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  • 特許-アクリル樹脂分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】アクリル樹脂分散液
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20221220BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20221220BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20221220BHJP
   C08F 20/18 20060101ALI20221220BHJP
   C08F 30/08 20060101ALI20221220BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20221220BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20221220BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20221220BHJP
【FI】
C08L71/02
C08L33/06
C08L83/04
C08F20/18
C08F30/08
C09D133/04
C09D7/65
C09D7/62
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022122789
(22)【出願日】2022-08-01
【審査請求日】2022-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105877
【氏名又は名称】サイデン化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠田 雅晴
(72)【発明者】
【氏名】小塚 淳平
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-194679(JP,A)
【文献】特開平05-194677(JP,A)
【文献】特開平05-194678(JP,A)
【文献】特開2018-016771(JP,A)
【文献】特開平08-059961(JP,A)
【文献】特公昭63-065086(JP,B2)
【文献】特開平08-253681(JP,A)
【文献】特開平04-296385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08F 2/00- 2/60
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08C 19/00- 19/44
C09D 1/00- 10/00
C09D101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として少なくとも含有するアクリル樹脂粒子(A)と、液状媒体(B)と、硬化触媒(C)と、を含むアクリル樹脂分散液であって
前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下と、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下と、を含
前記アクリル樹脂分散液の粘度は3150mPa・s以上、10400mPa・s以下である、
アクリル樹脂分散液。
【請求項2】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として少なくとも含有するアクリル樹脂粒子(A)と、液状媒体(B)と、硬化触媒(C)と、を含むアクリル樹脂分散液であって
前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下と、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下と、を含
前記アクリル樹脂分散液は、1÷(lnV÷Tc)で定義される深部硬化指数1.0~3.0を有し、
ここで、Vは25℃におけるアクリル樹脂分散液の粘度(mPa・s)であり、Tcは硬化性試験におけるアクリル樹脂分散液の指触硬化までの時間(分)である、
アクリル樹脂分散液。
【請求項3】
前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、前記側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、15質量%以下含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項4】
前記アクリル樹脂粒子(A)は、架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(A-1)を構成単位としてさらに含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項5】
前記アクリル樹脂粒子(A)は、重合性不飽和結合を2以上有する単量体を構成単位としてさらに含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項6】
前記アクリル樹脂分散液100質量%に対して、前記アクリル樹脂粒子(A)を5質量%以上、40質量%以下含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項7】
前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコール(B-3)を0質量%以上、50質量%以下含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項8】
前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、沸点が180℃以上である高沸点可塑剤(B-4)を0質量%以上、40質量%以下含む、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【請求項9】
砂利及び骨材の少なくともいずれかの固定用である、
請求項1又は2に記載のアクリル樹脂分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル樹脂分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道の軌道に用いられるバラスト(砂利及び骨材)は、バラストの飛散を防止するために、樹脂バインダーや接着剤等で固定されている。電車がバラスト軌道を通過すると、電車の荷重によりバラストが振動を受ける。これにより、樹脂バインダーや接着剤等で固定したバラストが弛緩することがある。また、近年では環境保全や安全性などの観点からVOC(揮発性有機化合物)を低減した水性塗料や水性バインダーが求められている。
【0003】
