(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】水中油型睫毛用化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20221220BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/39 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20221220BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20221220BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/86
A61K8/39
A61K8/92
A61K8/06
A61Q1/10
(21)【出願番号】P 2018113268
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017131075
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592106155
【氏名又は名称】ジェイオーコスメティックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089484
【氏名又は名称】和田 靖郎
(72)【発明者】
【氏名】吉原 大樹
(72)【発明者】
【氏名】島 尋士
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-257052(JP,A)
【文献】特開2018-008904(JP,A)
【文献】特開2014-001153(JP,A)
【文献】特開2010-265225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)皮膜形成性ポリマーエマルション1~40質量%(固形分基準)、(B)HLB値が7~12である非イオン性界面活性剤0.1~10質量%および(C)ワックス1~40質量%を含有してなり、前記(A)成分が(a-1)エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーとスチレン系モノマーのコポリマーのエマルションを含
み、前記(C)成分が融点70℃以上のワックスを含み、かつ、該融点70℃以上のワックスの全ワックスに対する質量比が0.3~1であることを特徴とする水中油型睫毛用化粧料。
【請求項2】
前記(a-1)成分が(スチレン/アクリレーツ)コポリマー、(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマーまたは(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウムのエマルションである請求項1に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項3】
前記(A)成分が(a-1)成分と(a-2)アクリル酸アルキル(共)重合体のエマルションを含み、且つ、(a-1)成分に対する前記(a-2)成分の固形分基準での質量比〔(a-2)/(a-1)〕が0.01~5である請求項1または2に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項4】
前記アクリル酸アルキル(共)重合体がアクリレーツコポリマーまたは(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマーである請求項3に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項5】
さらに、(D)親水性界面活性剤を含有する請求項1~4のいずれかに記載の水中油型睫毛用化粧料。
【請求項6】
前記親水性界面活性剤が、高級脂肪酸塩またはHLBが12を超える非イオン性界面活性剤である請求項5に記載の水中油型睫毛用化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中油型睫毛用化粧料に関し、さらに詳しくは、耐水性と温水での除去性に優れるとともにカール効果およびカール効果の持続性に優れた水中油型睫毛用化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラに代表される睫毛用化粧料は、睫毛を上にカールすることや、睫毛を太く、且つ長くみせることで目元をはっきりさせるといった化粧効果を有している。 従来、これらの睫毛用化粧料として、油性タイプ、油中水型や水中油型の乳化タイプ、水性タイプなど、種々の剤型のものが知られているが、最近では、専用のリムーバーを用いずに温水で簡単に除去することができるという特長を有する、皮膜形成性ポリマーを配合した水中油型の乳化タイプのマスカラが人気を博している。
【0003】
このような皮膜形成性ポリマー配合の水中油型睫毛用化粧料において、非特許文献1には、アクリル系ポリマーエマルションを配合すると柔軟で耐水性の高い皮膜が得られるのに対し、酢酸ビニル系のポリマーエマルションを用いると、皮膜性には劣るがクレンジング性の高い皮膜が得られることが記載されている(第78頁、右欄参照)。このように高い耐水性と温水による除去のし易さは背反関係にあり、より高い耐水性を求めると、温水での除去性が低下するといった問題があった。
【0004】
