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特許7197213正常酸素条件と交互になった低酸素条件における骨髄浸潤リンパ球の活性化
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  • 特許-正常酸素条件と交互になった低酸素条件における骨髄浸潤リンパ球の活性化 図1
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  • 特許-正常酸素条件と交互になった低酸素条件における骨髄浸潤リンパ球の活性化 図10
  • 特許-正常酸素条件と交互になった低酸素条件における骨髄浸潤リンパ球の活性化 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】正常酸素条件と交互になった低酸素条件における骨髄浸潤リンパ球の活性化
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/078 20100101AFI20221220BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20221220BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C12N5/078
A61K35/17 Z
A61P35/00
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2021063957
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2017512293の分割
【原出願日】2015-09-04
(65)【公開番号】P2021104048
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】62/045,782
(32)【優先日】2014-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/186,040
(32)【優先日】2015-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398076227
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】イヴァン エム. ボレロ
(72)【発明者】
【氏名】キンバリー エー. ヌーナン
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0223146(US,A1)
【文献】Journal of Immunological Methods,2008年,vol.339,p.23-37
【文献】Eur J Immunol,2013年,vol.43,p.793-804
【文献】Cell Biology International ,2014年03月,vol.38,p.782-789
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
C12N 15/00-15/90
A61K 35/00-35/768
CAplus(STN)、MEDLINE(STN)、
EMBASE(STN)、BIOSIS(STN)、
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物であって、
前記組成物は、CD3を発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも40%は、CD3を発現するMILの前記集団由来のMILであり、前記組成物が、CD4を発現するMILの集団を含み、
CD4を発現するMILの前記集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも21%は、4-1BBを発現する前記複数のMIL由来のMILである、組成物。
【請求項2】
前記組成物は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)を発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも2%は、IFNγを発現するMILの前記集団由来
のMILである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
CD3を発現するMILの前記集団は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)を発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも2%は、IFNγを発現する前記複数のMIL由来のMILである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、CXCR4を発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも98%は、CXCR4を発現するMILの前記集団由来のMILである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
CD4を発現するMILの前記集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも98%は、CXCR4を発現する前記複数のMIL由来のMILである、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
CD8を発現するMILの集団を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
CD8を発現するMILの前記集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも98%は、CXCR4を発現する前記複数のMIL由来のMILである、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
CD8を発現するMILの前記集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも21%は、4-1BBを発現する前記複数のMIL由来のMILである、請求項またはに記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、4-1BBを発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の前記細胞の少なくとも21%は、4-1BBを発現するMILの前記集団由来のMILである、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
被験体のがんを処置するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
多発性骨髄腫を有する被験体を処置するための治療用活性化骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物の調製における骨髄浸潤リンパ球の使用であって、前記組成物が、
(a)1%~3%の酸素の低酸素環境において、多発性骨髄腫を有する被験体から得られるMILを含む骨髄試料を抗CD3抗体および抗CD28抗体と共に培養して、低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球を産生するステップ;および、
(b)正常酸素環境において、IL-2の存在下で、前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球を培養して、前記治療用活性化骨髄浸潤リンパ球を産生するステップ
を含む方法において調製される、使用。
【請求項12】
前記骨髄試料が、前記低酸素環境で24時間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
前記骨髄試料が、前記低酸素環境において2日間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項14】
前記骨髄試料が、前記低酸素環境において3日間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
前記骨髄試料が、前記低酸素環境において2~5日間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
