(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】入力装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20221220BHJP
G06F 3/042 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/041 580
G06F3/042 481
(21)【出願番号】P 2021087790
(22)【出願日】2021-05-25
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩田 明久
(72)【発明者】
【氏名】原島 克己
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 孝志
【審査官】滝谷 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特許第6200553(JP,B1)
【文献】特開2011-113489(JP,A)
【文献】特表2017-502407(JP,A)
【文献】特開2022-022568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面にユーザーインターフェースを表示する表示部と、
前記表示面と離間した空中に入力操作を行うための検出エリアを生成し、前記検出エリアに進入した指示物体の位置を検出して検出信号を出力する検出部と、
前記検出エリアと前記表示面との間に気体を流入させて気流層を生成する気流層生成部と、
前記検出信号に基づいて前記指示物体による入力操作の内容を判断する制御部と、
を
有し、
前記検出部及び前記気流層生成部は、前記表示面の端縁の一辺の外側に配置される1つの筐体内に設けられ、
前記気流層生成部は、前記筐体に形成された複数の吹出口を介して前記表示面に沿った一方向に向けて前記気体を吹き出す入力装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記指示物体の二次元的な位置を検出する請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記検出部は、赤外線センサである請求項1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記検出エリア、前記気流層、及び前記表示面は、前記表示面を直視する方向において同一の領域に配置される請求項1か
ら3のいずれか1項に記載の入力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力装置に関し、非接触で入力操作を行う入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で操作者の入力操作内容を認識できる入力装置が知られている。このような入力装置は、例えば、不特定多数の人(操作者)が当該入力装置を利用する場合において、ディスプレイへの物理的な接触を伴うことなく、非接触で入力操作を行うことができるため衛生的で、感染症予防の観点から有効である。このように、非接触で入力操作を可能とする入力装置の一例として、特許文献1が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、表示機能と入力機能を合わせ持つ操作パネルを有し、前記操作パネルの入力機能は、当該操作パネル上の空間に存在する当該操作パネルに対して入力操作を行なうための物体の3次元位置情報を非接触の状態で取得し、該取得した前記物体の3次元位置情報に基づいて前記物体による入力操作内容を認識すること、を特徴とする入力装置、医療機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、例えば、非接触式センサを用いて操作者の指等の三次元情報を取得することにより、非接触で入力操作を可能とするものである。しかしながら、このような非接触で入力操作を行う技術において、操作者は、非接触式センサによる検出エリアを視認できず、物理的な接触を伴う操作感も得られない。したがって、入力操作の際に、操作者は、検出エリアを超えてディスプレイの表示面(操作パネル)に指を近付け過ぎてしまうことがある。これにより、表示面に操作者の指が接触して表示面が汚損される可能性があるという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、非接触で入力操作を行う際の操作感が得られ、指示物体の接触による汚損を回避することができる入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる入力装置は、表示面にユーザーインターフェースを表示する表示部と、表示面と離間した空中に入力操作を行うための検出エリアを生成し、検出エリアに進入した指示物体の位置を検出して検出信号を出力する検出部と、検出エリアと表示面との間に気体を流入させて気流層を生成する気流層生成部と、検出信号に基づいて指示物体による入力操作の内容を判