(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】分岐管装置
(51)【国際特許分類】
F16L 55/00 20060101AFI20221220BHJP
F16L 41/02 20060101ALI20221220BHJP
F16K 39/04 20060101ALN20221220BHJP
【FI】
F16L55/00 M
F16L55/00 C
F16L41/02
F16K39/04
(21)【出願番号】P 2018231425
(22)【出願日】2018-12-11
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑垣 大介
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-309490(JP,A)
【文献】特開2018-119559(JP,A)
【文献】特開2015-045373(JP,A)
【文献】特開2014-114827(JP,A)
【文献】特開2014-114826(JP,A)
【文献】特開2016-044793(JP,A)
【文献】特開2014-025522(JP,A)
【文献】特開2014-088904(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/00
F16L 41/02
F16K 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体路と前記流体路から分岐した分岐路とを内部に有する分岐管装置であって、
前記流体路及び前記分岐路の開口部を選択的に閉鎖する弁体と、
前記弁体のシール部が密着される弁座面と、
前記流体路を構成する流体管に外嵌装着される外弁箱と、
前記外弁箱に収容され、前記流体管の切断箇所に設置される内弁箱と、
前記分岐路を構成する分岐接続管と、を備え、
前記弁体が前記内弁箱に内蔵されており、前記流体路及び前記分岐路の開口部、並びに前記弁座面が、それぞれ前記内弁箱に形成されていて、
前記内弁箱の外面には、前記外弁箱と前記内弁箱との間を密封するパッキンが装着されており、
前記開口部を閉鎖している前記弁体を動かして開弁する際の初期動作において、前記開口部の一側方で前記シール部が前記弁座面に密着しながら、前記開口部の他側方で前記シール部が前記弁座面から離れた状態となるように構成されている、ことを特徴とする分岐管装置。
【請求項2】
前記弁座面に密着する前記シール部を前記開口部の中央線に関して対称的に配置したときに、前記開口部の一側方及び他側方の各々において前記シール部の中央が前記弁座面の中央よりも外側に位置する、請求項1に記載の分岐管装置。
【請求項3】
前記弁座面に密着する前記シール部を前記開口部の中央線に関して対称的に配置したときに、前記開口部の一側方及び他側方の各々において前記シール部の中央が前記弁座面の中央よりも内側に位置する、請求項1に記載の分岐管装置。
【請求項4】
前記分岐路の開口部が前記流体路の開口部よりも幅狭で、しかも前記分岐路の開口部の開口面積が前記流体路の開口部の開口面積の100±10%である、
請求項1に記載の分岐管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体路とその流体路から分岐した分岐路とを内部に有する分岐管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体管である水道管の補修等を目的とした工事において、補修箇所を迂回するバイパス管路を敷設し、不断水状態を維持したまま、その補修箇所における管路の一部を撤去したり、新規な管路に取り替えたりする不断水工法が知られている。バイパス管路は、流体路とその流体路から分岐した分岐路とを内部に有する分岐管装置を介して、本管路に接続される。分岐管装置は、流体路及び分岐路の開口部を選択的に閉鎖する弁体を備え、流路を適宜に切り替え可能に構成されている。
【0003】
特許文献1及び2には、それぞれ、本管路を構成する分岐形状の管体に弁体を内蔵させた、言わば弁機能を有する分岐管によって構成された分岐管装置が記載されている。また、特許文献3には、外弁箱、内弁箱及び分岐接続管を備えた分岐管装置が記載されている。外弁箱は、既設の水道管に外嵌装着され、内弁箱は、その外弁箱の内部で形成された水道管の切断箇所に設置される。分岐接続管は、水道管の管径方向に突出して設けられ、分岐路を構成する。