ポリマーエマルションを配合した水中油型睫毛用化粧料の具体例として、特許文献1には、アクリル酸アルキル・酢酸ビニルコポリマーエマルションとアクリル酸アルキルコポリマーエマルションを特定比率で含み、さらにカーボンブラック、多価アルコールおよびポリビニルピロリドンまたはポリビニルアルコールを含む水中油型睫用化粧料が開示されている。同文献には、上記の組成とすることによって、ツヤや黒さに優れ、ぬるま湯によるクレンジング性に優れ、且つ保存安定性にも優れた水中油型睫毛用化粧料が得られると記載されている(要約参照)。そして、実施例および比較例においては、ステアリン酸とトリエタノールアミンを用いて調製時に系内で合成されるステアリン酸トリエタノールアミン塩を界面活性剤とする水中油型睫毛用化粧料が示されており、アクリル酸アルキル・酢酸ビニルコポリマーエマルションとアクリル酸アルキルコポリマーエマルションを特定比率で含む場合には良好な性能を示すものの、それらに代えてポリ酢酸ビニルエマルションまたはアクリル酸アルキル・スチレンコポリマーエマルションを用いると、保存安定性、ツヤ、黒さ、ぬるま湯によるクレンジング性のいずれにおいても十分な性能が得られないことが示されている(表1参照)。
【0005】
また、特許文献2には、2-アミノ-2-メチル1,3-プロパンジオールと長鎖脂肪酸との組み合わせからなる陰イオン界面活性剤と膜形成ポリマーとを、特定比率で含む睫毛用化粧料が提案されており、上記の組成にすることによって高い耐水性がありながら、温水で除去するときににじみを生じることなく、容易にクレンジングできるようになると記載されている。この特許文献記載の発明では、特定の陰イオン界面活性剤を用いること、およびその陰イオン界面活性剤と膜形成ポリマーを特定比率で含むことが必須要件であり、その比率に該当しないものや、他の陰イオン界面活性剤を用いる場合には、クレンジング性(除去性)が十分でないことが記載されている(表1参照)。また、この発明においては、HLBが8未満の非イオン性界面活性剤またはHLBが8以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよいと記載されており、実施例1では、スチレン/アクリレート/アンモニウムメタクリレートコポリマーを皮膜形成性ポリマーとして含み、且つ、ステアリン酸ソルビタン(HLB値4.7)2.5重量%とステアレス-20(HLB値18)2.0重量%を含む配合例が記載されている(表1参照)。しかし、本発明者らの実験によれば、皮膜形成ポリマーと組み合わせて用いる非イオン性界面活性剤がこのようなHLB値を有する場合には、耐水性およびクレンジング性の両立が必ずしも十分とはいえないことが判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-077042号公報
【文献】特表2014-508107号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】奥田真介「マスカラの商品設計技術の進歩」フレグランスジャーナル臨時増刊No.21、75-79頁、2009年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような背景技術の下に完成したものであり、その目的は、高い耐水性とカール効果およびカール効果の持続性を有しながら、専用リムーバーを用いることなく、温水のみで容易に除去することができる水中油型睫毛用化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、水中油型睫毛用化粧料において、特定の皮膜形成性ポリマーエマルションとともに、界面活性剤として特定のHLB値を有する非イオン性界面活性剤を用いることにより、耐水性が高いにもかかわらず、温水により化粧膜を容易に除去できる睫毛用化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、(A)皮膜形成性ポリマーエマルション1~40質量%(固形分基準)、(B)HLB値が6~12である非イオン性界面活性剤0.1~10質量%および(C)ワックス1~40質量%を含有してなり、前記(A)成分が(a-1)エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーとスチレン系モノマーのコポリマーのエマルションを含むものである水中油型睫毛用化粧料が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、高い耐水性とカール効果およびカール効果の持続性に加えて、温水による除去性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、必須成分として(A)皮膜形成性ポリマーエマルション、(B)HLB値が6~12である非イオン性界面活性剤および(C)ワックスを含有している。
【0013】
(皮膜形成性ポリマーエマルション)
(A)成分の皮膜形成性ポリマーエマルションは、(a-1)α,β-エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーとスチレン系モノマーのコポリマーのエマルションを必須成分として含むものである。該コポリマーを得るためのモノマーとして用いられるα,β-エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸などのような炭素数3~5の不飽和カルボン酸、そのエステル、そのアミド、その塩などの不飽和カルボン酸誘導体である。不飽和カルボン酸エステルの具体例としては、メチルエステル、エチルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、2-エチルヘキシルエステル、ラウリルエステル、シクロヘキシルエステルなどのアルキルエステル;フェニルエステル、ベンジルエステルなどのアリールエステル;ヒドロキシエチルエステル、2-ヒドロキシプロピルエステルなどのヒドロキシアルキルエステルなどが挙げられる。また、不飽和カルボン酸アミドの具体例としては、アミド、N-メチルアミド、N-エチルアミド、N-ブチルアミド、N-メチロールアミドなどが挙げられ、さらに不飽和カルボン酸塩としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0014】
