(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】X線管及びX線管の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 35/06 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H01J35/06 E
H01J35/06 D
(21)【出願番号】P 2017003524
(22)【出願日】2017-01-12
【審査請求日】2019-12-13
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊抱 広之
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 友伸
(72)【発明者】
【氏名】阿武 秀郎
【合議体】
【審判長】加々美 一恵
【審判官】山村 浩
【審判官】吉野 三寛
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-260353(JP,A)
【文献】特開2003-317640(JP,A)
【文献】特開2008-166074(JP,A)
【文献】実開平1-164657(JP,U)
【文献】特開平1-146235(JP,A)
【文献】実開昭61-4345(JP,U)
【文献】特開平8-241685(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0040201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 7/18
H01J35/00-35/32
H01R43/027-43/28
H05G 1/00-2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子を放出するコイルと、前記コイルから先端部まで延長し、前記先端部に角部を有する脚部とを備えるフィラメントと、隙間を有し、前記隙間が開口する開口部と前記開口部と反対側の前記隙間の端部に位置する底部とを有する支持端子と、前記フィラメントと前記支持端子とを収容し、前記支持端子が接続されている陰極カップとを備える陰極を備え、
前記支持端子は、前記隙間内で突出し、前記脚部の前記先端部より前記底部側に位置し、前記脚部の前記角部
に接合されている凸部を備える、X線管。
【請求項2】
前記凸部は、前記底部から離間している、請求項1に記載のX線管。
【請求項3】
前記凸部は、第1凸部と、前記第1凸部と対向する第2凸部を備え、
前記第1凸部と前記第2凸部とは、前記脚部の径よりも小さい距離で離間している、請求項1に記載のX線管。
【請求項4】
前記凸部は、第1凸部と、前記第1凸部と対向する第2凸部を備え、
前記第1凸部と前記第2凸部とは
、接合されている、請求項1に記載のX線管。
【請求項5】
前記支持端子の外面は、第1外面部分と、前記先端部を間に挟んで前記第1外面部分の反対側に位置する第2外面部分とを有し、
前記支持端子は
、前記第1外面部分に形成されている第1窪みと
、前記第2外面部分に形成されている第2窪みとを備えている、請求項1に記載のX線管。
【請求項6】
前記支持端
子の前記隙間
内の内面は、第1内面部分と、前記先端部を間に挟んで前記第1内面部分の反対側に位置する第2内面部分と、前記先端部よりも前記コイル側に位置する前記脚部の第1部に圧着されてい
る第3内面部分と、該第3内面部分と対向し前記第1部に圧着されている第4内面部分とを備えている、請求項5に記載のX線管。
【請求項7】
前記支持端
子の前記隙間
内の内面は、第1内面部分と、前記先端部を間に挟んで前記第1内面部分の反対側に位置する第2内面部分と、前記先端部よりも前記コイル側に位置する前記脚部の第1部に接合されてい
る第3内面部分と、該第3内面部分と対向し前記第1部に接合されている第4内面部分とを備えている、請求項5に記載のX線管。
【請求項8】
前記支持端子の前記外面は、第3外面部分と、前記第1部を間に挟んで前記第3外面部分の反対側に位置する第4外面部分とを有し、
前記支持端子は
、前記第3外面部分に形成されている第3窪みと
、前記第4外面部分に形成されている第4窪みとを備えている、請求項6又は7に記載のX線管。
【請求項9】
前記支持端子は、鉄、鉄を主成分とする合金、ニオブ、ニオブを主成分とする合金、モリブデン、又は、モリブデンを主成分とする合金で形成されている、請求項1乃至8のいずれか1に記載のX線管。
【請求項10】
前記フィラメントは、タングステン又はタングステンを主成分とする合金で形成されている、請求項1乃至8のいずれか1に記載のX線管。
【請求項11】
電子を放出するコイルと、前記コイルから先端部まで延長し、前記先端部に角部を有する脚部とを備えるフィラメントと、隙間を有し、前記隙間が開口する開口部と前記開口部と反対側の前記隙間の端部に位置する底部とを有する支持端子と、前記フィラメントと前記支持端子とを収容し、前記支持端子が接続されている容器とを備える陰極を備えるX線管に適用される製造方法であって、
前記脚部の前記先端部を前記支持端子の前記隙間に挿入し、
前記先端部を前記隙間に挿入した後、一対の電極によって
、前記支持端子
の外面の第1外面部分と、前記脚部の前記角部を間に挟ん
で前記第1外面部分の反対
側に位置する前記支持端子
の前記外面の第2外面部分とに圧力を加えながら電流を供給し、
前記一対の電極によって、前記第1外面部分と前記第2外面部分とに圧力を加えながら電流を供給することで、前記隙間内で前記支持端子
の内面の第1内面部分と該第1内面部分と対向す
る前記内面の第2内面部分とを前記角部に押し当て
、前記支持端子に、前記隙間内で突出し前記脚部の前記先端部より前記底部側に位置し前記脚部の前記角部に接合された凸部を形成する、X線管の製造方法。
【請求項12】
前記一対の電極によって
、前記支持端子
の前記外面の第3外面部分と、前記先端部よりも前記コイル側に位置する前記脚部の第1部を間に挟ん
で前記第3外面部分の反対側に位置する前記支持端子
の前記外面の第4外面部分とに圧力を加え、
前記一対の電極によって、前記第3外面部分と前記第4外面部分とに圧力を加えることで、前記隙間内で前記支持端子
の前記内面の第3内面部分と該第3内面部分と対向す
る前記内面の第4内面部分とを前記第1部に押し当て
、前記第3内面部分と前記第4内面部分とを前記第1部に圧着する、請求項11に記載のX線管の製造方法。
【請求項13】
前記一対の電極によって
、前記支持端子
の前記外面の第3外面部分と、前記先端部よりも前記コイル側に位置する前記脚部の第1部を間に挟ん
で前記第3外面部分の反対側に位置する前記支持端子
の前記外面の第4外面部分とに圧力を加えながら電流を供給し、
前記一対の電極によって、前記第3外面部分と前記第4外面部分とに圧力を加えながら電流を供給することで、前記隙間内で前記支持端子
の前記内面の第3内面部分と該第3内面部分と対向す
る前記内面の第4内面部分とを前記第1部に押し当て
、前記第3内面部分と前記第4内面部分とを前記第1部に接合する、請求項11に記載のX線管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、X線管及びX線管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線管は、真空雰囲気の真空外囲器内に、電子を放出する陰極と、放出された電子が衝突することでX線を放射する陽極ターゲットとを備えている。陰極は、電子放出源と、電子放出源を収容する陰極カップとを備えている。電子放出源は、電子を放出するフィラメントと、フィラメントを支持する支持端子とで構成されている。フィラメントは、陰極カップと電気的に絶縁するように設けられている。フィラメントは、溶接等によって支持端子に接合されている。
【0003】
フィラメントは、流れる電流により生じる熱で加熱され、電子(熱電子)を陽極ターゲットに放出する。電子の放出に伴って繰り返し加熱されることで、フィラメントと支持端子との接合部分の強度が低下する。したがって、フィラメントは、支持端子との接合部分からずれる可能性がある。フィラメントがずれることで、陽極ターゲット上の電子の焦点の位置がずれる可能性がある。また、フィラメントが陰極カップに接触する可能性がある(フィラメントタッチ)。フィラメントが陰極カップに接触した場合、フィラメントに電流が流れなくなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-241685号公報
【文献】特開2005-302368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、このような点に鑑みなされたもので、陰極のフィラメントのずれを防止できるX線管及びX線管の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係るX線管は、電子を放出するコイルと、前記コイルから先端部まで延長し、前記先端部に角部を有する脚部とを備えるフィラメントと、隙間を有し、前記隙間が開口する開口部と前記開口部と反対側の前記隙間の端部に位置する底部とを有する支持端子と、前記フィラメントと前記支持端子とを収容し、前記支持端子が接続されている陰極カップとを備える陰極を備え、前記支持端子は、前記隙間内で突出し、前記脚部の前記先端部より前記底部側に位置し、前記脚部の前記角部に接合されている凸部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るX線管の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、陰極の正面図の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、陰極の一部の構造を示す部分断面図である。