【0004】
水の流れを迂回させる前の段階では、まだバイパス管路に水が供給されておらず、分岐路の開口部を閉鎖する弁体に対して水圧が一方側からのみ作用する。そのため、弁体の一方側と他方側との圧力差が大きく、弁体を円滑に動かしづらい状態になっている。大口径(例えば、呼び径300以上)の水道管では、かかる傾向が顕著であり、開弁する際の作業性が特に悪化しやすい。このことは、補修作業を終えてバイパス管路を撤去する場合などにおいて、止水していた本管路に水を供給する状況でも同様である。
【0005】
特許文献1に記載の分岐管装置では、弁体のシール部が密着される弁座面に溝部が形成されており、開弁する際の初期動作において、その溝部を通じて水が流れるように構成されている。但し、かかる構成では、閉弁時にシール部を弁座面に密着させる際に溝部で引っ掛かったり、開弁時に溝部を通じて水を流す際に溝部周辺のシール部に高い水圧が作用したりする恐れがあり、シール部の損傷が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-114827号公報
【文献】特開2001-082628号公報
【文献】特開2007-187241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、開弁する際の作業性を向上できる分岐管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る分岐管装置は、流体路と前記流体路から分岐した分岐路とを内部に有する分岐管装置であって、前記流体路及び前記分岐路の開口部を選択的に閉鎖する弁体と、前記弁体のシール部が密着される弁座面と、を備え、前記開口部を閉鎖している前記弁体を動かして開弁する際の初期動作において、前記開口部の一側方で前記シール部が前記弁座面に密着しながら、前記開口部の他側方で前記シール部が前記弁座面から離れた状態となるように構成されている。
【0009】
かかる構成によれば、開弁する際の初期動作において、開口部の一側方では弁体のシール部が弁座面に密着しつつ、他側方でのみ弁体のシール部が弁座面から離れた状態となるので、その他方側ではシール部と弁座面との隙間を通じて流体が流れ込む。その結果、弁体の一方側と他方側との圧力差が軽減されて、弁体を動かしやすくなり、開弁する際の作業性が向上する。
【0010】
前記弁座面に密着する前記シール部を前記開口部の中央線に関して対称的に配置したときに、前記開口部の一側方及び他側方の各々において前記シール部の中央が前記弁座面の中央よりも外側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、開弁する際の初期動作において、シール部と弁座面との隙間が開口部の外部に設けられる。そのため、開口部の内部に隙間が設けられる場合と比べて、流体路側の開口部における開口面積を確保できるという利点が得られる。
【0011】
前記流体路を構成する流体管に外嵌装着される外弁箱と、前記外弁箱に収容され、前記流体管の切断箇所に設置される内弁箱と、前記分岐路を構成する分岐接続管と、を備え、前記弁体が前記内弁箱に内蔵されており、前記流体路及び前記分岐路の開口部、並びに前記弁座面が、それぞれ前記内弁箱に形成されているものでもよい。かかる分岐管装置は、既設の流体管における所要箇所に適宜に設置することが可能である。
【0012】
上記の場合において、前記分岐路の開口部が前記流体路の開口部よりも幅狭で、しかも前記分岐路の開口部の開口面積が前記流体路の開口部の開口面積の100±10%であることが好ましい。これにより、流体管の切断幅を小さくしながらも、分岐路の流量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る分岐管装置の一例を示す横断面図
【
図5】
図4の弁体を少し回動させた状態を示す拡大図
【
図6】流体路の開口部を閉鎖した分岐管装置を示す横断面図
【
図9】
図8の弁体を少し回動させた状態を示す拡大図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本実施形態の分岐管装置1を示す横断面図である。
図2は、その分岐管装置1の縦断面図であり、
