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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】栽培用温調カバー及び栽培システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20221220BHJP
   A01G 9/02 20180101ALI20221220BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G9/02 101W
A01G9/20 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018178451
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020048432
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 農林水産省 収益力向上のための研究開発(国産花きの国際競争力強化のための技術開発) 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】窪田 聡
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03542210(US,A)
【文献】特開2017-216897(JP,A)
【文献】特開平10-098943(JP,A)
【文献】米国特許第04850134(US,A)
【文献】窪田聡、村松嘉幸、大島秋穂、小田部桃子、菅田悠斗、腰岡政二,新しい根域環境制御装置 (N.RECS)を利用した根域温度調節による花苗の成長制御,園芸学研究,2018年03月31日,Vol. 17, No. 1,pp. 95 - 103
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/02
A01G 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培容器で栽培される植物の温調を行う温調床部上に載置される栽培用温調カバーであって、
上下方向に貫通して前記栽培容器を挿し込み可能とされた貫通孔を有する天板部と、 前記天板部と前記温調床部との間に介挿されて前記貫通孔の貫通方向から見て前記貫通孔を囲って設けられることで前記天板部と前記温調床部との間に温熱あるいは冷熱を閉じ込め可能な温調空間を形成する囲壁部と
を有することを特徴とする栽培用温調カバー。
【請求項2】
前記貫通孔の内壁面が上方から下方に向かうに連れて縮径されかつ前記栽培容器の周面に当接されるテーパ面であり、
前記天板部からの前記囲壁部の下方への突出寸法が、前記貫通孔の内壁面に周面が当接された前記栽培容器の底面が前記温調床部に接触可能に設定されている
ことを特徴とする請求項1記載の栽培用温調カバー。
【請求項3】
前記天板部は、
第1方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔からなる第1貫通孔列と、 前記第1方向と直交する第2方向に前記第1貫通孔列に対して変位して設けられると共に、前記第1貫通孔列における前記貫通孔の配列ピッチと半ピッチ異なる配列ピッチで前記第1方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔からなる第2貫通孔列とを有し、
平面視における前記天板部の第1方向での端部の形状は、前記第1方向における前記第1貫通孔列の端部位置と前記第2貫通孔列の端部位置とに沿って斜辺あるいは段状に設定されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の栽培用温調カバー。
【請求項4】
前記天板部に対して着脱可能とされると共に装着状態にて前記貫通孔を塞ぐ蓋部を有することを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載の栽培用温調カバー。
【請求項5】
前記蓋部は、前記天板部に対して装着された状態で前記天板部よりも下方に突出されていることを特徴とする請求項4記載の栽培用温調カバー。
【請求項6】
請求項1~5いずれか一項に記載の栽培用温調カバーと、
前記栽培用温調カバーの下方に配置されると共に温度調整可能な前記温調床部と
を有することを特徴とする栽培システム。
【請求項7】
配列された複数の前記栽培用温調カバーを有することを特徴とする請求項6記載の栽培システム。
【請求項8】
前記温調空間に配設されると共に潅水用の水を噴出する水噴出部を有することを特徴とする請求項6または7記載の栽培システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、栽培用温調カバー及び栽培システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の根の部分(以下、根域と称する)の温度を調整することにより、植物の地上部の生育や開花を制御可能であることが知られている。根域温度の調整装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。このような特許文献1に開示された根域温度の調整装置は、土壌を詰めた鉢(栽培容器)を恒温水槽内に浸漬させることにより、根域の温度調整を行っている。また、特許文献2においては、温調床部と鉢との間の熱伝達率を向上させるために、断熱パネルの底面から栽培容器の側面と当接面に至る金属箔等の熱伝導部を備える栽培容器保持トレイが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭62-105511号公報
