(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】減衰器室を備えた、車両ブレーキ装置の液圧ユニットの減衰装置
(51)【国際特許分類】
B60T 8/42 20060101AFI20221220BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20221220BHJP
B60T 17/00 20060101ALI20221220BHJP
F16J 3/02 20060101ALI20221220BHJP
F16J 15/52 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
B60T8/42
B60T15/36 Z
B60T17/00 D
F16J3/02 B
F16J15/52 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018134248
(22)【出願日】2018-07-17
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】10 2017 213 322.8
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ブレンデルファー,ダニエル
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-005887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
B60T 8/32 - 8/96
B60T 15/00 - 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室体積が可変である減衰器室(26)と、該減衰器室(26)
の下流の絞り(36)とを有する、車両ブレーキ装置の液圧ユニットの減衰装置(10)において、
前記絞り(36)に対してバイパス(48)が並列接続されており、
前記絞り(36)
と前記バイパス(48)を含む流体絞りが可変な絞り作用を有していて、該絞り作用が前記室体積に依存して可変であ
り、
前記バイパス(48)が弁体(34)によって閉鎖可能であって、前記弁体(34)がバルブシート(32)に対してシールされ、前記弁体(34)がバルブシート(32)から前記減衰器室(26)の方向に持ち上げられることによって前記絞り作用が減少することを特徴とする、液圧ユニットの減衰装置。
【請求項2】
前記絞り作用が、
流体室(24)の体積の拡大につれて減少することを特徴とする、請求項1記載の減衰装置。
【請求項3】
前記減衰器室(26)が変形可能な減衰器ダイヤフラム(20)によって画成されていて、前記絞り(36)の絞り作用が前記減衰器ダイヤフラム(20)の変形状態に依存して可変であることを特徴とする、請求項1
または2記載の減衰装置。
【請求項4】
前記減衰器室(26)が位置調節可能な減衰器ピストン(50)によって画成されていて、前記絞り(36)の絞り作用が前記減衰器ピストン(50)の調節位置に依存して可変であることを特徴とする、請求項1
または2記載の減衰装置。
【請求項5】
前記絞り(36)が前記弁体(34)内に配置されていることを特徴とする、請求項
1から4のいずれか1項記載の減衰装置。
【請求項6】
前記弁体(34)が室体積に依存して機械的な連結エレメントによって移動可能であり、この場合、前記連結エレメント
が減衰器ダイヤフラム(20)また
は減衰器ピストン(50)に連結されていることを特徴とする、請求項
1から5のいずれか1項記載の減衰装置。
【請求項7】
前記連結エレメントが、引張エレメントとし
て構成されていることを特徴とする、請求項
6記載の減衰装置。
【請求項8】
前記引張エレメントが、タイロッド(46)、牽引ロープ(54)または牽引パイプ(56)であることを特徴とする、請求項7記載の減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室体積が可変である減衰器室と、該減衰器室に後置接続された絞りとを有する、車両ブレーキ装置の液圧ユニットの減衰装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特に乗用車およびトラックのために使用されるような、液圧式の車両ブレーキ装置においては、車両ブレーキ装置内の圧力脈動およびそれに伴って発生する騒音を避けるために、圧力脈動減衰器が使用される。圧力脈動は、ピストンポンプによってブレーキ液が圧縮される際に発生する。さらに弁の切換時に圧力波が発生する。
