(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ゴム用添加剤、ゴム用添加剤組成物、タイヤ用ゴム組成物、タイヤ用架橋ゴム組成物、タイヤ用ゴム製品、及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08K 5/13 20060101AFI20221220BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
C08K5/13
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2018233610
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153866
【氏名又は名称】滝沢 喜夫
(74)【代理人】
【識別番号】100119666
【氏名又は名称】平澤 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100142295
【氏名又は名称】深海 明子
(72)【発明者】
【氏名】早川 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】川原 央帆
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225448(JP,A)
【文献】特開2001-234140(JP,A)
【文献】特開昭52-078253(JP,A)
【文献】特開2012-251028(JP,A)
【文献】特公昭48-014412(JP,B1)
【文献】特開平02-202813(JP,A)
【文献】特開平10-258573(JP,A)
【文献】特開昭61-040379(JP,A)
【文献】特開2012-229357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、加硫剤、及び下記
式(III)で表される化合物を配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
【化3】
(式(III)中、R
1
は水素原子、-C(=O)-OR
a
、-OR
b
、又は-C(=O)-R
c
を表し、R
a
~R
c
はそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
更に、充填材を含有し、該充填材の含有量が、ゴム成分100質量部に対して30~100質量部である、請求項
1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
更に、加硫促進剤を含有し、
式(III)で表される化合物の含有量に対する加硫促進剤の含有量の質量比(加硫促進剤/
式(III)で表される化合物)が0.2~5.0である、請求項
1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
式(III)で表される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.05~10質量部である、請求項
1~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を架橋した、タイヤ用架橋ゴム組成物。
【請求項6】
請求項
1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は請求項
5に記載のタイヤ用架橋ゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ用ゴム製品。
【請求項7】
請求項
1~4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は請求項
5に記載のタイヤ用架橋ゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【請求項8】
下記
式(III)で表される化合物からなるゴム用添加剤。
【化5】
(式(III)中、R
1
は水素原子、-C(=O)-OR
a
、-OR
b
、又は-C(=O)-R
c
を表し、R
a
~R
c
はそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表す。)
【請求項9】
請求項
8に記載のゴム用添加剤を含有する、ゴム用添加剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム用添加剤、ゴム用添加剤組成物、タイヤ用ゴム組成物、タイヤ用架橋ゴム組成物、タイヤ用ゴム製品及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの社会的要請の下、自動車に対する低燃費化を進めるために、転がり抵抗の小さいタイヤが求められ、従来よりも低発熱性(低ロス性)に優れたゴム組成物が望まれている。
一方、自動車用タイヤの耐摩耗性の向上が望まれており、貯蔵弾性率、特に、動的貯蔵弾性率(E’)が大きなゴム組成物が望まれている。
【0003】
特許文献1には、低発熱性であり、かつ、高弾性であるゴム組成物を提供することを目的として、天然ゴムや合成イソプレンゴムに対して特定の樹脂組成物及び熱可塑性樹脂を所定の割合で配合したゴム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、特定のゴム成分に対しては低発熱性であり、かつ高弾性であるゴム組成物が得られたが、使用するゴム成分が限定されていた。また、添加する樹脂組成物及び熱可塑性樹脂の量が多く、ゴム組成物の処方の選択性が限定的であった。
【0006】
本発明の目的は、加工性を不良とすることなく、高い動的貯蔵弾性率を有する架橋ゴム組成物が得られるタイヤ用ゴム組成物を提供することである。また、前記ゴム組成物に添加するゴム用添加剤及びゴム用添加剤組成物を提供することである。更に、前記ゴム組成物又は架橋ゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム製品及びタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の構造を有する化合物を配合することにより、上記の課題を解決しうることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の<1>~<11>に関する。
<1> ゴム成分、加硫剤、及び下記式(I)で表される化合物を配合してなるタイヤ用ゴム組成物。
【0008】
【化1】
(式(I)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を表し、R
2~R
4の少なくとも2つは水酸基である。)
【0009】
