域を形成することを特徴とする。
【0016】
一実施例において、前記フッ素(F)を含む活性化気体は、XeF、CF、及びSFからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらの組み合わせであることを特徴とする。
【0017】
一実施例において、前記ステップ(a)の圧力は0.2乃至3Torrであることを特徴とする。
【0018】
一実施例において、前記ステップ(a)において、半導体性触媒または金属性触媒を共に利用することを特徴とする。
【0019】
一実施例において、前記ステップ(a)が行われる圧力または反応時間に形成されるナノ細孔のサイズ、形状、または密度が調節されることを特徴とする。
【0020】
一実施例において、前記ステップ(a)は、水素または酸素プラズマを利用して損傷なくグラフェンに官能基が結合された領域を形成することを特徴とする。
【0021】
一実施例において、前記ステップ(b)は、不活性気体の雰囲気50乃至500℃の温度で1乃至5時間行われることを特徴とする。
【0022】
前記説明した問題を解決するための本発明の他の実施例によるグラフェンシートは、ナノ細孔が形成されたグラフェンシートであって、前記ナノ細孔の角のうち少なくとも一部がジグザグ構造またはアームチェア構造を有することを特徴とする。
【0023】
他の実施例において、前記ナノ細孔の角には官能基が付くことを特徴とする。
【0024】
他の実施例において、前記ナノ細孔は、(a)グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップと、(b)前記官能基が結合された領域が形成されたグラフェンシートを加熱し、前記官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップと、によって形成される。
【0025】
前記ナノ細孔は、(a)グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップと、(b)前記官能基が結合された領域が形成されたグラフェンシートを加熱し、前記官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップと、によって形成される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法は、官能基の着脱を利用することで乾式でグラフェンシートにナノ細孔を形成することができる。
【0027】
また、グラフェンシートに作用基を結合するステップにおいて、活性化気体の種類、圧力、時間を調節することで形成されるナノ細孔の形状とサイズを調節することができるという長所がある。
【0028】
本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用する場合、グラフェンシートを透過するイオンや気体の特性やサイズに応じてグラフェンシートに形成されるナノ細孔の形状とサイズを制御することができる。
【0029】
このような本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用する場合、ナノ細孔が形成されたグラフェンシートをフィルタ(例えば、浄水用またはバイオ用)、バッテリの負極材または分離膜、燃料電池の電解質膜、次世代半導体として利用することができる。
【0030】
ここで明示的に言及されていない効果であっても、本発明の技術的特徴によって期待される以下の明細書に記載の効果及びその暫定的な効果は、本発明の明細書に記載されているように取り扱われることを付言する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法の概略的なフローチャートである。
図2】本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用してグラフェンシートにナノ細孔が形成される過程を説明するための模式図である。
図3】本発明の他の実施例によるナノ細孔が形成されたグラフェンシートのTEM画像である。
図4】本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用してナノ細孔が形成されたグラフェンシートのTEM画像であって、活性化気体の圧力と処理時間によってナノ細孔のサイズが増加することを説明するための画像である。 添付した図面は本発明の技術思想に関する理解のために参照として例示されることを明らかにし、本発明の権利範囲はそれによって制限されない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の多様な実施例が案内する本発明の構成と、その構成による効果について説明する。本発明を説明するに当たって、関連する公知機能について、本分野の技術者に自明な事項であって本発明の要旨を不明確にする恐れがあると判断される場合は、その詳細な説明は省略する。
【0033】
本特許文書において、「ナノ細孔」とは、孔径(または孔の最も長いところの長さ)が1nm以下であるか数乃至数十nmである孔を意味する。
【0034】
図1は本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法の概略的なフローチャートであり、図2は本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用してグラフェンシートにナノ細孔が形成される過程を説明するための模式図である。
【0035】
図1及び図2を参照し、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法について説明する。
【0036】
まず、グラフェンシートを設けるステップが行われる。
【0037】
本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法が適用されるグラフェンシートは制限されない。
