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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】多目的美容液
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20221220BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20221220BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20221220BHJP
   A61K 8/9794 20170101ALI20221220BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20221220BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20221220BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/19
A61K8/49
A61K8/60
A61K8/63
A61K8/9789
A61K8/9794
A61Q19/00
A61Q19/02
A61Q19/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022030454
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2022132237
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2021031275
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512197364
【氏名又は名称】株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 泰平
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-247826(JP,A)
【文献】国際公開第2020/202475(WO,A1)
【文献】特開2012-067042(JP,A)
【文献】特開2018-123130(JP,A)
【文献】特開2010-275243(JP,A)
【文献】特開2019-077668(JP,A)
【文献】特開平08-231369(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230233(WO,A1)
【文献】桜の花エキス SAKURA EXTRACT,桜の花エキスカタログ,2011年03月17日,Ver.1.4MK
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC誘導体及び甘草由来のグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか1つ又は双方を含む基礎有効成分と、
マルトース・ショ糖縮合物及びDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムのいずれか1つ又は双方を含む保湿剤と、
サクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤及び米の抽出物由来のコラーゲン産生促進剤を含む機能性素材と、
植物由来のエキスと、
オーガニック認証を受けたオーガニックファーミング材料と、
山岳で湧出したバナジウム含有の天然水と、を含み、
前記ビタミンC誘導体は、リン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルリン酸ナトリウム、3-O-エチルアスコルビン酸、及びアスコルビルグルコシドから選ばれる1つ以上であり、
前記サクラ抽出物は、開花直前の花蕾、サクラの葉、又はサクラの花弁をいずれか1以上含み、ポリフェノールオキシターゼ活性が抑制され、且つ空気酸化が抑制されたポリフェノール類を含む抽出液であり、
前記植物由来のエキスが、シソエキス、ノニ果汁、ウメ果汁エキス、ゲンノショウコウエキス、シャクヤクエキス、チンピエキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、ヨモギエキス、チャエキス、ヨクイニンエキス、及びウイキョウエキスから選ばれる1つ以上であり、
前記オーガニックファーミング材料が、アロエ液汁末、ノバラエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージエキス、タイムエキス、ラベンダーエキス、及びローズマリーエキスから選ばれる1つ以上であり、
