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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】スロープ装置およびスロープユニット
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/00 20060101AFI20221220BHJP
   E01C 9/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E04F11/00 100
E01C9/08 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018157440
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2019105151
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2017236180
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【弁理士】
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-143913(JP,A)
【文献】特開2003-213899(JP,A)
【文献】実開平03-002003(JP,U)
【文献】特開2017-198060(JP,A)
【文献】特許第6148097(JP,B2)
【文献】国際公開第2004/085761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00
E01C 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜して配置されるスロープ部と、
前記スロープ部を高さ方向に調整可能に支持する支持部と、を有するスロープ装置であって、
前記支持部は、
床面に対して接地し、雄ネジ部を有する調整部材と、
前記スロープ部に対して固定され、前記調整部材と螺合する螺合部材と、を有し、
側面視において、前記雄ネジ部の軸線は、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜していることを特徴とするスロープ装置。
【請求項2】
前記調整部材の調整範囲のうち下限から上限までにおいて、前記雄ネジ部の軸線は、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜していることを特徴とする請求項に記載のスロープ装置。
【請求項3】
傾斜して配置されるスロープ部と、
前記スロープ部を高さ方向に調整可能に支持する支持部と、を有するスロープ装置であって、
前記支持部は、
床面に対して接地し、雄ネジ部を有する調整部材と、
前記スロープ部に対して固定され、前記調整部材と螺合する螺合部材と、を有し、
前記調整部材および前記螺合部材をそれぞれ有する支持ユニットが、前記スロープ部の幅方向に離れた位置に少なくとも2つ配置され、
背面視において、前記2つの支持ユニットにおける前記雄ネジ部の軸線は、上側が互いに近く下側が互いに離れた状態に傾斜していることを特徴とするスロープ装置。
【請求項4】
前記スロープ部は、勾配が1/6以下であり1/12以上であることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のスロープ装置。
【請求項5】
前記調整部材は、床面に設置する受座を有し、
前記受座は、底面が湾曲していることを特徴とする請求項ないしの何れか1項に記載のスロープ装置。
【請求項6】
前記スロープ部は、表面に幅方向に沿った凸条が形成され、
側面視において、前記凸条は鋸刃状であることを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載のスロープ装置。
【請求項7】
前記スロープ部は、表面に幅方向に沿った凸条が形成され、
側面視において、前記凸条は、前記スロープ部の表面とのなす傾斜角度が、下段側の傾斜角度よりも上段側の傾斜角度の方が大きいことを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載のスロープ装置。
【請求項8】
前記スロープ部は、幅方向における略中央に、前記スロープ部の表面の色と異なる色が着色された前後方向に沿った線状部を有することを特徴とする請求項1ないしの何れか1項に記載のスロープ装置。
【請求項9】
請求項1ないしの何れか1項に記載のスロープ装置を少なくとも2つ幅方向に連結させることを特徴とするスロープユニット。
【請求項10】
前記2つのスロープ装置を合わせた幅方向における略中央に、前記スロープ部の表面の色と異なる色が着色された前後方向に沿った線状部を有することを特徴とする請求項に記載のスロープユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設用のスロープ装置およびスロープユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、段差を容易に乗り越えるために仮設用のスロープ装置が用いられている。特許文献1に開示された携帯用スロープは、一対のスロープ板と、各スロープ板を折畳み自在に連結するヒンジ部材と、各スロープ板の他面において各スリープ板の側端面に沿って相互に離間して配置される複数のストッパ部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-342016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような仮設用のスロープ装置を、例えば作業現場で用いる場合、作業現場に施された様々な高さの段差に対応させる必要がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、様々な段差に対応できるスロープ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、傾斜して配置されるスロープ部と、前記スロープ部を高さ方向に調整可能に支持する支持部と、を有するスロープ装置であって、前記支持部は、床面に対して接地し、雄ネジ部を有する調整部材と、前記スロープ部に対して固定され、前記調整部材と螺合する螺合部材と、を有し、側面視において、前記雄ネジ部の軸線は、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、様々な段差に対応できるスロープ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態のスロープ装置の構成の一例を示す分解斜視図である。
図2】スロープ装置の構成の一例を示す平面図および側面図である。
図3】スロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図4】スロープ装置の一部の構成の一例を示す断面図である。
図5】スロープ装置の一部の構成の一例を示す断面図である。
図6】スロープ装置を異なる段差に設置したときの一例を示す側面図である。
図7】第2の実施形態のスロープ装置の構成の一例を示す側面図である。
図8】スロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図9】スロープ装置の一部の構成の一例を示す断面図である。
図10】第3の実施形態のスロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図11】第4の実施形態のスロープ装置の構成の一例を示す斜視図である。
図12】第5の実施形態のスロープ装置の構成の一例を示す分解斜視図である。
図13】スロープ装置の構成の一例を示す平面図である。
図14】スロープ装置の構成の一例を示す側面図である。
図15】スロープ装置の構成の一例を示す底面図である。
図16A】スロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図16B】スロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図16C】スロープ装置の一部の構成の一例を示す側面図である。
図17】把手部の一例を示す斜視図である。
図18】調整部材の構成の一例を示す図である。
図19A】スロープ装置の高さを調整したときの一例を示す背面図である。
図19B】スロープ装置の高さを調整したときの一例を示す背面図である。
図20A】スロープ装置の高さを調整したときの一例を示す断面図である。
図20B】スロープ装置の高さを調整したときの一例を示す断面図である。
図21】スロープユニットの構成の一例を示す斜視図である。
図22】凸条の構成の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態に係るスロープ装置について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1はスロープ装置100の構成を示す分解斜視図である。図2はスロープ装置100の構成を示す平面図および側面図である。図3はスロープ装置100の一部の構成を示す側面図である。なお、以下では、段差のうち下側を下段といい、上側を上段というものとする。また、各図には、便宜上、水平方向のうち、下段から上段に向かう前側をFrとし、後側をRrとし、右側をRとし、左側をLとして図示する。
本実施形態のスロープ装置100は、スロープ部10と、支持部50とを備えている。
【0009】
まず、スロープ部10について説明する。
スロープ部10は傾斜して配置され、段差に対して人や物を緩やかな勾配で通過させる機能を有する。スロープ部10は、平面視において、例えば、前後の長さが左右の長さに比べて長い略矩形状である。
スロープ部10は、主スロープ部11と、第1のスロープ部21と、第2のスロープ部31と、第3のスロープ部41とを有する。スロープ部10は、後側から前側に向かって、第1のスロープ部21、第2のスロープ部31、第3のスロープ部41、主スロープ部11の順に配置される。