【
図4】
図4(a)は、電子放出源の一例の断面の拡大図であり、
図4(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図5】
図5(a)は、第1端子部及び第2端子部の断面がそれぞれ矩形形状に形成されている支持端子の一例を示す断面図であり、
図5(b)は、第1端子部及び第2端子部の断面の一部がそれぞれ脚部の形状に沿って形成されている支持端子の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、フィラメントと、支持端子とが設置されている治具の一例を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)は、治具に設置されているフィラメントと支持端子とを示す断面図であり、
図7(b)は、脚部の先端部の断面の拡大図である。
【
図8】
図8(a)は、治具に設置されたフィラメント及び支持端子を模式的に示す断面図であり、
図8(b)は、脚部の先端部の断面の拡大図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係るX線管1の電子放出源の製造方法の一例のフローチャートである。
【
図10】
図10(a)は、変形例1に係るX線管の電子放出源の一例の断面の拡大図であり、
図10(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図11】
図11(a)は、変形例1に係るX線管の電子放出源の一例の断面の拡大図である。
図11(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図12】
図12(a)は、変形例2に係るX線管の電子放出源の一例の断面の拡大図である。
図12(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図13】
図13(a)は、変形例3に係るX線管の電子放出源の一例の断面の拡大図である。
図13(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図14】
図14は、変形例4に係るX線管の電子放出源の構造の一例を示す断面図である。
【
図15】
図15(a)は、第1端子部及び第2端子部の断面がそれぞれ矩形形状に形成されている支持端子の一例を示す断面図であり、
図15(b)は、第1端子部及び第2端子部の断面の一部がそれぞれ脚部の形状に沿って形成されている支持端子の一例を示す断面図である。
【
図16】
図16(a)は、変形例5に係るX線管の電子放出源の一例の断面の拡大図である。
図16(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図17】
図17は、フィラメントと、支持端子とが設置されている治具の一例を示す断面図である。
【
図18】
図18(a)は、治具に設置されているフィラメントと支持端子とを示す断面図であり、
図18(b)は、脚部の先端部の断面の拡大図である。
【
図19】
図19(a)は、治具に設置されたフィラメント及び支持端子を模式的に示す断面図であり、
図19(b)は、脚部の先端部の断面の拡大図である。
【
図20】
図20は、変形例6に係るX線管の支持端子の一部の構造の一例を示す断面図である。
【
図21】
図21(a)は、電子放出源の一例の断面の拡大図であり、
図21(b)は、脚部の先端部の一例の断面の拡大図である。
【
図22】
図22(a)は、治具に設置されているフィラメントと支持端子とを示す断面図であり、
図22(b)は、脚部の支持部の断面の拡大図である。
【
図23】
図23(a)は、治具に設置されたフィラメント及び支持端子を模式的に示す断面図であり、
図23(b)は、脚部の支持部の断面の拡大図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態に係るX線管の電子放出源の製造方法の一例のフローチャートである。
【
図25】
図25(a)は、比較例の電子放出源の一例の断面の拡大図であり、
図25(b)は、比較例の脚部の固定部の一例の断面の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るX線管1の一例を示す模式図である。第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交している。
X線管1は、真空外囲器10と、陽極構体20と、陰極構体30とを備えている。真空外囲器10は、例えば、ガラス製のガラスバルブで形成されている。真空外囲器10は、真空雰囲気に維持されている内部に、陽極構体20と、陰極構体30とを含む。
【0009】
陽極構体20は、略傘状の陽極ターゲット(ターゲットディスク)21と、回転機構23とを備えている。陽極ターゲット21は、傘状の略円板形状に形成されている。陽極ターゲット21は、傘状に形成された表面に、電子(電子ビーム)が衝撃することでX線を放射する。陽極ターゲット21は、回転機構23によって支持されている。陽極ターゲット21は、回転機構23の回転に従って回転する。陽極ターゲット21は、X線を放射するターゲット層と、ターゲット層を支持するターゲット基体とから構成されている。ターゲット層は、例えば、タングステンで形成されている。ターゲット基体は、例えば、モリブデン合金(TZM)で形成されている。また、図示しないステータコイルが、真空外囲器10の外側に配設されている。このステータコイルは、電源(図示せず)から電流を供給されることにより磁場を発生させ、発生させた磁場により回転機構23を駆動させる。
【0010】
陰極構体30は、陰極31と、陰極支持部33とを備えている。陰極31は、真空外囲器10内で、陽極ターゲット21に対向している。陰極31は、高電圧が印加されることで電子(電子ビーム)を陽極ターゲット21に向けて放出する。
【0011】
図2は、陰極31の正面図の一例を示す図である。
図2には、第3方向ZからX-Y平面を見た場合の陰極31が示されている。
陰極31は、陰極カップ(収束電極)310と、電子を放出する少なくとも1つの電子放出源、例えば、2つの電子放出源321R、321Lとを備えている。
陰極カップ310は、電子放出源から放出される電子を制御する。例えば、陰極カップ310は、電流が供給されることで、電子放出源321R及び電子放出源321Lから放出される電子を陽極ターゲット21上の焦点に収束させる。
図2に示した例では、陰極カップ310には、電子放出源を収容する2つの溝部331R、331Lが形成されている。電子放出源321R及び電子放出源321Lは、それぞれ、溝部331R及び溝部331Lの底部の収納溝内に設けられている。電子放出源321R及び電子放出源321Lは、それぞれ、陽極ターゲット21に向かって電子を放出する。
【0012】
図3は、陰極31の一部の構造を示す部分断面図である。
図3は、第1方向XからY-Z平面を見た場合の陰極31の部分断面図を示している。
図3には、
図2に示したIII-III線に沿って切断した陰極カップ310の一部の断面と、電子放出源321Rとが模式的に示されている。説明の便宜上、
図3には、電子放出源321Rのみを示しているが、電子放出源321Lにも同等の構成が適用できる。以下で、電子放出源321Rを用いて説明するが、電子放出源321Lにも電子放出源321Rと同じ説明ができる。
【0013】
陰極カップ310の溝部331Rには、孔HL11と孔HL12とが形成されている。
図3に示すように、孔HL11と孔HL12とは、離間している。孔HL11及び孔HL12は、それぞれ、第3方向Zに延長している。筒部TB11及び筒部TB12は、それぞれ、孔HL11及び孔HL12内にカシメやろう付け等の方法により設けられている。筒部TB11、TB12は、絶縁性の材料で円筒形状に形成されている。スリーブSL11及びスリーブSL12は、それぞれ、筒部TB11及び筒部TB12内にカシメやろう付け等の方法により設置されている。スリーブSL11、SL12は、円筒形状に形成されている。
【0014】
電子放出源321Rは、フィラメントFL1と、一対の支持端子(ターミナル、又はアンカー部)401F、401Bとを備えている。フィラメントFL1は、コイル部C1と、コイル部C1から延長する一対の脚部LG11、LG12とを備えている。フィラメントFL1は、例えば、タングステン又はタングステンを主成分とする合金で形成されている。コイル部C1は、電流が供給されることで加熱され、電子(熱電子)を放出する。コイル部C1は、陰極カップ310の溝部331Rの内側の表面から離間している。