外因性の肌荒れから皮膚を守り、潤いのある健やかな皮膚を維持し、皮膚に張りを与えて、皺防止効果及び美白効果を示す外用剤であることを特徴とする多目的美容液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多目的美容液に係り、より詳しくは、外因性の肌荒れや皮膚の乾燥のケアに効果があり、皮膚に潤い、張り、柔軟性などを与えて内側から皮膚の健康を増進させ、若ければ老化を防ぎ、加齢していれば皮膚を若返らせて、若くて健やかな皮膚を維持することができ、連続使用しても副作用がなく長期にわたって安全に使用できる多目的美容液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、外的刺激(例えば、紫外線、化学物質、大気汚染物質、花粉等)による細胞へのダメージのメカニズム及び対処方法が詳細に解明されてきて、外的刺激による皮膚の損傷及びその修復に対処する方法が進んできている。
また、皮膚に潤いを与え、皮膚の若さと健康を増進させる方法も解明されてきている。また、細胞の老化のメカニズムに関す研究も進んできている。
【0003】
更に、美白剤、抗酸化剤、抗炎症剤、紫外線防止剤、細胞賦活剤、血行促進剤、過酸化肌質改善剤、精神安定剤など多数の機能性素材が化粧料や皮膚外用剤に配合され、これらの機能性素剤の作用メカニズムに基づいて、内側から皮膚の健康を増進させることが行われるようになってきた。
【0004】
これらの機能性素材のうちで、近年特にコラーゲン及びコラーゲン産生促進剤が注目されている。
コラーゲンは、一般には皮膚の成分と考えられているが、実際は、グリシンが3アミノ酸残基ごとに繰り返されるという一次構造を有するタンパク質の総称である。コラーゲンは、人体の様々な器官を構成し、人間に存在するタンパク質の25~30%を占め、主として結合組織に力学的な強度を与えるのに役立っている。
【0005】
ところで、皮膚は表皮、真皮、及び下部組織の3層構造を有するが、コラーゲンは真皮の主成分であって真皮の約70%を構成する。ここで、真皮は、表皮のように目には直接は見えないが、表皮の内側で、皮膚に張りや弾力を与え美肌を形成する。真皮のコラーゲンは、主として三重ラセン構造を有し、皮膚で前駆体から産生され、コラーゲンの産生を促進するコラーゲン産生促進剤が公知である(例えば特許文献1を参照)。
【0006】
一方、コラーゲンは種々の原因で分解される。皮膚のコラーゲン量は60代で20代の半分に減少し、残ったコラーゲンもその柔軟性が失われてしまうと言われている。すなわち、古くなったコラーゲンが分解されずに硬くなり、代謝によって生み出される新しいコラーゲンが減少してしまうのが主原因であって、これが加齢による皮膚の老化現象であるといわれている。
【0007】
また、皮膚は、紫外線に曝されるとスーパーオキサイドを発生し、メラノーゲンを酸化してメラニンを生成すると共に、多数の過酸化分解酵素を産生する。この過酸化分解酵素の中には、コラーゲンを分解する酵素が存在し、紫外線に曝された皮膚は、その酵素によってコラーゲンが分解されて減少してしまい、更に紫外線の影響によって、正常なコラーゲンの生成能力も低下する。
【0008】
皮膚が紫外線に曝されて生成した過酸化分解酵素は、ビタミンCやポリフェノールのような過酸化ラジカル捕捉剤によって分解される。しかし、継続的に紫外線に曝され続けると、皮膚の中のコラーゲン全体が徐々に酸化ダメージを受け、皺や弛みが生じてしまう光老化という現象が起きる。しかも、光老化は加齢による自然老化よりも激しく、皮膚の老化の原因の大部分が紫外線によるものとも言われている。従って、皮膚の老化を防ぐには還元性を有するビタミンC及び過酸化ラジカル捕捉剤を皮膚に継続的に配布するのが有効であると言われている。
【0009】
皮膚におけるコラーゲンの量を増加させることを目的として、例えば特許文献1に、米由来のペプチドを有効成分とするコラーゲン産生促進剤及びコラーゲン産生遺伝子発現促進剤が開示されている。しかし、その効果は中程度であって、実際にコラーゲン産生促進効果が発現するまでには長時間を要するものであった。
【0010】
特許文献2には、バラ科サクラ属に属するサクラの花弁の抽出物により得られる皮膚外用剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-67042号公報
【文献】特開2017-165727号公報
【文献】特許第6875767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、皮膚の健康を増進又は維持させるメカニズム基づいて、紫外線、大気汚染物質、化学物質などを含む外的刺激からから皮膚を守る基礎有効成分と、皮膚に張りと潤いを与え、若くても加齢していても健やかな皮膚を維持する保湿剤と、を含み、皮膚の損傷及びその修復に対処すると共に、皮膚に潤いを与え、皮膚の若さと健康を増進させる多目的美容液提供することを目的とする。
