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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】浴室床構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/20 20060101AFI20221220BHJP
   E04H 1/12 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E03C1/20 A
E03C1/20 C
E04H1/12 301
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018213863
(22)【出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2019094759
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2017223017
(32)【優先日】2017-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501362906
【氏名又は名称】積水ホームテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】宮下 卓也
【審査官】広瀬 杏奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196603(JP,A)
【文献】特開2001-254416(JP,A)
【文献】特開2008-169601(JP,A)
【文献】特開2000-064382(JP,A)
【文献】特開2009-180037(JP,A)
【文献】特開2005-146667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20
E04H 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場と浴槽を含む浴室の床構造であって、
洗い場に設けられる洗い場床パネルと、浴槽を受ける浴槽受けパンとを備え、
前記洗い場床パネルが、パネル本体と、前記パネル本体の浴槽を向く洗い場床端部に被さる硬質のカバー部材とを含み、前記カバー部材には上方へ突出する凸状又は下方へ凹む凹状の第1嵌合部が形成されており、
前記浴槽受けパンにおける洗い場を向く浴槽受け端部の底面には、上方へ凹む凹状又は下方へ突出する凸状の第2嵌合部が設けられ、
前記第1嵌合部に前記第2嵌合部が上方から被さるようにして嵌合されており、前記第1嵌合部が上へ突出する係止部を有し、前記第2嵌合部には前記係止部が無理嵌めされる係止溝が形成されていることを特徴とする浴室床構造。
【請求項2】
前記係止部には斜め下へ突出する返し突起が形成されていることを特徴とする請求項に記載の浴室床構造。
【請求項3】
前記浴槽受けパンが、発泡樹脂からなる受けパン本体を備え、前記受けパン本体に前記係止溝が形成されていることを特徴とする請求項又はに記載の浴室床構造。
【請求項4】
前記パネル本体の洗い場床端部には立ち上がり部が形成され、前記立ち上り部の浴槽を向く側面と上面と洗い場を向く側面とのうち少なくとも浴槽を向く側面及び上面に前記カバー部材が被さっていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項5】
前記パネル本体が発泡樹脂によって構成され、かつ前記パネル本体の底面、側面及び上面が前記パネル本体より硬質の殻体によって覆われており、
前記カバー部材が、前記殻体における前記底面を覆う部分又は前記側面を覆う部分と連なり前記殻体の一部を構成していることを特徴とする請求項に記載の浴室床構造。
【請求項6】
前記洗い場床端部及び前記カバー部材が前記浴槽受け端部より上方へ突出され、
前記カバー部材の浴槽を向く側面に、前記浴槽受け端部の上面の正規の高さを示す高さ標示が設けられていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項7】
前記洗い場床端部の上面における洗い場と浴槽を結ぶ前後方向と直交する幅方向の中央部に洗い場側センター表示が形成され、
前記浴槽受け端部の上面における前記幅方向の中央部に浴槽側センター表示が形成されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の浴室床構造。
【請求項8】
前記浴槽受けパンが載置される支持架台を更に備え、
