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特許7197135廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/20 20060101AFI20221220BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20221220BHJP
   F02M 31/16 20060101ALI20221220BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20221220BHJP
   F01M 5/00 20060101ALI20221220BHJP
   F01M 11/10 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
F01P3/20 G
F01P3/20 M
F01P7/16 507A
F02M31/16 K
F02M31/16 E
B63H21/38 C
F01M5/00 D
F01M5/00 N
F01M11/10 F
F01M11/10 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019052102
(22)【出願日】2019-03-20
(65)【公開番号】P2020153285
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】391043790
【氏名又は名称】株式会社小野寺鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 卯征
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-99170(JP,U)
【文献】中国実用新案第208364284(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 31/14
F02M 31/16
F01P 3/20
F01P 7/14
F01M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷式の船舶用機関の燃料油や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱で加熱する廃熱を利用した温度制御システムにおいて、
清浄装置へ導入される前記被加熱油と前記船舶用機関を経由した冷却液との間で熱交換することにより前記被加熱油の加熱及び前記冷却液の冷却を行う熱交換器と、
前記被加熱油を流通させる油用配管であって、前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記清浄装置へ至る流路とを備えた油用配管と、
前記油用配管内に配置され、前記熱交換器を経由する流路と経由しない流路との間で前記被加熱油の流路を切り替えるための油用電磁弁と、
前記冷却液を流通させる冷却液用配管であって、前記熱交換器を経由して前記船舶用機関に至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記船舶用機関に至る流路とを備えた冷却液用配管と、
前記冷却液用配管内に配置され、前記熱交換器を経由する流路と経由しない流路との間で前記冷却液の流路を切り替えるための冷却液用電磁弁と、
前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ向かう前記被加熱油の温度及び水分それぞれ検出する温度センサ及び水分センサと、
前記温度センサ及び前記水分センサで検出された温度及び水分量の双方に応じて前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を制御する制御部と、
を備えていることを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、
前記制御部は、
前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由するように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するオープンモードと、
前記被加熱油が前記熱交換器を経由し、且つ、前記冷却液が前記熱交換器を経由しないように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するオープンクローズモードと、
前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由しないように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するクローズモードと、
を備え
前記水分センサで検出された水分量が予め設定された値に到達した場合には前記オープンモード及び前記オープンクローズモードに優先して前記クローズモードを発現させる
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、
前記水分センサで検出された水分量が前記値に到達しない限り、前記制御部は、
前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達しない場合には前記オープンモードを発現させ、
前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達した場合には前記オープンクローズモードを発現させる
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム。
【請求項4】