これらのモノマーは単独で使用してもよいが、必要に応じて2つ以上のモノマーを組み合わせて用いることもできる。これらのモノマーのなかでも、(メタ)アクリル酸、その塩、またはそのアルキルエステルなどの(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましく使用される。なお、「(メタ)アクリル酸」という用語は、アクリル酸、メタクリル酸またはそれらの混合物を意味している。一方、スチレン系モノマーの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられ、なかでもスチレンがもっとも賞用される。
【0015】
(a-1)成分の好ましい具体例は、スチレンと(メタ)アクリル酸又はこれらの単純エステルの中から選ばれたモノマー1種以上との共重合体のエマルションであり、(スチレン/アクリレーツ)コポリマー(INCI名;Styrene/Acrylates Copolymer)と称されるもの(このコポリマーは、医薬部外品原料規格2006において(アクリル酸アルキル/スチレン)コポリマーエマルションとも称されている。);スチレン、メタクリル酸アンモニウムならびに(メタ)アクリル酸およびその単純エステルの中から選ばれたモノマーとのコポリマーのエマルションであり、(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマー(INCI名;Styrene/Acrylates/Ammonium Methacrylate Copolymer)と称されるもの;アクリル酸もしくはメタクリル酸又はそれらの単純エステル1種類以上のモノマーと、メチルスチレン及びスチレンの共重合体のアンモニウム塩のエマルションであり、(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウム(INCI名;Ammonium Acrylates/Methyl Styrene/Styrene Copolymer)と称されるもの;等を挙げることができる。
【0016】
本発明の(a-1)成分は、エチレン性不飽和カルボン酸系モノマーとスチレン系モノマーのコポリマーと他の重合体および/または共重合体からなるコアシェル型ポリマーエマルションのような複合型ポリマーのエマルションであってもよい。なかでもシェル部がエチレン性不飽和カルボン酸系モノマーとスチレン系モノマーのコポリマーで、コア部がアクリル酸アルキル(共)重合体であるコアシェル型ポリマーのエマルションは、高い耐水性と温水での除去性の点で優れている。該コアシェル型ポリマーにおいて、コアに対するシェルの比率[シェル/コア](質量比)は、50~97/3~50であることが好ましい。
【0017】
(スチレン/アクリレーツ)コポリマーエマルションの市販品としては、ヨドゾールGH41F(アクゾノーベル社製)、ダイトゾール5000STY(大東化成工業社製)等が挙げられる。これらの中でもヨドゾールGH41Fは、耐水性、カール効果の持続性に特に優れており、好ましく用いられる。(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマーエマルションの市販品としては、Syntran5760(インターポリマー社製)等が挙げられる。また(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウムをポリマー成分として含む市販品としては、コア部が(アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸メチル)コポリマーで、シェル部が(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウムからなり、コア/シェルのポリマー組成比(質量比)が85/15のコアシェル型ポリマーのエマルションであるエマポリーCE-119N(岐阜セラック社製)が挙げられる。
【0018】
本発明においては、(A)成分として必須成分の(a-1)成分に加えて(a-2)成分としてアクリル酸アルキル(共)重合体エマルションを含有させることができる。ここで、アクリル酸アルキル(共)重合体エマルションとは、(メタ)アクリル酸又はその単純エステル(たとえば、C1~C8アルキルエステル)のうちから選択される1種又は2種以上の化合物を原料モノマーとする単独重合体もしくは共重合体のエマルションである。(a-2)成分を含有させることにより、皮膜の硬さを調整することができ、クレンジング性およびセパレート効果をより高めることができる。なお、本発明においては、(a-1)成分におけるポリマー成分と(a-2)成分におけるポリマー成分とで構成されるコアシェル型ポリマーのような複合型ポリマーのエマルションは、(a-1)成分として取り扱われる。
【0019】
上記アクリル酸アルキル(共)重合体エマルションの具体例としては、INCI(International Nomenclature Cosmetic Ingredient labeling names)においてACLYLATES COPOLYMER(アクリレーツコポリマー)と命名されているものや、ACLYLATES/ETHYLHEXYL ACRYLATE COPOLYMER((アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマー)と命名されているものを挙げることができる。前者の市販品としては、ヨドゾールGH800F、ヨドゾールGH810F(アクゾノーベル社製)等が挙げられ、また、後者の市販品としては、ダイトゾール5000SJ(大東化成工業社製)等が挙げられる。
【0020】
(A)成分の皮膜形成性ポリマーエマルションは、通常、樹脂分が水性成分中に固形分として20~60質量%の濃度で微細に分散している市販品を使用することができる。その配合量は固形分換算濃度で化粧料全体に対し1~40質量%であり、好ましくは2~35質量%であり、より好ましくは3~30質量%である。配合量が過度に少ないと耐水性、カール効果およびその持続性が低下する。一方、配合量が過度に多くなると化粧料の粘度が上昇し、塗布することが難しくなる。