前記支持架台が、支持脚と、前記支持脚の上端部に水平に支持された架台フレームを含み、前記架台フレームの洗い場側の端部が、前記洗い場床パネルに接続されていることを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の浴室床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い場と浴槽を含む浴室に関し、特に浴室床パンが洗い場床パネルと浴槽受けパンに分割された浴室床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室には洗い場と浴槽が設けられている。例えば特許文献1における浴室床構造は、洗い場床パネルと、浴槽受けパンとに分割されている。洗い場床パネルが洗い場に設置されている。浴槽受けパンは浴槽の底部に設置され、浴槽を受けている。洗い場床パネルの端面が浴槽受けパンに接合され、かつ防水コーキングが施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-278006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の浴室床構造を組み立てる際は、洗い場床パネルを先行して建築躯体に設置し、その後、浴槽受けパンを設置するのが一般的である。浴槽受けパンの設置時は、位置出しケガキ線や左右のチリ(隙間)を見て浴槽受けパンの位置出しを行なう。しかしながら、建築躯体と浴槽受けパンの外周との間には殆ど余裕がなく、作業者は洗い場床パネルに載った状態で身を乗り出して浴槽受けパンの位置調整やレベル出しをする必要がある。
本発明は、かかる事情に鑑み、浴槽受けパンひいては浴室床構造の位置出しや設置作業を簡易化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、洗い場と浴槽を含む浴室の床構造であって、
洗い場に設けられる洗い場床パネルと、浴槽を受ける浴槽受けパンとを備え、
前記洗い場床パネルが、パネル本体と、前記パネル本体の浴槽を向く洗い場床端部に被さる硬質のカバー部材とを含み、前記カバー部材には上方へ突出する凸状又は下方へ凹む凹状の第1嵌合部が形成されており、
前記浴槽受けパンにおける洗い場を向く浴槽受け端部の底面には、上方へ凹む凹状又は下方へ突出する凸状の第2嵌合部が設けられ、
前記第1嵌合部に前記第2嵌合部が上方から被さるようにして嵌合されていることを特徴とする。
【0006】
当該浴室床構造を建築躯体に設置する際は、好ましくは先に洗い場床パネルを搬入して設置する。続いて、浴槽受けパンを搬入し、浴槽受け端部を洗い場床端部に被せるようにして、浴槽受けパンを設置する。このとき、第2嵌合部が第1嵌合部に凹凸嵌合される。該凹凸嵌合によって浴槽受けパンの前後方向(洗い場と浴槽を結ぶ方向)の位置出しが容易になる。好ましくは、カバー部材はパン本体より硬質である。硬質のカバー部材に第1嵌合部を形成することによって、浴槽受けパンを確実に位置固定できる。
更にカバー部材によって洗い場床端部を保護できる。前記カバー部材は、好ましくはアルミ押出成形材によって構成される。これによって、安価に作製できる。また、浴室の水による腐食を抑制できる。
【0007】
前記第1嵌合部が上へ突出する係止部を有し、前記第2嵌合部には前記係止部が無理嵌めされる係止溝が形成されていることが好ましい。
無理嵌めによって第2嵌合部のぐらつきが無くなる。したがって、浴槽受けパンをより正確に位置出しできる。
【0008】
前記係止部には斜め下へ突出する返し突起が形成されていることが好ましい。
返し突起は浴槽受けパンに喰い込む。これによって、浴槽受けパンの浮きを阻止できる。
【0009】
前記浴槽受けパンが、発泡樹脂からなる受けパン本体を備え、前記受けパン本体に前記係止溝が形成されていることが好ましい。
これによって、浴槽受けパンを軽量化でき設置作業を楽に行なうことができる。かつ、係止部を係止溝に確実に無理嵌めでき、浴槽受けパンを確実に位置固定できる。
【0010】
前記パネル本体の洗い場床端部には立ち上がり部が形成され、前記立ち上り部の浴槽を向く側面と上面と洗い場を向く側面とのうち少なくとも浴槽を向く側面及び上面に前記カバー部材が被さっていることが好ましい。
立ち上り部によって、洗い場の使用水が浴槽側へ流れるのを堰き止めることができる。立ち上り部をカバー部材によって保護できる。
洗い場床パネルの上面の表皮シートにおける浴槽側の端部が、立ち上り部に沿って立ち上がり、立ち上り部の洗い場を向く側面を覆うことが好ましい。
【0011】
前記パネル本体が発泡樹脂によって構成され、かつ前記パネル本体の底面、側面及び上面が前記パネル本体より硬質の殻体によって覆われていることが好ましい。これによって、洗い場床パネルの発泡樹脂製のパネル本体を殻体で囲んで補強できる。かつ洗い場床パネルを安価に作製できる。