前記低酸素環境が、1%~2%の酸素である、請求項1に記載の使用。
【請求項17】
前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球は、前記正常酸素環境において2~12日間培養される、請求項11に記載の使用。
【請求項18】
前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球は、前記正常酸素環境において6日間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項19】
前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球は、前記正常酸素環境において9日間培養される、請求項1に記載の使用。
【請求項20】
前記抗CD3抗体および前記抗CD28抗体が、ビーズに結合されている、請求項1に記載の使用。
【請求項21】
多発性骨髄腫を有する被験体を処置するための治療用活性化骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物の調製における骨髄浸潤リンパ球の使用であって、前記組成物が、
(a)1%~2%の酸素の低酸素環境において、多発性骨髄腫を有する前記被験体から得られたMILを含む骨髄試料を抗CD3/抗CD28ビーズと共に2~5日間培養して、低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球を産生するステップ;および、
(b)21%の酸素の正常酸素環境において、IL-2の存在下で、前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球を2~12日間培養して、前記治療用活性化骨髄浸潤リンパ球を産生するステップ
を含む方法において調製される、使用。
【請求項22】
前記骨髄は、前記低酸素環境において、3日間培養される、請求項2に記載の使用。
【請求項23】
前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球は、前記正常酸素環境において6日間培養される、請求項2に記載の使用。
【請求項24】
前記低酸素条件で活性化された骨髄浸潤リンパ球は、前記正常酸素環境において9日間培養される、請求項2に記載の使用。
【請求項25】
被験体のがんを処置するための組成物の調製における骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)の使用であって、前記組成物が、
1%の酸素から7%の酸素を含む環境において前記MILをインキュベートし、それにより活性化MILを生じさせるステップ
を含む方法において調製される、使用。
【請求項26】
前記方法は、1%の酸素から%の酸素を含む環境においてMILをインキュベートするステップを含む、請求項2に記載の使用。
【請求項27】
前記MILは少なくとも24時間インキュベートされる、請求項2または請求項2のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記MILは1日間から20日間インキュベートされる、請求項2に記載の使用。
【請求項29】
前記MILは3日間から14日間インキュベートされる、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記方法は、前記MILを、21%の酸素を含む環境においてインキュベートするステップをさらに含む、請求項229のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記MILは、21%の酸素を含む環境において4日間インキュベートされる、請求項3に記載の使用。
【請求項32】
患者のがんを処置するための医薬の製造における骨髄浸潤リンパ球(MIL)の使用であって、前記医薬における前記MILは、
前記MILを1%~7%の酸素の低酸素条件下において増殖させるステップ、および
前記MILを正常酸素条件下において増殖させるステップ
を含む方法において調製される、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2014年9月4日に出願された米国仮特許出願第62/045,782
号および2015年6月29日に出願された米国仮特許出願第62/186,040号(
これらの各々は、それらの全体が参考として本明細書に援用される)に対する優先権を主
張する。
【背景技術】
【0002】
骨髄破壊的化学療法は、長期治癒のエビデンスは極めて少ないにもかかわらず多発性骨
髄腫を含む多くの血液悪性疾患に対して受け入れられている療法である。しかしながら、
骨髄破壊的療法はまた、免疫ベースの療法を追加するための理想的な基盤をもたらす。特
に、高用量化学療法の結果として生じるリンパ球減少は、恒常的リンパ球増加を促進し、
免疫寛容を生じる抗原提示細胞(APC)を排除し、養子T細胞療法に対しより好適な環
境をもたらすサイトカイン放出を誘発する。免疫系が高用量化学療法の臨床的な利益に寄
与する可能性があるという間接的なエビデンスは、結果として自家幹細胞移植を受けてい
る骨髄腫、リンパ腫および急性骨髄性白血病の患者の臨床転帰が改善される早期のリンパ
系回復により示された。さらに、骨髄腫の転帰のこうした改善は、アフェレーシス産物か
ら注入された自家リンパ球の用量と直接相関した。まとめると、これらのデータは、抗腫
瘍免疫が測定可能な臨床的利益を有する可能性があるという仮説を裏付け、現在利用可能
な療法の効果を増すためにそのような免疫をどのように利用するかという問題を提起した
【0003】
養子T細胞療法(ACT)により測定可能な疾患を根絶する能力には、T細胞が、適切
に活性化され、十分な数で存在し、相当な抗腫瘍活性を有し、腫瘍部位に向かい、遭遇時
に腫瘍を有効に死滅させ、長い期間持続することが必要とされる。抗CD3およびCD2
8が結合した常磁性ビーズを含む任意の技術によるT細胞の刺激は、アネルギー(寛容)
状態を有効に反転し、活性化T細胞をもたらし、その数を著しく増幅することができる。
ビーズに結合した抗CD3およびCD28は直接的で確固としたin vitroにおけ
るT細胞の増幅をもたらすが、このアプローチの主な制約は、腫瘍特異的T細胞を濃縮す
ることなく全T細胞レパートリーを非特異的に刺激することである。ACTの腫瘍特異性
を増加させるための方策の1つは、より大きな内因性の腫瘍特異性を有するT細胞集団を
使用することである。そのように濃縮することが転移性黒色腫由来の腫瘍浸潤リンパ球(
TIL)を使用したACTのかなりの抗腫瘍活性の理由である。しかしながら、TILは
転移性黒色腫の患者の一部にしか存在せず、そのうち、採取可能な腫瘍を有する患者の6
0~70%でしかTILの調製がうまくできず、このことがそのようなアプローチの一般
的適用性を制限する。骨髄は多発性骨髄腫などの多くの血液悪性疾患の腫瘍微小環境であ
るため、骨髄浸潤リンパ球(MIL)を、こうした特定のがんに対する腫瘍特異的T細胞
療法をもたらすために利用することができよう。TILとは対照的に、MILはすべての
患者にあり、単純なベッドサイド手技により得られ、すべての患者において速やかに増幅
させることができる。
【0004】
血液悪性疾患では、骨髄は、疾患の部位であるだけでなく、固有の微小環境でもある。
固形腫瘍でも、MIL中でメモリー細胞またはエフェクター-メモリーT細胞が濃縮され
得るというエビデンスがある。骨髄内の免疫成分は、初期の乳癌のホストの腫瘍特異的T
細胞ならびにワクチン刺激T細胞の両方に関する抗原経験T細胞の貯蔵部である。骨髄で
は、メモリーCD4細胞はIL-7発現間質細胞との相互作用により維持され、CD8細
胞は抗原発現の持続性および有効な抗原提示により維持される。したがって、この状況に
おいて増加したMILの腫瘍特異性は、抗原の源としての腫瘍の存在による可能性が高く
、それらの持続性は間質要素、サイトカインならびにこの環境において有効な抗原提示が
可能な抗原提示細胞との特有の免疫相互作用により維持される。
【0005】
ex-vivoで活性化されたMILは、養子T細胞療法に必須のいくつかの特性を有
する。活性化時に、これらは、末梢血リンパ球の対応するものと比較して顕著な腫瘍特異
性を示し、成熟した多発性骨髄腫プラズマ細胞ならびにそれらのクローン原性前駆細胞の
両方に存在する広い範囲の抗原を標的とし、多発性骨髄腫プラズマ細胞を有効に死滅させ
