(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】通信装置及び通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/44 20180101AFI20221220BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20221220BHJP
B61L 3/12 20060101ALI20221220BHJP
H04W 4/42 20180101ALI20221220BHJP
H04W 76/20 20180101ALI20221220BHJP
H04W 36/16 20090101ALI20221220BHJP
【FI】
H04W4/44
B61L25/02 Z
B61L3/12 Z
H04W4/42
H04W76/20
H04W36/16
(21)【出願番号】P 2018085480
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】荒木 貴之
【審査官】倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139205(JP,A)
【文献】特開2005-236463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
B61L 25/02
B61L 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車を構成する各車両に設置され車両の車両番号情報を取得可能な通信機器と地上に設置された無線通信用アンテナを介して通信する通信装置であって、
前記通信機器から前記車両番号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記車両番号に基づいて当該列車における最後尾の車両を検出する検出部と、
前記検出部が前記最後尾の車両を検出した後に前記通信機器と前記通信装置との接続をリセットさせる通信制御部と、を備え
、
前記通信制御部は、前記検出部が前記最後尾の車両を検出してから前記列車が所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に前記通信機器に対して通信のリセットを示す信号を送信する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記最後尾の車両を示す前記車両番号が設定されていることを特徴とする請求項
1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記通信のリセットを示す信号を送信した後、前記通信機器と再接続された後に所定のコンテンツに関する情報を前記通信機器へ送信することを特徴とする請求項
1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
列車を構成する各車両に設置され車両の車両番号情報を取得可能な通信機器と、前記通信機器と地上に設置された無線通信用アンテナを介して通信する通信装置と、を有する通信システムであって、
前記通信装置は、
前記通信機器から前記車両番号を受信する受信部と、
前記受信部が受信した前記車両番号に基づいて当該列車における最後尾の車両を検出する検出部と、
前記検出部が前記最後尾の車両を検出した後に前記通信機器と前記通信装置との接続をリセットさせる通信制御部と、を備え
、
前記通信制御部は、前記検出部が前記最後尾の車両を検出してから前記列車が所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に前記通信機器に対して通信のリセットを示す信号を送信する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
前記通信機器は、前記通信のリセットを示す信号に基づいて前記無線通信用アンテナとの接続を一旦切断した後に再接続することを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記通信機器は、電波強度が最も強い前記無線通信用アンテナと再接続することを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両等の列車との通信を行う通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、列車内に動画像等を表示可能な画像表示装置を設置して、乗車している乗客に向けて運行情報や広告等のコンテンツを表示させることが行われている。鉄道事業者等の列車運行者は列車内へ広告を流すことで広告料を徴収して新た収入源とすることができる。
【0003】
このような広告等のコンテンツの更新については、例えば特許文献1に記載されているように、例えば駅や車庫などの地上の施設に設けられたサーバから無線通信によりコンテンツを列車に配信して更新することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載したような地上の施設からの無線通信により列車内の機器に対してコンテンツを更新する際に、無線LAN(Local Area Network)で使用されているIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11規格による通信方式で行った場合以下のような問題がある。