前記カバー部材が、前記殻体における前記底面を覆う部分又は前記側面を覆う部分と連なり前記殻体の一部を構成していることが好ましい。これによって、浴槽受けパンが第1嵌合部を介して殻体と接合される。よって、浴槽受けパンを確実に位置固定できる。
前記カバー部材は、前記殻体における前記底面を覆う部分又は前記側面を覆う部分と同体でもよく別体であってもよい。別体の場合、カバー部材は、ビス、溶接、リベット止めなどの接合手段によって殻体に接合されていてもよい。
前記殻体の材質は、ステンレスなどの錆びにくい金属であることが好ましい。これによって、所要の金属を確保するとともに、浴室の水に晒されても、腐食を防止できる。
【0012】
前記洗い場床端部及び前記カバー部材が前記浴槽受け端部より上方へ突出され、
前記カバー部材の浴槽を向く側面に、前記浴槽受け端部の上面の正規の高さを示す高さ標示が設けられていることが好ましい。
浴槽受けパンの第2嵌合部を第1嵌合部に嵌め込む際は、前記高さ標示が見えるか否かによって嵌合深さを確認できる。浴槽受け端部の上面を前記高さ標示に合わせることによって、浴槽受けパンを洗い場床パネルに対して上下に正確に位置決めできる。
【0013】
前記洗い場床端部の上面における洗い場と浴槽を結ぶ前後方向と直交する幅方向の中央部に洗い場側センター表示が形成され、かつ前記浴槽受け端部の上面における前記幅方向の中央部に浴槽側センター表示が形成されていることが好ましい。
これらセンター表示が一致するように浴槽受けパンを幅方向に位置調節することによって、浴槽受けパンの幅方向の位置出しを簡単かつ正確に行なうことができる。
【0014】
前記浴室床構造が、前記浴槽受けパンが載置される支持架台を更に備えていることが好ましい。
前記支持架台が、支持脚と、前記支持脚の上端部に水平に支持された架台フレームを含み、前記架台フレームの洗い場側の端部が、前記洗い場床パネルに接続されていることが好ましい。前記架台フレームの洗い場側の端部が、前記洗い場床パネルの殻体に接続されていることが、より好ましい。
洗い場床パネルの設置後、架台フレームを洗い場床パネルに合わせてレベル出しする。その後、浴槽受けパンを支持架台に載せる。これによって、浴槽受けパンを簡易かつ容易に所定の高さに水平に設置できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、浴槽受けパンひいては浴室床構造の位置出しや設置作業を簡易化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る浴室を示す、図2のI-I線に沿う側面断面図である。
図2図2は、前記浴室の床ユニット(浴室床構造)を示す平面図である。
図3図3は、前記浴室床ユニットの斜視図である。
図4図4は、前記浴室床ユニットの洗い場床パネルの分解斜視図である。
図5図5は、図2のV-V線に沿う、浴槽受けパンと洗い場床パネルの接続部の拡大側面断面図である。
図6図6は、図3の円部VIにおけるカバー部材を実線で示し、浴槽受けパンを二点鎖線にて示す斜視図である。
図7図7は、浴槽受けパンを設置する際の前記接続部の拡大側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び図2に示すように、浴室1は、浴槽1aと、洗い場1bを備えている。浴槽1aと洗い場1bが、幅方向(図2の上下方向)と直交する前後方向(図2の左右方向)に並んで配置されている。浴槽1aの底部に浴槽受けパン2が設けられている。洗い場1bの底部に、洗い場床パネル3が設けられている。
【0018】
図5に示すように、浴槽受けパン2は、受けパン本体20と、表層21を備えている。受けパン本体20は、発泡ポリスチレン(EPS)等の発泡樹脂によって構成されている。詳細な図示は省略するが、表層21は、耐薬品層、強度確保層、受けパン本体20との接合層などを含む積層樹脂フィルムによって構成されている。
【0019】
図1に示すように、浴槽受けパン2の外周部には側壁が設けられている。図5に示すように、そのうち洗い場側の側壁22(洗い場を向く浴槽受け端部)の底面には、第2嵌合部23が設けられている。第2嵌合部23は、切れ込み状ないしはスリット状の係止溝23aを含む。係止溝23aは、側壁22における受けパン本体20の下面から上方へ切り込まれるように凹んでいる。つまり、係止溝23aは、受けパン本体20を構成する発泡樹脂に形成されている。係止溝23aより洗い場側(図5において右側)の第2嵌合部23は、下方へ突出する凸状部23bになっている。
【0020】
図6に示すように、側壁22の上面における幅方向(洗い場1bと浴槽1aを結ぶ方向と直交する方向)のちょうど中央部には、浴槽側センター表示27が形成されている。
【0021】
浴槽受けパン2は、例えば次のようにして作製される。
まず、表層21を真空成形する。該表層21を発泡金型の一方の型面にセットし、受けパン本体20を発泡成形する。該発泡成形の過程で、表層21の前記接合層と受けパン本体20とが熱溶着される。したがって、別途の貼合せ工程を省略できる。