そこで、特許文献1は、VOC成分を削減した1液型であり、かつ、常温硬化性を有する砂利或いは骨材の固定用の無溶剤液状アクリル樹脂組成物を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-016771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、無溶剤液状アクリル樹脂組成物によって積み重ねたバラストを固定する際に、積み重ねたバラストそれぞれの位置によっては一部のバラストを固定できないといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、積み重ねたバラストを固定する場合においてバラストの位置に依存することなくバラストを均一に固定できるアクリル樹脂分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的を達成するために、本発明のアクリル樹脂分散液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として少なくとも含有するアクリル樹脂粒子(A)と、液状媒体(B)と、硬化触媒(C)と、を含むアクリル樹脂分散液であって、前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下と、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下と、を含み、前記アクリル樹脂分散液の粘度は3150mPa・s以上、10400mPa・s以下である
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、積み重ねたバラストを固定する場合においてバラストの位置に依存することなくバラストを均一に固定できるアクリル樹脂分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来のアクリル樹脂溶液等によって砕石を固定することで得られる硬化体を説明する図。
図2】本発明のアクリル樹脂分散液によって砕石を固定することで得られる硬化体を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。
【0011】
<アクリル樹脂分散液>
本発明のアクリル樹脂分散液は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として少なくとも含有するアクリル樹脂粒子(A)と、液状媒体(B)と、硬化触媒(C)と、を含み、液状媒体(B)は、液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下と、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下と、を含む。
【0012】
ここで、アクリル樹脂分散液が、上記で規定された液状媒体を含むことにより、アクリル樹脂分散液からなる層(以下、硬化膜)の機械的特性が向上するメカニズムを説明する。
【0013】
本発明のアクリル樹脂分散液では、アクリル樹脂粒子に多官能モノマー(例えば、AMA)を含有させ、アクリル樹脂粒子の液状媒体に対する相溶性を低下させることで、アクリル樹脂粒子を液状媒体に不溶化させている。これにより、液状媒体中に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体からなるアクリル樹脂粒子が分散している。すなわち、アクリル樹脂粒子を分散質とし、液状媒体を媒体とするコロイド液が形成される。アクリル樹脂分散液が硬化膜を形成した際に、アクリル樹脂粒子がフィラーと同様の役割を果たすため、硬化膜の機械的物性が向上する。また、アクリル樹脂粒子を微粒子化することで硬化膜に適度なゴム弾性と適度な強度を付与できる。具体的には、引張試験において、最大強度0.5MPa以上、かつ、破断伸度200%以上を満たす硬化膜が得られる。
【0014】
一方で、従来のアクリル樹脂溶液では、液状媒体中に(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体からなるアクリル樹脂粒子が相溶していた。この場合、アクリル樹脂溶液が硬化膜を形成した際に、アクリル樹脂粒子がフィラーの役割を果たせないため、硬化膜の機械的物性が大きく低下していた。
【0015】
一般的に、コロイド液の粒子は動的光散乱法等で粒子の粒子径等を測定することが可能である。しかし、本発明のアクリル樹脂分散液では、液状媒体が液状樹脂であるため、アクリル樹脂粒子の測定が困難であった。そのため、アクリル樹脂粒子が液状媒体(液状樹脂)に分散しているか否かを、アクリル樹脂分散液の外観を目視で確認して判断した。
【0016】
アクリル樹脂分散液の外観からアクリル樹脂粒子が分散しているか否かを判断する方法を説明する。例えば、液状媒体中でアクリル樹脂粒子が分散している場合には、液状媒体中に入射した可視光がアクリル樹脂粒子により散乱する。そのため、アクリル樹脂分散液の外観は乳白色を呈する。一方で、液状媒体中でアクリル樹脂粒子が分散せずに液状媒体に相溶している場合には、液状媒体中に入射した可視光はアクリル樹脂粒子によって散乱されず、透過する。そのため、アクリル樹脂溶液の外観は透明となる。なお、可視光は、波長360~830nmを有する光のことをいう。
【0017】
(液状媒体(B))
液状媒体は、アクリル樹脂粒子を分散させるための媒体のことをいう。一実施形態に係る液状媒体は、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコール(B-3)、及び沸点が180℃以上である高沸点可塑剤(B-4)の少なくともいずれかを含む。
【0018】
(ポリエーテル樹脂(B-1))
一実施形態に係る液状媒体(B)は、硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含む。一方で、一実施形態に係る液状媒体(B)は、硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を100質量%以下含む。例えば、一実施形態に係る液状媒体(B)は、液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下、好ましくは60質量%以上、100質量%以下、より好ましくは70質量%以上、100質量%以下含む。
【0019】
液状媒体が上記範囲のポリエーテル樹脂を含むことにより、硬化膜に適度なゴム弾性を付与することができる。
【0020】
ポリエーテル樹脂は、例えば、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレン等である。ポリエーテル樹脂は、上記のうち1種類を単独又は2種以上を含んでも良い。一実施形態に係るポリエーテル樹脂は、硬化膜の機械的特性を向上させる観点から、ポリオキシプロピレンである。
【0021】