【0013】
また本発明は、米の抽出物由来のコラーゲン産生促進剤と、サクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤とを含み、これらの機能性素材を併せて用いることにより、コラーゲン産生促進作用、美白・抗酸化作用の協奏作用を有し、皮膚の内側から皮膚の健康及び美白を増進させることを目的とする。
【0014】
更に本発明は、100%天然由来で連続使用しても副作用がなく、長期にわたって安全に使用できるオーガニック原料を用いてオーガニック認証を受けた多目的美容液を提供することを目的とする。
また本発明は、山岳で湧出したバナジウム含有のクラスターの小さい天然水を含み、皮膚への浸透性に優れ、多くの活性物質を溶解し随伴して生体に吸収させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
かかる課題を解決するための本発明の多目的美容液は、ビタミンC誘導体及び甘草由来のグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか1つ又は双方を含む基礎有効成分と、マルトース・ショ糖縮合物及びDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムのいずれか1つ又は双方を含む保湿剤と、サクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤及び米の抽出物由来のコラーゲン産生促進剤を含む機能性素材と、植物由来のエキスと、オーガニック認証を受けたオーガニックファーミング材料と、山岳で湧出したバナジウム含有の天然水と、を含み、外因性の肌荒れから皮膚を守り、潤いのある健やかな皮膚を維持し、皮膚に張りを与えて、皺防止効果及び美白・抗酸化効果を示す外用剤であることを特徴とする。
【0016】
また本発明の多目的美容液は、シソエキス、ノニ果汁、ウメ果汁エキス、ゲンノショウコウエキス、シャクヤクエキス、チンピエキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、ヨモギエキス、チャエキス、ヨクイニンエキス、ウイキョウエキスから選ばれる1つ以上の植物由来のエキスであることを特徴とする。
【0017】
また本発明の多目的美容液は、オーガニックファーミング材料が、アロエ液汁末、ノバラエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージエキス、タイムエキス、ラベンダーエキス、又はローズマリーエキスから選ばれる1つ以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の多目的美容液は、ビタミンC誘導体及び甘草由来のグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか1つ又は双方を含む基礎有効成分含み、慢性の皮膚炎に対し効果があり、紫外線、大気汚染物質、化学物質、花粉等などの外因性の肌荒れの治療などに効果がある。
【0019】
また本発明の多目的美容液は、皮膚に潤いを与えると共に、老化防止効果を有するマルトース・ショ糖縮合物及びDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムのいずれか1つ又は双方を含む保湿剤を含み、若い時でも加齢していても、使用者の年齢に関係なく潤いのある健やかな皮膚を維持することができる。
【0020】
更に本発明の多目的美容液は、サクラ抽出物及び米抽出物からなる機能性成分含み、コラーゲン産生促進作用、コラーゲン分解酵素阻害作用、及び過酸化ラジカル捕捉作用による美白・抗酸化効果の協奏によって、皮膚の内側からコラーゲン含有量を増加させ、メラニンの合成を阻害し、皮膚の老化を防ぐので、皮膚の張りを保ち、柔軟で皺のない美白な皮膚を形成し維持することができる。
【0021】
更に本発明の多目的美容液は、植物由来のエキスと、オーガニックファーミング材料と、を含み、連続使用しても副作用がなく長期にわたって安全に使用できるオーガニックな原料を用いた多目的美容液を提供する。
【0022】
更にまた、本発明は、山岳で湧出した天然水を溶媒として使用することを特徴とする。本発明に用いる天然水としては、例えば富士山泉端水を用いることができる。富士山泉端水は、富士山の標高約1000mの特定の場所から湧出する天然水であり、バナジウムを含有することにより水のクラスターが小さくなるために皮膚への浸透性に優れ、多くの活性物質を溶解・随伴させて生体に吸収させる作用がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】評価試験において、被検者の処置側及びプラセボ側を示す図である。
図2】評価試験において、目視による皺分析の結果を示す図である。
