(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】テープ回収機構、テープフィーダ、実装装置、テープ回収方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20221220BHJP
【FI】
H05K13/02 C
(21)【出願番号】P 2018088707
(22)【出願日】2018-05-02
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】坂本 卓也
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-295829(JP,A)
【文献】特開2008-091709(JP,A)
【文献】特開2007-173701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給元から繰り出されたテープを回収するテープ回収機構であって、
テープを回収方向に送るローラと、
前記ローラに連結したモータとを備え、
前記モータの励磁を切る前に、前記モータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転させ
、
前記所定量は、少なくともテープの引張力が前記モータの負荷トルクよりも小さくなるような回転量である、ことを特徴とするテープ回収機構。
【請求項2】
テープの回収前に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持されることを特徴とする請求項1に記載のテープ回収機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたテープ回収機構を備え、
多数の部品をパッケージングしたキャリアテープから剥離したカバーテープを前記テープ回収機構にテープとして回収させ、キャリアテープから露出した部品を供給位置に向けて送り出すことを特徴とするテープフィーダ。
【請求項4】
動作スケジュールで予定された部品の供給開始よりも所定時間前に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持されることを特徴とする請求項3に記載のテープフィーダ。
【請求項5】
部品を供給する際の待ち時間に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持されることを特徴とする請求項3に記載のテープフィーダ。
【請求項6】
請求項3から請求項5のいずれかに記載のテープフィーダと、
前記テープフィーダから送り出された部品を基板に実装する実装ヘッドとを備えたことを特徴とする実装装置。
【請求項7】
供給元から繰り出されたテープを回収するテープ回収方法であって、
モータを励磁して当該モータに連結したローラでテープを回収させるステップと、
前記モータの励磁を切る前に、前記モータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転するステップとを有し
、
前記所定量は、少なくともテープの引張力が前記モータの負荷トルクよりも小さくなるような回転量である、
ことを特徴とするテープ回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの駆動力によってテープを回収するテープ回収機構、テープフィーダ、実装装置、テープ回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種機器に使用されるテープ回収機構として、テープの弛みを抑えながらテープを回収するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のテープ回収機構では、テープの搬送経路にテンションローラ等の調整機構が設けられており、この調整機構によってテープの回収方向とは逆方向に引張力を生じさせることで、テープに対して一定のテンションがかけられている。テープ回収機構のモータの停止時にも、テープにはテンションが作用し続けるため、モータを弱励磁して制動力を付与することでモータの逆転を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような一般的なテープ回収機構では、モータの停止時にも弱励磁をかけ続けなければならないため、消費電力及び発熱量が増大するという問題があった。