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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】防火パネル
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20221220BHJP
   E06B 3/54 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B3/54 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018124334
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002681
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】永田 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】廣島 光彰
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 弘幸
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-29104(JP,A)
【文献】特開2017-214749(JP,A)
【文献】特開2013-181298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/16
E06B 3/54
E04B 1/62-1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートを挟み込んだガラスパネルと、ガラスパネルの端部を嵌め込む嵌合溝が形成された枠部材とを備え、
前記枠部材は、前記ガラスパネルの両側端部を嵌め込む嵌合溝が形成された縦枠と、前記ガラスパネルの上端部を嵌め込む嵌合溝が形成された上枠と、前記ガラスパネルの下端部を嵌め込む嵌合溝が形成された下枠とを有し、
前記ガラスパネルの端面とこの端面に対向する前記嵌合溝の溝底面との間に隙間が形成され、
前記ガラスパネルの端面と前記縦枠の前記溝底面との間の前記隙間は、前記ガラスパネルの端面と前記下枠の前記溝底面との間の前記隙間よりも大きく形成され、
少なくとも前記縦枠の嵌合溝及び前記下枠の嵌合溝が連通している防火パネル。
【請求項2】
前記嵌合溝の開口側に対して前記溝底面側の溝幅が広がっている請求項1に記載の防火パネル。
【請求項3】
前記枠部材の前記嵌合溝に、前記樹脂シートが加熱された際に発生するガスを通過させる排気孔が形成されている請求項1又は2に記載の防火パネル。
【請求項4】
前記排気孔は、等間隔で複数形成されている請求項に記載の防火パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
室内を仕切ることができ防火基準を満たした間仕切り等の防火パネルが知られている(例えば下記特許文献1)。
特許文献1には、窓枠にガラスパネルが嵌め込まれるコーキング溝が形成され、下側のコーキング溝は補助枠が窓枠に更に着脱可能に設けられて形成され、ガラスパネルを嵌め込む場合は、補助枠を取外して行われる防火戸等のガラス支持構造が開示されている。
ガラスパネルを取付ける場合は、コーキング溝に先ずガラスウール等の不燃材からなるバックアップ材を嵌め込み、ガラスパネルをコーキング溝に嵌め込み、次にコーキング溝とガラスパネルとの隙間にコーキング材を充填し、コーキング材によりガラスパネルを保持している。
上枠及び縦枠のコーキング溝は、ガラスパネルが嵌め込まれると、ガラスパネルと室内の壁面,壁面の開口端面もしくは塞ぎ材とによって閉じられた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-41831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、従来の防火パネル等は、コーキング溝にガラスパネルを嵌め込むとコーキング溝が閉じてしまう構造であるため、ガラスパネルの中間層に樹脂フィルムを介装している場合、火災により樹脂が燃えて出るガスの逃げ道がなかった。したがって、コーキング溝内に樹脂が燃えた際のガスが充満すると、上枠又は縦枠の隙間からガスが染み出て室内に漏れてしまうことが懸念された。