請求項1からのいずれか1項に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、
前記油用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には逆流を防止する油用逆止弁が配置され、
前記冷却液用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には逆流を防止する冷却液用逆止弁が配置されている
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム。
【請求項5】
請求項1からのいずれか1項に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、
前記油用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には油用流量調整バルブが配置され、
前記冷却液用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には冷却液用流量調整バルブが配置されている
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム。
【請求項6】
液冷式の船舶用機関の燃料油や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱で加熱する廃熱を利用した温度制御方法において、
清浄装置へ導入される前記被加熱油と前記船舶用機関を経由した冷却液との間で熱交換する熱交換器で前記被加熱油の加熱及び前記冷却液の冷却を行うステップと、
前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記清浄装置へ至る流路との間で前記被加熱油の流路を切り替えるステップと、
前記熱交換器を経由して前記船舶用機関に至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記船舶用機関に至る流路との間で前記冷却液の流路を切り替えるステップと、
前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ向かう前記被加熱油の温度及び水分それぞれ温度センサ及び水分センサによって検出するステップと、
前記温度センサ及び前記水分センサで検出された温度及び水分量の双方に応じて前記被加熱油の流路の前記切り替え及び前記冷却液の流路の前記切り替えを制御するステップと、
を備えていることを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法
【請求項7】
請求項6に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法において、
前記制御するステップは、
前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由するように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するオープンモードと、
前記被加熱油が前記熱交換器を経由し、且つ、前記冷却液が前記熱交換器を経由しないように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するオープンクローズモードと、
前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由しないように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するクローズモードと
を備え、
前記水分センサで検出された水分量が予め設定された値に到達した場合には前記オープンモード及び前記オープンクローズモードに優先して前記クローズモードを発現させる
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法において、
前記水分センサで検出された水分量が前記値に到達しない限り、前記制御するステップでは、
前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達しない場合には前記オープンモードを発現させ、
前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達した場合には前記オープンクローズモードを発現させる
ことを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法に関し、特に、液冷式の船舶用機関の燃料油や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱を利用して加熱する廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの船舶の推進機関、発電機関など(以下、「船舶用機関」という。)の燃料油(重油、軽油)にはスラッジなどの不純物を含む場合が多く、船舶用機関へ供給される前に遠心分離等を利用した清浄装置(特許文献1~7を参照)を介在させて清浄処理が行われる。そして、清浄効果を高めるためには燃料油を予熱してその粘度を下げておく必要があることから、殆どの船舶には清浄装置の入口に燃料油を加熱するための電気ヒータが設置されている。一般に、船舶に設置された電気ヒータの電力は船舶用機関(発電機関)によって担われており、電気ヒータの制御方式はオン-オフ制御方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-211859号公報
【文献】特開昭60-149802号公報
【文献】特開昭60-149803号公報
【文献】特開昭62-162765号公報
【文献】特許第5504394号公報
【文献】特許第5875021号公報