【0021】
(A)成分の皮膜形成性ポリマーエマルションに含まれる(a-1)成分の配合量は、化粧料全体に対し、固形分換算濃度で1~30質量%であり、好ましくは2~25質量%であり、より好ましくは3~20質量%である。配合量が過度に少ないと耐水性、カール効果およびその持続性が低下する。一方、配合量が過度に多くなると温水での除去のし易さが低下する。
【0022】
(A)成分は(a-1)成分だけで構成されていてもよいが、(a-2)成分を含む場合には、(a-1)成分に対する(a-2)成分の固形分基準での質量比(a-2/a-1)を、0.01~5とすることが好ましく、より好ましくは0.05~3、さらに好ましくは0.1~2である。(a-2/a-1)比をこの範囲に制御することによって、皮膜の硬さを調整することができ、クレンジング性およびセパレート効果をより高めることができる。しかし、この比率が大きくなるとともに耐水性が低下する傾向を示す。
【0023】
また、本発明においては、(A)成分として上記(a-1)、(a-2)成分に加えて、本発明の効果を本質的に損なわない範囲で(a-1)、(a-2)成分以外のその他の皮膜形成性ポリマーエマルションを含有させることができる。その他の皮膜形成性ポリマーエマルションの具体例としては、ポリ酢酸ビニルエマルション、アクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、メタクリル酸アルキル・酢酸ビニル共重合体エマルション、ポリウレタンエマルション、ウレタン系共重合体エマルション等を挙げることができる。これらの皮膜形成性ポリマーエマルションの量が多くなると、耐水性と温水での除去のし易さが低下する傾向を示すので、その配合量は固形分基準で(a-1)成分と(a-2)成分の合計量に対し、20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは10質量%以下であり、実質的に配合しないことがさらに好ましい。
【0024】
(非イオン性界面活性剤)
本発明においては、クレンジング性を改善するために(B)成分として非イオン性界面活性剤が用いられる。(B)成分として用いられる非イオン性界面活性剤は、HLB値が6~12の範囲にあることが必要であり、とくに7~10であるものが好ましい。HLB値がこの範囲をはずれると、温水でのクレンジング性(除去性)を改良することができない。
【0025】
(B)成分として用いる非イオン性界面活性剤の具体例としては、ステアリン酸ポリグリセリル-4、ジステアリン酸ポリグリセリル-10、オレイン酸ポリグリセリル-2などのポリグリセリン脂肪酸エステル;PEG-10水添ヒマシ油、PEG-20水添ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ステアリン酸PEG-5、イソステアリン酸PEG-6などのポリオキシエチレン脂肪酸エステル;セテス-2、オレス-2、ステアレス-15などのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ステアリン酸ステアレス-12、イソステアリン酸ラウレス-10などの脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテル;イソステアリン酸PEG-6グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、トリステアリン酸PEG-20グリセリルなどのポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル;イソステアリン酸PEG-20硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸PEG-20硬化ヒマシ油などの脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマーと長鎖アルコールとのエーテル、ポリブチレングリコールポリグリセリンコポリマーと長鎖アルコールのエーテルなどが挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルおよび脂肪酸ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましく用いられる。
【0026】
非イオン性界面活性剤が分子中に脂肪酸残基を有する場合、その脂肪酸残基としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸などのような炭素数10~22の高級脂肪酸の残基であることが好ましい。市販品としては、例えば、「エマレックスGWS-320」(トリステアリン酸PEG-20グリセリル;日本エマルジョン社製;HLB8) 、「ユニオックス GT-20IS」( イソステアリン酸PEG-20グリセリル;日油社製;HLB8) 、「エマレックスPEIS-6EX」(イソステアリン酸PEG-6;日本エマルジョン社製;HLB9)、「エマレックスSWS-12」(ステアリン酸ステアレス-12;日本エマルジョン社製;HLB8)等が好適に用いられる。
【0027】
(B)成分は、単独で使用してもよく、2種以上を併用することもできる。(B)成分の使用量は、全組成中に0.1~10質量%、好ましくは0.5~8質量%、より好ましくは1~6質量%である。この量が過度に少ない場合は温水での除去性が低下し、過度に多い場合は耐水性が低下する。
【0028】
(ワックス)
本発明において(C)成分のワックスとは、融点が50℃以上である固形の油分を意味する。かかるワックスとしては、動物性ワックス、植物性ワックス、鉱物性ワックス、シリコーンワックス、合成ワックス等を用いることができる。本発明においては、(C)成分のワックスとして、融点が50℃以上110℃以下のワックス用いることが好ましい。なお、ワックスの融点は、医薬部外品原料規格の一般試験法である融点測定法第2法によって測定された値である。
