IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

特許7197302フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置
<>
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図1
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図2
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図3
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図4
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図5
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図6
  • 特許-フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-19
(45)【発行日】2022-12-27
(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/36 20210101AFI20221220BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221220BHJP
【FI】
G03B9/36 Z
G03B17/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018140992
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016813
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】河上 健太
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-163473(JP,A)
【文献】特開2002-162667(JP,A)
【文献】特開2001-281728(JP,A)
【文献】特開2015-225193(JP,A)
【文献】特開2003-280066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/08-9/54
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部を有する第1地板と、
前記第1開口部に対向する位置に第2開口部を有する第2地板と、
前記第1地板と前記第2地板とにより形成された羽根室に配置され、前記第1開口部及び前記第2開口部を覆う状態と開放する状態とを切り替える羽根と、
前記第1地板に回転可能に取り付けられて前記羽根と連結具で連結されたアームと、を備え、
前記第1地板及び前記第2地板の少なくとも一方は、前記羽根室側の面に前記連結具の移動軌跡に沿って形成された溝部を有し、
前記溝部の底部には粘着剤が配置されており、
前記溝部は、前記溝部に沿って移動する前記連結具よりも狭い幅を有し、
前記連結具の頭部は、前記アームよりも前記溝部が形成された前記第1地板または前記第2地板に近い位置に配置され、平面視で前記溝部に重なる、
フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記溝部は、前記羽根の走行完了位置の近傍の前記連結具の移動軌跡に沿って形成される、
請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記羽根が先羽根であって、
さらに後羽根を備える、
請求項1または請求項2に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
撮像素子と、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォーカルプレンシャッタと、
を備える撮像装置。
【請求項5】
撮像素子と、
請求項に記載のフォーカルプレンシャッタと、を備え、
前記撮像素子は、前記後羽根よりも前記先羽根に近接して配置されている、
撮像装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、カメラなどの撮像装置に用いられるフォーカルプレンシャッタなどに関する。
【背景技術】
【0002】