【0006】
図7は、10両編成の列車Tが例えば車庫に入線する際の地上に設置された無線通信装置である地上局G1~G3との接続状態を示した図である。地上局G1~G3は、列車Tの入線方向から地上局G1、地上局G2、地上局G3の順に軌道(線路)に沿って設置されている。また、
図7において、列車Tの各車両は、進行方向(矢印A)に対して先頭の車両からt1、t2、t3、…、t10とし、各車両には、地上局G1~G3と通信する無線器wが2つずつ設置されている。
【0007】
図7(a)は、入線し始めの状態である。
図7(a)では、先頭車両t1及び2両目の車両t2が地上局G1の通信範囲に含まれるため、先頭車両t1の無線機w及び2両目の車両t2の無線機wは地上局G1と接続される。
【0008】
次の
図7(b)は、
図7(a)から列車Tが更に入線した状態である。
図7(b)では、先頭車両t1は、地上局G1の通信範囲から外れ、地上局G2の通信範囲に含まれている。そのため、先頭車両t1の無線機wは地上局G1との接続が切れた後に地上局G2と再接続される。また、2両目の車両t2~7両目の車両t7までは、地上局G1の通信範囲に含まれているため、これらの車両の無線機wは地上局G2と接続される。但し、2両目の車両t2の無線機wは、接続されている地上局G2と距離が離れているため、4両目の車両t4~7両目の車両t7の無線機wと比較して電波強度等により通信速度が低下している(図中線を細く記載)。
【0009】
そして
図7(c)は、列車Tの入線が完了し停車した状態である。
図7(c)では、先頭車両t1~4両目の車両t4までの無線機wが地上局G2と接続され、5両目の車両t5~10両面の車両t10の無線機wが地上局G1と接続されている。
図7(c)では、先頭車両t1及び2両目の車両t2の無線機wは、接続されている地上局G2と距離が離れているため、4両目の車両t4の無線機wと比較して通信速度が低下している。同様に、5両目の車両t5の無線機wは、接続されている地上局G3と距離が離れているため、7両目の車両t7~10両目の車両t10の無線機wと比較して通信速度が低下している。
【0010】
図7(c)の状態では、全ての車両が地上局と無線により接続されているものの、通信速度が低い車両があるため、コンテンツの更新に時間がかかる車両が発生してしまう。
【0011】
そこで、本発明は、列車に設置された通信機器と無線により通信する際に通信速度の低下を少なくすることができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載された発明は、列車を構成する各車両に設置され車両の車両番号情報を取得可能な通信機器と地上に設置された無線通信用アンテナを介して通信する通信装置であって、前記通信機器から前記車両番号を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記車両番号に基づいて当該列車における最後尾の車両を検出する検出部と、前記検出部が前記最後尾の車両を検出した後に前記通信機器と前記通信装置との接続をリセットさせる通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記検出部が前記最後尾の車両を検出してから前記列車が所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に前記通信機器に対して通信のリセットを示す信号を送信する、ことを特徴とする通信装置である。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記検出部は、前記最後尾の車両を示す前記車両番号が設定されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載された発明において、前記通信制御部は、前記通信のリセットを示す信号を送信した後、前記通信機器と再接続された後に所定のコンテンツに関する情報を前記通信機器へ送信することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載された発明は、列車を構成する各車両に設置され車両の車両番号情報を取得可能な通信機器と、前記通信機器と地上に設置された無線通信用アンテナを介して通信する通信装置と、を有する通信システムであって、前記通信装置は、前記通信機器から前記車両番号を受信する受信部と、前記受信部が受信した前記車両番号に基づいて当該列車における最後尾の車両を検出する検出部と、前記検出部が前記最後尾の車両を検出した後に前記通信機器と前記通信装置との接続をリセットさせる通信制御部と、を備え、前記通信制御部は、前記検出部が前記最後尾の車両を検出してから前記列車が所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に前記通信機器に対して通信のリセットを示す信号を送信する、ことを特徴とする通信システムである。