図3に示した例では、コイル部C1は、溝部331Rの底面に平行に設けられ、第2方向Yに延長している。脚部LG11は、コイル部C1の一端部から一方向、例えば、孔HL11内に向かって第3方向Zに延長している。脚部LG12は、脚部LG11と反対側に位置するコイル部C1の他端部から一方向、例えば、孔HL12内に向かって第3方向Zに延長している。脚部LG11、LG12は、棒状、例えば、円柱形状に形成されている。脚部LG11及び脚部LG12は、それぞれ、支持端子401F及び支持端子401Bにより支持されている。支持端子401F及び支持端子401Bは、図示しない電源から供給される電流をフィラメントFL1のコイル部C1に通電する。支持端子401F及び支持端子401Bは、例えば、鉄、鉄を主成分とする合金、ニオブ、又は、ニオブを主成分とする合金で形成されている。支持端子401F及び支持端子401Bは、それぞれ、スリーブSL11及びスリーブSL12に固定されている。支持端子401F及び支持端子401Bは、それぞれ、スリーブSL11及びスリーブSL12を介して、筒部TB11及び筒部TB12により陰極カップ310と電気的に絶縁されている。つまり、電子放出源321Rは、陰極カップ310と電気的に絶縁されている。
【0015】
図4は、
図3に示したIV-IVに沿って切断した電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図4には、第2方向YからX-Z平面を見た場合の電子放出源321Rの断面の一例を示している。
図4において、電子放出源321R以外の陰極31の構造については省略している。説明の便宜上、フィラメントFL1の脚部LG11及び支持端子401Fの構成のみを示しているが、脚部LG12及び支持端子401Bにも同等の構成が適用できる。したがって、以下では脚部LG11及び支持端子401Fを用いて説明するが、脚部LG12及び支持端子401Bにも脚部LG11及び支持端子401Fと同じ説明ができる。
図4(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図4(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
【0016】
支持端子401Fは、隙間(スリット)CL11が形成されている。
図4(a)に示す例では、支持端子401Fは、隙間CL11がY-Z平面に水平に形成されている。すなわち、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に水平に隙間CL11が形成されている。隙間CL11は、一方向に向かって開口する開口部AP1を有している。以下で、隙間CL11を基点として、支持端子401Fの一方の部分を第1端子部41Faと称し、もう一方の部分を第2端子部41Fbと称する。支持端子401Fにおいて、開口部AP1の方向を開口部側と称する。開口部側と反対方向の隙間CL11の端部に位置する支持端子401Fの一部を底部と称する。支持端子401Fにおいて、底部の方向を底部側と称する。また、第1方向Xにおいて、隙間CL11に向かう方向を内側と称し、内側と反対方向を外側と称する。第1端子部41Faの内側の表面を内面IN1と称し、第1端子部41Faの外側の表面を外面OU1と称する。第2端子部41Fbの内側の表面を内面IN2と称し、第2端子部41Fbの外側の表面を外面OU2と称する。なお、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面、例えば、Y-Z平面に水平に隙間CL11が形成されていなくとも良い。例えば、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面、例えば、Y―Z平面に対して斜めに隙間CL11が形成されていても良い。外面OU2は、外面OU1と隙間CL11を間に挟んで反対側に位置する。また、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して斜めに設けられていても良い。
【0017】
支持端子401Fは、外側の表面で対となる窪みを備えている。
図4(a)に示す例では、支持端子401Fは、一対の窪み412、414を備えている。窪み412及び窪み414は、それぞれ、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に形成されている。窪み412は、隙間CL11を間に挟んで窪み414に対向している。脚部LG11は、コイル部C1からコイル部C1と反対側の端部(以下、先端部と称する)TP11まで延長している。
図4(a)に示す例では、脚部LG11の先端部TP11は、隙間CL11で窪み412と窪み414との間に位置している。
【0018】
支持端子401Fは、隙間CL11内で突出する凸部を備えている。
図4(b)に示す例では、支持端子401Fは、隙間CL11内で対向する2つの凸部PR1、PR2を有している。凸部PR1は、支持端子401Fの第1端子部41Faの内面IN1が内側に突出して形成されている。凸部PR1と同様に、凸部PR2は、支持端子401Fの第2端子部41Fbの内面IN2が内側に突出して形成されている。
図4(b)に示す例では、凸部PR1と凸部PR2とは、第1方向Xにおいて、隙間CL11の幅INTよりも小さい距離で離間している。例えば、凸部PR1と凸部PR2とは、脚部LG11の径(又は、第1方向Xの幅)LD1よりも小さい距離で離間している。また、凸部PR1及び凸部PR2は、第3方向Zにおいて、底部BT1から開口部側に離間している。なお、凸部PR1と凸部PR2とは、離間しているとしたが、接触(圧接、圧着)していても良いし、接合(溶接)されていても良い。また、凸部PR1及び凸部PR2は、異なる形状であっても良い。例えば、凸部PR1は、凸部PR2よりも内側に突出していても良い。例えば、凸部PR1及び凸部PR2の少なくとも一方が、対向する内面に接触していても良いし、接合されていても良い。
【0019】
脚部LG11は、先端部TP11に角部を有している。脚部LG11は、先端部TP11の角部が凸部PR1、PR2及び内面IN1、IN2に固定されている。ここで、角部は、2つ以上の平面及び線が角度を有して交差する部分である。角部において、2つ以上の平面及び線が角度を有して交差する交点を “角”と称する場合もある。例えば、角部は、脚部LG11の先端部TP11の底面から側面に亘る部分である。以下で、説明の便宜上、脚部LG11の角部において、内面IN1側を角部CP1と称し、内面IN2側を角部CP2と称する。
図4(b)に示す例では、脚部LG11の角部CP1は、接合部CN1を介して、凸部PR1及び第1端子部41Faの内面IN1に固定されている。角部CP1と同様に、角部CP2は、接合部CN2を介して、凸部PR2及び第2端子部41Fbの内面IN2に固定されている。このとき、例えば、凸部PR1は、先端部TP11よりも底部側に位置し、角部CP1の底面側に接合されている。凸部PR1と同様に、凸部PR2は、先端部TP11よりも底部側に位置し、角部CP2の底面側に接合されている。内面IN1は、角部CP1の側面側に接合されている。内面IN2は、角部CP2の側面側に接合されている。なお、脚部LG11の角部CP1は、接合部CN1を介して、少なくとも凸部PR1及び第1端子部41Faの内面IN1のいずれか一方に固定されていれば良い。脚部LG11の角部CP2は、接合部CN2を介して、少なくとも凸部PR2及び第2端子部41Fbの内面IN2のいずれか一方に固定されていれば良い。
【0020】
接合部CN1及び接合部CN2は、それぞれ、導電性の金属部材で形成されている。例えば、接合部CN1は、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1(及び凸部PR1)との内の少なくとも1つが溶融して形成されている。接合部CN2は、脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの内面IN2(及び凸部PR2)との内の少なくとも1つが溶融して形成されている。
図4(b)に図示した例では、接合部CN1と接合部CN2は、互いに離間している。なお、接合部CN1は、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1(及び凸部PR1)との内の少なくとも1つと一体で形成されていても良い。接合部CN2は、脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの内面IN2(及び凸部PR2)との内の少なくとも1つと一体で形成されていても良い。
【0021】
図25は、比較例の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図25には、
図4と同様に、第2方向YからX-Z平面を見た場合の電子放出源321Rの断面の一例を示している。
図25に示す比較例の電子放出源321Rは、
図4に示した本実施形態の電子放出源321Rとほぼ同等の構成であるため、本実施形態の電子放出源321Rと同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
図25(a)は、比較例の電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図25(b)は、比較例の脚部LG11の固定部AA11の一例の断面の拡大図である。
【0022】
図25(a)に示す例では、脚部LG11の固定部AA11が、窪み412と窪み414との間に位置している。固定部AA11は、先端部TP11よりもコイル部C1側に位置する脚部LG11の部分である。そのため、脚部LG11の先端部TP11は、隙間CL11において、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲よりも底部側に位置している。
