IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボッシュ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ECU及び排気ブレーキ制御装置 図1
  • 特許-ECU及び排気ブレーキ制御装置 図2
  • 特許-ECU及び排気ブレーキ制御装置 図3
  • 特許-ECU及び排気ブレーキ制御装置 図4
  • 特許-ECU及び排気ブレーキ制御装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ECU及び排気ブレーキ制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/06 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
F02D9/06 G
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018076697
(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2019183762
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石川 成昭
(72)【発明者】
【氏名】プットジ ラオ ナガラジュ クマール
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-248992(JP,A)
【文献】特開2002-004894(JP,A)
【文献】特開平11-190256(JP,A)
【文献】特開2011-007119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載され、冗長化された第1の信号(41A、51A)及び第2の信号(41B、51B)のうちの何れか一方に基づいて排気フラップ(19)に対する制御信号(S1)を遮断し、前記排気フラップ(19)を開位置に動作させるECU(30)において、
前記ECU(30)は、
リレー(40)を動作させることにより前記制御信号(S1)を遮断する、Hブリッジ回路(32)及びスイッチ回路(33)と、
CPU(31)と、を備え、
前記CPU(31)は、
前記排気フラップ(19)の開閉動作を制御する第1の処理部(311)と、
前記第1の処理部(311)の処理を監視する第2の処理部(312)と、
前記第2の処理部(312)の処理を監視する第3の処理部(313)と、を備え、
前記車両(1)のイグニッションがオフされてエンジンが停止したことを検知した際に、前記エンジンが停止した後、前記ECU(30)の電源がオフされるまでの間に、前記第1の処理部(311)が前記第1の信号(41A、51A)を前記Hブリッジ回路(32)及び前記スイッチ回路(33)へ送信することによる前記排気フラップ(19)の開位置への動作を前記排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、前記第1の信号(41A、51A)が有効であると判断し、前記第3の処理部(313)が前記第2の信号(41B、51B)を前記Hブリッジ回路(32)及び前記スイッチ回路(33)へ送信することによる前記排気フラップ(19)の開位置への動作を前記排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、前記第2の信号(41B、51B)が有効であると判断する診断処理を実行する様構成され、
前記診断処理が中断された場合、中断フラグを生成し、前記中断フラグを前記ECU(30)内のメモリ領域に記憶し、
前記車両(1)のイグニッションがオンされたことを検知した際に、前記メモリ領域に記憶されている前記中断フラグの連続生成回数を読み出し、前回の診断処理において前記メモリ領域に記憶した中断フラグがない場合、前記中断フラグの連続生成回数を0とし、前回の診断処理において前記メモリ領域に記憶した中断フラグがある場合、前記中断フラグの連続生成回数に1を加えることにより、前記中断フラグの連続生成回数を算出し、該算出結果を前記メモリ領域に記憶し、
前記中断フラグの連続生成回数が一定回数以上となった場合、前記冗長化が有効でないと判断する
ことを特徴とするECU(30)。
【請求項2】
車両(1)に搭載され、冗長化された第1の信号(41A、51A)及び第2の信号(41B、51B)のうちの何れか一方に基づいて排気フラップ(19)に対する制御信号(S1)を遮断し、前記排気フラップ(19)を開位置に動作させるECU(30)を備えた排気ブレーキ制御装置(100)において、