【0038】
例えば、グラフェンパウダー、化学的気相蒸着法で制作されたグラフェン、コーティングされたグラフェンなど、形態や製造方法に関わらず本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法が適用される。
【0039】
設けられたグラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップが行われる。
【0040】
官能基が結合された領域を形成する方法としては、フッ素(F)を含む活性化気体を利用する方法と、水素または酸素プラズマを利用する方法がある。
【0041】
フッ素を含む活性化気体を利用する方法は、チェンバ内にグラフェンシートを位置させ、常温で0.2~3Torrの圧力を有する活性化気体に露出させて、グラフェンシートの表面に官能基を形成する。
【0042】
この際、フッ素(F)を含む活性化気体にグラフェンシートが露出される時間は30秒乃至600秒である。
【0043】
フッ素を含む活性化気体とグラフェンシートが反応すると、グラフェンシートの表面にフッ素官能基が形成される。
【0044】
フッ素を含む活性化気体として、XeF、CF、及びSFからなる群より選択されるいずれか一つ、またはこれらの組み合わせを利用する。
【0045】
ナノ細孔を形成するためにはグラフェンシートに官能基か一定領域を成して結合されるべきであるが、フッ素を含む活性化気体を利用する方法において、活性化気体の圧力が0.2Torr未満であれば、グラフェンシートの表面に一定領域を成すほど官能基が結合することができない。
【0046】
フッ素を含む活性化気体を利用する方法において、活性化気体の圧力が3Torr超過すれば、グラフェンシートに官能基が一定領域を形成して結合するのではなく、全体的に結合されて、熱処理してナノ細孔を形成する際にグラフェンがいずれも除去されるという問題がある。
【0047】
同じく、フッ素を含む活性化気体にグラフェンシートが露出される時間が30秒未満であれば、グラフェンシートの表面に一定領域を成すほど官能基が結合できず、600秒を超過すれば、グラフェンシートに官能基が一定領域を形成して結合するのではなく全体的に結合されるという問題がある。
【0048】
フッ素を含む活性化気体を利用する方法において、活性化気体の圧力を上げるか反応時間を長くしたら、グラフェンシートに官能基が結合される領域のサイズを増加させることができる。
【0049】
つまり、フッ素を含む活性化気体を利用する方法において、活性化気体の圧力または反応時間を調節することで、グラフェンシートに官能基が結合された領域のサイズなどを制御することができる。
【0050】
特に、本発明のグラフェンナノ細孔の形成方法において、活性化気体の圧力または反応時間を制御することで、形成されるナノ細孔の数、つまり、密度を制御することができる。
【0051】
一方、フッ素を含む活性化気体を利用する方法において、官能基の形成を助けるために、Si、Ge、Snなどの半導体性触媒を利用するか、Au、Ag、Cuなどの金属性触媒を共に利用してもよい。
【0052】
特に、活性化気体をとしてXeFを利用する場合、グラフェンシートにフッ素官能基がろくに形成されないという問題があるが、触媒としてシリコンウェハ(Si wafer)の片、ゲルマニウムウェハ(Ge wafer)の片、またはゲルマニウムパウダー(Ge powder)を共に利用することで、グラフェンシートにフッ素(F)官能基が形成される。
【0053】
水素又は酸素プラズマを利用する方法は、水素や酸素気体の存在下でプラズマを発生させて、グラフェンシートに水素または酸素の官能基を形成する。
【0054】
この際、水素と酸素の混合気体を利用してもよい。
【0055】
グラフェンシートに官能基が形成された領域を形成するステップにおいて、水素または酸素プラズマを利用することは、従来プラズマを利用して直接孔を形成していたこととは区別される。
【0056】
つまり、本発明において、水素または酸素プラズマを利用する方法は、マイルド(mild)なプラズマ技術であるリモートプラズマ(remote plasma、プラズマを遠距離で浮かべ、サンプルはプラズマと距離を置いて直接的なプラズマイオンの物理的衝撃(physical impact)を防止し、イオン化された気体との科学的反応のみが起こるようにした装備)を使用してグラフェンシートに官能基が結合された領域を形成することである。
【0057】
この際、水素または酸素プラズマを介してグラフェンシートに形成される官能基は、-H、-O-、-OH、及び-OOHからなる群より選択されるいずれか一つまたはこれらの組み合わせである。
【0058】
但し、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法においては、フッ素を含む活性化気体を利用してグラフェンシートに官能基を形成する方法や、水素または酸素プラズマを利用してグラフェンシートに官能基を形成する方法は公知の方法を利用してもよい。
【0059】
設けられたグラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップで形成される官能基は、-F、-H、-O-、-OH、及び-OOHなどの官能基である。
【0060】
最後に、官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップが行われる。
【0061】
官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成するステップは、真空または不活性気体の雰囲気で熱処理を介して行われる。
【0062】
不活性気体としては窒素やアルゴンなどを利用する。
【0063】
熱処理は、ファーネスで200乃至500℃の温度で1乃至24時間行われるか、レーザ、UV処理などを介して瞬間的に官能基が結合された領域を加熱して行われる。