断する制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、非接触で入力操作を行う際の操作感が得られ、指示物体の接触による汚損を回避することができる入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる入力装置がキャビネットに載設された状態を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態1にかかる入力装置がキャビネットに載設された状態を示す側面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる入力装置を説明する側面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる入力装置が備えるセンサユニットの平面図及び側面図である。
【
図7】比較例の入力装置が備えるセンサユニットの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態にかかる入力装置1について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる入力装置がキャビネットに載設された状態を示す斜視図である。
図2は、実施の形態1にかかる入力装置がキャビネットに載設された状態を示す側面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、入力装置1は、自立設置用の箱型に形成されるキャビネット40に載設されている。入力装置1は、操作者からの各種の入力操作を受け付ける装置である。入力装置1は、例えば、商品の登録と商品の精算を行うPOS(Point Of Sales)端末装置と一体に構成されたコンピュータ、又はPOS端末装置に接続されたコンピュータである。入力装置1は、本体部10と、表示部20と、センサユニット30aと、を有する。
【0013】
本体部10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される制御部、メモリ、及び通信部等を含む。制御部は、メモリに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、入力装置1の各部の機能を実現することができる。制御部は、入力装置1の動作を総括的に制御する。例えば、制御部は、検出部から取得した検出信号に応じて、操作者からの入力操作の内容を判断して入力装置1の各部を制御し、必要に応じて表示面21における表示内容を変化させる。
【0014】
メモリは、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び不揮発性メモリ等で構成される。ROMは、入力装置1が実行する各種プログラム、表示面21における操作オブジェクト等の表示位置を示したデータ等の各種データを格納している。RAMは、ROMに記憶されたプログラム実行時の一時記憶領域、又は検出部により検出した指示物体の位置情報の一時記憶領域として用いられる。通信部は、他のコンピュータとの通信網等を介した通信や、信号及びデータ等の送受信を行う。
【0015】
表示部20は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescent)ディスプレイ等の表示装置で構成され、略矩形状の表示面21を有する。表示部20は、制御部から入力されたデータに基づいて、二次元的に文字、画像、操作オブジェクト等を含むユーザーインターフェースを表示面21に表示する機能を有する。表示面21は、XY平面に平行に配置される。
【0016】
また、表示部20は、指示物体による表示面21への接触操作を検出し、当該接触操作を入力操作として受け付けるタッチパネルとして利用することもできる。タッチパネルには、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、超音波方式等の各種方式を採用することができる。
【0017】
本実施形態において、XY平面は、前方斜め上方を向いている。操作者は、通常、入力装置1の手前側に立って入力操作を行う。以下、XY平面に垂直な方向については、Z方向と定義して説明する。
【0018】
センサユニット30aは、X方向に延在する細長い多角柱状の筐体内に、検出部と気流層生成部とを有する。センサユニット30aは、表示面21の四方を囲む表示部20のフレーム22に取り付けられる。センサユニット30aが取り付けられる位置は、例えば、表示部20の前面側(Z方向の手前側)の上端部であって、X方向に延在する表示面21の上端縁の直上(Y方向の上側)であるが、取り付け位置はこれに限らない。
【0019】
センサユニット30aは、表示部20と一体に構成されてもよく、表示部20に対して着脱可能な構成であっても良い。着脱可能なセンサユニット30aである場合、既存の入力装置にセンサユニット30aを固定部材等を用いて取り付け、互いに電気的に接続する。そして、入力装置1として機能させるためのプログラムを既存の入力装置の記憶部に通信部を介してインストールすることにより、入力装置1を構成することも可能である。この場合、検出部が検出した検出信号等は、無線又は有線の通信媒体を介して通信部へ送信される。このように、既存の入力装置をタッチレス化して利用することができる。