図1のA-A断面に相当する。分岐管装置1は、流体管である水道管Pを連接してなる本管路Lmとバイパス管路Lbとの分岐点に配置されている。分岐管装置1は、流体路2と、その流体路2から分岐した分岐路3とを内部に有する。流体路2は
図1の左右方向に延びており、分岐路3は
図1の上下方向に延びている。流体路2には流体である水が通されており、水道管Pは不断流状態(即ち、不断水状態)にある。矢印Wは、水が流れる向きを示す。
【0016】
本実施形態では、本管路Lmの補修等を目的とした不断水工法に分岐管装置1を用いる例を示す。分岐管装置1は、本管路Lmにおける補修箇所の上流側に設置されている。この分岐管装置1と、補修箇所の下流側に設置された別の分岐管装置(図示せず)との間に、その補修箇所を迂回するバイパス管路Lbが敷設されている。バイパス管路Lbは、分岐管装置1を介して本管路Lmに接続されている。分岐管装置1で流路を適宜に切り替えることにより、不断水状態を維持したまま、補修箇所において管路を撤去したり、新規な管路に取り替えたりすることができる。
【0017】
分岐管装置1の内部には、流体路2の開口部20A及び開口部20B、並びに分岐路3の開口部30が設けられている。これら三方の開口部20A,20B,30は、弁体4により択一的に閉鎖可能に構成されている。分岐管装置1は、流体路2及び分岐路3の開口部20A,20B,30を選択的に閉鎖する弁体4と、その弁体4のシール部40が密着される弁座面62とを備える。
図1,2では、弁体4が開口部30を閉鎖する状態を示しており、分岐路3には充水されていない。
【0018】
本実施形態の分岐管装置1は、流体路2を構成する水道管Pに外嵌装着された外弁箱5と、その外弁箱5に収容された内弁箱6と、分岐路3を構成する分岐接続管7とを備える。外弁箱5の内部では、水道管Pが管軸方向に切り離されており、その水道管Pの切断箇所に内弁箱6が設置されている。かかる水道管Pの切断は、分岐管装置1を水道管Pに設置する過程で、切削装置(図示せず)により不断水状態で設けられる。弁体4は、内弁箱6に内蔵されている。流体路2及び分岐路3の開口部20A,20B,30、並びに弁座面62は、それぞれ内弁箱6に形成されている。
【0019】
外弁箱5は、パッキン50を介して水道管Pの外周面を密封状態で取り囲んでいる。外弁箱5は、分割構造を有し、具体的には、上側部材5Aと下側部材5Bとで構成された上下二つ割り構造を有する。上側部材5Aと下側部材5Bとは、ボルト孔51に挿通されたボルト及びそれに螺合されたナットからなる接合具52によって互いに接合されている。パッキン50は、上側部材5A及び下側部材5Bの各々に装着されている。上側部材5Aの上部には、内弁箱6などを出し入れ可能な開口部53が形成されている。外弁箱5には、開口部53を閉鎖する蓋体54が着脱自在に取り付けられている。
【0020】
内弁箱6は、軸方向を上下に向けた略円筒状の筐体により構成されている。内弁箱6は、外弁箱5と同様に、金属材により形成されている。内弁箱6の側面には、水道管Pの管軸方向に沿って設けられた一対の貫通孔と、分岐接続管7の管軸方向に沿って設けられた貫通孔が形成され、それらが開口部20A,20B,30を構成している。内弁箱6の外面には、外弁箱5と内弁箱6との間を密封するパッキン60と、水道管Pに形成された管切断面を防食するための防食部材61とが装着されている。内弁箱6の内面には、弁座面62が形成されている。
【0021】
分岐接続管7は、水道管Pの管径方向に突出して設けられ、その先端部7aにバイパス管路Lbが接続されている。先端部7aは、メカニカルタイプの受口として形成されているが、これに限られず、例えばスリップオンタイプの受口でもよく、あるいは挿口でもよい。分岐接続管7は、外弁箱5の分割部に基端部7bを挟み込むことにより外弁箱5に接続されている。外弁箱5の内面と分岐接続管7の外面との間の隙間は、パッキン50によって密封されている。分岐接続管7は、外弁箱5とは別個の短管により構成されているが、これに限られず、外弁箱5と一体的に形成されていてもよい。
【0022】
弁体4は、鉛直方向に沿った軸線4aを中心として回動自在に構成されている。弁体4の回動は、操作軸41の操作に応じて行われる。内弁箱6には、操作軸41に連結された減速機42が被せられている。