ポリエーテル樹脂は、1分子中に少なくとも1個の架橋性シリル基を有する。一実施形態に係るポリエーテル樹脂は、硬化膜の機械的特性を向上させる観点から、好ましくは架橋性シリル基をポリエーテル樹脂の末端に有し、より好ましくは架橋性シリル基をポリエーテル樹脂の両末端に有する。
【0022】
架橋性シリル基は、例えば、湿気等の存在下、硬化触媒等を使用することにより縮合反応する。一実施形態に係る架橋性シリル基としては、例えば、加水分解性シリル基及び加水分解性シリル基が加水分解したシラノール基を含む。
【0023】
加水分解性シリル基は、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の加水分解性基がケイ素原子に結合した基を含む。
【0024】
加水分解性シリル基は、硬化膜の機械的特性を向上させる観点から、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基及びアルケニルオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種、好ましくはアルコキシ基、より好ましくはメトキシ基である。
【0025】
加水分解性シリル基では、1個のケイ素原子に対して、加水分解性基が1~3個結合できる。なお、1個のケイ素原子に加水分解性基が1~2個結合する場合、加水分解性基以外に1個のケイ素原子に結合できる基は、特に制限されない。1個のケイ素原子に結合できる基は、例えば、炭化水素基を含む。
【0026】
一実施形態に係る加水分解性シリル基は、硬化膜の機械的特性を向上させる観点から、好ましくはジアルコキシアルキルシリル基、より好ましくはジメトキシメチルシリル基である。
【0027】
(液状樹脂(B-2))
一実施形態に係る液状媒体(B)は、アクリル樹脂分散液の硬化速度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上含む。一方で、一実施形態に係る液状媒体は、アクリル樹脂分散液の硬化速度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下含む。例えば、一実施形態に係る液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下、好ましくは0質量%以上、15質量%以下、より好ましくは0質量%以上、10質量%以下含む。
【0028】
なお、液状媒体は、液状樹脂を20質量%より多く含む場合、アクリル樹脂分散液の粘度を考慮した場合の硬化速度が低下する。このように、液状媒体が上記範囲の液状樹脂を含有することで、架橋反応点を抑制し、アクリル樹脂分散液の硬化速度をコントロールすることができる。本発明のアクリル樹脂分散液は、所定の基材に塗布された後、30分以内に指触硬化する。さらに、アクリル樹脂分散液の硬化速度を適切にコントロールすることで、後述の硬化体の深部(底部側)のバラスト(例えば、砕石)をしっかりと固定できる。
【0029】
液状樹脂は、分子末端または側鎖に液状樹脂の1分子当たり少なくとも1個の架橋性シリル基を有する。液状樹脂は、例えば、加水分解性アルコキシシリル基含有の液状ポリシロキサン類及び加水分解性アルコキシシリル基含有の液状オリゴマーを含む。液状樹脂は、上記のうち1種類を単独又は2種以上を含んでも良い。
【0030】
架橋性シリル基は、液状樹脂の末端に存在していても良く、側鎖に存在していても良く、末端と側鎖の両方に存在していても良い。架橋性シリル基は、液状樹脂の1分子当たり少なくとも1個あってよい。架橋性シリル基は、硬化速度及び硬化物性の観点から、液状樹脂の1分子当たり平均2個以上あるのが好ましい。
【0031】
(液状ポリアルキレングリコール(B-3))
一実施形態に係る液状媒体は、アクリル樹脂分散液の硬化速度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコール(B-3)を0質量%以上含む。一方で、一実施形態に係る液状媒体は、アクリル樹脂分散液の硬化速度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコール(B-3)を50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下含む。例えば、一実施形態に係る液状媒体(B)は、液状媒体(B)100質量%に対して、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコール(B-3)を0質量%以上、50質量%以下、好ましくは0質量%以上、40質量%以下、より好ましくは0質量%以上、30質量%以下含む。
【0032】
なお、液状媒体は、架橋性シリル基を有さない液状ポリアルキレングリコールを50質量%より多く含む場合、アクリル樹脂分散液の粘度を考慮した場合の硬化速度が低下する。
【0033】
液状ポリアルキレングリコールは、ポリエーテル樹脂、及び液状樹脂と相溶可能であれば特に限定されることはない。一実施形態に係るポリアルキレングリコールは、硬化膜の機械的特性を向上させる観点から、ポリプロピレングリコールである。ポリアルキレングリコールは、上記のうち1種類を単独で又は2種類以上で使用され得る。なお、液状媒体にポリアルキレングリコールを含ませることによって、本発明のアクリル樹脂分散液の粘度を調整することができる。
【0034】
液状ポリアルキレングリコールは、市販品であってよく、例えば、ポリグリコールP2000P(重量平均分子量2000、ダウ・ケミカル製)、ユニオールD-1000(重量平均分子量1000、日油(株)製)、ユニオールD-2000(重量平均分子量2000)、ユニオールD-4000(重量平均分子量4000)等を含む。
【0035】
液状ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、好ましくは500~8000、より好ましくは1000~4000である。
【0036】
(高沸点可塑剤(B-4))
一実施形態に係る液状媒体は、アクリル樹脂分散液の粘度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、沸点が180℃以上である高沸点可塑剤(B-4)を0質量%以上含む。一方で、一実施形態に係る液状媒体は、アクリル樹脂分散液の粘度及び硬化膜の強伸度のバランスの観点から、液状媒体(B)100質量%に対して、沸点が180℃以上である高沸点可塑剤(B-4)を40質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下含む。例えば、一実施形態に係る液状媒体(B)は、液状媒体(B)100質量%に対して、沸点が180℃以上である高沸点可塑剤(B-4)を0質量%以上、40質量%以下、好ましくは0質量%以上、30質量%以下、より好ましくは0質量%以上、20質量%以下含む。
【0037】
なお、液状媒体は、沸点が180℃以上である高沸点可塑剤を40質量%より多く含む場合、アクリル樹脂分散液が硬化した際に高沸点可塑剤が硬化膜表面にブリードアウトする。また、降雨等の影響により硬化膜から高沸点可塑剤が排出されてしまうことがある。
【0038】
