(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】木質系セメント板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 1/52 20060101AFI20221220BHJP
E04F 13/14 20060101ALI20221220BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20221220BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20221220BHJP
C04B 18/10 20060101ALI20221220BHJP
C04B 14/20 20060101ALI20221220BHJP
C04B 14/38 20060101ALI20221220BHJP
C04B 14/18 20060101ALI20221220BHJP
C04B 16/08 20060101ALI20221220BHJP
C04B 18/26 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B28B1/52
E04F13/14 102B
E04F13/14 102C
E04F13/08 E
C04B28/02
C04B18/10 A
C04B14/20 A
C04B14/38 C
C04B14/18
C04B16/08
C04B18/26
(21)【出願番号】P 2017192260
(22)【出願日】2017-09-30
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 怜司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和久
(72)【発明者】
【氏名】西岡 英則
(72)【発明者】
【氏名】杉本 明広
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-241479(JP,A)
【文献】特開2014-009121(JP,A)
【文献】特開2017-007229(JP,A)
【文献】特開2012-096944(JP,A)
【文献】特開平07-124926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 1/52
E04F 13/14
E04F 13/08
C04B 28/02
C04B 18/10
C04B 14/20
C04B 14/38
C04B 14/18
C04B 16/08
C04B 18/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性材料、混和材、植物系補強材
からなる粉体原料が堆積硬化した木質系セメント板であって、
前記粉体原料からなる表面層と、
前記表面層の一方の面に形成され、前記表面層を形成する前記粉体原料より大きな前記粉体原料を含む芯層と、
前記表面層の他方の面に複数突出して形成され、第1側面部、この第1側面部に対応する第2側面部、及び、前記第1側面部と第1縁部を介して接続すると共に、前記第2側面部と第2縁部を介して接続する頂面部からなる断面が台形形状の凸部と、を備え、
前記第1側面部における前記植物系補強材の分布と、
前記第2側面部における前記植物系補強材の分布
と、が略同じであ
ることにより、
前記粉体原料が堆積することなく形成された巣穴のサイズが0.5mm未満、0.5以上1.0mm未満及び1.0mm以上の巣穴について、その個数の分布が、前記第1縁部と前記第2縁部
とで所定の範囲内にある
木質系セメント板。
【請求項2】
JIS A 5422に定められた筒法による前記第1縁部の
減水高さと、前記第2縁部の
減水高さは略同じである
ことを特徴とする請求項1記載の
木質系セメント板。
【請求項3】
前記凸部が形成された前記表面層の他方の面に塗料を塗布した場合におけるJIS A 1435に定められた気中凍結水中融解法による前記第1縁部及び前記第2縁部における塗膜の割れの数が略同じである
ことを特徴とする請求項1記載の
木質系セメント板。
【請求項4】
前
記混和材は、石炭灰、マイカ、ワラストナイト、パーライト
、樹脂ビーズの少なくとも1つである
ことを特徴とする請求項1記載の
木質系セメント板。
【請求項5】
前記粉体原料は前記木質系セメント板を粉砕した再利用原料を更に含み、前記粉体原料中の前記水硬性材料、前記混和材、前記植物系補強材及び前記再利用原料の比率は、30質量%、30質量%、15質量%及び25質量%である
ことを特徴とする請求項1記載の
木質セメント板。
【請求項6】
前記芯層の前記表層とは反対側の面に形成され、前記芯層を形成する前記粉体原料より大きな前記粉体原料を含む第2芯層と、
前記第2芯層の前記芯層とは反対の面に形成され、前記表面層を形成する前記粉体原料と同じ大きさの前記粉体原料を含む第2表面層と、を更に備える
請求項1記載の木質セメント板。
【請求項7】
請求項1に記載の木質系セメント板を製造する製造方法であって、
型板を一定方向に移動させる走行装置と、
前記走行装置の上方で、前記型板の進行方向に対し下り傾斜し、
傾斜の上方側に細かい網目を有する第1篩シート、及び、傾斜の下方側に前記第1篩シートの網目より粗い網目を有する第2篩シートを有し、
前記第1篩シートと前記第2篩シートを振動させる第1篩機と、
前記第1篩シートの傾斜上側の上方に設けられた原料供給部と、
前記第1篩シートの前記網目から前記粉体原料を前記型板上に自重落下させ、前記表面層を形成する第1ステップと、
前記第1篩シートの前記網目を通過できなかった前記粉体原料を前記下方側の前記第2篩シート上に移動させ、前記第2篩シートの網目から前記表面層上に自重落下させ、前記芯層を形成する第2ステップと、
からなる木質系セメント板の製造方法。
【請求項8】
請求項7の製造方法は、
前記第2篩シートの傾斜下側の上方に設けられた中央原料供給部を更に備え、
前記第2ステップは、前記第1篩シートの前記網目を通過できなかった前記粉体原料と共に前記中央原料供給部から供給された前記粉体原料を前記第2篩シートの網目から前記表面層上に自重落下させる、
木質系セメント板の製造方法。
【請求項9】
請求項8の製造方法は、
前記型板の進行方向に前記第1篩機に隣接して配置された第2篩機を更に備え、
前記第2篩機は、前記型板の進行方向に対して上方に傾斜した篩シートを備える
木質系セメント板の製造方法。
【請求項10】
請求項9の製造方法は、
前記第2篩機は、その傾斜の上方側に細かい網目を有する第3篩シート、及び、傾斜の下方側に前記第3篩シートの網目より粗い網目を有する第4篩シートを備え、
前記第3篩シートの傾斜上側の上方に別途の第2原料供給部を更に備え、
前記第3篩シートと前記第4篩シートを振動させ、
前記第3篩シートの前記網目を通過できなかった前記粉体原料を前記下方側の前記第4篩シート上に移動させ、前記第4篩シートの網目から前記芯層上に自重落下させ、別途の第2芯層を形成する第3ステップと、