図1~3に示すように、弁体4は、平面視扇形に形成された天壁43及び底壁44と、それらを連結するシール壁45とを備える。天壁43の接続部43aには、操作軸41の基端部が接続される。底壁44の突出部44aは、内弁箱6の下部に回動可能に支持される。シール壁45は、内弁箱6の内周面に沿って湾曲しており、弁体4の回動に応じて流体路2及び分岐路3の開口部を遮断する。
【0023】
図3,4に示すように、弁体4の外面は、ゴムなどの弾性部材46で覆われている。弾性部材46は、ライニングによって弁体4の表面に貼り付けられている。シール部40は、この弾性部材46を外周側へ隆起させて形成されており、弁座面62に摺接する。シール部40は、シール壁45の外周面の外縁に沿って環状に延びている。シール部40は、上下方向に延びた一対の側方部40a,40bと、それらの上端を互いに連ねる上方部40cと、それらの下端を互いに連ねる下方部40dとを有し、全体として矩形枠状に形成されている。シール部40の断面形状は半円形であるが、これに限られず、例えばOリング形状や台形状であっても構わない。
【0024】
弁座面62は、弁室となる内弁箱6の内部を向いている。弁座面62は、シール部40に対応して環状に延びた部分を有し、三方の開口部20A,20B,30の各々を取り囲んでいる(
図2,7参照)。開口部30が閉鎖される状態では、シール部40の一対の側方部40a,40bが、それぞれ弁座面62の一対の側方部62a,62bに密着する。側方部62a,62bは、それぞれ上下方向に延びるとともに、弁体4の回動方向(内弁箱6の周方向)に沿って所定の幅を有している。側方部62a,62bの表面は、いずれも溝などが形成されていない滑らかな曲面で形成されている。
【0025】
図1,2の状態では、まだバイパス管路Lbに水が供給されておらず、分岐路3の開口部30を閉鎖する弁体4に対して水圧が一方側(シール壁45の内周面側)からのみ作用する。そのため、弁体4の一方側と他方側との圧力差が大きく、開弁する際に弁体4を円滑に動かしづらい。本実施形態のように水道管Pの呼び径(外径の呼称値)が300以上である場合には、かかる傾向が顕著であり、開弁する際の作業性が特に悪化しやすい。これに対し、本管路Lmとバイパス管路Lbとを連通管などで連通させるバイパス処置が有効であるが、本実施形態の分岐管装置1によれば、そのようなバイパス処置を施すことなく開弁する際の作業性を向上できる。
【0026】
図5は、
図4の弁体4を少し回動させた状態を示す。矢印Rは、弁体4の回動方向を示し、本実施形態では平面視において反時計回り方向である。
図5のように、この分岐管装置1では、開口部30を閉鎖している弁体4を動かして開弁する際の初期動作において、開口部30の一側方でシール部40が弁座面62に密着しながら、開口部30の他側方でシール部40が弁座面62から離れた状態となる。本実施形態において、開口部30の一側方は、側方部62aが位置する方であり、回動方向Rの後方に相当する。また、開口部30の他側方は、側方部62bが位置する方であり、回動方向Rの前方に相当する。
【0027】
開弁する際の初期動作において、開口部30の一側方及び他側方のうち、他側方でのみシール部40が弁座面62から離れた状態となることにより、そのシール部40と弁座面62との間、より具体的には側方部40bと側方部62bとの間に隙間Gが形成される。そして、その隙間Gを通じて水が流れ込み、分岐路3に水が供給される。その結果、弁体4の一方側と他方側との圧力差が軽減されて、弁体4を動かしやすくなり、開弁する際の作業性が向上する。隙間Gは、開口部30の高さH30(
図7参照)に亘って、上下方向に連続して延在したものとすることができる。
【0028】
本実施形態の分岐管装置1では、弁座面62の側方部62a,62bの表面に溝が形成されていないため、閉弁時にシール部40を弁座面62に密着させる際に、シール部40が溝に引っ掛かることがない。また、上下方向に連続して延びた隙間Gを通じて水を流すことができるので、開弁時に高い水圧がシール部40に局所的に作用する恐れがない。加えて、製造工程において溝の加工が不要であるとともに、溝に異物が侵入することによって給水が妨げられる心配もない。更に、シール部40は、弁体4にライニングされているため、開放したときの衝撃で外れることがない。
【0029】
本実施形態では、