【0023】
図25(b)に示す例では、脚部LG11の固定部AA11は、接合部AD1を介して内面IN1に固定され、且つ接合部AD2を介して内面IN2に固定されている。接合部AD1は、脚部LG11の固定部AA11と支持端子401Fの内面IN1との内の少なくとも一方が溶融して形成されている。接合部AD2は、脚部LG11の固定部AA11と支持端子401Fの内面IN2との内の少なくとも一方が溶融して形成されている。接合部AD1及び接合部AD2は、それぞれ、導電性の金属部材で形成されている。なお、接合部AD1は、脚部LG11の固定部AA11及び支持端子401Fの内面IN1の内の少なくとも一方と一体で形成されていても良い。接合部AD2は、脚部LG11の固定部AA11及び支持端子401Fの内面IN2の内の少なくとも一方と一体で形成されていても良い。
【0024】
比較例において、支持端子401Fは、製造時に、溶接、例えば、抵抗溶接(スポット溶接)により脚部LG11に圧接(又は、圧着)される。抵抗溶接は、複数の被溶接材を重ね、重ねた複数の被溶接材の溶接する部分を一対の電極で挟み、一対の電極により溶接する部分に圧力を加えながら電流を供給し、電流を供給することによって溶接する部分の接触抵抗に発生するジュール熱で溶融接合させる接合方法である。抵抗溶接により支持端子401Fを脚部LG11に接合する場合、支持端子401Fは、一対の電極により外側から固定部AA11の位置に対応する部分を挟まれ、この部分に力が加えられ、電流が供給される。支持端子401Fの内面IN1、IN2は、それぞれ、一対の電極により加えられた力により脚部LG11の固定部AA11に向かって突出し、脚部LG11の固定部AA11に押し当てられる。このとき、例えば、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、脚部LG11の固定部AA11に線接触する。この場合、一対の電極により支持端子401Fに加えられた力は、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2がそれぞれ脚部LG11の固定部AA11と線接触している部分で分散する。すなわち、この線接触している部分に生じる応力が小さくなる。そのため、支持端子401Fの内面IN1、IN2が、それぞれ、脚部LG11の固定部AA11に十分に圧着されない。そのため、一対の電極により供給された電流は、支持端子401Fの内面IN1、IN2が脚部LG11の固定部AA11に線接触している部分で分散する。すなわち、この線接触している部分の電流密度が、小さくなる。そのため、支持端子401Fの内面IN1、IN2と脚部LG11の固定部AA11とは、十分な強度で接合されない可能性がある。
【0025】
一方、本実施形態において、支持端子401Fは、製造時に、溶接、例えば、抵抗溶接により脚部LG11に接合(溶接)される。抵抗溶接により支持端子401Fが脚部LG11に接合される場合、支持端子401Fは、一対の電極により外側から脚部LG11の先端部TP11の位置に対応する部分を挟まれ、この部分に力が加えられ、電流が供給される。支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、一対の電極により加えられた力により脚部LG11の先端部TP11に向かって突出し、角部CP1、CP2に押し当てられる。このとき、例えば、内面IN1は、角部CP1の角に押し当てられ、角部CP1を覆うように塑性変形する。内面IN1と同様に、内面IN2は、角部CP2の角に押し当てられ、角部CP2を覆うように塑性変形する。このとき、内面IN1が塑性変形することで、凸部PR1が底部側に形成される。内面IN2が塑性変形することで、凸部PR2が形成される。この場合、一対の電極により支持端子401Fに加えられた力は、支持端子401Fの内面IN1、IN2が先端部TP11の角部CP1、CP2の角とそれぞれ接触する部分に集中する。すなわち、この接触している部分に生じる応力が大きくなる。そのため、支持端子401Fの内面IN1、IN2が、それぞれ、脚部LG11の角部CP1、CP2に十分に圧着する。つまり、支持端子401Fの内面IN1、IN2は、それぞれ、線接触する場合と比較して脚部LG11の角部CP1、CP2の狭い範囲で十分に圧着する。そのため、一対の電極により供給された電流は、支持端子401Fの内面IN1、IN2が先端部TP11の角部CP1、CP2に接触している部分に集中して流れる。すなわち、この接触している部分の電流密度が、大きくなる。そのため、支持端子401Fの内面IN1、IN2(及び凸部PR1、PR2)と脚部LG11の角部CP1、CP2とは、十分な強度で接合され得る。
【0026】
図5は、
図4に示したV-Vに沿って切断した支持端子401Fの一部の構造のいくつかの例を示す断面図である。
図5には、第3方向ZからX-Y平面を見た場合の支持端子401Fの断面のいくつかの例を示している。
図5(a)は、第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面がそれぞれ半円形状に形成されている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
図5(b)は、第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面がそれぞれ扇形状に形成されている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
【0027】
図5(a)に示す例では、支持端子401Fの第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面は、それぞれ、半円形状に形成されている。支持端子401Fの第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbは、脚部LG11を間に挟んで対向している。
図5(a)に示す例では、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に垂直な方向、例えば、脚部LG11の第1方向Xへの脚部LG11のずれ等を防止できる。
図5(b)に示す例では、支持端子401Fの第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面は、それぞれ、扇形状に形成されている。支持端子401Fの第1端子部41Faの内面IN1の一部と、第2端子部41Fbの内面IN2の一部とは、それぞれ、脚部LG11の外周形状に沿ってアーチ状に形成されている。支持端子401Fにおいて、アーチ状に形成されていない内面IN1の一部と内面IN2の一部とは、平行に対向している。また、アーチ状に形成されていない内面IN1の一部と内面IN2の一部とは、脚部LG11の径LD1よりも小さい距離で離間している。支持端子401Fの第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbは、脚部LG11を挟んで対向している。脚部LG11は、アーチ状に形成されている内面IN1の一部及び第2端子部41Fbの内面IN2の一部の間に位置している。
図5(b)に示す例では、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に垂直な方向、例えば、第1方向Xへの脚部LG11のずれ等を防止できる。加えて、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に水平な方向、例えば、第2方向Yへの脚部LG11のずれ等も防止できる。
図5(a)及び
図5(b)に示す支持端子401Fの断面形状は、一例であり、これ以外の断面形状であっても良い。例えば、支持端子401Fの断面は、矩形形状に形成されていても良い。また、支持端子401Fの断面において、隙間CL11が斜めに形成されていても良い。
【0028】
以下で、
図6乃至
図8を参照して、本実施形態に係る電子放出源321Rの製造方法の一例について説明する。説明の便宜上、以下で、脚部LG11及び支持端子401Fを用いて製造方法を説明するが、脚部LG12及び支持端子401Bにも脚部LG11及び支持端子401Fと同じ製造方法が適用できる。また、電子放出源321Rの製造方法のみについて説明するが、電子放出源321Lにも電子放出源321Lの製造方法と同じ製造方法が適用できる。
【0029】
図6は、フィラメントFL1と、支持端子401Fとが設置されている治具JGの一例を示す断面図である。治具JGは、台座PEDと、電極ELと、支持板SBと、を備えている。以下で、台座PED側を下(下側)と称し、支持板SB側を上(上側)と称する。台座PEDは、表面SF1上に対象物を設置する。電極ELは、台座PEDの表面SF1から上方向に特定の距離離れた位置に設けられている。電極ELは、対となる少なくとも一対の電極、例えば、一対の電極EL1及びEL2を含む。一対の電極EL1及び電極EL2とは、対向して設けられている。一対の電極EL1及び電極EL2は、台座PEDの表面SF1に対して平行な方向に可動する。また、一対の電極EL1及び電極EL2は、それぞれ、図示しない正電源及び負電源に接続されている。そのため、一対の電極EL1及び電極EL2には、電源から電圧が印加されることで電流が供給される。支持板SBは、平板形状に形成されている。支持板SBは、貫通孔SHが形成されている。支持板SBは、台座PEDの表面SF1から上方向に任意の距離離れた位置に設置されている。例えば、支持板SBは、フィラメントFL1の脚部LG11の先端部TP11が一対の電極EL1及び電極EL2の間に位置するように設置されている。なお、一対の電極EL1及び電極EL2は、台座PEDに対して上下に可動可能に構成されていても良い。また、治具JGにおいて、台座PEDは、上下に可動可能に構成されていても良い。