前記第3篩シートの前記網目から前記粉体原料を前記第2芯層上に自重落下させ、第2表面層を形成する第4ステップと、
からなる木質系セメント板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系セメント板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の建材として、例えば窯業系サイディングボードやセラミックボード等の無機質板が挙げられる。
【0003】
無機質板の製造する方法として、特許文献1には、粉体原料を受具の上に散布して、細かい粉体原料から堆積させながら建材用マットを形成する、いわゆる乾式製法が記載されている。
【0004】
乾式製法においては、
図11に示されるようなフォーミング装置が用いられる。
図11の装置は、底部に搬送ベルトコンベアBと、上部に供給ベルトコンベアDを備えたフォーミングチャンバーAを備える。搬送ベルトコンベアB上には表面に凹凸模様を有する型板Cが配置され、搬送ベルトコンベアBによって搬送される。また、フォーミングチャンバーA内で、型板Cの搬送方向には主送風機Eが配置されており、フォーミングチャンバーA内で型板Cの搬送方向とは逆方向に風を吹き付けるようになっている。更に、フォーミングチャンバーA内には篩枠Fも配設されている。
【0005】
図11の装置では、セメントや木質補強材等が混合された粉体原料は、供給ベルトコンベアDを介してフォーミングチャンバーA内に落下する。落下している粉体原料に対して主送風機Eによりエアを吹付けることにより、微細な粉体原料を搬送方向X1とは逆方向に送る。なお、エアを吹き付けられた粉体原料は篩枠Fで篩分けされるので、微細な粉体原料は搬送方向X1の上流側で型板C上に落下堆積し、篩枠F上に残存した粗大な粉体原料は搬送方向X1の下流側で型板C上に落下堆積する。
【0006】
このようにして、下に行くにしたがって粒度が微細になる構造を有するマットが型板Cの上に形成される。マットは下側が表面となり、表面に型板Cに由来する凹凸が形成されるのである。
【0007】
しかしながら、
図12に示すように、従来のフォーミング装置においては、型板の凹凸模様の凸部が主送風機から吹き付けられる風の障壁となり、型板凸部C1の搬送方向X1とは逆側Nには微細な粉体原料が充填されにくく、粗大な粉体原料がマットの下側に露出して粗表面が成形されるという問題があった。
【0008】
そこで、特許文献1には、
図13に示す別の建材製造装置が開示されている。
図13の建材製造装置では、型板Cの搬送方向X1に風を吹き付ける副送風機Gを配設し、反対側からも風を吹き付けて、型板凸部Cの型板搬送方向X1とは逆側にも微細な粉体原料を充填することが開示されている。
【0009】
しかしながら、近年、柄模様には深さや多様性が求められ、副送風機Gだけでは型板凸部Cの搬送方向X1とは逆側Nを微細な粉体原料で十分に覆うことが困難となってきた。
【0010】
また、得られる無機質板の性能向上のために、木片が用いられている。しかし、木片は嵩比重が小さく、セメント等の水硬性材料は嵩比重が大きい。そのため、風を用いた分級では、原料の嵩比重の違いにより、原料が均一に堆積しない懸念があった。
【0011】
詳しくは、水硬性材料は嵩比重が大きく、遠くに飛びにくいので副送風機Gの影響が小さく、型板Cの凸部においては、搬送方向側Mに堆積する傾向にある。一方、木片は嵩比重が小さいので遠くに飛び、副送風機Gの風により吹かれるので、型板Cの凸部においては、搬送方向とは逆側Nに堆積する傾向にある。
【0012】
更に、主送風機Eの風の方向は型板Cの搬送方向X1に対して逆方向であるので、主送風機Eの風に吹かれて堆積する粉体原料の時間当たりの堆積速度は速くなる。一方、副送風機Gの風の方向は型板Cの搬送方向であるので、副送風機Gの風に吹かれて堆積する粉体原料の時間当たりの堆積速度は、主送風機の場合と比して遅い。
【0013】
そのため、型板凸部の搬送方向とは逆側Nでは、型板凸部の搬送方向側Mに比べて木片が多く堆積しやすく、粉体原料の堆積量が少なくなる傾向にあった。
【0014】
型板の上に堆積した粉体原料には、材料間に巣穴が形成されやすい。後の工程でプレスした後であっても、木片が多く堆積した部分や粉体原料の堆積量が少ない部分には巣穴が残り、この巣穴が水を吸うことにより耐久性を劣化させる懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、耐久性に優れた木質系セメント板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によると、木質系セメント板が提供される。この木質系セメント板は、水硬性材料、混和材、植物系補強材からなる粉体原料が堆積硬化した木質系セメント板であって、粉体原料からなる表面層と、表面層の一方の面に形成され、表面層を形成する粉体原料より大きな粉体原料を含む芯層と、表面層の他方の面に複数突出して形成され、第1側面部、この第1側面部に対応する第2側面部、及び、第1側面部と第1縁部を介して接続すると共に、第2側面部と第2縁部を介して接続する頂面部からなる断面が台形形状の凸部と、を備え、第1側面部における植物系補強材の分布と、第2側面部における植物系補強材の分布と、が略同じであることにより、粉体原料が堆積することなく形成された巣穴のサイズが0.5mm未満、0.5以上1.0mm未満及び1.0mm以上の巣穴について、その個数の分布が、第1縁部と第2縁部とで所定の範囲内にある。
【0018】
第1の態様の木質系セメント板においては、巣穴が形成されやすい凸部に、植物系補強材が、水硬性材料と混和材が付着した状態で混合物中に分布しているので、付着している水硬性材料と混和材により植物系補強材の吸湿が抑制され、植物系補強材による水の吸収が抑えられて、本木質系セメント板の耐久性が向上する。また、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に分布しているので、植物系補強材と、水硬性材料と混和材を含む混合物の間に巣穴は発生しにくい。そのため、本木質系セメント板への水の吸収が抑えられ、本木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0019】
加えて、凸部において、第1縁部における植物系補強材の分布と、第2縁部における植物系補強材の分布は略同じである。なお、分布が略同じとは、0.5mm未満、0.5以上1.0mm未満及び1.0mm以上の巣穴の個数の分布が、第1縁部と第2縁部とで所定範囲内にあることである。上述の通り、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材は、水の吸収が抑えられ、巣穴が発生しにくいので、凸部において、第1縁部における植物系補強材の分布と、第2縁部における植物系補強材の分布が略同じであると、どちらの縁部も水の吸収が抑えられ、本木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0020】