そこで本発明は、中間層に樹脂シートを介装させたガラスパネルを嵌め込んで設置される防火パネルの樹脂シートからガスが発生した場合に、ガスが室内に染み出てくることを防止し得る防火パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の防火パネルは、樹脂シートを挟み込んだガラスパネルと、ガラスパネルの端部を嵌め込む嵌合溝が形成された枠部材とを備え、前記ガラスパネルの端面とこの端面に対向する前記嵌合溝の溝底面との間に隙間が形成されている。
この構成によれば、火災によって樹脂シートが加熱されてガスを発生した場合に、嵌合溝内にガスを極力溜めて、ガスがガラスパネル側に漏れ出ることを抑制することができる。
【0006】
本発明の防火パネルの前記枠部材は、前記ガラスパネルの両側端部を嵌め込む嵌合溝が形成された縦枠と、前記ガラスパネルの上端部を嵌め込む嵌合溝が形成された上枠と、前記ガラスパネルの下端部を嵌め込む嵌合溝が形成された下枠とを有し、前記ガラスパネルの端面と前記縦枠の前記溝底面との間の前記隙間は、前記ガラスパネルの端面と前記上枠又は下枠の前記溝底面との間の前記隙間よりも大きく形成されていてもよい。
この構成によれば、火災によって樹脂シートが加熱されて発生した上方又は下方に流れやすいガスを極力縦枠の嵌合溝に導き、縦枠の嵌合溝から縦枠の裏面側(すなわちガラスパネルを嵌めた面の反対の面側であって、枠部材を嵌め込む建物の壁側)に排出に導くことができる。
【0007】
前記嵌合溝の開口側に対して前記溝底面側の溝幅が広がっていてもよい。
この構成によれば、火災によって樹脂シートが加熱されて発生したガスを溜めるスペースを広げることができる。
【0008】
本発明の防火パネルの前記縦枠の嵌合溝及び前記上枠の嵌合溝並びに前記縦枠の嵌合溝及び前記下枠の嵌合溝のいずれか又は双方が連通している。
この構成によれば、嵌合溝同士を連通させることによりガスを溜めるスペースを大きくすることができる。これにより、例えばガラスパネルの一端部側が集中的に加熱され、ガスが一端部から発生した場合等にガスを受け入れる余裕を持たせることができる。
【0009】
本発明の防火パネルの前記枠部材の前記嵌合溝に、前記樹脂シートが加熱された際に発生するガスを通過させる排気孔が形成されていてもよい。
この構成によれば、火災時に樹脂シートが加熱されてガスを発生した場合であっても、嵌合溝内から排気孔を経由して枠部材の裏面側(すなわちガラスパネルを嵌めた面の反対の面側であって、枠部材を嵌め込む建物の壁側)にガスを放出して、ガスがガラスパネル側に漏れ出ることを防止することができる。
【0010】
本発明の防火パネルの前記排気孔は、等間隔で複数形成されている。
この構成によれば、嵌合溝からガスを放出しやすくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防火パネルは、火災時にガラスパネルに挟み込んだ樹脂シートから発生したガスが室内に染み出ることを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の防火パネルを示した正面図である。
図2】本発明の一実施形態の防火パネルのガラスパネルを示した斜視図である。
図3】本発明の一実施形態の防火パネルの縦枠を示した斜視図である。
図4】本発明の一実施形態の防火パネルの縦枠を示した左側面図である。
図5】本発明の一実施形態の防火パネルの上枠を示した斜視図である。
図6】本発明の一実施形態の防火パネルの上枠を示した底面図である。
図7】本発明の一実施形態の防火パネルの下枠を示した斜視図である。
図8】(a)本発明の一実施形態の防火パネルの縦枠の他の例を示した平面図、(b)本発明の一実施形態の防火パネルの下枠の他の例を示した側面図である。
図9】(a),(b)本発明の一実施形態の防火パネルの補助凸条部の変形例を示した側面図である。
図10】本発明の一実施形態の防火パネルの縦枠の変形例を示した平面図である。
図11】本発明の一実施形態の防火パネルの縦枠の変形例を示した平面図である。
図12】本発明の一実施形態の防火パネルの上枠及び下枠の変形例を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の防火パネルの実施形態について説明する。
図1に示すように、本発明の防火パネル1は、ガラスパネル2と、ガラスパネル2の端部を嵌め込んで支持する枠部材3を有している。
【0014】