【0064】
このように、官能基が結合された領域を有するグラフェンシートを真空や不活性気体の存在下で加熱すると、官能基が結合された領域のみ除去されながらグラフェンシートにナノ細孔が形成される。
【0065】
本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用する場合、グラフェンシートに孔径1nm以下のサイズでナノ細孔を形成することができる。
【0066】
また、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法のグラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップにおいて、活性化気体の種類や反応時間、圧力、温度を調節するか水素または酸素プラズマの条件を調節することで、官能基が結合された領域のサイズや形状を制御してナノ細孔のサイズ、模様、密度などを調節することができる。
【0067】
図3は、本発明の他の実施例によるナノ細孔が形成されたグラフェンシートのTEM画像である。
【0068】
図3を参照すると、本発明の他の実施例によるナノ細孔が形成されたグラフェンシートは、ナノ細孔の角のうち少なくとも一部がジグザグZZ構造またはアームチェアAC構造を有することを見て取れるが、ジグザグZZ構造は6つの炭素による六方晶系炭素構造によって形成されるか、5つの炭素と7つの炭素環が交互に形成された構造によって形成される。
【0069】
これは、従来の方法で製造されたナノ細孔の角が千切れたような不規則な形状を有することとは区別される。
【0070】
グラフェンシートにナノ細孔を形成することは、特定イオンや気体の透過のみを可能にし、その他の物質は透過できないようにするためであるが、従来のようにナノ細孔の角が千切れた形状であれば、特定イオンや気体の透過性が下がるという問題があった。
【0071】
しかし、本発明の他の実施例によるナノ細孔が形成されたグラフェンシートの場合、ナノ細孔の角のうち少なくとも一部がジグザグZZ構造またはアームチェアAC構造を有することで結晶方向のきれいな形状を有するため、このようにナノ細孔の角の状態によって特定イオンや気体の透過性が下がる問題はない。
【0072】
それだけでなく、他の実施例よるナノ細孔が形成されたグラフェンシートの場合、ナノ細孔の角にはダングリングボンド(dangling bond)に官能基(-H、-O-、-OOH、-OHなど)が付くが、ナノ細孔の角に結合された官能基によって電界効果が発生し、電荷を帯びる特定イオンの透過を加速化する効果がある。
【0073】
実施例
まず、ナノ細孔を形成するグラフェンシートを用意した。
【0074】
用意されたグラフェンシートをチェンバに位置させ、XeFをチェンバ内に流入させてグラフェンシートと反応させて、グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成した。
【0075】
グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップにおいて、1.8Torr、25℃で行われており、反応時間は60秒、180秒、300秒で行われた。
【0076】
グラフェンシートに官能基が結合された領域を形成するステップにおいて、触媒としてはシリコンウェハ(Si wafer)の片をグラフェンシートと共に位置させた。
【0077】
官能基が結合された領域が形成されたグラフェンシートをアニールファーネスに位置させ、真空雰囲気(10-4Torr)下で300℃、4時間加熱して、官能基が結合された領域を除去してナノ細孔を形成した。
【0078】
図4は、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用してナノ細孔が形成されたグラフェンシートのTEM画像であって、活性化気体の圧力と処理時間によってナノ細孔のサイズが増加することを説明するための画像である。
【0079】
図4(a)は何の処理もしていないグラフェンシートであり、図4(b)はグラフェンシートをXeF雰囲気下で1.8Torr、25℃、60秒間処理して官能基が結合された領域を形成した後、その領域を除去してナノ細孔を形成したものであり、図4(c)はグラフェンシートをXeF雰囲気下で1.8Torr、25℃、180秒間処理して官能基が結合された領域を形成した後、その領域を除去してナノ細孔を形成したものであり、図4(d)はグラフェンシートをXeF雰囲気下で1.8Torr、25℃、300秒間処理して官能基が結合された領域を形成した後、その領域を除去してナノ細孔を形成したものである。
【0080】
図4(b)に示したように、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法を利用する場合、1nm以下の直径(または長軸の長さ)を有するナノ細孔を製造することができる。
【0081】
また、図4(c)や図4(d)に示したように、官能基が結合された領域を形成する過程において、圧力や温度、反応時間を調節することで、形成されるナノ細孔のサイズ、形状、または密度を制御することができる。
【0082】
このように、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法は、フィルタや分離膜、負極材などで水、透過するイオンや気体の特性に合わせて形成されるナノ細孔のサイズと形状を制御することができるという長所がある。
【0083】
また、本発明の一実施例によるグラフェンナノ細孔の形成方法は、乾式工程で行うことができて、対面的グラフェンにも容易に適用することができるという長所がある。
【0084】
本発明の保護範囲は、これまで明示的に説明した実施例の記載と表現に限らない。また、本発明の属する技術分野における自明な変更や置換によって本発明の保護範囲が制限されないことも再度付言する。
図1
図2
図3
図4