木質系セメント板において、第1縁部と第2縁部は、巣穴が最も形成されやすい箇所である。第1の態様に係る木質系セメント板の第1側面部と第2側面部には、水硬性材料と混和材を付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に略同じに分布しているので、第1縁部と第2縁部においても、水硬性材料と混和材を付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に略同じに分布している。加えて、第1縁部の巣穴の分布と、第2縁部の巣穴の分布が略同じなので、第1縁部と第2縁部からの水の吸収が抑えられ、本木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0021】
以上のように、本発明の第1の態様に係る木質系セメント板は、水の吸収が抑えられ、優れた耐久性を実現するのに適する。
【0022】
本発明の第2の態様による木質系セメント板は、第1の態様に加え、JIS A 5422に定められた筒法による第1縁部の減水高さと、第2縁部の減水高さは略同じである。
【0023】
第2の態様による木質系セメント板の第1縁部と第2縁部においても、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に略同じに分布している。加えて、第1縁部の吸水性による減水高さと、第2縁部の吸水性による減水高さは略同じなので、第1縁部と第2縁部からの水の吸収が抑えられ、本木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0024】
本発明の第3の態様による木質系セメント板は、第1の態様に加え、凸部が形成された表面層の他方の面に塗料を塗布した場合におけるJIS A 1435に定められた気中凍結水中融解法による第1縁部及び第2縁部における塗膜の割れの数は略同じものである。
【0025】
本発明の第3の態様による木質系セメント板において、第1縁部と第2縁部は水を吸いやすい箇所なので、凍結と融解の繰り返しにより劣化する作用、即ち凍結融解作用を受けやすい。第3の態様による木質系セメント板の第1縁部と第2縁部においても、水硬性材料と混和材を付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に略同じに分布している。加えて、上記気中凍結水中融解法による第1縁部の塗膜の割れの数と、第2縁部の塗膜の割れの数は略同じなので、凍結融解による第1縁部と第2縁部からの水の吸水が抑えられるので、凍結融解による劣化が抑えられ、木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0026】
本発明の第4の態様による木質系セメント板は、第1の態様に加え、混和材は、石炭灰、マイカ、ワラストナイト、パーライト、樹脂ビーズの少なくとも1つである。
【0027】
本発明の第4の態様による木質系セメント板において、このような混和材は、植物系補強材に付着可能であるか、水硬性材料とも混合可能であるので、得られる木質系セメント板は巣穴が発生しにくい。また、石炭灰、マイカ、ワラストナイトは、高強度で寸法安定性に優れた木質系セメント板を実現するのに適し、パーライト、樹脂ビーズは軽量な木質系セメント板を実現するのに適する。
【0028】
本発明の第5の態様による木質系セメント板は、第1の態様に加え、粉体原料は木質系セメント板を粉砕した再利用原料を更に含み、粉体原料中の水硬性材料、混和材、植物系補強材及び再利用原料の比率は、30質量%、30質量%、15質量%及び25質量%である。
【0029】
本発明の第5の態様による木質系セメント板において、水と混合した植物系補強材を、水硬性材料と、混和材と混合することにより、植物系補強材への水硬性材料と混和材の付着が効率良く行える。水硬性材料と混和材の付着した植物系補強材は、水の吸収が抑えられるとともに水硬性材料と混和材を含む混合物の間に巣穴が発生しにくくなり、木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0030】
本発明の第6の態様による木質系セメント板は、芯層の表面層とは反対側の面に形成され、芯層を形成する粉体原料より大きな粉体原料を含む第2芯層と、第2芯層の芯層とは反対側の面に形成され、表面層を形成する粉体原料と同じ大きさの粉体原料を含む第2表面層と、を更に備える。
【0031】
本発明の第6の態様による木質系セメント板において、この第2芯層と第2表面層は、木質系セメント板の裏面側の2層を構成するものであり、木質系セメント板は、表面層、芯層、第2芯層及び第2表面層の4層により形成される。また、裏面側にも緻密な第2表面層が形成されているので、裏面側の水の吸収が抑制され、本木質系セメント板の耐久性が更に向上する。
【0032】
本発明の第7の態様によると、木質系セメント板の製造方法が提供される。この製造法は、型板を一定方向に移動させる走行装置と、走行装置の上方で、型板の進行方向に対し下り傾斜し、傾斜の上方側に細かい網目を有する第1篩シート、及び、傾斜の下方側に第1篩シートの網目より粗い網目を有する第2篩シートを有し、第1篩シートと第2篩シートを振動させる第1篩機と、第1篩シートの傾斜上側の上方に設けられた原料供給部と、第1篩シートの網目から粉体原料を型板上に自重落下させ、表面層を形成する第1ステップと、第1篩シートの網目を通過できなかった粉体原料を下方側の第2篩シート上に移動させ、第2篩シートの網目から表面層上に自重落下させ、芯層を形成する第2ステップと、からなる。
【0033】
第7の態様による木質系セメント板の製造方法において、粉体原料がほぐされた状態で第1篩シートから型板に向けて自重落下することにより表面層が形成される。次に、第1篩シートを通過できなかった粉体原料は第2篩シート上に移動し、第2篩シートから表面層に向けて自重落下することにより芯層が形成される。
そのため、凸部には、水硬性材料と無機混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材の混合物中に均一に分布しており、凸部の第1側面部と第2側面部の植物系補強材の分布は略同じとなり耐久性に優れる。
【0034】
また、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と無機混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することにより製造される。そのため、巣穴の分布も凸部の第1縁部と凸部の第2縁部で略同じであり、製造される木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0035】
本発明の第8の態様によると、木質系セメント板の製造方法が提供される。この製造方法は、第7の態様に加え、第2篩シートの傾斜下側の上方に設けられた中央原料供給部を更に備え、第2ステップは、第1篩シートの網目を通過できなかった粉体原料と共に中央原料供給部から供給された粉体原料を第2篩シートの網目から表面層上に自重落下させる。
【0036】