【文献】特開2017-216897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献2においては、熱伝導部によって底面側から側面側に熱を伝えることによって、栽培養器の底面と側面とを均一な温度に調整することができる。一方で、特許文献2においては、栽培容器を収容する貫通孔ごとに熱伝導部を設置する必要があり、栽培容器保持トレイの製造コストの上昇につながる。さらに、特許文献2の栽培容器保持トレイにおいては、高さ方向において栽培容器の上部から底部に至るまで貫通孔部分を除いて断熱パネルが密に配置されている。このため、栽培用容器保持トレイの重量が増加することなる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、金属箔等の熱伝導部を有する栽培容器保持トレイよりも安価かつ軽量な部材によって、植物の根を均一に温度調整可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の発明は、栽培容器で栽培される植物の温調を行う温調床部上に載置される栽培用温調カバーであって、上下方向に貫通して上記栽培容器を挿し込み可能とされた貫通孔を有する天板部と、上記天板部と上記温調床部との間に介挿されて上記貫通孔の貫通方向から見て上記貫通孔を囲って設けられることで上記天板部と上記温調床部との間に温調空間を形成する囲壁部とを有するという構成を採用する。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記貫通孔の内壁面が上方から下方に向かうに連れて縮径されかつ上記栽培容器の周面に当接されるテーパ面であり、上記天板部からの上記囲壁部の下方への突出寸法が、上記貫通孔の内壁面に周面が当接された上記栽培容器の底面が上記温調床部に接触可能に設定されているという構成を採用する。
【0009】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記天板部が、第1方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔からなる第1貫通孔列と、上記第1方向と直交する第2方向に上記第1貫通孔列に対して変位して設けられると共に、上記第1貫通孔列における上記貫通孔の配列ピッチと半ピッチ異なる配列ピッチで上記第1方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔からなる第2貫通孔列とを有し、平面視における上記天板部の第1方向での端部の形状は、上記第1方向における上記第1貫通孔列の端部位置と上記第2貫通孔列の端部位置とに沿って斜辺あるいは段状に設定されているという構成を採用する。
【0010】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記天板部に対して着脱可能とされると共に装着状態にて上記貫通孔を塞ぐ蓋部を有するという構成を採用する。
【0011】
第5の発明は、上記第4の発明において、上記蓋部が、上記天板部に対して装着された状態で上記天板部よりも下方に突出されているという構成を採用する。
【0012】
第6の発明は、栽培システムであって、上記第1~第5いずれかの発明である栽培用温調カバーと、上記栽培用温調カバーの下方に配置されると共に温度調整可能な上記温調床部とを有するという構成を採用する。
【0013】
第7の発明は、上記第6の発明において、配列された複数の上記栽培用温調カバーを有するという構成を採用する。
【0014】
第8の発明は、上記第6または第7の発明において、上記温調空間に配設されると共に潅水用の水を噴出する水噴出部を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の栽培用温調カバーによれば、天板部と温調床部との間に空間が形成され、この空間が側方から囲壁部によって囲まれている。天板部の貫通孔に収容された栽培容器は、下部側面と底面とが温調空間に配置されることになるため、本発明によれば、植物の根を均一に温度調整することができる。また、本発明の栽培用温調カバーは、温調床部まで密に断熱パネルを有する構造と比較して軽量化される。したがって、本発明によれば、金属箔等の熱伝導部を有する栽培容器保持トレイよりも安価かつ軽量な部材によって、植物の根を均一に温度調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態における栽培システムの概略構成図である。
図2】本発明の第1実施形態における栽培システムが備える栽培用温調カバーの斜視図である。