<2> 式(I)で表される化合物が、下記式(II)で表される化合物である、<1>に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0010】
【化2】
(式(II)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表し、R
3は水素原子又は水酸基を表す。)
【0011】
<3> 式(I)で表される化合物が、下記式(III)で表される化合物である、<1>又は<2>に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0012】
【化3】
(式(III)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表す。)
【0013】
<4> 更に、充填材を含有し、該充填材の含有量が、ゴム成分100質量部に対して30~100質量部である、<1>~<3>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
<5> 更に、加硫促進剤を含有し、式(I)で表される化合物の含有量に対する加硫促進剤の含有量の質量比(加硫促進剤/式(I)で表される化合物)が0.2~5.0である、<1>~<4>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
<6> 式(I)で表される化合物の含有量が、ゴム成分100質量部に対して0.05~10質量部である、<1>~<5>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
<7> <1>~<6>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物を架橋した、タイヤ用架橋ゴム組成物。
<8> <1>~<6>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は<7>に記載のタイヤ用架橋ゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ用ゴム製品。
<9> <1>~<6>のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物又は<7>に記載のタイヤ用架橋ゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
<10> 下記式(I)で表される化合物からなるゴム用添加剤。
【0014】
【化4】
(式(I)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を表し、R
2~R
4の少なくとも2つは水酸基である。)
【0015】
<11> <10>に記載のゴム用添加剤を含有する、ゴム用添加剤組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、加工性を不良とすることなく、高い動的貯蔵弾性率を有する架橋ゴム組成物が得られるタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、前記ゴム組成物に添加するゴム用添加剤及び該ゴム用添加剤組成物を提供することができる。更に、前記ゴム組成物又は架橋ゴム組成物を用いたタイヤ用ゴム製品及びタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明をその実施形態に基づき詳細に例示説明する。なお、以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を表し、「A以上B以下」(A<Bの場合)、又は、「A以下B以上」(A>Bの場合)を表す。
【0018】
[タイヤ用ゴム組成物、ゴム用添加剤、及びゴム用添加剤組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「本発明のゴム組成物」ともいう。)は、ゴム成分、加硫剤、及び上記式(I)で表される化合物(以下、「本発明のゴム用添加剤」ともいう。)を配合してなる。
また、本発明のゴム用添加剤は、上記式(I)で表される化合物からなる。更に、本発明のゴム用添加剤組成物は、本発明のゴム用添加剤を含有する。
本発明者等は鋭意検討した結果、上記式(I)で表される化合物、すなわち、本発明のゴム用添加剤を配合してなるゴム組成物を架橋して得られる架橋ゴム組成物は、高い動的貯蔵弾性率(E’)を有することを見出した。また、前記ゴム組成物は、本発明のゴム用添加剤の配合に伴って、加工性が不良となることがないことを見出した。前記の効果が得られる詳細な機構は不明であるが、一部は以下のように推定される。
加硫の過程において、式(I)で表される化合物(本発明のゴム用添加剤)と、ゴム成分とが擬似的に架橋を形成すると考えられる。一方、式(I)で表される化合物は、酸化防止剤としての機能を有することから、硫黄架橋の形成を阻害すると考えられる。すなわち、硫黄架橋は阻害されるものの、式(I)で表される化合物と、ゴム成分との間に擬似的な架橋が形成される。このような架橋系では、変形により擬似的な架橋は消失すると考えられ、高い動的貯蔵弾性率(E’)が達成されたものと推定される。更に、その理由は不明であるが、式(I)で表される化合物を添加しても、ゴム組成物の加工性は悪化しないことを見出した。
以下、本発明のタイヤ用ゴム組成物を構成する各成分、タイヤ用ゴム組成物の製造方法、及びゴム用添加剤組成物について詳述する。
【0019】
<ゴム成分>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分を含有する。
ゴム成分は、加硫剤との架橋を形成可能であるゴム成分であり、ゴム工業界で使用されているゴム成分から適宜選択すればよい。ゴム成分としては、天然ゴム及びジエン系合成ゴムが好適に挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて使用することができる。
ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン-イソプレン共重合体(SIR)、ブタジエン-イソプレン共重合体、ブタジエン-スチレン-イソプレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴムなどが挙げられる。また、その一部が多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているものでもよい。
ゴム成分は、スチレン-ブタジエン共重合体、又は天然ゴムを含有することが好ましい。ゴム成分は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
<式(I)で表される化合物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、下記式(I)で表される化合物を含有する。また、本発明のゴム用添加剤は、下記式(I)で表される化合物よりなる。