【0003】
液圧式のブレーキシステムのためのこのような減衰装置は、例えば特許文献1により公知である。ここに記載された圧力脈動減衰器は減衰室を有しており、この減衰室の室体積は、減衰室内に配置されたエラストマーコアが圧力上昇時に圧縮されることにより、変えることができる。減衰室に絞りが後置接続されており、この絞りは絞り孔を有していて、さらにこの絞りにおいて、圧力制限弁が並列接続されてよい。これによって、構成要素を1つにまとめるための許容範囲、および構成要素の機械的な耐負荷能力限度のための許容範囲を超える圧力上昇は避けられるようになる。
【0004】
しかしながら、ブレーキ液の流れの減衰に伴って、出力損失も発生し、この出力損失は所属のピストンポンプによって補正されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、発生した出力損失を従来の減衰装置と比較して減少させることができる、特に車両ブレーキ装置の液圧ユニットのための減衰装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、室体積が可変である減衰器室と、この減衰器室に機能的に、若しくは所属の流体の流れ方向で下流の絞りとを有する、車両ブレーキ装置の液圧ユニットの減衰装置が提供されている。この絞りは可変な絞り作用を有していて、またこの絞り作用は室体積に依存して可変である。
【0008】
この場合、本発明による解決策は、同様に基本的に可変な絞り作用を有する従来の動的な絞りと混同されてはならない。このような絞りの絞り作用は、単に流れてくる流体の流れに依存するだけであって、例えば所属の減衰器室の室体積の大きさに依存することはない。
【0009】
従って、高い流れ圧力における動的な絞りは、流れてくる流体の低い流れ圧力におけるよりもやや大きく開放する。この場合、所属の減衰装置の室体積も同時に変化するかどうか、およびどのように変化するかは、絞りのためには重要ではない。動的な絞りのためには、例えば絞りがどのような圧力で流れに晒されるかということだけが重要である。
【0010】
これに対して、本発明の解決策は、このような考え方を超えて、絞りの絞り作用を、これが所属の減衰室の室体積の大きさにアクティブに依存して変化するように、変化可能に構成するものである。
【0011】
この場合、本発明は、減衰装置の小さい室体積およびひいては大きい減衰作用において、絞り作用は大きくなければならない、という認識に基づいている。これに対して、減衰装置の大きい室体積およびひいては小さい減衰作用において、絞り作用は小さくなければならない。これを構造的に実行するために、本発明による解決策は、可変な出力値としての絞りの絞り作用を、検出しようとする入力値としての室体積に結び付ける。このために特に機械的な装置が設けられており、この機械的な装置によって室体積が検出されるか若しくは算出され、次いで絞り作用が相応にアクティブに変化せしめられる。
【0012】
特に本発明は、最大の大きさの室体積において、減衰装置の減衰作用はいずれにしても完全に失われているという認識に基づいている。この状況において、出力損失を少なくするために、下流の絞りの流体の流れの減衰もできるだけ小さくなければならない。この場合、絞り作用は特に同様に完全に失われていなければならない。これは、本発明による解決策によって実現可能である。
【0013】
このような理由により、本発明による減衰装置の本発明による発展形態において、絞り作用が室体積の拡大につれて減少され、絞り作用が最大の室体積において概ねゼロに減少されるようになっている。
【0014】
好適には、さらに、減衰器室が変形可能な減衰器ダイヤフラムによって画成されていて、絞りの絞り作用が減衰器ダイヤフラムの変形状態に依存して可変である。選択的に、好適には、減衰器室が位置調節可能な減衰器ピストンによって画成されていて、絞りの絞り作用が減衰器ピストンの調節位置に依存して可変である。2つの発展形態において、絞りの減衰作用は、減衰装置の減衰作用を規定する構成部分の調節位置に直接依存している。依存性は、特にカップリングによって、好適には減衰作用を規定する構成部分および絞り作用を規定する絞りの構成部分の純粋に機械的なカップリングによって形成されている。