本発明の第8の態様による木質系セメント板の製造方法では、第7の態様に加えて、中央原料供給部が設けられている。この中央原料供給部により、傾斜した篩シートの下方側に、更に粉体原料が供給される。このため、篩シートの傾斜の下方側から型板上に落下する粉体原料は、篩シートの傾斜の上方側から下方側へ移動した粉体原料よりも小さい寸法の粉体原料が含まれるので、製造される木質系セメント板の耐久性が向上する。
【0037】
本発明の第9の態様によると、木質系セメント板の製造方法が提供される。この製造方法は、第8の態様に加え、第2ステップの後に、第1篩機の後方に、第2篩機が配置される。この第2篩機は走行装置の上方で、型板の進行方向に対し上り傾斜し、傾斜の上方側に細かい網目を有する第3篩シート及び傾斜の下方側に第3篩シートの網目より粗い網目を有する第4篩シートを有し、第3篩シートと第4篩シートを振動させる。また、第3篩シートの傾斜上側の上方に第2原料供給部を備え、第2原料供給部から第3篩シート上に粉体原料を供給し、第3篩シートの網目を通過できなかった粉体原料を下方側の第4篩シート上に移動させ、第4篩シートの網目から芯層上に自重落下させ、別途の第2芯層を形成する第3ステップと、第3篩シートの前記網目から粉体原料を第2芯層上に自重落下させ、第2表面層を形成する第4ステップと、からなる。
【0038】
本発明の第9の態様による木質系セメント板の製造方法では、第8の態様に加えて第2篩機が設けられている。このため、木質系セメント板の両面に緻密で耐水性が高い層を形成することができるので、製造される木質系セメント板の耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0039】
本発明の木質系セメント板及びその製造方法によれば、耐久性に優れた木質系セメント板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明の実施の形態1の
木質系セメント板の製造方法を説明した模式図である。
【
図3】篩シートの上下振動と粉体原料の動きを説明した模式図である。
【
図4】実施の形態1での
木質系セメント板の断面概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態1の
木質系セメント板の製造方法で製造した壁材の断面略図である。
【
図6】
実施の形態2での
木質系セメント板の断面概略図である。
【
図7】本発明の実施の形態3の
木質系セメント板の製造方法を説明した模式図である。
【
図8】本発明の実施の形態4の
木質系セメント板の製造方法を説明した模式図である。
【
図9】実施の形態4での
木質系セメント板の断面概略図である。
【
図10】型板から外す前の
木質系セメント板の断面概略図である。
【
図11】従来の
木質系セメント板製造装置を説明した模式図である。
【
図12】
図11の装置により製造された
型板から外す前の木質系セメント板の断面概略図である。
【
図13】従来の別の
木質系セメント板製造装置を説明した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。また、本発明の実施の形態では、建材として壁材を例にあげて説明する。
【0042】
(実施の形態1の壁材の製造方法)
図1は本発明の実施の形態1の壁材の製造方法を説明した模式図であり、
図2は篩機を詳細に説明した図であり、
図3は篩シートの上下振動と粉体原料の動きを説明した模式図である。
【0043】
実施の形態1では、図示する篩機10と篩機10の下方に配設された走行装置20を用いる。
【0044】
篩機10は、網目が相対的に細かい第1の篩シート2Aと、網目が相対的に粗い第2の篩シート2Bが併設してなる篩シートユニット2、第1の篩シート2Aに粉体原料を供給する原料供給部3を備える。各篩シート2A,2Bは、例えば、ウレタンなどの弾性材から形成されて伸縮可能である。各篩シート2A,2Bが上下に振動自在となっている(Y2方向)。
【0045】
篩機10は、
図2で示すように、2本の併設されたクロスビーム1,1のそれぞれが所定間隔で多数の網目2aを備えた篩シート2A(2B)を支持している。各クロスビーム1,1が不図示のアクチュエータにて相互に反対方向にスライドすることによって(X2方向)、各クロスビーム1,1で支持された篩シート2A(2B)は、その一部がたわむと同時にその他部が引っ張られることになる。なお、各クロスビーム1,1のうち、一方のクロスビーム1のみがアクチュエータにて往復動される形態であってもよい。
【0046】
図3上図で示すように、引っ張られた状態の篩シート2A上に粉体原料Fが載置された状態で、次に
図3中図で示すように、篩シート2Aがたわむことで(Y2方向)粉体原料Fが下方へ落ち込む。次に、
図3下図で示すように、篩シート2Aが再度引っ張られて持ち上げられることにより(Y2方向)、下方へ落ち込んでいた粉体原料Fが上方に跳ね上げられる。
【0047】
このように、篩シート2A(2B)の上下振動(波動運動)により、粉体原料Fを粉々にして、網目2aを通過可能な寸法の粉体原料Fのみを下方へ落下させることができる。
【0048】
篩シート2A(2B)が上下振動しながら粉体原料Fの篩分けをおこなうことより、網目2aは目詰まりし難く、また、従来の篩分け方法のように粉体原料にエアを吹き付ける必要がないことから、設備の小型化を図ることができ、設備の頻繁な清掃は不要となる。
【0049】
図1に戻り、篩機10の下方に配設された走行装置20は、主回転ローラ21と副回転ローラ22の回転にて移動するベルトコンベア23から構成されており、このベルトコンベア23の移動によってその上に載置された型板4が連続的に一定速度で一定方向に走行自在となっている(X1方向)。なお、型板4は凹凸を備えた表面(不図示)を上にして走行装置20により走行させる。
【0050】
篩シートユニット2は、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように型板4の走行方向(X1方向)に対して下方に傾斜させて配設されている(傾斜角度θ)。ここで、篩シートユニット2の傾斜角度θは、粉体原料Fが傾斜に沿って自然に転がり落ちる角度に設定されるのがよく、これは使用される粉体原料によっても異なるものの、たとえば、12度~21度の範囲に設定することができる。
【0051】
次に、実施の形態1では、水硬性材料と、混和材と、植物系補強材と、水とを混合することにより、粉体原料を製造する。水は粉体原料の全固形分100質量部に対して30~45質量部となるよう含有すると、植物系補強材への水硬性材料と混和材の付着が効率良く行えるので好ましい。
【0052】
水硬性材料としては、例えば、ポルトランドセメント、早強セメント、アルミナセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等のセメントや、無水石膏、半水石膏、二水石膏等の石膏、高炉スラグ、転炉スラグ等のスラグが挙げられる。
【0053】