前記ECU(30)は、
リレー(40)を動作させることにより前記制御信号(S1)を遮断する、Hブリッジ回路(32)及びスイッチ回路(33)と、
CPU(31)と、を備え、
前記CPU(31)は、
前記排気フラップ(19)の開閉動作を制御する第1の処理部(311)と、
前記第1の処理部(311)の処理を監視する第2の処理部(312)と、
前記第2の処理部(312)の処理を監視する第3の処理部(313)と、を備え、
前記車両(1)のイグニッションがオフされてエンジンが停止したことを検知した際に、前記エンジンが停止した後、前記ECU(30)の電源がオフされるまでの間に、前記第1の処理部(311)が前記第1の信号(41A、51A)を前記Hブリッジ回路(32)及び前記スイッチ回路(33)へ送信することによる前記排気フラップ(19)の開位置への動作を前記排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、前記第1の信号(41A、51A)が有効であると判断し、前記第3の処理部(313)が前記第2の信号(41B、51B)を前記Hブリッジ回路(32)及び前記スイッチ回路(33)へ送信することによる前記排気フラップ(19)の開位置への動作を前記排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、前記第2の信号(41B、51B)が有効であると判断する診断処理を実行する様構成され、
前記診断処理が中断された場合、中断フラグを生成し、前記中断フラグを前記ECU(30)内のメモリ領域に記憶し、
前記車両(1)のイグニッションがオンされたことを検知した際に、前記メモリ領域に記憶されている前記中断フラグの連続生成回数を読み出し、前回の診断処理において前記メモリ領域に記憶した中断フラグがない場合、前記中断フラグの連続生成回数を0とし、前回の診断処理において前記メモリ領域に記憶した中断フラグがある場合、前記中断フラグの連続生成回数に1を加えることにより、前記中断フラグの連続生成回数を算出し、該算出結果を前記メモリ領域に記憶し、
前記中断フラグの連続生成回数が一定回数以上となった場合、前記冗長化が有効でないと判断する
ことを特徴とする排気ブレーキ制御装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECU及び排気ブレーキ制御装置に関し、特にディーゼルエンジンを搭載する車両に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
一般にディーゼルエンジンを搭載する車両は、排気管内に排気フラップを備える。排気フラップは、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の制御により、排気管を開放する開位置又は排気管を閉鎖する閉位置に動作する。
【0003】
排気フラップが排気管を閉鎖する閉位置に動作すると、排気管内の排気圧力が増加することでエンジンの回転抵抗が増加し、エンジンブレーキの作用が向上する。このように排気フラップを閉鎖させてエンジンブレーキの作用を向上させるブレーキを一般に排気ブレーキと呼ぶ。
【0004】
特許文献1には、排気ブレーキに関する技術が開示されている。具体的にはバタフライバルブ(排気フラップ)に孔を形成することで、排気フラップが全閉位置の場合でも一定の排気流量を確保する排気ブレーキが開示されている。この特許文献1に記載の技術によれば、排気流量の管理に要するコストを削減することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-69321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ECUの故障や断線等により排気フラップが意図せず閉位置に動作すると、路面状態によってはエンジンブレーキが効きすぎてスリップが発生する。この場合、車両の安全性を確保するために排気フラップを開位置に戻す必要がある。しかしECUや信号線に何らかの不具合が生じていると、排気フラップを確実に開位置に動作させることができない場合がある。
【0007】
このような場合に排気フラップを確実に開位置に動作させる手法として、例えば開位置に動作させる信号線を2重化する手法が考えられる。しかし単に信号線を2重化しても、一方又は両方の信号線に断線等の不具合が生じている場合、実際には冗長化されているとはいえず、排気フラップを確実に開位置に動作させることはできない。そのため冗長化を実現するためには、2重化した信号線を適宜診断する必要がある。また診断に際しては車両動作を考慮して効率的に行われることが望ましい。