【文献】実開昭59-30550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電気ヒータは、燃料油を加熱するのに時間がかかり、消費電力も大きいので、船舶用機関における燃料油の消費量も増大する。そして、電気ヒータの消費電力が増大すると船舶用機関の負荷も増大し、船舶用機関の負荷が増大すると電気ヒータの消費電力が更に増大するという悪循環が生じていた。その結果、船舶用機関のエネルギー効率が低下し、燃料油の燃焼に起因した窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)等の排気ガス量も多くなるという問題が生じていた。
【0005】
また、特許文献5には、C重油の加熱処理にディーゼル機関の排熱を利用することで従来の電気ヒータで使用していた電力を要しない技術が開示されているものの、この特許文献5では熱交換器に係る制御については何ら言及しておらず、清浄装置へ導入されるC重油の温度を適正な温度に維持することについては全く考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、船舶の推進機関や発電機関などの船舶用機関のエネルギー効率を確実に高めることのできる廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、液冷式の船舶用機関の燃料油や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱で加熱する廃熱を利用した温度制御システムにおいて、清浄装置へ導入される前記被加熱油と前記船舶用機関を経由した冷却液との間で熱交換することにより前記被加熱油の加熱及び前記冷却液の冷却を行う熱交換器と、前記被加熱油を流通させる油用配管であって、前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記清浄装置へ至る流路とを備えた油用配管と、前記油用配管内に配置され、前記熱交換器を経由する流路と経由しない流路との間で前記被加熱油の流路を切り替えるための油用電磁弁と、前記冷却液を流通させる冷却液用配管であって、前記熱交換器を経由して前記船舶用機関に至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記船舶用機関に至る流路とを備えた冷却液用配管と、前記冷却液用配管内に配置され、前記熱交換器を経由する流路と経由しない流路との間で前記冷却液の流路を切り替えるための冷却液用電磁弁と、前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ向かう前記被加熱油の温度を検出する温度及び水分それぞれ検出する温度センサ及び水分センサと、前記温度センサ及び前記水分センサで検出された温度及び水分量の双方に応じて前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を制御する制御部とを備えていることを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムを提供する。
【0008】
上記課題を解決するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、前記温度センサで検出された温度に応じて前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由するように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するオープンモードと、前記被加熱油が前記熱交換器を経由し、且つ、前記冷却液が前記熱交換器を経由しないように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するオープンクローズモードと、前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由しないように前記油用電磁弁及び前記冷却液用電磁弁を設定するクローズモードと、を備え、前記水分センサで検出された水分量が予め設定された値に到達した場合には前記オープンモード及び前記オープンクローズモードに優先して前記クローズモードを発現させることを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、前記水分センサで検出された水分量が前記値に到達しない限り、前記制御部は、前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達しない場合には前記オープンモードを発現させ、前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達した場合には前記オープンクローズモードを発現させることを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、前記油用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には逆流を防止する油用逆止弁が配置され、前記冷却液用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には逆流を防止する冷却液用逆止弁が配置されていることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項に記載の発明は、請求項1からのいずれか1項に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムにおいて、前記油用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には油用流量調整バルブが配置され、前記冷却液用配管の流路のうち前記熱交換器を経由する流路の途中には冷却液用流量調整バルブが配置されていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため請求項に記載の発明は、液冷式の船舶用機関の燃料油や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱で加熱する廃熱を利用した温度制御方法において、清浄装置へ導入される前記被加熱油と前記船舶用機関を経由した冷却液との間で熱交換する熱交換器で前記被加熱油の加熱及び前記冷却液の冷却を行うステップと、前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記清浄装置へ至る流路との間で前記被加熱油の流路を切り替えるステップと、前記熱交換器を経由して前記船舶用機関に至る流路と前記熱交換器を経由しないで前記船舶用機関に至る流路との間で前記冷却液の流路を切り替えるステップと、前記熱交換器を経由して前記清浄装置へ向かう前記被加熱油の温度及び水分それぞれ温度センサ及び水分センサによって検出するステップと、前記温度センサ及び前記水分センサで検出された温度及び水分量の双方に応じて前記被加熱油の流路の前記切り替え及び前記冷却液の流路の前記切り替えを制御するステップと、を備えていることを特徴とする廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法を提供する。
【0014】
上記課題を解決するため請求項に記載の発明は、請求項6に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法において、前記制御するステップは、前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由するように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するオープンモードと、前記被加熱油が前記熱交換器を経由し、且つ、前記冷却液が前記熱交換器を経由しないように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するオープンクローズモードと、前記被加熱油及び前記冷却液が共に前記熱交換器を経由しないように前記被加熱油の流路及び前記冷却液の流路を設定するクローズモードとを備え、前記水分センサで検出された水分量が予め設定された値に到達した場合には前記オープンモード及び前記オープンクローズモードに優先して前記クローズモードを発現させることを特徴とする。
上記課題を解決するため請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法において、前記水分センサで検出された水分量が前記値に到達しない限り、前記制御するステップでは、前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達しない場合には前記オープンモードを発現させ、前記温度センサで検出された温度が予め設定された値に到達した場合には前記オープンクローズモードを発現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法によれば、被加熱油の加熱と冷却液の冷却とに両者間の熱交換を利用するので、被加熱油の加熱のための消費電力と冷却液の冷却のための消費電力との双方を抑えて発電用機関の負荷を抑えることができる。また、本発明に係る温度制御システムによれば、船舶に加熱装置(ヒーター)や冷却装置(クーラー)を個別に搭載する必要がない、或いは船舶に搭載される加熱装置及び冷却装置の規模を抑えることができるので、船舶の重量を抑えて推進機関の負荷を抑えることもできる。
【0016】
また、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法によれば、被加熱油が熱交換器を経由し、且つ、冷却液が熱交換器を経由しないモード(オープンクローズモード)を実現できるので、熱交換器内に滞留する高温の冷却液の余熱を被加熱油の加熱に有効利用してエネルギーロスを抑えると共に、被加熱油の急激な温度低下を防ぐことで一定以上の清浄効果を維持することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムの好ましい一実施形態のブロック図である。
図2図2は、クローズモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図である。
図3図3は、オープンモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図である。
図4図4は、オープンクローズモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図である。
図5図5は、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法の好ましい一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御システム及び方法について好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御システムの好ましい一実施形態のブロック図、図2はクローズモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図、図3はオープンモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図、図4はオープンクローズモードにおける熱交換器の周辺を詳細に説明する図である。
【0019】