【0010】
主スロープ部11は、第3のスロープ部41と、段差の上段との間に位置する。主スロープ部11は、複数(例えば8つ)のスロープ部材12と、複数(例えば5本)の大引き部材16とを有する。
スロープ部材12は、例えば、左右の長さが前後の長さに比べて長い略平板状である。スロープ部材12は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。また、スロープ部材12は、隙間を空けずに前後に並列に配置される。更に、スロープ部材12は、上面に滑止め突起としての凸条が左右方向(幅方向)に亘って一体で施されている。なお、滑止め突起は凸条である場合に限られず、上面全体に亘って、ブラスト処理したり、チェッカープレートを固定したりすることで構成してもよい。滑止め突起の構成は、他のスロープ部でも同様である。
また、主スロープ部11の前部のスロープ部材12、および、主スロープ部11の中央部のスロープ部材12には、それぞれ左右の両側に、後述する調整部材58、68にアクセスするための孔13を有する。
【0011】
また、主スロープ部11のうち後部のスロープ部材12は、他のスロープ部材12と形状が異なっている。
図3(a)は、図2(b)の側面図の一部を拡大した拡大図である。なお、図3(a)では、後述するアングル部材36、46を透過した状態で図示している。図3(a)に示すように、後部のスロープ部材12は、後端に略円形の回動部14を有する。回動部14は第3のスロープ部41の後述する被回動部43と嵌まり合い、互いに回動する。すなわち、第3のスロープ部41は、主スロープ部11に対して回動部14の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。なお、回動部14と被回動部43とは、一定の回動範囲を超えると互いに当接して回動が規制される。
また、後部のスロープ部材12は、後端から前側に向かって延出する保持部15を有する。保持部15の上方には隙間があり、保持部15は前側から隙間に挿入された大引き部材16を下側から保持する。
【0012】
大引き部材16は、スロープ部材12の下面に配置され、主スロープ部11の強度を向上させる。大引き部材16は、前後方向に沿った断面略矩形の中空状の部材である。大引き部材16は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。図2(a)の二点鎖線で示すように、複数の大引き部材16は間隔をあけて左右に並列に配置される。大引き部材16は、スロープ部材12の下面にボルトやリベットを用いて固定される。したがって、各スロープ部材12と各大引き部材16とは、互いに交差するように構成される。
【0013】
第1のスロープ部21は、段差の下段に接地し、下段から連続する傾斜面を構成する。第1のスロープ部21は、第2のスロープ部31の後側に位置する。第1のスロープ部21は、複数(例えば6つ)のスロープ片22を有する。
スロープ片22は、例えば、前後の長さが左右の長さに比べて長い略平板状である。スロープ片22は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。複数のスロープ片22はほぼ隙間を空けずに左右に並列に配置される。更に、スロープ片22は、上面に滑止め突起としての凸条が左右方向に亘って一体で施されている。なお、スロープ片22は、前後の長さが左右の長さに比べて短い略平板状であってもよく、可撓性のある合成樹脂製であってもよい。
【0014】
また、図3(a)に示すように、スロープ片22は、前端に被回動部23を有する。被回動部23は、第2のスロープ部31の後述する回動部32と嵌まり合い、互いに回動する。すなわち、スロープ片22は、第2のスロープ部31に対して回動部32の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。なお、回動部32と被回動部23とは、一定の回動範囲を超えると互いに当接して回動が規制される。本実施形態のスロープ片22は、左右に並列に配置されていることから、各スロープ片22は第2のスロープ部31に対してそれぞれ独立して回動可能である。
また、スロープ片22は、後端および前端にそれぞれ段差の下段に接地する座部24a、24bを有する。座部24a、24bは、スロープ片22の左右方向に亘って形成される。なお、座部24bは、被回動部23の下側に位置する。
また、スロープ片22は、傾斜の開始を認識させるために、上面が第2のスロープ部31、第3のスロープ部41、主スロープ部11の上面と異なる色、例えば赤色に着色されていることが好ましい。着色は、アルマイト処理等の表面処理での着色、塗料を付着する着色、シール等を貼付する着色、着色剤を混合させた着色等が含まれる。
【0015】
第2のスロープ部31は、第1のスロープ部21から連続する傾斜面を構成する。第2のスロープ部31は、第1のスロープ部21の前側かつ第3のスロープ部41の後側に位置する。第2のスロープ部31は、例えば、左右の長さが前後の長さに比べて長い略平板状であり、一枚で構成される。第2のスロープ部31は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。第2のスロープ部31は、上面に滑止め突起としての凸条が左右方向に亘って一体で施されている。
第2のスロープ部31は、後端に回動部32を有し、前端に被回動部33を有する。被回動部33は、第3のスロープ部41の後述する回動部42と嵌まり合い、互いに回動する、すなわち、第2のスロープ部31は、第3のスロープ部41に対して回動部42の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。なお、回動部42と被回動部33とは、一定の回動範囲を超えると互いに当接して回動が規制される。
【0016】
また、第2のスロープ部31は、前後方向の中央および前端にそれぞれ段差の下段に接地する座部34a、34bを有する。座部34aの下端には、ゴムなどの滑止部材35が結合される。また、座部34bは、被回動部33の下側に位置し、二股状に前後に分かれた状態で下段に接地する。座部34bを2箇所で接地させることで、人や物が第2のスロープ部31と第3のスロープ部41との間を行き来した場合であっても、第2のスロープ部31が座部34bを支点としてシーソ状に揺れ動くことを防止することができる。
【0017】
第3のスロープ部41は、第2のスロープ部31から連続する傾斜面を構成する。第3のスロープ部41は、第2のスロープ部31の前側かつ主スロープ部11の後側に位置する。第3のスロープ部41は、第2のスロープ部31と同様の構成であり、異なる点を中心にして説明する。
第3のスロープ部41は、後端に回動部42を有し、前端に被回動部43を有する。上述したように、被回動部43は、主スロープ部11の回動部14と嵌まり合い、互いに回動する。すなわち、第3のスロープ部41は、主スロープ部11に対して回動部14の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。
【0018】
また、第3のスロープ部41は、前後方向の中央および前端にそれぞれ段差の下段に接地する座部44a、44bを有する。座部44aの下端には、ゴムなどの滑止部材45が結合される。また、座部44bは、被回動部43の下側に位置し、二股状に前後に分かれた状態で下段に接地する。
【0019】
なお、回動部32と被回動部23、回動部42と被回動部33、回動部14と被回動部43とはそれぞれ嵌まり合っていることから前後方向に離れないが、互いに相対的に左右方向にスライドしてしまう。したがって、第2のスロープ部31には左右方向の両端にストッパ部材としてL字状のアングル部材36が固定される。アングル部材36は、第1のスロープ部21および第3のスロープ部41が左右方向にスライドしないように規制する。また、第3のスロープ部41は、左右方向の両端にストッパ部材としてのL字状のアングル部材46を有する。アングル部材46は、主スロープ部11が左右方向にスライドしないように規制する。
【0020】
次に、支持部50について説明する。
支持部50はスロープ部10の下側に配置される。また、支持部50は、スロープ部10を高さ方向に調整可能に支持する。本実施形態の支持部50は、前後方向に離れて位置する第1の支持部50aと第2の支持部50bとを有する。
【0021】
第1の支持部50aはスロープ部10の前後方向の中央側に位置する。
第1の支持部50aは、根太部材51と、2つの支持ユニット52とを有する。
根太部材51は、大引き部材16の下面に配置され、主スロープ部11の強度を向上させる。根太部材51は、スロープ部10の左右方向の右端から左端までの長さを有し、平面視において主スロープ部11の中央部のスロープ部材12に形成された両側の孔13と重なるように配置される。根太部材51は、例えば鉄製であって、断面略コ字状の部材である。根太部材51は、大引き部材16の下面にボルトやリベットを用いて固定される。したがって、根太部材51と各大引き部材16とは、互いに交差するように構成される。
【0022】
2つの支持ユニット52は、根太部材51の左右両側に配置される。具体的には、2つの支持ユニット52は、平面視においてそれぞれ主スロープ部11の中央部のスロープ部材12に形成された両側の孔13と重なるように配置される。2つの支持ユニット52は、それぞれ同一の構成である。
図4は、図2(b)のI-I線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。
図4に示すように、支持ユニット52は、揺動支持部53と、揺動部54と、調整部材58とを有する。
揺動支持部53は、揺動部54を揺動可能に支持すると共に、調整部材58を高さ方向に調整可能に支持する。揺動支持部53は、例えば鉄製であって、前後方向から見て下側に向かって開口する略コ字状の部材である。また、揺動支持部53のコ字状の内部には雌ネジ部としてのナット57が軸線を高さ方向に沿った状態で溶接等を用いて固定される。
【0023】