【0008】
診断は、例えばアフターランプロセスにおいて実行されるとよい。アフターランプロセスは、イグニッションがオンされてエンジンが始動してから、イグニッションがオフされてエンジンが停止するまでの一連のドライビングサイクルが終了する間際のタイミングに行われる処理である。
【0009】
ここで、何らかの原因によりアフターランプロセスが中断する場合が考えられる。例えばサービスセンターにおいて、アフターランプロセス中にバッテリが取り外された場合である。この場合、診断も中断する。診断が完了せずに中断した場合、安全性確保の観点から、次のドライビングサイクルの開始時、すなわちイグニッションがオンされるエンジン始動時のタイミングで再度の診断を行えばよい。
【0010】
しかしこのエンジン始動時のタイミングで診断を行うと、エンジンの始動が遅延することに伴い、運転性が損なわれるという課題が生じる。
【0011】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、冗長化された信号線の有効性を判断する診断処理が中断した場合において、運転性を損なうことなく車両の安全性を確保し得る電子制御装置及び排気ブレーキ制御装置を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、本発明においては、車両(1)に搭載され、冗長化された第1の信号(41A、51A)及び第2の信号(41B、51B)のうちの何れか一方に基づいて排気フラップ(19)に対する制御信号(S1)を遮断し、排気フラップ(19)を開位置に動作させるECU(30)において、ECU(30)は、リレー(40)を動作させることにより制御信号(S1)を遮断する、Hブリッジ回路(32)及びスイッチ回路(33)と、CPU(31)と、を備え、CPU(31)は、排気フラップ(19)の開閉動作を制御する第1の処理部(311)と、第1の処理部(311)の処理を監視する第2の処理部(312)と、第2の処理部(312)の処理を監視する第3の処理部(313)と、を備え、車両(1)のイグニッションがオフされてエンジンが停止したことを検知した際に、エンジンが停止した後、ECU(30)の電源がオフされるまでの間に、第1の処理部(311)が第1の信号(41A、51A)をHブリッジ回路(32)及びスイッチ回路(33)へ送信することによる排気フラップ(19)の開位置への動作を排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、第1の信号(41A、51A)が有効であると判断し、第3の処理部(313)が第2の信号(41B、51B)をHブリッジ回路(32)及びスイッチ回路(33)へ送信することによる排気フラップ(19)の開位置への動作を排気フラップ(19)に備えられた位置センサの出力により検出した場合、第2の信号(41B、51B)が有効であると判断する診断処理を実行する様構成され、診断処理が中断された場合、中断フラグを生成し、中断フラグをECU(30)内のメモリ領域に記憶し、車両(1)のイグニッションがオンされたことを検知した際に、メモリ領域に記憶されている中断フラグの連続生成回数を読み出し、前回の診断処理においてメモリ領域に記憶した中断フラグがない場合、中断フラグの連続生成回数を0とし、前回の診断処理においてメモリ領域に記憶した中断フラグがある場合、中断フラグの連続生成回数に1を加えることにより、中断フラグの連続生成回数を算出し、該算出結果をメモリ領域に記憶し、中断フラグの連続生成回数が一定回数以上となった場合、冗長化が有効でないと判断するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冗長化された信号線の有効性を判断する診断処理が中断した場合において、運転性を損なうことなく車両の安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】車両の吸気系及び排気系の全体構成図である。
図2】排気ブレーキ制御装置の内部構成図である。
図3】ECUの内部構成図である。
図4】安全性確認処理のフローチャートである。
図5】他の排気ブレーキ制御装置の内部構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明について、図面を参照しながら本発明の一実施の形態を詳述する。なお以下の説明はあくまで本発明の一実施の形態にすぎず、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。