図2に示すように、ガラスパネル2は、2枚のガラス板2s,2sの間に中間層として樹脂シート4を挟み込んで略矩形に切断した3層構造で形成されている。ガラスパネル2の端面には、ガラス板2s,2sの端部間に樹脂シート4が露出している。
樹脂シート4は、フッ素樹脂等の材質により形成されている。
【0015】
図1に示すように、枠部材3は、縦枠5,5、上枠11及び下枠12を備えている。
図3又は図4に示すように、縦枠5は、図2に示すガラスパネル2を配する面(以下「表面」という)の幅方向、すなわち表面の短手方向の中央に、長手方向に延びる嵌合溝6が形成された外形の概略が偏平な直方体の部材である。
本実施形態では、縦枠5は、細長い矩形の鋼板を平面視略C字状に屈曲し、更に表面側の幅方向の中央を凹ませて形成された枠本体5Aと、枠本体5Aの裏面側の開口している箇所を一定の間隔を空けて覆う裏面板5Bとを有している。なお、裏面とは、本明細書では、ガラスパネル2を配する面の反対側の面であって、枠部材を嵌め込む建物の壁に対向させる面を指す。
【0016】
縦枠5において、裏面側で間隔を空けて平行に延びる板部分が裏面部7であり、裏面部7から約90°折れ曲がって厚さを形成する板部分が側面部8であり、側面部8,8間に亘って平坦に延び、幅方向中央に嵌合溝6が形成された板部分が表面部9となっている。
【0017】
側面部8は、図2に示すガラスパネル2の端部を嵌合させ得る程度の嵌合溝6を形成できる程度に裏面部7から立ち上がっている。
表面部9は、裏面部7と略平行に延びる平坦部9aと、平坦部9a,9a間に設けられた嵌合溝6とを有して、嵌合溝6にガラスパネル2の端部を嵌め込めるようになっている。
【0018】
表面部9に形成された嵌合溝6は、表面部9の略中央で裏面側に略90°折れ曲がった内側面6aと、内側面6aに対し略90°で折れ曲がった溝底面6bとにより形成され、一定の幅寸法で裏面部7側に凹んだ形状となっている。
嵌合溝6は、嵌合溝6内にガラスパネル2の端部を嵌め込んだ状態で、ガラスパネル2の端面から溝底面6bまでの距離がおよそ2mm以上20mm以下、好ましくはおよそ5mm以上16mm以下になるように形成されているとよい。具体的には、嵌合溝6は、およそ15mm以上35mm以下程度の深さに形成されているとよい。
【0019】
嵌合溝6の溝底面6bには、嵌合溝6内の排気を可能にする排気孔10が嵌合溝6の延在方向に等間隔で複数形成されている。排気孔10の大きさ及び形状は、特に限定されるものではなく、ガラスパネル2が熱せられることによって樹脂シート4から生じるガスにより嵌合溝6が充満し切らない程度に開いていればよい。
【0020】
裏面板5Bは、偏平な鋼板により形成されている。裏面板5Bの幅寸法は、裏面部7,7間に亘って配される程度に設定されている。また、裏面板5Bの縦方向すなわち長手方向の寸法は、裏面板5Bが縦枠5を建物側の鋼材に固定する際のアンカーとしての役割を果たし得る所定の寸法で形成されている。
【0021】
図5又は図6に示すように、上枠11は、嵌合溝6及び嵌合溝6の一方の側部に嵌合溝6に沿って延びる凸条部13が形成された枠本体11Aと、嵌合溝6の他方の側部に嵌合溝6に沿って着脱自在に取り付けられる補助凸条部14と、裏面板5Bと同様の機能を奏する裏面板11Bとを有している。
【0022】
上枠11の枠本体11Aは、凸条部13が設けられた点及び嵌合溝6に沿って固定具を挿通させる不図示の開口部が間隔を空けて形成されている点を除いて、縦枠5と略同様に形成されている。すなわち、上枠11において、裏面側で間隔を空けて平行に延びる板部分が裏面部7となり、裏面部7から約90°折れ曲がって厚さを形成する板部分が側面部8となり、側面部8,8間に亘って平坦に延びる幅方向中央に嵌合溝6が形成された板部分が表面部9となっている。
【0023】
凸条部13は、嵌合溝6の一方の内側面6aが表面部9の平坦部9aを超えて延びた後、嵌合溝6から離れる方向に90°に折れ曲がり、再び平坦部9aに向かって90°に折れ曲がった略U字状に形成されている。凸条部13は、嵌合溝6に沿って延在している。
固定具を挿通させる不図示の開口部は、嵌合溝6を挟んで凸条部13に対向する平坦部9a上に、嵌合溝6に沿って複数形成されている。
【0024】
補助凸条部14は、凸条部13に平行で嵌合溝6の一端から他端に亘って配される細長い部材であり、延在方向に直交する断面視で凸条部13と略同形状に形成された部材である。
具体的に、補助凸条部14は、図5に示すように枠本体11Aの表面部9に配置された際に表面部9から略90°に延びる立ち上がり側部14aと、立ち上がり側部14a,14a間に延び突出の頂面となる頂面部14bとを有している。嵌合溝6側の立ち上がり側部14aは、嵌合溝6の内側面6aと直線状で略面一となるように設置されている。