図3】(a)は本発明の第1実施形態における栽培システムが備える栽培用温調カバーの平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
図4図3(b)の要部拡大図である。
図5】本発明の第2実施形態における栽培システムが備える栽培用温調カバーの斜視図である。
図6】本発明の第2実施形態における栽培システムが備える栽培用温調カバーの要部断面図である。
図7】本発明の第3実施形態における栽培システムの概略構成図である。
図8】本発明の第3実施形態における栽培システムが備える栽培用温調カバーの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る栽培用温調カバー及び栽培システムの一実施形態について説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における栽培システム1の概略構成図である。本実施形態の栽培システム1は、鉢X(栽培容器)に収容された植物を同時に複数栽培するためのシステムであって、図1に示すように、温調床部2と、ヒートポンプユニット3と、栽培用温調カバー4と、制御装置5とを備えている。
【0019】
温調床部2は、栽培用温調カバー4を下方から支持すると共に鉢Xの温度調整を行う。つまり、本実施形態の栽培システム1においては、栽培用温調カバー4の下方に温度調整可能な温調床部2が配置されている。この温調床部2は、ヒートポンプユニット3で生成される温調水Yを案内する水管を有しており、鉢Xの下部(すなわち植物の根域)の温度を調整する。このような温調床部2は、水管に供給された温調水Yと鉢Xとを非接触にて熱交換させることによって、鉢Xの温度を調整する。例えば、冬場においては、温調床部2に温水が温調水Yとして供給されることによって、鉢Xが加温される。また、夏場においては、温調床部2に冷水が温調水Yとして供給されることによって、鉢Xが冷却される。
【0020】
ヒートポンプユニット3は、温調床部2と接続されており、温調床部2に供給するための温調水Yを生成する。また、ヒートポンプユニット3は、温調床部2から排出される温調水Yを回収し、再度、適温に調整された温調水Yとして温調床部2に供給する。例えば、冬場であれば、ヒートポンプユニット3は、鉢Xを加温することによって冷却された温調水Yを温調床部2から回収して加熱した後、再び温調床部2に供給する。また、夏場であれば、ヒートポンプユニット3は、鉢Xを冷却することによって加熱された温調水Yを温調床部2から回収して冷却した後、再び温調床部2に供給する。
【0021】
栽培用温調カバー4は、温調床部2上に隣接して複数配置されている。図2は、栽培用温調カバー4の斜視図である。また、図3(a)は栽培用温調カバー4の平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。また、図4は、図3(b)の要部拡大図である。これらの図に示すように、栽培用温調カバー4は、天板部4aと、囲壁部4bとを備えている。
【0022】
天板部4aは、例えば厚さ寸法が鉢Xの高さ寸法の半分程度された板状の部位であり、上下方向に貫通する貫通孔4cを複数有している。これらの貫通孔4cは、鉢Xを上方から挿し込み可能とされており、図4に示すように、内壁面4c1が上方から下方に向かうに連れて縮径されるテーパ面とされている。この内壁面4c1は、貫通孔4cに対して鉢Xが収容された場合に、鉢Xの周面の上部に当接する。このようにテーパ面とされた内壁面4c1に鉢Xの周面の上部が当接することによって、鉢Xは天板部4aに保持可能とされている。
【0023】
天板部4aは、図3(a)に示すように、平面視において、両端が段状とされた略長方形とされている。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、平面視における天板部4aの長軸に沿った方向を幅方向(第1方向)と称し、平面視において幅方向に直交する方向を奥行方向(第2方向)と称する。
【0024】
図3(a)に示すように、天板部4aには、幅方向に等間隔の配列ピッチで並ぶ複数の貫通孔4cからなる貫通孔列(以下、第1貫通孔列4dと第2貫通孔列4eと称する)が2つ設けられている。第1貫通孔列4dと第2貫通孔列4eとは奥行方向に離間して、並行に設けられている。また、第1貫通孔列4dを構成する貫通孔4cと、第2貫通孔列4eを構成する貫通孔4cとは、図3(a)に示すように、配列ピッチが半ピッチ異なって配置されている。つまり、本実施形態において栽培用温調カバー4は、幅方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔4cからなる第1貫通孔列4dと、幅方向と直交する奥行方向に第1貫通孔列4dに対して変位して設けられると共に、第1貫通孔列4dにおける貫通孔4cの配列ピッチと半ピッチ異なる配列ピッチで幅方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔4cからなる第2貫通孔列4eとを有している。これによって、天板部4aに設けられた貫通孔4cは、千鳥状に配置されている。
【0025】