なお、受けパン本体20と表層21を接着剤によって貼り合わせることにしてもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、浴槽受けパン2の底部には支持架台40が設けられている。支持架台40上に浴槽受けパン2が載置されている。
支持架台40は、複数の支持脚41と、架台フレーム42を含む。支持脚41が建築躯体の床面に鉛直に立設されている。複数の支持脚41の上端部に架台フレーム42が水平に支持されている。架台フレーム42は、前後方向へ延びる縦梁42aと、幅方向へ延びる横梁42bを含む。縦梁42aの洗い場側の端部は、洗い場床パネル3の底部へ向けて延びている。洗い場床パネル3の後記底板部33aには吊柱43が垂設されている。縦梁42aひいては架台フレーム42が、吊柱43の下端部に好ましくは回転可能に連結されている。
【0023】
図2及び図3に示すように、洗い場床パネル3は、パネル本体30と、殻体31と、表層シート34を備え、平面視で長方形状(四角形状)になっている。
【0024】
パネル本体30は、発泡ポリスチレン(EPS)等の発泡樹脂によって長方形(四角形)の板状に成形されている。前記EPSの発泡倍率は、好ましくは15倍~30倍程度であり、より好ましくは20倍程度である。なお、パネル本体30の材質は、EPSに限られず、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等であってもよい。
【0025】
図1及び図4に示すように、パネル本体30ひいては洗い場床パネル3の上面には排水口3cへ向かって下がり勾配が付けられている。排水口3cには、排水ベース部材36aと、排水縁部材36bからなる排水口部材36が設けられている。
【0026】
図3及び図4に示すように、パネル本体30ひいては洗い場床パネル3における浴槽側を除く3つの縁部には、枠部材37が設けられている。図1に示すように、枠部材37に浴室壁1w又は浴室扉枠1fの下端部が嵌められている。
【0027】
図5に示すように、パネル本体30ひいては洗い場床パネル3における浴槽側(図5において左側)を向く洗い場床端部3eには、立ち上り部35(土手部)が一体形成されている。言い換えると、立ち上り部35は、パネル本体30と同体の発泡樹脂によって構成されている。立ち上り部35は、洗い場床パネル3の当該立ち上り部35を除く上面より上方へ突出されるとともにパネル本体30の浴槽1a側の端部に沿って延びている。
立ち上り部35は、浴槽受けパン2における洗い場側(図5において右側)の側壁22(浴槽受け端部)よりも高く突出されている。
【0028】
図4に示すように、殻体31は、上下の補強パネル部材32,33を含む。これら補強パネル部材32,33は、鋼板などの金属板によって構成されている。下側補強パネル部材33は、底板部33aと、側板部33bを有している。底板部33aが、パネル本体30の底面に被さっている。底板部33aの4つの端部から側板部33bがほぼ直角に立ち上がり、パネル本体30の4つの端面にそれぞれ被さっている。隣接する側板部33bどうしは縁切りスリット33cによって縁切りされている。
上側補強パネル部材32が、パネル本体30における立ち上り部35を除く上面に被さっている。
パネル本体30と殻体31とは、例えば熱硬化性の接着剤(図示省略)によって接着されている。
【0029】
図4に示すように、上側補強パネル部材32の上面には表層シート34が被さっている。表層シート34は、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)によって構成されているが、これに限られずシリコンラバー等によって構成されていてもよい。表層シート34は、防水性を有している。更に、表層シート34によって、洗い場床パネル3の温熱感性及びクッション性が確保されている。
図5に示すように、表層シート34における浴槽側の端部は、立ち上り部35に沿うように上方へ曲げられ、立ち上り部35における洗い場を向く側面に被さっている。
表層シート34は、例えば両面粘着テープ(図示省略)を介して上側補強パネル部材32及び立ち上り部35に貼り付けられている。
【0030】
図5に示すように、さらに殻体31は、カバー部材50を構成要素として含む。図5及び図6に示すように、カバー部材50は、3つの被さり部51,52,53を有して断面コ字状に形成され、かつ洗い場床パネル3の幅方向に沿って延びている。
カバー部材50は、下側補強パネル部材33とは別体のアルミ押出成形材(金属材)によって構成され、受けパン本体20より硬質である。
【0031】