【0025】
頂面部14bには、図6に示すように不図示のビス等の固定具を挿通させる開口部20が、補助凸条部14を嵌合溝6に沿って配した際に平坦部9aに形成された不図示の開口部に対向する位置に、複数形成されている。
【0026】
図5及び図6に示すように、上枠11の嵌合溝6の溝底面6bにも、縦枠5の嵌合溝6と同様に、嵌合溝6内の排気を可能にする排気孔10が嵌合溝6の延在方向に間隔を空けて複数形成されている。排気孔10は、ガラスパネル2を支持する上枠11の剛性を保ち得るものであれば、その大きさ及び形状は特に限定されるものではなく、ガラスパネル2が熱せられることによって樹脂シート4から生じるガスにより嵌合溝6が充満し切らない程度に開いていればよい。
上枠11の嵌合溝6についても、嵌合溝6内にガラスパネル2の端部を嵌め込んだ状態で、ガラスパネル2の端面から溝底面6bまでの距離がおよそ2mm以上20mm以下、好ましくはおよそ5mm以上16mm以下になるように形成されているとよい。具体的には、嵌合溝6は、およそ15mm以上35mm以下程度の深さに形成されているとよい。
【0027】
図7に示すように、下枠12は、上枠11に対向して配置した際に、上下対称となる形状で形成されている。下枠12の各構成については、図5に示す上枠11と対称となる構成について対応する符号を付して、その説明を省略する。
【0028】
次に、上記の防火パネル1の設置方法及び火災時の防火パネル1の作用及び機能について説明する。
防火パネル1を設置するにあたっては、図3に示すように、裏面板5Bを縦枠5の裏面部7の内側から、裏面部7,7間に亘って配し、固定する。同様に、図5及び図7に示すように、上枠11の枠本体11A及び下枠12の枠本体12Aの裏面部7,7間にも裏面板11B,12Bをそれぞれ内側から配置して固定する。
【0029】
次に、裏面板5Bを固定した縦枠5を、防火パネル1を設置する室内の側壁面又は側壁に形成された開口部に設置し固定する。
裏面板11Bを固定した上枠11の枠本体11Aは、縦枠5の上部間に亘って天井面又は側壁に形成された開口部の上部に固定する。
【0030】
裏面板12Bを固定した下枠12の枠本体12Aは、縦枠5の下部間に亘って床面又は側壁に形成された開口部の下部に、それぞれ配置して固定する。
この際、上枠11の枠本体11A及び下枠12の枠本体12Aは、室内において、ガラスパネル2を嵌入する側寄りに補助凸条部14が配置されるように固定する。
【0031】
下枠12の枠本体12Aの嵌合溝6の溝底面6b上には、直方体形状に形成された不図示のセッティングブロックを配置しておく。
ガラスパネル2の下端部を下枠12の枠本体12Aの不図示のセッティングブロック上に置くとともに、ガラスパネル2の上端部を上枠11の枠本体11Aの嵌合溝6内に配置し、一方の縦枠5の嵌合溝6内にガラスパネル2の一方の側端部をできるだけ嵌入する。
【0032】
これにより、ガラスパネル2を両方の縦枠5,5、上枠11の枠本体11A及び下枠12の枠本体12Aに囲繞された開口部内に収めて、ガラスパネル2の他方の側端部が対向する他方の縦枠5の嵌合溝6内に嵌入可能となるようにする。この状態で、ガラスパネル2の左右の側端部が対向する縦枠5の嵌合溝6内の双方に嵌入するように水平方向に位置調整する。
【0033】
上枠11及び下枠12のそれぞれには、補助凸条部14を設置し、開口部20から不図示の固定具を挿入して補助凸条部14を上枠11及び下枠12のそれぞれの嵌合溝6の側部に固定する。ガラスパネル2と嵌合溝6の内側面6aとの間には、適宜コーキング材等を配しておく。
この状態で、縦枠5,5及び上枠11の嵌合溝6においては、ガラスパネル2の端面から溝底面6bまでの距離がおよそ2mm以上20mm以下又はおよそ5mm以上16mm以下となる隙間が形成されている。
【0034】
このように縦枠5、上枠11及び下枠12を設置する際、縦枠5の嵌合溝6と上枠11の嵌合溝6との間及び縦枠5の嵌合溝6と下枠12の嵌合溝6との間のいずれにも塞ぎ材などの部材を設置しない。したがって、嵌合溝6とガラスパネル2の端部とにより形成されるすべての空間が連通する。
以上のようにして、室内又は室内の壁部に形成された開口部への防火パネル1の設置が完了する。
【0035】