図3】評価試験において、写真による皺の分析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を、実施例を挙げて詳細に説明する。
この記載は、本発明を説明するためのものであって、この記載によって本発明の技術範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で、多様に変更して実施することが可能である。
【0025】
本発明の多目的美容液は、ビタミンC誘導体及び甘草由来のグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか1つ又は双方を含む基礎有効成分と、マルトース・ショ糖縮合物及びDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムのいずれか1つ又は双方を含む保湿剤と、サクラ抽出物由来の美白・抗酸化効果を有する過酸化ラジカル捕捉剤及び米の抽出物由来のコラーゲン産生促進剤の双方を含む機能性材料と、植物由来のエキスと、オーガニックファーミング材料と、山岳で湧出したバナジウム含有の天然水と、を含むものである。
【0026】
(ビタミンC誘導体)
ここでビタミンCは、皮膚において、皮膚の炎症、紫外線ダメージ、老化等の皮膚のトラブルから皮膚を守り、紫外線に曝された皮膚のメラニン合成を抑制し、生成したメラニンを分解し、色素沈着を防いで皮膚の美白を保つ作用を有する。また抗酸化作用を有し、更に、コラーゲン産生に必須の成分であり、またコラーゲン産生促進作用がある。このようにビタミンCは内側から皮膚の張りを保ち、美白で滑らかで弾力のある肌を作るなどの優れた効果を有する。
しかし、ビタミンCは、皮膚への直接塗布では吸収されず、また体内からは少ししか供給されず、更にビタミンCは不安定で分解されやすく、皮膚から迅速に排出される。
【0027】
これに対し、本発明の基礎有効成分として用いるビタミンC誘導体は、投与されると皮膚に留まり、皮膚においてビタミンCに分解されて高いビタミンC濃度と活性とが持続され、ビタミンCの優れた効果を発揮する公知のものが用いられ、例えばリン酸アスコルビルマグネシウム、アスコルビルリン酸ナトリウム、3-O-エチルアスコルビン酸、アスコルビルグルコシド等を挙げることができる。
本発明の多目的美容液は、ビタミンC誘導体の含有量は5.0質量%以下であることが好ましく、0.5~4.5質量%であることがより好ましい。
【0028】
(グリチルリチン酸ジカリウム)
また、一方の基礎有効成分として用いるグリチルリチン酸ジカリウムは、カンゾウ(甘草)の主要成分であって、抗炎症、抗アレルギー作用を有して、慢性の皮膚炎に対し効果があり、肌荒れなどを治療して健やかな皮膚を維持する。また、その効果は副腎皮質ホルモンより緩和で即効性が少ない反面、連続使用しても副作用が少ない。
そして、グリチルリチン酸ジカリウムの含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1~0.4質量%であることがより好ましい。グリチルリチン酸ジカリウムが0.1質量%未満では十分な抗炎症作用を示すことができないことがある。
【0029】
本発明の多目的美容液では、以上のビタミンC誘導体及びグリチルリチン酸ジカリウムのいずれか1つ又は双方を含有するものであり、このことにより、抗酸化作用、光老化からの保護や紫外線ダメージの抑制作用や、皮膚の炎症や、色素沈着を防ぐ作用及び抗炎症作用を有し、しかもこれらの持続性が高く副作用の少ない美容液とすることができる。
【0030】
(保湿剤)
本発明に用いる保湿剤は、マルトース・ショ糖縮合物及びDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムのいずれか1つ又は双方を含むものである。
マルトース・ショ糖縮合物は、マルトースとショ糖とを酵素的に結合させた四糖であって、優れた保湿作用を有する。また、DL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムは、DL-グルタミン酸が分子内でラクタム結合したものであって、皮膚の水分量を増加させる作用を有する。
本発明の美容液では、これらの2種の保湿剤を配合することができ、2種類の保湿剤を配合することによって、皮膚全体にバランスの取れた保湿作用を示すことができる。
【0031】
以上の保湿剤の含有量は、それぞれ0.5質量%以下(但し同時に0質量%ではない)であることが好ましく、0.1~0.4質量%であることがより好ましい。保湿剤のそれぞれは、0.1質量%未満では十分な保湿作用を示すことができないことがある。
【0032】