図1に示すように、カバー部材50は、洗い場床端部3eに配置されている。図5に示すように、カバー部材50の側面被さり部52の下側部分及び底面被さり部51が、下側補強パネル部材33とビス止め等によって接合されている。側面被さり部52の上側部分が、立ち上り部35の浴槽1aを向く側面に被せられている。上面被さり部53が、立ち上り部35の上面に被せられている。これによって、立ち上り部35が補強されている。
【0032】
図5に示すように、カバー部材50は、立ち上り部35と同様に、浴槽受けパン2の側壁22よりも高く突出されている。
【0033】
図5に示すように、カバー部材50の側面被さり部52には、上方へ突出する凸状又は下方へ凹む凹状の第1嵌合部54が形成されている。第1嵌合部54は、受け板部54aと係止部54bを有して断面L字状に形成され、かつカバー部材50の長手方向(洗い場床パネル3の幅方向)へ延びている。受け板部54aは、側面被さり部52から浴槽1a側(図5において左側)へ水平に突出されている。受け板部54aの先端部から係止部54bが上方へ凸状に突出されている。係止部54bと受け板部54aと側面被さり部52によって、下方へ凹む凹状部54cが形成されている。
【0034】
図6に示すように、係止部54bの先端部(上端部)は、クサビ形ないしはヤジリ形になっている。すなわち、係止部54bの先端部は先細に尖っている。かつ係止部54bの先端部には、斜め下へ突出する返し突起54fが形成されている。
【0035】
図5に示すように、洗い場床パネル3の洗い場床端部3eに浴槽受けパン2の側壁22が接合されている。第1嵌合部54に第2嵌合部23が上方から被さるようにして嵌合されている。詳しくは、凹状部54cに凸状部23bが嵌め入れられている。係止部54bが、係止溝23aに嵌め込まれて係止されている。返し突起54fが、発泡樹脂製の受けパン本体20に喰い込んでいる。これによって、係止部54bが係止溝23aに無理嵌め(圧入)されている。
【0036】
図5及び図6に示すように、側面被さり部52の外側面(図5において左側面)には、高さ標示56が形成されている。高さ標示56は、カバー部材50の上面における長手方向(洗い場床パネル3の幅方向)へ真っ直ぐに延びる凸状になっている。標示56の高さは、浴槽受けパン2の上面の正規の高さとちょうど一致している。
【0037】
図3及び図6に示すように、カバー部材50の上面における長手方向(洗い場床パネル3の幅方向)のちょうど中央部には、洗い場側センター表示57が形成されている。
【0038】
図5に示すように、カバー部材50と浴槽受けパン2との間は、発泡エチレンプロピレンゴム(EPDM)、発泡ポリエチレン(PE)などの水密材61及びシーリング材62によって防水されている。水密材61は、浴槽受パン本体20の側面に貼り付けられている。シーリング材62は、建築躯体における浴室施工現場において塗布される。
【0039】
洗い場床パネル3は、例えば次のようにして作製される。
洗い場床パネル3の構成部材をそれぞれ作製する。
下側補強パネル部材33又はパネル本体30に熱硬化性接着剤を塗布し、下側補強パネル部材33上にパネル本体30を載せる。
次いで、パネル本体30又は上側補強パネル部材32に熱硬化性接着剤を塗布し、パネル本体30上に上側補強パネル部材32を被せる。
これらパネル積層体30,32,33を真空圧空熱プレス機で圧力を加えながら加熱することによって、前記接着剤を硬化させる。
パネル本体30の立ち上り部35にはカバー部材50を被せ、下側補強パネル部材33にビス止めする。
排水口3cには排水口部材36を設ける。
パネル本体30の浴槽側を除く3つの縁部には、枠部材37を設ける。
更に、表層シート34を上側補強パネル部材32に貼り付ける。表層シート34の浴槽側部分は、立ち上り部35の洗い場側面に貼り付ける。
洗い場床パネル3よれば、発泡樹脂製のパネル本体30を殻体31で囲んで補強できる。かつ洗い場床パネル3を安価に作製できる。
【0040】
建築躯体の浴室施工現場において浴室床構造1cを組み立てる際は、先ず洗い場床パネル3を前記現場に搬入して洗い場1bに設置する。
浴槽部分の底部には支持架台40を設置する。該支持架台40の縦梁42aを、吊柱43を介して洗い場床パネル3の底板部33aに連結する。そして、支持架台40を洗い場床パネル3に合わせてレベル出しする。具体的には、複数の支持脚41を互いに高さ調節することによって、架台フレーム42を水平かつ規定高さにセットする。
【0041】
その後、浴槽受けパン2を浴室施工現場に搬入し、該浴槽受けパン2を支持架台40上に載せるとともに、側壁22を洗い場床端部3eに被せる。浴槽受けパン2は軽量化されているから設置作業を楽に行なうことができる。例えば、発泡樹脂からなる浴槽受パン2は、FRP製の浴槽受けパンに比べて、3分の1~4分の1程度の重さにすることができる。