高沸点可塑剤は、大気圧下での沸点が180℃以上の溶媒である。高沸点可塑剤は、ポリエーテル樹脂、液状樹脂、及びポリアルキレングリコールと相溶可能であれば特に限定されることはない。一実施形態に係る高沸点可塑剤は、環境保全の観点から、大気圧での沸点が260℃以上のものが好ましい。
【0039】
高沸点可塑剤は、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、塩素系溶剤等の中から適宜選択され得る。高沸点可塑剤(B-4)は、例えば、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n-ノニル、モノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリアセチン、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、γ-ブチロラクトン等を含み、これらのうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられてもよい。
【0040】
液状媒体は高沸点可塑剤を含有することで、本発明のアクリル樹脂分散液の粘度を適宜調整することが可能となる。
【0041】
(アクリル樹脂粒子(A))
一実施形態に係るアクリル樹脂分散液は、アクリル樹脂分散液100質量%に対して、アクリル樹脂粒子(A)を5質量%以上、40質量%以下、好ましくは5質量%以上、30質量%以下、より好ましくは5質量%以上、20質量%以下含む。
【0042】
本明細書等における、「アクリル樹脂粒子(A)」とは、重合性単量体として少なくとも(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分が重合した樹脂粒子であり、少なくとも(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を有する。本明細書等において、「(メタ)アクリル」との文言には、「アクリル」及び「メタクリル」の両方の文言が含まれることを意味する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との文言には、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方の文言が含まれることを意味する。アクリル樹脂粒子(A)は、1種類の重合性単量体((メタ)アクリル酸エステル)が重合した重合体(単独重合体)粒子でもよいし、(メタ)アクリル酸エステルを含む2種類以上の重合性単量体が重合(共重合)した重合体(共重合体)粒子でもよい。
【0043】
((メタ)アクリル酸エステルを含む単量体(A-0))
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル、及び(メタ)アクリル酸アリールエステル、並びにそれら以外の他の(メタ)アクリル酸エステル等を含む。(メタ)アクリル酸エステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。特に、アクリル樹脂粒子(A)を形成する単量体成分は、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことが好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、並びにシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレート等の脂環式の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等を含む。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。特に、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、炭素原子数が1~18(より好ましくは1~12)の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0045】
(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、及び(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート等を含む。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0046】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、例えば、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等を含む。(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0047】
(メタ)アクリル酸アラルキルエステルは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェニルエチル(メタ)アクリレート、メチルベンジル(メタ)アクリレート、及びナフチルメチル(メタ)アクリレート等を含む。(メタ)アクリル酸アラルキルエステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0048】
(メタ)アクリル酸アリールエステルは、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、及びナフチル(メタ)アクリレート等を含む。(メタ)アクリル酸アリールエステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0049】
他の(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリルレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2-クロロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2-(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、3-(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル及びその誘導体、2-スルホエチル(メタ)アクリレート、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等のスルホン酸基を有する(メタ)アクリレート、2-(ホスホノオキシ)エチル(メタ)アクリレート等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2-イソシアナトエチル等のイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート、メトキシポリエチエレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルキル基又はアリール基末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を含む。他の(メタ)アクリル酸エステルは、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0050】