シャッタ羽根によって開口部(露光開口、または画枠とも称する)を開閉することで撮像素子に対する露光を行うフォーカルプレンシャッタでは、地板とカバー板との間に形成された羽根室に配置されたシャッタ羽根を駆動機構により駆動することで開口部の開閉状態を変化させ、露光が行われる構成となっている。シャッタ羽根は、リベットなどの連結具でアームに連結され、アームの他端は駆動機構に連結される。シャッタの動作時には、駆動機構によりアームを介してシャッタ羽根に駆動力が伝達されることでシャッタ羽根が移動するが、このとき、連結具及びシャッタ羽根と地板との摩擦などにより、摩耗粉が発生することがある。また、シャッタ以外の部材からもゴミが発生することがある。これらの摩耗粉及びゴミが撮像素子に付着すると、撮像結果の品質が低下する原因となる。このような摩耗粉及びゴミへの対策を施した構成として、例えば特許文献1及び特許文献2に記載されたようなフォーカルプレンシャッタがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-45020号公報
【文献】特開2003-280066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成のフォーカルプレンシャッタでは、摩耗粉及びゴミが撮像面に付着することを軽減させることが可能であったが、近年、画質向上に対するさらに高い要求がある。そのため、従来よりもさらに効果的に、摩耗粉及びゴミが撮像面に付着することを防止するための構成が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
第1開口部を有する第1地板(1)と、
前記第1開口部に対向する位置に第2開口部を有する第2地板(2)と、
前記第1地板と前記第2地板とにより形成された羽根室に配置され、前記第1開口部及び前記第2開口部を覆う状態と開放する状態とを切り替える羽根(4)と、
前記第1地板に回転可能に取り付けられて前記羽根と連結具で連結されたアーム(61)と、を備え、
前記第1地板及び前記第2地板の少なくとも一方は、前記羽根室側の面に前記連結具の移動軌跡に沿って形成された溝部(9a~9d)を有し、
前記溝部の底部には粘着剤(9e、9f)が配置されている、
フォーカルプレンシャッタである。
【0007】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、羽根の動作の際の摩擦などによって発生した摩耗粉やゴミなどの塵埃を、溝部に配置された粘着部材により捕獲することが可能となる。これによって、塵埃が飛散して撮像素子に付着し、画質が低下することを防止することなどが可能となる。
【0008】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記溝部(9a~9c)は、前記溝部に沿って移動する前記連結具よりも広い幅を有する。
【0009】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、連結具周辺から発生した摩耗粉などの塵埃を効率よく捕獲可能な構成となる。これにより、塵埃の飛散をより効果的に抑制することができる。
【0010】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記溝部(9a~9c)は、前記溝部に沿って移動する前記連結具よりも狭い幅を有する。
【0011】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、溝部の幅が連結具よりも狭いため、連結具が溝部に入り込んだ状態になることを避けることができる。これにより、溝部と連結具との間の摩擦で動作に影響を及ぼしたり、摩耗粉を発生しやすくなったりすることを抑制しつつ、溝部で摩耗粉などの塵埃を捕獲可能な構成とすることができる。
【0012】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記溝部(9a~9d)は、前記羽根の走行完了位置の近傍の前記連結具の移動軌跡に沿って形成される。
【0013】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、特に摩耗粉などの塵埃が発生したり飛散したりしやすい羽根の走行完了位置で発生した塵埃を効果的に捕獲しやすい構成にすることができる。これによって、さらに効果的に塵埃を捕獲可能な構成とすることができる。
【0014】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記羽根が先羽根であって、
さらに後羽根を備える。
【0015】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、走行完了時に摩耗粉が特に発生しやすい先羽根のアームに連結された連結具に対して溝部を設けた構成とすることで、さらに効果的に塵埃を捕獲可能な構成とすることができる。また、後羽根よりも先羽根が撮像素子に近接して配置された場合には、特に塵埃の捕獲が重要となってくるため、本構成が特に効果的である。
【0016】
上記いずれかのフォーカルプレンシャッタは、撮像素子を含んで構成されるカメラなどの撮像装置に好適に適用される。