このとき、洗い場側センター表示57と浴槽側センター表示27が一致するように浴槽受けパン2を幅方向に位置調節する(図6)。これによって、浴槽受けパン2の幅方向の位置出しを簡単かつ正確に行なうことができる。
さらに、側壁22を洗い場床端部3eに被せることによって、第2嵌合部23が第1嵌合部54に凹凸嵌合される。これによって、浴槽受けパン2を洗い場床パネル3に対して前後方向に容易に位置出しできる。しかも、第1嵌合部54の係止部54bが第2嵌合部23の係止溝23aに無理嵌めされるため、第2嵌合部23のぐらつきが無くなる。したがって、浴槽受けパン2を一層正確に位置出しできる。
前記嵌合によって、返し突起54fが浴槽受けパン2に喰い込む。これによって、浴槽受けパン2の浮きを阻止できる。
【0042】
図7に示すように、浴槽受けパン2が洗い場床パネル3に対して規定の上下方向位置まで降ろしきれていない状態では、高さ標示56が側壁22に被さって隠れている。
図5及び図6に示すように、規定の上下方向位置まで降ろしきったとき、側壁22の上面が高さ標示56と同じ高さないしは少し下に位置されることによって、高さ標示56が外部に現れる。したがって、高さ標示56が見えるか否かによって、浴槽受けパン2を規定の上下方向位置まで降ろし得たかを確認でき、更には第2嵌合部23が第1嵌合部54に規定の嵌合深さまで嵌合し得たかを確認できる。これによって、第2嵌合部23を第1嵌合部54にしっかりと嵌合できるとともに、浴槽受けパン2を支持架台40にしっかりと水平に載せることができる。
このようにして、浴槽受けパン2を前後、左右、上下に正確に位置決めして設置できる。狭い浴室施工現場で洗い場床パネル3から身を乗り出して設置作業を行なう場合であっても、浴槽受けパン2を容易かつ正確に設置することができる。
【0043】
次に、側壁22の上面とカバー部材50の隅角部にシーリング材62を塗布する。これによって、浴槽受けパン2と洗い場床パネル3との間を、水密材61とシーリング材62とによって二重に防水できる。
そして、浴槽受けパン2の上に浴槽1aを設置する。
更には、浴室壁1wや浴室扉枠1fを設置する。
浴槽受けパン2の側壁22が立ち上り部35よりも低くなるように段差が形成されているため、浴槽1aの設置時や浴室壁1wの設置時に、これら浴槽1aや浴室壁1wが側壁22とぶつかって、側壁22が損傷するのを防止できる。
立ち上り部35は金属製のカバー部材50によって覆うことで強度を確保できる。
【0044】
浴室床構造1cによれば、立ち上り部35によって、洗い場1bの使用水が浴槽1a側へ流れるのを堰き止めることができる。
加えて、立ち上り部35によってシーリング材62が洗い場1b側からは隠れるため、例えば清掃時などにユーザーがシーリング材62に触れないようにできる。したがって、浴槽受けパン2と洗い場床パネル3との間の水密性を長期にわたって確保できる。
【0045】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて種々の改変をなすことができる。
例えば、カバー部材50が、立ち上り部35の洗い場を向く側面にも被さっていてもよい。カバー部材50が、立ち上り部35の浴槽を向く側面全体ではなくその一部、上面の一部または下面の一部に被さっていてもよい。カバー部材50が、殻体31の他の構成部材(補強パネル部材32,33)や枠部材37に固定されていてもよいし、それらと一体であってもよい。
カバー部材50が、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体)等の熱可塑性樹脂によって形成されていてもよい。
立ち上り部が洗い場床パネル3とは別に設けられていてもよい。
上側補強パネル部材32を省略してもよい。パネル本体30に表層シート34を直接貼り付けてもよい。
浴室はシャワー室をも含む。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば住宅等の建物に納められる浴室床ユニットに適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 浴室
1a 浴槽
1b 洗い場
1c 浴室床構造
2 浴槽受けパン
20 受けパン本体
21 表層
22 洗い場側の側壁(浴槽受け端部)
23 第2嵌合部
23a 係止溝
23b 凸状部
27 浴槽側センター表示
3 洗い場床パネル
3e 洗い場床端部
30 パネル本体
31 殻体
34 表層シート
35 立ち上り部(土手部)
37 枠部材37
40 支持架台
41 支持脚
42 架台フレーム
43 吊柱
50 カバー部材
54 第1嵌合部
54a 受け板部
54b 係止部
54c 凹状部
54f 返し突起
56 高さ標示
57 洗い場側センター表示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7