混和材としては、例えば、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、石炭灰、製紙スラッジ焼却灰、パーライト、シリカフューム、マイカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、バーミキュライト、セピオライト、ゾノトライト、珪藻土、カオリナイト、ゼオライト、ワラストナイト、木質系セメント板を粉砕した再利用原料等が挙げられる。石炭灰、マイカ、ワラストナイトは、高強度で、寸法安定性に優れた壁材を実現するのに適し、好ましい。また、パーライト、樹脂ビーズは、軽量な壁材を実現するのに適するし、好ましい。
【0054】
植物系補強材としては、例えば、木片、竹片、木粉、故紙、針葉樹未晒しクラフトパルプ(Nadelholz unbleached kraft pulp)、針葉樹晒しクラフトパルプ(Nadelholz bleached kraft pulp)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(Laubholz unbleached kraft pulp)、広葉樹晒しクラフトパルプ(Laubholz bleached kraft pulp)等が挙げられる。
【0055】
粉体原料は、上述の材料に加えて他の材料を含有してもよい。他の材料としては、例えば、防水剤、硬化促進剤が挙げられる。
【0056】
次に、篩機10と走行装置20を稼働させ、移動する型板4の上に壁材用マットを形成する。
【0057】
具体的には、まず、原料供給部3から粉体原料を上下振動している(Y2方向)第1の篩シート2Aに落下させる(Y1方向)。
【0058】
上下振動している(Y2方向)第1の篩シート2Aに供給された粉体原料は、第1の篩シート2Aの上下振動により粉々になり、網目2aを通過可能な寸法の粉体原料のみが第1の篩シート2Aの網目2aを通過し、走行する型板4の上に自重落下して(Y3方向)層状に堆積する。
【0059】
粉体原料は、第1の篩シート2Aの上下振動によりほぐされた状態で篩シートから型板に向けて自重落下するので、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強を型板4に堆積させることができる。また、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と無機混和材が付着した植物系補強材とは自重落下により型板に堆積するので、型板の凹部には、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と無機混和材が付着した植物系補強材が略同じ比率、略同じ量で堆積することとなる。
【0060】
第1の篩シート2Aを通過できずにその上に残った粉体原料は、篩シートユニット2の傾斜(角度θ)に沿って第2の篩シート2Bへ自然に転がり落ち、上下振動している(Y2方向)第2の篩シート2Bの網目を通過し、走行する型板4の上に落下して(Y4方向)層状に堆積する。
【0061】
具体的には、型板4の上に既に形成されている表面層5の上に、第2の篩シート2Bの網目を通過した寸法の相対的に大きな粉体原料からなる芯層6が形成され、表面層5と芯層6からなる壁材用マット7が形成される。
【0062】
粉体原料は、第2の篩シート2Bの上下振動によりほぐされた状態で篩シートから型板に向けて自重落下するので、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強を型板に堆積させることができる。また、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とは自重落下により型板に堆積するので、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することとなる。
【0063】
図4は、実施の形態1で形成された壁材用マットの断面概略図である。
図4で示すように、型板4の上には、第1の篩シート2Aの網目2aを通過した寸法の相対的に小さな粉体原料からなる表面層5が形成され、表面層5の上に、第2の篩シート2Bの網目を通過した寸法の相対的に粗い粉体原料からなる芯層6が形成される。なお、型板4と表面層5は表面に凹凸を有するが、
図4では図示していない。
【0064】
表面層5は緻密で耐水性が高い層であり、芯層6は密度が小さいことから軽量であり、クッション性を有する層となる。そのため、緻密で耐水性の高い表面層5の内側に軽量でクッション性のある芯層6が形成された壁材用マット7が形成される。
【0065】
図4で示すように壁材用マット7が形成されたら、形成された壁材用マット7と型板4をプレスし、養生することによって壁材が製造される。
【0066】
このように、篩機10とその下方で型板4を移動させる走行装置20を使用して型板4の上に壁材用マット7を形成することで、効率的に壁材用マット7を形成でき、もって効率的に壁材を製造することができる。
【0067】
(実施の形態1により製造された壁材)
図5に実施の形態1により製造された壁材30の表面付近の断面図を示す。壁材30の表面には、型板4の凹凸により複数の凸部31Aが形成されている。凸部31Aは、第1側面部31A1と、第1側面部31A1に対応する第2側面部31A2と、第1側面部31A1と第2側面部31A2とを繋ぐ頂面部とを有する。第1側面部31A1の縁部が第1縁部31A11であり、第2側面部31A2の縁部が第2縁部31A21である。第1縁部31A11と第2縁部31A21は頂面部を挟んで対向している。
【0068】
粉体原料がほぐされた状態で篩シートから型板に向けて自重落下することにより壁材30が製造されるので、壁材30では、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材を含む混合物中に均一に分布している。壁材30の凸部31Aを形成する型板の凹部にも粉体原料がほぐされた状態で自重落下するので、壁材30の凸部31Aには、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材の混合物中に均一に分布している。
【0069】
また、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することにより、壁材30が製造される。壁材30の凸部31Aを形成する型板の凹部にも、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが略同じ比率、略同じ量で堆積するので、凸部31Aの第1側面部31A1における植物系補強材の分布と、凸部31Aの第2側面部31A2における植物系補強材の分布は略同じである。水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材は、水硬性材料と混和材により植物系補強材の吸湿が抑制されるとともに、水硬性材料と混和材を含む混合物との間に隙間が発生しにくいので、第1側面部31A1と第2側面部31A2の水の吸収が抑えられ、壁材30は耐久性に優れる。
【0070】