【0016】
請求項5に記載された発明は、請求項4に記載された発明において、前記通信機器は、前記通信のリセットを示す信号に基づいて前記無線通信用アンテナとの接続を一旦切断した後に再接続することを特徴とするものである。
【0017】
請求項6に記載された発明は、請求項5に記載された発明において、前記通信機器は、電波強度が最も強い前記無線通信用アンテナと再接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、列車の最後尾の車両を検出後に無線通信を切断するため、列車の最後尾の車両を検出後に無線通信の接続をリセットすることができる。したがって、
図7(c)のような通信速度が低下した状態から通信を切断して接続し直すことができ、例えば
図7の先頭車両t1であれば、地上局G2よりも近くに位置する地上局G3と接続させることができる。
【0019】
また、列車の最後尾の車両を検出後に通信装置側から無線通信の接続をリセットすることができる。したがって、通信機器側が最後尾の車両の検出等をする必要が無く、汎用の機器を使用することができる。また、通信制御部は、検出部が最後尾の車両を検出してから列車が所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に通信のリセットを示す信号を送信するので、列車が停止して各車両の通信機器と、地上に設置された地上局との位置関係が固定した状態で通信の再接続を行わせることができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、検出部は、最後尾の車両を示す車両番号が設定されているので、最後尾の車両の検出処理を簡易にすることができる。また、列車に設置された通信機器では、自身が最後尾であることを検出するための処理等を必要とせず、車両番号を送信するだけでよく、列車側の構成も簡易にすることができる。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、通信制御部は、通信のリセットを示す信号を送信した後、通信機器と再接続された後に所定のコンテンツに関する情報を通信機器へ送信するので、再接続後の通信状態が改善した状態でコンテンツの送信をすることができる。したがって、遅い通信速度でのコンテンツの送信を防止することができる。
【0023】
請求項
4に記載の発明によれば、列車の最後尾の車両を検出後に無線通信を切断するため、列車の最後尾の車両を検出後に無線通信の接続をリセットすることができる。したがって、
図7(c)のような通信速度が低下した状態から通信を切断して接続し直すことができ、例えば
図7の先頭車両t1であれば、地上局G2よりも近くに位置する地上局G3と接続させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる通信装置を有する通信システムの概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたデータ配信装置の機能構成図である。
【
図3】
図1に示された車両におけるシステム構成の概略構成図であるである。
【
図4】
図3に示された画像表示装置の機能構成図である。
【
図5】
図1に示された通信システムの動作のシーケンス図である。
【
図6】列車が車庫に入線する際の列車に設置された無線機と地上に設置された地上局との接続状態を示した説明図である。
【
図7】従来技術における列車Tに設置された無線機と地上に設置された地上局との接続状態を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~
図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる通信装置を有する通信システムの概略構成図である。
【0026】
図1に示した通信システム100は、通信装置としてのデータ配信装置1と、無線通信用のアンテナを有する地上局G1~G3と、列車Tの各車両t1~t10に設置された通信機器としての無線機wと、を有している。
【0027】
データ配信装置1は、所定の施設に設置されたサーバ装置(サーバコンピュータ)であって、不図示のデータ編集装置で編集された広告等の画像情報や当該画像情報の表示制御情報を含むコンテンツ情報が入力され、当該コンテンツ情報を地上局G1~G3を介して列車Tの各車両t1~t10に設置された画像表示装置10(
図3を参照)に配信する。表示制御情報とは、例えば画像表示装置10の車両内の設置位置、列車Tの現在位置、現在時刻あるいは列車種別等により表示内容を変化させるための制御情報である。
【0028】
図2にデータ配信装置1の機能構成図を示す。データ配信装置1は、データ入力部2と、処理部3と、通信部4と、記憶部5と、を備えている。
【0029】
データ入力部2は、データ配信装置1を構成するサーバ装置のネットワークインターフェースやUSB(Universal Serial Bus)インタフェース等が機能し、データ編集装置から前記したコンテンツ情報等が入力される。