上述のように、貫通孔4cが千鳥状に配置されることによって、第1貫通孔列4dの端部位置と第2貫通孔列4eの端部位置とは、幅方向において貫通孔4cの配列ピッチの半ピッチ分だけ変位することになる。本実施形態において天板部4aの幅方向における端部の形状は、図3(a)に示すように、第1貫通孔列4dの端部位置と第2貫通孔列4eの端部位置とに沿って段状に設定されている。天板部4aの幅方向における一方側の端部の形状と、他方側の端部形状とは、2つの栽培用温調カバー4を幅方向に隣接配置した場合に、互いに隙間なく当接する形状とされている。
【0026】
囲壁部4bは、平面視において(すなわち貫通孔4cの貫通方向から見て)、全ての貫通孔4cを囲うように天板部4aの外縁部に設けられている。この囲壁部4bは、天板部4aの外縁部に沿って環状形状とされており、天板部4aの外縁部から下方に垂下するように設けられている。この囲壁部4bは、栽培用温調カバー4が温調床部2上に載置された場合に、温調床部2と天板部4aとの間に介挿されて、図3(b)に示すように天板部4aと温調床部2との間に温調空間Kを形成する。
【0027】
温調空間Kは、温調床部2、天板部4a及び囲壁部4bによって囲まれた空間であり、温調床部2から放出された温熱あるいは冷熱を閉じ込めることによって、均一な温度とされた空間である。この温調空間Kは、天板部4aの貫通孔4cに収容された鉢Xの下部側面が配置される空間である。
【0028】
また、囲壁部4bの天板部4aから下方への突出寸法dは、鉢Xが貫通孔4cの内壁面4c1に当接された状態における鉢Xの底面が温調床部2に接触可能となるように設定されている。なお、囲壁部4bの突出寸法dは、囲壁部4bの周方向のいずれの位置でも同様に設定されている。これによって、どの貫通孔4cに対して同型の鉢Xを収容しても鉢Xの底面が温調床部2に接触可能とされている。
【0029】
このような栽培用温調カバー4は、本実施形態においてポリスチレンフォーム(すなわち発泡スチロール)によって形成されている。なお、栽培用温調カバー4の形成材料は、ポリスチレンフォームに限られるものではなく、耐水性が高く、複数の鉢Xを保持可能な強度を有する発泡プラスチックを好適に用いることができる。例えば、硬質ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム等を栽培用温調カバー4の形成材料として用いることも可能である。
【0030】
図1に戻り、制御装置5は、ヒートポンプユニット3と接続されており、外部からの指令等に基づいてヒートポンプユニット3の制御を行う。例えば、制御装置5は、作業者が設定した温度に温調空間Kがなるように、ヒートポンプユニット3に生成する温調水Yの温度を調整させる。また、栽培システム1に温度センサやタイマーを設置し、これらの出力に応じて制御装置5がヒートポンプユニット3を制御する構成とすることも可能である。
【0031】
このような構成の本実施形態の栽培システム1においては、制御装置5の制御の下にヒートポンプユニット3で生成される温調水Yの温度が調整され、温調床部2からの放熱によって温調空間Kが温調床部2の温度と略同一の温度に均一化される。このため、本実施形態の栽培システム1によれば、鉢Xの底面と下部側面とが同一の温度で保温される。なお、温調床部2から排出された温調水Yは、ヒートポンプユニット3に戻され、温度調整された上で再び温調床部2に供給される。
【0032】
以上のような本実施形態の栽培システム1が備える栽培用温調カバー4によれば、天板部4aと温調床部2との間に温調空間Kが形成され、この温調空間Kが側方から囲壁部4bによって囲まれている。天板部4aの貫通孔4cに収容された鉢Xは、下部側面と底面とが温調空間Kに配置されることになるため、栽培用温調カバー4によれば、植物の根を均一に温度調整することができる。また、栽培用温調カバー4は、温調床部2まで密な断熱パネルを有する構造と比較して軽量化される。したがって、栽培用温調カバー4によれば、金属箔等の熱伝導部を有する栽培容器保持トレイよりも安価かつ軽量な部材によって、植物の根を均一に温度調整することが可能となる。
【0033】
また、本実施形態における栽培用温調カバー4においては、貫通孔4cの内壁面4c1が上方から下方に向かうに連れて縮径されかつ鉢Xの周面に当接されるテーパ面であり、天板部4aからの囲壁部4bの下方への突出寸法dが、貫通孔4cの内壁面4c1に周面が当接された鉢Xの底面が温調床部2に接触可能に設定されている。このため、本実施形態における栽培用温調カバー4によれば、鉢Xの重量を天板部4aと温調床部2との両方で支えることができる。このため、鉢Xの重量を全て天板部4aで支える場合と比較すると、貫通孔4cが形成された天板部4aの板厚寸法を小さくすることができ、栽培用温調カバー4を軽量化することができる。
【0034】
また、本実施形態における栽培用温調カバー4において天板部4aは、幅方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔4cからなる第1貫通孔列4dと、幅方向と直交する奥行方向に第1貫通孔列4dに対して変位して設けられると共に、第1貫通孔列4dにおける貫通孔4cの配列ピッチと半ピッチ異なる配列ピッチで幅方向に沿って等間隔で直線状に配列された複数の貫通孔4cからなる第2貫通孔列4eとを有している。さらに、本実施形態において天板部4aの幅方向における端部の形状は、第1貫通孔列4dの端部位置と第2貫通孔列4eの端部位置とに沿って段状に設定されている。このため、図1に示すように、栽培用温調カバー4を幅方向に隣接して配置した場合に、栽培用温調カバー4同士の間に貫通孔4cが設けられないデッドスペースが発生することを抑制することができ、多数の鉢Xを載置することが可能となる。