【0020】
続いて、上記入力装置1の詳細について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、実施の形態1にかかる入力装置を説明する側面図である。
図4は、実施の形態1にかかる入力装置が備えるセンサユニットの平面図及び側面図である。
図5は、
図4に示すセンサユニットの底面図である。
【0021】
図3~
図5に示すように、センサユニット30aの検出部は、入力操作を行う指示物体の二次元的な位置を検出する非接触式センサである。検出部は、指示物体の位置を検出可能な検出エリアDを生成する。
【0022】
検出部には、例えば、発光素子と受光素子とを有する赤外線センサを用いることができる。発光素子は、赤外線光を発光する光源である。受光素子は、赤外線光が指示物体で反射された反射光を検出する。発光素子及び受光素子は、それぞれ複数がX方向に沿って並んで交互に配置されている。そして、発光素子は、各光軸がY方向に沿うように赤外線光を出射する。受光素子は、反射光を受光可能に配置される。
【0023】
発光素子から発光面31を介して出射される赤外線光は、XY平面に平行なシート状の検出エリアDを形成する。発光面31は、赤外線光を透過可能なレンズであり、発光素子の正面側にあたる筐体の底面に設けられる。発光面31は、表示面21の上端縁を覆うようにX方向に延在して形成される。また、検出エリアDは、表示面21からZ方向に離間した空中に形成される。すなわち、検出エリアDは、表示面21よりも操作者側に形成される。なお、検出エリアDは不可視光の赤外線光により形成されるため、操作者は検出エリアDを視認できない。
【0024】
検出部は、検出エリアD内で指示物体による物理的な働きかけを受けた位置のXY座標を取得し、これに対応した位置情報を含む検出信号を制御部に出力する。検出部は、指示物体と物理的に接触することなく、指示物体の指示位置を検出することができる。そして、制御部は、取得した検出信号に基づいて指示物体の二次元的な位置を特定し、指示物体による入力操作の内容を判断することができる。
【0025】
検出部は、指示物体の三次元的な位置(XYZ座標)を検出するように構成されても良い。この場合も、三次元的に形成される検出エリアDは、表示面21からZ方向に離間した空中に形成される。また、検出部は、赤外線センサに限らず、カメラ、超音波センサ等であっても良い。いずれにしても、操作者は、表示面21の表示を見ながら検出エリアD内において入力操作を行うことができる。
【0026】
ここで、指示物体は、操作者の手指等である。本実施形態において、指示物体は指50であり、検出部において指先のXY座標が取得される。操作者は、指50を検出エリアDに進入させることにより、指50の位置に対応する入力を行うことができる。
【0027】
気流層生成部は、表示面21と検出エリアDとの間に気体を流入させることにより気流層Fを生成する機能を有する。本実施形態において、気流層Fを構成する気体は、ファンにより送風される空気である。例えば、ファンは、センサユニット30aの筐体内に設けられる。
【0028】
気流層生成部は、複数の吹出口32を介してセンサユニット30aの筐体の外部に気体を吹き出すことができる。複数の吹出口32は、センサユニット30aの筐体の底面に形成され、Z方向に発光面31と対向しつつ、発光面31と同等の長さでX方向に延在するように配置される。また、複数の吹出口32は、Z方向において、表示部20と発光面31との間に配置される。
【0029】
気流層生成部は、制御部から指示を受けて、吹出口32から気体をY方向の下方に向けて吹き出す。吹出口32から吹き出される気体は、表示面21(XY平面)に沿って流れる。気体は、表示面21と検出エリアDとの間の空間に流れ、これにより、表示面21上の空中に表示面21を覆う気流層Fを形成する。
【0030】
したがって、作業者が表示面21を直視する方向(Z方向の手前側)から見た場合に、検出エリアD、気流層F、及び表示面21は、この順に重なり合っている。また、検出エリアD及び気流層Fは、少なくとも表示面21を形成する領域と同一の領域に配置される。そのため、表示面21の全体を検出エリアDとすることができるとともに、表示面21の全体が気流層Fで覆われる。これにより、表示面21に指50が接触する可能性をより低減できる。さらに、X方向から見た場合には、検出エリアD、気流層F、及び表示面21は、略平行に配置されるため、これらを近接させることにより操作スペースをコンパクトにすることができる。
【0031】
次に、
図6及び
図7を参照して、比較例の入力装置100について説明する。
図6は、比較例の入力装置を説明する側面図である。
図7は、比較例の入力装置が備えるセンサユニットの底面図である。比較例の入力装置100は、気流層生成部を備えていないことを除いて入力装置1と同様の構成であるため、入力装置1との相違点を中心に説明する。