防火パネル1が設置された室内で火災が起きた場合、ガラスパネル2の温度が上昇して、中間層の樹脂シート4が溶融し、樹脂シート4からガスが発生することがある。樹脂シート4からガスが発生した場合、ガラスパネル2の端面から、縦枠5、上枠11及び/又は下枠12のそれぞれの嵌合溝6内にガスが溜まる。
【0036】
嵌合溝6にガラスパネル2を嵌め込むと嵌合溝6内が略密閉された状態となる従来の枠付き防火ガラスであると、嵌合溝6内でのガスの充満後ガスが、嵌合溝6とガラスパネル2との間等に生じているわずかな隙間から漏れ出て、異臭を放ったり、発火の要因となったりする虞があった。
【0037】
しかし、本発明の防火パネル1によれば、縦枠5、上枠11及び下枠12の各嵌合溝6の溝底面6bに排気孔10が形成されているため、樹脂シート4から発生したガスを火気がある室内又は室外側に漏らさずに、嵌合溝6内及び縦枠5、上枠11及び下枠12の裏面側に留めておくことができる。
【0038】
したがって、防火パネル1の周辺で火災が発生した場合に、樹脂シート4から発生したガスによって異臭を放ったり、ガスに引火したりすることを有効に防止することができるという効果を奏する。すなわち、防火パネル1は、ガラスパネル2が樹脂シート4を有していることにより、耐衝撃性が高められる上、防火性能を向上することができるという効果を奏する。
【0039】
また、縦枠5の嵌合溝6とガラスパネル2との間の空間、上枠11の嵌合溝6とガラスパネル2との間の空間及び下枠12の嵌合溝6とガラスパネル2との間の空間がそれぞれ連通しているため、ガスを溜める空間に余裕が生まれる。すなわち、防火パネル1が局所的に加熱され、例えばガラスパネル2の縦枠5の一方側から大量にガスが発生した場合であっても、縦枠5の嵌合溝6内に広がったガスが隣り合う上枠11又は下枠12の嵌合溝6に流れる。したがって、枠部材3の各部でのガスを溜める容量を大きくして、ガスが充満するのをより効果的に防止することができるという効果を奏する。
【0040】
また、防火パネル1は、溝底面6bとガラスパネル2の端面との間に隙間を持たせているため、地震等の発生によって枠部材3に対してガラスパネル2が傾いた場合、ガラスパネル2の枠部材3に対する傾きをある程度吸収して接触を回避することができる。したがって、防火パネル1は、溝底面6bとガラスパネル2との接触等によるガラスパネル2の破損を効果的に防止することができるという効果を奏する。
【0041】
なお、上記した実施形態では、縦枠5、上枠11及び下枠12の形状の一例を示したが、本発明は、上記実施形態の形状の枠部材3に限定して適用されるものではない。すなわち、本発明は、縦枠5、上枠11及び下枠12のそれぞれが中空で、ガラスパネル2を嵌合させる嵌合溝6が形成された枠部材であれば、例えば図8(a)に示す縦枠又は図8(b)に示す下枠のように、どのような枠付き防火ガラスに適用することもできる。
【0042】
また、排気孔10を縦枠5,5の嵌合溝6,6、上枠11の嵌合溝6及び下枠12の嵌合溝6のそれぞれに形成した例を示したが、排気孔10は、縦枠5、上枠11又は下枠12のいずれかの嵌合溝6に形成されたものであっても、本発明の効果を少しでも奏し得る。また、防火パネル1は、ガラスパネル2の端面と溝底面6bとの間に隙間を設けているため、排出孔10が形成されていなくても、火災時に一定量のガスを溜めてガスがガラスパネル2側に染み出すことを抑制することができるという効果を奏する。
【0043】
また、排気孔10は、ガラスパネル2に覆われない箇所であれば、嵌合溝6の内側面6a側に形成されていてもよい。
また、縦枠5、上枠11又は下枠12の嵌合溝6は、一部が連通していてもよい。
【0044】
また、枠部材は、一体成形されたものでなくてもよく、例えば図5に示した補助凸条部14は、図9(a),(b)に示すように、L字鋼を組み合わせて形成されたものであってもよく、また、図3に示した縦枠5は、図10で示すように、2つの部材を組み合わせて形成されるものであってもよい。
【0045】
また更に、図11図12に示すように、縦枠5,上枠11及び/又は下枠12の嵌合溝6の溝幅は、溝の深さ方向の開口6t側に対して溝底面6b側が広がっていてもよい。
この構成によれば、嵌合溝6の溝幅が深さ方向にストレートに形成されている場合に比べて、ガスを溜めるスペースをより大きく取ることが出来るという効果を奏する。
【符号の説明】
【0046】
1 防火パネル
2 ガラスパネル
3 枠部材
4 樹脂シート
5 縦枠
6 嵌合溝
6b 溝底面
10 排気孔
11 上枠
12 下枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12