揺動部54は、揺動支持部53に対して揺動する。揺動部54は、例えば鉄製であって、前後方向から見て下側に向かって開口する略コ字状の部材である。揺動部54は、揺動支持部53を拡大した形状であって、揺動支持部53の外側に遊嵌した状態で重なり合う。揺動支持部53と、揺動部54とは、それぞれ垂下した側板同士がボルト55とナット56によってある程度の遊びを有した状態で接続される。したがって、揺動部54は、揺動支持部53に対してボルト55の軸線(La)周り、すなわち左右方向に沿った軸線周りに揺動可能である。また、揺動部54は、上面が根太部材51の下面に溶接等を用いて固定される。
【0024】
調整部材58は、スロープ部10の下側から突出する突出量を調整でき、段差の下段に接地することでスロープ部10を支持する。調整部材58は、いわゆるアジャスタボルトを用いることができる。調整部材58は、下端に段差の下段と接地し、調整部材58の軸線周りに回動可能な受け座59を有する。一方、調整部材58は、上端に作業者が六角レンチ等の工具Tを差し込むことができる操作孔を有する。調整部材58の雄ネジ部が、揺動支持部53のナット57と螺合することで、調整部材58は軸線が高さ方向に沿った状態に配置される。ここで、揺動部54および根太部材51には、調整部材58が挿通する孔をそれぞれ有する。したがって、調整部材58は、揺動部54および根太部材51を挿通して、上端がスロープ部10の孔13内に位置する。
ここで、作業者は工具Tを調整部材58の上端の操作孔に差し込み、一方向に回転させることで、ナット57と螺合している位置が変化して、全体が下側に向かって進出する。一方、作業者が他方向に回転させることで、ナット57と螺合している位置が変化して、全体が上側に向かって後退する。このように、作業者は調整部材58を回転させることで、スロープ部10の下側から突出する調整部材58の突出量を調整することができる。
【0025】
第2の支持部50bはスロープ部10の前端側に位置する。なお、以下では第2の支持部50bのうち第1の支持部50aと異なる構成を主に説明する。
第2の支持部50bは、根太部材61と、2つの支持ユニット62と、接地部70とを有する。
根太部材61は、第1の支持部50aの根太部材51と同様の構成であり、平面視において主スロープ部11の前端のスロープ部材12に形成された両側の孔13と重なるように配置される。
【0026】
2つの支持ユニット62は、根太部材61の左右両側に配置される。具体的には、2つの支持ユニット62は、平面視においてそれぞれ主スロープ部11の前端のスロープ部材12に形成された両側の孔13と重なるように配置される。2つの支持ユニット62は、それぞれ同一の構成である。
図5は、図2(b)のII-II線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。
図5に示すように、支持ユニット62は、揺動支持部63と、揺動部64と、調整部材68とを有する。
揺動支持部63は、揺動部64を揺動可能に支持すると共に、調整部材68を高さ方向に調整可能に支持する。揺動支持部63は、例えば鉄製であって、前後方向から見て上側に向かって開口する略コ字状の部材である。また、揺動支持部63のコ字状の外部には雌ネジ部としてのナット67が軸線を高さ方向に沿った状態で溶接等を用いて固定される。
【0027】
揺動部64は、揺動支持部63に対して揺動する。揺動部64は、第1の支持部50aの揺動部54と同様の構成である。揺動部64は、一対の側板が、揺動支持部63の一対の側板と遊嵌した状態に重なり合う。揺動支持部63と、揺動部64とは、それぞれ側板同士がボルト65とナット66によってある程度の遊びを有した状態で接続される。したがって、揺動部64は、揺動支持部63に対してボルト65の軸線(Lb)周り、すなわち左右方向に沿った軸線周りに揺動可能である。また、揺動部64は、上面が根太部材61の下面に溶接等を用いて固定される。
【0028】
調整部材68は、スロープ部10の下側から突出する突出量を調整でき、段差の下段に接地することでスロープ部10を支持する。調整部材68は、第1の支持部50aの調整部材58よりも雄ネジ部が長いだけで、その他は同様の構成である。調整部材68は、下端に段差の下段と接地し、調整部材68の軸線周りに回動可能な受け座69を有する。
したがって、作業者は工具Tを調整部材68の上端の操作孔に差し込み、一方向に回転させることで、ナット67と螺合している位置が変化して、全体が下側に向かって進出する。一方、作業者が他方向に回転させることで、ナット67と螺合している位置が変化して、全体が上側に向かって後退する。このように、作業者は調整部材68を回転させることで、スロープ部10の下側から突出する調整部材68の突出量を調整することができる。
【0029】
接地部70は、段差の上段と接地する。
図3(b)は、図2(b)の一部を拡大した拡大図である。図3(b)に示すように、接地部70は、主スロープ部11の前側に位置する。接地部70は、左右方向から見て略L字状であり、左右方向の長さがスロープ部10と略同一である。接地部70は、例えば鉄製であり、折曲げ成形により形成される。
接地部70は、固定部71と、載置部72とを有する。
固定部71は、鉛直方向に沿った板状である。また、固定部71は、揺動支持部63の前端にボルトやリベット等を用いて固定される。したがって、接地部70はスロープ部10の傾斜角度が変更されてもスロープ部10に同期して傾斜することなく、常に一定の姿勢を維持することができる。
載置部72は略水平な板状であり、段差の上段に載置することで、接地部70が段差の上段と接地する。載置部72は、高さが主スロープ部11の前端よりも僅かに高く位置する。また、載置部72は、スロープ部10が揺動部64に同期して揺動し、傾斜角度が変更されたときにスロープ部10と干渉しないように、主スロープ部11との間に隙間がある(後述する図6を参照)。また、載置部72は、段差の上段に固定するための複数の孔73を有する。
また、載置部72は、傾斜の開始を認識させるために、上面が第2のスロープ部31、第3のスロープ部41、主スロープ部11の上面と異なる色、例えば赤色に着色することが好ましい。着色は、表面処理での着色、塗料を付着する着色、シール等を貼付する着色等が含まれる。
【0030】
次に、上述したように構成されるスロープ装置100を段差がある作業現場において設置する方法について説明する。ここでは、左右方向の長さを十分に確保するために、2つのスロープ装置100を左右に並列するように設置する。
まず、作業者は、予め組み立てられた2つのスロープ装置100を作業現場に持ち込む。このとき、各スロープ装置100の支持ユニット52の調整部材58および支持ユニット62の調整部材68は、受け座59および受け座69がそれぞれ主スロープ部11に近接した状態であるものとする。すなわち、調整部材58、68はスロープ部10の下側からの突出量が短い状態である。
【0031】
次に、作業者は、接地部70の載置部72を段差の上段に載置し、スロープ部10の第1のスロープ部21、第2のスロープ部31、第3のスロープ部41を段差の下段に接地させる。このとき、作業者は、2つのスロープ装置100が左右にほぼ隙間なく並列するように配置する。
次に、作業者は、主スロープ部11の孔13を通して工具Tを調整部材58、68の操作孔に差し込み、一方向に回転させることで、調整部材58、68を下側に向けて進出させる。作業者は、調整部材58の受け座59および調整部材68の受け座69を段差の下段に接地するまで回転させる。したがって、スロープ部10は支持部50の調整部材58、68によって支持される。
次に、作業者は、載置部72の孔73を通してボルト等を用いて接地部70を段差の上段に固定することで、スロープ装置100を設置することができる。このように、本実施形態のスロープ装置100では、作業者が組み立てる必要がないことから、容易にスロープ装置100を設置することができる。なお、ここでは、2つのスロープ装置100を左右に並列するように設置する場合について説明したが、1つのスロープ装置100のみを設置してもよく、3つ以上のスロープ装置100を左右に並列するように設置してもよい。
【0032】
スロープ装置100が設置された状態では、スロープ部10を支持部50の調整部材58、68が支持する。したがって、スロープ部10上を通過するときの荷重は、第1のスロープ部21等や接地部70だけが受けるのではなく、支持部50の調整部材58、68を介して下段で受けることから、スロープ装置100の強度を向上させることができる。
【0033】
図6は、図2(b)に示す上段よりも高い上段の段差にスロープ装置100を設置した状態を示す側面図である。図6では、図2(b)よりもスロープ部10の下側から突出する調整部材58、68の突出量を長くするように調整することで、調整部材58、68を段差の下段に接地させている。このように、支持部50は、調整部材58、68を介してスロープ部10を高さ方向に調整可能に支持することから、様々な段差に対応することができる。本実施形態では、下段から上段までの高さが、例えば110mm~210mmまで対応することができる。
【0034】
また、スロープ部10は揺動部54を介して揺動支持部53に対して、すなわち調整部材58に対して揺動する。同様に、スロープ部10は揺動部64を介して揺動支持部63に対して、すなわち調整部材68に対して揺動する。すなわち、異なる段差に設置するために調整部材58、68の突出量を調整した場合であっても、揺動支持部53と揺動部54との間および揺動支持部63と揺動部64との間で相対的に揺動することから、スロープ部10の傾斜角度を変化させることができる。したがって、様々な段差に対応することができる。
【0035】
また、支持部50は、段差の上段に接地する接地部70を有する。具体的に、接地部70は、スロープ部10に設けられず、支持部50の揺動支持部63に接続されている。したがって、異なる段差に設置してスロープ部10の傾斜角度が変化したとしても、接地部70はスロープ部10の傾斜角度に同期して傾斜することがないので、接地部70と段差の上段との間で、意図しない隙間や段差が生じることを防止することができる。
【0036】