【0030】
図6に示すように、支持端子401Fは、台座PEDの表面SF1上に設置される。フィラメントFL1は、支持板SBに設置される。フィラメントFL1が支持板SBに設置された場合、コイル部C1は、支持板SBの表面SF2で支持されている。脚部LG11は、支持板SBの貫通孔SHを挿入されている。このとき、脚部LG11の先端部TP11は、一対の電極EL1及び電極EL2の間に位置している。例えば、脚部LG11の角部CP1、CP2は、一対の電極EL1及び電極EL2の間に位置している。例えば、脚部LG11の先端部TP11は、支持端子401Fの底部BT1から開口部側に離間している。この場合、先端部TP11が支持端子401の底部BT1から離間していることで、一対の電極EL1及びEL2により支持端子401Fと脚部LG11とを効率的に圧着することができる。
【0031】
図7は、電極ELにより力を加えられている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
図7(a)は、治具JGに設置されているフィラメントFL1と支持端子401Fとを示す断面図である。
図7(b)は、脚部LG11の先端部TP11の断面の拡大図である。
図7(a)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2は、支持端子401Fを両側から挟み、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に力を加える。電極EL1及び電極EL2により、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2には、窪み412及び窪み414が、それぞれ、形成される。
【0032】
図7(b)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2から加えられた力により、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、脚部LG11の先端部TP11に向かって突出し、角部CP1及び角部CP2の角に押し当てられる。そのため、脚部LG11の角部CP1の角に応力が集中することにより、支持端子401Fの内面IN1は、角部CP1を覆うように塑性変形する。脚部LG11の角部CP2の角に応力が集中することにより、支持端子401Fの内面IN2は、角部CP2を覆うように塑性変形する。支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2が塑性変形することで、凸部PR1及び凸部PR2が、それぞれ、脚部LG11の先端部TP11よりも底部側に形成される。そのため、凸部PR1及び凸部PR2は、脚部LG11のずれ、例えば、隙間CL11での底部側へのずれ等を防止できる。
【0033】
図8は、脚部LG11の先端部TP11に接合された支持端子401Fを示す断面図である。
図8(a)は、治具JGに設置されたフィラメントFL1及び支持端子401Fを模式的に示す断面図である。
図8(b)は、脚部LG11の先端部TP11の断面の拡大図である。
図8(a)に示す例では、一対の電極EL1及び電極EL2は、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に圧力を加えながら電流を供給する。このとき、支持端子401Fの内面IN1、IN2及び凸部PR1、PR2と脚部LG11の角部CP1、CP2との間に十分な電流密度で電流が流れる。そのため、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1との間に溶接に十分なジュール熱が生じる。脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2との間に溶接に十分なジュール熱が生じる。そのため、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1を覆うように、角部CP1に溶融接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2は、脚部LG11の角部CP2を覆うように、角部CP2に溶融接合される。例えば、
図8(b)に示すように、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1との間には、接合部CN1が、脚部LG11の角部CP1を覆うように形成される。脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの凸部PR2及び内面IN2との間には、接合部CN2が、脚部LG11の角部CP2を覆うように形成される。接合部CN1は、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1や脚部LG11の角部CP1の内の少なくとも1つが溶融して形成される。接合部CN2は、支持端子401Fの凸部PR2及び内面IN2や脚部LG11の角部CP2の内の少なくとも1つが溶融して形成される。このように、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、角部CP1を覆っているために、十分な強度で接合される。支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2は、角部CP2を覆っているために、十分な強度で接合される。そのため、支持端子401Fは、脚部LG11のずれ、例えば、隙間CL11での開口部側へのずれ等を防止できる。
【0034】
図9は、本実施形態に係るX線管1の電子放出源321Rの製造方法の一例のフローチャートである。
はじめに、支持端子401Fが、治具JGに設置される(S901)。フィラメントFL1の脚部LG11が、支持端子401Fの隙間CL11に挿入される(S902)。このとき、脚部LG11の先端部TP11は、一対の電極EL1及びEL2により溶接可能な位置に位置している。
【0035】
支持端子401Fは、一対の電極EL1及びEL2により、脚部LG11の先端部TP11に圧接(圧着)される(S903)。このとき、一対の電極EL1及びEL2に加えられた力により、内面IN1は、脚部LG11の角部CP1の角に押し当てられ、角部CP1を覆うように塑性変形する。また、内面IN2は、脚部LG11の角部CP2の角に押し当てられ、角部CP2を覆うように塑性変形する。このとき、一対の電極EL1及びEL2に加えられた力により、凸部PR1が、支持端子401Fの内面IN1が隙間CL11の内側に突出し、脚部LG11の先端よりも底部側に形成される。凸部PR2は、支持端子401Fの内面IN2が隙間CL11の内側に突出し、脚部LG11の先端よりも底部側に形成される。
【0036】
この状態で、一対の電極EL1及びEL2により、支持端子401Fは、脚部LG11の先端部TP11に溶接される(S904)。このとき、一対の電極EL1及びEL2から供給された電流により発生した熱で、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1に溶融接合する。一対の電極EL1及びEL2から供給された電流により発生した熱で、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2は、脚部LG11の角部CP2に溶融接合する。脚部LG11の角部CP1は、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1に固定される。脚部LG11の角部CP2は、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2に固定される。支持端子401F及び脚部LG11と同様に、脚部LG12の角部が、支持端子401Bの内面に固定される。その後、電子放出源321Rの製造工程が終了する。
【0037】
本実施形態によれば、X線管1は、陰極31において、フィラメントFL1の脚部LG11の角部CP1及びCP2が、それぞれ、接合部CN1及びCN2を介して、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1と内面IN2及び凸部PR2とに固定されている。製造時に、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、一対の電極EL1及び電極EL2で支持端子401Fに加えられた力が脚部LG11の角部CP1及び角部CP2の角に集中するために、角部CP1及びCP2の角で塑性変形し、角部CP1及びCP2を覆うように変形する。このとき、内面IN1及び内面IN2がそれぞれ塑性変形することで、凸部PR1及び凸部PR2が、それぞれ、形成される。支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1と内面IN2及び凸部PR2とは、それぞれ、角部CP1及び角部CP2に十分な強度で接合される。そのため、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11のずれを防止できる。その結果、X線管1は、フィラメントFL1の陰極カップ310への接触等を防止できる。