る。TILと同様に、MILは末梢リンパ球よりも高い内因性のポリクローナル抗原特異
性を有する。TILとは対照的に、MILはすべての患者にあり、より多くの免疫応答微
小環境から得られる。したがって、MILは、骨髄が関わる血液悪性疾患のためのACT
に対する新規で有望な腫瘍特異的アプローチとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の態様では、本発明は、骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物に関する。
組成物は、CD3を発現するMILの集団を含んでもよい。例えば、組成物中の細胞の少
なくとも約40%は、CD3を発現するMILの集団由来のMILであってもよい。例え
ば、組成物は、MILを含んでもよく、フローサイトメトリーゲートによって決定される
場合に細胞の40%がCD3を発現してもよい。よって、組成物中の細胞の少なくとも約
40%は、CD3を発現するMILの集団由来であろう。組成物は、インターフェロンガ
ンマ(「IFNγ」)を発現するMILの集団を含んでもよい。例えば、組成物中の細胞
の少なくとも約2%は、IFNγを発現するMILの集団由来のMILであってもよい。
組成物は、CXCR4を発現するMILの集団を含んでもよい。例えば、組成物中の細胞
の少なくとも約98%は、CXCR4を発現するMILの集団由来のMILであってもよ
い。組成物は、CD4を発現するMILの集団を含んでもよい。組成物は、CD8を発現
するMILの集団を含んでもよい。組成物は、4-1BBを発現するMILの集団を含ん
でもよい。例えば、組成物中の細胞の少なくとも約21%は、4-1BBを発現するMI
Lの集団由来のMILであってもよい。
【0007】
一部の態様では、本発明は、骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を活性化するための方法
であって、21%未満の酸素を含む環境においてMILをインキュベートするステップを
含む方法に関する。
【0008】
一部の態様では、本発明は、被験体のがんを処置するための方法に関する。本方法は、
被験体にMILを含む組成物を投与するステップを含んでもよい。一部の実施形態では、
本方法は、被験体から骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を取り出すステップおよび21%
未満の酸素を含む環境においてMILをインキュベートし、それにより活性化MILを生
じさせるステップを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物であって、
前記組成物は、CD3を発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約40%は、CD3を発現するMILの前記集団由来
のMILである、組成物。
(項目2)
前記組成物は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)を発現するMILの集団を含
み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約2%は、IFNγを発現するMILの前記集団由来
のMILである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
CD3を発現するMILの前記集団は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)を発
現する複数のMILを含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約2%は、IFNγを発現する前記複数のMIL由来
のMILである、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記組成物は、CXCR4を発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約98%は、CXCR4を発現するMILの前記集団
由来のMILである、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
CD4を発現するMILの集団を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
CD4を発現するMILの前記集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約98%は、CXCR4を発現する前記複数のMIL
由来のMILである、項目5に記載の組成物。
(項目7)
CD4を発現するMILの前記集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約21%は、4-1BBを発現する前記複数のMIL
由来のMILである、項目5または6に記載の組成物。
(項目8)
CD8を発現するMILの集団を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
CD8を発現するMILの前記集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約98%は、CXCR4を発現する前記複数のMIL
由来のMILである、項目8に記載の組成物。
(項目10)
CD8を発現するMILの前記集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約21%は、4-1BBを発現する前記複数のMIL
由来のMILである、項目8または9に記載の組成物。
(項目11)
前記組成物は、4-1BBを発現するMILの集団を含み、
前記組成物中の細胞の少なくとも約21%は、4-1BBを発現するMILの前記集団
由来のMILである、項目1~6、8および9のいずれか一項に記載の組成物。
(項目12)
先行する項目のいずれか一項に記載の組成物を生成するための方法であって、21%未
満の酸素を含む環境においてMILをインキュベートするステップを含む、方法。
(項目13)
骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を活性化するための方法であって、21%未満の酸素
を含む環境においてMILをインキュベートするステップを含む、方法。
(項目14)
被験体のがんを処置するための方法であって、
前記被験体から骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を取り出すステップ、
21%未満の酸素を含む環境において前記MILをインキュベートし、それにより活性
化MILを生じさせるステップ、および
前記活性化MILを前記被験体に投与するステップ
を含む、方法。
(項目15)
約1%の酸素から約7%の酸素を含む環境においてMILをインキュベートするステッ
プを含む、項目12から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記MILは、21%未満の酸素を含む環境において少なくとも約24時間インキュベ
ートされる、項目12から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記MILは、21%未満の酸素を含む環境において約1日間から約20日間インキュ
ベートされる、項目16に記載の方法。
(項目18)
前記MILは、21%未満の酸素を含む環境において約3日間から約14日間インキュ
ベートされる、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記MILを、約21%の酸素を含む環境においてインキュベートするステップをさら
に含む、項目12から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記MILは、約21%の酸素を含む環境において約4日間インキュベートされる、項
目19に記載の方法。
(項目21)
被験体のがんを処置するための方法であって、前記被験体に項目1から11のいずれか
一項に記載の組成物を投与するステップを含む、方法。
(項目22)
骨髄浸潤リンパ球(MIL)を調製するための方法であって、
MILをin vitroで低酸素条件下において第1の期間にわたり増殖させるステ
ップ、および
低酸素増殖に続いて前記MILを正常酸素条件下において第2の期間にわたり増殖させ
るステップを含む、方法。
(項目23)