本発明の多目的美容液は、更にサクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤及び米の抽出物由来のコラーゲン産生促進剤の双方が用いられる。本発明に用いる美白・抗酸化剤及コラーゲン産生促進剤は、上記の基礎有効成分及び保湿成分の皮膚への作用を補助するものであり、これらを長期に連続して用いることにより、上記の基礎有効成分及び保湿剤の作用を補助するものである。
【0033】
(サクラ抽出物)
[製造例1]
バラ科サトザクラの開花直前の花蕾200gを捕集し、捕集後直ちに水洗し、後窒素気流中65~70℃で1.0時間乾燥させ、窒素雰囲気中、50%1、3ブチレングリコール中65~70℃で50時間抽出し、ろ過して1.5kgの、本願発明の美白・抗酸化剤に係る淡緑色透明なサクラ抽出液を得た(蒸発残分1.53質量%)。
なお、サクラの蕾の代わりにサクラの葉又はサクラの花弁のいずれか1つを用いて同様の操作によってサクラ葉抽出液又はサクラ花弁抽出液を得ることができる。
【0034】
本発明の多目的美容液中の、製造例1に記載のサクラの花蕾抽出液の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1~0.4質量%であることがより好ましい。サクラ抽出液の含有量は、0.1質量%未満では十分な作用を示すことができないことがある。
【0035】
特許文献1に、サトザクラの花を乾燥、粉砕し、粉砕物に精製水を加え、80℃にて、2時間抽出後、濾過し、褐色透明のサクラ抽出物溶液1385gを得る方法が記載されている。しかし植物は、傷つけられると、それまでは不活性状態で細胞内に閉じ込められていたポリフェノールオキシダーゼなどの自己分解酵素が放出されて活性化され、サクラ抽出物の美白作用の活性成分と考えられるポリフェノール類が過酸化分解されてしまうと考えられる(特許文献3を参照)。
特許文献1に記載されたサクラ抽出物溶液は、この点が配慮されておらず、特許文献1に記載されたサクラ抽出物溶液は、過酸化ラジカル捕捉作用の有効成分であるポリフェノール類は分解されてしまって含まれてないものと考えられる。
【0036】
しかしながら、ポリフェノールオキシダーゼは、活性化されても酸素がないとポリフェノール類を酸化することができず、また60~70℃で分解され失活するという性質を有する。一方ポリフェノール類は、ポリフェノールオキシダーゼがなければ約60~70℃でも安定である。
そこで、本願発明では、サクラの花蕾を酸素を含まない雰囲気中約60~70℃に加熱してポリフェノールオキシダーゼを分解させてから、活性成分であるポリフェノール類の抽出を行ったものであって、ポリフェノール類を多量に含むものである。
なお、サクラの花蕾の代わりにサクラの葉又はサクラの花弁のいずれか1つを用いて同様の操作によってサクラ葉抽出液又はサクラ花弁抽出液を得ることができる。
【0037】
このサクラの花蕾抽出液の含有量は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.1~0.4質量%であることがより好ましい。サクラ抽出物の含有量は、0.1質量%未満では十分な作用を示すことができないことがある。
【0038】
(米抽出物)
[製造例2]
精白米粉末を蒸留水に懸濁し、デンプン分解酵素を加え、攪拌した後冷却し、沈殿を遠心分離によって回収した。これに水を加え攪拌した後、遠心分離を用いて沈殿を回収することで水洗を行った。その後、乾燥を行い、米由来のタンパク質を得た。米タンパク純度は78%であった。この米タンパク(プロテイン含量約70%)100gに水道水900mlを添加し、適量のタンパク質分解酵素を添加して反応させた。その後、酵素を失活させて、遠心分離を行い、上澄み液として本願発明のコラーゲン産生促進剤に係る米抽出物を得た(蒸発残分1.36質量%)。
【0039】
(天然水)
本発明に用いる天然水は、溶媒として使用される。この天然水としては、山岳で湧出したバナジウムを含む天然水が選択される。この天然水は、例えば、富士山泉端水を用いることができる。富士山泉端水は、富士山の標高約1000mの特定の場所から湧出する天然水である。富士山泉端水は、バナジウムを含有しており水のクラスターが小さいため皮膚への浸透性に優れ、多くの活性物質を溶解して生体に吸収させる作用がある。
【0040】
(オーガニックファーミング材料)
オーガニックファーミング材料とは、土壌における栽培(有機栽培)から消費者に渡る完成品までの全工程において、環境や生物への負担を最小限に抑えた製造(オーガニックファーミング)に使用される材料であって、生産者と消費者が協力し、農薬及び化学肥料不使用、且つ循環型で生産した農産物やハーブである。本発明は、ヨーロッパを中心とする最大のオーガニック認証団体であるECOCERTのオーガニック認証を得たものを使用する。
【0041】
オーガニックファーミング材料としては、アロエ液汁末、ノバラエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セージエキス、タイムエキス、ラベンダーエキス、又はローズマリーエキスから選ばれる1つ以上を用いることができる。
