(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】ギヤドモータ及びこのギヤドモータを備えたロボット
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20221220BHJP
H02K 11/22 20160101ALI20221220BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K11/22
(21)【出願番号】P 2018132176
(22)【出願日】2018-07-12
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 陽介
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-062981(JP,A)
【文献】実開昭63-117273(JP,U)
【文献】特開2017-189081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
H02K 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータケースの前端から駆動回転軸を突出させたモータ部と、このモータ部の前方側に設けられたギヤ機構部と、前記モータ部と前記ギヤ機構部との間でこれらを同軸状に連結する連結部材とを備え、前記連結部材に前記駆動回転軸の回転を検知する検知部を設け、
前記ギヤ機構部は、前記駆動回転軸の回転を伝達するギヤ機構を内部に構成した筒状のギヤケースを有し、このギヤケースの周壁には、後方へ突出し前記連結部材に係止する係止片が周方向に間隔を置いて複数設けられ、
複数設けられた前記係止片同士の間に前記検知部が配置されている
ことを特徴とするギヤドモータ。
【請求項2】
前記連結部材は、前記駆動回転軸を挿通する筒状に形成され、
前記駆動回転軸には、前記連結部材内にて径方向外側へ突出する被検知部が設けられ、前記検知部は、前記連結部材の周壁に設けられていることを特徴とする請求項1記載のギヤドモータ。
【請求項3】
前記連結部材の周壁には、前記検知部を外部から挿通し支持する貫通状の支持孔が設けられ、前記検知部は、この支持孔を介して外部に露出していることを特徴とする請求項2記載のギヤドモータ。
【請求項4】
前記駆動回転軸に被検知歯車部材が設けられ、この被検知歯車部材は、前記被検知部と、前記ギヤ機構部へ回転力を伝達する駆動歯車とを一体に有することを特徴とする請求項2又は3記載のギヤドモータ。
【請求項5】
前記連結部材の周壁には、前記複数の係止片にそれぞれ係止される複数の被係止部が設けられ、前記検知部は、周方向に隣接する前記被係止部の間で外部に露出していることを特徴とする請求項
1~4何れか1項記載のギヤドモータ。
【請求項6】
請求項1~5何れか1項記載のギヤドモータを備えたロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転をギヤ機構を介して出力するギヤドモータ及びこのギヤドモータを備えたロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種装置や機器の電動機構には、モータの回転駆動力をギヤ機構により減速して出力するギヤドモータが用いられている。ギヤドモータには、モータの駆動回転軸の回転力を、同軸状に配設された遊星歯車機構により伝達し、その前端側の出力軸から出力するようにしたものがある。
このようなギヤドモータにおいて、回転部分の回転数や回転角等の回転情報を得るには、ギヤ機構側の回転部分を検知するよりも、モータ側の回転部分を検知した方が検出精度を上げられる場合がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の従来技術では、モータの駆動回転軸を、遊星歯車機構に貫通させて前方へ延長し、この延長部分にパルス板を設け、このパルス板をフォトインタラプタによって検知するようにしている。
また、他の技術的手段としては、モータの駆動回転軸を、前記従来技術とは逆に、モータエンド側へ延長し、この延長部分にパルス板を設け、このパルス板をフォトインタラプタによって感知することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構造では、モータの駆動回転軸を遊星歯車機構に挿通したり、モータの駆動回転軸を前方又は後方へ延長したりする必要がある。その上、遊星歯車機構よりも前側、又はモータエンドよりも後側に、フォトインタラプタの配線構造を設ける必要もある。したがって、構造の複雑化や全長寸法の大型化を招きやすい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は以下の構成を具備するものである。