更に、凸部31Aの第1縁部31A11に形成された巣穴の分布と、凸部31Aの第2縁部31A21に形成された巣穴の分布は略同じであり、第1縁部31A11と第2縁部31A21の水の吸収が抑えられるので、壁材30は耐久性に優れる。
【0071】
更に、凸部31Aの第1縁部31A11の吸水性と、凸部31Aの第2縁部31A21の吸水性は略同じである。第1縁部31A11と第2縁部31A21に分布している植物系補強材は、水硬性材料と混和材が付着していることにより植物系補強材の吸湿が抑制されているので、第1縁部31A11と第2縁部31A21の水の吸収が抑えられ、壁材30は耐久性に優れる。
【0072】
更に、第1縁部31A11と第2縁部31A21は水の吸収が略同じく抑えられているので、凸部31Aの第1縁部31A11の耐凍結融解性と、凸部31Aの第2縁部31A21の耐凍結融解性は略同じである。そのため、壁材30は耐久性に優れる。
【0073】
(実施の形態2の壁材の製造方法)
実施の形態2では、
図1において、型板4が第2の篩シート2Bの縁部まで到達して
図4で示す表面層5と芯層6の積層構造を形成したら、次に、走行装置20を逆走させ、型板4を逆方向に移動させて(X1’方向)さらに多層構造の壁材用マットを形成する。
【0074】
具体的には、型板4が第2の篩シート2Bの直下を再度通過することにより、
図6で示すように芯層6の上に別途の芯層6が形成される。なお、型板4と型板4に接する表面層5は表面に凹凸を有するが、
図6では図示していない。
【0075】
さらに型板4が第1の篩シート2Aの直下を通過することで、
図6で示すように別途の芯層6の上に別途の表面層5が形成され、表裏面にある表面層5の間に2層の芯層6が形成された壁材用マット7Aが形成される。
【0076】
次に壁材用マット7Aと型板4をプレスし、養生することにより壁材が製造される。
【0077】
(実施の形態2により製造された壁材)
実施の形態2により製造された壁材も、実施の形態1により製造された壁材30と同様に、表面には、型板4の凹凸により凸部が複数形成されている。凸部は、第1側面部と、第2側面部と、頂面部と、第1縁部と、第2縁部とを有する。
【0078】
実施の形態2により製造された壁材も、粉体原料がほぐされた状態で篩シートから型板4に向けて自重落下することにより製造される。そのため、凸部には、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材の混合物中に均一に分布しており、凸部の第1側面部と凸部の第2側面部では植物系補強材の分布が略同じとなり、耐久性に優れる。
【0079】
また、実施の形態2により製造された壁材も、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することにより製造される。そのため、巣穴の分布、吸水性、耐凍結融解性は、凸部の第1縁部と凸部の第2縁部で略同じであり、実施の形態2により製造された壁材は耐久性に優れる。
【0080】
更に、実施の形態2により製造された壁材は、両面に緻密で耐水性が高い層を有するので、実施の形態1により製造された壁材よりも耐久性に優れる。
【0081】
(実施の形態3の壁材の製造方法)
図7は実施の形態3の壁材の製造方法を説明した模式図である。
【0082】
実施の形態3にかかる壁材の製造方法では、第1の篩シートユニット2’と第2の篩シートユニット2”を備えた篩機10Cを使用して壁材用マットを製造する。第1の篩シートユニット2’は、第1の篩シート2Aと第2の篩シート2Bを備える。第2の篩シートユニット2”は、第3の篩シート2Aと第4の篩シート2Bを備える。
【0083】
より具体的には、型板4の走行方向(X1方向)の上流側に第1の篩シートユニット2’を配設し、下流側に第2の篩シートユニット2”を配設する。
【0084】
第1の篩シートユニット2’は、第1の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように篩シートユニット2’を型板4の走行方向(X1方向)に対して下方に傾斜させて配設する。第2の篩シートユニット2”は、第3の篩シート2Aが傾斜の高い側となるように篩シートユニット2”を型板4の走行方向(X1方向)に対して上方に傾斜させて配設する。実施の形態3では、双方の篩シートユニット2’、2”を逆ハの字状に配設する。
【0085】
次に、植物系補強材に水を添加し、混合する。そして、得られた植物系補強材と、水硬性材料と、混和材とを混合することにより、粉体原料を製造する。なお、水硬性材料、混和材、植物系補強材としては、実施の形態1に例示した物を用いることができる。
【0086】
なお、水は粉体原料の全固形分100質量部に対して30~45質量部となるよう添加すると、植物系補強材への水硬性材料と混和材の付着が効率良く行えるので好ましい。実施の形態3においては、水と混合した植物系補強材と、水硬性材料と、混和材とを混合する際に更に水を添加し、混合しても良い。その場合、得られる粉体原料が、水を粉体原料の全固形分100質量部に対して30~45質量部含有するよう製造する。
【0087】
次に、第1の篩シートユニット2’の第1の篩シート2Aに粉体原料を供給し、第1の篩シート2Aの網目を通過する粉体原料を走行する型板4の上に落下させることにより(Y3方向)、
図4で示すように型板4の上に表面層5を形成する。そして、第1の篩シート2Aの上に残った粉体原料を傾斜に沿って第2の篩シート2Bに移動させ(Z方向)、第2の篩シート2Bの網目を通過する粉体原料を既に形成されている表面層5上に落下させることにより(Y4方向)、
図4で示すように芯層6を形成する。
【0088】
型板4は走行装置20によって第2の篩シートユニット2”に移動する。第2の篩シートユニット2”では、第3の篩シート2Aに粉体原料が供給され、第3の篩シート2Aの網目を通過する粉体原料を下方に落下させ(Y3方向)、通過せずに第3の篩シート2A上に残った粉体原料を傾斜に沿って第4の篩シート2Bに転がり落とし、第4の篩シート2Bの網目を通過する粉体原料を下方に落下させる(Y4方向)。
【0089】
第2の篩シートユニット2”に移動した型板4には、まず、第4の篩シート2Bの網目を通過した粉体原料が落下し、
図6で示すように既に形成されている芯層6上に別途の芯層6が形成される。
【0090】
さらに型板4が移動し、第3の篩シート2Aの直下を通過する過程で第3の篩シート2Aの網目を通過した粉体原料が落下し、
図6で示すように既に形成されている別途の芯層6上に別途の表面層5が形成される。
【0091】
実施の形態3によれば、表裏2層の表面層5の内側に2層の芯層6が積層してなる壁材用マット7Aをより一層効率的に形成することが可能になる。
【0092】
次に、実施の形態2と同様に、壁材用マット7Aと型板4の組み合わせ(一組)を複数組積み重ねてプレスし、養生することによって壁材が製造される。
【0093】
(実施の形態3により製造された壁材)
実施の形態3により製造された壁材も、実施の形態1により製造された壁材30と同様に、表面には、型板4の凹凸により凸部が複数形成されている。凸部は、第1側面部と、第2側面部と、頂面部と、第1縁部と、第2縁部とを有する。