一方で、モータの弱励磁を切ると、テープの引張力に耐え切れずにモータが逆転し、入力信号に対する同期を失う、いわゆる脱調によってモータが制御不能に陥るという問題があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、消費電力及び発熱量を低く抑えつつ、モータの脱調を防止することができるテープ回収機構、テープフィーダ、実装装置、テープ回収方法を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のテープ回収機構は、供給元から繰り出されたテープを回収するテープ回収機構であって、テープを回収方向に送るローラと、前記ローラに連結したモータとを備え、前記モータの励磁を切る前に、前記モータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転させ、前記所定量は、少なくともテープの引張力が前記モータの負荷トルクよりも小さくなるような回転量である、ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様のテープ回収方法は、供給元から繰り出されたテープを回収するテープ回収方法であって、モータを励磁して当該モータに連結したローラでテープを回収させるステップと、前記モータの励磁を切る前に、前記モータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転するステップとを有し、前記所定量は、少なくともテープの引張力が前記モータの負荷トルクよりも小さくなるような回転量である、ことを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、モータの励磁を切る前にモータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転することで、テープに弛みを持たせた状態でモータが停止される。テープのテンションが解除されているため、モータの励磁を切っても逆転することがない。よって、モータの停止時には励磁されないため、消費電力及び発熱量を低く保つことができ、モータの逆転を抑えて脱調を防止することができる。
【0009】
本発明の一態様のテープ回収機構において、テープの回収前に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持される。この構成によれば、モータが順方向に所定量だけ回転することで、テープが張り直されてテープの回収動作に備えることができる。
【0010】
本発明の一態様のテープフィーダは、上記のテープ回収機構を備え、多数の部品をパッケージングしたキャリアテープから剥離したカバーテープを前記テープ回収機構にテープとして回収させ、キャリアテープから露出した部品を供給位置に向けて送り出すことを特徴とする。この構成によれば、モータの消費電力及び発熱を低く抑えると共に脱調を防止することで、テープフィーダによって部品を安定的に供給することができる。
【0011】
本発明の一態様のテープフィーダにおいて、動作スケジュールで予定された部品の供給開始よりも所定時間前に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持される。この構成によれば、動作スケジュールに基づいてテープが張り直されるため、テープの張り直しの動作時間によって部品の供給動作が遅れることがない。よって、テープの張り直しが部品の供給動作に影響することがなく、部品の供給時のタクトタイムの低下が抑えられる。また、モータの励磁時間の増加を短く抑えることで、消費電力及び発熱量を低く保つことができる。
【0012】
本発明の一態様のテープフィーダにおいて、部品を供給する際の待ち時間に前記モータが励磁されて、前記モータが順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持される。この構成によれば、部品を供給する際の待ち時間を利用してテープが張り直されるため、テープの張り直しの動作時間によって部品の供給動作が遅れることがない。よって、テープの張り直しが部品の供給動作に影響することがなく、部品の供給時のタクトタイムの低下が抑えられる。また、モータの励磁時間の増加を短く抑えることで、消費電力及び発熱量を低く保つことができる。
【0013】
本発明の一態様の実装装置は、上記のテープフィーダと、前記テープフィーダから送り出された部品を基板に実装する実装ヘッドとを備えたことを特徴とする。この構成によれば、テープフィーダの消費電力及び発熱量を低く抑えつつ、実装ヘッドがテープフィーダから安定的に部品を受け取って基板に実装することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、モータの励磁を切る前にモータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転することで、消費電力及び発熱量を低く抑えつつ、モータの脱調を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態の実装装置全体を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態の実装ヘッド周辺を示す模式図である。
【
図3】本実施の形態の部品の供給動作の一例を示す図である。
【