前記低酸素条件は、21%未満の酸素である、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記低酸素条件は、約1%の酸素から約7%の酸素である、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記低酸素条件は、約1%から約3%の酸素である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記低酸素条件は、約2%の酸素である、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記第1の期間は、約1日間から約20日間である、項目22から26のいずれか一項
に記載の方法。
(項目28)
前記第1の期間は、約3日間から約14日間である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記第1の期間は、約3日間である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記正常酸素条件は、約21%の酸素である、項目22から29のいずれか一項に記載
の方法。
(項目31)
前記第2の期間は、約3から約7日間である、項目22から30のいずれか一項に記載
の方法。
(項目32)
前記第2の期間は、約4日間である、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記第1の期間および前記第2の期間は、約3日間から約24日間である、項目22か
ら32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記第1の期間および前記第2の期間は、約3から約10日間である、項目33に記載
の方法。
(項目35)
骨髄浸潤リンパ球(MIL)製剤であって、項目22から34のいずれか一項に記載の
方法によって調製されるMILを含む、製剤。
(項目36)
低酸素条件下、in vitroにおいて増殖させた治療上有効な骨髄浸潤リンパ球(
MIL)製剤。
(項目37)
患者のがんを処置する方法であって、前記患者に項目35または36に記載の製剤を投
与するステップを含む、方法。
(項目38)
患者のがんを処置する方法であって、
骨髄浸潤リンパ球(MIL)を前記患者から取り出すステップ、
前記MILを低酸素条件下において増殖させるステップ、
前記MILを正常酸素条件下において増殖させるステップ、および
前記MILを前記患者に投与するステップ
を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、インターロイキン2を含む培地(+IL2)またはインターロイキン2を含まない培地(IL2なし)中、正常酸素条件下または低酸素条件下のいずれかにおいて増幅させたMILに関するフローサイトメトリーの結果を示す。インターロイキン2を含む培地中、正常酸素条件下において増殖させたゲーティングされた細胞の35.09%はCD3に関して陽性であった。インターロイキン2のない培地中、正常酸素条件下において増殖させたゲーティングされた細胞の30.98%はCD3に関して陽性であった。インターロイキン2を含む培地中、低酸素条件下において増殖させたゲーティングされた細胞の89.01%はCD3に関して陽性であった。インターロイキン2のない培地中、低酸素条件下において増殖させたゲーティングされた細胞の89.96%はCD3に関して陽性であった。
【0010】
図2図2は、正常酸素条件下または低酸素条件下において増殖させた末梢血リンパ球(PBL)およびMILのCD3細胞の増幅を示すチャートである。低酸素条件は、CD3PBLの増幅を低下させたが、CD3MILの増幅を増加させた。
【0011】
図3図3は、正常酸素環境または低酸素環境のいずれかにおけるインキュベーションのさまざまな期間の後のCD3MILの増幅を比較するグラフである。低酸素環境におけるインキュベーションの7日後に正常酸素と比較して大幅な増幅が観察され、インキュベーションの11日目にCD3増幅はピークに達した。
【0012】
図4図4は、10日間(D10)または12日間(D12)のいずれかで増幅させた細胞について、骨髄腫細胞株(U266/H929)または対照細胞株(SW780)のいずれかに関する低酸素条件下または正常酸素条件下において増幅したMILの腫瘍特異性を示すグラフである。低酸素細胞は、2%の酸素を含む環境において3日間、増殖させ、続いて正常酸素環境(21%の酸素)において増幅させた。10日目に、低CFSEであり、腫瘍抗原に反応してインターフェロンガンマ(IFNγ)を産生していた総T細胞のパーセントによって求める場合、低酸素条件下において増幅させたMILの25.1%と比較すると、正常酸素条件下において増幅させた細胞の4%が腫瘍特異的であった。
【0013】
図5図5は、さまざまな条件下において増幅させたMILの腫瘍特異性に関する、CD3およびINFγに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。増幅の7日後、低酸素条件下において増殖させたMILの18.26%がCD3およびインターフェロンガンマともに陽性であった。対照的に、正常酸素条件下において増殖させたMILの1.72%のみがCD3およびインターフェロンガンマともに陽性であった。
【0014】
図6図6は、さまざまな条件下において増殖させたMILを与えられた被験体におけるものを含む、自家移植後のリンパ球のin vivoにおける増幅を示すグラフである。x軸は移植後の日数に対応し、y軸は被験体の1マイクロリットル当たりの平均リンパ球絶対数に対応する。グラフは、低酸素条件下において増殖させたMILがヒト被験体中で、正常酸素条件下においてのみ増殖させたMILよりも増幅し続けることを示唆している。
【0015】
図7図7は、さまざまな酸素条件下において増幅させたMILに関する、CXCR4およびCD4またはCD8のいずれかに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。正常酸素条件下において増幅させた全MIL集団の28.38%がCXCR4陽性およびCD4陽性の両方であり、平均蛍光強度が3.9であった。低酸素条件下において増幅させたMILの68.91%がCXCR4陽性およびCD4陽性の両方であり、平均蛍光強度が5.4であった。正常酸素条件下において増幅させたMILの8.02%がCXCR4陽性およびCD8陽性の両方であり、平均蛍光強度が4.6であった。低酸素条件下において増幅させたMILの11.08%がCXCR4陽性およびCD8陽性の両方であった。これらの結果は、低酸素がCXCR4を発現する細胞の数ならびに細胞当たりの発現の程度(MFI)をともに増加させ、このことがこれらの細胞が注入時に骨髄に移動する可能性を増加させることを示唆している。
【0016】
図8A図8は、パネル(A)、(B)および(C)とラベルした3つのパネルからなる。パネルAは、細胞増幅前の末梢血リンパ球(PBL)およびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。パネルBは、正常酸素条件下における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。示されるとおり、PBLにおける4-1BB発現は、CD8 PBLが11.34%から0.34%に低下し、MIL CD8が15.1%から7.54%の低下を示した。パネルCは、低酸素条件における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。低酸素条件における増幅後にPBLは4-1BBをダウンレギュレートした(CD8 PBL:ベースラインの11.34%から0%へ)一方で、低酸素条件における増幅後にMILは4-1BBをアップレギュレートした(CD8 MIL:ベースラインの15.1%から21.79%へ)。
図8B図8は、パネル(A)、(B)および(C)とラベルした3つのパネルからなる。パネルAは、細胞増幅前の末梢血リンパ球(PBL)およびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。パネルBは、正常酸素条件下における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。示されるとおり、PBLにおける4-1BB発現は、CD8 PBLが11.34%から0.34%に低下し、MIL CD8が15.1%から7.54%の低下を示した。パネルCは、低酸素条件における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。低酸素条件における増幅後にPBLは4-1BBをダウンレギュレートした(CD8 PBL:ベースラインの11.34%から0%へ)一方で、低酸素条件における増幅後にMILは4-1BBをアップレギュレートした(CD8 MIL:ベースラインの15.1%から21.79%へ)。