【0030】
検出部、通信制御部としての処理部3は、データ配信装置1を構成するサーバ装置のCPU(Central Processing Unit)が機能し、データ配信装置1の全体制御を司る。処理部3は、データ入力部2から入力されたコンテンツ情報を記憶部5に一旦蓄積させるとともに、各車両t1~t10に設置された無線機wと通信の接続制御およびコンテンツ情報の配信制御を行う。
【0031】
受信部としての通信部4は、データ配信装置1を構成するサーバ装置のネットワークインターフェース等が機能し、通信制御を示すデータやコンテンツ情報を含むデータ等の送受信をする。
【0032】
記憶部5は、データ配信装置1を構成するサーバ装置のハードディスク等の記憶装置が機能し、前記した画像情報等が蓄積されている。
【0033】
地上局G1~G3は、列車Tが入線する駅や車庫等の軌道(線路)に沿って設置されている。地上局G1~G3は、地上局G1~G3は、列車Tの入線方向(矢印A)から地上局G1、地上局G2、地上局G3の順に設置されている。地上局G1~G3は、データ配信装置1とは有線LAN(Local Area Network)により接続されており、無線機wとは無線LANにより接続可能となっている。つまり、地上局G1~G3は、有線LANで接続するためのネットワークインターフェースや無線LANで接続する無線通信用アンテナ等を備えている。なお、地上局G1~G3が備えるアンテナは地上に直接設置されるに限らない。例えば壁面等の地上に建設された構造物に取り付けられていてもよい。つまり、地上局G1~G3が備えるアンテナが移動しなければよい。
【0034】
なお、データ配信装置1と、地上局G1~G3と、の間にはHUB装置(不図示)が設置され、データ配信装置1から送信されたデータを分配するとともに、地上局G1~G3が受信したデータをデータ配信装置1へ送信している。
【0035】
列車Tは、
図1に示した構成では、車両t1~車両t10が連結されている10両編成となっている。列車Tの車両数は10両編成に限らず1両以上であればよい。そして、各車両t1~t10には、地上局G1~G3と通信可能な無線機wが2つずつ設置されている。
【0036】
無線機wは、地上局G1~G3と無線LANにより通信可能な通信機器である。無線機wは、設置され車両の車両番号情報が設定されている。また、無線機wは、
図1に示したような車両の長手方向一方の端部に設けるに限らず、両端部に設けてもよい。また、1両に設けられる無線機wは、2つに限らず1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、無線機wの車両における設置位置は、地上局G1~G3と通信可能な位置であれば特に限定されない。
【0037】
図3は、車両t1におけるシステム構成の概略構成図である。なお、車両t2~t10も同様の構成である。
図3に示したように車両t1には、無線機wと画像表示装置10とが設けられている。
【0038】
画像表示装置10は、例えば車両t1の客室内のドアの上部に設置されている。画像表示装置10は、無線機wが受信したコンテンツ情報を内部の記憶媒体等に格納する。
【0039】
画像表示装置10の機能構成を
図4に示す。
図4に示したように、画像表示装置10は、電源11と、LCD信号変換部12と、LCD画面13と、画像表示制御部14と、SDカード15と、を備えている。
【0040】
電源11は、外部(車両t1)から例えば100Vの直流電圧が入力され、例えば12Vの直流電圧に変換後、LCD信号変換部12及び画像表示制御部14等に出力して画像表示装置10内に電源電圧を供給する。
【0041】
LCD信号変換部12は、画像表示制御部14と例えばDVI(Digital Visual Interface)により接続され、画像表示制御部14がSDカード15から読み出したコンテンツ情報の含まれる画像情報が入力される。また、LCD信号変換部12は、LCD画面13と例えばLVDS(Low voltage differential signaling)により接続され、LCD信号変換部12に入力された画像情報をLVDSに規定された信号に変換してLCD画面13に出力する。
【0042】
LCD画面13は、液晶ディスプレイ(LCD)により構成され、LCD信号変換部12から入力された信号に基づいて画像を表示する。即ち、画像情報を画像として表示する画像表示部として機能する。
【0043】
画像表示制御部14は、運行情報表示装置112と例えばRS-485インタフェースにより接続されている。また、画像表示制御部14は、SDカード15が着脱自在な図示しないスロットを有している。画像表示制御部14は、前記したスロットに挿入されたSDカード15に記憶されている画像情報を読み出す。そして、RS-485インタフェースから入力される運行情報に基づいてLCD画面13に表示される画像情報をSDカード15から読み出して、符号化されている場合は復号してLCD信号変換部12に出力する。
【0044】