【0015】
絞りの絞り作用に影響を及ぼすために、好適には、絞りに対してバイパスが並列接続されており、このバイパスにおいて、絞りの絞り作用を変えるためにバイパス若しくはバイパス開口の大きさが室体積に依存して可変である。この場合、バイパスは、絞り自体の液圧抵抗よりも小さい液圧抵抗を形成する。このような別の液圧抵抗が絞りに対して並列接続で配置されていて、それによって分路を形成することによって、絞りを通ってガイドされた流体路はこの分路によって負荷軽減され得る。液圧的な全抵抗は、減衰装置を通って流れる流体が妨げられることなく流出し、従って絞りの絞り作用が小さくなることによって、低下する。
【0016】
このような形式のバイパス開口は、好適には、バルブシートに対してシールされている弁体によって閉鎖可能である。従って、弁体はバルブシートと共にバイパス開口内で、バイパス開口の液圧抵抗を制御するための制御弁を形成する。
【0017】
この場合、絞りが弁体内に配置されていることによって、特に取り付けスペースを節約すると同時に、機能的に効果的な全体的配置構成が提供され得る。このような弁体内の絞りは、好適には弁体を貫通する絞り開口によって、つまり比較的小さい開口横断面を有する貫通開口によって簡単に形成することができる。弁体はまずバルブシートに当接し、絞りを通過する流体は、オリフィスとして作用する絞り開口だけを通って流れなければならない。減衰装置の室体積が次第に大きくなるにつれて、特に弁体がバルブシートから持ち上げられることによって、バイパスが開放される。絞りを通過する流体は、ほぼ液圧抵抗なしでも、絞りの周囲を流れることができるので、絞り作用は相応に減少される。
【0018】
特に好適には、弁体は、機械的な連結エレメントによって、室体積に依存して移動可能であり、この場合、連結エレメントは特に減衰器ダイヤフラムまたは減衰器ピストンに連結されている。このような形式の機械的な連結エレメントは、簡単で確実に機能し、かつ同時にコンパクトな、室体積と絞りの絞り作用との間の依存性を得るための構造形を提供する。
【0019】
この場合、特に好適には減衰器ダイヤフラムまたは減衰器ピストンと弁体との間の連結エレメントは、引張エレメントとして特にタイロッド、牽引ロープまたは牽引パイプとして構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による減衰装置の第1実施例の縦断面図である。
【
図2】本発明による減衰装置の第2実施例の縦断面図である。
【
図3】本発明による減衰装置の第3実施例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明による解決策の実施例を、添付の概略図を用いて詳しく説明する。
【0022】
図1には、車両ブレーキ装置の液圧ユニットの減衰装置10が示されている。この場合、減衰装置10は液圧ユニットのハウジング12に位置しており、この液圧ユニットはここでは、直方体状のブロックとしてアルミニウム材料より形成されている。ハウジング12から帽子状の減衰器ハウジング14が突き出している。この場合、ハウジング12と帽子状の減衰器ハウジング14の帽子のつば区分との間の接続は、流体密な定置のかしめ加工部16として構成されている。
【0023】
減衰器ハウジング14はその内側で円筒形の減衰器内室18を包囲しており、この減衰器内室18はさらに、
図1に関連して下端部でハウジング12によって画成されている。減衰器内室18内に同様に帽子状の減衰器ダイヤフラム20が位置している。この減衰器ダイヤフラム20は弾性的な材料より成っていて、その外側に複数の湾曲部22を備えている。減衰器ダイヤフラム20は、その下区分がかしめ加工部16内に組み込まれていて、このような形式によりかしめ加工部16で定置に保持されている。これによって、減衰器ダイヤフラム20は、減衰器内室18を、減衰器ダイヤフラム20の内部に位置する流体室24と、減衰器ダイヤフラム20と減衰器ハウジング14との間に位置する減衰器室26とに分離する。減衰器ダイヤフラム20の変形および運動によって、流体室24の拡大時に減衰器室26は縮小し、その逆でもある。