図4のように弁座面62に密着するシール部40を開口部30の中央線C30に関して対称的に配置したときに、その開口部30の一側方及び他側方の各々においてシール部40の中央が弁座面62の中央よりも外側に位置する。換言すると、一対の側方部40a,40bを中央線C30に関して対称的に配置したときに、その一対の側方部40a,40bの中央線C40a,C40bが、一対の側方部62a,62bの中央線C62a,C62bの外側(中央線C30から離れる側)に位置する。これにより、開弁時の初期動作において、
図5のように開口部30の他側方(または一側方)でのみシール部40が弁座面62から離れた状態にできる。
【0030】
中央線C40a,C40b及び中央線C62a,C62bは、軸線4aにて互いに交差する直線である。中央線C62aと中央線C62bとがなす角度θ62は、中央線C40aと中央線C40bとがなす角度θ40よりも小さい。これに対し、角度θ62が角度θ40と同じである場合には、開弁する際の初期動作において、開口部30の一側方と他側方とでシール部40が同時に弁座面62から離れるため、急激な圧力変化を生じてしまう。三方の開口部を弁体4の回動に応じて閉鎖する構成上、角度θ40は90度前後であることが好ましい。故に、角度θ62は90度よりも小さいことが好ましい。角度θ40が90度である場合に、角度θ62は例えば85度である。
【0031】
図6は、流体路2の開口部20Bを閉鎖した分岐管装置1を示す横断面図である。
図7は、その分岐管装置1を示す縦断面図であり、
図6のB-B断面に相当する。
図6,7に示す状態では、流体路2から分岐路3に向かって水が流れるように流路が切り替えられており、バイパス管路Lbは充水されている。補修箇所の下流側に設置された別の分岐管装置(図示せず)では、分岐路3から流体路2に向かって水が流れている。バイパス管路Lbで補修箇所を迂回することにより、不断水状態を維持したまま、管路を撤去したり、新規な管路に取り替えたりできる。
【0032】
補修作業を終えた後、そのままバイパス管路Lbを残しておくことも可能であるが、バイパス管路Lbを撤去する場合は、分岐管装置1で流路を切り替える必要がある。具体的には、開口部20Bを閉鎖している弁体4を回動させて、
図1,2のように開口部30を再び閉鎖する。開口部20Bを閉鎖する弁体4も動かしづらい状態になっているので、この弁体4を動かして開弁する際の初期動作においても、開口部20Bの一側方でシール部40が弁座面62に密着しながら、開口部20Bの他側方でシール部40が弁座面62から離れた状態となることが好ましい。
【0033】
開口部20Aは、
図2ように水道管Pの管軸方向から見て矩形状に形成されている。開口部20Aの高さH20は、水道管Pの外径に近付けられており、その開口部20Aの幅W20よりも大きい。幅W20は、水道管Pの管径方向に沿った直線距離として求められる。開口部20Bは、開口部20Aと同じ形状及び寸法を有する。開口部30は、
図7のように分岐接続管7の管軸方向から見て矩形状に形成されている。開口部30の高さH30は、その開口部30の幅W30よりも大きい。幅W30は、分岐接続管7の管径方向に沿った直線距離として求められる。
【0034】
本実施形態では、分岐路3の開口部30が流体路2の開口部20Aよりも幅狭で、しかも分岐路3の開口部30の開口面積が流体路2の開口部20Aの開口面積の100±10%であり、より好ましくは100±5%である。即ち、開口部30は、開口部20Aよりもアスペクト比(長辺の長さ/短辺の長さ)を大きくしつつ、開口部20Aと同等の開口面積を有する。水道管Pの呼び径が300であり、外径が322.8mmである場合において、開口部20Aの高さH20を315mm、幅W20を240mm、開口部30の高さH30を360mm、幅W30を210mmとした構成が例示される。
【0035】
水道管Pの切断に用いられる切削装置のカッター径を小さくすると、装置を小型にできるなどのメリットがあるものの、それに伴って水道管Pの切断幅(一対の管切断面の間隔)が狭まるため、水道管Pの管切断面に開口部30が干渉する恐れが生じる。そこで、本実施形態では、開口部30の幅を相対的に小さくし、それでいて開口部20A,20Bと同等の流量を確保するために、開口部30の高さを相対的に大きくしている。これにより、水道管Pの切断幅を小さくしながらも、分岐路3の流量を確保できる。かかる構成は、既述のように角度θ62を90度よりも小さく設定する場合において、特に有用である。
【0036】