図1に示されるとおり、本実施形態の温度制御システム1は、液冷式の船舶用機関(船舶の発電機関や推進機関など)の燃料油(重油、軽油など)や潤滑油などとして用いられる被加熱油を清浄前に廃熱を利用して加熱する温度制御システムである。船舶用機関15の冷却液は、例えば、清水であり、被加熱油の供給先は船舶用機関15である。但し、潤滑油の場合は、その一部又は全部は船舶用機関15以外の装置(図1では不図示)に供給されてもよい。
【0020】
本実施形態の温度制御システム1は、清浄装置13へ導入される被加熱油と船舶用機関15を経由した冷却液との間で熱交換することにより被加熱油の加熱を行う熱交換器12と、被加熱油を流通させる油用配管16であって、熱交換器12を経由して清浄装置13へ至る流路16-1及び熱交換器12を経由しないで清浄装置13へ至る流路16-2を備えた油用配管16と、冷却液を流通させる冷却液用配管17であって、熱交換器12を経由して船舶用機関15に至る流路17-1及び熱交換器12を経由しないで船舶用機関15に至る流路17-2を備えた冷却液用配管17とを備えている。被加熱油は清浄前タンク11内に貯留されており、熱交換器12を経由して加熱された後、清浄装置13で清浄され、清浄後タンク14内に貯留される。
【0021】
具体的には、温度制御システム1は、図2から図4に示されるとおり、油用配管16内に配置され、熱交換器12を経由する流路16-1と経由しない流路16-2との間で被加熱油の流路を切り替えるための油用電磁弁EMV-2,EMV-4とを備えている。油用電磁弁EMV-2の配置先は、熱交換器12を経由しない流路16-2が単独で存在している部分(熱交換器12を経由する流路16-1との非重複部分)であり、油用電磁弁EMV-4の配置先は、熱交換器12を経由する流路16-1が単独で存在している部分のうち熱交換器12の出口S3より下流側の部分である。
【0022】
また、温度制御システム1は、図2から図4に示されるとおり、冷却液用配管17内に配置され、前記熱交換器12を経由する流路17-1と経由しない流路17-2との間で冷却液の流路を切り替えるための冷却液用電磁弁EMV-1,EMV-3を備える。冷却液用電磁弁EMV-1の配置先は、熱交換器12を経由しない流路17-2が単独で存在している部分(熱交換器12を経由する流路17-1との非重複部分)であり、冷却液用電磁弁EMV-3の配置先は、熱交換器12を経由する流路17-1が単独で存在している部分のうち熱交換器12の出口S4より下流側の部分である。
【0023】
そして、温度制御システム1は、熱交換器12を経由して清浄装置13へ向かう被加熱油の温度を検出する温度センサSE-1と、熱交換器12を経由して清浄装置13へ向かう被加熱油の水分を検出する水分センサSE-2とを備える。温度センサSE-1,水分センサSE-2の配置先は、熱交換器12を経由する流路16-1が単独で存在している部分のうち熱交換器12の出口S3より下流側の部分である。
【0024】
また、温度制御システム1において、油用配管16の流路のうち熱交換器12を経由する流路16-1の途中には逆流を防止する油用逆止弁CV-2が配置され、冷却液用配管17の流路のうち熱交換器12を経由する流路17-1の途中には逆流を防止する冷却液用逆止弁CV-1が配置されている。油用逆止弁CV-2の配置先は、熱交換器12を経由する流路16-1が単独で存在している部分のうち熱交換器12の入口S2より上流側の部分である。冷却液用逆止弁CV-1の配置先は、熱交換器12を経由する流路17-1が単独で存在している部分のうち熱交換器12の入口S1より上流側の部分である。
【0025】
また、温度制御システム1において、油用配管16の流路のうち熱交換器12を経由する流路16-1の途中には油用流量調整バルブ(流量調節機能付きのバランサーバルブBCC-2,ボールバルブBV-2)が配置され、冷却液用配管17の流路のうち熱交換器12を経由する流路17-1の途中には冷却液用流量調整バルブ(流量調節機能付きのバランサーバルブBCC-1,ボールバルブBV-1)が配置されている。バランサーバルブBCC-2の配置先は、流路16-1,16-2の分岐点16Aと油用逆止弁CV-2との間であり、ボールバルブBV-2の配置先は、熱交換器12の出口S3と油用電磁弁EMV-4との間である。またバランサーバルブBCC-1の配置先は、流路17-1,17-2の分岐点17Aと冷却液用逆止弁CV-1との間であり、ボールバルブBV-1の配置先は、熱交換器12の出口S4と冷却液用電磁弁EMV-3との間である。なお、ボールバルブBV-1,BV-2は、メンテナンス時など装置を取り外した際に配管内の液体が流れ出ないようにするために用いられる。また、管理者は、温度制御システム1の使用前にボールバルブBV-1,BV-2を用いて被加熱油及び冷却液の流量をそれぞれ適量に調整することもできる。
【0026】
また、温度制御システム1は、温度センサSE-1で検出された温度に応じて油用電磁弁EMV-2,EMV-4、冷却液用電磁弁EMV-1,EMV-3、その他のバルブを制御する制御部18を備えている。そして、この制御部18は少なくとも「クローズモード」,「オープンモード」,「オープンクローズモード」の3つのモード制御を行う。
【0027】
(1)「クローズモード」
図2に示されるとおり、被加熱油及び冷却液が共に熱交換器12を経由しないように油用電磁弁EMV-2及び冷却液用電磁弁EMV-1を設定するモードである。クローズモードにおける油用配管16及び冷却液用配管17の具体的な設定は、それぞれ以下のとおりである。

(1-1)クローズモードにおける油用配管
油用電磁弁EMV-2:開
油用電磁弁EMV-4:閉
ボールバルブBV-2:開
バランサーバルブBCC-2:開
被加熱油の流路:清浄前タンク11、分岐点16A、油用電磁弁EMV-2、合流点16B、清浄装置13、清浄後タンク14、及び船舶用機関15をこの順で経由する流路(なお、このモードでは、油用電磁弁EMV-4が閉に設定されているので、この油用電磁弁EMV-4の配置先である流路16-1内を被加熱油が移動することはない。)