アクリル樹脂粒子(A)は、上述の(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の重合性単量体を含む単量体成分が重合した樹脂粒子であってもよい。この場合、アクリル樹脂粒子(A)は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位と、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な他の重合性単量体に由来する構造単位を有する。
【0051】
他の重合性単量体は、例えば、不飽和カルボン酸系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体及びスチレン系単量体等を含む。他の重合性単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0052】
不飽和カルボン酸系単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、及びシトラコン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸の無水物、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノブチルエステル、イタコン酸モノメチルエステル、及びイタコン酸モノブチルエステル等の不飽和カルボン酸のモノエステルを含む。不飽和カルボン酸系単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。一実施形態に係る不飽和カルボン酸系単量体は、好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0053】
窒素原子を有する不飽和単量体は、例えば、アクリロニトリル及びメタクリロニトリル等のシアノ基を有する不飽和単量体、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-[2-ジメチルアミノエチル](メタ)アクリルアミド、N-[3-ジメチルアミノプロピル](メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、4-アクリロイルモルホリン、及び4-メタクリロイルモルホリン等のアクリルアミド系単量体、N-ビニルアセトアミド及びN-ビニル-N-メチルアセトアミド等のビニル基を有するアセトアミド系単量体、N-ビニル-2-ピロリドン、4-ビニルピリジン、1-ビニルイミダゾール、2-ビニル-2-オキサゾリン、及び2-イソプロペニル-2-オキサゾリン等のビニル基を有する含窒素複素環式化合物等を含む。窒素原子を有する不飽和単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0054】
スチレン系単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン、o-,m-,p-エチルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、o-,m-,p-ヒドロキシスチレン、o-,m-,p-メトキシスチレン、o-,m-,p-エトキシスチレン、o-,m-,p-クロロスチレン、o-,m-,p-ブロモスチレン、o-,m-,p-フルオロスチレン、及びo-,m-,p-クロロメチルスチレン等を含む。スチレン系単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。一実施形態に係るスチレン系単量体は、好ましくはスチレンである。
【0055】
他の重合性単量体は、前述の不飽和カルボン酸系単量体、窒素原子を有する不飽和単量体、及びスチレン系単量体以外に、例えば、ビニル系単量体、不飽和アルコール、ビニルエーテル系単量体、ビニルエステル系単量体、エポキシ基を有する不飽和単量体、及びスルホン酸基を有する不飽和単量体等を含む。
【0056】
ビニル系単量体は、例えば、塩化ビニル及びフッ化ビニル等を含む。不飽和アルコールは、例えば、ビニルアルコール及びアリルアルコール等を含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。ビニルエーテル系単量体は、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、及びジエチレングリコールモノビニルエーテル等を含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。ビニルエステル系単量体は、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、及びバーサチック酸ビニル等を含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。エポキシ基を有する不飽和単量体は、アリルグリシジルエーテル等を含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。スルホン酸基を有する不飽和単量体は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、及び2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等を含み、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0057】
さらに、アクリル樹脂粒子(A)を形成する単量体成分は、重合性単量体として、架橋剤としての機能を有し得る単量体(架橋性単量体)を含むことができる。
【0058】
架橋性単量体は、重合性不飽和結合を2以上有する単量体であり、例えば、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレ-ト、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びグリセリンジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン並びにジアリルフタレート等を含む。架橋性単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0059】
(架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(A-1))