不断水工法により分岐管装置1を水道管Pに設置する手順の一例について、簡単に説明する。水道管Pはダクタイル鋳鉄管であるが、これに限られない。まずは、既設の水道管Pに外弁箱5を外嵌装着する。外弁箱5は、本管路Lmにおいて補修等が必要となる箇所の上流側(及び/または下流側)に設置される。外弁箱5の分割部には分岐接続管7の基端部7bを挟み込み、それによって分岐接続管7を外弁箱5に接続する。分岐接続管7の先端部7aには栓体(図示せず)を装着しておく。
【0037】
次に、外弁箱5に作業弁(図示せず)を介して切削装置を接続し、その切削装置を用いて外弁箱5の内部で水道管Pを不断水状態で切削する。切削装置のカッター(ホールソー)は、開口部53を通じて外弁箱5の内部に配置される。水道管Pよりも大径のカッターを使用することで、
図1のように水道管Pを管軸方向に切り離すことができる。切断により発生した切り粉は、ドレン55を開放することで外部に排出される。切断を完了したら、カッターを引き上げて作業弁を閉じ、切削装置を撤去する。
【0038】
次に、切削装置に代えて挿入装置(図示せず)を外弁箱5に接続し、その挿入装置を用いて外弁箱5の内部に内弁箱6を挿入する。内弁箱6には、操作軸41に連結された弁体4が内蔵されている。内弁箱6は、切断により形成された一対の管切断面の間に配置される。内弁箱6の底面が外弁箱5の底部内面に当接するまで内弁箱6を下降させた後、開口部53の内面から止めねじ56を突出させ、外弁箱5に内弁箱6を固定する。外弁箱5に内弁箱6を固定したら、外弁箱5から作業弁と挿入装置を取り外し、内弁箱6の上方に減速機42を被せるとともに、蓋体54を接続して開口部53を施蓋する。
【0039】
続いて、弁体4が開口部30を閉鎖する状態で分岐接続管7から栓体を取り外し、バイパス管路Lbを敷設して分岐路3を形成する。必要に応じて、水道管Pの抜け出しを防止するための離脱防止金具8を外弁箱5の端部に装着してもよい。流路を切り替える場合は、操作軸41を操作して弁体4を回動させる。開弁する際の初期動作では、開口部30の一側方でシール部40が弁座面62に密着しながら、開口部30の他側方でシール部40が弁座面62から離れた状態となるため、作業性が向上する。
【0040】
前述の実施形態では、
図4のようにシール部40を中央線C30に関して対称的に配置したときに、開口部30の一側方及び他側方の各々においてシール部40の中央が弁座面62の中央よりも外側に位置する例を示したが、これに限られず、
図8のように開口部30の一側方及び他側方の各々においてシール部40の中央が弁座面62の中央よりも内側に位置してもよい。開弁時の初期動作では、
図9のように、開口部30の一側方(回動方向Rの前方に相当)でシール部40が弁座面62に密着しながら、開口部30の他側方(回動方向Rの後方に相当)でシール部40が弁座面62から離れた状態となる。
【0041】
図8,9に示した構成では、開弁する際の初期動作において、シール部40と弁座面62との隙間Gが開口部30の内部に設けられる。これに対し、
図4,5に示した構成では、開弁する際の初期動作において、シール部40と弁座面62との隙間Gが開口部30の外部に設けられる。上述のように角度θ40が90度前後に設定されることに鑑み、かかる構成によれば、開口部30の内部に隙間Gが設けられる場合と比べて、流体路2側の開口部20A,20Bにおける開口面積を確保できるという利点が得られる。
【0042】
前述の実施形態では、分岐管装置1が外弁箱5、内弁箱6及び分岐接続管7を備える例を示したが、これに限られず、本管路を構成する分岐形状の管体(例えば、T字管)に弁体を内蔵させたものでもよい。かかる分岐管装置は、本管路に所定の間隔で予め複数設置され、その本管路に補修等の必要が生じたときには、補修箇所の上流側に位置する分岐管装置と下流側に位置する分岐管装置とを互いに繋げるようにして、バイパス管路が敷設される。
【0043】
本発明に係る分岐管装置は、水道管に適用できるものであるが、これに限られず、水以外の各種の液体や気体などの流体に用いる流体管に幅広く適用できる。
【0044】
本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 分岐管装置
2 流体路
3 分岐路
4 弁体
5 外弁箱
6 内弁箱
7 分岐接続管
20A 流体路の開口部
20B 流体路の開口部
30 分岐路の開口部
40 シール部
62 弁座面
P 水道管(流体管の一例)