【0024】
供給路28は、ハウジング12を貫通して下方から流体室24内に通じている。この供給路28を通して、減衰装置10は、残りの液圧ユニットからブレーキ液を圧力下で供給することができる。
【0025】
導出路30が、流体室24から
図1に関連して下方に導き出されている。導出路30は、流体を減衰装置10から減衰された形で残りの液圧ユニット内に導出するために用いられる。導出路30はバルブシート32によって囲まれており、このバルブシート32上に、上方から、つまり流体室24の側から弁体34が気密に載っている。
【0026】
弁体34が導出路30の長手方向で絞り開口38から挿入されていることによって、弁体34内に絞り36が形成されている。絞り開口38内に絞り体40がはめ込まれており、この絞り体40は、絞りばね42によって流体室24への方向で絞りシート44に向かって押し付けられている。
【0027】
従って、流体室24から流体を導出する際に、絞り体40は液圧式の流れ抵抗として作用し、この流れ抵抗は、絞り開口38を通る流体の流出をできるだけ阻止する。このような形式で流体が流体室24内でせき止められ、減衰器ダイヤフラム20は減衰器ハウジング14に向かって押し退けられる。この場合、減衰器室26内に弾性的に圧縮可能なガスが存在する。このガスによっておよび減衰器ダイヤフラム20自体の弾性によって、供給路28を通って供給されその際に部分的に圧力脈動に晒される流体のために、圧力波を減衰する作用が得られる。
【0028】
絞り36の手前でせき止められる流体が増大するにつれて、流体室の室体積が次第に拡大し、それと同時に減衰器室26の室体積が次第に縮小する。減衰器室26の室体積が最終的にほぼゼロになると直ちに、減衰装置10はその機能をほぼ失う。しかしながらそれと同時に、絞り36の絞り機能若しくはせき止め機能は基本的に維持される。このような絞り36の機能、およびそれに伴う、減衰装置10を貫通ガイドされる流体のための流動損失を減少させるために、および避けるために、減衰器ダイヤフラム20を弁体34に機械的に連結するタイロッド46が設けられている。
【0029】
タイロッド46によって連結されていることにより、弁体34は減衰器室26の室体積が次第に縮小するにつれてバルブシート32から持ち上げられ、このような形式で弁体34とバルブシート32との間でバイパス48が開放される。次いで、このバイパス48を通って流体が、絞り作用に晒されることなく、流体室24から流出することができる。
【0030】
図2には、
図1に示した実施例と構造的に概ね同じである減衰装置10の実施例が示されている。しかしながら、減衰器ダイヤフラム20の代わりに、
図2に示した実施例では減衰器ピストン50が設けられており、この減衰器ピストン50は、らせん状の弾性的な減衰器ばね52によって絞り36に向かって押しやられている。減衰器ピストン50は、流体室24を減衰器室26から分離し、この場合、減衰器ばね52は減衰器室26内に位置している。
【0031】
所属の絞り体40は、牽引ロープ54によって減衰器ピストン50に機械的に連結されている。この場合、牽引ロープ54はその弾性およびその長さに関連して、特別に適合されており、従って、減衰器内室18内における減衰器ピストン50の位置に応じて、それによって形成されたバイパス48のためにそれぞれ所望の開放横断面が得られる。
【0032】
図3は、同様に減衰器ハウジング14内で減衰器ピストン50がしゅう動可能かつ気密に支承されている、減衰装置10の実施例を示す。減衰器ピストン50に、牽引パイプ56が絞り36に向かって突き出して配置されている。この牽引パイプ56によって、
図3で見て弁体34の上方の端部領域が、バイパス48を提供するために牽引パイプ56が弁体34を持ち上げ、この際にバルブシート32から持ち上げることができるように、把持されている。牽引パイプ56が、体積が非常に小さい流体室24において十分な運動スペースが得られるようにするために、さらに弁体34が、下方に突き出す中空円筒形の切欠58によって包囲されている。
【符号の説明】
【0033】
10 減衰装置
20減衰器ダイヤフラム
26 減衰器室
32 バルブシート
34 弁体
36 絞り
46 タイロッド
48 バイパス
50 減衰器ピストン
54 牽引ロープ
56 牽引パイプ