【0029】
ワックスの具体例としては、ミツロウ、サラシミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、コメヌカロウ、ラノリン、モクロウ、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、水添ホホバ油、硬質ラノリン、セラックロウ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、硬化油、硬化ヒマシ油、ワセリン、アルキルシリコーン、ホホバエステル、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールなどが挙げられる。
【0030】
これらのワックスの市販品としては、ミツロウまたはサラシミツロウであるクローダジャパン社製のSAビーズワックス-PA(融点60~67℃)、三木化学工業社製のゴールデンブランド(融点60~67℃)、WHITE BEES WAX(融点60~67℃)、カルナウバワックスであるセラリカ野田社製の精製カルナウバワックスNo.1(融点80~86℃)、マイクロクリスタリンワックスである日本精鑞社製のHNP-9(融点74~78℃)、Hi-Mic-2065(融点72~78℃)、Hi-Mic-1070(融点77~82℃)、Hi-Mic-1080(融点82~88℃)、Hi-Mic-1090(融点86~90℃)、HNP-0190(融点87~93℃)、Sonneborn社製のMultiwax W-445(融点77~82℃)、パラフィンワックスである日本精鑞社製のパラフィンワックス135(融点57~60℃)、パラフィンワックス140(融点60~63℃)、パラフィンワックス150(融点66~68℃)、HNP-11(融点66~70℃)、ポリエチレンワックスであるNEW PHASE TECHNOLOGIES社のPERFORMALENE400(融点75~90℃)、500(融点83~92℃)、655(融点93~102℃)、シリコーンワックスであるモメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン社製のSF1642(融点60~70℃)等が挙げられる
【0031】
(C)成分のワックスの配合量は適宜調整されるが、全組成中に1~40質量%であり、好ましくは2~35質量%であり、より好ましくは5~30質量%である。配合量が過度に少ないと、カール効果およびその持続性が低下する。逆に、配合量が過度に多くなると、べたつきが出て粘性が高くなり、塗布しにくく、美しく仕上げることが難しくなる。
【0032】
(C)成分のワックスは、融点が70℃以上のワックスを含むことが好ましい。そのようなワックスの具体例としては、たとえば、カルナウバワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックスなどが挙げられるが、なかでもカルナウバワックスがとくに好ましく用いられる。融点が70℃以上のワックスを含むことにより、耐水性、カール効果およびその持続性がより向上する。融点が70℃以上のワックスの配合量は全組成に対し1~30質量%であることが好ましく、より好ましくは2~25質量%である。また融点が70℃以上のワックスの全ワックスに対する比率は重量比で0.2~1であることが好ましく、より好ましくは0.3~0.8である。
【0033】
本発明では上記(A)~(C)成分に加えて、ワックス等の油性成分を均一かつ安定に乳化するため、(D)成分として親水性界面活性剤を含むことができる。親水性界面活性剤を添加する方法は常法に従えばよく、たとえば、水相または油相を形成する成分中に界面活性剤を配合する方法、界面活性剤の原料である高級脂肪酸等と塩基成分を個別に油相および水相に添加して系中で反応させることによって界面活性剤を合成する方法などが挙げられる。また、油性成分として用いられるワックス中に有効量の高級脂肪酸を含んでいる場合には、その高級脂肪酸と別途添加される塩基成分を系中で反応させることによりその場で親水性界面活性剤を合成することもできる。たとえば、サラシミツロウは酸価17~22mg/gを有しており、塩基との反応によって高級脂肪酸塩を形成する。
【0034】
使用可能な親水性界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸の無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α-スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-メチル-N - アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N-アシルアミノ酸塩、N-アシル-N-アルキルアミノ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。これらの中でも、炭素数12~24を有する高級脂肪酸の無機塩または有機塩および酸価10以上の天然ワックスと無機または有機の塩基性物質との組合せが、乳化工程の簡便さ、乳化の安定性およびカール効果を損ねないことなどの点から好ましく用いられる。酸価10以上の天然ワックスとしては、ミツロウおよびサラシミツロウが好ましく用いられる。
【0035】