更に、接地部70の載置部72は、高さが主スロープ部11の前端よりも僅かに高く位置する。換言すると、主スロープ部11の前端は、高さが接地部70の載置部72よりも低い。そのため、接地部70からスロープ部10に向かって、例えば運搬台車が通過する場合でも、運搬台車がスロープ部10の前端に突き当たることを防止することができる。したがって、スロープ部10が前側から受ける外力を抑制できるので、スロープ部10の破損やスロープ部10の位置ズレを防止することができる。
また、接地部70とスロープ部10との間には隙間があることから、スロープ部10が揺動部64に同期して揺動し、傾斜角度が変更されたときにスロープ部10と干渉しないようにすることができる。
【0037】
また、第1のスロープ部21と第2のスロープ部31との間、第2のスロープ部31と第3のスロープ部41との間、第3のスロープ部41と主スロープ部11との間は、それぞれ左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。そのため、第1のスロープ部21、第2のスロープ部31、第3のスロープ部41を段差の下段に接地させたときに、下段に起伏があった場合でも起伏に追従するように各スロープ部間で回動する。したがって、下段に起伏があったとしても、各スロープ部を接地させることができることから、スロープ部10の浮き上りを抑制することができる。
【0038】
また、第1のスロープ部21は、左右に並列に配置されるスロープ片22を有する。スロープ片22は、第2のスロープ部31に対してそれぞれ独立して回動可能であることから、第1のスロープ部21を段差の下段に接地させたときに、下段に左右方向の起伏があった場合でも起伏に追従するように各スロープ片22が回動する。したがって、各スロープ片22は、下段から連続するように傾斜面を構成することができる。なお、スロープ片22を第2のスロープ部31等よりも可撓性のある材質(例えば合成樹脂製)にすることで、スロープ片22自体が撓み、更に起伏に追従させることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態の支持部50を、支持部80に置き換え、接地部70を接地部95に置き換えた構成である。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
図7は、スロープ装置200の構成の一例を示す側面図である。図8は、スロープ装置200のうち支持部80周辺の構成の一例を示す側面図である。図9は、図7に示すIII-III線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。なお、図7および図8では、後述するアングル部材97を透過した状態で図示している。
本実施形態の支持部80はスロープ部10の前端のみに構成される。支持部80は、揺動部81と、揺動支持部84と、調整部材88と、接地部95とを有する。
【0040】
揺動部81は、揺動支持部84に対して揺動する。揺動部81は、主スロープ部11の前側かつ接地部95の後側に位置する。揺動部81は、左右方向の長さがスロープ部10と略同一である。本実施形態の揺動部81は、上面が主スロープ部11と連続するように傾斜していることで、スロープ部10の一部としても機能する。
揺動部81は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。揺動部81は、後端に結合部82を有する。結合部82は、大引き部材16の前端を上下から挟持してボルトやリベットを用いて固定することで、大引き部材16を結合する。
【0041】
また、揺動部81は、揺動支持部84のガイド部85によって揺動がガイドされる被ガイド部83を有する。被ガイド部83は、揺動部81の下面に対して凹状に形成される。具体的には、被ガイド部83は、左右方向から見て左右方向に沿った水平な軸線(Lb)を中心として上面に向かって円弧状に湾曲した円の一部として形成される。被ガイド部83は、揺動部81の左右方向の右端から左端に亘って形成される。
また、揺動部81は、第1の実施形態と同様に、左右の両側に調整部材88にアクセスするための孔13を有する。
【0042】
揺動支持部84は、揺動部81を揺動可能に支持すると共に、調整部材88を高さ方向に調整可能に支持する。揺動支持部84は、左右方向の長さが揺動部81と略同一である。
揺動支持部84は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。また、揺動支持部84は、上部に揺動部81の被ガイド部83をガイドするガイド部85を有する。ガイド部85は、上側に向かって凸状に形成される。具体的には、ガイド部85は、左右方向から見て、軸線(Lb)を中心とした円の一部であって、中央が肉抜きのために中空に形成される。また、ガイド部85の頂部には、平面視において、孔13と連通する孔が形成される。
【0043】
また、揺動支持部84は、下部に左右方向から見て下側に向かって開口する略コ字状の基部86を有する。基部86は、平面視において孔13と連通する孔が形成される。また、基部86には、雌ネジ部としてのナット87が取付板90を介して配置される。具体的に、基部86には取付板90が嵌合した状態で取り付けられ、取付板90の下面にナット87が軸線を高さ方向に沿った状態で溶接等を用いて固定される。
なお、基部86は略コ字状に開口する形状である場合に限られず、単に略水平な板状であってもよい。この場合、取付板90は基部86の下面にボルトやリベット等を用いて固定される。
【0044】
調整部材88は、揺動部81の下側から突出する突出量を調整でき、段差の下段に接地することでスロープ部10を支持する。支持部80は、揺動支持部84の左右の両側に2つの調整部材88を有する。調整部材88は、第1の実施形態の調整部材68と同様の構成である。調整部材88は、下端に段差の下段と接地し、調整部材88の軸線周りに回動可能な受け座89を有する。調整部材88の雄ネジ部が、揺動支持部84に固定されたナット87と螺合することで、調整部材88は軸線が高さ方向に沿った状態に配置される。揺動支持部84のガイド部85および基部86には孔13に連通する孔を有することから、調整部材88は、上端が揺動部81の孔13内に位置する。
【0045】
また、受け座89には、抜止め部材92が接続されている。抜止め部材92は、例えばボルトである。図9に示すように、抜止め部材92は調整部材88の左右方向において、それぞれ外側に位置する。抜止め部材92は軸線が高さ方向に沿った状態で、取付板90および揺動支持部84を挿通して、揺動支持部84の頂部に近接する。また、抜止め部材92は、上部にストッパ部93を有する。ストッパ部93は、例えば、ボルトの頭部であって、ボルトの雄ネジ部の直径よりも大径である。抜止め部材92は、受け座89に接続されていることから、調整部材88の高さ方向の移動に同期して移動する。調整部材88が下側に向かって過度に進出すると、抜止め部材92のストッパ部93が取付板90の当接部91の上面に当接することで、調整部材88がナット87から抜け出てしまうことを防止する。当接部91は、取付板90から下側に突出するコ字状の上面であって、取付板90の下面よりも下側に位置する。なお、調整部材88の雄ネジ部の一部を加締めることで、調整部材88がナット87から抜け出てしまうことを防止してもよく、この場合には、抜止め部材92を省略することができる。
【0046】
接地部95は、一枚の略板状である。接地部95は、例えば鉄製である。接地部95は、揺動部81の前端に回動軸96によって回動可能に接続されている。回動軸96は、軸線が左右方向に沿った状態で揺動部81の前端と接地部95の後端とを挿通する。したがって、スロープ部10の傾斜角度が変化しても、接地部95を段差の上段に平らに接地することができる。また、接地部95の前端側を調整部材88の受け座89に向けて回動させておくことで、スロープ装置200をコンパクトに持ち運ぶことができる。
【0047】
作業者は、揺動部81の孔13を通して工具Tを調整部材88の操作孔に差し込み、一方向に回転させることで、調整部材88が下側に向かって進出する。作業者は、調整部材88の受け座89を段差の下段に接地するまで回転させることで、スロープ部10は支持部80の調整部材88によって支持される。
図8に示す二点鎖線は、調整部材88を限界まで調整した状態を示している。このとき、抜止め部材92のストッパ部93が、取付板90の当接部91の上面に当接した状態である。
なお、揺動部81と揺動支持部84とはそれぞれ嵌まり合っていることから高さ方向に離れないが、互いに相対的に左右方向にスライドしてしまう。したがって、揺動部81には左右方向の両端にストッパ部材としてL字状のアングル部材97が固定される。
【0048】
本実施形態によれば、揺動部81および揺動支持部84に、例えばアルミニウム合金を用いることができることから、スロープ装置200の軽量化を図ることができる。また、第1の実施形態と同様、スロープ装置200が設置された状態では、スロープ部10を支持部80の調整部材88が支持する。したがって、スロープ部10上を通過するときの荷重は、第1のスロープ部21等や接地部95だけが受けるのではなく、支持部80の調整部材88を介して下段で受けることから、スロープ装置200の強度を向上させることができる。
【0049】
また、支持部80は、調整部材88を介してスロープ部10を高さ方向に調整可能に支持することから、様々な段差に対応することができる。
また、接地部95は、スロープ部10の一部として機能する揺動部81に回動可能に接続されていることから、スロープ部10の傾斜角度が変化しても、接地部95を段差の上段に平らに接地することができる。また、揺動部81と接地部95との間に隙間が生じないようにすることができる。
【0050】
(第3の実施形態)
本実施形態では、第2の実施形態の支持部80の形状を一部、変更した構成である。また、第2の実施形態の抜止め部材92を抜止め部材98に変更した構成である。なお、第1の実施形態および第2の実施形態と同様の構成は、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