【0017】
上記のような撮像装置によれば、撮像素子などに摩耗粉やゴミなどが飛散することを抑制することが可能となる。これによって、撮像素子に摩耗粉やゴミなどが付着することを抑制することでき、撮像装置で撮像される画像の品質の低下を抑制することなどが可能となる。
【0018】
上記いずれかのフォーカルプレンシャッタは、後羽根よりも先羽根に近接して配置された撮像素子を含んで構成されるカメラなどの撮像装置に、特に好適に適用される。
【0019】
上記のような撮像装置によれば、先羽根が後羽根よりも撮像素子に近接して配置されており、先羽根の駆動により発生する塵埃の捕獲が重要となるが、先羽根用のアームの連結具の移動軌跡に沿った溝部を有する構成であるため、先羽根の駆動により発生する塵埃を効果的に捕獲可能であり特に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態のフォーカルプレンシャッタの羽根走行前の状態の平面図である。
図2図2は、実施形態のフォーカルプレンシャッタの羽根走行後の状態の平面図である。
図3図3は、実施形態のフォーカルプレンシャッタの断面図である。
図4図4は、実施形態の連結具近傍のフォーカルプレンシャッタの断面図である。
図5図5は、変形例1の連結具近傍のフォーカルプレンシャッタの断面図である。
図6図6は、変形例2の連結具近傍のフォーカルプレンシャッタの断面図である。
図7図7は、変形例3の連結具近傍のフォーカルプレンシャッタの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のフォーカルプレンシャッタは、デジタルカメラなどの撮像装置で利用されるものであり、フォーカルプレンシャッタの動作などにより発生する摩耗粉やゴミなどの塵埃を捕獲するための構成に特徴のひとつがある。具体的には、羽根とアームとを連結する連結具の移動軌跡に沿って、カバー板に溝部が形成されている点を特徴のひとつとしている。
【0022】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態
2.変形例
(1)変形例1
(2)変形例2
(3)変形例3
3.補足事項
【0023】
<1.実施形態>
図1及び図2は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの平面図であって、図1は羽根走行前の状態を示し、図2は羽根走行後の状態を示している。図3は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの断面図である。図4は、先羽根4と先羽根用アーム61との連結部分及び溝部9a近傍の拡大断面図である。
【0024】
図1図4に示されるように、本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、地板1、カバー板2、中間板3、先羽根4、後羽根5、先羽根用アーム61及び62、後羽根用アーム71及び72、先羽根用駆動ピン81、並びに後羽根用駆動ピン82を含んで構成される。先羽根用アーム61は、連結具4a~4cを含む複数の連結具によって先羽根4に連結されている。後羽根用アーム71についても同様に複数の連結具によって後羽根5に連結されているが、ここではその具体的な説明を省略する。連結具4a~4cを含む複数の連結具は例えばリベットなどの、かしめ用の部材であって、羽根ダボと呼ばれることがある。
【0025】
図3に示されるように、地板1と中間板3との間に後羽根5が配置され、カバー板2と中間板3との間に先羽根4が配置される。また、図4に示されるように、カバー板2と先羽根4との間には、先羽根用アーム61が配置される。先羽根用アーム62も同様に、カバー板2と先羽根4との間に配置される。先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82を指して「駆動ピン」ということがある。また、駆動ピンを含む、先羽根4及び後羽根5を駆動する構成を「駆動部8」という。また、先羽根4及び後羽根5を指して「羽根」ということがある。
【0026】
<地板1>
地板1は、フォーカルプレンシャッタの基板部分であって、矩形状の開口部1aを有している。図1に示されるように、地板1において、開口部1aの側方位置(図の右側)には、後述する羽根室の外に駆動部8が搭載される。図示を省略しているが、地板1には駆動部8が搭載される。地板1は、円弧状に延びて形成された貫通孔である長孔11及び12を有する。長孔11及び12には、それぞれ先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82が挿通して配置される。なお、開口部1aは完全な矩形状でなくてもよいし、矩形以外の任意の形状を採用してもよい。開口部1aは、本発明の「第1開口部」の一構成例である。
【0027】
<カバー板2>