【0021】
【化5】
(式(I)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表し、R
2~R
4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を表し、R
2~R
4の少なくとも2つは水酸基である。)
【0022】
式(I)中、R1は水素原子、-C(=O)-ORa、-ORb、又は-C(=O)-Rcを表し、Ra~Rcはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表す。
Ra~Rcが表す炭素数1~22の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、また、二重結合、三重結合などの不飽和結合を有していてもよい。これらの中でも、直鎖状又は分岐状の炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の炭化水素基であることがより好ましい。Ra~Rcは、アルキル基又はアルケニル基であることが好ましく、直鎖状アルキル基又は直鎖状アルケニル基であることがより好ましい。
Ra~Rcの炭素数は、高い動的貯蔵弾性率を有する架橋ゴム組成物を得る観点から、1以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは6以上であり、そして、22以下、好ましくは18以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは10以下である。
【0023】
これらの中でもR1は水素原子又は-C(=O)-ORaであることが好ましく、-C(=O)-ORaであることがより好ましく、Raがアルキル基である、アルコキシカルボニル基であることが更に好ましい。
なお、R1がカルボキシ基(-COOH)であると、ゴム組成物の加工性が不良となる。また、上記Ra~Rcの炭素数が22を超えると、高い動的貯蔵弾性率を有するゴム組成物が得られない。
【0024】
式(I)中、R2~R4はそれぞれ独立に水素原子又は水酸基を表し、R2~R4のうち、少なくとも2つは水酸基である。R2~R4のうち、いずれの2つ以上が水酸基であってもよい。
R2~R4のうち少なくとも2つが水酸基である場合、少なくともR2(又はR4)及びR3が水酸基であっても、少なくともR2及びR4が水酸基であってもよく、特に限定されないが、優れた効果が得られる観点から、少なくともR2及びR4が水酸基であることが好ましい。
従って、式(I)で表される化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【0025】
【化6】
(式(II)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表し、R
3は水素原子又は水酸基を表す。)
【0026】
式(II)中、R1、Ra~Rc及びその好ましい態様は、式(I)中のR1、Ra~Rc及びその好ましい態様と同様である。
式(I)で表される化合物は、R2、R3、及びR4が水酸基であることがより好ましい。
従って、式(I)で表される化合物は、下記式(III)で表される化合物であることがより好ましい。式(I)で表される化合物は、ピロガロール又は没食子酸エステルであることが更に好ましい。
【0027】
【化7】
(式(III)中、R
1は水素原子、-C(=O)-OR
a、-OR
b、又は-C(=O)-R
cを表し、R
a~R
cはそれぞれ独立に炭素数1~22の炭化水素基を表す。)
【0028】
式(III)中、R1、Ra~Rc及びその好ましい態様は、式(I)中のR1、Ra~Rc及びその好ましい態様と同様である。
【0029】
式(I)で表される化合物は、市販品として入手可能なものであるが、例えば、原料として没食子酸等の酸と1級アルコールを用いる等、通常のエステル化反応にて製造することができる。
【0030】
ゴム組成物中の式(I)で表される化合物の含有量は、低発熱性及び高い動的貯蔵弾性率を有する架橋ゴム組成物を得る観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.3質量部以上、より更に好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下、より更に好ましくは2.5質量部以下である。
【0031】
<加硫剤>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤を含有する。
加硫剤は、特に制限はなく、通常、硫黄を用い、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
本発明のゴム組成物において、加硫剤の含有量は、加硫を充分に進行させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上であり、そして、耐老化性を向上させる観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0032】
<加硫促進剤>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
上記加硫促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。具体的には、CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)、TBBS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド)、TBSI(N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤;DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤;テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;MBT(2-メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド)等のチアゾール系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の加硫促進剤;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、式(I)で表される化合物の存在下で、適度な加硫を進行させる観点から、加硫促進剤として、少なくともスルフェンアミド系の加硫促進剤を含有することが好ましく、少なくともCBS、TBBSを含有することがより好ましい。
【0033】