【0038】
次に、変形例および他の実施形態に係るX線管及びX線管の製造方法について説明する。以下に説明する変形例および他の実施形態において、前述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に詳細に説明する。
【0039】
(変形例1)
第1実施形態の変形例1のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、脚部LG11の角部CP1、CP2が隙間CL11で窪み412及び窪み414で挟まれた範囲以外に位置している点が第1実施形態のX線管1と相違する。
【0040】
図10は、第1実施形態の変形例1に係るX線管1の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図10において、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲の開口部側の境界位置を位置UPとし、底部側の境界位置を位置BPとする。
図10(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図10(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
脚部LG11の先端部TP11は、支持端子401Fにおいて、一対の電極で挟まれた範囲(窪み412及び窪み414で挟まれた範囲)より、開口部側に位置している。
図10(a)に示す例では、脚部LG11の先端部TP11は、隙間CL11において、位置UPの付近に位置している。
【0041】
図10(b)に示す例では、脚部LG11の角部CP1、CP2は、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲よりも開口部側に位置している。例えば、脚部LG11の角部CP1、CP2は、位置UPよりも開口部側に位置している。凸部PR1及び凸部PR2は、それぞれ、
図4に示した凸部PR1及び凸部PR2よりも長く形成されている。この場合でも、十分な電流密度で電流が供給されることで、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1に十分な強度で接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2も、脚部LG12の角部CP2に十分な強度で接合される。
【0042】
図11は、第1実施形態のX線管1に係る変形例1の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図11において、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲の開口部側の境界位置を位置UPとし、底部側の境界位置を位置BPとする。
図11(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図11(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
脚部LG11の先端部TP11は、支持端子401Fにおいて、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲で底部側に位置している。
図11(a)に示す例では、脚部LG11の先端部TP11は、隙間CL11において、位置BPの付近に位置している。
【0043】
図11(b)に示す例では、脚部LG11の角部CP1、CP2の一部は、窪み412及び窪み414で挟まれた範囲よりも底部側に位置している。例えば、脚部LG11の角部CP1、CP2の一部は、位置BPよりも底部側に位置している。凸部PR1及び凸部PR2は、それぞれ、
図4に示した凸部PR1及び凸部PR2よりも短く形成されている。この場合でも、十分な電流密度で電流が供給されることで、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1に十分な強度で接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2も、脚部LG12の角部CP2に十分な強度で接合される。
【0044】
変形例1によれば、X線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321RのフィラメントFL1の脚部LG11の角部CP1、CP2が隙間CL11で窪み412及び窪み414で挟まれた範囲以外に位置している。この場合でも、十分な電流密度で電流が供給されることで、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1に十分な強度で接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2も、脚部LG11の角部CP2に十分な強度で接合される。そのため、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11のずれを防止できる。
【0045】
(変形例2)
第1実施形態の変形例2のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、支持端子401Fの凸部PR1と凸部PR2とが接合されている点が前述のX線管1と相違する。
【0046】
図12は、第1実施形態の変形例2に係るX線管の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図12(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図12(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
図12(a)に示す例では、脚部LG11の先端部TP11は、隙間CL11で窪み12及び窪み414の間に位置している。
図12(b)に示す例では、支持端子401Fの凸部PR1と凸部PR2とは接合されている。また、接合部CN1と接合部CN2とは、脚部LG11の底面と凸部PR1及び凸部PR2との間で接合されている。脚部LG11は、凸部PR1及び凸部PR2と接合される範囲が前述の実施形態の脚部LG11よりも大きくなる。脚部LG11と内面IN1、IN2及び凸部PR1、PR2とは、接合部CN1及び接合部CN2を介して十分な強度で接合される。
【0047】
変形例2によれば、X線管1は、支持端子401Fの凸部PR1と凸部PR2とが接合されている。脚部LG11の角部CP1は、接合部CN1を介して凸部PR1及び内面IN1に接合されている。脚部LG11の角部CP2は、接合部CN2を介して凸部PR1及び内面IN2に接合されている。接合部CN1と接合部CN2とは、脚部LG11の底面と凸部PR1及び凸部PR2との間で接合されている。そのため、脚部LG11と内面IN1、IN2及び凸部PR1、PR2とは、接合部CN1及び接合部CN2を介して十分な強度で接合される。したがって、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11のずれを防止できる。
【0048】
(変形例3)
第1実施形態の変形例3のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2が平面状に形成されている点が前述のX線管1と相違する。
図13は、第1実施形態の変形例3に係るX線管の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図13(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図13(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
【0049】
図13(a)に示す例では、支持端子401Fは、外面OU1及び外面OU2が平面状に形成されている。
図13(b)に示す例では、脚部LG11の角部CP1は、接合部CN1を介して、支持端子401Fの凸部PR1及び内面IN1に固定されている。また、脚部LG11の角部CP2は、接合部CN2を介して、支持端子401Fの凸部PR2及び内面IN2に固定されている。
【0050】
変形例3によれば、X線管1は、支持端子401Fの外側の表面が平面状に形成されている。この場合でも、十分な電流密度で電流が供給されることで、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、脚部LG11の角部CP1に十分な強度で接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2も、脚部LG11の角部CP2に十分な強度で接合される。そのため、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11のずれを防止できる。
【0051】
(変形例4)
第1実施形態の変形例4のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、支持端子401Fの向きが前述のX線管1と相違する。