図8C図8は、パネル(A)、(B)および(C)とラベルした3つのパネルからなる。パネルAは、細胞増幅前の末梢血リンパ球(PBL)およびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。パネルBは、正常酸素条件下における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。示されるとおり、PBLにおける4-1BB発現は、CD8 PBLが11.34%から0.34%に低下し、MIL CD8が15.1%から7.54%の低下を示した。パネルCは、低酸素条件における増幅後のPBLおよびMILに関する、CD4、CD8および4-1BBに対するゲートを利用したフローサイトメトリーの結果を示す。低酸素条件における増幅後にPBLは4-1BBをダウンレギュレートした(CD8 PBL:ベースラインの11.34%から0%へ)一方で、低酸素条件における増幅後にMILは4-1BBをアップレギュレートした(CD8 MIL:ベースラインの15.1%から21.79%へ)。
【0017】
図9図9は、低酸素条件下におけるMILの増殖が、正常酸素条件下のみにおける増殖と比較してCD3細胞の数を増加させることを示すグラフである。
【0018】
図10図10は、低酸素条件下におけるMILの増幅が、低酸素条件下におけるPBLの増幅または正常酸素条件下におけるMILの増幅のいずれかよりもCD4/4-1BB細胞のパーセンテージが高くなることを示すフローサイトメトリーの結果を示す。
【0019】
図11図11は、ex vivoにおけるMILの増幅を示すグラフである。低酸素条件下において増幅させたMILは、正常酸素条件下においてのみ増幅させたMILと比較してより量が多くなった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
養子T細胞療法を用いて達成する主な目標は、最も多くの腫瘍特異的T細胞を増殖させ
る能力であり、それらの細胞はその後再注入されるとまたin vivoにおいて増幅し
、長い期間持続することになる。一部の態様では、本発明は、骨髄浸潤リンパ球(「MI
L」)の固有の特性を活用するT細胞増幅に対する新規のアプローチに関する。特に、M
ILは、末梢リンパ球(PBL)とは著しく異なる。例えば、MILは、より容易に増幅
され、PBLよりも大きな程度に活性化マーカーをアップレギュレートし、より偏ったV
βレパートリーを維持し、骨髄へ移動し、最も重要なことに、著しく高い腫瘍特異性を有
する。MIL抗骨髄腫免疫は、臨床反応と直接相関するが、in vivoにおけるT細
胞増幅または持続的な臨床反応は、これまで注入後には観察されなかった。
【0021】
約1%の酸素から約7%の酸素または約1%の酸素から約3%の酸素、例えば、2%の
酸素(低酸素条件)など21%未満の酸素のOレベルにおいてMILを培養することに
より、正常酸素条件においてのみ培養する場合と比較して全般的な細胞の増幅ならびに腫
瘍細胞を認識するその能力の両方が増す。このように、一部の実施形態では、本発明は、
以下の1つまたは複数を含む治療的使用のためのMILの調製のための方法に関する。患
者から骨髄が採取されてもよい。採取された骨髄は、例えば、腫瘍特異的なMILを作り
出すために凍結されてもよく、またはすぐに使用されてもよい。骨髄が凍結される場合、
それは好ましくはインキュベーションの前に解凍される。骨髄は、MILを精製するため
に当業者に公知の方法により処理されてもよい。MILは例えば、抗CD3/CD28ビ
ーズなどのビーズを用いて活性化することができる。溶液中のビーズ対細胞の比は変化し
てもよく、一部の好適な実施形態では、比は3対1である。同様に、MILは、例えば、
抗CD3/CD28ビーズの非存在下、1つまたは複数の抗体、抗原および/またはサイ
トカインの存在下において増幅させてもよい。例えば、MILに添加されるビーズ、抗体
、抗原および/またはサイトカインの量を調整するために、採取された骨髄の細胞数が決
定されてもよい。一部の実施形態では、MILは、特に、細胞を回収するよう設計された
ビーズを使用して捕捉される。
【0022】
採取されたMILは、優先的には低酸素環境において、例えば、第1の期間、増殖させ
る。一部の実施形態では、MILは組織培養バッグ中、2%のAB血清および200Uの
IL2を補充したX-VIVO(商標)15培地に入れられてもよい。他の培養条件およ
び要素は、当業者によって認識されるとおりに使用することができることが予想される。
MILは、約1%から約7%の酸素(低酸素、低酸素条件)、好ましくは、約2%の酸素
などの約1%から約3%の酸素の環境において約3から約10日間、例えば、4日間など
の約3から約20日間(すなわち、第1の期間)増殖させてもよい。低酸素環境は、例え
ば、細胞が増殖させる容器に亜酸化窒素を加えることによって作り出すことができる。一
部の実施形態では、低酸素環境は、低圧チャンバーを利用することによって作り出しても
よい。低酸素増殖後に、MILは、正常酸素環境、例えば、21%の酸素において増殖さ
せてもよい。一部の好適な実施形態では、MILは、正常酸素条件においてさらに約3か
ら約7日間(すなわち、第2の期間)増殖させる(例えば、約3から約10日間の増殖な
どの合計約3から約27日間の増殖)。増殖させた細胞は、その後、患者(例えば、患者
もしくは同種異系のレシピエントのいずれか)に投与されてもよく、または将来的な使用
のために保存されてもよい。
【0023】
患者の骨髄から採取され、本明細書に記載の方法に従って、すなわち、低酸素条件下に
おいて第1の期間、続いて正常酸素条件下において第2の期間、処理されたMILは、予
想外にも同じ手順に供された末梢血リンパ球(PBL)よりも良好に働く。下に示すとお
りMILの増強された能力としては、in vitroおよびin vivoの両方にお
ける著しい増幅、4-1BBなどの生物学的マーカーの発現の向上および腫瘍特異性の増
加が挙げられる。
【0024】
当業者は、本発明の手順が、骨髄腫、肺癌および乳癌を含む多くの異なる種類のがんを
処置するために利用することができることを認識するであろう。骨髄はセントラルメモリ
ー細胞の貯蔵部であるため、あらゆる種類のがんからの腫瘍特異的T細胞が患者の骨髄で
見つかった。本明細書中で開示されるとおり、低酸素培養条件は、増幅ならびに腫瘍特異
性の両方を増加させるため、このアプローチは、広い範囲のがん患者からのMILを増殖
させるために使用することができる。一部の好適な実施形態では、患者のMILが、採取
され、低酸素条件において第1の期間、例えば、約1日間から約20日間増幅させた後、
正常酸素条件において第2の期間、例えば、約3日から約7日間増幅させる。細胞は、そ
の後、処置のために患者に提供されてもよく、または将来的な使用のために保存されても
よい。
【0025】
一部の態様では、本発明は、低酸素環境におけるMILの増幅が、注入後にin vi
voにおけるT細胞増幅を可能にするという発見に関する。特に、MILを2%O(低
酸素)において3日間、続いて21%O(正常酸素)に切り替えて増殖させた結果、腫
瘍特異性がほぼ10倍高くなった(図4)。まとめると、これらのデータは、そのような
増殖条件が、同じ供給源から得た腫瘍特異的MILの絶対数を、正常酸素条件下において
のみ増殖させたMILと比較して増加させることができることを示唆している。
【0026】
すべての実験は、患者のサンプルからのMIL産物を使用して実施した。図3に示され
るとおり、低酸素条件における完全な規模の臨床的MIL産物の増幅は、劇的にT細胞数
を増加させた。正常酸素条件を用いた場合、7日を過ぎてMILを増幅させるのが困難で
あったことに留意すべきである。この実験では、7日目の増幅は、低酸素での119倍に
対して正常酸素では36.3倍であった。さらに、低酸素条件下において増殖させた細胞
は、12日目まで増幅し続け、11日目に総計220倍の増幅に達した。
【0027】
さらに良好な増幅およびさらに高い腫瘍特異性を得ることに加えて、T細胞の生存を最
大にするために増殖条件を最適化した。4-1BBの発現が、多くのこれらの特性の重要
なレギュレーターであることが示された。これは、T細胞増幅を制御し、アポトーシスを