アクリル樹脂粒子(A)は、架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(A-1)を構成単位としてさらに含む。架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体(A-1)は、架橋性アルコキシシリル基を有するものであれば公知のものであってよく、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-ビニルフェニルトリメトキシシラン、3-(4-ビニルフェニル)プロピルトリメトキシシラン、及び4-ビニルフェニルメチルトリメトキシシラン等を含む。
【0060】
架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体は、シランカップリング剤として市販されている、例えば、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-503(商品名)、信越化学工業社製)、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(KBM-502(商品名)、信越化学工業社製)などを含む。架橋性シリル基を有するエチレン性不飽和単量体は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられる。
【0061】
(硬化触媒(C))
硬化触媒は、本発明の湿気硬化型のアクリル樹脂分散液の硬化反応を促進するための成分である。硬化触媒は、硬化触媒としての機能及び作用を示す物質であれば特に限定されない。
【0062】
金属を含む硬化触媒(C)は、例えば、有機チタンおよび有機スズ化合物である。有機チタンは、例えば、チタン酸エステル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラプロピル、チタン酸テトライソプロピルおよびチタンテトラアセチルアセトネートを含む。有機スズ化合物は、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクタノエート、ジブチルスズアセチルアセトネート、ジブチルスズオキシドおよび対応するジオクチルスズ化合物を含む。
【0063】
金属を含まない硬化触媒(C)は、例えば、塩基性化合物を含む。塩基性化合物は、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、N,N-ビス-(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミンおよびN-エチルモルホリニン(ethylmorpholinine)を含む。
【0064】
硬化触媒(C)は、酸性化合物として例えば、リン酸およびそのエステル、トルエンスルホン酸、硫酸、硝酸、またはその他の有機カルボン酸として、例えば、酢酸および安息香酸を含む。
【0065】
一実施形態に係るアクリル樹脂分散液は、アクリル樹脂分散液503質量部に対して、硬化触媒(C)を1~100質量部、好ましくは1~30質量部、より好ましくは3~20質量部含む。アクリル樹脂分散液が、硬化触媒(C)を30質量部よりも多く含む場合、アクリル樹脂分散液の硬化速度が速くなる。そのため、アクリル樹脂分散液が後述の硬化体の深部(底部側)まで到達できず、硬化体の深部におけるアクリル樹脂分散液の硬化が不十分となる可能性がある。また、アクリル樹脂分散液の保存中に増粘、ゲル化、及び硬化などの不具合が生じる可能性がある。
【0066】
(重合開始剤)
重合開始剤は、例えば、4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、ベンゾイルパーオキサイド、o-メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス-3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキサイドなどの油溶性有機過酸化物、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)などの油溶性アゾ化合物などを含む。油溶性重合開始剤は、好ましくは油溶性アゾ化合物である。油溶性重合開始剤は、上記のうちの1種類を単独で又は2種類以上で用いられ得る。
【0067】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤は、例えば、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸メトキシブチル、メルカプトプロピオン酸オクチル、メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、ステアリルメルカプタン、ラウリルメルカプタンなどのメルカプタン類、α-メチルスチレンダイマーなどを含み、上記から選択される少なくとも1種類が使用され得る。
【0068】
<用途>
一実施形態に係るアクリル樹脂分散液の用途は、砂利及び骨材の少なくともいずれかの固定用である。
【0069】
また、アクリル樹脂分散液は、常温硬化性を有し、溶剤による臭気の問題を有さない。アクリル樹脂分散液は、建築関連用途及び土木関連用途の塗料に適用され得る。また、アクリル樹脂分散液は、幅広い屋外用途に対応可能な塗料やバインダーとして利用される。上記の通り、アクリル樹脂分散液は、無溶剤であることから環境適用性及び経済性にも優れる。
【0070】
<アクリル樹脂分散液の製造>
表1は、表2~5の略語の説明を示す。表2は、実施例1~8のアクリル樹脂分散液の原料配合と試験結果を示す。表3は、実施例9~15のアクリル樹脂分散液の原料配合と試験結果を示す。表4は、実施例16~24のアクリル樹脂分散液の原料配合と試験結果を示す。表5は、比較例1~7のアクリル樹脂溶液等の原料配合と試験結果を示す。なお、表5のアクリル樹脂溶液等のうち、液外観が「透明」であるアクリル樹脂溶液はアクリル樹脂分散液に相当する。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
(実施例1)
表2の実施例1の原料配合に基づいて、A成分のA-0としてブチルアクリレート(BA)40質量部、メチルメタクリレート(MMA)48質量部、アリルメタクリレート(AMA)2質量部、及びA成分のA-1としてγ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(商品名:KBM-502、信越化学工業株式会社製)10質量部、連鎖移動剤としてラウリルメルカプタン(L-SH)1質量部を攪拌混合して、単量体混合液を調整した。撹拌機、温度計、還流冷却器、及び滴下ロートを取り付けた四ツ口セパラブルフラスコに、B-1成分としてMSポリマーS203H(商品名:株式会社カネカ製)200質量部及びサイリルSAT010(商品名:株式会社カネカ製)100質量部、B-3成分としてポリプロピレングリコール(商品名:ユニオールD-2000、日油株式会社製)50部、B-4成分としてトリプロピレングリコール n-ブチルエーテル(商品名:ダワノールTPnB、ダウ・ケミカル日本株式会社製)50質量部を仕込んだ。窒素雰囲気下に撹拌しながら、上記で調整した単量体混合液を添加し均一に混合したのち、重合開始剤として2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)2質量部を添加した。