【0032】
図6及び
図7に示すように、入力装置100のうち、センサユニット30bの外観は、吹出口32が形成されていないことを除いてセンサユニット30aと同様である。入力装置100において、センサユニット30bが取り付けられる位置も、センサユニット30aの場合と同様である。
【0033】
センサユニット30bは、検出部として入力装置1と同様の赤外線センサを有する。赤外線センサの発光素子から発光面31を介して出射される赤外線光は、XY平面に平行なシート状の検出エリアDを形成する。しかしながら、入力装置100では、入力装置1と異なり、検出エリアDと表示面21との間に気流層Fが存在しない。
【0034】
入力装置100を利用する場合、操作者は、検出エリアDを視認できないとともに、検出エリアDに指50を進入させても表示面21に接触するまでに物理的な接触を伴う操作感が得られない。操作感が得られないと、操作者は、指50による入力操作が検出部によって検出されたか否かを把握することが困難である。
【0035】
そのため、入力装置100を利用して入力操作を行う際に、操作者は、検出部によって入力操作が検出済みであることに気付かず、指50を表示面21に向かってそのまま進行させて、表示面21に指50を近付け過ぎてしまう虞がある。このような非接触での入力操作では、指50が表示面21に接触して表示面21が汚損される可能性があるという問題がある。
【0036】
これに対し、本実施形態にかかる入力装置1は、表示面21にユーザーインターフェースを表示する表示部20と、表示面21と離間した空中に入力操作を行うための検出エリアDを生成し、検出エリアDに進入した指示物体の位置を検出して検出信号を出力する検出部と、検出エリアDと表示面21との間に気体を流入させて気流層Fを生成する気流層生成部と、検出信号に基づいて指示物体による入力操作の内容を判断する制御部と、を有する。
【0037】
本実施形態にかかる入力装置1によれば、操作者は、入力操作の際に、表示面21に接触する前に指先で気流層Fを認識することができる。これにより、操作者は、触覚による操作感を得ることができる。操作感を得た操作者は、入力操作が検出部によって検出済みであることを適切に把握し、表示面21に向かってそれ以上に指50を近付ける必要がないことに気付く。
【0038】
したがって、操作者が表示面21に指50を近付け過ぎてしまうことによって生じ得る指50と表示面21との接触を防止することができる。これにより、指50の接触による表示面21の汚損を回避することができる。そして、操作感が得られることにより、例えば、操作オブジェクトの2度押しや押し忘れ等の入力ミスを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態にかかる入力装置1は、指示物体の二次元的な位置を検出する検出部を有する。このような構成により、操作スペースをコンパクトにすることができる。さらに、検出部として赤外線センサを用いれば、赤外線光や気流層Fによって表示面21の視認性が損なわれることなく、簡素な構造で非接触の入力操作を可能とすることができる。
【0040】
また、本実施形態にかかる入力装置1では、検出部及び気流層生成部は、同一の筐体内に設けられる。このような構成により、例えば、検出部の発光素子と受光素子とを別々に配置したり、検出部と気流層生成部とを別々に配置したりする場合に比べて、装置をコンパクトにすることができる。
【0041】
また、本実施形態にかかる入力装置1では、検出エリアD、気流層F、及び表示面21が表示面21を直視する方向において同一の領域に配置される。これにより、指50と表示面21との接触を効果的に防止することができるため、指50の接触による表示面21の汚損を回避することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、指示物体が、ペン等である場合も、気流発生部による気体の流速等の条件を調整することによって、操作者はペンを介して間接的に操作感を得ることができる。
【0043】
また、気流層生成部は、温度が調節された気体を吹き出す空調装置であっても良い。このような構成によれば、例えば、指示物体である指に加熱した温風又は冷却した冷風を吹き付けることにより、操作者に対して温感刺激又は冷感刺激を与えることができるため、操作者はより操作感を得やすくなる。
【0044】
また、上記実施形態で説明した入力装置1は、例えば、現金自動預入支払機(ATM、Automated Teller Machine)、自動販売機、受付機、医療機器、家電機器等にも適用可能である。入力装置1を不特定多数の人が接する機器に適用すれば、機器を非接触で操作することができるようになるので、感染症予防に有効である。また、表示面21の汚損が防止されることにより、管理者等によるメンテナンスや清掃作業等の手間を軽減することができる。
【符号の説明】
【0045】
1、100 入力装置
10 本体部
20 表示部
21 表示面
22 フレーム
30a、30b センサユニット
31 発光面
32 吹出口
40 キャビネット
50 指
D 検出エリア
F 気流層