図4】本実施の形態のモータ制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態の実装装置について説明する。
図1は、本実施の形態の実装装置全体を示す模式図である。
図2は、本実施の形態のテープフィーダを示す模式図である。なお、本実施の形態の実装装置は一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
【0017】
図1に示すように、実装装置1は、テープフィーダ20によって供給された各種部品を、実装ヘッド12によって基板Wの所定位置に実装するように構成されている。実装装置1の基台10には、X軸方向に基板Wを搬送する基板搬送部11が配設されている。基板搬送部11は、X軸方向の一端側から部品実装前の基板Wを実装ヘッド12の下方に搬入して位置決めし、部品実装後の基板WをX軸方向の他端側から装置外に搬出している。また、基板搬送部11を挟んだ両側には、複数のテープフィーダ20がX軸方向に横並びに配置されたフィーダバンク19が分離可能に連結されている。
【0018】
テープフィーダ20にはテープリール(供給元)21が着脱自在に装着され、テープリール21には多数の部品をパッケージングしたキャリアテープ22(
図2参照)が巻回されている。テープフィーダ20では、スプロケットホイール31(
図2参照)の回転によって、実装ヘッド12によってピックアップされる供給位置に向けてキャリアテープ22が搬送されている。実装ヘッド12に対する供給位置では、キャリアテープ22から表面のカバーテープ23(
図2参照)が剥離されて、キャリアテープ22のポケット内の部品が外部に露出される。なお、部品は基板Wに対して実装可能であれば、特に電子部品等に限定されない。
【0019】
基台10上には、一対の実装ヘッド12をX軸方向及びY軸方向に水平移動させる移動機構13が設けられている。移動機構13は、Y軸方向に延びる一対のY軸駆動部14と、X軸方向に延びるX軸駆動部15とを有している。一対のY軸駆動部14は基台10の四隅に立設した支持部(不図示)に支持されており、X軸駆動部15は一対のY軸駆動部14にY軸方向に移動可能に設置されている。また、X軸駆動部15上には実装ヘッド12がX軸方向に移動可能に設置され、X軸駆動部15とY軸駆動部14とによって実装ヘッド12が水平移動されてテープフィーダ20からピックアップした部品が基板Wの所望の位置に実装される。
【0020】
図2に示すように、テープフィーダ20はキャリアテープ22からカバーテープ23を剥離して、キャリアテープ22から露出した部品を実装ヘッド12(
図1参照)に対する供給位置に向けて送り出すように構成されている。フィーダフレーム25の後方側の下部に開口24が設けられ、この開口24にテープリール21(
図1参照)から繰り出されたキャリアテープ22が挿入されて、フィーダフレーム25内の搬送ガイド26に沿ってキャリアテープ22が送り出されている。キャリアテープ22は、搬送ガイド26によってフィーダフレーム25の開口24から斜め上方にガイドされた後、フィーダフレーム25の上面に沿って前方に導かれている。
【0021】
フィーダフレーム25の前方側には、キャリアテープ22を上方から覆うアッパーカバー27が取り付けられている。アッパーカバー27にはスリット28が形成されており、キャリアテープ22から剥離されたカバーテープ23はスリット28を通って折り返され、カバーテープ23が剥離されたキャリアテープ22はアッパーカバー27内を前方に向かって搬送される。アッパーカバー27にはスリット28の前方に供給口29が形成されており、供給口29を通じてキャリアテープ22のポケット内の部品が露出される。供給口29から露出した部品は実装ヘッド12のノズル17に受け渡される。
【0022】
また、フィーダフレーム25の前方側には、キャリアテープ22を前方に送り出すスプロケットホイール31が支持されている。スプロケットホイール31には、減速ギア列32を介してフィードモータ33が連結されている。フィードモータ33の回転にスプロケットホイール31が連動することで、スプロケットホイール31によってキャリアテープ22が前方に送られて供給口29に向けて部品が順番に供給される。キャリアテープ22から剥離されたカバーテープ23は後方に折り返された後、ガイドローラ41、テンションローラ42、一対の回収ローラ(ローラ)44によってフィーダフレーム25の後方側の回収ボックス47内に送り込まれている。
【0023】
回収ボックス47の入口付近には、回収方向にカバーテープ23を送る一対の回収ローラ44が支持されている。回収ローラ44には減速ギア列45を介してプルモータ(モータ)46が連結されている。プルモータ46の回転に回収ローラ44が連動することで、回収ローラ44によってカバーテープ23が後方に送られて回収ボックス47に回収される。一対の回収ローラ44の前方には、テンションアーム43の先端に支持されたテンションローラ42が位置付けられている。テンションローラ42によってカバーテープ23が押し込まれることで、テンションが作用した状態でカバーテープ23が回収される。