タイヤ用ゴム組成物中の加硫促進剤の含有量は、適切な加硫速度で、適度な加硫を進行させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、より更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7.5質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
また、タイヤ用ゴム組成物中、式(I)で表される化合物の含有量に対する加硫促進剤の含有量の質量比(加硫促進剤/式(I)で表される化合物)は、式(I)で表される化合物の加硫阻害作用を抑制し、適度な加硫を進行させ、低発熱性である架橋ゴム組成物を得る観点から、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは1.0以上であり、そして、好ましくは5.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である。
【0034】
<充填材>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、必要に応じ、充填材を配合することが好ましい。
充填材としては、カーボンブラックのような有機充填材、シリカのような無機充填材、又はこれら2つのタイプの充填材をブレンドして使用してもよい。これらの中でも、カーボンブラック及びシリカから選ばれる1種以上の充填材が好ましく用いられる。
前記カーボンブラックとしては特に制限はなく、従来、ゴムの充填材として使用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。例えば、SRF、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが用いられ、特に耐屈曲性及び耐破壊性に優れるFEF、HAF、ISAF、SAF等が好適に挙げられる。
カーボンブラックは、補強性の観点から、窒素吸着比表面積N2SA(JIS K 6217-2:2001に準拠する。)が、好ましくは30m2/g以上、より好ましくは35m2/g以上であり、そして、好ましくは150m2/g以下、より好ましくは130m2/g以下である。
カーボンブラックは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
一方、シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられるが、中でも湿式シリカが好ましい。
この湿式シリカのBET比表面積(ISO 5794/1に基づき測定する。)は、補強性の観点から、好ましくは40m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上であり、そして、好ましくは350m2/g以下、より好ましくは300m2/g以下である。このようなシリカとしては東ソー・シリカ(株)製「Nipsil AQ」、「Nipsil KQ」、デグッサ社製「ウルトラジルVN3」等の市販品を用いることができる。
シリカは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シリカ以外の無機充填材としては、水酸化アルミニウム、クレー、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト等が例示される。
【0036】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、充填材の総配合量は、補強性及び低発熱性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上であり、そして、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
なお、本発明において、カーボンブラック及びシリカを併用することが好ましく、この場合、本発明のゴム組成物中のカーボンブラックの含有量は、補強性及び低発熱性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。
また、カーボンブラック及びシリカを併用する場合、本発明のゴム組成物中のシリカの含有量は、補強性及び低発熱性の観点から、ゴム組成物100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、より更に好ましくは10質量部以上であり、そして、好ましくは99質量部以下、より好ましくは90質量部以下、更に好ましくは80質量部以下である。
【0037】
(シランカップリング剤)
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、充填材としてシリカを使用する場合、その補強性を更に向上させる目的で、シランカップリング剤を配合することが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えばビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられるが、これらの中で補強性改善効果などの点から、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド及び3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが好適である。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、好ましいシランカップリング剤の配合量は、シランカップリング剤の種類などにより異なるが、シリカの分散性を向上させると共に、ゴム成分のゲル化を抑制する観点から、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0039】
<その他の成分>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述の成分に加え、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の添加剤を含有していてもよい。その他の添加剤としては、通常ゴム業界で使用される各種添加剤から適宜選択すればよく、具体的には、老化防止剤、軟化剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤等が挙げられる。
本発明のゴム組成物は、加硫を促進する観点から、亜鉛華や脂肪酸等の加硫促進助剤を含有してもよい。脂肪酸としては飽和、不飽和でもよく、また、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。また、炭素数も特に制限されるものではなく、例えば、炭素数1~30、好ましくは15~30のものを使用することができる。