(1-2)クローズモードにおける冷却液用配管
冷却液用電磁弁EMV-1:開
冷却液用電磁弁EMV-3:閉
ボールバルブBV-1:開
バランサーバルブBCC-1:開
冷却液の流路:船舶用機関15、分岐点17A、冷却液用電磁弁EMV-1、合流点17B、船舶用機関15をこの順に経由する循環路(なお、このモードでは、冷却液用電磁弁EMV-3が閉に設定されているので、この冷却液用電磁弁EMV-3の配置先である流路17-1内を冷却液が移動することはない。)
【0028】
(2)「オープンモード」
図3に示されるとおり、被加熱油及び冷却液が共に熱交換器12を経由するように油用電磁弁EMV-2及び冷却液用電磁弁EMV-1を設定するモードである。オープンモードにおける油用配管16及び冷却液用配管17の具体的な設定は、それぞれ以下のとおりである。

(2-1)オープンモードにおける油用配管
油用電磁弁EMV-2:閉
油用電磁弁EMV-4:開
ボールバルブBV-2:開
バランサーバルブBCC-2:開
被加熱油の流路:清浄前タンク11、分岐点16A、バランサーバルブBCC-2、油用逆止弁CV-2、熱交換器12の入口S2、熱交換器12の出口S3、温度センサSE-1、水分センサSE-2、ボールバルブBV-2、油用電磁弁EMV-4、合流点16B、清浄装置13、清浄後タンク14、及び船舶用機関15をこの順で経由する流路(なお、このモードでは、油用電磁弁EMV-2が閉に設定されているので、この油用電磁弁EMV-2の配置先である流路16-2内を被加熱油が移動することはない。)

(2-2)オープンモードにおける冷却液用配管
冷却液用電磁弁EMV-1:閉
冷却液用電磁弁EMV-3:開
ボールバルブBV-1:開
バランサーバルブBCC-1:開
冷却液の流路:船舶用機関15、分岐点17A、バランサーバルブBCC-1、冷却液用逆止弁CV-1、熱交換器12の入口S1、熱交換器12の出口S4、ボールバルブBV-1、冷却液用電磁弁EMV-3、合流点17B、船舶用機関15をこの順に経由する循環路(なお、このモードでは、冷却液用電磁弁EMV-1が閉に設定されているので、この冷却液用電磁弁EMV-1の配置先である流路17-2内を冷却液が移動することはない。)
【0029】
(3)「オープンクローズモード」
図4に示されるとおり、被加熱油が熱交換器12を経由し、且つ、冷却液が熱交換器12を経由しないように油用電磁弁EMV-2及び冷却液用電磁弁EMV-1を設定するモードである。オープンクローズモードにおける油用配管16及び冷却液用配管17の具体的な設定は、それぞれ以下のとおりである。

(3-1)オープンクローズモードにおける油用配管
油用電磁弁EMV-2:閉
油用電磁弁EMV-4:開
ボールバルブBV-2:開
バランサーバルブBCC-2:開
被加熱油の流路:清浄前タンク11、分岐点16A、バランサーバルブBCC-2、油用逆止弁CV-2、熱交換器12の入口S2、熱交換器12の出口S3、温度センサSE-1、水分センサSE-2、ボールバルブBV-2、油用電磁弁EMV-4、合流点16B、清浄後タンク14、及び船舶用機関15をこの順で経由する流路(なお、このモードでは、油用電磁弁EMV-2が閉に設定されているので、この油用電磁弁EMV-2の配置先である流路16-2内を被加熱油が移動することはない。)

(3-2)オープンクローズモードにおける冷却液用配管
冷却液用電磁弁EMV-1:開
冷却液用電磁弁EMV-3:閉
ボールバルブBV-1:開
バランサーバルブBCC-1:開
冷却液の流路:船舶用機関15、分岐点17A、油用電磁弁EMV-1、合流点17B、船舶用機関15をこの順に経由する循環路(なお、このモードでは、冷却液用電磁弁EMV-3が閉に設定されているので、この冷却液用電磁弁EMV-3の配置先である流路17-1内を冷却液が移動することはない。)
【0030】
次に、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法について好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図5は、本発明に係る廃熱を利用した被加熱油の温度制御方法の好ましい一実施形態のフローチャートである。なお、図5の左側のフローと右側のフローとは例えば並行して実行される。この温度制御方法は、例えば、上述した温度制御システム1を利用して実施することができる。
【0031】
図5に示す温度制御方法は、概略として、清浄装置13へ導入される被加熱油と船舶用機関15を経由した冷却液との間で熱交換する熱交換器12で被加熱油の加熱及び冷却液の冷却を行うステップ(オープンモードを発現させるステップS11)と、熱交換器12を経由した被加熱油の温度を温度センサSE-1によって検出するステップ(S12)と、温度センサSE-1で検出された被加熱油の温度が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達しない場合(S12:NO)には、引き続き被加熱油及び冷却液を共に熱交換器12へ導入し(オープンモードを維持し)、温度センサSE-1で検出された被加熱油の温度が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達した場合(S12:YES)には、被加熱油が熱交換器12を経由し、且つ、冷却液が熱交換器12を経由しないようにするステップ(オープンクローズモードを発現させるステップS13)とを備えている。また、本実施形態の温度制御方法は、熱交換器12を経由して清浄装置13へ向かう被加熱油の水分を水分センサSE-2によって検出するステップ(S15)と、水分センサSE-2で検出された水分量が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達した場合(S15:YES)には、温度センサSE-1で検出される温度に拘わらず、被加熱油及び冷却液が共に熱交換器12を経由しないことを優先して設定するステップ(クローズモードを発現させるステップS17)とを備えている。