【0042】
オーガニックファーミング材料におけるアロエ液汁末は、アロエベラの葉汁の乾燥末であって、皮膚の損傷に対する治療効果、及びメラニンの生成を抑える効果がある。ノバラエキスは、バラ科植物のノバラの果実から抽出されて作られたエキスである。成分としてフラボノイド、タンニン、ビタミン類、有機酸類、糖類を含んでいる。ノバラエキスは、保湿効果、収斂効果があるので皮膚を乾燥から守り、キメの細かい張りのある皮膚を維持させることができる。
【0043】
セイヨウサンザシエキスは、ヨーロッパや北アフリカを原産とするバラ科の落葉樹のエキスであり、民間療法又は伝統療法において、葉や花が心不全の治療に使われている。セイヨウノコギリソウエキスは、キク科西洋鋸草属の花及び葉から抽出したエキスであり、強壮効果、食欲増進、発汗、解熱作用があり、しかもハーブティーとして飲まれており、人体の健康増進に良好である。
【0044】
セージエキスは、シソ科植物サルビアの葉から抽出して得られるエキスであって、精油成分としてフラボノイド、タンニンを多く含み、血行促進作用や消炎作用など多様な働きがあり、皮膚の様々なトラブルから皮膚を守る作用がある。タイムエキスは、タチジャコウソウの葉のエキスであって、収斂作用、抗菌作用などの目的で化粧品に配合される。
【0045】
ラベンダーエキスは、強いリラックス効果と抗菌効果を有すると共に、皮膚細胞を活性化させる作用もあり、湿疹、日焼け、シミの改善に効果を発揮する。ローズマリーエキスは、葉からの抽出物であって、抗酸化作用及び老化防止作用を有する。
以上のオーガニックファーミング材料の含有量は、それぞれが0.1%以下であり合計で0.5質量%以下であることが好ましい。
【0046】
本発明の多目的美容液としては、1以上の天然の植物由来のエキスを含むことができる。天然の植物由来のエキスとしては、例えばシソエキス、ノニ果汁、ウメ果汁エキス、ゲンノショウコウエキス、シャクヤクエキス、チンピエキス、ヒキオコシエキス、ユキノシタエキス、ヨモギエキス、チャエキス、ヨクイニンエキス、ウイキョウエキス等から選ばれる1つ以上のものを選択することができるが、本発明で用いることができる植物由来のエキスはこれらに限られるものではない。
【0047】
多目的美容液として、シソエキスは、シソ科植物シソのうちの、シソの葉から抽出して得られる抽出物であって、医薬効果の主要成分であるペリルアルデヒドは皮膚塗布により接触性皮膚炎を引き起こすので、化粧品用はペリルアルデヒドが除去されたものである。化粧品に配合された場合は、ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用、セラミドの合成促進作用による皮膚バリア改善作用、及びチロシナーゼ阻害による色素沈着抑制作用が知られている。
【0048】
ノニ果汁は、熱帯植物であるアカネ科ヤエヤマアオキ属の種子の果汁であって、豊富な栄養分と中鎖脂肪酸とを多く含み、皮膚のバリア機能の増進による美肌効果が期待されている。ウメ果汁エキスは、梅の実をすりおろして絞り、その果汁を時間をかけて煮詰め、梅の実1kgを20~25gまで煮詰めたエキスで、多量のクエン酸と特徴成分のムメフラールを含み、血流を良くし、疲労回復や腸の調子を整え、皮膚の糖化を抑え皮膚のクスミや弾力低下を抑える。
【0049】
ゲンノショウコウエキスは、フウロウソウ科フウロウソウ属のゲンノショウコウから水で抽出して煮詰めたものであって、整腸作用を有する。シャクヤクエキスは、ボタン科の植物シャクヤクの根を水-エタノールで抽出して得られる溶液であって、チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用、好中球エラスターゼ活性阻害による抗老化作用を有する。
【0050】
チンピエキスは、ミカン科のタチバナの果皮から抽出されたエキスであって、メラニンの生成を抑制する効果があり、美白剤として用いられる。ヒキオコシエキスは、シソ科の植物ヒキオコシの、葉及び茎から抽出して得られる抽出物であって、ヒスタミン遊離抑制及びヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用を有する。
【0051】
ユキノシタエキスは、ユキノシタ科植物ユキノシタの全草から得られる植物由来のエキスであって、ヒスタミンの遊離抑制及びメラニン生成抑制による色素沈着抑制作用を有する。ヨモギエキスは、キク科植物ヨモギの全草から抽出して得られる植物由来のエキスであって、抗糖化ストレス作用を有し皮膚の老化防止作用や色素沈着抑制作用を有する。
【0052】
チャエキスは、ツバキ科植物チャノキの葉から抽出して得られる植物由来のエキスであって、過酸化水素抑制、一酸化窒素産生抑制、及び過酸化脂質抑制による抗酸化作用と、色素沈着抑制作用とを有する。ヨクイニンエキスは、イネ科の植物ハトムギから抽出して得られる植物由来のエキスであって、保湿効果、抗アレルギー効果、及び細胞賦活作用を有する。
