(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】レギュレータ
(51)【国際特許分類】
F16K 17/30 20060101AFI20221220BHJP
G05D 16/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F16K17/30 A
G05D16/10 Z
(21)【出願番号】P 2019024820
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特許第2630439(JP,B2)
【文献】特開2014-106666(JP,A)
【文献】米国特許第7401622(US,B2)
【文献】特開平7-219642(JP,A)
【文献】特開2015-64072(JP,A)
【文献】特開昭61-244999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102160012(CN,A)
【文献】特開2019-67216(JP,A)
【文献】特開2020-41616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00-16/20
F16K 17/18-17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料入口から導入される高圧流体が、燃料入口に設けられた弁座と、この弁座の調圧室側に配置された弁座シートに向かい合うように設けられた調圧室への連通通路が形成された調圧弁体との開口部を通過し、前記調圧弁体と接合されたピストン部に作用する調圧流体の圧力による荷重と前記ピストン部の調圧室とは逆側に前記調圧室と同軸上に並行して設けられた大気室内の調圧ばねによる荷重が釣り合い、前記弁座シートと調圧弁体間の開口面積を変化させて前記調圧室の流体圧力を制御するレギュレータにおいて、前記弁座シートを保持する弁座が、弾性部材にて摺動性のよい緩衝材を介して設置されており、自動調芯させることで前記調圧弁体と弁座シートの均一な接触を可能としたことを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
前記緩衝材がPTFEにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【請求項3】
前記弾性部材が圧縮コイルばねであることを特徴とする請求項1または2記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いられるレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
調圧室内の圧力変動によりピストンを介して調圧弁体を開閉し、高圧流体の流量を制御するレギュレータは例えば実開昭52-92436号公報,特願2017-193078号に提示されており、例えば燃料タンクに貯留したCNG(圧縮天然ガス)などの高圧燃料をエンジンに供給する際などの調圧器などに利用されている。
【0003】
図4乃至
図6は前記従来のレギュレータの一例を示すものであり、ボデー1に貫通した通路2の燃料入口21側には燃料気密保持用の燃料入口カバー22が設けられ、前記燃料入口カバー22の燃料入口21側とは逆側に円筒形状の弁座シート31がその外周端面に形成した嵌合部において設置されるとともに複数の連通する連通通路32を有した弁座シート保持部材33からなる弁座3をボデー1内部の段差との間で挟み込み固定している。
【0004】
また、前記燃料入口カバー22と弁座3の弁座シート保持部材33との間に高分子材料等を材料としたO-RINGからなる緩衝材93を設けて弁座3を軸直方向へスライドを可能としており、前記弁座3の燃料入口カバー22の反対側には、拡開した先端面51が弁座3の弁座シート31に接触または離脱して弁通路32を開閉させる調圧弁体5を有するピストン調圧弁7が前記通路2の軸線方向に摺動可能に配置されている。
【0005】
更に、前記ピストン調圧弁7には軸中央を連通する燃料通路52を有する調圧弁体5の接触径よりも大径となるピストン部6がその中央部に形成された連結孔62で接合しており、調圧弁体5の直近外周部とピストン部6の外周部に円周上のシール部材91,92を介してボデー1に形成した通路2の内周にガイドされ、流体気密保持と合わせてボデー1の軸線上にスライドできる構造となっている。
【0006】
更にまた、前記ボデー1の通路2におけるピストン部6の流出側には燃料出口カバー23が設けられた燃料出口24を構成しており、ピストン部6の燃料出口24と逆側には調圧弁体5の外周側のピストン部6で受ける圧力荷重と釣り合うように調圧ばね8がピストン部6の周囲において調圧室4と同軸上に並行して設けられた大気室61内に配置されて前記通路2の燃料出口24方向に付勢されている。
【0007】
この従来例のレギュレータは、燃料入口21から流入するCNGなどの高圧燃料がボデー1の燃料入口21の燃料入口カバー22内部を通過し、弁座3の弁通路32を介して調圧室4に流入する。
【0008】
ここで、初期段階としてはピストン調圧弁7が調圧ばね8に押され、調圧弁体5の先端面51と弁座3の調圧室4側に配置された弁座シート31との隙間を通り、ピストン調圧弁7を形成する調圧弁体5の軸中央に設けてある連通通路52を介して燃料出口24側へ流入する。その後、燃料出口24に流入した調圧燃料により燃料出口24側の圧力が増加するにつれてピストン部6を介し、調圧ばね8を押し出し、ピストン調圧弁7をスライドさせ、その後、一定の圧力に達すると調圧弁体5の連通通路52が弁座シート31に接触して閉塞し、燃料が遮断される。
【0009】
このとき弁座シート31が設置された弁座3は緩衝材93によりバルブ軸直方向にスライド可能となっており、弁座シート31と調圧弁体5の着座を安定させ、その後、燃料出口24側の燃料が消費されると再度ピストン調圧弁7が調圧ばね8に押され弁座シート31と調圧弁体5の隙間が開口し燃料出口24側へ流入する。