【0077】
続いて、セパラブルフラスコ内の内温を80℃に昇温し、8時間かけて重合反応を行った後、室温まで冷却して混合物を得た。アクリル樹脂分散液の粘度は6,500mPa・s(25℃)で、乳白色の外観であった。なお、アクリル樹脂分散液の粘度は、B型粘度計(商品名:BMII、東機産業株式会社製)を用いて測定された。
【0078】
アクリル樹脂分散液503質量部に対し、硬化触媒として、チタンテトライソプロポキシド(商品名:オルガチックスTA-8、マツモトファインケミカル株式会社製)3質量部を添加し、攪拌混合することで実施例1のアクリル樹脂分散液を得た。
【0079】
実施例2~24のアクリル樹脂分散液及び比較例1~7のアクリル樹脂溶液等は、表2~表5の原料配合に基づき、実施例1と同様の工程で得られた。
【0080】
<試験方法>
実施例1~24のアクリル樹脂分散液及び比較例1~7のアクリル樹脂溶液等を用いて、以下の試験例1~試験例4の試験を行うことで、性能評価を行った。以下、アクリル樹脂分散液を用いて試験例1~4を説明する。アクリル樹脂溶液等はアクリル樹脂分散液と同様の試験により性能評価されるので、詳細な説明を省略する。
【0081】
(試験例1 硬化性)
23℃、50%RHの環境下でアクリル樹脂分散液をガラス板上に厚さ約1mmで塗布した。ガラス基板上の塗膜を指で触った時に指に塗膜が付着しなくなるまで(指触硬化)の時間(分)を測定した。
【0082】
(試験例2 深部硬化指数)
アクリル樹脂分散液の深部硬化指数を以下の式1を用いて算出した。
C.I.=1÷(lnV÷Tc) (式1)
ここで、C.I.は深部硬化指数、Vは25℃におけるアクリル樹脂分散液の粘度(mPa・s)、Tcは硬化性試験における指触硬化までの時間(分)を示す。
【0083】
なお、深部硬化指数の値は、1.0~3.0の間にあるとよい。深部硬化指数の値が上記の範囲外にある場合において後述の試験例3で作製する硬化体(アクリル樹脂分散液により固定された砕石の塊)に及ぼす影響を説明する。
【0084】
例えば、深部硬化指数の値が1.0よりも小さい場合には、アクリル樹脂分散液の硬化速度が速いことを表す。そのため、アクリル樹脂分散液が容器中の表層の砕石に浸透している間にアクリル樹脂分散液の硬化が始まるため、アクリル樹脂分散液が容器中の底部の砕石に浸透しにくくなる。この場合、容器中の表層の砕石はアクリル樹脂分散液によって固定されるが、容器中の底部の砕石はアクリル樹脂分散液によって十分に固定されなくなる。つまり、この条件(深部硬化指数の値が1.0よりも小さい場合)で作製された硬化体は、硬化体の底部側が脆弱となる。
【0085】
一方で、深部硬化指数の値が3.0より大きい場合には、アクリル樹脂分散液の硬化速度が遅いことを表す。そのため、アクリル樹脂分散液が容器中の表層の砕石に浸透している間にアクリル樹脂分散液が硬化しないまま、容器中の底部の砕石に浸透してしまう。この場合、容器中の表層の砕石がアクリル樹脂分散液によって十分に固定されず、容器中の底部の砕石がアクリル樹脂分散液によって固定される。つまり、この条件(深部硬化指数の値が3.0より大きい場合)で作製された硬化体は、硬化体の表層側が脆弱となる。
【0086】
(試験例3 深部硬化性)
内寸幅約180mm、奥行き約100mm、高さ約250mmの容器に、砕石を比重が1.60~1.70g/cmとなるように深さ200mmで充填した。砕石を充填した容器に、アクリル樹脂分散液72gを均一に上部より散布し、23℃、55%RHの雰囲気下にて3日間硬化させた。硬化体(アクリル樹脂分散液により砕石が固定された塊)を容器より取り出し、以下の評価基準にて深部硬化性を評価した。
(評価基準)
〇:硬化体から脱落した砕石の質量が硬化体の全質量の5%未満
×:硬化体から脱落した砕石の質量が硬化体の全質量の5%以上
【0087】
(試験例4 引張強度及び破断伸度)
アクリル樹脂分散液を、23℃、50%RHの環境下で3日間硬化させ、短冊状(長さ約60mm、幅約10mm、厚さ約1.0mm)の皮膜試料を作製した。引張試験機(エー・アンド・デイ社製、商品名「テンシロン万能試験機 RTG-1210」)を用いて、23℃、引張速度20mm/min、チャック間距離20mmの条件にて皮膜試料の引張試験を行い、引張強度(MPa)及び破断伸度(%)を測定した。以下の評価基準に基づいて皮膜試料の強伸度を評価した。
(評価基準)
○:引張強度0.5MPa以上、かつ、破断伸度200%以上を満たす
×:引張強度0.5MPa以上、かつ、破断伸度200%以上を満たさない
【0088】
<試験結果>
表2~表4は、実施例1~24の試験結果を示す。表5は、比較例1~7の試験結果を示す。表2~表5の結果から以下のことが判明した。以下、硬化特性とは、試験例1~試験例3に示すようにアクリル樹脂分散液(又はアクリル樹脂溶液等)の硬化に関する特性のことをいう。また、機械的特性とは、試験例4に示すようにアクリル樹脂分散液(又はアクリル樹脂溶液等)からなる硬化膜の強伸度特性のことをいう。
【0089】
(実施例1と比較例1の比較)
実施例1(AMAを含有する場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例1(AMA非含有の場合)よりも向上した。また、実施例1のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。一方で、比較例1のアクリル樹脂溶液の外観は透明である。このように、実施例1では、多官能モノマー(AMA)をアクリル樹脂粒子に含有させることで、アクリル樹脂粒子が液状媒体に対して不溶化し、微粒子の形態で存在し続けるため、硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0090】
(実施例1と比較例2の比較)
実施例1(BA、MMA、及びAMAを含有する場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例2(BA、EA、及びMMAを含有する場合)よりも向上した。また、実施例1のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。一方で、比較例2のアクリル樹脂溶液の外観は透明である。このように、実施例1では、BA、MMA、及びAMAをアクリル樹脂粒子に含有させることで、アクリル樹脂粒子が液状媒体に対して不溶化し、微粒子の形態で存在し続けるため、硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0091】
ここで、図1は、従来のアクリル樹脂溶液等によって砕石を固定することで得られる硬化体を説明する図を示す。図2は、本発明のアクリル樹脂分散液によって砕石を固定することで得られる硬化体を説明する図を示す。図1(a)は、比較例1、2の硬化体を示す。図1(a)では硬化体の左側半分が崩れてしまい、硬化体の周囲に砕石が飛散している。一方で、図2の硬化体は円柱状の形状を有しており、硬化体の周囲には砕石が飛散していない。このように、本発明によれば、硬化体の表層から底部までの一連の砕石がしっかりと固定された堅固な硬化体を得ることができる。