【0053】
ウイキョウエキスは、セリ科植物ウイキョウの種子からの抽出物であって、活性酸素を消去する作用があり、紫外線などによる皮膚の老化を防ぐ作用を有する。
以上の天然の植物由来のエキスの含量は、それぞれが0.1質量%以下であり合計で0.5質量%以下であることが好ましい。
【0054】
(美容液)
本発明の製造例1に記載したサクラ由来の抽出物、製造例2に記載した米由来の抽出物及び化粧品原料を用いて、表1に示す範囲内の組成の多目的美容液(ローション)を製造した。
化粧品原料としては、当業者周知の1、3-ブチレングリコール、ジグリセリン、1,2-ペンタンジオール、エリスリトール、及びグリセリンのうちの1以上を用いた。
また、米抽出物、サクラ抽出物、オーガニックファーミング材料、及び植物由来のエキスは0%ではなく、ビタミンC誘導体とグリチルリチン酸ジカリウム、及びマルトース・ショ糖縮合物とDL-ピロリドンカルボン酸ナトリウムとは同時に0%ではない。
【表1】
【0055】
[評価試験]
発明の多目的美容液の皺防止効果の臨床試験を表1に示す皺防止効果を示す美容液を用いて臨床試験を行った。なお、比較対象のプラセボとしては、米抽出物由来のコラーゲン産生促進剤及びサクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤を含まないサンプルを用いた。
【0056】
(概要)
軽度ないし中等度の小じわを有する平均年齢47.38±5.25歳の21名の女性被検者を処置群及び非処置群(プラセボ適用)に分け、処置群に本発明に係る本発明の多目的美容液試料を適用し、非処置群に米抽出物由来のコラーゲン産生促進剤及びサクラ抽出物由来の美白・抗酸化剤を含まないプラセボを適用し、4週間にわたって目じりの皺の状態を、目視判定、写真判定、及び3次元イメージ分析を行い、4週間連続処置した後に被検者にアンケート行った。
【0057】
(試験方法)
被検者の顔を左右半分づつに分け、洗顔後、一方の側の目じりに各0.5gの本発明の多目的美容液試料又はプラセボを塗布して手で軽く押さえて浸透させ更にこれもう一度これを繰り返して試料又はプラセボを塗布した。他方の半分の何も塗布していない対応する部位の目じりの状態をベースラインとし、両目じりの皺の状態を測定した。
【0058】
(結果)
1.目視による皺の分析
表2は、皮膚状態判断の専門家による目視による皺の分析の結果を示す表であり、図2は評価試験において、皮膚状態判断の専門家による目視による皺の分析の結果を示すグラフである。
図2及び表2に示すように、本発明の多目的美容液を用いて4週間処置後の目視による皺減少率は、ベースラインと比較して3.17%であり、プラセボ側の目視による減少率は0.87%であった。目視による皺スコアは、本発明の多目的美容液を用いることによってプラセボ側より有意に(P値<0.05)減少した。
【表2】
【0059】
2.写真による皺の解析
表3は、写真による皺の分析の結果を示す表であり、図3は評価試験において、写真による皺の分析の結果を示すグラフである。
表3に示すように、本発明の多目的美容液を用いて4週間処置後の写真による皺減少率はベースラインと比較して2.69%であり、プラセボ側の写真による減少率は0.87%であった。写真による皺スコアは、本発明の多目的美容液を用いることによってプラセボ側より有意に(P値<0.05)減少した。
【表3】
【0060】
3.皺パラメータの分析
皺パラメータの分析結果の比較を表4に示す。
【表4】
【0061】
表4に示すように、本発明の多目的美容液を用いて4週間の処置後の「皺の平均深さ」の減少は5.37%であり、「最大皺の平均深さ」の減少は6.49%であり、「皺の全容積」の減少は5.61%であり、皮膚の高さ方向の算術平均粗さを示す「Ra」パラメータの減少率は5.53%であった。本発明に係る美容液処置側は、非処置側に比較して、「皺の平均深さ」、「最大皺の平均深さ」、「皺の全容積」、及び「Ra」パラメータが、有意に(P値<0.05)減少した。
【0062】
4.アンケート
表5は、試験期間4週間終了後の、被検者に対する皮膚のコンディションに関するアンケートの分析結果を示す表である。アンケートによれば皮膚の湿り気、肌目、皮膚全体の状態の改良に関し、76~81%の回答者がポジティブな回答をした。使用感のアンケートによれば、「広がり」、「密着性」、及び「満足度」に関し約67~71%の回答者がポジティブな回答をした。
【0063】
【表5】
【0064】
5.安全性評価
試験期間中に21名の被検者に皮膚障害は認められなかった。
<結論>
本発明の多目的美容液は、ヒト肌に対し皺防止効果を有すると考えられる。
【0065】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
図1
図2
図3