【0010】
以上の動作を繰り返し、弁座シート31と調圧弁体5の隙間面積を変化させることで燃料出口24側の圧力を一定に保持するものである。
【0011】
しかしながら、このような従来のレギュレータの減圧構造においては、調圧弁体5が弁座シート3に着座する際、緩衝部材93のつぶし代によって弁座3の保持荷重が大きくなり、弁座3のスライドする機構が失われ弁座シート31と調圧弁体5間のリーク不良等による機能損失に発展することがあった。また、上記問題を解決するためには周辺部品の寸法精度を厳しく管理することが必要となりコスト増となる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】実開昭52-92436号公報
【文献】特願2017-193078号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、前記従来のレギュレータが有する問題点に着目してなされたものであり、弁座のスライドする機構が失われることで弁座シートと調圧弁体間のリーク不良等による機能損失に発展することを防止したレギュレータを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するためになされた本発明であるレギュレータは、燃料入口から導入される高圧流体が、燃料入口に設けられた弁座と、この弁座の調圧室側に配置した弁座シートに向かい合うように設けられた調圧室への連通通路が形成された調圧弁体との開口部を通過し、前記調圧弁体と接合されたピストン部に作用する調圧流体の圧力による荷重と前記ピストン部の調圧室とは逆側に前記調圧室と同軸上に並行して設けられた大気室内の調圧ばねによる荷重が釣り合い、前記弁座シートと調圧弁体間の開口面積を変化させて前記調圧室の流体圧力を制御するレギュレータにおいて、前記弁座シートを保持する弁座が弾性部材にて摺動性のよい緩衝材を介して設置されており、自動調芯させることで前記調圧弁体と弁座シートの均一な接触を可能としたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明において、前記緩衝材がPTFEにより形成されている場合には弾性および摺動性に優れたものが容易且つ確実に実施することができる。
【0016】
更に、本発明において、前記弾性部材が圧縮コイルばねで形成することで容易に装着可能で且つ弁座を確実に付勢することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁座のスライドする機構が失われることで弁座シートと調圧弁体間のリーク不良等による機能損失に発展することを防止したレギュレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明における実施の形態の閉弁時を示す断面図。
【
図2】
図1に示した実施の形態の開弁時を示す断面図。
【
図3】
図1に示した実施の形態の閉弁時を示すピストン調圧弁部分を拡大した断面図。
【
図4】従来例における実施の形態の閉弁時を示す断面図。
【
図6】
図4に示した従来例の閉弁時を示すピストン調圧弁部分を拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
図1乃至
図3は、本発明における好ましい実施の形態の断面図を示すものであり、全体の構成および作用は前記
図4乃至
図6に示した従来例とほぼ同様であり、それらの部分については詳細な説明を省略する。また、前記従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0021】
そして、特に前記従来例と異なる点は、前記
図4乃至
図6に示した前記従来のレギュレータでは、ボデー1に貫通した通路2の段差との間で挟み込み固定している弁座3と燃料入口カバー22との間に高分子材料等を材料とした緩衝材93を設け軸直方向へのスライドを可能としているのに対して、本実施の形態では弁座3を、燃料入口カバー22側に設けた例えばばね体、弾性体などの弾性部材101(本実施の形態では弾発コイルばね)と、例えばPTFE(Pоly Tetra Fluоrо Ethylene)[テフロン(登録商標)]などの摺動性、耐久性に優れた材質により形成された緩衝材102を介して保持している点が異なる。
【0022】
従って、本実施の形態では、燃料出口24が一定の圧力に達して弁座シート31と調圧弁体5の連通通路52が閉塞し燃料を遮断するとき、弾性部材101の荷重から発生する軸直方向への摩擦抵抗に対し、調圧弁体5に付加されるピストン部6が受ける燃料出口24の圧力による荷重の軸直方向成分が大きくなることで、弁座3が軸直方向へスライドし、弁座シート31と調圧弁体5を安定させて接触させることができ、このとき、燃料入口カバー22と弁座3を保持する緩衝材102の間に隙間を設けることで、燃料入口カバー22の端面が弁座3の軸直方向へのスライドを阻害することがない。
【0023】
殊に、本実施の形態では、緩衝材102をPTFEにより形成したので摺動性に優れているとともに、低温から高温まで耐熱性を有し、耐摩耗性などにも優れているので緩衝材102が使用中に劣化し難い。
【0024】
このように本実施の形態は、前記
図4乃至
図6に示した従来の弁座3を保持するための緩衝材93に代えて、弁座3を保持する部材である緩衝材102と保持荷重を与える弾性部材101に分割することで、保持荷重の設定も容易となり、困難な寸法管理も必要がなくなる。
【符号の説明】
【0025】
1 ボデー、2 通路、3 弁座、4 調圧室、5 調圧弁体、6 ピストン部、7 ピストン調圧弁、8 調圧ばね、21 燃料入口、22 燃料入口カバー、23 燃料出口カバー、24 燃料出口、31 弁座シート、32 弁通路、33 弁座シート保持部材、51 先端面、52 連通通路、61 大気室、62 連通孔、91,92 シール部材、93 緩衝材、101 弾性部材、102 緩衝材