モータケースの前端から駆動回転軸を突出させたモータ部と、このモータ部の前方側に設けられたギヤ機構部と、前記モータ部と前記ギヤ機構部との間でこれらを同軸状に連結する連結部材とを備え、前記連結部材に前記駆動回転軸の回転を検知する検知部を設け、前記ギヤ機構部は、前記駆動回転軸の回転を伝達するギヤ機構を内部に構成した筒状のギヤケースを有し、このギヤケースの周壁には、後方へ突出し前記連結部材に係止する係止片が周方向に間隔を置いて複数設けられ、複数設けられた前記係止片同士の間に前記検知部が配置されていることを特徴とするギヤドモータ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るギヤドモータの一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の(II)-(II)線に沿ってギヤ機構部を断面表示した図である。
【
図4】同ギヤドモータの適用例であり、(a)は携帯情報端末に適用した例、(b)はロボットの関節部分に適用した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
ギヤドモータAは、
図1~
図3に示すように、モータケース11の前端から駆動回転軸12を突出させたモータ部10と、このモータ部10の前方側に設けられたギヤ機構部20と、モータ部10とギヤ機構部20との間でこれらを同軸状に連結する連結部材31と、連結部材31に設けられた検知部32とを備え、検知部32によって駆動回転軸12の回転角度や回転数等を検知可能にしている。
【0010】
モータ部10は、例えば周知のDCサーボモータやステッピングモータ等であり、後端側の給電端子13に電力が供給されることで、モータケース11から前方へ突出する駆動回転軸12を回転させる。
モータケース11は、連結部材31を止着するための前壁部11aを有する略有底筒状に形成される。
【0011】
また、モータケース11から突出する駆動回転軸12の前端側には、被検知歯車部材40が環状に装着され固定されている。
被検知歯車部材40は、検知部32によって検知可能な複数の被検知部41と、ギヤ機構部20へ回転力を伝達する駆動歯車42とを一体に有する。
【0012】
被検知部41は、駆動回転軸12に略直交する面に沿う平板状の部材であり、周方向に所定間隔を置いて複数(図示例によれば、五つ)設けられる。各被検知部41は、連結部材31内の空間にて、径方向外側へ突出している。
駆動歯車42は、複数の被検知部41の中心部から前方へ突出する平歯車であり、駆動回転軸12及び被検知部41に対し同軸状に設けられる。
【0013】
また、ギヤ機構部20は、内周部に内歯車21b(
図2参照)を有する略筒状のギヤケース21内に、駆動回転軸12を太陽歯車としてその外周部に噛み合うとともにギヤケース21内の内歯車21bにも噛み合う複数の遊星歯車22と、各遊星歯車22をその前方側から回転自在に支持するとともに前端側に2段目の太陽歯車23aを有するキャリア23と、太陽歯車23aの外周部に噛み合うとともにギヤケース21内の内歯車21bにも噛み合う複数の遊星歯車24と、各遊星歯車24をその前方側から回転自在に支持するとともに前端側に出力軸25aを有するキャリア25とを備え、駆動回転軸12の回転を順次に減速して出力軸25aへ伝達する遊星歯車機構を構成している。
図中、符号26は、遊星歯車22の後端面を受ける環状の受け部材である。また、符号27は、出力軸25aに嵌り合ってキャリア25の後方への移動を規制する止め輪である。
なお、駆動回転軸12の回転を二段階に減速するようにしているが、太陽歯車、遊星歯車及びキャリア等を増減することで、一段階又は三段階以上に減速する構成とすることも可能である。
【0014】
ギヤケース21は、出力軸25aを挿通した前壁部21aを有する略有底筒状に形成され、その周壁の内周面に内歯車21bを有し(
図2参照)、内歯車21bよりも後側の周壁には、後方へ突出するとともに周方向に間隔を置いた複数の係止片21cを有する(
図3参照)。
【0015】