【0094】
実施の形態3により製造された壁材も、粉体原料がほぐされた状態で篩シートから型板に向けて自重落下することにより製造される。そのため、凸部には、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材の混合物中に均一に分布しており、凸部の第1側面部と第2側面部の植物系補強材の分布は略同じとなり、耐久性に優れる。
【0095】
また、実施の形態3により製造された壁材も、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することにより製造される。そのため、巣穴の分布、吸水性、耐凍結融解性は、凸部の第1縁部と凸部の第2縁部で略同じであり、実施の形態3により製造された壁材は耐久性に優れる。
【0096】
また、実施の形態3により製造された壁材は、両面に緻密で耐水性が高い層を有するので、実施の形態1により製造された壁材よりも耐久性に優れる。
【0097】
(実施の形態4の壁材の製造方法)
図8は実施の形態4の壁材の製造方法を説明した模式図である。
【0098】
実施の形態4にかかる壁材の製造方法では、実施の形態3の壁材の製造方法で用いた篩機10Cの第1の篩シートユニット2’の上方に中央原料供給部8が配設された篩機10Dを使用して壁材用マットを製造する。より詳細には、篩機10Dでは、中央原料供給部8は、第1の篩シートユニット2’の第2の篩シート2Bの上方に配設されている。
【0099】
実施の形態4で用いる粉体原料、及びその製造方法は実施の形態3と同じである。
【0100】
実施の形態4では、型板4が第1の篩シートユニット2’の篩シート2Aを通過する際に、
図9で示すように型板4の上に表面層5が形成される。そして、型板4が第1の篩シートユニット2’の篩シート2Aを通過する際には、第1の篩シート2Aの上に残り、傾斜に沿って第2の篩シート2Bに移動された粉体原料と、中央原料供給部8から供給された粉体原料との内、第2の篩シート2Bを通過した粉体原料により、芯層6Aが形成される。なお、型板4と型板4に接する表面層5は表面に凹凸を有するが、
図9では図示していない。
【0101】
型板4が第2の篩シートユニット2”に到達し、ここを通過する過程で、別途の芯層6と別途の表面層5が形成され、表裏2層の表面層5の内側に2層の芯層6A,6が積層してなる壁材用マット7Cが形成される。
【0102】
なお、芯層6Aは、中央原料供給部8から供給された(Y5方向)粉体原料を含むので、芯層6に比して相対的に小さな寸法の粉体原料が混在している。
【0103】
そして、実施の形態1~3と同様に、壁材用マット7Cと型板4の組み合わせ(一組)を複数組積み重ねてプレスし、養生することによって壁材が製造される。
【0104】
(実施の形態4により製造された壁材)
実施の形態4により製造された壁材も、実施の形態1により製造された壁材30と同様に、表面には、型板4の凹凸により凸部が複数形成されている。凸部は、第1側面部と、第2側面部と、頂面部と、第1縁部と、第2縁部とを有する。
【0105】
実施の形態4により製造された壁材も、粉体原料がほぐされた状態で篩シートから型板4に向けて自重落下することにより製造される。そのため、凸部には、水硬性材料と混和材が付着した状態の植物系補強材が、水硬性材料と混和材の混合物中に均一に分布しており、凸部の第1側面部と第2側面部の植物系補強材の分布は略同じとなり、耐久性に優れる。
【0106】
また、実施の形態4により製造された壁材も、水硬性材料と、混和材と、水硬性材料と混和材が付着した植物系補強材とが型板の全面に、略同じ比率、略同じ量で堆積することにより製造される。そのため、巣穴の分布、吸水性、耐凍結融解性は、凸部の第1縁部と凸部の第2縁部で略同じであり、実施の形態4により製造された壁材は耐久性に優れる。
【0107】
また、実施の形態4により製造された壁材は、両面に緻密で耐水性が高い層を有するので、実施の形態1により製造された壁材よりも耐久性に優れる。
【0108】
(効果確認とその結果)
本発明者等は、効果確認を行った。実施例では、実施の形態4の壁材の製造方法を用いて、同条件で壁材を3体製造した(試料1~3)。一方、比較例では、
図13に図示される、エアにて粉体原料を吹き飛ばして篩分けする装置を用いて、同条件で壁材を3体製造した(試料4~6)。
【0109】
実施例、比較例ともに、粉体原料は、水を添加、混合して得られた木片に、ポルトランドセメントと、石炭灰と、木質系セメント板を粉砕した再利用原料と、ギ酸カルシウムとを添加、混合して製造した。粉体原料の固形分組成は、ポルトランドセメントが30質量%、石炭灰が30質量%、木片が15質量%、木質系セメント板を粉砕した再利用原料が25質量%である。また、粉体原料の全固形分に対して水を30質量%、ギ酸カルシウムを5質量%となるよう添加した。
【0110】
柄深さ5mm、斜面立ち上がり角度60度で、頂面部幅108mmの凸部を有する細石積み柄の型板を用い、厚みが16mmの木質系セメント板を製造した。壁材用マットと型板のプレス圧は4.5MPaとし、165℃、0.6MPaで6時間のオートクレーブ養生を行った。
【0111】
なお、
図10に、試料である壁材と型板4との関係を示す。
図10は、型板から外す前の壁材の断面概略図である。
図10では、型板の凹部により壁材30Aの凸部31Bが形成されている。凸部31Bは、第1側面部の縁部である第1縁部31B11と、第2側面部の縁部であり、第1縁部31B11に対応する第2縁部31B21が形成されている。型板4の搬送方向はX1であり、第1縁部31B11が、型板の搬送方向X1に傾斜した型板凹部斜面により形成された側面部の縁部である。一方、第2縁部31B21が、型板の搬送方向X1に対し逆方向に傾斜した型板凹部斜面により形成された側面部の縁部である。
【0112】
そして、得られた木質系セメント板について、巣穴のサイズと個数の測定、筒法による吸水試験および耐凍結融解性試験を行った。
【0113】
巣穴のサイズと個数の測定は、(株)キーエンス製マイクロスコープ「VHX-5000」を用い、視野倍率50倍で、第1縁部31B11と第2縁部31B21に形成された巣穴のサイズと個数を観察した。なお、観察の範囲は幅108mmとした。そして、巣穴をサイズにより3つに分類し、該当するサイズの巣穴の数が0~2個の場合を「○」(少ない)、該当するサイズの巣穴の数が3~6個の場合を「△」(やや少ない)、該当するサイズの巣穴の数が7~9個の場合を「▲」(やや多い)、該当するサイズの巣穴の数が10個以上の場合を「×」(多い)と評価した。
【0114】
筒法による吸水試験は、得られた木質系セメント板にシリコンアクリルエマルション系塗料を90g/m2塗布し、その後、第1縁部31B11と第2縁部31B21に対しJIS A 5422に定められた筒法試験を実施して、その減水高さを測定した。
【0115】