図10は、スロープ装置300のうち支持部80周辺の構成の一例を示す側面図である。本実施形態の揺動部81は、被ガイド部83a~83cを有する。一方、本実施形態の揺動支持部84は、被ガイド部83a~83cをガイドするガイド部85a~85cを有する。被ガイド部83a、83bおよびガイド部85a、85bがそれぞれ嵌まり合うことで、揺動部81と揺動支持部84とが高さ方向に離れることを防止する。
【0051】
また、揺動支持部84の基部86は、内部に雌ネジ部としてのナット87が軸線を高さ方向に沿った状態で直接、溶接等を用いて固定される。更に、基部86の前端には、接地部70の固定部71がボルトやリベット等を用いて固定される。
また、調整部材88の受け座89と、基部86との間には抜止め部材98が接続されている。抜止め部材98は、例えばチェーンである。抜止め部材98は調整部材88が下側に向かって過度に進出したときに張り渡されることで、調整部材88がナット87から抜け出てしまうことを防止する。
【0052】
(第4の実施形態)
本実施形態のスロープ装置400は、第1の実施形態のスロープ装置100に連結部110および被連結部112を付加し、更に把手部120を付加した構成である。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付して、説明を適宜省略する。
図11は、スロープ装置400の構成を示す斜視図である。
連結部110および被連結部112は、複数のスロープ装置400を左右に並列して設置する場合に、隣接するスロープ装置400が離れないように連結する。
【0053】
連結部110は、右端に位置する大引き部材16の側面にボルトやリベット等を用いて固定される。本実施形態の連結部110は前後に離れて2つ配置される。連結部110は、例えば鉄製であり、折曲げ成形により形成される。また、連結部110は高さ方向に貫通する連結孔111を有する。
被連結部112は、左端に位置する大引き部材16の下面にボルトやリベット等を用いて固定される。本実施形態の被連結部112は前後に離れて2つ配置される。被連結部112は、それぞれ連結部110と左右方向に対向した位置に配置される。被連結部112は、例えば鉄製であり、折曲げ成形により形成される。また、被連結部112は下側から高さ方向に延出している。
【0054】
ここで、スロープ装置400を左右に並列するように設置する場合を想定する。この場合、まず第1のスロープ装置400を設置した後に、第2のスロープ装置400を第1のスロープ装置400の左側に設置する。このとき、第2のスロープ装置400の連結部110の連結孔111に第1のスロープ装置400の被連結部112が挿通されるように、第2のスロープ装置400の位置を合わせながら上側から設置する。
被連結部112が連結部110の連結孔111に挿通されることによって、第2のスロープ装置400が第1のスロープ装置400に連結される。したがって、2つのスロープ装置400を左右にほぼ隙間なく並列するように設置することができる。なお、3つ以上のスロープ装置400を設置する場合であっても同様に連結することで、ほぼ隙間なく並列するように設置することができる。
なお、連結部110と被連結部112とは、上述した形状である場合に限られない。例えば、連結部110が上述したL字状のアングル部材97を後側に向かって更に延出させた形状であってもよい。この場合、アングル部材97と大引き部材16との間に、被連結部112を挿通させることによって、第2のスロープ装置400が第1のスロープ装置400に連結される。
【0055】
把手部120は、作業者がスロープ装置400を持ち運ぶときに掴む部位である。把手部120は、右端の大引き部材16および左端の大引き部材16のそれぞれ下面にボルトやリベット等を用いて固定される。すなわち、本実施形態の把手部120は左右に2つ配置される。把手部120は、例えば、鉄製あるいは可撓性のある材質(例えばナイロン製)である。なお、把手部120を鉄製にする場合には、スロープ部10の下側に把手部120を収容可能にすることが好ましい。作業者は何れか一方の把手部120を掴んでスロープ装置400を垂下させた状態、すなわちスロープ部10の左右方向を垂下させた状態で持ち運ぶ。このとき、スロープ装置400が斜めにならないように、把手部120は前後方向における重心の位置に配置されていることが好ましい。
このように、スロープ装置400は把手部120を有することで、作業者はスロープ装置400を容易に持ち運ぶことができる。
【0056】
(第5の実施形態)
図12はスロープ装置500の構成を示す斜視図である。図13はスロープ装置500の構成を示す平面図である。図14はスロープ装置500の構成を示す側面図である。図14では、後述するアングル部材を透過した状態を図示している。図15はスロープ装置500の構成を示す底面図である。
本実施形態のスロープ装置500は、スロープ部210と、支持部250とを備えている。
【0057】
まず、スロープ部210について説明する。
スロープ部210は傾斜して配置され、段差に対して人や物を緩やかな勾配で通過させる機能を有する。スロープ部10は、平面視において、例えば、前後の長さが左右の長さに比べて長い略矩形状である。スロープ部210は、前後方向の長さ(図14に示すLa)が略960mm(例えば800mm~1200mmの範囲)であり、左右方向(幅方向)の長さが略600mm(例えば400mm~800mm)である。また、スロープ部210は、高さ(図14に示すH)が略100mm~略150mmの間で調整可能であって、調整範囲が略50mm(例えば40mm~80mm)である。本実施形態のスロープ部210の勾配をH/Lで表すと、勾配は1/6以下であり1/12以上になるように設定されている。ここで、勾配を1/6以下にするのは駐車場法施行令を考慮したものである。勾配が1/6よりも大きいと急すぎてしまい、勾配を1/6以下にすることが好ましい。また、勾配を1/12以上にするのは、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律を考慮したものである。勾配が1/12よりも小さいとスロープ装置500が大型化してしまい、勾配を1/12以上にすることが好ましい。
スロープ部210は、主スロープ部211と、第1のスロープ部221と、第2のスロープ部231とを有する。スロープ部210は、後側から前側に向かって、第1のスロープ部221、第2のスロープ部231、主スロープ部211の順に配置される。主スロープ部211、第1のスロープ部221および第2のスロープ部231の表面(上面)は、それぞれ同じ色である。
【0058】
主スロープ部211は、第2のスロープ部231と、段差の上段との間に位置する。主スロープ部211は、複数(例えば6つ)のスロープ部材212と、複数(例えば5本)の大引き部材217とを有する。スロープ部材212は、第1の実施形態のスロープ部材12と同様の構成である。主スロープ部211は、表面に滑止め突起としての凸条が左右方向に亘って一体で施されている。
主スロープ部211の前部のスロープ部材212bには、調整部材261の上端を露出させるための孔216を有する。
【0059】
また、主スロープ部211のうち後部のスロープ部材212aおよび前部のスロープ部材212bは、他の中央のスロープ部材212とは形状が異なっている。
図16Aおよび図16Bは、図14の側面図の一部を拡大した拡大図である。図16Aに示すように、後部のスロープ部材212aは、後端に略円形の回動部214を有する。回動部214は第2のスロープ部231の後述する被回動部233と嵌まり合い、互いに回動する。すなわち、第2のスロープ部231は、主スロープ部211に対して回動部214の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。なお、回動部214と被回動部233とは、一定の回動範囲を超えると互いに当接して回動が規制される。また、後部のスロープ部材212aは、後端から前側に向かって延出する保持部215を有する。保持部215の上方には隙間があり、保持部215は前側から隙間に挿入された大引き部材217を下側から保持する。
図16Bに示すように、前部のスロープ部材212bは、前端から後側に向かって延出する保持部213を有する。保持部213の上方には隙間があり、保持部213は後側から隙間に挿入された大引き部材217を下側から保持する。
なお、大引き部材217は、第1の実施形態の大引き部材16と同様の構成である。
【0060】
また、主スロープ部211には左右方向の両端に連結部としてのL字状のアングル部材241R、241Lが固定される。アングル部材241R、241Lは主スロープ部211の端を保護する保護部材として機能する。アングル部材241R、241Lは、主スロープ部211の前後方向の長さと略同様の長さである。アングル部材241R、241Lは、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。アングル部材241Rは主スロープ部211の右端の側面および表面を覆い、アングル部材241Lは主スロープ部211の左端の側面および表面を覆う。アングル部材241R、241Lは、主スロープ部211の表面にボルトやリベット等を用いて固定される。
ここで、アングル部材241R、241Lは、表面および側面、すなわち露出されている面が、主スロープ部211の表面と異なる色、例えば赤色に着色されている。アングル部材241R、241Lは、スロープ部210の左右端を認識させるための視認部として機能する。着色は、アルマイト処理等の表面処理での着色、塗料を付着する着色、シール等を貼付する着色、着色剤を混合させた着色等が含まれる。なお、アングル部材241R、241LはL字状に限られず、単に主スロープ部211の右端および左端の側面を覆う板部材であってもよく、単に主スロープ部211の右端および左端の表面を覆う板部材であってもよい。
【0061】
また、アングル部材241Rは連結部242を有する。一方、アングル部材241Lは被連結部243を有する。連結部242および被連結部243は、複数のスロープ装置500を左右に並列して設置する場合に、隣接するスロープ装置500が離れないように連結する。