また、連結部材31は、駆動回転軸12及び被検知歯車部材40を遊挿する略筒状に形成され、その周壁に、検知部32を外部から挿通して支持する貫通状の複数の支持孔31aと、前記複数の係止片21cにそれぞれ係止される複数の被係止部31bとを有する。
この連結部材31は、その後端側に環状の壁部31cを有し、この壁部31cに挿通されるネジ33によって、モータケース11の前壁部11aに止着される。
【0016】
なお、図示例によれば、係止片21cに貫通状の係止孔を設け、この係止孔を突起状の被係止部31bに係止するようにしているが、係止片21cを突起状に形成し被係止部31bを係止孔とすることも可能である。
【0017】
また、検知部32は、被検知部41の近傍で被検知部41を非接触検知する光学式の回転検出センサである。この検知部32は、図示例によれば、間隔を置いて対向する発光部32aと受光部32bからなるフォトインタラプタであり、これら発光部32aと受光部32bの間を通過する光が被検知部41によって遮られた際に検知信号を出力する。
この検知部32は、径方向の一方側と他方側に位置するように二つ設けられる。各検知部32は、ギヤケース21における隣接する二つの係止片21c間に位置して、連結部材31周壁の支持孔31aに挿通され固定される。支持孔31aに検知部32を固定する手段は、例えば、嵌合や接着等とすればよい。
なお、検知部32の他例としては、発光部から出射する光を被検知部41に反射させて受光部に受けるようにした反射式センサや、その他の回転検出センサを用いることが可能である。
【0018】
そして、検知部32は、入出力用の複数の配線端子32cを径方向外側へ向けて外部に露出しており、これら配線端子32cには、配線基板(例えば、図示しないフレキシブル基板)が電気的に接続される。この配線基板は、モータ部10の側面に沿って後方へ導かれる。
【0019】
次に、上記構成のギヤドモータAについて、その組立手順の一例を説明する。
先ず、モータ部10の駆動回転軸12に対し、被検知歯車部材40が環状に装着され固定される。
次に、被検知歯車部材40を覆うようにして、モータ部10の前端部に、連結部材31がネジ33によって止着固定される。
そして、連結部材31の各支持孔31aに、各検知部32が嵌め合わせられ固定される。
次に、連結部材31の前側には、ギヤ機構部20が、係止片21c及び被係止部31bによって連結される。ギヤ機構部20は、連結部材31に連結される前に予め組立ておいてもよいし、連結部材31の前方側へ順次に組付けられるようにしてもよい。
【0020】
よって、上記構成のギヤドモータAによれば、従来技術のように、駆動回転軸12を延長して、ギヤケース21よりも前側又はモータエンドよりも後側に、検知部やその配線等の複雑な構造を配置するのを避けることができ、ひいては、全長寸法の比較的短い小型かつ簡素な構造によって駆動回転軸12の回転を検出することができる。
しかも、モータ部10とギヤ機構部20を連結する作業の流れの中で、各検知部32を容易に装着することができ、その作業性が良好である。
また、モータ部10とギヤ機構部20の間で、検知部32を外部に露出しているため、検知部32に対する配線のためのスペースを確保し易く、その配線作業も容易に行うことができる。
【0021】
次に、上記構成のギヤドモータAを備えた携帯情報端末、及びロボットについて説明する。
図4は、ギヤドモータAの適用例を示している。ギヤドモータAは、
図4(a)に示すように、スマートフォンなどの携帯情報端末100の駆動部(カメラユニットや開閉カバーユニットなど)に組み込むことができ、また、
図4(b)に示すように、ロボット200の関節駆動部などに組み込むこともできる。
これら帯情報端末100やロボット200によれば、ギヤドモータAを有する駆動部分を全長寸法が比較的短い小型な構造にすることができ、さらには、製品全体の小型化や軽量化に貢献することができる。
【0022】
なお、上記実施態様によれば、特に好ましい一例として、ギヤ機構部20を遊星歯車機構としたが、他例としては、ギヤ機構部20を遊星歯車機構以外の歯車機構とすることも可能である。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
10:モータ部
11:モータケース
12:駆動回転軸
20:ギヤ機構部
21:ギヤケース
21c:係止片
31:連結部材
31a:支持孔
31b:被係止部
32:検知部
40:被検知歯車部材
41:被検知部
42:駆動歯車
A:ギヤドモータ