【0016】
図1は、車両1の吸気系及び排気系の全体構成を示す。
吸気系は、吸気管11、コンプレッサ12a、インタークーラ13及び吸気マニホルド14を備える。吸気iは、吸気管11を通って、コンプレッサ12aにより圧縮され、インタークーラ13により冷却され、吸気マニホルド14により各気筒に分配される。各気筒に分配された吸気iは、インジェクタ15から噴射される燃料と混合され、各気筒の燃焼室内で燃焼する。
【0017】
排気系は、排気マニホルド16、排気管17、排気再循環(EGR:Exhaust Gas Recirculation)装置18、タービン12b、排気フラップ19及び排気浄化装置20を備える。各気筒の燃焼室から排出された排気eは、排気マニホルド16により統合された後、排気管17を通って、EGR装置18方向に流れる排気と、タービン12b方向に流れる排気とに分岐される。
【0018】
EGR装置18方向に流れる排気eは、EGR管18aを通って、EGRクーラ18bにより冷却され、EGR弁18cにより流量が調整されて再度、吸気マニホルド14により各気筒に分配される。各気筒に分配された排気eは、燃焼のために再利用される。
【0019】
一方で燃焼のために再利用されない排気eは、タービン12b方向に流れる。排気eは、タービン12bを介して、このタービン12bに接続されているコンプレッサ12aを回転駆動する。なおコンプレッサ12aの回転駆動により吸気iが圧縮される結果、燃焼室内での燃焼が促進される。コンプレッサ12a及びタービン12bは、一般にターボチャージャ12と呼ばれる。
【0020】
タービン12bを通過した排気eは、排気フラップ19により流量が調整される。この排気フラップ19の動作の詳細については後述するが、通常時には開位置に動作し、排気ブレーキ動作時には閉位置に動作する。排気フラップ19により流量が調整された排気eは、排気浄化装置20を通過した後、外部に排出される。
【0021】
排気浄化装置20は、DPF(Diesel Particulate Filter)装置20a及び尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)装置20bを備える。DPF装置20aは、排気eに含まれる粒子状物質を捕集し除去する。尿素SCR装置20bは、尿素水溶液を用いて排気eに含まれる窒素酸化物を人体に無害な窒素又は水蒸気に還元する。
【0022】
また車両1は、排気ブレーキ制御装置100を備える。
排気ブレーキ制御装置100は、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)30、リレー40、外部ECU50及び排気フラップ19を備える。
【0023】
ECU30は、車両1の各部に設置された各種センサ(図示省略)からの信号を受信し、また車両1の各部に設置された各種機器(図示省略)に対して制御信号を送信することにより、車両1の動作を統括的に制御する。
【0024】
特にここでは、ECU30は排気フラップ19を動作させるアクチュエータ(図示省略)に対して、リレー40を介して制御信号S1を送信する。これによりECU30は、通常、開位置にある排気フラップ19を排気ブレーキ動作時には閉位置に動作させることができる。なお閉位置には、排気管17を部分的に閉鎖する中間位置と、排気管17の全部を閉鎖する全閉位置とがある。
【0025】
またECU30は、制御信号S1を送信する信号線とは別の信号線によりリレー40と接続される。ECU30は、制御信号S1を遮断する場合、遮断信号S4をリレー40に送信する。これによりリレー40が動作し、制御信号S1の送信の有無にかかわらず、排気フラップ19を開位置に動作させることができる。
【0026】
排気フラップ19は、リターンスプリング等のバネ部材を備え(図示省略)、制御信号S1が送信されない通常時には、リターンスプリングのバネ力の作用により開位置の状態を維持する。これに対し排気フラップ19は、制御信号S1が送信される排気ブレーキ動作時には、リターンスプリングのバネ力に反して閉位置に動作する。
【0027】
また排気フラップ19は、位置センサを備え(図示省略)、開位置又は閉位置を示す位置信号S2をECU30に送信する。ECU30は、この位置信号S2に基づいて排気フラップ19の動作を適宜制御する。
【0028】
リレー40は、ECU30と排気フラップ19との間に配置され、ECU30と排気フラップ19との間を通信可能に接続する。またリレー40は、これらECU30と排気フラップ19との間の信号線とは別の独立した信号線によりECU30と排気フラップ19とに接続される。リレー40は、ECU30の制御により、通常時には信号線を導通して制御信号S1を送信可能にする一方、スリップ時には信号線を遮断するように動作する。