連結部242は、アングル部材241Rの前後に離れて複数(例えば2つ)配置される。連結部242は、アングル部材241Rの側板に、下方に向かって開口する溝である。被連結部243は、アングル部材241Lの前後に離れて複数(例えば2つ)配置される。被連結部243は、アングル部材241Lの側板に、固定されるリベット等である。なお、連結部242と被連結部243とは、スロープ装置500の中心線Cに対して略左右対称な位置に配置される。
第1のスロープ装置500の被連結部243であるリベットの頭部に対して、第2のスロープ装置500の連結部242である溝が上方から嵌まり込むことで、2つのスロープ装置500が連結される。被連結部243のリベットの頭部は連結部242の溝よりも大きく、リベットの頭部がアングル部材241Rの側板と主スロープ部211との間に位置することで連結部242と被連結部243とが左右に離れず連結される。
【0062】
また、主スロープ部211は左右方向の両側に把手部244R、244Lを有する。把手部244R、244Lは、作業者がスロープ装置500を持ち上げたり持ち運んだりするときに掴む部位である。
ここで、把手部244Rと把手部244Lとは、中心線Cに対して略左右対称な構成であり、把手部244Rについて説明する。
図17は、把手部244Rの構成の一例を示す斜視図である。把手部244Rは、使用しないときには主スロープ部211の下方に収容され、上方に引き上げて使用する。把手部244Rは、バー状であって、コ字状に折曲げた形状である。具体的に、把手部244Rは、手掛部245、スライド部246、回動部247を有する。手掛部245は、作業者が実際に手を掛けて掴む部位である。スライド部246は、手掛部245の端部から屈曲して形成される。スライド部246は、主スロープ部211の右端に近接して前後に離れて形成されたスライド孔248に挿通される。回動部247は、スライド部246の端部から屈曲して形成される。回動部247の先端は、スライド孔248から抜け出ないように抜け止め部を有する。
【0063】
図17(a)は、把手部244Rが主スロープ部211の下方に収容された状態を示す図である。この状態では、把手部244Rは自重により垂れ下がり、手掛部245が主スロープ部211の表面に接している。
図17(b)は、作業者が手掛部245に手を掛けて引き上げた状態を示す図である。この状態では、把手部244Rの回動部247がスライド孔248の周囲と当接している。作業者は、この状態から上方に更に引き上げることで、スロープ装置500を持ち上げることができる。特に、作業者は両手で把手部244Rおよび把手部244Lを引き上げることで、スロープ装置500全体を持ち上げることができる。
図17(c)は、作業者が回動部247を中心に手掛部245を回動させた状態を示す図である。この状態では、手掛部245がアングル部材241Rの側面から外側にはみ出している。作業者は、片手で把手部244Rを持つことで、主スロープ部211の表面を鉛直方向にした状態でスロープ装置500を持ち運ぶことができる。
【0064】
第1のスロープ部221は、段差の下段に接地し、下段から連続する傾斜面を構成する。第1のスロープ部221は、第2のスロープ部231の後側に位置する。第1のスロープ部221は、例えば、左右の長さが前後の長さに比べて長い略平板状であり、一枚で構成される。第1のスロープ部221は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。第1のスロープ部221は、表面に滑止め突起としての凸条が左右方向に亘って一体で施されている。
【0065】
第1のスロープ部221は、前端に被回動部222を有する。被回動部222は、第2のスロープ部231の後述する回動部232と嵌まり合い、互いに回動する。すなわち、第1のスロープ部221は、第2のスロープ部231に対して回動部232の左右方向に沿った軸線周りに回動可能である。なお、回動部232と被回動部222とは、一定の回動範囲を超えると互いに当接して回動が規制される。
また、第1のスロープ部221は、後端に段差の下段に接地する座部223を有する。座部223は、第1のスロープ部221の左右方向に亘って形成される。
また、第1のスロープ部221の下面には、ゴム等の滑止部材224が結合される。図15に示すように、第1のスロープ部221の下面には、複数(例えば3つ)の滑止部材224が左右方向に間隔をあけて、ネジやリベット等を用いて固定される。
また、第1のスロープ部221のうち、後端に近接した位置であって、かつ左端および右端に近接したそれぞれの位置には、段差の下段に固定するための複数の孔228を有する。
【0066】
第2のスロープ部231は、第1のスロープ部221から連続する傾斜面を構成する。第2のスロープ部231は、第1のスロープ部221の前側かつ主スロープ部211の後側に位置する。第2のスロープ部231は、例えば、左右の長さが前後の長さに比べて長い略平板状であり、一枚で構成される。第2のスロープ部231は、例えばアルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成される。第2のスロープ部231は、表面に滑止め突起としての凸条が左右方向に亘って一体で施されている。
第2のスロープ部231は、後端に回動部232を有し、前端に被回動部233を有する。被回動部233は、後部のスロープ部材212aの回動部214と嵌まり合う。
また、第2のスロープ部231の下面には、ゴム等の滑止部材234が結合される。図15に示すように、第2のスロープ部231の下面には、複数(例えば3つ)の滑止部材234が左右方向に間隔をあけて、ネジやリベット等を用いて固定される。
【0067】
ここで、滑止部材224および滑止部材234は、それぞれ本体部225と突起部226とを有する。本体部225は、それぞれ第1のスロープ部221および第2のスロープ部231の下面に固定される部位である。突起部226は、本体部225の下面から床面に向かって突出する部位である。突起部226は、前後方向に間隔をあけて複数、形成される。また、各突起部226は、左右方向に沿って略同形状である。
図16Cは、突起部226の一部を拡大した拡大図である。図16Cでは、滑止部材224および滑止部材234が、水平な床面(二点鎖線)に接しているものとする。突起部226は、前側面227aと後側面227bとを有し、前側面227aと後側面227bとの中心線Ceが前側に向かって傾斜している。また、突起部226は、前側面227aと後側面227bとが平行になっておらず、下方に向かうにつれて互いに近づくように形成される。ここで、突起部226の前側面227aと床面とのなす前側の角度を角度α1とし、突起部226の後側面227bと床面とのなす後側の角度を角度α2とする。このとき、突起部226は、角度α1が角度α2よりも小さくなるように形成される。
上述した形状によって、滑止部材224および滑止部材234は、後側に動きにくくなる。したがって、滑止部材224および滑止部材234がそれぞれ固定された第1のスロープ部221および第2のスロープ部231は段差の上段から離れる方向に動きにくくなり、スロープ装置500と段差の上段との間に隙間が生じるのを抑制させることができる。一方、第1のスロープ部221および第2のスロープ部231が前側に動いたとしても、段差の上段に近づく方向であることから、スロープ装置500と段差の上段との間の隙間を少なくすることができる。
【0068】
なお、回動部232と被回動部222、回動部214と被回動部233とはそれぞれ嵌まり合っていることから前後方向に離れないが、互いに相対的に左右方向にスライドしてしまう。したがって、第2のスロープ部231には左右方向の両端にストッパ部材としてL字状のアングル部材236R、236Lが固定される。アングル部材236R、236Lは、第1のスロープ部221および主スロープ部211が左右方向にスライドしないように規制する。
ここで、アングル部材236R、236Lは、表面および側面、すなわち露出されている面が、第2のスロープ部231の表面と異なる色、例えば赤色に着色されている。アングル部材236R、236Lは、スロープ部210の左右端を認識させるための視認部として機能する。着色は、アルマイト処理等の表面処理での着色、塗料を付着する着色、シール等を貼付する着色、着色剤を混合させた着色等が含まれる。なお、アングル部材236R、236LはL字状に限られず、単に第2のスロープ部231の右端および左端の側面を覆う板部材であってもよく、単に第2のスロープ部231の右端および左端の表面を覆う板部材であってもよい。
【0069】
次に、支持部250について説明する。
支持部250はスロープ部210の下側であって、スロープ部210の前後方向の前端側に位置する。支持部250は、スロープ部210を高さ方向に調整可能に支持する。
本実施形態の支持部250は、第1の支持ユニット251a、第2の支持ユニット251bを有する。第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bは、前部のスロープ部材212bの下方であって、前部のスロープ部材212bの左右両側に配置される。具体的には、第1の支持ユニット251aおよび第2の支持ユニット251bは、平面視においてそれぞれ前部の主スロープ部211に形成された両側の孔216と重なるように配置される。第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bは、基本的な構成が同一である。したがって、ここでは第1の支持ユニット251aを取り上げて両者の基本的な構成について説明し、異なる構成については後述する。
【0070】
図12に示すように、第1の支持ユニット251aは、螺合部材252と、調整部材261とを有する。
螺合部材252は、スロープ部210に対して固定して取り付けられ、調整部材261との間で螺合される。具体的には、螺合部材252は、本体部253と、第1の取付部255と、第2の取付部256と、雌ネジ部としてのナット257とを有する。ここで、本体部253、第1の取付部255および第2の取付部256は、プレス成形によって折曲げ形成された一体の部材であって、例えば鉄製である。