低減し、CD8細胞の細胞傷害活性を増大し、生存を向上させることができる。まとめる
と、活性化MIL上の4-1BB発現は、生存および腫瘍特異性を高める重要なレギュレ
ーターである可能性がある。したがって、MIL上の4-1BB発現を調べ、さまざまな
条件において増殖させたPBLのものと比較した。図8に示したとおり、ベースラインの
4-1BBの発現は、MILでPBLでよりも高かった(18.2%対8.1%)。興味
深いことに、正常酸素におけるT細胞増幅は、両集団でその発現を低下させた(MIL
10.7%、PBL 2.8%)一方、低酸素における増幅は、4-1BB発現をMIL
で著しく増加させ(43.4%)、PBLでその発現を完全に阻害した(0%)。これら
のデータは、PBLとMILの間の顕著な差をさらにまた強調し、4-1BBのアップレ
ギュレーションが、単に低酸素増殖条件だけでなくさらなる要因に依存することをさらに
示す。
【0028】
これらの培養条件は臨床試験に採用され、低酸素増殖条件は、全体のT細胞増幅を平均
7.9E9から1.8E10に増加させた。さらに、低酸素増殖条件はまた、in vi
voにおけるT細胞増幅も観察することができた(図6は、すべての患者に関する60日
目までの総リンパ球数を示す)。
【0029】
一部の態様では、本発明は、骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を含む組成物に関する。
MILは、活性化MILであってもよい。
【0030】
好適な実施形態では、組成物は、CD3を発現するMILの集団を含み、すなわち、C
D3を発現するMILの集団の各細胞が、例えば、フローサイトメトリーによって検出さ
れる場合に、CD3を発現する骨髄浸潤リンパ球である。例えば、組成物中の細胞の少な
くとも約40%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも約45%、50%、55%、60
%、65%、70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%またはさらに少
なくとも約89%は、CD3を発現するMILの集団由来のMILであってもよい。好適
な一実施形態では、組成物中の細胞の少なくとも約80%は、CD3を発現するMILの
集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細胞の約40%から
約100%、例えば、組成物中の細胞の約45%から約100%、約50%から約100
%、約55%から約100%、約60%から約100%、約65%から約100%、約7
0%から約100%、約75%から約100%、約80%から約100%、約85%から
約100%、約86%から約100%、約87%から約100%、約88%から約100
%またはさらに約89%から約100%は、CD3を発現するMILの集団由来のMIL
であってもよい。一部の実施形態では、組成物は、例えば、フローサイトメトリーによっ
て検出される場合に、CD3を発現しないMILの集団または低レベル、すなわち、CD
3を発現するMILの集団由来のMILの発現レベルと比較して低レベルのCD3を発現
するMILの集団のいずれかを含む。
【0031】
一部の実施形態では、組成物は、インターフェロンガンマ(「IFNγ」)を発現する
MILの集団を含み、すなわち、IFNγを発現するMILの集団の各細胞が、例えば、
フローサイトメトリーによって検出される場合に、IFNγを発現する骨髄浸潤リンパ球
である。例えば、組成物中の細胞の少なくとも約2%、例えば、組成物中の細胞の少なく
とも約2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、1
3%、14%、15%、16%、17%またはさらに少なくとも約18%は、IFNγを
発現するMILの集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細
胞の約2%から約100%、例えば、組成物中の細胞の約2%から約100%、約3%か
ら約100%、約4%から約100%、約5%から約100%、約6%から約100%、
約7%から約100%、約8%から約100%、約9%から約100%、約10%から約
100%、約11%から約100%、約12%から約100%、約13%から約100%
、約14%から約100%、約15%から約100%、約16%から約100%、約17
%から約100%またはさらに約18%から約100%は、IFNγを発現するMILの
集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物は、例えば、フローサイ
トメトリーによって検出される場合に、IFNγを発現しないMILの集団または低レベ
ル、すなわち、IFNγを発現するMILの集団由来のMILの発現レベルと比較して低
レベルのIFNγを発現するMILの集団のいずれかを含む。
【0032】
一部の実施形態では、組成物は、CXCR4を発現するMILの集団を含み、すなわち
、CXCR4を発現するMILの集団の各細胞が、例えば、フローサイトメトリーによっ
て検出される場合に、CXCR4を発現する骨髄浸潤リンパ球である。例えば、組成物中
の細胞の少なくとも約98%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも約98.1%、98
.2%、98.3%、98.4%、98.5%、98.6%、98.7%、98.8%、
98.9%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5
%、99.6%またはさらに少なくとも約99.7%は、CXCR4を発現するMILの
集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細胞の約98%から
約100%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも約98.1%から約100%、約98
.2%から約100%、約98.3%から約100%、約98.4%から約100%、約
98.5%から約100%、約98.6%から約100%、約98.7%から約100%
、約98.8%から約100%、約98.9%から約100%、約99.0%から約10
0%、約99.1%から約100%、約99.2%から約100%、約99.3%から約
100%、約99.4%から約100%、約99.5%から約100%、約99.6%か
ら約100%またはさらに約99.7%から約100%は、CXCR4を発現するMIL
の集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物は、例えば、フローサ
イトメトリーによって検出される場合に、CXCR4を発現しないMILの集団または低
レベル、すなわち、CXCR4を発現するMILの集団由来のMILの発現レベルと比較
して低レベルのCXCR4を発現するMILの集団のいずれかを含む。
【0033】
一部の実施形態では、組成物は、CD4を発現するMILの集団を含む。CD4を発現
するMILの集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含んでもよい。
【0034】
CD4を発現するMILの集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含んでもよい
。例えば、組成物中の細胞の少なくとも約21%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも
約22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%
、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%
、42%またはさらに少なくとも約43%は、4-1BBを発現する複数のMIL由来の
MILであってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細胞の約21%から約100%
、例えば、組成物中の細胞の約22%から約100%、約23%から約100%、約24
%から約100%、約25%から約100%、約26%から約100%、約27%から約
100%、約28%から約100%、約29%から約100%、約30%から約100%
、約31%から約100%、約32%から約100%、約33%から約100%、約34