【0024】
このように、テンションローラ42で一定のテンションをかけながらカバーテープ23を回収することで、キャリアテープ22を送り出した時にキャリアテープ22からカバーテープ23を良好に剥離させている。テープフィーダ20には制御回路49が設けられており、制御回路49にはフィードモータ33とプルモータ46が接続されている。制御回路49は通信コネクタを介して実装装置1(
図1参照)に通信可能に接続され、実装装置1からの制御コマンドを制御回路49が受信することで、フィードモータ33とプルモータ46の励磁タイミングが制御されている。
【0025】
なお、制御回路49は、各種モータを制御するプロセッサやメモリ等によって構成されている。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成されており、各種モータを制御するための制御プログラムが記憶されている。なお、フィードモータ33及びプルモータ46は、各モータの回転量を検出するエンコーダが設けられていてもよい。エンコーダの検出結果が
各モータにフィードバックされることで、各モータによるテープの送り量を精度良く制御することができる。
【0026】
ところで、テープフィーダ20では、電源を切った状態でセットアップができるように、オペレータが手動でカバーテープ23を引き込むことができる程度に、プルモータ46のギア比が小さく設定されている。電源が切れた状態でもカバーテープ23にはテンションローラ42によってテンションが作用し続けるため、通常はプルモータ46に弱励磁をかけることで、カバーテープ23の引張力によるプルモータ46の逆転を抑えている。しかしながら、プルモータ46に常に弱励磁をかけなければならず、プルモータ46の消費電力及び発熱量が増大するという問題がある。
【0027】
そこで、本実施の形態のテープ回収機構40では、プルモータ46の励磁を切る前にプルモータ46がカバーテープ23の回収時と逆方向に所定量だけ回転して、カバーテープ23を弛ませている。これにより、プルモータ46の消費電力及び発熱量を低く抑えつつ、プルモータ46の逆転による脱調を防止することができる。また、キャリアテープ22の送り出しを再開するためには、カバーテープ23の張り直しが必要になるが、部品の供給動作が指示される少し前にカバーテープ23の張り直しを完了することで、カバーテープ23の張り直しによってテープフィーダ20の供給動作が遅れることがない。
【0028】
以下、
図3及び
図4を参照して、本実施の形態のテープフィーダによる部品の供給動作について説明する。
図3は、本実施の形態の部品の供給動作の一例を示す図である。
図4は、本実施の形態のモータ制御の一例を示す図である。なお、
図4のモータ制御の各時間は、特に限定されるものではなく、制御プログラムに応じて適宜変更される。また、
図4では、
図3の符号を適宜使用して説明する。
【0029】
図3Aに示すように、部品の供給動作時には、制御回路49を通じてフィードモータ33とプルモータ46に供給動作の制御コマンドが出力される。フィードモータ33は、制御コマンドに応じてスプロケットホイール31によってキャリアテープ22を間欠送りし、キャリアテープ22によって供給口29に部品を順番に送り出している。プルモータ46は、制御コマンドに応じてフィードモータ33に同期して、一対の回収ローラ44によってキャリアテープ22と同じ送り量で、キャリアテープ22から剥離されたカバーテープ23を回収ボックス47に送り込んでいる。
【0030】
このとき、カバーテープ23はテンションローラ42によって張られているため、キャリアテープ22からカバーテープ23が剥離される剥離位置では、カバーテープ23に回収ローラ44の引き込み力が強く作用する。キャリアテープ22はテープフィーダ20の前方側に強く送り出され、カバーテープ23はテープフィーダ20の後方側に折り返されながら強く引き込まれているため、キャリアテープ22からカバーテープ23が剥がれ易くなっている。このため、キャリアテープ22からカバーテープ23が剥がれずに、カバーテープ23がテープフィーダ20の供給口29側に巻き込まれることがない。
【0031】
図3Bに示すように、キャリアテープ22の停止時には、制御回路49を通じてフィードモータ33及びプルモータ46に励磁を切る制御コマンドが出力される。フィードモータ33は制御コマンドに応じて励磁を切り始めて、スプロケットホイール31の回転が止まることでキャリアテープ22の送りが停止される。プルモータ46は、制御コマンドに応じて励磁を切る前にカバーテープ23の回収時と逆方向に所定量だけ回転する。プルモータ46によって回収ローラ44が逆回転されて、回収ボックス47からカバーテープ23が送り出されることで、カバーテープ23にかけられたテンションが解除される。
【0032】