【0035】
また、本実施形態における栽培システム1においては、複数の栽培用温調カバー4を備えている。各々の栽培用温調カバー4によって温調空間Kが形成されるため、本実施形態の栽培システム1では、複数の独立した温調空間Kを備えることとなる。このため、1つ1つの温調空間Kを小さくすることができ、温調空間Kの内部にて温度ムラが生じることを抑止することができる。したがって、より確実に植物の根を均一に温度調整することが可能となる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5及び図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0037】
図5は、本実施形態の栽培システムが備える栽培用温調カバー4Aの斜視図である。また、図6は、本実施形態の栽培システムが備える栽培用温調カバー4Aの要部断面図である。この図に示すように、本実施形態における栽培用温調カバー4Aは、天板部4aに対して着脱可能とされた蓋部4fを複数備えている。
【0038】
蓋部4fは、鉢Xと略同一の外形形状とされており、貫通孔4cに対して挿入されて天板部4aに装着状態とされることによって貫通孔4cを塞ぐ部材である。鉢Xに植えられた植物が育つと、鉢X同士の間を空けるために、鉢Xが配置されない貫通孔4cが発生する。このような鉢Xが配置されない貫通孔4cに対して蓋部4fを挿入することによって貫通孔4cが塞がれる。貫通孔4cが塞がれることによって、温調空間Kから熱が逃げることを防止することができ、温調空間Kが意図しない温度となることを防止することができる。
【0039】
また、蓋部4fは、鉢Xと同様に、下方に向けて窄む形状とされており、天板部4aに対して装着された状態で天板部4aよりも下方に突出されている。蓋部4fをこのような形状とすることによって、温調空間Kの空間容積を鉢Xが設置された場合と同様あるいは近づけることができる。このため、温調空間Kを意図した温度に調整することが容易となる。また、蓋部4fをこのような形状とすることによって、温調空間Kの空間形状を鉢Xが設置された場合と同様あるいは近づけることができる。このため、温調空間K内部の気体の流れを、蓋部4fを設置する場合としない場合とで同様にすることができ、鉢Xを常に同じ環境で保温することができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図7及び図8を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0041】
図7は、本実施形態の栽培システム1Aの概略構成図である。また、図8は、本実施形態の栽培システム1Aが備える栽培用温調カバー4を含む要部断面図である。この図に示すように、本実施形態の栽培システム1Aは、給水装置6と、給水管7(水噴出部)とを備えている。給水装置6は、制御装置5と接続されており、制御装置5の制御の下に、給水管7に潅水用の水を供給する。給水管7は、図8に示すように、栽培用温調カバー4の内部の温調空間Kを通過するように配設されており、温調空間Kに配置される領域に水を噴出するための開口が設けられている。
【0042】
このような本実施形態の栽培システム1Aによれば、潅水用の水を噴出するための給水管7が備えられている。このため、栽培用温調カバー4を移動させなくても、植物の根に対して水を供給することが可能となる。
【0043】
なお、給水管7は、栽培用温調カバー4ごとに設けられるようにしても良い。このような構成とすることによって、各々の温調空間Kへの水の供給を制御することが可能となり、温調空間Kごとに給水状態を調整することが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態においては、本実施形態において天板部4aの幅方向における端部の形状は、第1貫通孔列4dの端部位置と第2貫通孔列4eの端部位置とに沿って段状に設定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本実施形態において天板部4aの幅方向における端部の形状は、第1貫通孔列4dの端部位置と第2貫通孔列4eの端部位置とに沿った直線状であって、幅方向に対して傾斜した斜辺形状とすることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1……栽培システム
1A……栽培システム
2……温調床部
3……ヒートポンプユニット
4……栽培用温調カバー
4a……天板部
4A……栽培用温調カバー
4b……囲壁部
4c……貫通孔
4c1……内壁面
4d……第1貫通孔列
4e……第2貫通孔列
4f……蓋部
5……制御装置
6……給水装置
7……給水管(水噴出部)
K……温調空間
X……鉢(栽培容器)
Y……温調水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8