【0092】
(実施例19と比較例3の比較)
実施例19(少量のB-2を含有する場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例3(多量のB-2を含有する場合)よりも向上した。また、実施例19と比較例3のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。実施例19のB成分中のB-2の割合は12.5質量%(=100×50質量部(B-2)/(300質量部(B-1)+50質量部(B-2)+50質量部(B-3)))である。一方で、比較例3のB成分中のB-2の割合は約31.3質量%(=100×125質量部(B-2)/(225質量部(B-1)+125質量部(B-2)+50質量部(B-3)))である。このように、実施例19では、比較例3とは異なり、少量のB-2を液状媒体に含有させることでアクリル樹脂粒子が液状媒体に相溶しないため、硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0093】
(実施例19と比較例4の比較)
実施例19(少量のB-2を含有する場合)の硬化特性は、比較例4(多量のB-2を含有する場合)よりも向上した。また、実施例19と比較例4のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。比較例4は、比較例3のB-2(KR-500)とは異なるB-2(KR-510、KR-515)を液状媒体に含有している。また、比較例4のB成分中のB-2の割合は約31.3質量%(=100×125質量部(B-2)/(225質量部(B-1)+125質量部(B-2)+50質量部(B-3)))である。このように、実施例19では、B成分の種類に関係なく少量のB-2を液状媒体に含有させることで、アクリル樹脂分散液の硬化特性が向上したと推察される。
【0094】
(実施例19と比較例5の比較)
実施例19(少量のB-2を含有する場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例5(多量のB-2を含有する場合)よりも向上した。また、実施例19と比較例5のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。実施例19のB成分中のB-2の割合は12.5質量%(=100×50質量部(B-2)/(300質量部(B-1)+50質量部(B-2)+50質量部(B-3)))である。一方で、比較例5のB成分中のB-2の割合は75質量%(=100×300質量部(B-2)/(300質量部(B-2)+100質量部(B-3)))である。このように、実施例19では、比較例5とは異なり、少量のB-2を液状媒体に含有させることで、アクリル樹脂分散液の硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0095】
ここで、図1(c)は、比較例3~5の硬化体を示す。図1(c)では硬化体の底部側の砕石が崩れてしまい、硬化体の周囲に砕石が飛散している。一方で、図2の本発明による硬化体は円柱状の形状を有しており、硬化体の周囲には砕石が飛散していない。このように、本発明によれば、硬化体の表層から底部までの一連の砕石がしっかりと固定された堅固な硬化体を得ることができる。
【0096】
(実施例19と比較例6の比較)
実施例19(少量のB-2を含有する場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例6(多量のB-2を含有する場合)よりも向上した。また、実施例19のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。一方で、比較例6のアクリル樹脂溶液の外観は透明である。実施例19のB成分中のB-2の割合は12.5質量%(=100×50質量部(B-2)/(300質量部(B-1)+50質量部(B-2)+50質量部(B-3)))である。一方で、比較例6のB成分中のB-2の割合は約75質量%(=100×300質量部(B-2)/(300質量部(B-2)+100質量部(B-3)))である。このように、実施例19では、比較例6とは異なり、少量のB-2を液状媒体に含有させることでアクリル樹脂粒子が液状媒体に相溶しないため、硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0097】
(実施例18と比較例7の比較)
実施例18(B-2を含有しない場合)の硬化特性及び機械的特性は、比較例7(B-2を含有する場合)よりも向上した。また、実施例18のアクリル樹脂分散液の外観は乳白色である。一方で、比較例7のアクリル樹脂溶液の外観は透明である。実施例18と比較例7はそれぞれ、B成分を233質量部有する。まず、実施例18と比較例7はそれぞれ、アクリル樹脂粒子(A)を構成する単量体としてEAとMMAを有する。しかし、実施例18は、B成分中にB-1成分200質量部とB-4成分33.3質量部を有する。一方で、比較例7は、B成分中にB-2成分200質量部とB-4成分33.3質量部を有する。このように、実施例18では、比較例7とは異なり、B成分としてB-2を液状媒体に含有しないためアクリル樹脂粒子が液状媒体に相溶しないため、硬化特性及び機械的特性が向上したと推察される。
【0098】
ここで、図1(b)は、比較例6、7の硬化体を示す。図1(b)では硬化体が全体的に崩れてしまい、硬化体の周囲に砕石が飛散している。一方で、図2の本発明による硬化体は円柱状の形状を有しており、硬化体の周囲には砕石が飛散していない。このように、本発明によれば、硬化体の表層から底部までの一連の砕石がしっかりと固定された堅固な硬化体を得ることができる。
【0099】
以上の通り、本発明のアクリル樹脂分散液は積み重ねたバラストを固定する場合においてバラストの位置に依存することなくバラストを均一に固定できるといった顕著な効果を有する。
【0100】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【要約】
【課題】本発明は、積み重ねたバラストを固定する場合においてバラストの位置に依存することなくバラストを均一に固定できるアクリル樹脂分散液を提供することを目的とする。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を構成単位として少なくとも含有するアクリル樹脂粒子(A)と、液状媒体(B)と、硬化触媒(C)と、を含み。前記液状媒体(B)は、前記液状媒体(B)100質量%に対して、末端が架橋性シリル基で変性されたポリエーテル樹脂(B-1)を50質量%以上、100質量%以下と、側鎖に架橋性シリル基を有し、主鎖が-Si-O-結合の繰り返し単位からなる液状樹脂(B-2)を0質量%以上、20質量%以下と、を含む。
【選択図】図2
図1
図2