そして、プルモータ46が励磁を切り始めて、回収ローラ44の逆回転が止まることでカバーテープ23の送りが停止される。カバーテープ23が弛んでいるため、プルモータ46にはカバーテープ23によって引張力が強く作用することがない。よって、プルモータ46に励磁をかけなくても、プルモータ46の機械的な負荷トルクによって停止状態を維持することができ、プルモータ46の消費電力及び発熱量が増大することがない。また、プルモータ46の逆転が防止されているため、制御コマンドに対して同期を失うことがなく、脱調によってプルモータ46が制御不能に陥ることがない。
【0033】
このように、プルモータ46は励磁を切る前に、あえて自ら逆転してカバーテープ23のテンションを解除することで、カバーテープ23の次回の回収動作で制御可能な状態で停止している。なお、プルモータ46が、カバーテープ23の回収時と逆方向に回転する際の所定量は、少なくともカバーテープ23の引張力がプルモータ46の負荷トルクよりも小さくなるような回転量であればよい。したがって、プルモータ46の逆転によってカバーテープ23が完全に弛んでいる必要はなく、カバーテープ23によってプルモータ46に多少の引張力が作用していてもよい。
【0034】
図3Cに示すように、部品の供給再開時には、制御回路49から供給動作の制御コマンドが出力される前に、制御回路49からプルモータ46に対して供給準備開始の制御コマンドが出力される。プルモータ46は、制御コマンドに応じてカバーテープ23の回収前に励磁されて、カバーテープ23の回収方向と同じ順方向に所定量だけ回転する。プルモータ46によって回収ローラ44が正回転されて、回収ボックス47にカバーテープ23が送り込まれることで、カバーテープ23から弛みが除去されてカバーテープ23が張り直される。
【0035】
プルモータ46の励磁によってプルモータ46が所定量だけ回転した後に停止状態で維持される。このとき、カバーテープ23が張り直されているが、プルモータ46には励磁によって制動力が付与されているため、カバーテープ23の引張力によってプルモータ46が逆転することがない。そして、制御回路49を通じてフィードモータ33とプルモータ46に再び供給動作の制御コマンドが出力されて、キャリアテープ22の送り動作とカバーテープ23の回収動作が実施される。このように、プルモータ46が順方向に所定量だけ回転することで、カバーテープ23が張り直されてテープの回収動作に備えられている。
【0036】
この場合、キャリアテープ22の送り動作が開始される少し前に、カバーテープ23の張り直しを完了させている。例えば、実装装置1(
図1参照)は動作スケジュールに基づいて動作するため、この動作スケジュールで予定されたキャリアテープ22の送り動作よりも所定時間前にプルモータ46が励磁されて、プルモータ46が順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持される。また、テープフィーダ20が実装ヘッド12(
図1参照)に部品を供給する際の待ち時間にプルモータ46が励磁されて、プルモータ46が順方向に所定量だけ回転した後に停止状態で維持されてもよい。
【0037】
図4に示すように、動作スケジュールに基づいて部品の供給動作の開始よりも50[ms]以上前に、実装装置1(
図1参照)からテープフィーダ20のプルモータ46に供給準備開始の制御コマンドが通知される。プルモータ46は実装装置1にステータスレスポンスを返して、プルモータ46が励磁されて供給準備が開始される。このとき、カレントアップで2[ms]経過した後に、50[ms]から210[ms]かけてカバーテープ23が張り直される。このように、部品の供給動作前に、プルモータ46によるカバーテープ23の回収動作の準備が整えられる。
【0038】
張り直しの開始から50[ms]以上経過した後に、実装装置1からフィードモータ33とプルモータ46に供給動作の制御コマンドが通知される。フィードモータ33はカレントアップ2[ms]経過した後に、キャリアテープ22を送り出して実装装置1にステータスレスポンスを返している。プルモータ46は、フィードモータ33のカレントアップを待って、カバーテープ23を回収して実装装置1にステータスレスポンスを返している。フィードモータ33の送り動作とプルモータ46の回収動作は同期しており、コマンドの受信からレスポンスの返信までの間隔が、例えば60[ms]に設定されている。
【0039】
カバーテープ23の張り直しがキャリアテープ22の送り動作の50[ms]以上前に実施されているため、フィードモータ33で送り動作が実施される時点でプルモータ46の回収動作の準備が整えられている。また、プルモータ46の励磁時間が僅かに長くなるだけなので、プルモータ46の励磁時間の増加を短く抑えてプルモータ46の消費電力及び発熱量を低く保つことができる。さらに、動作スケジュールに基づいて部品の供給動作が実施されない待機時間を有効利用してカバーテープ23が張り直されるため、カバーテープ23の張り直しの動作時間によって部品の供給動作が遅れることがない。
【0040】