耐凍結融解性試験は、得られた木質系セメント板にシリコンアクリルエマルション系塗料を90g/m2塗布し、その後、JIS A 1435に定められた気中凍結水中融解法を720サイクル行った。そして、(株)キーエンス製マイクロスコープ「VHX-5000」を用いて、視野倍率50倍で、第1縁部31B11と第2縁部31B21を観察し、塗膜の割れがあるか確認した。なお、観察の範囲は幅108mmとした。塗膜の割れがある場合は個数を測定し、塗膜の割れが0個の場合を「○」(無い)、1~4個の場合を「△」(少ない)、5~10個の場合を「×」(多い)と評価した。各試験の測定結果を以下の表1に示す。
【0116】
【0117】
水硬性材料、混和材、植物系補強材を含む混合物からなる実施例の試料1~3において、第1縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも○(少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数は○(少ない)が1つ、△(やや少ない)が1つ、▲(やや多い)が1つであり、0~0.5mmの巣穴の数は▲(やや多い)が1つ、×(多い)が2つであった。一方、実施例の試料1~3の第2縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも○(少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数は△(やや少ない)が2つ、▲(やや多い)が1つであり、0~0.5mmの巣穴の数は▲(やや多い)が2つ、×(多い)が1つであった。この結果は、実施例において、第1縁部の巣穴の分布と第2縁部の巣穴の分布とが略同じであることを示している。
【0118】
また、実施例の試料1~3において、第1縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは0~1mmであった。一方、実施例の試料1~3の第2縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは0~2mmであった。この結果は、実施例において、第1縁部の吸水性と第2部部の吸水性とが略同じであることを示している。
【0119】
更に、実施例の試料1~3において、第1縁部では、耐凍結融解性試験は○(無い)が2つ、△(少ない)が1つであった。一方、実施例の試料1~3の第2縁部では、耐凍結融解性試験は全て○(無い)であった。この結果は、実施例において、第1縁部の耐凍結融解性と第2縁部の耐凍結融解性とが略同じであることを示している。
【0120】
一方、実施例と同じ混合物からなる比較例の試料4~6において、第1縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも○(少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数はいずれも△(やや少ない)であり、0~0.5mmの巣穴の数は▲(やや多い)が1つ、×(多い)が2つであった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも△(やや少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数は△(やや少ない)が2つ、▲(やや多い)が1つであり、0~0.5mmの巣穴の数はいずれも×(多い)であった。この結果は、比較例において、第1縁部の巣穴の分布と第2縁部の巣穴の分布とが異なることを示している。
【0121】
また、比較例の試料4~6において、第1縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは0~1mmであった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは2~5mmであった。この結果は、比較例において、第1縁部の吸水性と第2縁部の吸水性とが異なることを示している。
【0122】
更に、比較例の試料4~6において、第1縁部では、耐凍結融解性試験は○(無い)が1つ、△(少ない)が2つであった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、耐凍結融解性試験は△(少ない)が2つ、多い(×)が1つであった。この結果は、比較例において、第1縁部の耐凍結融解性と第2縁部の耐凍結融解性とが異なることを示している。
【0123】
実施例と比較例を比較すると、実施例の試料1~3の第2縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも○(少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数は△(やや少ない)が2つ、▲(やや多い)が1つであり、0~0.5mmの巣穴の数は▲(やや多い)が2つ、×(多い)が1つであった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、1.0mm以上の巣穴の数はいずれも△(やや少ない)であり、0.5~1.0mmの巣穴の数は△(やや少ない)が2つ、▲(やや多い)が1つであり、0~0.5mmの巣穴の数はいずれも×(多い)であった。この結果は、実施例の第2縁部の巣穴の分布と比較例の第2縁部の巣穴の分布が異なり、実施例の第2縁部の巣穴の数は、比較例の第2縁部の巣穴の数よりも少ないことを示している。
【0124】
また、実施例の試料1~3の第2縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは0~2mmであった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、筒法による吸水試験での減水高さは2~5mmであった。この結果は、実施例の第2縁部の吸水性と比較例の第2縁部の吸水性が異なり、実施例の第2縁部は、比較例の第2縁部よりも水を吸いにくいことを示している。
【0125】
更に、実施例の試料1~3の第2縁部では、耐凍結融解性試験は全て○(無い)であった。一方、比較例の試料4~6の第2縁部では、耐凍結融解性試験は△(少ない)が2つ、×(多い)が1つであった。この結果は、実施例の第2縁部の耐凍結融解性と比較例の第2縁部の耐凍結融解性が異なり、実施例の第2縁部の耐凍結融解性は、比較例の第2縁部の耐凍結融解性よりも優れることを示している。
【0126】
以上の試験結果は、実施例の木質系セメント板は、第1縁部と第2縁部で、巣穴の分布、吸水性、耐凍結融解性が略同じであり、耐久性に優れることを示している。
【0127】
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0128】
1…クロスビーム、2…篩シートユニット、2’…第1の篩シートユニット、2”…第2の篩シートユニット、2A…第1の篩シート、2B…第2の篩シート、2a…網目、3…原料供給部、4…型板、5…表面層、6,6A…芯層、7,7A,7B,7C…壁材用マット、8…中央原料供給部、10,10A,10B,10C,10D…篩機、20…走行装置、21…主回転ローラ、22…副回転ローラ、30…壁材、F…粉体原料