脂肪酸の具体例としては、シクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸、メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸、ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸等が挙げられ、ステアリン酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、ステアリン酸及び亜鉛華を好適に用いることができ、亜鉛華とステアリン酸とを併用することが特に好ましい。
これら加硫促進助剤のゴム組成物中の総含有量は、特に制限されるものではないが、混練作業性及び加硫促進の観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは7質量部以下である。
【0040】
本発明のゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば3C(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、6C[N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン]、TMDQ(2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体)、AW(6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。
老化防止剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ゴム組成物中の老化防止剤の配合量は、十分な耐候性及び耐オゾン性を付与すると共に、変色及び耐亀裂性の低下を抑制する観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは1質量部以上であり、そして、好ましくは6質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
【0041】
<タイヤ用ゴム組成物の調製>
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は特に限定されない。
本発明のゴム組成物は、各種配合剤を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インテンシブミキサー、二軸押出機等による混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
ゴム組成物の製造時に加硫が起こるのを抑制し、製造時のハンドリング性を向上させる観点から、ゴム組成物に含有させる成分のうち、加硫剤及び加硫促進剤を除く成分を予め配合して混合し(第1混練工程)、次いで、加硫剤及び加硫促進剤を配合して混合する(第2混練工程)ことにより、ゴム組成物を調製することが好ましい。
上記の方法によりゴム組成物を調製することにより、第一混練工程を高温条件下で行っても加硫が生じることがないので、ゴム組成物を生産性よく製造することができる。
第1混練工程における混練温度は、各成分の熱分解を抑制する観点から、最高温度が、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは180℃以下である。また、生産性の観点から、第1混練工程における混練温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。
第2混練工程における混練温度は、混練時の加硫の発生を抑制する観点から、最高温度が、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下である。また、生産性の観点から、第2混練工程における混練温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上である。
【0042】
<ゴム用添加剤組成物>
本発明のゴム用添加剤組成物は、本発明のゴム用添加剤を含有する。本発明のゴム用添加剤組成物は、本発明のゴム用添加剤(式(I)で表される化合物)に加えて、ゴム業界で通常使用される添加剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫剤、加硫促進剤等を含有していてもよい。
【0043】
[架橋ゴム組成物]
本発明の架橋ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋して得られる。なお、架橋ゴム組成物は、少なくとも加硫による架橋が形成されており、これに加え、例えば、式(I)で表される化合物による擬似的な架橋が形成されていてもよい。
前記架橋の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、加熱温度を120~200℃とし、加熱時間を1分間~900分間とすることが好ましい。
【0044】
[タイヤ用ゴム製品及びタイヤ]
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、特にタイヤに好適に使用される。
本発明のタイヤ用ゴム製品は、本発明のゴム組成物又は架橋ゴム組成物を用いる以外に特に制限はない。なお、本発明の架橋ゴム組成物をタイヤに用いる場合、当該架橋ゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド部、サイドウォール部、ビード部、インナーライナー、及びその他の補強ゴム部の少なくとも一つの部材に好適に用いることができる。これらの中でも、本発明のゴム組成物をキャップトレッドゴム、ベーストレッドゴムに用いることが、タイヤの耐亀裂成長性及びウェット性を効果的に向上させる観点で好ましい。
また、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いる以外特に制限はなく、常法に従って製造することができる。すなわち、本発明のゴム組成物が未加硫の段階で、例えばトレッド用部材に押出し加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼付成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤが製造される。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0045】
本発明のゴム用添加剤及びゴム用添加剤組成物は、タイヤ用ゴム組成物に限定されず、広く他のゴム組成物に添加してもよく、本発明のゴム用添加剤又はゴム用添加剤組成物が添加されたゴム組成物、又はこれを架橋した架橋ゴム組成物は、各種のゴム製品に用いることができる。