SDカード15は、周知のように、カード状に形成され、不揮発性の半導体メモリを内蔵した読み書き自在の可搬型記憶媒体である。SDカード15には、データ配信装置1から配信されたコンテンツ情報等が記憶されている。なお、SDカード15には、予めデフォルトのコンテンツ情報等が記憶されていてもよい。なお、本実施形態では可搬型記憶媒体としてSDカード15で説明するが、SDカードに限らず、他の方式のメモリカードでもよいし、USBメモリやハードディスクあるいは光ディスク等の可搬型記憶媒体であってもよい。また、可搬型記憶媒体でなく、画像表示制御部14の内蔵メモリや画像表示装置10内に別途設けたメモリ等にコンテンツ情報を格納してもよい。
【0045】
次に、上述した構成の通信システム100の動作について
図5のシーケンス図を参照して説明する。
【0046】
まず、データ配信装置1は、列車Tの各車両t1~t10に設置された無線機wを検出するためにポーリングの問い合わせデータを各無線機wへ送信する(ステップS101)。この問い合わせデータは、最後尾の車両を検出するまで定期的に送信する(ステップS101~S105)。なお、
図5ではポーリングの回数は5回であるが、5回に限らないことは言うまでもない。
【0047】
一方、先頭車両t1の無線機wでは、1回目のポーリング(ステップS101)では、まだ、列車Tの入線前であり地上局G1~G3のいずれとも無線通信が接続されていないため、1回目のポーリングに対応する応答はしない。そして、時刻ti1で列車Tが例えば車庫等の地上局と通信可能な範囲に入線し始める。
【0048】
2回目のポーリング(ステップS102)の際には列車Tは前記した通信可能範囲に入線し始めており、先頭車両t1の無線機wは、例えば地上局G1と無線通信が接続されていたため、ポーリング応答をデータ配信装置1へ送信する(ステップS201)。以降、先頭車両t1の無線機wはポーリングの問い合わせに対する応答をデータ配信装置1へ送信する(ステップS202~S204)。このポーリング応答には無線機wの設置されている車両番号情報を含める。先頭車両であれば“1”が車両番号となる。この車両番号は、例えば無線機wの設置の際に予め設定すればよい。あるいは画像表示装置10のSDカード15等に設定して無線機wが取得してもよい。
【0049】
この無線機wからのポーリング応答は、データ配信装置1の通信部4が受信して処理部3へ出力される。したがって、処理部3は、ポーリング応答に含まれる車両番号を取得することができる。
【0050】
その後、時間が経過して列車Tの入線が進むと、2両目t2以降の車両も順次地上局G1~G3のいずれかと無線通信が接続されポーリング応答をデータ配信装置1へ送信する。そして、最後尾の車両である車両t10が例えば地上局G1と無線通信が接続されてポーリング応答をデータ配信装置1へ送信する(ステップS301)。
【0051】
データ配信装置1では、通信部4が最後尾の車両t10からのポーリング応答を受信すると、処理部3そのポーリング応答に含まれる車両番号情報に含まれる車両番号“10”から最後尾の車両であることを検出する(ステップS106)。データ配信装置1の処理部3には、最後尾を示す車両番号が予め設定されている。したがって、処理部3は、その最後尾を示す車両番号と、受信した車両番号と、を照合することで最後尾の車両であることを検出する。このように最後尾を示す車両番号が予め設定されているので、最も大きい車両番号“10”だけでなく、最も小さい車両番号“1”が最後尾の場合も検出可能である。
【0052】
次に、データ配信装置1では、処理部3は、最後尾の車両が検出された後に、少なくとも列車Tが所定位置(車庫における停車位置等)に停車する(時刻ti2)までウェイトする(ステップS107)。即ち、最後尾の車両t10を検出してから列車Tが所定位置に停車するまでに要する時間が経過するまで待機する。このウェイト時間は列車Tの進入速度や停車させる場所、1編成の長さ等に応じて適宜設定される。これらのパラメータ(進入速度、場所、長さ等)は既知の値であるので、ウェイト時間を予め設定することは可能である。
【0053】
次に、データ配信装置1では、処理部3が通信部4に、列車Tの全ての無線機wに対して接続のリセットを要求する信号を送信する(ステップS109)。このリセットによって、無線機wでは、地上局G1~G3との接続を一旦切断し、各無線機wの近くの地上局と再接続する。
【0054】
次に、データ配信装置1では、通信部4がリセット要求を送信した後、所定時間ウェイトする。このウェイト時間は、ステップS109でリセットした無線機wの再接続が完了するまでの時間である。このウェイト時間は、無線機wや地上局G1~G3の仕様等に応じて適宜設定される。本実施形態では、無線機wの再接続は、無線機wと地上局との間の動作でありデータ配信装置1が直接関与しないため所定時間ウェイトとしているが、例えば地上局から無線機wと接続した旨の情報が得られる場合は、当該情報の取得までウェイトすればよい。
【0055】
そして、データ配信装置1は、無線機w(画像表示装置10)へコンテンツ情報の送信を開始する(ステップS110)。つまり、SDカード15等に記憶されているコンテンツ情報の更新を開始する。
【0056】
上述したフローチャートに記載した動作の具体例を
図6を参照して説明する。
図6(a)~(c)は、既に説明した