カバー板2は、地板1と対向する位置に、地板1に対して所定の間隔を空けて配置される。カバー板2は、フォーカルプレンシャッタが搭載された撮像装置において、撮像素子(図示省略)に近い位置に配置される。地板1とカバー板2との間には、中間板3、先羽根4、後羽根5、先羽根用アーム61及び62、並びに後羽根用アーム71及び72が配置される。地板1とカバー板2とにより形成された空間、または地板1及びカバー板2と中間板3とにより形成された空間を羽根室と称する。カバー板2は、地板1の開口部1aに対向する位置に形成された開口部2aを有する。開口部2aは、開口部1aと類似の矩形状であるが、完全な矩形状ではなくてもよいし、矩形以外の任意の形状であってもよい。カバー板2は、円弧状に延びて形成された貫通孔である長孔21及び22を有する。長孔21及び22は、地板1の長孔11及び12と重なるよう形成されている。開口部2aは、本発明の「第2開口部」の一構成例である。
【0028】
図4に示されるように、カバー板2は、地板1と対向する側の面に、溝部9aを有する。溝部9aは、カバー板2の、地板1側の面から凹んで形成された凹部である。溝部9b及び9cも、溝部9aと同様に形成されている。図1及び図2に示されるように、溝部9a~9cは、平面視でそれぞれ連結具4a~4cの移動軌跡に沿って形成されている。より具体的には、溝部9a~9cは、先羽根4が走行した際、先羽根4が走行完了位置に達したときの連結具4a~4cが位置する場所の近傍に形成される。
【0029】
溝部9aは、連結具4aの頭部の径よりも小さい幅を有するよう形成される。より具体的には、溝部9aは、連結具4aの頭部の先端が、溝部の底部に接しない程度の深さ(奥行き)を持って形成される。
【0030】
また、溝部9aは、先羽根4の走行の際に、先羽根4を構成する4枚の羽根部材のうちの最後の羽根部材の端部が平面視で開口部1aの端部を通過した後、先羽根4が動作を停止するまでの期間における連結具4a~4cの移動軌跡をカバーするよう、形成されている。
【0031】
<中間板3>
図4に示されるように、中間板3は、地板1とカバー板2との間に配置され、地板1との間と、カバー板2との間に、それぞれ後羽根5及び先羽根4を収容する。つまり、地板1と中間板3との間には後羽根5が配置され、カバー板2と中間板3との間には先羽根4が配置される。撮像装置に搭載される撮像素子から近い順に、カバー板2、先羽根4、中間板3、後羽根5、地板1、と配置されている。中間板3は、地板1の開口部1a及びカバー板2の開口部2aに対向する位置に、矩形状の開口部3aを有する。開口部1a及び2a同様、中間板3の開口部3aも矩形状ではない任意の形状であってもよい。
【0032】
<先羽根4>
先羽根4は、上記のようにカバー板2と中間板3との間に位置している。先羽根4は、複数の板状部材からなり、「先羽根群」と呼ばれることがある。先羽根4は、連結具4a~4cを含む連結具を介して、先羽根用アーム61及び62に連結される。先羽根4は、先羽根用アーム61及び62を介して、先羽根用駆動ピン81により駆動され、開口部1a、2a及び3aにより形成される露光開口を覆う状態と開放する状態と(開閉状態)を切り替える。先羽根4は、後羽根5よりも撮像素子に近い位置に配置されている。先羽根4及び後羽根5は、それぞれアルミニウムなどの金属、カーボンファイバー、または樹脂により形成される。
【0033】
<後羽根5>
後羽根5は、上記のように地板1と中間板3との間に位置している。後羽根5は、先羽根4と同様に複数の板状部材からなり、「後羽根群」と呼ばれることがある。後羽根5は、先羽根4と同様に連結具を介して、2つの後羽根用アーム71及び72に連結される。後羽根5は、先羽根4と同様、後羽根用アーム71及び72を介して、後羽根用駆動ピン82により駆動され、開口部1a、2a及び3aにより形成される露光開口を覆う状態と開放する状態とを切り替える。
【0034】
<先羽根用アーム61及び62>
先羽根用アーム61は、先羽根用駆動ピン81と先羽根4との間に配置され、連結具4a~4cを含む複数の連結具によって先羽根4に連結される。先羽根用アーム62は、先羽根用アーム61と同様の連結具によって先羽根4に連結される。これにより先羽根用アーム61は、駆動部8から先羽根用駆動ピン81を介して与えられた駆動力を先羽根4に伝達する。先羽根用アーム62は、直接的には駆動力が与えられないが、先羽根4を介して先羽根用アーム61の動きに合わせて作動する。先羽根用アーム61は地板1上に配置された軸61aに連結され、先羽根用アーム62は地板1上に配置された軸62aに連結される。先羽根4が動作する際、連結具4a~4cは、軸61aを中心としてそれぞれ円弧状に移動する。
【0035】
<後羽根用アーム71及び72>