【0029】
外部ECU50は、ECU30とは別筐体のECUであり、具体的にはABS(Antilock Brake System)装置やESP(Electronic Stability Control)装置である。外部ECU50は、車両1のスリップを検知すると、スリップ検知信号S3を生成してECU30に送信する。ECU30は、スリップ検知信号S3を受信すると遮断信号S4を送信し、制御信号S1を遮断することで排気フラップ19を開位置に動作させる。
【0030】
図2は、排気ブレーキ制御装置100の内部構成を示す。
排気ブレーキ制御装置100は、上述の通り、ECU30、リレー40、外部ECU50及び排気フラップ19を備える。ECU30は、CPU(Central Processing Unit)31、Hブリッジ回路32及びスイッチ回路33を備える。
【0031】
CPU31は、ECU30の動作を統括的に制御する。ここでは排気フラップ19の動作を制御するため、CPU31は排気フラップ19からの位置信号S2を受信し、位置信号S2に基づいて、排気フラップ19の開閉位置を制御すべき場合はHブリッジ回路32に制御要求信号S11を送信する。
【0032】
またCPU31は、位置信号S2にかかわらず(排気フラップ19の開閉位置にかかわらず)、排気フラップ19を開位置に動作させる必要がある場合はHブリッジ回路32に遮断要求信号S41を送信し、またスイッチ回路33に遮断要求信号S51を送信する。
【0033】
Hブリッジ回路32は、CPU31からの制御要求信号S11に基づいて、排気フラップ19の開閉位置を制御する制御信号S1を送信する。制御信号S1は、リレー40を介してアクチュエータ(図示省略)に送信される。アクチュエータは、制御信号S1に基づいて、排気フラップ19を開位置にある場合には閉位置に動作させる。
【0034】
またHブリッジ回路32は、CPU31からの遮断要求信号S41に基づいて、リレー40の動作を制御する遮断信号S4をリレー40に送信する。この場合、リレー40は、制御信号S1が送信されているか否かにかかわらず、ECU30(Hブリッジ回路32)と、排気フラップ19とを接続する信号線を遮断し、Hブリッジ回路32からの制御信号S1を遮断する。これにより排気フラップ19は、リターンスプリングのバネ力の作用により開位置に動作する。
【0035】
なお実際にはHブリッジ回路32は、ハイサイドスイッチを備え、このハイサイドスイッチは、CPU31からの遮断要求信号S41を受信するとONに切り替わり、リレー40のコイルに電流が流れる。コイルに電流が流れると、リレー40が動作して制御信号S1を遮断することができる。
【0036】
スイッチ回路33は、Hブリッジ回路32とは異なる回路であって、Hブリッジ回路32とは独立した経路でCPU31と、リレー40とに接続される。
【0037】
スイッチ回路33は、CPU31からの遮断要求信号S51に基づいて、リレー40の動作を制御する。リレー40は、制御信号S1が送信されているか否かにかかわらず、ECU30(Hブリッジ回路32)と、排気フラップ19とを接続する信号線を遮断し、Hブリッジ回路32からの制御信号S1を遮断する。これにより排気フラップ19は、リターンスプリングのバネ力の作用により開位置に動作する。
【0038】
実際にはスイッチ回路33は、例えばローサイドスイッチである。ローサイドスイッチは、CPU31からの遮断要求信号S51を受信するとONに切り替わり、リレー40のコイルに電流が流れる。リレー40のコイルに電流が流れると、リレー40が動作して制御信号S1を遮断することができる。
【0039】
外部ECU50は、車両1のスリップを検知するECUであり、例えばABSやESPである。外部ECU50のCPU51は、車両1のスリップを検知すると、CPU31にスリップ検知信号S3を送信する。CPU31は、スリップ検知信号S3を受信すると、遮断要求信号S41又はS51を生成してHブリッジ回路32又はスイッチ回路33に送信する。これによりHブリッジ回路32からの制御信号S1を遮断することができる。
【0040】
図3は、ECU30の内部構成を示す。ECU30は、上記の通り、CPU31、Hブリッジ回路32及びスイッチ回路33を備える。ここでは特にCPU31の内部構成について説明する。
【0041】
CPU31は、レベル1~3の3つの処理領域を備える。