親水性界面活性剤として炭素数12~24を有する高級脂肪酸の無機塩および/または有機塩を用いる場合、その配合量は、遊離脂肪酸として全組成中に0.1~10質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5~8質量%である。また、酸価10以上の天然ワックスと塩基性物質との組合せにより系内で親水性界面活性剤を合成する場合には、生成する高級脂肪酸塩の量が好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~12質量%となるような割合で選択される。反応に使用される塩基性物質の量は、天然ワックスの酸価から計算される酸を中和するのに必要なモル数に対し、好ましくは0.5~1.5倍である。親水性界面活性剤が、酸価10以上の天然ワックスと無機および/または有機の塩基性物質との組合せにより生成する親水性界面活性剤を使用すると、親水性界面活性剤と(C)成分との相溶性に優れるため、より好ましい性能が得られる。なお、本発明においては、(C)成分として使用する酸価10以上の天然ワックスに含まれる高級脂肪酸が系内で塩基性物質と反応することにより高級脂肪酸塩に変化することがあっても、配合した天然ワックスの量は(C)成分のワックス量として扱われるものとする。
【0036】
親水性非イオン界面活性剤は、HLB値が12を超えるものであり、その具体例として、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレンアルキル共変性オルガノポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン等が挙げられる。かかる親水性非イオン界面活性剤の使用量は、耐水性の面から5質量%以下、とくに4質量%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明では上記(A)~(D)成分に加えて、(E)成分として油溶性樹脂を配合することができる。油溶性樹脂は、内相である油性成分に溶解可能であれば特に限定されない。例えば、トリメチルシロキシケイ酸、部分架橋オルガノポリシロキサン、トリメチルシロキシシリルプロピルカルバモイルプルラン、フッ素変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、シリコーンデンドリマー変性樹脂化合物等のシリコーン系樹脂;ロジン酸ペンタエリスリット等のロジン酸系樹脂;キャンデリラ樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリイソブチレンなどが挙げられる。なお、キャンデリラ樹脂とは、キャンデリラワックスを有機溶剤にて分別抽出して得られる樹脂分であって、樹脂分含量が好ましくは65%以上、更に好ましくは85%以上のものであり、市販品例としてキャンデリラ樹脂E-1(日本ナチュラルプロダクツ社製) を挙げることができる。
【0038】
本発明の化粧料には、(F)成分として色材を配合することができる。色材は、化粧料の分野で一般に使用されているものであれば、形状、粒子径、粒子構造によりとくに限定されない。形状の具体例としては、たとえば、球状、板状、針状等が挙げられる。粒子径の具体例としては、たとえば、煙霧状、微粒子、顔料級等が挙げられる。また、粒子構造としては、多孔質であっても無孔質であってもよい。(F)色材の配合量は、適宜選択することができる。好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.5~15質量%である。色材の配合量が過度に多くなると、付着性が低下し易く、逆に、過度に少ないと色材の効果が不十分となる場合がある。
【0039】
(F)色材の具体例としては、たとえば、無機粉体類、光輝性粉体類、有機粉体類、色素粉体類、金属粉体類、複合粉体類等が挙げられる。より具体的には、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ、亜鉛華、二酸化チタン、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック、低次酸化チタン、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、オキシ塩化ビスマス、チタン- マイカ系パール顔料等の無機顔料;ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂等のコポリマー樹脂、ポリプロピレン系樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の有機高分子樹脂粉体;赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色228号、赤色405号、橙色203号、黄色205号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色404号、緑色3号、これらのジルコニウムレーキ、バリウムレーキ、アルミニウムレーキ等の有機顔料;クロロフィル、β-カロチン等の天然色素;染料等が挙げられる。これらの色材は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用することもできる。これらの中でも、黒色系の色材、特に黒酸化鉄およびカーボンブラックを使用することが好ましい。
【0040】
本発明の水中油型睫毛用化粧料は、前記成分のほか、通常の化粧料に用いられる成分、例えば、融点が50℃未満の液状ないし半固形油剤、油性ゲル化剤、水溶性増粘剤、顔料分散剤、多価アルコール類、低級アルコール、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、保湿剤、香料、酸化防止剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、消泡剤、繊維、染料、各種エキス等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。
【0041】