図7と同じである。
図6では、最後尾の車両t10が検出されて列車Tが停車した状態の後に(
図6(c))、無線機wに対して接続のリセットを要求する信号を送信する。リセット要求が送信されると、それを受信した無線機wでは、現在接続されている地上局との接続を切断し、再度近くの地上局と接続をし直す。
【0057】
なお、本実施形態ではリセット要求を送信しているが、再接続要求や無線機wの再起動要求等、無線機wが地上局との接続を一旦切断して接続し直すような信号(コマンド等も含む)であればよい。これらの信号を受信すると、無線機wは地上局との接続を切断し、再度近くの地上局との接続をし直す。このとき、無線機wは自身が行うスキャン等により検出された地上局と接続を確立する。
【0058】
この無線機wに対して接続のリセットを要求する信号の送信によって、例えば、
図6(c)で先頭車両t1、2両目の車両t2、5両目の車両t5の無線機wといった通信速度が低下した状態であった無線機wの接続状態がリセットされ、
図6(d)に示したように、リセット前より高速な通信速度で通信できるように地上局と接続される。一般的に、無線機wからの距離が近い地上局の方が、距離が遠い地上局よりも電波強度が強いため発見されやすい。したがって、
図6の場合、例えば先頭車両t1の無線機wは、地上局G2よりも近くに位置する地上局G1と接続される。
【0059】
また、無線機wが、受信した電波の強度を検出することできる機能を有していれば、接続状態をリセットした後に、無線機wが電波強度の最も強い無線局を選択して接続するようにしてもよい。
【0060】
本実施形態によれば、データ配信装置1は、列車Tを構成する各車両t1~t10に設置された無線機wと無線により通信する通信装置であって、通信部4が、無線機wから当該無線機wが設置された車両の車両番号を受信し、処理部3が、通信部4が受信した車両番号に基づいて当該列車Tにおける最後尾の車両を検出する。そして、処理部3が、最後尾の車両を検出した後に通信機器に対して接続のリセットを要求する信号を通信部4に送信させる。このようにすることにより、列車の最後尾の車両を検出後に無線通信をリセットすることができる。したがって、
図6(c)のような通信速度が低下した状態から通信を切断して接続し直すことができ、例えば
図6の先頭車両t1であれば、地上局G2よりも近くに位置する地上局G3と接続させることができる。
【0061】
また、処理部3は、最後尾の車両t10を示す車両番号が設定されているので、最後尾の車両t10の検出処理を簡易にすることができる。また、列車Tに設置された無線機wでは、自身が最後尾であることを検出するための処理等を必要とせず、車両番号を送信するだけでよく、列車T側の構成も簡易にすることができる。
【0062】
また、処理部3は、最後尾の車両t10を検出してから列車Tが所定位置に停車するまでに要する時間が経過した後に接続のリセットを要求する信号を通信部4に送信させるので、列車Tが停止して各車両の無線機wと、地上に設置された地上局G1~G3との位置関係が固定した状態で通信の再接続を行わせることができる。
【0063】
また、処理部3は、接続のリセットを要求する信号を送信した後、無線機wと再接続された後にコンテンツ情報を通信部4に送信させるので、再接続後の通信状態が改善した状態でコンテンツ情報の送信をすることができる。したがって、遅い通信速度でのコンテンツ情報の送信を防止することができる。
【0064】
なお、上述した実施形態では、1編成当たりの車両数は固定であったが、データ配信装置1が編成毎の車両数をデータベースとして持つことで、最後尾の車両番号を特定することができる。この際には、ポーリング応答には、各編成を識別することができる情報を含めるようにする。
【0065】
また、上述した実施形態では、データ配信装置1が接続のリセットを要求する信号を送信していたが、データ配信装置1が接続のリセットを要求によらず無線機wが接続を一旦切断して再接続するようにしてもよい。例えば、最後尾を検出したとの情報を無線機wに送信して、無線機w側で接続を一旦切断して再接続してもよい。つまり、データ配信装置1は、最後尾の車両を検出した後に通信機器(無線機w)と通信装置(データ配信装置1)との接続をリセットさせることができればよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、列車として、線路を走行する鉄道車両で説明したが、鉄道車両に限らない。例えば、モノレール、新交通システム、ケーブルカー、浮上式鉄道、トロリーバス等の予め定められた案内路を走行し、定められた停車場や車庫に停車するものも含むものである。
【0067】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の通信装置及び通信システムの構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0068】
1 データ配信装置(通信装置)
2 データ入力部
3 処理部(検出部、通信制御部)
4 通信部(受信部)
5 記憶部
100 通信システム
T 列車
t1~t10 車両
w 無線機(通信機器)