レベル1は、排気フラップ19の開閉動作を実質的に制御する処理領域であり、第1の処理部311を備える。第1の処理部311は、Hブリッジ回路32に制御要求信号S11を送信し、Hブリッジ回路32を介して排気フラップ19の開閉動作を制御する。
【0042】
また第1の処理部311は、外部ECU50からのスリップ検知信号S3を受信した場合、車両1にスリップが発生したことを検知する。この場合、第1の処理部311は、スリップ検知信号S3に基づいて遮断要求信号S41A又はS51Aを生成し、これをHブリッジ回路32又はスイッチ回路33に送信する。
【0043】
レベル2は、レベル1の処理を監視する処理領域であり、第2の処理部312を備える。第2の処理部312は、外部ECU60からのスリップ検知信号S3を受信した場合、車両1にスリップが発生したことを検知する。この場合、第2の処理部312は、スリップ検知信号S3に基づいて遮断要求信号S61Aを生成し、これを第1の処理部311に送信する。
【0044】
第1の処理部311は、例えば受信すべきスリップ検知信号S3を受信していない場合、或いは、スリップ検知信号S3に基づいて生成すべき遮断要求信号S41A又はS51Aを生成していない場合でも、第2の処理部312からの遮断要求信号S61Aに基づいて遮断要求信号S41A又はS51Aを生成し、これをHブリッジ回路32又はスイッチ回路33に送信する。
【0045】
これにより、第1の処理部311に部分的な不具合が生じている場合や第1の処理部311と、外部ECU50との間の接続に不具合が生じている場合であっても、車両1にスリップが発生した場合には排気フラップ19を開位置に確実に動作させることができる。
【0046】
また第2の処理部312は、第1の処理部311からの遮断要求信号S41A又はS51Aの有無を監視しており、遮断要求信号S61Aを第1の処理部311に送信したにもかかわらず、第1の処理部311から遮断要求信号S41A又はS51Aが送信されない場合、遮断要求信号S61Bを生成し、これを第3の処理部313に送信する。
【0047】
レベル3は、レベル2の処理を監視する処理領域であり、第3の処理部313を備える。第3の処理部313は、第2の処理部312からの遮断要求信号S61Bを受信した場合、遮断要求信号S41B又はS51Bを生成し、これをHブリッジ回路32又はスイッチ回路33に送信する。
【0048】
これにより、第1の処理部311に不具合が生じており遮断要求信号S41A又はS51Aが送信されない場合であって、かつ、車両1にスリップが発生した場合、排気フラップ19を開位置に確実に動作させることができる。
【0049】
図4は、安全性確認処理のフローチャートを示す。この安全性確認処理は、排気フラップ19の安全性を確認する処理である。以下、ECU30のCPU31を処理主体として説明する。
【0050】
まずCPU31は、アフターランプロセスを実行するか否かを判断する(SP1)。アフターランプロセスを実行する場合(SP1:Y)、CPU31は、アフターランプロセス中に診断処理を実行する(SP2)。
【0051】
アフターランプロセスは、イグニッションがオフされてエンジンが停止した後、ECU30の電源がオフされるまでの間のタイミングで実行される処理である。本実施の形態においては、各種ステータス情報をチェックする一般的な処理に加えて、冗長化を判断する診断処理を実行する。
【0052】
診断処理においてCPU31は、第1の処理部311による遮断要求信号S41A及びS51Aと、第3の処理部313による遮断要求信号S41B及びS51Bとの有効性を判断する。
【0053】
具体的にCPU31は、第1の処理部311において遮断要求信号S41A及びS51Aを生成し、これらをHブリッジ回路32及びスイッチ回路33に送信して、制御信号S1を遮断する。そしてCPU31は、排気フラップ19からの位置信号S2に基づいて、実際に排気フラップ19が開位置に動作したか否かを判断する。
【0054】
同様にCPU31は、第3の処理部313において遮断要求信号S41B及びS51Bを生成し、これらをHブリッジ回路32及びスイッチ回路33に送信して、制御信号S1を遮断する。そしてCPU31は、位置信号S2に基づいて、排気フラップ19が開位置に動作したか否かを判断する。
【0055】
開位置に動作したか否かの判断に際してCPU31は、一定量の開動作を確認した時点で(例えば開度が0%から10%になった時点で)、開位置に動作したものと判断する。このように排気フラップ19が少しでも開方向に動作した時点で判断することにより、診断時間の短縮化を図ることができる。
【0056】