前記融点が50℃未満の液状ないし半固形油剤としては、具体的には、軽質流動イソパラフィン、イソドデカン等の揮発性炭化水素油;デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、低重合度ジメチルポリシロキサン、メチルトリメチコン等の揮発性シリコーン油;流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、ポリブテン、水素添加ポリイソブテンなどの炭化水素油;オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類;セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、ホホバ油等のエステル類;オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類;不揮発性のジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、部分架橋型オルガノポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリシロキサン等のフッ素系油剤類;ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体類;等が挙げられる。しかし、液状油剤を多量に含有すると耐水性とカール効果が低下することから、液状油剤を含有する場合は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0042】
油性ゲル化剤としては、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、ステアリン酸アルミニウム、ジステアルジモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物等を挙げることができ、安定性のおよび使用性向上のため適宜含有させることができる。
【0043】
水溶性増粘剤または顔料(粉体)分散剤としては、ベントナイト、キサンタンガム、セルロースガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これらの増粘剤または分散剤は、1種又は2種以上が選択されて用いられる。中でも、キサンタンガムは塗布のし易さを損ねることなく粘度調整が容易であり好ましく用いられる。増粘剤または分散剤の配合量は好ましくは0.1~20質量%であり、さらに好ましくは0.2~10質量%である。配合量が過度に少ないと十分な粘性に調整することが難しい場合がある。一方、配合量が過度に多くなると粘性が高くなりすぎ、なめらかさを欠く場合がある。
【0044】
本発明においては、上記の各成分を用いること以外は、常法により水中油型睫毛用化粧料を製造することができる。水相(以下、A相と称することがある)および油相(以下、B相と称することがある)をそれぞれ調製し、両者を加温した後に混合して水中油型乳化物としたのち常温まで冷却して製造することができる。この際、任意成分として水溶性化合物を配合する場合にはA相に添加され、ワックスなどの油性成分を配合する場合には、B相に添加される。また、親水性界面活性剤の原料である塩基成分をA相、高級脂肪酸および/または特定酸価の天然ワックスをB相に添加し、撹拌下にA相をB相に徐々に添加して系中で両者を反応させることにより界面活性剤を合成し、それを用いて水中油型乳化物を調製することもできる。
【0045】
本発明の油性睫用化粧料は、マスカラ、マスカラ用下地、マスカラ用トップコート、睫毛美容液等として用いることができる。化粧料の形態は用途に応じて適宜選択すればよく、たとえば、クリーム状、液状等とすることができる。本発明の水中油型睫毛用化粧料は、例えば、ブラシ、樹脂成型塗布具、金属成型塗布具などの適宜の用具を用いて睫毛に塗布することができる。
【0046】
本発明の水中油型睫毛用化粧料を用いて化粧をした場合、水中油型睫毛用化粧料を除去する際に通常用いられるリムーバーを使用することなく、35℃~45℃程度の温水を用いるだけで容易に化粧を落とすことができる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の記載における処方中の配合量は、特に断りのない限り全量に対する質量%である。
また、実施例および比較例における水中油型睫毛用化粧料の評価方法は、以下のとおりである。
【0048】
(評価方法a~e)
下記評価項目a~eについて、評価者10名が自身の睫毛に各試料を塗布し、下記(1)に示す評価基準に基づき0~6の7段階で評点を付けた。評価者10名の評点の合計を算出し、下記(2)に示す4段階判定基準により水中油型睫毛用化粧料としての性能を判定した。なお、評価項目aの耐水性および評価項目eのカール効果の持続性については、塗布後6時間における化粧料のにじみ具合により評価した。さらに、評価項目bの温水(40℃)での除去性については、40℃の温水(水道水)に市販のコットンを浸し、そのコットンで塗布後の睫毛を挟み込んで30秒間馴染ませた後、拭き取り、睫毛上の試料の残存量を目視にて評価した。
【0049】
(評価項目)
a.耐水性(常温)
b.温水(40℃)での除去性
c.塗り易さ
d.カール効果
e.カール効果の持続性
【0050】
(1)評価基準
(評点):(評価)
6:非常に良い
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
0:非常に悪い
【0051】
(2)4段階判定基準
(判定):(評点の合計点)
◎:合計点が46~60点
○:合計点が31~45点
△:合計点が16~30点
×:合計点が0~15点
【0052】
実施例1~4及び比較例1~3
<水中油型マスカラ>
表1に示す処方のマスカラを下記の製造手順に従って調製し、耐水性(常温)、温水での除去のし易さ、塗り易さ、カール効果、カール効果の持続性について上記の方法により官能評価を行った。その結果も併せて表1に示す。
【0053】
(製造手順)
(1)表1に示すA相用の成分を85℃に加熱し、混合してA相(水相)を調製した。
(2)表1に示すB相用の成分を95℃に加熱し、混合してB相(油相)を調製した。
