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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】凍結工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/115 20060101AFI20221220BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E02D3/115
E21D9/06 301E
E21D9/06 301R
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017152473
(22)【出願日】2017-08-07
(65)【公開番号】P2019031810
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-06-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591045965
【氏名又は名称】株式会社精研
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小林 伸司
(72)【発明者】
【氏名】青山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小椋 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡志
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-216865(JP,A)
【文献】特開2007-169967(JP,A)
【文献】特開2009-121174(JP,A)
【文献】特開平09-144486(JP,A)
【文献】特開平10-176488(JP,A)
【文献】特開2018-136285(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0138010(US,A1)
【文献】高志勤,凍結膨張における未凍結領域内の土圧と変異の経時変化,土木学会論文集,第200号,日本,1972年04月,P.49-62
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/115
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に凍土壁を形成しつつ構造物を構築する際の凍結工法であって、
前記凍土壁に作用する荷重として、緩み土圧と水圧と凍結膨張圧作用させた計算結果に基づいて必要凍土厚を設定するようにしたことを特徴とする凍結工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤の安定化、防水層の形成などを図る防護工として、耐力壁や止水壁を凍土壁によって形成する凍結工法が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、耐力壁を凍結工法で構築する場合には、構造計算を行うことにより必要凍土厚を決定する。また、荷重は、通常、土水圧分離型とし、作用土圧の鉛直土圧は全土圧、水平土圧は多少の凍結膨張圧を考慮して静止土圧としている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-264717号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】地盤工学会:地盤工学・実務シリーズ31「地盤改良の調査・設計と施工―戸建住宅から人工島まで―」,pp.160~170,2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、実際の凍土には凍結膨張圧が作用するはずであるが、従来、凍結膨張圧を定量的に求めるのではなく、鉛直土圧では全土圧、水平土圧では静止土圧に含まれるものとして簡易的に必要凍土厚が算定されていた。
【0007】
しかしながら、近年増加している大深度での凍結工法適用工事では、鉛直土圧として全土圧、水平土圧として静止土圧を作用土圧に採用すると過度に安全側の凍土厚算定結果となるケースがあった。また、大きな凍結膨張圧の発生する粘性土を凍結させる場合には、凍結膨張圧を考慮しないと危険側の凍土厚算定結果となるおそれもある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、凍結膨張圧を考慮して、より精度よく必要凍土厚の算定を可能にする凍結工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0010】
本発明の凍結工法は、地盤に凍土壁を形成しつつ構造物を構築する際の凍結工法であって、前記凍土壁に作用する荷重として、緩み土圧と水圧と凍結膨張圧作用させた計算結果に基づいて必要凍土厚を設定するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の凍結工法においては、凍結膨張圧を考慮し、より精度よく必要凍土厚を算定することが可能になり、合理的な凍結工法の施工を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】凍結工法を用いて構築するトンネルの施工方法の一例を示す図である。
図2】凍結工法を用いて構築するトンネルの施工方法の一例を示す図である。
図3】凍結工法を用いて構築するトンネルの一例を示す図である。
図4】凍結工法を用いて構築する分岐・合流部のトンネルの一例を示す図である。
図5】凍結工法を用いて構築するトンネルの施工方法の一例を示す図である。
図6】従来と本発明の必要凍土厚の算出の考え方の違いを比較した図である。
図7】実現場に対して従来と本発明の必要凍土厚を求めた実施例の説明で用いた図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1から図7を参照し、本発明の一実施形態に係る凍結工法について説明する。
【0014】
ここで、本実施形態では、例えば、道路トンネルの分岐・合流部や鉄道トンネルの渡り線部などの大断面トンネルを構築する際の発進・到達時やセグメント切り開き時(シールドトンネルの地中拡幅時)などに対し凍結工法を用いるものとして説明を行う。
但し、本発明の凍結工法の凍結膨張圧算出方法は、土木建築分野において凍結工法を用いるあらゆるケースに適用可能である。
【0015】
はじめに、図1から図4に示すように、道路トンネルの分岐・合流部などの大断面トンネルを構築する際には、例えば、本線シールド1、ランプシールド2(2本の導坑)を横方向に間隔をあけて先行構築するとともに、ランプシールド2を通じ、凍結工法で凍土壁6を形成して地盤の安定化を図りつつ地中立坑3を構築し、この地中立坑3から発進する2本の円周シールドによる発進基地4を構築する。この発進基地4から本線シールド1、ランプシールド2を囲繞するように小径のトンネル掘進機で複数の外殻シールド5を構築する。
【0016】
さらに、図2図5に示すように、凍結工法を用いて凍土壁8を形成しつつ隣り合う外殻シールド5を切り開いて連通させ(凍結管9、切り開き部10)、本線シールド1、ランプシールド2を囲繞する本設覆工7を構築する。そして、本線シールド1から本設覆工で囲まれた地盤を掘削して連通させ、分岐・合流部となる大断面トンネルを構築する。
【0017】
ここで、従来の凍結工法では、図6(a)に示すように、凍結膨張圧を定量的に求めるのではなく、鉛直土圧では全土圧、水平土圧では静止土圧に含まれるものとして簡易的に必要凍土厚を算定していた。このため、大深度での凍結工法適用工事で、鉛直土圧として全土圧、水平土圧として静止土圧を作用土圧に採用すると、過度に安全側の凍土厚算定結果となるケースがあった。また、大きな凍結膨張圧が発生する粘性土を凍結させる場合にはこの凍結膨張圧を考慮しないと危険側の凍土厚算定結果となるおそれもあった。
【0018】
これに対し、本実施形態の凍結工法では、図6(b)に示すように、凍土への作用荷重として、緩み土圧、水圧、凍結膨張圧を考慮し、必要凍土厚を算定するようにした。
【0019】
具体例として、大深度工事の地中拡幅工事の例を図7及び表1を用いて説明する。
図7に示すようにこの事例では上部や下部に粘性土層が存在し、凍結膨張圧が大きくなることが予測された。
このような状況に対し、従来手法で必要凍土厚を算出すると、表1に示すように、上部側の必要凍土厚が危険側となり、下部では過度に安全側になることが確認された。
一方、本実施形態の凍結工法を用いると、すなわち、凍土への作用荷重として、緩み土圧、水圧、凍結膨張圧を考慮して必要凍土厚を算定すると、上部、下部ともに適度に安全側となることが確認された。なお、本発明に係る手法で算出した必要凍土厚の妥当性はFEM解析によって確認できている。
【0020】
【表1】
【0021】
したがって、本実施形態の凍結工法によれば、凍結膨張圧を考慮し、より精度よく必要凍土厚を算定することが可能になり、合理的な凍結工法の施工を実現することが可能になる。
【0022】
以上、本発明による凍結工法の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 本線シールド
2 ランプシールド
3 地中立坑
4 発進基地
5 外殻シールド
6 凍土壁
7 本設覆工
8 凍土壁
9 凍結管
10 切り開き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7