%から約100%、約35%から約100%、約36%から約100%、約37%から約
100%、約38%から約100%、約39%から約100%、約40%から約100%
、約41%から約100%、約42%から約100%またはさらに約43%から約100
%は、4-1BBを発現する複数のMIL由来のMILであってもよい。
【0035】
組成物は、CD8を発現するMILの集団を含んでもよい。CD8を発現するMILの
集団は、CXCR4を発現する複数のMILを含んでもよい。
【0036】
CD8を発現するMILの集団は、4-1BBを発現する複数のMILを含んでもよい
。例えば、組成物中の細胞の少なくとも約21%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも
約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、1
8%、19%、20%またはさらに少なくとも約21%は、4-1BBを発現する複数の
MIL由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細胞の約2%から
約100%、例えば、組成物中の細胞の約8%から約100%、約9%から約100%、
約10%から約100%、約11%から約100%、約12%から約100%、約13%
から約100%、約14%から約100%、約15%から約100%、約16%から約1
00%、約17%から約100%、約18%から約100%、約19%から約100%、
約20%から約100%またはさらに約21%から約100%は、4-1BBを発現する
複数のMIL由来のMILであってもよい。
【0037】
一部の実施形態では、組成物は、4-1BBを発現するMILの集団を含む。例えば、
組成物中の細胞の少なくとも約21%、例えば、組成物中の細胞の少なくとも約22%、
23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、
33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%ま
たはさらに少なくとも約43%は、4-1BBを発現するMILの集団由来のMILであ
ってもよい。一部の実施形態では、組成物中の細胞の約21%から100%、例えば、組
成物中の細胞の約22%から約100%、約23%から約100%、約24%から約10
0%、約25%から約100%、約26%から約100%、約27%から約100%、約
28%から約100%、約29%から約100%、約30%から約100%、約31%か
ら約100%、約32%から約100%、約33%から約100%、約34%から約10
0%、約35%から約100%、約36%から約100%、約37%から約100%、約
38%から約100%、約39%から約100%、約40%から約100%、約41%か
ら約100%、約42%から約100%またはさらに約43%から約100%は、4-1
BBを発現するMILの集団由来のMILであってもよい。一部の実施形態では、組成物
は、例えば、フローサイトメトリーによって検出される場合に、4-1BBを発現しない
MILの集団または低レベル、すなわち、4-1BBを発現するMILの集団由来のMI
Lの発現レベルと比較して低レベルの4-1BBを発現するMILの集団のいずれかを含
む。
【0038】
一部の態様では、本発明は、被験体のがんを予防または処置するための方法であって、
被験体に本明細書に記載される組成物のいずれか1つを投与することを含む方法に関する
。好適な実施形態では、本方法は、被験体に治療有効量の本明細書に記載される組成物の
いずれか1つを投与することを含む。好適な実施形態では、本方法は、被験体に治療有効
量のMIL、例えば、本明細書に記載される活性化MILを投与することを含む。被験体
は、新生物、例えば、がんを有し得る。例えば、被験体は、多発性骨髄腫を有し得る。被
験体は、ヒト被験体であってもよい。
【0039】
一部の態様では、本発明は、本明細書に記載される組成物を生成するための方法であっ
て、低酸素環境においてMILをインキュベートすることを含む方法に関する。一部の態
様では、本発明は、骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を活性化するための方法であって、
低酸素環境においてMILをインキュベートすることを含む方法に関する。
【0040】
一部の態様では、本発明は、被験体のがんを処置するための方法に関する。本方法は、
被験体から骨髄浸潤リンパ球(「MIL」)を取り出すこと、低酸素環境においてMIL
をインキュベートすることにより、活性化MILを生じさせることおよび活性化MILを
被験体に投与することを含んでもよい。
【0041】
低酸素環境は、約21%未満の酸素、例えば、約20%、19%、18%、17%、1
6%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5
%、4%未満または約3%未満の酸素を含んでもよい。例えば、低酸素環境は、約0%の
酸素から約20%の酸素、例えば、約0%の酸素から約19%の酸素、約0%の酸素から
約18%の酸素、約0%の酸素から約17%の酸素、約0%の酸素から約16%の酸素、
約0%の酸素から約15%の酸素、約0%の酸素から約14%の酸素、約0%の酸素から
約13%の酸素、約0%の酸素から約12%の酸素、約0%の酸素から約11%の酸素、
約0%の酸素から約10%の酸素、約0%の酸素から約9%の酸素、約0%の酸素から約
8%の酸素、約0%の酸素から約7%の酸素、約0%の酸素から約6%の酸素、約0%の
酸素から約5%の酸素、約0%の酸素から約4%の酸素または約0%の酸素から約3%の
酸素を含んでもよい。好適な実施形態では、低酸素環境は、約1%から約7%の酸素を含
む。低酸素環境は、約20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13
%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%
または約0%の酸素を含んでもよい。好適な実施形態では、低酸素環境は、約7%、6%
、5%、4%、3%、2%または1%の酸素を含む。
【0042】
低酸素環境においてMILをインキュベートすることは、例えば、組織培養培地におい
て少なくとも約1時間、例えば、少なくとも約12時間、18時間、24時間、30時間
、36時間、42時間、48時間、60時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間
、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間またはさらに少なくとも約
14日間、MILをインキュベートすることを含んでもよい。インキュベートすることは
、約1時間から約30日間、例えば、約1日間から約20日間、約1日間から約14日間
または約1日間から約12日間、MILをインキュベートすることを含んでもよい。一部
の好適な実施形態では、低酸素環境においてMILをインキュベートすることは、低酸素
環境においてMILを約2日間から約5日間インキュベートすることを含む。本方法は、
低酸素環境においてMILを約1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日
間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間または14日間インキュ
ベートすることを含んでもよい。一部の好適な実施形態では、本方法は、低酸素環境にお
いてMILを約3日間インキュベートすることを含む。
【0043】
好適な実施形態では、本方法は、例えば、低酸素環境においてMILをインキュベート
した後に正常酸素環境においてMILをインキュベートすることをさらに含む。
【0044】
正常酸素環境は、少なくとも約21%の酸素を含んでもよい。正常酸素環境は、約5%
の酸素から約30%の酸素、例えば、約10%の酸素から約30%の酸素、約15%の酸
素から約25%の酸素、約18%の酸素から約24%の酸素、約19%の酸素から約23
%の酸素または約20%の酸素から約22%の酸素を含んでもよい。一部の実施形態では
、正常酸素環境は約21%の酸素を含む。
【0045】
正常酸素環境においてMILをインキュベートすることは、例えば、組織培養培地にお
いて少なくとも約1時間、例えば、少なくとも約12時間、18時間、24時間、30時