後羽根用アーム71及び72は、後羽根用駆動ピン82と後羽根5との間に配置され、連結具73を含む複数の連結具によって後羽根5に連結される。これにより後羽根用アーム71は、駆動部8で発生した駆動力を後羽根5に伝達する。後羽根用アーム72は、後羽根5を介して後羽根用アーム71に合わせて作動する。後羽根用アーム71は、地板1上に配置された軸71aに連結され、後羽根用アーム72は、地板1上に配置された軸72aに連結される。
【0036】
<先羽根用駆動ピン81、後羽根用駆動ピン82>
先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82は、地板1の側方部に一部または全部が配置された駆動部8の一部である。先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82は、それぞれ地板1に形成された長孔21及び22の領域を移動する。駆動部8は、外部から与えられる電力によって作動して、先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82に動力を伝達する。先羽根用駆動ピン81及び後羽根用駆動ピン82は、それぞれ先羽根用アーム61及び後羽根用アーム71を介して、先羽根4及び後羽根5を駆動する。
【0037】
<駆動部8>
駆動部8は、例えば、永久磁石、ヨーク、コイル、及びコイルばねなどを含み、与えられた電力によって作動する、従来から知られる電磁アクチュエータなどを含む。また、駆動部8はモータを含んでいてもよい。
【0038】
本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、平面視で開口部1a、2a及び3a(露光開口)と重なる位置であって、被写体とは逆側(光軸方向後方)に撮像素子を備える撮像装置(カメラ)に用いられる。撮像素子は、フォーカルプレンシャッタにおいて地板1よりもカバー板2に近い位置の、基板上に搭載される。撮像素子は、例えばCMOSセンサ、またはCCDなどの光電変換素子である。なお、撮像素子は本発明の「撮像部」の一構成例である。
【0039】
上記本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、連結具4a~4cの移動軌跡にそって溝部9a~9cが形成されており、この溝部が連結具4a~4cよりも狭い幅を有する構成になっている。そのため、連結具4a~4cの動作の際に発生した摩耗粉などの塵埃を溝部で捕獲しながら、この溝部に連結具4a~4cが重なった状態となり、過剰な摩擦が発生することを避けることができる。これにより、溝部9a~9cと連結具4a~4cとの間の摩擦で羽根の動作に影響を及ぼしたり、摩耗粉を発生しやすくなったりすることを抑制しつつ、溝部で摩耗粉などの塵埃を捕獲可能な構成となっている。
【0040】
また、本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、溝部9a~9cが、先羽根4の走行完了位置の近傍における連結具4a~4cの移動軌跡に沿って形成されている。そのため、特に摩耗粉などの塵埃が発生したり飛散したりしやすい先羽根4の走行完了位置で発生した塵埃を効果的に捕獲しやすい構成にすることができる。これによって、さらに効果的に塵埃を捕獲可能な構成となっている。
【0041】
また、本実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、後羽根5ではなく先羽根4について、上記のような溝部9a~9cを設けた構成としているため、走行完了時に摩耗粉が特に発生しやすい先羽根用アーム61に連結された連結具4a~4cに対して溝部9a~9cを設けた構成とすることで、さらに効果的に塵埃を捕獲可能な構成となっている。また、複数の連結具を構成する連結具4a~4c以外の連結具についても同様に溝部を設けてもよいし、先羽根用アーム62に連結された複数の連結具に対して溝部を設ける構成としてもよい。また、先羽根4は撮像素子に近接して配置されているため、特に先羽根4側で発生した塵埃が撮像素子に付着するおそれが高いため、本実施形態の構成が特に有用である。
【0042】
なお、後羽根5についても、本実施形態の先羽根4に対する複数の溝部と同様の構成を採用してもよい。例えば、後羽根5が撮像素子に近接して配置された場合には、後羽根5に対して本実施形態の構成を採用すると効果的である。
【0043】
<2.変形例>
次に、本発明の実施形態の変形例1~3について説明する。これらの変形例は、実施形態と比較して、溝部9a~9cの構成などが異なっている。以下の説明では、実施形態との相違点について説明し、実施形態と共通な部分については説明を省略する。
【0044】
<(1)変形例1>
図5は、変形例1のフォーカルプレンシャッタにおける、先羽根4と先羽根用アーム61との連結部分及び溝部9d近傍の拡大断面図である。溝部9dは、実施形態の溝部9aに対応する。図5に示されるように、本変形例では、溝部9dが、連結具4aの頭部の径よりも広い(大きい)幅を有するように形成される。実施形態の溝部9b及び9cに対応する溝部も同様の構成となっている。