次いでCPU31は、上記の診断処理が中断したか否かを判断する(SP3)。中断していない場合(SP3:N)、CPU31は本処理を終了する。これに対し中断した場合(SP3:Y)、CPU31は中断フラグを生成し(SP4)、これを所定のメモリ領域に記憶した後、本処理を終了する。
【0057】
ステップSP1に戻り、CPU31はアフターランプロセスを実行しない場合(SP1:N)、イグニッションがオンされたか否かを判断する(SP5)。イグニッションがオンされた場合(SP5:Y)、CPU31は、所定のメモリ領域を読み出して、中断フラグの連続生成回数を算出する。
【0058】
中断フラグの連続生成回数の算出に際して、CPU31は、所定のメモリ領域に前回の診断時に記憶した中断フラグがない場合、連続生成回数をゼロに設定する。これに対し中断フラグがある場合、保持している連続生成回数を+1だけ加算する。前回の診断時に中断フラグが初めて生成された場合、CPU31は、連続生成回数を「1」に設定して保持する。
【0059】
CPU31は、中断フラグの連続生成回数は一定回数以上であるか否かを判断する(SP6)。そしてCPU31は、連続生成回数が一定回数以上である場合(SP6:Y)、冗長化が有効でないと判断する(SP7)。CPU31は、排気フラップ19を使用禁止にするなどの設定を行った上で、本処理を終了する。
【0060】
これに対しCPU31は、算出した連続生成回数が一定回数以上でない場合(SP6:N)、この連続生成回数を所定のメモリ領域に記憶して保持する。CPU31は、次回にイグニッションがオンされたタイミングで、この連続生成回数を読み出す。
【0061】
例えばCPU31は、連続生成回数が3回程度である場合、メンテナンス業務等で意図的に、或いは、たまたま診断処理が中断されただけであって、冗長化は有効であるものと判断する。これに対し連続生成回数が10回程度である場合、冗長化は有効でないものと判断する。なおこのときの一定回数は、例えば10回である。
【0062】
CPU31は、アフターランプロセスの実行中でもなく(SP1:N)、イグニッションがオンにされた状態でもない場合(SP5:N)、本処理を終了する。
【0063】
図5は、他の排気ブレーキ制御装置100Bの内部構成を示す。ハイサイドスイッチ34及びローサイドスイッチ35を備え、リレー40を備えない点で、図2の排気ブレーキ制御装置100と異なる。以下排気ブレーキ制御装置100と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、異なる点について説明する。
【0064】
ハイサイドスイッチ34及びローサイドスイッチ35は、CPU31からの制御要求信号S11に基づいて、排気フラップ19の開閉位置を制御する制御信号S1を送信する。制御信号S1によりアクチュエータ(図示省略)が動作し、排気フラップ19が閉位置に動作する。
【0065】
またハイサイドスイッチ34及びローサイドスイッチ35は、CPU31からの遮断要求信号S61及びS71に基づいて、内部のスイッチをOFFに切り替える。これによりハイサイドスイッチ34及びローサイドスイッチ35は、排気フラップ19に接続されている信号線を遮断し、排気フラップ19に対する制御信号S1を遮断することができる。
【0066】
ハイサイドスイッチ34及びローサイドスイッチ35は、排気フラップ19に接続されている信号線を遮断した場合、この状態(オープンロード)を示す応答信号S81をCPU31に送信する。CPU31は、この応答信号S81に基づいて、排気フラップ19が実際に開位置に動作したものと判断する。オープンロードであることを示す応答信号S81に基づいて開動作を判断することにより、診断時間の短縮化を図ることができる。
【0067】
以上のように本実施の形態によれば、アフターランプロセス実行中に診断処理を実行し、この診断処理が中断した場合、中断フラグを生成するようにした。一方で、イグニッションがオンされたタイミングで中断フラグの連続生成回数を算出し、この連続生成回数が一定回数以上である場合、冗長化が有効でないと判断するようにした。これにより運転性が損なわれることを防止し、車両1の安全性を確保することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 車両
19 排気フラップ
30 ECU
32 Hブリッジ回路
33 スイッチ回路
31 CPU
311 第1の処理部
312 第2の処理部
313 第3の処理部
40 リレー
50 外部ECU
100 排気ブレーキ制御装置
S1 制御信号
S11 制御要求信号
S4 遮断信号
S41 遮断要求信号
S51 遮断要求信号

図1
図2
図3
図4
図5