間、36時間、42時間、48時間、60時間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日
間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間またはさらに少なくとも
約14日間、MILをインキュベートすることを含んでもよい。インキュベートすること
は、約1時間から約30日間、例えば、約1日間から約20日間、約1日間から約14日
間、約1日間から約12日間または約2日間から約12日間、MILをインキュベートす
ることを含んでもよい。
【実施例
【0046】
(実施例1.低酸素環境および正常酸素環境におけるT細胞の活性化および増幅)
フローサイトメトリーを使用して骨髄(BM)T細胞数を求める。抗CD3/抗CD2
8ビーズを所定の比率(ビーズ:CD3細胞)で所定の濃度の組換え型ヒトサイトカイン
を含む培地に添加する。細胞をプレート、フラスコまたはバッグに播く。低酸素チャンバ
ーまたは細胞培養バッグのいずれかに95%窒素および5%COガス混合物を3分間フ
ラッシュすることによって低酸素条件を達成する。その後、容器をこのガス混合物で30
秒間満たす。これにより容器中が2%またはそれ未満のOガスに達する。細胞を37C
で3日間またはそれ超にわたり培養し、低酸素空気を放出し、正常酸素(21%大気酸素
)レベルに替える。
【0047】
(実施例2.細胞型の表現型決定)
所望の決定のために蛍光色素コンジュゲート抗体で細胞を染色する。蛍光色素に直接コ
ンジュゲートしたCD3、CD4、CD8、CXCR4、41BB、CD27、CD28
、CTLA-4、PD-1、CD45RO、CD62L、CD95、IFNg、IL17
、生/死色素(live/dead dye)および/または目的の他の抗体を適切なア
イソタイプ対照とともに使用する。簡単にいえば、プレートまたはチューブ中の1×10
またはそれ未満の細胞をFACSバッファー(1×HBSS/2%FBS/0.5%E
DTA/0.5%NaAzide)または類似の洗浄バッファーにより遠心分離機におい
て回転させることによって洗浄する。洗浄バッファーを除去し、抗体およびアイソタイプ
対照を所定の濃度で添加する。細胞を7~30分の間、室温または4℃で染色する。細胞
を2回洗浄バッファーで洗浄し、最小限の洗浄バッファーに再懸濁する。その後、細胞を
利用されている蛍光色素に対して適切に補償および準備されたフローサイトメーターに流
す。各サンプルに対して10,000またはそれ超の数の事象を収集する。FACS解析
ソフトウェアを利用してデータを解析する。バックグラウンド除去のために蛍光色素標識
細胞をアイソタイプ対照と比較する。データを%陽性-%バックグラウンドとしてグラフ
化する。
【0048】
(実施例3.増幅倍率(fold expansion)の決定)
増幅の開始時に骨髄細胞を数える。フローサイトメトリーを利用してCD3+細胞のパ
ーセンテージを求める。CD3+MILの総数を、細胞の総数にCD3のパーセンテージ
=培養物中のCD3+MILの総数を掛けることによって求める。培養の最終日に細胞を
回収し、計数する(手作業および自動セルカウンターの両方)。CD3+のパーセンテー
ジを求める。培養の最終日のCD3+細胞の総数を、総細胞数にCD+のパーセンテージ
=回収されたCD3+MILの総数を掛けることによって求める。総増幅倍率=培養の最
終日に回収されたCD3+MILの総数÷培養の初日のCD3+MILの総数。
【0049】
(実施例4.腫瘍特異性)
製造業者のプロトコールに従ってMILをCFSEまたは類似の細胞膜組み込み色素(
cell membrane integration dye)で標識する。培地単独
、陰性対照(関連のないタンパク質もしくはライセート)により、または目的のタンパク
質もしくはライセートにより自家BMをパルスする。その後、CFSE標識細胞をパルス
した自家BMとともに2~7日間共培養する。組織培養プレートまたはフラスコから細胞
を回収した後、細胞外をCD3によりおよび細胞内をIFNgにより染色する。CFSE
が低く(分裂した細胞)、IFNgを産生しているCD3+細胞に対するゲーティングに
よって腫瘍特異性の解析を決定する。
【0050】
(実施例5.低酸素環境および正常酸素環境におけるT細胞の活性化および増幅)
MILを2%O(低酸素)において3日間増殖させ、続いて21%O(正常酸素)
に切り替えてIL-2の存在下または非存在下においてさらに5日間、増殖させた。図9
に示されるとおり、低酸素に続いて正常酸素において増殖させると、正常酸素条件におい
てのみ増殖させたMILと比較して増幅がほぼ10倍増加した。図4に示されるとおり、
腫瘍特異性も著しく向上した。10日目に、低酸素条件において増殖させたMILの25
.1%とは対照的に正常酸素条件の低CFSE細胞の4%が腫瘍特異的であった。まとめ
ると、これらのデータは、これらの増殖条件が活性化時に腫瘍特異的なものの絶対数を増
加させることができることを示唆している。
【0051】
先行する段落の実験を小サンプルに対して行った。最初の臨床試験の患者からのMIL
産物もこの方法を使用して増幅させた。図3に示されるとおり、これらの条件におけるM
ILの増幅は、劇的にT細胞数を増加させた。正常酸素条件における増殖は、7日を超え
るとほとんどMILを増幅できなかった。この実験では、低酸素条件の119倍とは対照
的に、7日目の増幅倍率は、正常酸素条件において36.3倍であった。さらに、細胞は
、12日目まで増幅し続け、死に始める前の11日目に総計220倍の増幅に達した。
【0052】
4-1BBの発現が、多くのこれらの特性の重要なレギュレーターであることが示され
た。これは、T細胞増幅を制御し、アポトーシスを低減し、CD8細胞の細胞傷害活性を
増大し、生存を高めることができる。さらに、HIF1αは、抗原に駆動されたT細胞の
生存を制御する。4-1BBを発現するベクターを用いたキメラ抗原受容体(CAR)改
変T細胞は、in vivoにおける著しい増幅を示した。まとめると、活性化MIL上
の4-1BB発現は、生存および腫瘍特異性を増加させる重要なレギュレーターである可
能性がある。本明細書中で開示される方法の際だった利点の1つは、4-1BB発現を向
上させるためにMILを改変する必要がないことである。この利点は、MILまたはPB
Lを正常酸素条件または低酸素条件のいずれかにおいて増殖させた図10に示されている
。MILにおける4-1BBのベースライン発現を評価し、PBLと比較した。示される
とおり、4-1BB発現は、PBLよりもMILにおいて高かった(18.2%対8.1
%)。興味深いことに、正常酸素におけるT細胞増幅は、両集団ともにその発現が低下し
た(MIL 10.7%、PBL 2.8%)一方で、低酸素における増幅は、4-1B
B発現をMILで著しく増加させ(43.4%)、PBLでその発現を完全に阻害した(
0%)。これらのデータは、PBLとMILの間の顕著な差をさらにまた強調し、4-1
BBのアップレギュレーションが単に低酸素増殖条件だけでなくさらなる要因に依存する
ことをさらに示す。さらに重要なことに、4-1BBの予想外のアップレギュレーション
は、本発明の方法が、低酸素的に増殖させたMILを使用した患者の処置において顕著な
差をもたらすことを示す。同様の結果がCD8細胞によっても観察された(図8)。
【0053】
図11は、臨床処置のための投薬の結果を示す。J0770では、MILを静置培養で
正常酸素条件において増殖させた。J0997では、MILを波動(WAVE)中、正常
酸素条件において増殖させた。J1343では、MILを低酸素条件において3日間、増
殖させ、続いて正常酸素条件において増殖させた。図6では、自家幹細胞移植後の3つの
実験に関するリンパ球絶対数をグラフ化している。J1343は無作為試験であり、その
患者は移植後に注入された低酸素MILを受容したか、またはMILを注入されなかった
かのいずれかであった。
【0054】
図11に示されるとおり、本方法の増殖条件は、全体のT細胞増幅を平均7.9E9か
ら1.8E10に増加させた。さらに、これは図6に示されるとおり初めてin viv
oにおけるT細胞増幅を示し、これは患者の処置における方法の有効性に直接関係する。
グラフに第1のセットの患者に関する60日目までの総リンパ球数を示す。
【0055】
均等物
当業者は、慣用的な実験を使用するだけで、本明細書に記載される本発明の特定の実施
形態の多くの均等物を認識する、または確認することができるだろう。そのような均等物
は、添付の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11