【0032】
以下、上述した温度制御方法を実現させるための制御部18の処理のフローを具体的に説明する。
【0033】
フローが開始されると、先ず、制御部18はオープンモードを発現させて熱交換を行う(S11)。このオープンモードでは、船舶用機関15から排出される高熱の冷却液によって被加熱油が温められ、それと同時に冷却液も冷却される。
【0034】
次に、制御部18は、温度センサSE-1で検出される温度が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達したか否かを判定し(S12)、温度が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達しない場合(S12:NO)には、オープンモードを継続し、温度が予め設定された適正範囲の上限値(例えば65℃)に到達した場合(S12:YES)には、オープンクローズモードを発現させる(S13)。このオープンクローズモードでは、熱交換器12内に滞留する高温の冷却液の余熱が被加熱油の加熱に利用されるので、被加熱油の温められる速度が緩やかとなり、その速度は時間の経過によって徐々に低下する。よって、オープンクローズモードでは、被加熱油の温度が適正範囲の下限値(例えば45℃)に向かって緩やかに下降する。
【0035】
その後、オープンクローズモードによって被加熱油の温度が適正範囲の下限値(例えば45℃)に到達した場合(S14:YES)、制御部18は再びオープンモードを発現させて(S11)、高熱の冷却液による被加熱油の加熱を再開する。したがって、図5の左側のフロー(ループ)が繰り返されると、被加熱油の温度は適正範囲の上限値(例えば65℃)と下限値(例えば45℃)との間で上昇及び下降を繰り返し、結果として被加熱油の温度は適正範囲(45℃~65℃)内に収められる。
【0036】
その一方で、制御部18は、水分センサSE-2で検出される水分量が予め設定された値に到達したか否かを判定し(S15)、水分センサSE-2で検出された水分量が予め設定された値に到達した場合には(S15:YES)、オープンモード及びオープンクローズモードに優先して(すなわち温度センサSE-1で検出される温度に拘わらず)、クローズモードを発現させて(S17)フローを終了する。
【0037】
また、制御部18は、不図示の制御盤内のパネルを介して管理者から終了指示が入力された否かを判定し(S16)、終了指示が入力された場合には(S16:YES)、クローズモードを発現させて(S17)フローを終了する。
【0038】
なお、被加熱油の適正範囲(上限値及び下限値)は、不図示の制御盤内のパネルを介して予め管理者がシステムへ入力できるものとする。また、図5の左側のフローは、被加熱油の温度を適正範囲に収めるために加熱速度の異なる2段階のモード(オープンモード及びオープンクローズモード)を主として使い分けたが、加熱速度の異なる3段階以上のモード(例えば、通常のオープンモード、オープンクローズモード、及び急速加熱用のオープンモードの3モード)を使い分けてもよい。急速加熱用のオープンモードは、熱交換器12に対する高温冷却液の流入量が通常のオープンモードより高く設定されたモードである。この流入量は、例えばバランサーバルブBCC-1によって調節することが可能である。
【0039】
以上説明したとおり本実施形態に係る温度制御システム1によれば、被加熱油の加熱と冷却液の冷却とに両者間の熱交換を利用するので、被加熱油の加熱のための消費電力と冷却液の冷却のための消費電力との双方を抑えて発電用機関の負荷を抑えることができる。
【0040】
また本実施形態に係る温度制御システムによれば、船舶に加熱装置及び冷却装置を個別に搭載する必要がない、或いは船舶に搭載される加熱装置及び冷却装置の規模を抑えることができるので、船舶の重量を抑えて推進機関の負荷を抑えることもできる。
【0041】
また本実施形態に係る温度制御システムや温度制御方法によれば、被加熱油が熱交換器12を経由し、且つ、冷却液が熱交換器12を経由しないオープンクローズモード(図4)を発現させることができるので、熱交換器12内に滞留する高温の冷却液の余熱を被加熱油の加熱に有効利用してエネルギーロスを抑えると共に、被加熱油の急激な温度低下を防ぐことで適正範囲の下限値(例えば45℃)を下回るという事態を確実に防ぎ、一定以上の清浄効果を維持することも可能である。
【0042】
以上のように、本発明について好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱或いは変更しない範囲内で種々変形が可能である。例えば、被加熱油の温度の適正範囲は、上述した45℃~65℃の範囲に限定されることはなく、被加熱油の性状によっては例えば50℃~60℃の範囲に設定されることもある。また、例えば、上述した実施形態では被加熱油の温度制御を主として説明したが、冷却液の温度に応じて被加熱油の温度制御の内容に変更を加えることとしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 温度制御システム
11 清浄前タンク
12 熱交換器
13 清浄装置
14 清浄後タンク
15 船舶用機関
16 油用配管
16-1 熱交換器を経由する被加熱油の流路
16-2 熱交換器を経由しない被加熱油の流路
16A 分岐点
16B 合流点
17 冷却液用配管
17-1 熱交換器を経由する冷却液の流路
17-2 熱交換器を経由しない冷却液の流路
18 制御部
17A 分岐点
17B 合流点
SE-1 温度センサ
SE-2 水分センサ

図1
図2
図3
図4
図5