図14は、第1実施形態の変形例4に係るX線管1の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図14には、第2方向YからX-Z平面を見た場合の電子放出源321Rの断面の一例を示している。
図14に示す例では、支持端子401Fは、隙間CL11がX-Z平面に水平に設けられている。すなわち、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に垂直に隙間CL11が設けられている。例えば、
図14に示す支持端子401Fは、
図4に示す支持端子401Fを第3方向Zに延長する軸周りに90度回転させて設けられている。なお、
図14に示す支持端子401Fは、
図4に示す支持端子401Fを第2方向Yに延長する軸周りに90度以外で回転させて設けられていても良い。
【0052】
図15は、
図14に示したXV-XVに沿って切断した支持端子401Fの一部の構造のいくつかの例を示す断面図である。
図15には、第3方向ZからX-Y平面を見た場合の支持端子401Fの断面のいくつかの例を示している。
図15(a)は、第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面がそれぞれ半円形状に形成されている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
図15(b)は、第1端子部41Fa及び第2端子部41Fbの断面がそれぞれ扇形状に形成されている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
【0053】
図15(a)に示す支持端子401Fの断面は、
図5(a)に示す支持端子401Fの断面を第3方向Zに延長する軸周りに90度回転させた構造である。
図15(b)に示す支持端子401Fの断面は、
図5(b)に示す支持端子401Fの断面を第2方向Yに延長する軸周りに90度回転させた構造である。
図15(a)及び
図15(b)に示した支持端子401Fの断面形状は、一例であり、これ以外の断面形状であっても良い。例えば、支持端子401Fの断面は、矩形形状に形成されていても良い。
【0054】
変形例4によれば、X線管1において、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に垂直に隙間CL11が形成されている。そのため、支持端子401Fは、フィラメントFL1に対して水平な平面に水平な方向、例えば、第2方向Yへの脚部LG11のずれ等を防止できる。
【0055】
(変形例5)
第1実施形態の変形例5のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、フィラメントFL1の脚部LG11と支持端子401Fの内面との間に中間部材IMを備えている点が前述のX線管1と相違する。
図16は、第1実施形態の変形例5に係るX線管1の電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図16(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図16(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
【0056】
図16(a)に示す例では、電子放出源321Rは、フィラメントFL1の脚部LG11と支持端子401Fの内面との間に中間部材IMを備えている。支持端子401Fは、例えば、モリブデン、又はモリブデンを主成分とする合金で形成されている。中間部材IMは、例えば、プラチナ、又はプラチナを主成分とする合金で形成されている。なお、中間部材IMは、例えば、箔、又はメッキで形成されている。
【0057】
図16(b)に示す例では、脚部LG11の角部CP1は、接合部CN1を介して、凸部PR1及び内面IN1に固定されている。脚部LG11の角部CP2は、接合部CN2を介して、凸部PR2及び内面IN2に固定されている。例えば、接合部CN1は、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1(及び凸部PR1)と中間部材IMとの内の少なくとも1つが溶融して形成されている。接合部CN2は、脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの内面IN2(及び凸部PR2)と中間部材IMとの内の少なくとも1つが溶融して形成されている。
図16(b)に示した例では、中間部材IMは、支持端子401Fの内面と脚部LG11との間の隙間CL11において、接合部CN1、CN2よりも開口部側に設けられている。なお、中間部材IMは、接合部CN1、CN2内に含まれていれば良い。そのため、例えば、
図16(b)に示すように、中間部材IMは、支持端子401Fの内面と脚部LG11との間の隙間CL11において、接合部CN1、CN2よりも開口部側に設けられていなくとも良い。
【0058】
以下で、
図17乃至
図19を参照して、変形例5に係る電子放出源321Rの製造方法の一例について説明する。
図17は、フィラメントFL1と、支持端子401Fとが設置されている治具JGの一例を示す断面図である。
図17に示すように、支持端子401Fは、台座PEDの表面SF1上に設置される。このとき、脚部LG11は、少なくとも先端部TP11に中間部材IMを備えている。脚部LG11の先端部TP11は、一対の電極EL1及び電極EL2の間に位置している。
【0059】
図18は、電極ELにより力を加えられている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
図18(a)は、治具JGに設置されているフィラメントFL1と支持端子401Fとを示す断面図である。
図18(b)は、脚部LG11の先端部TP11の断面の拡大図である。
図18(a)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2は、支持端子401を両側から挟み、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に力を加える。電極EL1及び電極EL2により、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2には、窪み412及び窪み414がそれぞれ形成される。
【0060】
図18(b)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2から加えられた力により、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、中間部材IMを介して、脚部LG11の先端部TP11に向かって突出し、角部CP1及びCP2の角に押し当てられる。そのため、脚部LG11の角部CP1の角に応力が集中することにより、支持端子401Fの内面IN1は、中間部材IMを介して、角部CP1を覆うように塑性変形する。脚部LG11の角部CP2の角に応力が集中することにより、支持端子401Fの内面IN2は、中間部材IMを介して、角部CP2を覆うように塑性変形する。
【0061】
図19は、フィラメントFL1の脚部LG11に接合された支持端子401Fを示す断面図である。
図19(a)は、治具JGに設置されたフィラメントFL1及び支持端子401Fを模式的に示す断面図である。
図19(b)は、脚部LG11の先端部TP11の断面の拡大図である。
図19(a)に示す例では、支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1は、中間部材IMを介して、脚部LG11の角部CP1を覆うように、角部CP1に溶融接合される。また、支持端子401Fの内面IN2及び凸部PR2は、中間部材IMを介して、脚部LG11の角部CP2を覆うように、角部CP2に溶融接合される。例えば、
図19(b)に示すように、脚部LG11の角部CP1と支持端子401Fの内面IN1及び凸部PR1との間には、接合部CN1が、脚部LG11の角部CP1を覆うように形成される。脚部LG11の角部CP2と支持端子401Fの内面2及び凸部PR2との間には、接合部CN2が、脚部LG11の角部CP2を覆うように形成される。接合部CN1は、支持端子401Fの凸部PR1及び内面IN1、脚部LG11の角部CP1や、中間部材IMの内の少なくとも1つが溶融して形成される。接合部CN2は、支持端子401Fの凸部PR2及び内面IN2、脚部LG11の角部CP2や、中間部材IMの内の少なくとも1つが溶融して形成されている。このように、脚部LG11と支持端子401Fの内面との間に中間部材IMが備えられていることで、フィラメントFL1の脚部LG11と支持端子401Fとの溶接性が改善される。
【0062】
変形例5によれば、X線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、脚部LG11と支持端子401Fの内面との間に中間部材IMを備えている。そのため、X線管1は、製造時に、脚部LG11と支持端子401Fの内面との溶接性が改善される。
【0063】
(変形例6)
第1実施形態の変形例6のX線管1は、電子放出部、例えば、電子放出源321Rにおいて、支持端子401Fの断面形状が前述のX線管1と相違する。
図20は、第1実施形態の変形例6に係るX線管1の支持端子401Fの一部の構造の一例を示す断面図である。