(3)ディスパーミキサーを用いて、上記のA相にB相を混合し、サラシミツロウに含まれているカルボン酸基をアミノメチルプロパノールで中和することにより系中で高級脂肪酸塩を形成するとともに、A相中に含まれる親水性非イオン性界面活性剤の作用により乳化物を調製した。
(4)得られた乳化物を攪拌下で60℃まで冷却し、C相の成分を投入し、ディスパーミキサーで混合した。
(5)均一になった乳化物を32℃まで冷却し、水中油型マスカラを得た。
【0054】
【0055】
※1 商品名 レオドールTW-S120V(花王社):HLB値14.7の固体状非イオン性界面活性剤
※2 商品名 NIKKOL BC-20TX(日光ケミカルズ社製):HLB値17の固体状非イオン性界面活性剤
※3 商品名 レオドールSP-S10V(花王社):HLB値4.7の固体状非イオン性界面活性剤
※4 商品名 WHITE BEES WAX(三木化学社製):酸価17~22のワックス
※5 商品名 精製カルナウバワックスNo.1(セラリカ野田社製)
※6 商品名 EMALEX GWS-320(日本エマルジョン社):HLB値8の固体状非イオン性界面活性剤
※7 商品名 ヨドゾールGH41F(アクゾノーベル社製):固形分濃度45%
※8 商品名 ヨドゾールGH810F(アクゾノーベル社製):固形分濃度46%
※9 商品名 ダイトゾール5000SJ(大東化成社製):固形分濃度50%
【0056】
表1の結果から明らかなように、実施例1~4のマスカラは、比較例1~3のマスカラに比べて耐水性、カール効果およびその持続性に優れるとともに、マスカラ専用のリムーバーを用いなくても温水だけで除去することができる。とくに、(A)成分として(a-1)成分の(スチレン/アクリレーツ)コポリマーと(a-2)成分のアクリレーツコポリマーを併用する実施例1のマスカラは、クレンジング性および塗布性が良好である。また、(A)成分として(a-1)成分の(スチレン/アクリレーツ)コポリマーのみを使用する場合であっても、(B)成分の非イオン界面活性剤の配合量を増やした実施例3のマスカラも、同様にクレンジング性および塗布性が良好である。一方、(B)成分を配合しない比較例1は、クレンジング性に劣り、(a-1)成分の(スチレン/アクリレーツ)コポリマーに代えて(a-2)成分のアクリレーツコポリマーまたは(アクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル)コポリマーを配合した比較例2または比較例3のマスカラは、クレンジング性には優れているものの、耐水性、カール効果およびその持続性において満足するものではなかった。
【0057】
実施例5~8及び比較例4~5
<水中油型マスカラ>
表2に示す処方のマスカラを上記と同様の製造手順で調製し、耐水性(常温)、温水での除去のし易さ、塗り易さ、カール効果、カール効果の持続性について上記の方法により官能評価を行った。その結果を処方と併せて表2に示す。
【0058】
【0059】
※10 商品名 EMALEX GWS-304(日本エマルジョン社):HLB値2の固体状非イオン性界面活性剤
※11 商品名 EMALEX RWIS-320(日本エマルジョン社):HLB値6の液状非イオン性界面活性剤
※12 商品名 EMALEX SWS-12(日本エマルジョン社):HLB値8の固体状非イオン性界面活性剤
※13 商品名 ユニオックス GT-20IS(日本油脂社):HLB値8の液状非イオン性界面活性剤
※14 商品名 EMALEX 615(日本エマルジョン社):HLB値12の固体状非イオン性界面活性剤
※15 商品名 レオドール TW-O120V(花王社):HLB値15の液状非イオン性界面活性剤
【0060】
表2の結果から明らかなように、実施例5~8のマスカラは、耐水性、カール効果およびその持続性、温水での除去性に優れている。一方、HLBが2の非イオン性界面活性剤を配合した比較例4のマスカラは、温水での除去性が十分でなく、また、HLBが15の非イオン性界面活性剤を配合した比較例5のマスカラは、耐水性が極めて不足しており、カール効果およびカール効果の持続性にも劣っている。
【0061】
実施例9~11
<水中油型マスカラ>
表3に示す処方のマスカラを上記と同様の製造手順で調製した。実施例9では(A)成分として(スチレン/アクリレーツ/メタクリル酸アンモニウム)コポリマーを使用し、実施例10では(A)成分として、コア部が(アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸メチル)コポリマーで、シェル部が(アクリレーツ/メチルスチレン/スチレン)コポリマーアンモニウムのコアシェル型のポリマー(コア部15%、シェル部85%)を使用した。さらに、実施例11では、実施例3で使用したカルナウバロウに代えてマイクロクリスタリンワックス(融点86~90℃)を使用した。得られたマスカラについて、耐水性(常温)、温水での除去のし易さ、塗り易さ、カール効果、カール効果の持続性を上記の方法により評価した。その結果を処方と併せて表3に示す。
【0062】
【0063】
※16 商品名 Hi-Mic-1090(日本精蝋社製)
※17 商品名 Syntran5760(インターポリマー社製):固形分濃度41%
※18 商品名 エマポリーCE-119N(岐阜セラック社製):固形分濃度47%
【0064】
表3に示すように、実施例9~11のマスカラは、実施例3のマスカラに比べてカール効果およびカール効果の持続性の点でやや及ばないものの、温水での除去性においてはより優れていた。とくに、コアシェル型ポリマーエマルションを使用した実施例10のマスカラは、耐水性と温水での除去性がともに極めて優れた性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、水中油型睫毛用化粧料において卓越した化粧持ち(耐水性)に加えて、温水による除去性に優れ、且つ、カール効果およびカール効果の持続性にも優れた水中油型睫毛用化粧料が提供される。