そして、部品の供給動作が複数回繰り返されて、実装ヘッド12に複数の部品が供給されると、実装装置1からフィードモータ33とプルモータ46に供給準備終了の制御コマンドが通知される。フィードモータ33は実装装置1にステータスレスポンスを返して、100[ms]経過後に励磁が切られる。プルモータ46は実装装置1にステータスレスポンスを介して、45[ms]以上かけてカバーテープ23を緩めた後に100[ms]経過後に励磁が切られる。カバーテープ23が弛んでいるため、プルモータ46の励磁が切られても逆転することがない。
【0041】
さらに、実装ヘッド12が基板に部品を実装して、再びテープフィーダ20に部品を取りに戻る場合には、テープフィーダ20から実装ヘッド12に部品を供給する際の待ち時間を利用してカバーテープ23が張り直される。この場合も、上記と同様に、キャリアテープ22の送り動作の開始よりも50[ms]以上前に、プルモータ46によってカバーテープ23が張り直されてカバーテープ23の回収動作の準備が整えられる。部品の供給動作前の空き時間を利用することで、カバーテープ23の張り直しが部品の供給動作に影響することがなく、部品の供給時のタクトタイムの低下が抑えられる。
【0042】
以上のように、本実施の形態のテープ回収機構40では、プルモータ46の励磁を切る前にプルモータ46がカバーテープ23の回収時と逆方向に所定量だけ回転することで、カバーテープ23に弛みを持たせた状態でプルモータ46が停止される。カバーテープ23のテンションが解除されているため、プルモータ46の励磁を切っても逆転することがない。よって、プルモータ46の停止時には励磁されないため、消費電力及び発熱量を低く保つことができ、プルモータ46の逆転を抑えて脱調を防止することができる。
【0043】
なお、本実施の形態において、テープ回収機構をテープフィーダに適用した構成について説明したが、この構成に限定されない。テープ回収機構は、供給元から繰り出されるテープを回収するものであればよく、テープ搬送が実施される各種の加工装置に適用することができる。
【0044】
また、本実施の形態において、テープ回収機構をテープフィーダのプルモータを制御してカバーテープを回収する構成に適用したが、テープフィーダのフィードモータを制御してキャリアテープを回収する構成に適用してもよい。
【0045】
また、本実施の形態において、回収ローラは、テープを回収方向に送る構成であればよく、例えば、外周面が摩擦面になっていてもよいし、外周面に送り歯が形成されていてもよい。
【0046】
また、本実施の形態において、ノズルとして吸着ノズルを例示したが、この構成に限定されない。ノズルは部品を保持可能であればよく、例えば、グリッパーノズルであってもよい。
【0047】
また、本実施の形態において、基板は各種部品を実装可能なものであればよく、プリント基板に限定されず、治具基板上に載せられたフレキシブル基板であってもよい。
【0048】
また、本実施の形態のプログラムは記憶媒体に記憶されてもよい。記録媒体は、特に限定されないが、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等の非一過性の記録媒体であってもよい。
【0049】
また、本発明の実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0050】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0051】
さらに、上記実施形態では、供給元から繰り出されたテープを回収するテープ回収機構であって、テープを回収方向に送る回収ローラと、回収ローラに連結したモータとを備え、モータの励磁を切る前に、モータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転することを特徴とする。この構成によれば、モータの励磁を切る前にモータがテープの回収時と逆方向に所定量だけ回転することで、テープに弛みを持たせた状態でモータが停止される。テープのテンションが解除されているため、モータの励磁を切っても逆転することがない。よって、モータの停止時には励磁されないため、消費電力及び発熱量を低く保つことができ、モータの逆転を抑えて脱調を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明は、消費電力及び発熱量を低く抑えつつ、モータの脱調を防止することができるという効果を有し、特に、キャリアテープから剥がされたカバーテープを回収するテープ回収機構、テープフィーダ、実装装置、テープ回収方法に有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 :実装装置
12 :実装ヘッド
20 :テープフィーダ
21 :テープリール(供給元)
22 :キャリアテープ
23 :カバーテープ(テープ)
33 :フィードモータ
40 :テープ回収機構
44 :回収ローラ(ローラ)
46 :プルモータ(モータ)
W :基板