【0071】
本体部253は、前後に長い板状であって、略中央に調整部材261が挿通する孔254を有する(後述する図20A図20Bを参照)。
第1の取付部255は、前後方向から見て略コ字状である。具体的には、第1の取付部255は、本体部253の後側において左右端からそれぞれ上方に向かって平行に一対で延出される。第1の取付部255は、大引き部材217を左右から挟み込み、複数の取付孔を通してネジやリベット等を用いて大引き部材217に固定される。
第2の取付部256は、前後方向から見て略ハット状である。具体的には、第2の取付部256は、本体部253の前側において左右端からそれぞれ上方に向かって平行に一対で延出された後に屈曲して左右に離れる方向に延出される。第2の取付部255は、前部のスロープ部材212bの下面に当接した状態で、複数の取付孔を通してネジやリベット等を用いてスロープ部材212bに固定される。
【0072】
ナット257は、本体部253の略中央の孔254と連通する状態で本体部253の下面に、例えば溶接によって固定される。ここで、第1の支持ユニット251aおよび第2の支持ユニット251bをスロープ部210に取り付けた状態では、前後方向から見たときに、ナット257の軸線が鉛直方向に沿っておらず意図的に所定の角度で傾斜させている。すなわち、ナット257が固定される本体部253は、前後方向から見たときに水平面に対して意図的に平行にならないように、第1の取付部255および第2の取付部256の延出方向が設計される。
【0073】
調整部材261は、螺合部材252と螺合すると共に、床面に対して接地する。
図18(a)は、調整部材261の構成を示す一部断面図である。図18(b)は、調整部材261の底面図である。
調整部材261は、雄ネジ部としてのボルト262と、固定板264と、受座265とを有する。ボルト262は、頭部側が受座265内に位置し、先端側が露出する。ボルト262の先端側の端面には孔263が形成される。固定板264は、例えば鉄製であって、ボルト262の頭部よりも大径な略円板状である。固定板264は、ボルト262の頭部と当接した状態で溶接や螺合等によって固定される。
【0074】
受座265は、例えば樹脂製あるいはゴム製であって、ボルト262の頭部および固定板264よりも大きな略円板状である。受座265は、内部に上方に向かって開口する空間266を有する。空間266には、ボルト262の頭部および固定板264が収容される。また、受座265は、外周面の全周に亘ってユーザが調整部材261を軸線回りに回動させるための複数の操作部267を有する。操作部267は、外周面から受座265の中心に向かう凹状であるが、このような形状に限られない。また、受座265は、底面が平面ではなく、下方に向かって凸状の湾曲面である。受座265は、底面のうち中心線Crを通る部位が最も下方に位置する。また、受座265の底面には凹凸が形成される。具体的には、受座265は、中心線Crを中心として、円環状の凹部268と円環状の凸部269とが中心から外周縁まで交互に形成される。受座265の底面には、受座265を固定板264に固定させるための固定部材271が受座265の底面から突出させないようにするために複数(例えば4つ)の座繰り部270を有する。
【0075】
ここで、第1の支持ユニット251aを組み立てて構成するには、予め固定板264をボルト262に固定し、ボルト262の頭部を受座265の空間266に収容する。次に、受座265の座繰り部270からネジやリベット等を用いて受座265と固定板264とを固定することで調整部材261を組み付ける。次に、調整部材261のボルト262を、螺合部材252のナット257に下側から螺合して、本体部253の孔254に挿通させる。最後に、ネジ273(図1図20A図20Bを参照)を用いてボルト262の先端の孔263に挿入して、調整部材261の先端に抜止部としてのワッシャー272を取り付けることで、第1の支持ユニット251aを組み立てることができる。
なお、第2の支持ユニット251bは、第1の支持ユニット251aとそれぞれ同様の構成であるが、前後方向から見たときのナット257の軸線が傾斜する方向が、スロープ部210の左右方向における中心線Cに対して左右対称の構成である。
組み立てた第1の支持ユニット251aおよび第2の支持ユニット251bを、それぞれ、主スロープ部211に取り付けることで、スロープ装置500を組み立てることができる。
【0076】
次に、上述したように構成されるスロープ装置500を段差がある作業現場において設置する方法について説明する。作業者は、スロープ装置500を作業現場に持ち込む。このとき、支持部250の調整部材261はスロープ部の下側からの突出量が短い状態であるものとする。
次に、作業者は、支持部250の調整部材261を段差の近くの下段に接地させ、スロープ部210の第1のスロープ部221、第2のスロープ部231を段差から離れた下段に接地させる。
次に、作業者は第1の支持ユニット251aおよび第2の支持ユニット251bのそれぞれ調整部材261を下側に向けて進出させる。例えば、作業者は、把手部244Rでスロープ装置500を持ち上げた状態で操作部267を用いて第1の支持ユニット251aの調整部材261を回転させたり、把手部244Lでスロープ装置500を持ち上げた状態で操作部267を用いて第2の支持ユニット251bの調整部材261を回転させたりすることができる。作業者は、主スロープ部211のうち前部のスロープ部材212bの前側上端と段差の上段との高さとが一致するように、調整部材261を下側に向けて進出させて調整する。
【0077】
最後に、作業者は第1のスロープ部221の孔228を通してボルト等を用いて段差の下段に固定することで、スロープ装置500を設置することができる。
なお、スロープ装置500の設置方法は上述した方法に限られず、スロープ装置500を接地させる前に調整部材261を下側に向けて進出させてもよい。また、支持部250の調整部材261はスロープ部210の下側からの突出量が長い状態にしておき、調整部材261を上側に向けて後退させることで、前部のスロープ部材212bの前側上端と段差の上段との高さとが一致するように調整してもよい。
【0078】
次に、図19および図20を参照して、スロープ装置500が設置された状態について説明する。
図19A図19Bはスロープ装置500の構成を示す背面図である。図19Aは調整部材261の突出量が最も短い状態、すなわち主スロープ部211が最も低い状態(調整範囲の下限)を示している。一方、図19Bは調整部材261の突出量が最も長い状態、すなわち主スロープ部211が最も高い状態(調整範囲の上限)を示している。このように、調整部材261の突出量を調整することで、主スロープ部211は回動部214を中心に回動して主スロープ部211の高さが変化する。
【0079】
ここで、図19A図19Bに示すように、第1の支持ユニット251aの調整部材261および第2の支持ユニット251bの調整部材261は床面に対して傾斜した状態で接地している。すなわち、第1の支持ユニット251aのボルト262および第2の支持ユニット251bのボルト262の軸線Sはそれぞれ床面に対して傾斜している。
具体的には、背面視において、第1の支持ユニット251aのボルト262および第2の支持ユニット251bのボルト262は、上側が互いに近く下側が互いに離れた状態に傾斜している。すなわち、第1の支持ユニット251aのボルト262および第2の支持ユニット251bのボルト262は略ハ字状になっている。ここで、第1の支持ユニット251aの受座265および第2の支持ユニット251bの受座265は底面が湾曲面であるために、中心線Cr(図18(b)参照)よりもスロープ装置500の中心線C側に偏った部位と床面が接地する。スロープ部210上を人や物が通過することで、調整部材261に振動等が加わった場合には、調整部材261が床面から受ける反力の方向が軸線Sと略平行となる。
【0080】
したがって、第1の支持ユニット251aの調整部材261および第2の支持ユニット251bの調整部材261はそれぞれ左右方向のうち傾いた方向へ主に移動しようする。しかしながら、第1の支持ユニット251aの調整部材261および第2の支持ユニット251bの調整部材261は、互いに対称に傾き、移動しようとする方向が互いに反対であることから結果として移動できず、スロープ装置500全体では左右方向のズレが抑制される。
なお、図19Aおよび図19Bの何れの状態であっても、第1の支持ユニット251aのボルト262および第2の支持ユニット251bのボルト262の傾斜している角度は、常に一定あるいは略一定である。
【0081】
図20A図20Bはスロープ装置500の一部を示す断面図である。ここでは、第1の支持ユニット251aについて説明するが、第2の支持ユニット251bも同様である。
図20Aは調整部材261の突出量が最も短い状態、すなわち主スロープ部211が最も低い状態(調整範囲の下限)を示している。図20Aに示す状態では、前部のスロープ部材212bの孔216に調整部材261の上端が位置している。また、ナット257の下端と、調整部材261の固定板264の表面とが接しているので、この状態よりも調整部材261の突出量を短くすることができない。
図20Bは調整部材261の突出量が最も長い状態、すなわち主スロープ部211が最も高い状態(調整範囲の上限)を示している。図20Bに示す状態では、螺合部材252の本体部253の孔254に調整部材261の上端が位置している。また、ナット257の上端と、調整部材261の上端のワッシャー272とが接しているので、この状態よりも調整部材261の突出量を長くすることができない。
【0082】
ここで、図20Aに示すように、調整部材261は床面に対して傾斜した状態で接地している。すなわち、調整部材261のボルト262は床面に対して軸線Sが傾斜している。具体的には、側面視において、調整部材261のボルト262は、上側が段差に近く、下側が段差から離れた状態、換言すると上側が前側に、下側が後側になった状態に傾斜している。