【0045】
このような構成とすることで、連結具4aの近傍から発生する摩耗粉などの塵埃をより確実に捕獲可能な構成とすることができる。
【0046】
<(2)変形例2>
図6は、変形例2のフォーカルプレンシャッタにおける、先羽根4と先羽根用アーム61との連結部分及び溝部9a近傍の拡大断面図である。カバー板の2の溝部9aの底部には、粘着剤9eが配置される。粘着剤9eは、溝部9aから突出しないようよう、厚み方向において、溝部9aの深さよりも薄い厚さで形成されている。実施形態の溝部9b及び9cに対応する溝部についても同様に粘着剤が配置される。
【0047】
<(3)変形例3>
図7は、変形例3のフォーカルプレンシャッタにおける、先羽根4と先羽根用アーム61との連結部分及び溝部9d近傍の拡大断面図である。本変形例では、変形例1と同様に連結具4aの頭部の径よりも広い(大きい)幅を有しており、溝部9dの底部には粘着剤9fが配置される。粘着剤9fは、溝部9dから突出しないようよう、厚み方向において、溝部9dの深さよりも薄い厚さで形成されている。実施形態の溝部9b及び9cに対応する溝部についても同様に粘着剤が配置される。
【0048】
変形例2及び3の構成では、溝部9a~9cまたは9dの底部に粘着剤を配置しているため、先羽根4の動作の際の摩擦などによって発生した摩耗粉やゴミなどの塵埃を、溝部9a~9cまたは9dに配置された粘着剤9eまたは9fにより捕獲することが可能となる。これによって、塵埃が飛散して撮像素子に付着し、画質が低下することを防止可能な構成となっている。
【0049】
また、変形例3では、溝部9dが連結具4aの頭部の径よりも広い(大きい)幅を有するよう形成されている。そのため、連結具4aの周辺から発生した摩耗粉などの塵埃を効率よく捕獲可能なとなり、塵埃の飛散をより効果的に抑制可能な構成となっている。
【0050】
また、変形例2では、溝部9aが連結具4aの頭部の径よりも狭い(小さい)幅を有しつつ、溝部9aの底部に粘着剤9eが配置されている。そのため、連結具4aの作動中に、連結具が粘着剤9eに接触する可能性を抑制できる。さらに、溝部9aで摩耗粉などの塵埃を確実に捕獲しつつ、溝部9aに落ちた塵埃が飛散することを抑制することができ、より効果的に塵埃を捕獲可能な構成となっている。
【0051】
<3.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0052】
上記実施形態及び各変形例のフォーカルプレンシャッタは、撮像素子を含んで構成されたカメラなどの撮像装置に好適に適用される。特に、先羽根4が後羽根5よりも撮像素子に近接して配置された構成の場合には、先羽根4の駆動により発生する塵埃の捕獲が重要となるが、先羽根用アーム61の連結具4a~4cの移動軌跡に沿った溝部9a~9cを有する構成とすることで、先羽根4の駆動により発生する塵埃を効果的に捕獲可能であり効果的である。
【0053】
また、実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、先羽根4が、後羽根5よりも撮像素子に近接するよう配置される構成を想定した説明としているが、先羽根4よりも後羽根5が撮像素子に近接する構成であっても、塵埃捕獲に一定の効果が得られる。
【0054】
また、実施形態のフォーカルプレンシャッタでは、中間板3を有する構成例を説明したが、中間板3を有さない構成を採用してもよい。その場合、羽根は先羽根4又は後羽根5のいずれか一方を設けた構成を採用してもよい。
【0055】
また、上記の実施形態の変形例において溝部に配置される粘着剤は、粘着性により塵埃を捕獲するものには限られず、静電性を備えることで塵埃を付着させる素材のものを採用してもよい。ただし、摩耗粉やゴミなどを吸着する能力に比較的優れた粘着性を有する粘着剤を用いることが好ましい。
【0056】
また、実施形態では、フォーカルプレンシャッタに備えられる先羽根4及び後羽根5は、それぞれ複数の羽根部材を有する構成として説明したが、先羽根4及び後羽根5は、それぞれ一枚の羽根部材を有する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置のフォーカルプレンシャッタなどとして好適に適用される。
【符号の説明】
【0058】
1…地板
1a…開口部
11、12…長孔
2…カバー板
2a…開口部
21、22…長孔
3…中間板
3a…開口部
4…先羽根
4a~4c…連結具
5…後羽根
61、62…先羽根用アーム
61a、62a…軸
71、72…後羽根用アーム
71a、72a…軸
73…連結具
8…駆動部
81…先羽根駆動ピン
82…後羽根用駆動ピン
9a~9d…溝部
9e、9f…粘着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7