ゴム製品としては、上述したタイヤに加え、防振ゴム、免震ゴム、コンベアベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホース等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
実施例及び比較例で使用した各成分は以下の通りである。
NR:RSS #1
SBR-1:JSR #1500(非油展SBR、JSR(株)製)
SBR-2:Nipol NS-210(溶液重合SBR、日本ゼオン(株)製)
CB:シースト3(カーボンブラック(HAF、N2SA=79m2/g)、東海カーボン(株)製)
シリカ:Nipsil AQ(シリカ(BET比表面積=205m2/g)、東ソー・シリカ(株)製)
シランカップリング剤:Si69(ビス[(3-トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、エボニック社製)
老防6C:ノクラック6C(老化防止剤、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製)
TBBS:サンセラーNS-G(加硫促進剤、N-(t-ブチル)-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、三新化学工業(株)製)
MBTS:ジベンゾジチアジルジスルフィド(加硫促進剤、東京化成工業(株)製)
DPG:1,3-ジフェニルグアニジン(加硫促進剤、和光純薬工業(株)製)
ステアリン酸:商品名「ルナックS-70V」、花王(株)製
ZnO:和光純薬工業(株)製
硫黄:和光純薬工業(株)製
【0048】
化合物A:没食子酸ステアリル(没食子酸オクタデシル、東京化成工業(株)製)
化合物B:没食子酸n-オクチル(東京化成工業(株)製)
化合物C:没食子酸プロピル(和光純薬工業(株)製)
化合物D:ピロガロール(和光純薬工業(株)製)
化合物E:没食子酸(和光純薬工業(株)製)
化合物A~化合物Eの構造を以下に示す。
【0049】
【0050】
実施例1-1~1-6及び比較例1-1~1-2、並びに実施例2-1~2-6及び比較例2-1~2-2
表1及び表2に示す配合割合の配合物をバンバリーミキサーを用いて混練して、更に加圧型加硫装置を用いて145℃で33分間加硫して架橋ゴム組成物を得た。
また、表1及び表2に示す配合割合の配合物をバンバリーミキサーを用いて混練して、それぞれのゴム組成物を未加硫の状態で乗用車用空気入りラジアルタイヤ(タイヤサイズ195/60R15)のトレッド(トレッドキャップ部)に配設して加硫することにより、乗用車用空気入りラジアルタイヤを常法に従って製造した。
【0051】
[評価]
得られた架橋ゴム組成物(加硫ゴム組成物)に対して、以下の評価を行った。
(1)貯蔵弾性率(E’(30℃、1%))及び損失正接(tanδ(30℃、1%))の測定
得られた架橋ゴム組成物(加硫ゴム組成物)に対して、(株)上島製作所製スペクトロメータを用いて、初期荷重160g、歪み1%、周波数52Hzの条件下で、30℃における歪み1%時の動的貯蔵弾性率(引張動的貯蔵弾性率、E’(30℃、1%))及び損失正接(tanδ(30℃、1%))を測定した。
動的貯蔵弾性率(E’)に関しては、比較例1-1又は比較例2-1の動的貯蔵弾性率(E’)を100として、指数表示した。なお、E’の値が大きい程、車両の操縦安定性及び耐摩耗性に優れていることを示す。
また、損失正接(tanδ)に関しては、比較例1-1又は比較例2-1の損失正接(tanδ)を100として、指数表示した。なお、tanδの値が小さいほど、低発熱性であり、タイヤに用いた際に低転がり抵抗性であることを示す。
【0052】
(2)ムーニー粘度(100℃)
JIS K 6300に基づき、(株)上島製作所製、MVR VR-1130を用い、得られたゴム組成物(未加硫ゴム組成物)について、100℃にてムーニー粘度[ML1+4]を測定し、比較例1-1又は比較例2-1を100として指数表示した。ムーニー粘度の値が小さいほど、加工性に優れることを意味する。
【0053】
【0054】
【0055】
実施例3-1~3-2及び比較例3-1~3-2
表3に示す各成分を、表3に示す混合割合で混合し、ゴム組成物を調製した。調製にはバンバリーミキサー((株)神戸製鋼所製)及びロールミキサー(関西ロール(株)製)を用いて、第1混練工程、第2混練工程の順に混練を行って、ゴム組成物を調製した。なお、第1混練工程におけるゴム組成物の最高温度は170℃とし、第2混練工程におけるゴム組成物の最高温度は120℃とした。加硫は温度160℃で行い、加硫時間はキュラストT90値(分)×1.5倍で規定した。なお、キュラストT90値(分)は、(株)上島製作所製のキュラストメーター「FLAT DIE RHEOMETER MODEL VR-3110」を用いて、各ゴム組成物を表に示す温度で加硫した際に、トルク値が最大トルク値の90%になるまでの時間(T90)を測定することにより求めた。得られたゴム組成物を160℃で20分加硫した。
得られたゴム組成物を用いて、下記方法で評価を行った。
【0056】
[評価]
(1)貯蔵弾性率及び損失正接の測定
各例で得られた加硫後のゴム組成物を用いて、粘弾性測定装置「ARES-G2」(TAインスツルメント社製)を使用して、貯蔵弾性率及び損失正接の測定を行った。
温度50℃、動歪0.1%、周波数10Hzで貯蔵弾性率(せん断動的貯蔵弾性率)及び損失正接を測定した。
比較例3-1を100として指数表示した。貯蔵弾性率は数値が大きいほど剛性が良好であり、タイヤに用いた際の車両の操縦安定性及び耐摩耗性が優れる。損失正接は数値が小さいほどタイヤに用いた際のタイヤの転がり抵抗が小さく、省燃費性が優れることを示す。
【0057】
(2)ムーニー粘度の測定
得られたゴム組成物(未加硫ゴム組成物)について、JIS K 6300に基づき、(株)上島製作所製MVR VR-1130を用い、100℃にてムーニー粘度[ML1+4]を測定し、比較例3-1を100として指数表示した。数値が小さいほど加工性が良好である。
【0058】
【0059】
表1~表3の結果から、特定の構造を有する化合物を添加することによって、少ない添加量でありながら、低発熱性であり、かつ、高い動的貯蔵弾性率(E’)を有する架橋ゴム組成物が得られるゴム組成物を提供することができることが示された。更に、該ゴム組成物は低いムーニー粘度を有し、加工性に優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、加工性を不良とすることなく、高い動的貯蔵弾性率を有するタイヤ用架橋ゴム組成物が得られるタイヤ用ゴム組成物が提供され、また、前記タイヤ用ゴム組成物に添加するゴム用添加剤及び該ゴム用添加剤組成物が提供される。該ゴム組成物及び架橋ゴム組成物は、ゴム製品に適用可能であり、特に、タイヤ用途に有用である。該ゴム組成物又は架橋ゴム組成物を用いたタイヤは、耐摩耗性に優れると共に、低発熱性であり、省エネルギー性に優れると期待される。