この状態から、調整部材261の突出量を進出する方向に調整することで、スロープ部210の勾配が変化することで、調整部材261のボルト262の軸線Sが傾斜する角度も変化する。具体的には、ボルト262の軸線Sの傾斜する角度が床面に対して鉛直方向に近くなるように変化する。
【0083】
本実施形態では、図20Bの状態でも調整部材261は鉛直ではなく、厳密には床面に対して僅かに傾斜した状態で接地している。すなわち、調整部材261のボルト262は床面に対して軸線Sが傾斜している。具体的には、側面視において、調整部材261のボルト262は、上側が段差に近く、下側が段差から離れた状態、換言すると上側が前側に、下側が後側になった状態に傾斜している。
すなわち、調整部材261の調整範囲のうち下限から上限までにおいて、ボルト262の軸線Sは、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜している。
【0084】
ここで、調整部材261の受座265は底面が湾曲面であるために、中心線Cr(図18(b)参照)よりも段差に偏った部位、すなわち前側に偏った部位と床面とが接地する。スロープ部210上を人や物が通過することで、調整部材261に振動等が加わった場合には、調整部材261が床面から受ける反力の方向が軸線Sと略平行となる。
したがって、上を人や物が通過することで、調整部材261に振動等が加わった場合には、調整部材261は前後方向のうち前側、すなわち段差側へ移動しようする。したがって、段差と前部のスロープ部材212bとの間では隙間が生じるのが抑制される。また、受座265の底面の円環状の凸部269は傾斜した状態で床面と接している。したがって、円環状の凸部269は、滑止部材224および滑止部材234の突起部226の同様に作用して、段差の上段から離れる方向には動きにくくなり、スロープ装置500と段差の上段との間に隙間が生じるのを更に抑制させることができる。
【0085】
なお、本実施形態では、側面視において、調整部材261の調整範囲のうち下限から上限までにおいて、ボルト262の軸線Sは、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜する場合について説明したが、この場合に限られない。
例えば、調整部材261の調整範囲のうち下限から、調整範囲の中間までの状態において、ボルト262の軸線Sは、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜していてもよい。また、調整範囲をRとすると、調整範囲のうち下限から、R×3/4までの状態(調整範囲の半分以上であって調整範囲の全てを含まない範囲)において、ボルト262の軸線Sは、上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜していてもよい。すなわち、調整範囲の上限の状態では、ボルト262の軸線Sは、床面に対して鉛直であってもよく、上側が段差から離れ、下側が段差に近づいた状態に傾斜してもよい。この場合には、例えば、ボルト262の軸線Sの上側が段差に近く下側が段差から離れた状態に傾斜する範囲が、調整部材261の調整範囲である旨を作業者に注意喚起することで対応することができる。
【0086】
次に、複数(例えば2つ)のスロープ装置500を左右に並列して設置してスロープユニット600を構成する場合について説明する。
図21は、スロープユニット600の構成を示す斜視図である。
まず、作業者は、第1のスロープ装置500aを設置した後に、第2のスロープ装置500bを第1のスロープ装置500aの左側に設置する。このとき、第2のスロープ装置500bの連結部242が第1のスロープ装置500aの被連結部243に連結されるように、第2のスロープ装置500bの位置合わせをしながら上側から設置する。
したがって、2つのスロープ装置500a、500bを左右方向にほぼ隙間なく並列するように設置でき、スロープユニット600を構成することができる。ここで、スロープユニット600の全体では、左右方向における略中央に、アングル部材241R、241L、236R、236Lが前後方向に沿って位置する。ここで、左右方向における略中央に位置するアングル部材241R、241L、236R、236Lは、線状部の一例に対応する。作業者はスロープユニット600を通過するときに、幅方向における略中央に位置するアングル部材241R、241L、236R、236Lを指標として幅方向における略中央を認識することができる。したがって、作業者が例えば台車を走行させて、スロープユニット600を通過する場合に、容易に台車をスロープユニット600の幅方向における略中央に沿って走行させることができ、スロープユニット600から脱輪することを防止することができる。なお、幅方向における略中央を認識するための指標は、アングル部材241R、241L、236R、236Lに限られず、塗料を付着させたり、シール等を貼付させたり、着色剤を混合させたりすることで施してもよい。また、幅方向における略中央を認識するための指標は、前後方向に連続する場合に限られず、前後方向に断続していてもよい。なお、スロープ装置500を一つのみ設置する場合でも、幅方向の略中央に前後方向に沿った線状部を設けてもよい。
【0087】
次に、滑止め突起としての凸条について説明する。
図22は、凸条280の一例を示す側面図あるいは断面図である。
本実施形態の凸条280は、略三角形状である。ここで、凸条280は、二等辺三角形ではなく、いわゆる鋸刃状である。具体的に、凸条280は、下段側の面281aと、上段側の面281bとを有する。ここで、凸条280とスロープ部210の表面Fとのなす傾斜角度のうち、下段側の面281aとスロープ部210の表面Fとの鋭角側の傾斜角度をβ1とする。また、上段側の面281bとスロープ部210の表面Fとの鋭角側の傾斜角度をβ2とする。本実施形態の凸条280は、下段側の傾斜角度β1よりも上段側の傾斜角度β2の方が大きい。
【0088】
ここで、作業者が例えば台車を走行させて、スロープ装置500のスロープ部210を上段側に通過する場合を想定する。凸条280の面281aは、表面Fに対して傾斜角度が緩やかであることから比較的に抵抗が少なく台車のキャスターは凸条280を容易に乗り越えることができる。一方、凸条280を乗り超えた後では、凸条280の面281bは、表面Fに対して傾斜角度が急であることから抵抗となるため台車のキャスターは面281bから面281aに移動することが抑制される。
したがって、作業者はスロープ部210を上段に向かって容易に移動することができる一方、通過した後には意図せずに下段に向かって移動してしまうことを抑制することができる。なお、凸条280の形状は、三角形の頂点が角である場合に限られず、湾曲していてもよい。また、凸条280は、主スロープ部211、第1のスロープ部221および第2のスロープ部231の全てに設けられることが好ましいが、少なくとも何れか一つに設けられていてもよい。
【0089】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、上述した実施形態を適宜、組み合わせてもよい。
なお、上述した第1の実施形態では、支持部50は第1の支持部50aと第2の支持部50bとを有する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、支持部50は、第1の支持部50aを無くし第2の支持部50bのみで構成してもよい。また、例えば、支持部50は第1~第n(n≧3)の支持部を有していてもよい。
また、上述した第2の実施形態および第3の実施形態では、支持部80を一つのみで構成する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、第1の実施形態と同様に、支持部80は第1の支持部80aと第2の支持部80bとを有していてもよい。また、例えば、支持部80は、第1~第n(n≧3)の支持部を有していてもよい。
【0090】
また、上述した第5の実施形態では、支持部250が2つの支持ユニット251a、251bを有する場合について説明したが、この場合に限られず、3つ以上の支持ユニットを有していてもよい。例えば、支持部250が3つの支持ユニットを有する場合に、3つ目の支持ユニットを第3の支持ユニット251cとすると、第3の支持ユニット251cは第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bとの間に配置する。このとき、背面視において、第3の支持ユニット251cのボルト262は、第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bとは異なり、床面に対して傾斜させずに鉛直方向に沿った状態とする。一方、側面視において、第3の支持ユニット251cのボルト262は、第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bと同様に、上側が段差に近く、下側が段差から離れた状態に傾斜させるものとする。なお、4つ目以降の支持ユニットを追加する場合でも、第1の支持ユニット251aと第2の支持ユニット251bとの間に配置し、第3の支持ユニット251cのボルト262と同様に、背面視では傾斜させず、側面視では傾斜させるように構成することができる。
【符号の説明】
【0091】
10:スロープ部 11:主スロープ部 12:スロープ部材 16:大引き部材 21:第1のスロープ部 22:スロープ片 31:第2のスロープ部 41:第3のスロープ部 50:支持部 50a:第1の支持部 50b:第2の支持部 53:揺動部 54:揺動支持部 58:調整部材 63:揺動部 64:揺動支持部 68:調整部材 80:支持部 81:揺動部 84:揺動支持部 88:調整部材 100:スロープ装置 200:スロープ装置 300:スロープ装置 400:スロープ装置 500:スロープ装置 600:スロープユニット 210:スロープ部 211:主スロープ部 212:スロープ部材 217:大引き部材 221:第1のスロープ部 231:第2のスロープ部 250:支持部 252:螺合部材 261:調整部材
図1
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