図20には、第3方向ZからX-Y平面を見た場合の支持端子401Fの断面の一例を示している。
図20には、支持端子401Fの断面の第1方向Xの幅の中心CNT1を示している。
図20では、中心CNT1を基点として、支持端子401Fの一方の部分を第1端子部41Faとし、もう一方の部分を第2端子部41Fbとする。
図20に示す例では、支持端子401Fの断面は、円形形状の隙間CL11が形成されている。
図20に示す支持端子401Fの断面では、隙間CL11が外側まで延長していない。
図20に示す支持端子401Fの断面は、一例であり、これ以外の断面であっても良い。
【0064】
変形例6によれば、X線管1において、支持端子401Fの断面は、円形形状の隙間CL11が形成されている。そのため、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11の全方向へのずれを防止できる。
【0065】
(第2実施形態)
第2実施形態のX線管1は、電子放出源、例えば、電子放出源321Rにおいて、フィラメントFL1の脚部LG11が複数の部分で支持端子401Fに接合されている点が前述のX線管1と相違する。
図21は、第2実施形態に係る電子放出源321Rの構造の一例を示す断面図である。
図21(a)は、電子放出源321Rの一例の断面の拡大図である。
図21(b)は、脚部LG11の先端部TP11の一例の断面の拡大図である。
【0066】
図21(a)に示す例では、支持端子401Fは、一対の窪み412、414と、一対の窪み416、418とを備えている。窪み416及び窪み418は、それぞれ、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に形成されている。窪み416は、窪み412よりも開口部側の外面OU1に形成されている。窪み418は、窪み414より開口部側の外面OU2に形成されている。窪み416は、隙間CL11を間に挟んで窪み418に対向している。
図21(a)に示す例では、脚部LG11の支持部SP11が、隙間CL11で窪み416と窪み418との間に位置している。脚部LG11において、支持部SP11は、先端部TP11よりもコイル部C1側に位置している。
【0067】
図21(b)に示す例では、脚部LG11の支持部SP11は、接合部WE1を介して内面IN1に固定され、且つ接合部WE2を介して内面IN2に固定されている。接合部WE1は、脚部LG11の支持部SP11と支持端子401Fの内面IN1との内の少なくとも一方が溶融して形成されている。接合部WE2は、脚部LG11の支持部SP11と支持端子401Fの内面IN2との内の少なくとも一方が溶融して形成されている。接合部WE1及び接合部WE2は、それぞれ、導電性の金属部材で形成されている。なお、接合部WE1は、脚部LG11の支持部SP11及び支持端子401Fの内面IN1の内の少なくとも一方と一体で形成されていても良い。接合部WE2は、脚部LG11の支持部SP11及び支持端子401Fの内面IN2の内の少なくとも一方と一体で形成されていても良い。
【0068】
以下、
図22及び
図23を参照して、本実施形態に係る電子放出源321Rの製造方法の一例について説明する。
はじめに、支持端子401Fは、台座PEDの表面SF1上に設置される。フィラメントFL1の脚部LG11の先端部TP11は、一対の電極EL1及び電極EL2の間に位置している。脚部LG11の先端部TP11と支持端子401Fとを接合する工程は、
図6乃至
図8で説明した工程と同等であるので説明を省略する。
【0069】
図22は、電極ELにより力を加えられている支持端子401Fの一例を示す断面図である。
図22(a)は、治具JGに設置されているフィラメントFL1と支持端子401Fとを示す断面図である。
図22(b)は、脚部LG11の支持部SP11の断面の拡大図である。
図22(a)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2は、支持端子401Fを両側から挟み、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に力を加える。電極EL1及び電極EL2により、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU3には、窪み416及び窪み418が、それぞれ、形成される。
【0070】
図22(b)に示すように、一対の電極EL1及び電極EL2から加えられた力により、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、脚部LG11の支持部SP11に向かって突出し、支持部SP11に押し当てられる。このとき、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、脚部LG11の支持部SP11に線接触する。
【0071】
図23は、脚部LG11の支持部SP11に接合された支持端子401Fを示す断面図である。
図23(a)は、治具JGに設置されたフィラメントFL1及び支持端子401Fを模式的に示す断面図である。
図23(b)は、脚部LG11の支持部SP11の断面の拡大図である。
【0072】
図23(a)に示す例では、一対の電極EL1及びEL2は、支持端子401Fの外面OU1及び外面OU2に圧力を加えながら電流を供給する。このとき、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2は、それぞれ、脚部LG11の支持部SP11に溶融接合される。例えば、
図23(b)に示すように、脚部LG11の支持部SP11と支持端子401Fの内面IN1との間には、接合部WE1が、形成される。脚部LG11の支持部SP11と支持端子401Fの内面IN2との間には、接合部WE2が、形成される。接合部WE1は、支持端子401Fの内面IN1や脚部LG11の支持部SP11の内の少なくとも1つが溶融して形成される。接合部WE2は、支持端子401Fの内面IN2や脚部LG11の支持部SP11の内の少なくとも1つが溶融して形成される。
【0073】
図24は、本実施形態に係るX線管1の電子放出源321Rの製造方法の一例のフローチャートである。
図24のフローチャートにおいて、
図9のフローチャートと同等の処理については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を簡略化又は省略する。
はじめに、支持端子401Fが、治具JGに設置され(S901)、フィラメントFL1の脚部LG11が、支持端子401Fの隙間CL11に挿入される(S902)。支持端子401Fは、一対の電極EL1及び電極EL2により、脚部LG11の先端部TP11に圧接(圧着)される(S903)。
この状態で、一対の電極EL1及びEL2により、支持端子401Fは、脚部LG11の先端部TP11に溶接される(S904)。
【0074】
さらに、支持端子401Fは、一対の電極EL1及び電極EL2により、脚部LG11の先端部TP11よりも上側(コイル部C1側)に圧接(圧着)される(S2501)。このとき、内面IN1及びIN2は、それぞれ、一対の電極EL1及びEL2に加えられた力により電極EL1及び電極EL2により支持部SP11に押し当てられながら、一対の電極EL1及びEL2により供給される電流により支持部SP11に溶接される(S2502)。なお、
図24に示したフローチャートでは、支持端子401Fが脚部LG11の先端部TP11に圧接される処理が、支持端子401Fが脚部LG11の先端部TP11の上側に圧接される処理よりも前に実行されているが、この処理よりも後に実行されても良い。また、
図24に示したフローチャートで、S2501の圧着工程の後、S2502の溶接工程を省略しても良い。
【0075】
第2実施形態によれば、X線管1は、フィラメントFL1の脚部LG11の先端部TP11と支持部SP11とで支持端子401Fに接合されている。そのため、X線管1は、フィラメントFL1の脚部、例えば、脚部LG11のずれを防止できる。その結果、X線管1は、フィラメントFL1の陰極カップ310への接触等を防止できる。
【0076】
なお、第2実施形態において、フィラメントFL1の脚部LG11は、支持端子401Fと2ヶ所で固定されているように記載したが、2ヶ所以上で固定されていても良い。また、脚部LG11の支持部SP11は、接合部WE1及び接合部WE2を介して、支持端子401Fの内面IN1及び内面IN2に固定されていなくとも良い。例えば、脚部LG11の支持部SP11は、突出した内面IN1及び内面IN2により挟まれて支持(圧接又は圧着)されていても良い。これは、
図24に示したフローチャートで、S2501の圧着工程の後、S2502の溶接工程を省略した場合に対応する。
【0077】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものでなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具現化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…X線管、10…真空外囲器、20…陽極構体、21…陽極ターゲット、23…回転機構、30…陰極構体、31…陰極、33…陰極支持部、310…陰極カップ、321R、321L…電子放出源、401F、401B…支持端子、FL1…フィラメント。